JP2007204902A - 熱接着性複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエチレンテレフタレートを繊維形成性樹脂成分とし、接着強力が高く、かつ熱収縮の少ない、嵩高な不織布または繊維構造体を製造可能とする熱接着性複合繊維を提供する。
【解決手段】繊維形成性樹脂成分および熱接着性樹脂成分からなる複合繊維であって、繊維形成性樹脂成分がポリエチレンテレフタレートからなり、熱接着性樹脂成分が繊維形成性樹脂成分より20℃以上低い融点をもつ結晶性熱可塑性樹脂からなり、破断伸度が130〜600%、120℃乾熱収縮率が−10〜5%であることを特徴とする熱接着性複合繊維、及び1800m/min以下の紡糸速度で引き取った未延伸糸を熱接着性樹脂成分のガラス転移点と繊維形成性樹脂成分のガラス転移点の双方より高い温度で0.5〜1.2の倍率で定長熱処理することを特徴とする熱接着性複合繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱接着後の接着強力が高く、かつ熱接着時の熱収縮が極めて少ない、熱接着性複合繊維とその製造方法に関するものである。
熱接着性樹脂成分を鞘とし、繊維形成性樹脂成分を芯とする芯鞘型熱接着複合繊維に代表される熱接着性複合繊維は、カード法やエアレイド法、湿式抄紙法等により繊維ウェブを形成した後、熱風ドライヤーや熱ロールにより熱接着性樹脂成分を融解させて繊維間結合を形成するため、有機溶剤を溶媒とする接着剤を用いずに済み、環境への有害物排出が少ないだけでなく、生産速度向上およびそれに伴うコストダウンのメリットが大きく、硬綿、ベッドマット等の繊維構造体や不織布用途をメインとして広く用いられてきた。
中でも、不織布強力の更なる向上や不織布生産速度向上を狙って、熱接着性複合繊維の低温接着性または接着強度の向上が検討されている。
特許文献1においては、プロピレン−エチレン−ブテン−1からなる3元共重合体を鞘成分とし、結晶性ポリプロピレンを芯成分として、それらを鞘成分/芯成分=20/80〜60/40の複合比で紡糸して得た複合未延伸糸を、延伸倍率3.0未満で延伸することにより、従来よりも高い接着強力を有する熱接着性複合繊維が得られることが開示されている。しかしながら、このような繊維は、延伸倍率が低いために単糸間に均一なテンションがかからず、ネック変形のばらつきが大きく、繊度斑を生じるばかりか、実際は熱収縮および熱収縮斑が大きい欠点があった。
特許文献2においては、高速紡糸法により熱接着性樹脂成分の配向指数を25%以下とし、繊維形成性樹脂成分の配向指数を40%以上とすることで、接着点強度が強く、より低温で融着し、かつ熱収縮率の小さい熱融着性複合繊維が開示されている。しかしながら、高速紡糸法は、現在の短繊維製造プロセスは工程安定性とコストパフォーマンスの両面で歩留まりが悪く、商業生産にはまだまだ困難な課題が多くある。
更に、特許文献1、特許文献2共に、芯成分がポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)での実施例は開示されていない。芯成分をPETとすることは、芯成分がポリプロピレン(以下、PPと記す)の場合に比べ、芯成分の融点が鞘成分のそれより十分高くできるため、熱接着強力を更に向上させることができ、また嵩高性の面でも剛性が高く、より嵩高い不織布が得られるポテンシャルを有しているが、特許文献1のような低倍率延伸や単なる未延伸糸を適用しても、芯成分の配向結晶性が不十分であるために熱収縮は大きいものとなった。更に、特許文献2のような高速紡糸を適用すると、芯成分の溶融温度に併せて鞘成分の温度を上げざるを得ず、鞘ポリマーの劣化および紡糸ドラフトが大きいために断糸が非常に起こり易い課題があった。
特開平6−108310号公報 特開2004−218183号公報
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、ポリエチレンテレフタレートを繊維形成性樹脂成分とし、接着強力が高く、かつ熱収縮の少ない、嵩高な不織布または繊維構造体を製造可能とする熱接着性複合繊維を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱接着性樹脂成分として、PETより20℃以上低い融点をもつ結晶性熱可塑性樹脂を用い、1800m/min以下の紡糸速度で引き取った未延伸糸を熱接着性樹脂成分のガラス転移点と繊維形成性樹脂成分のガラス転移点の双方より高い温度で0.5〜1.2の倍率で定長熱処理することにより、高い接着強度と十分低い熱収縮率を有するPETを繊維形成性樹脂成分とする熱接着性複合繊維を発明するに至った。
