JP2010209500A - ショートカットポリエステル複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】乾熱収縮率が十分に低い熱接着性の複合繊維であって、湿式不織布用途に好適に用いることができ、湿式不織布を得る際の面積収縮率も十分に低く、寸法安定性よく品位に優れた湿式不織布を得ることができるショートカットポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】溶融液晶形成性ポリエステルが芯部を形成し、脂肪族ポリエステル又は芳香族ポリエステルが鞘部を形成する芯鞘型のポリエステル複合繊維であって、溶融液晶形成性ポリエステルの融点は、鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点より30℃以上高く、〔(鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)−3〕℃における乾熱収縮率が1.0%以下であり、かつ捲縮を有しておらず、繊維長が1〜30mmであるショートカットポリエステル複合繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、芯部に溶融液晶形成性ポリエステルを配し、鞘部に芯部のポリエステルに比べて低融点のポリエステルを配した熱接着性を有するポリエステル複合繊維であって、湿式不織布用途に好適に使用することができるショートカットポリエステル複合繊維に関するものである。
従来、湿式不織布の構成繊維としては、パルプ、レーヨンが用いられており、近年ではポリエステル、ナイロン、ビニロンといった汎用合成繊維が多く使用されるようになっている。そして、湿式不織布を得る際には、これらの合成繊維を捲縮の付与されていないショートカット繊維とし、繊維を水中に分散させ、紙を抄くのと同様の方法で湿式抄紙し、不織布を作る方法がよく知られている。
上記の合成繊維として、芯部に高融点の成分を配し、鞘部に低融点の成分を配した複合繊維としたものも多く提案されている。このような複合繊維は、熱処理により鞘成分の低融点の成分が溶融して接着成分となる熱接着性の複合繊維である。
したがって、湿式不織布を得る際には、このような熱接着性の複合繊維とともに高融点のポリマーで構成された主体繊維となる他の繊維を用いる場合や、熱接着性の複合繊維のみを単独で用いる場合がある。
そして、従来、湿式不織布を得る際に用いることが好適な熱接着性の複合繊維として、イソフタル酸成分を共重合したポリエステルを鞘部に配し、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した芯鞘型複合繊維が広く用いられている。しかしながら、この複合繊維は鞘部のポリエステルが非晶性のものであったため、繊維の製造工程で十分な延伸、熱セットを施すことができず、熱収縮率の高いものであった。
熱接着性の複合繊維の熱収縮率が大きいものであると、湿式不織布を得る際に不織ウエブの状態で鞘成分を溶融させるための熱処理を施すと、熱接着性の複合繊維が大きく収縮することになる。これにより、熱処理前の不織ウエブから大きく収縮した不織布となり、得られる不織布は割れが生じたり、風合いや品位の劣るものとなるという問題があった。
そこで、特許文献1には、結晶融点が100℃以上であるε−カプロラクトン共重合ポリエステルを熱接着性成分として鞘部に配し、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した芯鞘型複合繊維であって、沸水収縮率が3%以下の熱接着性の複合繊維が提案されている。
特許文献1記載の熱接着性の複合繊維は、鞘部に結晶性の高いポリエステルを用いることで、繊維の製造工程における延伸、熱セット工程で鞘成分に十分な熱処理を施すことが可能となり、沸水収縮率を3%以下とすることができたものである。
特許文献1記載の複合繊維は、延伸、熱セット工程で鞘部の共重合ポリエステルには十分な熱処理を施すことはできたが、鞘部のポリエステルの融点から熱処理温度は140℃程度とする必要があり、芯部のポリエチレンテレフタレートは十分に熱処理が施されていなかった。このため芯部のポリエチレンテレフタレートの収縮があり、沸水収縮率は3%以下ではあるが、十分に低いものとはいえなかった。