より具体的には、上記課題は繊維形成性樹脂成分および熱接着性樹脂成分からなる複合繊維であって、繊維形成性樹脂成分がポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、熱接着性樹脂成分が繊維形成性樹脂成分より20℃以上低い融点をもつ結晶性熱可塑性樹脂からなり、破断伸度が130〜600%、120℃乾熱収縮率が−10〜5%であることを特徴とする熱接着性複合繊維、並びに1800m/min以下の紡糸速度で引き取った未延伸糸を熱接着性樹脂成分のガラス転移点と繊維形成性樹脂成分のガラス転移点の双方より高い温度で0.5〜1.1の倍率で定長熱処理することを特徴とする熱接着性複合繊維の製造方法による発明により解決することができる。
本発明の熱接着性複合繊維は、PETを繊維形成性樹脂成分とするため、従来提案されている高接着性かつ低熱収縮性の熱接着性複合繊維に比べ、嵩高性と高い不織布強力を有し、更に接着強度を上げるために熱接着温度を高く設定することも可能となるので、熱接着不織布や繊維構造体を高速で生産することが可能となる。更に、高速紡糸のようなプロセスを必要としないので、エネルギーコストも低く、ドフィング切替のロスや断糸が少ないため歩留まりが向上するメリットも大きい
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明は繊維形成性樹脂成分および熱接着性樹脂成分からなる複合繊維であり、繊維形成性樹脂成分をPETとし、PETより20℃以上低い融点を有する結晶性熱可塑性樹脂を熱接着性樹脂成分とする熱接着性複合繊維である。ここでPETと熱接着性樹脂成分の融点差が20℃未満であると熱接着性樹脂成分を融解し接着させる工程で繊維形成性樹脂成分も溶けてしまい、強度の高い不織布または繊維構造体ができないので、であり好ましくない。この複合繊維は公知の複合繊維の溶融方法や口金を用いて、紡糸速度1800m/min以下で未延伸糸を得、更にPETのガラス転移点(以下、Tgと記す)と熱接着性樹脂成分の熱可塑性結晶性樹脂のTgの双方より高い温度、好ましくはそれより10℃以上高い温度で、定長下で熱処理することにより得られる。多くの場合はPETのTg(約70℃)となり、従って、75℃好ましくは80℃以上の温度で定長熱処理を行う。定長熱処理の温度がこの範囲より低いと複合繊維の熱接着時の収縮率が大きくなるので好ましくない。
ここでいう定長熱処理は、溶融紡糸により得た未延伸糸を0.5〜1.2倍のドラフトをかけた状態で行う。実質は、熱処理前後で繊維軸方向の変形がないように1.0倍で行うが、樹脂の性質上未延伸糸が熱伸長性を有する場合は延伸機のローラー間での糸条の弛みを防ぐために、1.0倍より大きいドラフトをかけてもよい。1.2倍を超えたドラフトを付与することは未延伸糸を延伸させることになるので好ましくない。また、樹脂の性質上や紡糸延伸条件に由来した熱収縮性を有する場合も繊維の配向を上げてしまう方向であるので、1.0倍より大きいドラフトをかける代わりに未延伸糸が延伸中に弛みを生じない程度の1.0倍未満のドラフト(オーバーフィード)としても差し支えない。弛みの生じないドラフトは0.5倍程度が下限である。これを下回ると殆どのポリマー系では収縮が不十分でトウが垂れやすくなる。
定長熱処理はヒータープレート上、熱風吹付け、高温空気中、蒸気吹付け、シリコンオイルバス等の液体熱媒中などで実施すればよいが、熱効率がよく、その後の繊維処理剤付与の際に洗浄の必要がない温水中で実施することが好ましい。
紡糸速度は1800m/min以下であることが必要であり、好ましくは1500m/min以下、更に好ましくは1300m/min以下である。1800m/minを超えると未延伸糸の配向が上がり、本発明が目標とする高接着性を阻害する上、断糸が多くなり、生産性が悪くなる。また紡糸速度がこの範囲より遅くても当然のごとく生産性が悪くなる。
本発明の熱接着性複合繊維の形態は繊維形成性樹脂成分と熱接着性樹脂成分とが所謂サイドバイサイド型で貼りあわされた複合繊維であっても、繊維形成性樹脂成分が芯成分熱接着性樹脂成分を鞘成分とする芯鞘型複合繊維であっても構わない。しかし、繊維軸方向に対して直角方向であってあらゆる方向に熱接着性樹脂成分が配置され得る点で繊維形成性樹脂成分を芯成分、熱接着性樹脂成分を鞘成分とする芯鞘型複合繊維であることが好ましい。また芯鞘型複合繊維としては同芯芯鞘型複合繊維又は偏芯芯鞘型複合繊維を挙げることができる。
熱接着性樹脂成分(鞘成分)は結晶性熱可塑性樹脂を選択することが必要である。非晶性熱可塑性樹脂であると、紡糸時に配向した分子鎖が融解と同時に無配向となるに伴い大きく収縮してしまう。結晶性熱可塑性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂や結晶性共重合ポリエステル等が挙げられる。
そのポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、若しくはプロピレンと他のαオレフィンからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン類、又はエチレン、プロピレン、ブテン−1、若しくはペンテン−1等のαオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、若しくはハイミック酸等の不飽和カルボン酸あるいはこれらのエステル、若しくは酸無水物等の極性基を有する不飽和化合物等の少なくとも1種のコモノマーとの共重合体からなる変性ポリオレフィン類等が挙げられる。
また結晶性共重合ポリエステルの例としては、酸成分として、主たるジカルボン酸成分をテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体とし、主たるジオール成分をエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、又はこれらの誘導体からのうち1〜3種の組合せにより得られるアルキレンテレフタレートにイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸塩等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサメチレンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、ε−ヒドロキシカルボン酸、ω−ヒドロキシカルボン酸等、前述の例の他、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサメチレンジメタノール等の脂環族ジオール等を、目的の融点を呈するように共重合させたものが挙げられる。
なお、本発明における熱接着性樹脂成分は、繊維形成性樹脂成分がPETの場合には、融点がPETより20℃以上低い結晶性熱可塑性樹脂の2種以上がポリマーブレンドされた形態でもよく、著しく接着性や低熱収縮性を阻害しない範囲で非晶性熱可塑性樹脂やPETとの融点差が20℃未満の結晶性熱可塑性樹脂が含有されていてもよい。
熱接着性複合繊維の破断伸度は、130〜600%の範囲内にあることが必要であり、好ましくは170〜450%の範囲内である。破断伸度が130%未満であると、熱接着成分の配向が高いために接着性に劣り、不織布強度が低下する。また、600%を超えると、実質的に繊維強度が小さくなりすぎ、熱接着不織布の強度を上げることができない。
本発明の熱接着性複合繊維の120℃乾熱収縮率は−10〜5%である特徴をもつ。熱接着時の収縮が少ないために繊維交点での接着点のズレが少なく、接着点が強固になる。更に収縮率が負、いわゆる自己伸長の状態になると熱接着前に不織布中の繊維密度が低下し、嵩高に仕上がることによって柔く風合いの良い不織布ができる。収縮率が5%を超えると、接着強度が低下する方向で繊維密度が上がるために風合いが硬くなる方向である。一方、収縮率が−10%を下回り自己伸長になると、熱接着時に接着点がずれ、やはり不織布強度が低下する方向に移行する。
前述の高い破断伸度と低い乾熱収縮率を両立するためには、上述のように延伸ドラフトとして0.5〜1.2倍程度の定長熱処理を行うことによって達成される。更にドラフトが1.0倍未満、いわゆるオーバーフィード率を大きくするか、弛緩熱処理の温度を高くすると、自己伸張率が大きくなる傾向にあるが、適度な自己伸張性を付与することにより、不織布であれば嵩高に仕上がり、繊維構造体であれば低密度に仕上がる特徴を付与できる利点がある。120℃乾熱収縮率の好ましい範囲は−8〜−0.2%、更に好ましくは−6〜−1%である。
繊維断面は芯鞘断面、または偏芯芯鞘断面が好ましい。サイドバイサイド型では立体捲縮発現によるウェブ状態で収縮が大きく、また接着強度も小さくなる方向で、本発明の目指す効果は幾分減少され得る。また、中実繊維であっても中空繊維であってもよいし、丸断面に限定されることはなく、楕円断面、3〜8葉断面等の多葉断面、3〜8角形等の多角形断面など異形断面でもよい。
繊度は目的に応じて選択すればよく、特に限定されないが、一般的に0.01〜500デシテックス程度の範囲で用いられる。紡糸時に樹脂が吐出される口金の径を所定の範囲にすること等により、この繊度範囲を達成することができる。
繊維形成性樹脂成分と熱接着性樹脂成分の複合比は特に限定されないが、目的とする不織布または繊維構造体の強度、嵩、熱収縮率の要求に応じて選択される。繊維形成性樹脂成分/熱接着性樹脂成分の比が重量比で10/90〜90/10程度であることが好ましい。