特開平9−119019号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、乾熱収縮率が十分に低い熱接着性の複合繊維であって、湿式不織布用途に好適に用いることができ、湿式不織布を得る際の面積収縮率も十分に低く、寸法安定性よく品位に優れた湿式不織布を得ることができるショートカットポリエステル複合繊維を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、芯部に溶融液晶形成性ポリエステルを配した芯鞘型の複合繊維とすることにより、鞘部のポリエステルに結晶性のもののみならず、非晶性のものを用いても乾熱収縮率の極めて低い繊維となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、溶融液晶形成性ポリエステルが芯部を形成し、脂肪族ポリエステル又は芳香族ポリエステルが鞘部を形成する芯鞘型のポリエステル複合繊維であって、溶融液晶形成性ポリエステルの融点は、鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点より30℃以上高く、〔(鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)−30〕℃における乾熱収縮率が1.0%以下であり、かつ捲縮を有しておらず、繊維長が1〜30mmであることを特徴とするショートカットポリエステル複合繊維を要旨とするものである。
本発明のショートカットポリエステル複合繊維は、芯部に溶融液晶形成性ポリエステルを配した芯鞘型の複合繊維とすることにより、鞘部のポリエステルに結晶性のもののみならず、非晶性のものを用いても乾熱収縮率の極めて低い繊維となるものである。
このため、本発明のショートカットポリエステル複合繊維は、湿式不織布用途に好適に用いることができ、不織ウエブに熱処理を施して鞘部のポリエステルを溶融させる際の収縮が小さく、熱処理前の不織ウエブと熱処理後に得られた湿式不織布の面積を比較した面積収縮率が小さいものとなる。
このように、本発明のショートカットポリエステル複合繊維は、割れの生じていない品位に優れた湿式不織布を得ることが可能となるものである。また、得られる湿式不織布中には溶融液晶形成性ポリエステルからなる繊維が主体繊維として存在するため、長期に渡る耐熱性に優れた湿式不織布とすることが可能となるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のショートカットポリエステル複合繊維は、溶融液晶形成性ポリエステルが芯部を形成し、脂肪族ポリエステル又は芳香族ポリエステルが鞘部を形成する芯鞘型のポリエステル複合繊維である。
まず、芯部を形成する溶融液晶形成性ポリエステルは、加熱して溶融した際に光学異方性(液晶性)を呈するポリエステルを指す。溶融液晶形成性ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、偏光顕微鏡で試料の透過光を観察することにより認定できる。
溶融液晶形成性ポリエステルとしては、例えば(a)芳香族オキシカルボン酸の重合物、(b)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、脂肪族ジオールの重合物、(c)(a)と(b)の共重合物等が挙げられる。
ここで、芳香族オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
溶融液晶形成性ポリエステルの融点は、通常の溶融紡糸装置にて紡糸可能な温度範囲であって、後述する鞘部のポリエステルとの融点差を満足するものであればよいが、160℃〜300℃であることが好ましく、中でも180〜290℃であることが好ましい。
本発明で用いる溶融液晶形成性ポリエステルとしては、中でも2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸からなる上野製薬社製液晶ポリマー「A8100」、「A5000」や、パラヒドロキシ安息香酸とエチレンテレフタレートからなるユニチカ社製ロッドラン「LC-3000」、「LC-5000」が好ましい。
次に、本発明のポリエステル複合繊維の鞘部を形成するポリエステルは、脂肪族ポリエステル又は芳香族ポリエステルである。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリ−α−ヒドロキシ酸、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリ−(β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸)などのポリ−β−ヒドロキシアルカノエート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリ−ω−ヒドロキシアルカノエートなどが挙げられる。
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられ、所望の融点とするためにイソフタル酸、スルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ε−カプロラクトンなどの第三成分を共重合した共重合ポリエステルが挙げられる。
そして、本発明のポリエステル複合繊維においては、鞘部のポリエステルは、結晶性、非晶性のいずれのものであってもよい。すなわち、本発明のポリエステル複合繊維は芯部に溶融液晶形成性ポリエステルを配したものであるので、紡糸工程においてノズル孔を通過するときのせん断応力により溶融液晶形成性ポリエステルは高度に配向する。これにより、複合繊維の熱収縮率は十分に低いものとなり、通常、ショートカット繊維の製造工程で熱収縮率を低下させるために必要となる延伸、熱セット工程を行う必要がない。したがって、鞘部のポリエステルとして結晶性のもののみならず、非晶性のものも使用することが可能となるものである。