特に、接着強力を高くするために、鞘成分の熱接着性樹脂成分は、メルトフローレイト(以下、MFRと記す)が1〜15g/10minの範囲にあることが好ましい。MFRは、熱融解時のポリマーの流動性を表す側面(大きいほど流動性がよい)とポリマーの分子量の目安となる側面(大きいほど分子量が小さい)があり、従来の熱接着性複合繊維ではMFRが一定以上大きくなければ熱接着温度での鞘成分の流動性が不十分で、強固な熱接着点を形成しないとされてきた。多くの場合は、MFRが20g/10min以上(190℃、21.18N下、ポリプロピレンの場合は230℃、21.18N下)のものが用いられているが、本発明の複合繊維によると、MFRが20g/10min未満であっても接着温度での流動性が良好で、かつ分子量を大きくできるために樹脂そのものの強度を上げることができるため、強固な熱接着点を形成することができる。MFRが20g/10min以上であってもその効果は同じであるが、特に本発明の特徴を生かすにはMFRが15g/10min以下であることが好ましい。ただし、MFRが1より小さければ、溶融紡糸における十分な曳糸性に劣り、紡糸断糸が起こり易いために好ましくない。従って、好ましいMFRの範囲は1〜15g/10min、更に好ましい範囲は2〜12g/10minである。当業者であれば複合繊維製造を行う前に各樹脂成分のMFRを測定することによって、上記の範囲に合致しそれぞれの成分に適切な樹脂を選択することができる。
繊維の形態は、マルチフィラメント、モノフィラメント、ステープルファイバー、チョップ、トウなど、使用目的に応じていずれの形態もとることができる。本発明の熱接着性複合繊維をカード工程を必要とするステープルファイバーとして使用する場合には、該複合繊維に良好なカード通過性を付与するために、捲縮数を適切な範囲とすることが望ましい。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定を受けるものでは無い。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度(IV)
ポリマーを一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解してから、常法に従って35℃にて求めた。
(2)メルトフローレイト(MFR)
ポリプロピレン樹脂はJIS―K7210条件14(230℃、21.18N)、それ以外の樹脂はJIS−K7210条件4(190℃、21.18N)に準じて測定した。なお、メルトフローレイトは溶融紡糸前のペレットを試料とし測定した値である。
(3)融点(Tm)、ガラス転移点(Tg)
TAインスツルメント・ジャパン(株)社製のサーマル・アナリスト2200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(4)繊度
JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(5)強度・伸度
JIS L 1015:2005 8.7.1法に記載の方法により測定した。本発明の繊維は定長熱処理の効率により、強伸度にバラツキを生じやすいので、単糸で測定する場合は測定点数を増やす必要がある。測定点数は50以上が好ましいため、ここでは測定点数を50とし、その平均値として定義する。
(6)捲縮数、捲縮率
JIS L 1015:2005 8.12.1〜8.12.2法に記載の方法により測定した。
(7)120℃乾熱収縮率
JIS L 1015:2005 8.15 b)において、120℃において実施した。
(8)ウェブ面積収縮率
エアレイド法により形成した熱接着性複合繊維100%からなる目付25g/m2、30cm径の円形の非熱処理ウェブを、所定の温度に維持した熱風乾燥機(佐竹化学機械工業株式会社製熱風循環恒温乾燥器:41−S4)中に2分間放置して熱処理を行い、収縮処理前のシート面積A0と収縮処理後の面積A1から下記の式により求め面積収縮率とする。
面積収縮率(%)=〔(A0−A1)/A0〕×100
(9)不織布強力(接着強力)
上記熱処理後ウェブから、幅5cm、長さ20cmの試験片を切り取り、つかみ間隔10cm、伸長速度20cm/minで測定した。接着強度は、引張破断力を試験片重量で除した値とした。
[実施例1]
芯成分(繊維形成性樹脂成分)にIV=0.64dl/g、Tg=70℃、Tm=256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分(熱接着性樹脂成分)にMFR=8g/10min、Tm=165℃(Tgは零度未満)のアイソタクティックポリプロピレン(PP)を用い、各々290℃、260℃となるように溶融したのち、公知の芯鞘複合繊維用口金を用いて芯:鞘=50:50の重量比率となるように複合繊維を形成し、吐出量1.0g/min/孔、紡糸速度900m/minにて紡糸し、未延伸糸を得た。これを、芯成分のガラス転移点より20℃高い90℃の温水中で1.0倍の定長熱処理を行い、ラウリルホスフェートカリウム塩/ポリオキシエチレン変成シリコン=80/20からなる油剤の水溶液に糸条を浸漬した後、スタッフイングボツクスを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、90℃で乾燥した後、繊維長5.0mmに切断した。切断前のトウで測定した単糸繊度は11.0dtex、強度1.3cN/dtex、伸度170%、120℃乾熱収縮率−1.9%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は0%、不織布強力は9.5kg/gであった。
[比較例1]
未延伸糸の温水中での定長熱処理を行わない他は、実施例1と同様に繊維を得た。切断前のトウで測定した単糸繊度は11.1dtex、強度1.2cN/dtex、伸度261%、120℃乾熱収縮率25.3%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は25%、不織布強力は8.3kg/gであった。
[比較例2]
吐出量を2.2g/min/孔とし、未延伸糸を温水中で2.2倍に延伸した他は、実施例1と同様に繊維を得た。切断前のトウで測定した単糸繊度は11.0dtex、強度2.5cN/dtex、伸度73%、120℃乾熱収縮率8.2%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は6.5%、不織布強力は1.3kg/gであった。
[比較例3]
吐出量を1.5g/min/孔とし、未延伸糸を温水中で1.5倍に延伸した他は、実施例1と同様に繊維を得た。切断前のトウで測定した単糸繊度は10.8dtex、強度1.8cN/dtex、伸度122%、120℃乾熱収縮率18.9%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は14%、不織布強力は5.1kg/gであった。
[実施例2]
芯成分(繊維形成性樹脂成分)にIV=0.64dl/g、Tg=70℃、Tm=256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分(熱接着性樹脂成分)にMFR=20g/10min、Tm=133℃(Tgは零度未満)の高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、各々290℃、250℃となるように溶融したのち、公知の芯鞘複合繊維用口金を用いて芯:鞘=50:50の重量比率となるように複合繊維を形成し、吐出量0.73g/min/孔、紡糸速度1150m/minにて紡糸し、未延伸糸を得た。これを、芯成分のガラス転移点より20℃高い90℃の温水中で1.0倍の定長熱処理を行い、ラウリルホスフェートカリウム塩/ポリオキシエチレン変成シリコン=80/20からなる油剤の水溶液に糸条を浸漬した後、押し込み型クリンパーを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、110℃で乾燥した後、繊維長5.0mmに切断した。切断前のトウで測定した単糸繊度は6.5dtex、強度0.8cN/dtex、伸度445%、120℃乾熱収縮率−1.6%であった。
これをエアレイドウェブとし、150℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は0%、不織布強力は7.9kg/gであった。
[実施例3]
芯成分(繊維形成性樹脂成分)にIV=0.64dl/g、Tg=70℃、Tm=256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分(熱接着性樹脂成分)にMFR=8g/10min、Tm=165℃(Tgは零度未満)のアイソタクティックポリプロピレン(PP)を80重量%と、MFR=8g/10min、Tm=98℃(Tgは零度未満)の無水マレイン酸−アクリル酸メチルグラフト共重合ポリエチレン(m−PE;無水マレイン酸=2重量%、アクリル酸メチル=7重量%)を20重量%とをブレンドしたペレットを用い、各々290℃、250℃となるように溶融したのち、公知の芯鞘複合繊維用口金を用いて芯:鞘=50:50の重量比率となるように複合繊維を形成し、吐出量0.73g/min/孔、紡糸速度1150m/minにて紡糸し、未延伸糸を得た。これを、芯成分のガラス転移点より20℃高い90℃の温水中で1.0倍の定長熱処理を行い、ラウリルホスフェートカリウム塩/ポリオキシエチレン変性シリコン=80/20からなる油剤の水溶液に糸条を浸漬した後、押し込み型クリンパーを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、110℃で乾燥した後、繊維長5.0mmに切断した。切断前のトウで測定した単糸繊度は11.1dtex、強度1.2cN/dtex、伸度150%、120℃乾熱収縮率−4.0%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は0%、不織布強力は11.4kg/gであった。
[実施例4]