本発明のポリエステル複合繊維は、湿式不織布を得る際の熱接着処理により、芯部の溶融液晶形成性ポリエステルは溶融させず、主体繊維とするものであるため、本発明のポリエステル複合繊維の鞘部を形成するポリエステルは、溶融液晶形成性ポリエステルの融点より30℃以上低い融点又は軟化点を有していることが必要である。芯部と鞘部の融点差が30℃未満の場合、熱接着処理により芯部も溶融してしまい、主体繊維とすることが困難となる。
本発明のポリエステル複合繊維は、芯鞘型の複合繊維であるが、単繊維の断面形状が芯鞘形状を呈しているものである。芯鞘形状の例としては、同心芯鞘、偏芯芯鞘のいずれでもよく、また芯部が複数個存在する海島型のものであってもよい。
また、本発明のポリエステル複合繊維の芯鞘比率は、面積比(芯:鞘)で10:90〜90:10であることが好ましく、中でも20:80〜80:20であることが好ましい。溶融液晶形成性ポリエステルの比率が10%未満であると、芯部の吐出分布が悪くなり芯部の存在しない部分が発生し、繊維の乾熱収縮率が高くなるため好ましくない。一方、溶融液晶形成性ポリエステルの比率が90%を超えると、鞘部のポリエステルの割合が少なくなりすぎ、熱接着成分が少なくなり、熱接着性繊維としての機能を果たさなくなるため好ましくない。
そして、本発明のポリエステル複合繊維は、〔(鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)−30〕℃における乾熱収縮率が1.0%以下であり、中でも0.5%以下、さらには0.3%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
乾熱収縮率が1.0%を超えると、不織布を得る際に不織ウエブを熱処理する際の収縮が大きくなり、熱処理前の不織ウエブの面積と得られた不織布の面積の差が大きく、不織布に割れが生じたり、品位に劣るものとなる。
なお、本発明における乾熱収縮率は以下のようにして測定するものである。
複合繊維を構成する単繊維の繊維長を無荷重で測定し、次に〔(鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)−30〕℃で15分間熱処理を行い、熱処理後の繊維長を同様に測定する。そして熱処理前の繊維長(A)と熱処理後の繊維長(B)から下式にて乾熱収縮率を算出する。
乾熱収縮率(%)=〔(A−B)/A〕×100
さらに、本発明のポリエステル複合繊維は、本発明のポリエステル複合繊維を50質量%以上含有する目付50g/mの不織ウエブを作成し、〔(ポリエステル複合繊維の鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)+30〕℃で5分間熱処理を行い、不織布を得る際に、下記(イ)式で算出する面積収縮率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.0%以下、さらには0.5%以下であることが好ましい。
面積収縮率(%)=〔(熱処理前の不織ウエブの面積−熱処理後に得られた不織布の面積)/熱処理前の不織ウエブの面積〕×100 ・・・(イ)
面積収縮率が2.0%以下であることで、得られる不織布に割れが生じることがなく、寸法安定性よく品位に優れた湿式不織布を得ることが可能となる。
そして、本発明のポリエステル複合繊維は、捲縮を有しておらず、繊維長が1〜30mmにカットされたショートカット繊維(短繊維)である。
本発明のポリエステル複合繊維中には、各種顔料、染料、着色剤、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、無機化合物粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を使用用途に応じて混合することができる。
次に本発明のポリエステル複合繊維の製法例について説明する。
溶融液晶形成性ポリエステルと鞘部を形成するポリエステルとを原料とし、それぞれ別の溶融紡糸機に供給して各樹脂の融点より20℃以上高い温度で溶融混練し、続いて別々の計量孔にて計量し、口金背面で溶融液晶形成性ポリエステルが芯に、鞘部を形成するポリエステルが鞘になるように合流させ、同一吐出孔から吐出させる。そのようにして吐出させた紡糸糸条を横吹付装置や環状吹付装置の公知の冷却装置を用いて冷却した後、油剤を付与し、2000m/分未満の低速紡糸で巻き取る。溶融液晶形成性ポリエステルは紡糸工程においてノズル細孔を通過する時のせん断応力により、高度に配向する。このため、延伸工程、熱セット工程ともに省略することができる。そして、得られた糸条を集束して糸条束とした後、繊維長1〜30mmの長さとなるようにカットする。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における特性値等の測定法及び評価方法は以下のとおりである。
(1)芯部及び鞘部のポリエステルの融点又は軟化点
融点:パーキンエルマー社製DSCを用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
軟化点:ジャパンハイテック社製顕微鏡用冷却加熱ステージ10002を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
(2)繊維の乾熱収縮率
前記の方法で測定、算出した。
(3)面積収縮率
得られたショートカットポリエステル複合繊維をパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間攪拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙し、得られたショートカットポリエステル複合繊維を100質量%含有する目付50g/mの不織ウエブを作成し、前記の方法で測定、算出した。
(4)耐熱性
得られたショートカットポリエステル複合繊維をパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間攪拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙し、得られたショートカットポリエステル複合繊維を100質量%含有する目付50g/mの不織ウエブを作成する。そして、(鞘部の融点+30)℃に加熱された金属ドラムとフェルト間で1分間熱処理を行い、不織布を得た。
得られた不織布の強度を試料幅25mm、測定長100mm、引っ張り速度100mm/分の条件で測定した。
次に、得られた不織布をオーブン中に無荷重で載置し、150℃で500時間熱処理を行った。熱処理後の不織布の強度を熱処理前と同様にして測定した。そして、熱処理前の不織布の強度(C)と熱処理後の不織布の強度(D)から下式にて強度保持率を算出した。強度保持率が90%以上であれば耐熱性に優れていると判断した。
強度保持率(%)=〔(C−D)/C〕×100
実施例1
芯部を形成する溶融液晶形成性ポリエステルとして、上野製薬社製液晶ポリマー「A8100」(融点220℃)を用い、鞘部を形成するポリエステルとして、イソフタル酸を33モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET)(軟化点130℃)を用い、それぞれのチップを常法により乾燥した後、別々の溶融押出機に供給し、270℃で溶融混練した。
続いて別々の計量孔にて複合比率(面積比率)が50:50となるように計量し、280℃に加熱された口金の背面で芯成分と鞘成分を合流させ、同一吐出孔から吐出させた。そして、600m/分の速度で延伸することなく糸条を捲き取り、単糸繊度14dtexのポリエステル複合繊維を得た。次いで、このポリエステル複合繊維の糸条を60万dtexに収束した後、繊維長5mmにカットし、ショートカットポリエステル複合繊維を得た。
実施例2〜3、比較例1
芯部の溶融液晶形成性ポリエステルと鞘部の共重合PETの複合比率を表1に示す値となるように種々変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。
実施例4
鞘部を形成するポリエステルとして、イソフタル酸を25モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(軟化点185℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例5
鞘部を形成するポリエステルとして、イソフタル酸を40モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(軟化点110℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例6
鞘部を形成するポリエステルとして、ブタンジオール40モル%、ε−カプロラクトン15モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート(融点160℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例7
芯部を形成する溶融液晶形成性ポリエステルとして、上野製薬社製液晶ポリマー「A5000」(融点280℃)を用い、鞘部ポリマーとしてイソフタル酸を33モル%共重合した共重合PET(軟化点130℃)を用い、それぞれのチップを常法により乾燥した後、それぞれ別の溶融押出機に供給し、300℃で溶融混練した。
続いて別々の計量孔にて複合比率(面積比率)が50:50となるように計量し、310℃に加熱された口金の背面で芯成分と鞘成分を合流させ、同一吐出孔から吐出させた。そして、600m/分の速度で延伸することなく糸条を捲き取り、単糸繊度14dtexのポリエステル複合繊維を得た。次いで、このポリエステル複合繊維の糸条を60万dtexに収束した後、繊維長5mmにカットし、ショートカットポリエステル複合繊維を得た。