芯成分(繊維形成性樹脂成分)にIV=0.64dl/g、Tg=70℃、Tm=256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分(熱接着性樹脂成分)にMFR=40g/10min、Tm=152℃、Tg=43℃の結晶性共重合ポリエステル(co−PET−1:イソフタル酸20モル%−テトラメチレングリコール50モル%共重合ポリエチレンテレフタレート)を用い、各々290℃、255℃となるように溶融したのち、公知の芯鞘複合繊維用口金を用いて芯:鞘=50:50の重量比率となるように複合繊維を形成し、吐出量0.71g/min/孔、紡糸速度1250m/minにて紡糸し、未延伸糸を得た。これを、芯成分のガラス転移点より20℃高い90℃の温水中で1.0倍の定長熱処理を行い、ラウリルホスフェートカリウム塩/ポリオキシエチレン変成シリコン=80/20からなる油剤の水溶液に糸条を浸漬した後、押し込み型クリンパーを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、90℃で乾燥した後、繊維長5.0mmに切断した。切断前のトウで測定した単糸繊度は5.7dtex、強度1.0cN/dtex、伸度400%、120℃乾熱収縮率−3.5%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させたウェブ面積収縮率は0%、不織布強力は11.0kg/gであった。
[比較例4]
芯成分(繊維形成性樹脂成分)にIV=0.64dl/g、Tg=70℃、Tm=256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分(熱接着性樹脂成分)にMFR=40g/10min、Tg=63℃(融点は無し)の非晶性共重合ポリエステル(co−PET−2:イソフタル酸30モル%−ジエチレングリコール8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート)を用い、各々290℃、250℃となるように溶融したのち、公知の芯鞘複合繊維用口金を用いて芯:鞘=50:50の重量比率となるように複合繊維を形成し、吐出量0.71g/min/孔、紡糸速度1250m/minにて紡糸し、未延伸糸を得た。これを65℃の温水中で1.0倍の定長熱処理を行い、ラウリルホスフェートカリウム塩/ポリオキシエチレン変成シリコン=80/20からなる油剤の水溶液に糸条を浸漬した後、押し込み型クリンパーを用いて9個/25mmの機械捲縮を付与し、55℃で乾燥した後、繊維長5.0mmに切断した。切断前のトウで測定した単糸繊度は5.7dtex、強度1.5cN/dtex、伸度180%であり、120℃乾熱収縮率は75%であった。
これをエアレイドウェブとし、180℃で熱接着させると収縮が大きく、ウェブ面積収縮率、不織布強力ともに測定不可であった。
本発明の熱接着性複合繊維は、PETを繊維形成性樹脂成分とするため、従来提案されている高接着性かつ低熱収縮性の熱接着性複合繊維に比べ、嵩高性と高い不織布強力を有し、更に接着強度を上げるために熱接着温度を高く設定することも可能となるので、熱接着不織布や繊維構造体を高速で生産することが可能となる。更に、高速紡糸のようなプロセスを必要としないので、エネルギーコストも低く、ドフィング切替のロスや断糸が少ないため歩留まりが向上するメリットも大きい。

Claims (7)

  1. 繊維形成性樹脂成分および熱接着性樹脂成分からなる複合繊維であって、繊維形成性樹脂成分がポリエチレンテレフタレートからなり、熱接着性樹脂成分が繊維形成性樹脂成分より20℃以上低い融点をもつ結晶性熱可塑性樹脂からなり、破断伸度が130〜600%、120℃乾熱収縮率が−10〜5%であることを特徴とする熱接着性複合繊維。
  2. 繊維形成性樹脂成分が芯成分、熱接着性樹脂成分が鞘成分となる芯鞘型複合繊維である請求項1記載の熱接着性複合繊維。
  3. 熱接着性樹脂成分がポリオレフィン系樹脂である、請求項1〜2のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
  4. 熱接着性樹脂成分が結晶性共重合ポリエステルである、請求項1〜2のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
  5. 熱接着性樹脂成分のメルトフローレイト(MFR)が1〜15g/10minであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
  6. 1800m/min以下の紡糸速度で引き取った未延伸糸を熱接着性樹脂成分のガラス転移点と繊維形成性樹脂成分のガラス転移点の双方より高い温度下0.5〜1.2の倍率で定長熱処理することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維の製造方法。
  7. 定長熱処理を温水中で行うことを特徴とする、請求項6記載の熱接着性複合繊維の製造方法。
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