実施例8
芯部を形成する溶融液晶形成性ポリエステルとして、ユニチカ社製液晶ポリマー「ロッドランLC-3000」(融点185℃)を用い、鞘部ポリマーとしてイソフタル酸を33モル%共重合した共重合PET(軟化点130℃)を用い、それぞれのチップを常法により乾燥した後、それぞれ別の溶融押出機に供給し、270℃で溶融混練した。
続いて別々の計量孔にて複合比率(面積比率)が50:50となるように計量し、280℃に加熱された口金の背面で芯成分と鞘成分を合流させ、同一吐出孔から吐出させた。そして、600m/分の速度で延伸することなく糸条を捲き取り、単糸繊度14dtexのポリエステル複合繊維を得た。次いで、このポリエステル複合繊維の糸条を60万dtexに収束した後、繊維長5mmにカットし、ショートカットポリエステル複合繊維を得た。
実施例9
芯部を形成する溶融液晶形成性ポリエステルとして、ユニチカ社製液晶ポリマー「ロッドランLC-5000」(融点285℃)を用い、鞘部ポリマーとしてイソフタル酸を33モル%共重合した共重合PET(軟化点130℃)を用い、それぞれのチップを常法により乾燥した後、それぞれ別の溶融押出機に供給し、300℃で溶融混練した。
続いて別々の計量孔にて複合比率(面積比率)が50:50となるように計量し、310℃に加熱された口金の背面で芯成分と鞘成分を合流させ、同一吐出孔から吐出させた。そして、600m/分の速度で延伸することなく糸条を捲き取り、単糸繊度14dtexのポリエステル複合繊維を得た。次いで、このポリエステル複合繊維の糸条を60万dtexに収束した後、繊維長5mmにカットし、ショートカットポリエステル複合繊維を得た。
比較例2
鞘部ポリマーとして、イソフタル酸を20モル%共重合したPET(融点200℃)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
比較例3
芯部を形成するポリエステルとしてPET(融点255℃)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
比較例4
芯部を形成するポリエステルとしてPET(融点255℃)を用いたこと以外は実施例6と同様に行った。
実施例1〜9及び比較例1〜4で得られたショートカットポリエステル複合繊維の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9のショートカットポリエステル複合繊維は、紡糸操業性よく得ることができ、乾熱収縮率、面積収縮率ともに十分に小さく、寸法安定性よく湿式不織布を得ることができるものであった。そして、強度保持率も高く、長期間に渡る耐熱性にも優れるものであった。
一方、比較例1のショートカットポリエステル複合繊維は、芯部の溶融液晶形成性ポリエステルの割合が少なすぎたため、乾熱収縮率、面積収縮率ともに高いものとなった。さらに、強度保持率が低く、耐熱性に劣るものであった。比較例2のショートカットポリエステル複合繊維は、芯部の溶融液晶形成性ポリエステルの融点が鞘部を形成するポリエステルの軟化点より20℃しか高くないものであったため、不織ウエブを作成した後の熱処理により芯部と鞘部ともに溶融した。このため、芯部の溶融液晶形成性ポリエステルを主体繊維とすることができず、面積収縮率の高いものとなった。比較例3、4のショートカットポリエステル複合繊維は、芯部にPETを用いたものであったため、鞘部に非晶性ポリエステル、結晶性ポリエステルを用いた場合ともに伸度が高く、乾熱収縮率、面積収縮率ともに高いものとなった。さらに強度保持率が低く、耐熱性に劣るものであった。

Claims (2)

  1. 溶融液晶形成性ポリエステルが芯部を形成し、脂肪族ポリエステル又は芳香族ポリエステルが鞘部を形成する芯鞘型のポリエステル複合繊維であって、溶融液晶形成性ポリエステルの融点は、鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点より30℃以上高く、〔(鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)−30〕℃における乾熱収縮率が1.0%以下であり、かつ捲縮を有しておらず、繊維長が1〜30mmであることを特徴とするショートカットポリエステル複合繊維。
  2. 下記条件(1)で示す面積収縮率が2.0%以下である請求項1記載のショートカットポリエステル複合繊維。
    条件(1):請求項1記載のショートカットポリエステル複合繊維を50質量%以上含有する目付50g/mの不織ウエブを作成し、〔(ポリエステル複合繊維の鞘部を形成するポリエステルの融点又は軟化点)+30〕℃で5分間熱処理を行い、不織布を得る際に下記(イ)式で算出する面積収縮率。
    面積収縮率(%)=〔(熱処理前の不織ウエブの面積−熱処理後に得られた不織布の面積)/熱処理前の不織ウエブの面積〕×100 ・・・(イ)
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