JP2007197779A - 高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法およびCr含有鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板を提供する。
【解決手段】成分組成は、C:0.020%未満、Si:0.10%以上0.50%未満、Mn:2.00%未満、P:0.060%未満、S:0.008%未満、Ni:1.00%未満、Cr:12.0%以上16.0%未満、N:0.020%未満、Nb:10×(C+N)%以上0.80%未満、Mo:0.80%以上3.00%未満を含み、残部がFeおよび不可避的不純物から冷延鋼板を焼鈍後冷却する際に、下記式を満たす冷却速度にて冷却する。
50×[Nb]2≦R ただし、[Nb]:Nb含有量[mass%]、R:500℃までの冷却速度[℃/sec]
このように、仕上げ焼鈍後の冷却速度を鋼のNb含有量に適するように限定することにより、冷却中のNb系析出物の析出が抑制され、優れた高温強度と靱性を両立できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、Cr含有鋼板及びCr含有鋼板の製造方法に係り、特に自動車やオートバイの排気管、プラントの排気ダクト、熱交換器、燃料電池等の高温環境下で使用される部材用として好適な、高温強度と靱性を兼ね備えたCr含有鋼板及び及びCr含有鋼板の製造方法に関する。
自動車の排気系環境で使用される、例えばエキゾーストマニホールド、排気パイプ、コンバータケース等に代表される排気部材には、高温環境で特性を保つための耐熱性と、限られたスペースに配置されるための成形性が要求される。このような用途に、室温では軟質で成形性に優れ、高温耐力も比較的高い、NbとSiを含むCr含有鋼、例えば、Type429鋼(14Cr-0.9Si-0.4Nb鋼)が多く使用されている。しかし、自動車排気ガス規制の強化により、排気ガスが高温化(900〜1000℃)するとType429鋼は高温耐力が不足するという問題がある。
このような問題に対しては、Type429鋼よりも合金元素の添加量を増加させたSUS444鋼(18Cr-2Mo-Nb鋼)などが使用される。しかし、SUS444鋼は、Type429鋼に比べて室温における加工性が低下する上に、靱性が乏しいために脆性破壊を起こしやすくなるという問題がある。
例えば、特許文献1では、0.6%を超えてNbを添加することにより高温強度をさらに向上させたステンレス鋼板が開示されている。しかしながら、特許文献1では、MoやCrを含め、合金元素が多量に含まれているために靱性が乏しく、製造工程においては熱延や焼鈍後の冷却速度が遅いとNb炭窒化物やLaves相の析出・成長が起こり、さらに靱性が低下する原因となる。また、Nb等の固溶強化によって優れた高温強度を発揮する材料は析出によって固溶量が減少すると、同じ添加量でも高温強度が低下してしまう可能性がある。このため、特許文献1では、最終仕上げ焼鈍において加熱後600℃まで2℃/sec以上で冷却することで靱性低下を抑制することを開示している。しかしながら、Nbが多量に含まれる場合、その析出速度は非常に大きくなり、仕上げ焼鈍後の冷却を前述の2℃/sec以上で行っても、析出を十分に抑制できずに靱性が低下する場合がある。
特許第2923825号
以上のように、Cr含有鋼の耐熱性向上のために合金元素を多量に添加する場合は、合金元素が少ない場合に比べて靱性が低下する上に、製造工程における析出によっても靱性が低下するという課題がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法およびCr含有鋼板を提供することを目的とする。
なお、本発明において「高温強度に優れる」とは900℃の高温耐力が17MPa以上であることを、また、「靱性に優れる」とは板厚2mmの鋼板のVノッチシャルピー試験(0℃)における脆性破面率が0%であることを示すものとする。
本発明者らは前述の課題を解決するために、Nbを含んだ高温強度に優れるCr含有鋼板を、靱性の低下をさせずに製造する方法について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、仕上げ焼鈍後の冷却速度を鋼のNb含有量に適するように限定することにより、冷却中のNb系析出物の析出が抑制され、優れた高温強度と靱性を両立できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、C:0.020%未満、Si:0.10%以上0.50%未満、Mn:2.00%未満、P:0.060%未満、S:0.008%未満、Ni:1.00%未満、Cr:12.0%以上16.0%未満、N:0.020%未満、Nb:10×(C+N)%以上0.80%未満、Mo:0.80%以上3.00%未満を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる冷延鋼板を焼鈍後冷却するにあたり、冷却速度が下記式を満たすように冷却することを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
50×[Nb]2≦R ただし、[Nb]:Nb含有量[mass%]、R:500℃までの冷却速度[℃/sec]
[2]前記[1]において、前記鋼板が、さらに、mass%で、Cu:1.00%未満、Ti:0.50%未満、V:0.50%未満、B:0.0100%未満のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記鋼板が、さらに、mass%で、W:5.00%未満、Co:3.00%未満、Ta:3.00%未満のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記鋼板が、さらに、mass%で、Al:2.00%未満を含むことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記鋼板が、さらに、mass%で、REM:0.10%未満、Zr:0.50%未満のうちから選ばれた1種または2種を含むことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべてmass%である。
本発明によれば、Nbの効果を最大限に引き出すことにより高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板が得られる。そして本発明のCr含有鋼板は、高温強度と靱性に優れるため、例えば自動車排気部材用として好適な部材が安価に得られ、産業上、大きな効果をもたらすことができる。また、本発明鋼板は同様の特性が要求される、主に高温環境で使用されるような部材としても好適であり、工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明者らが行った基礎的な実験結果について説明する。0.01%C-0.01%N-0.3%Si-0.3%Mn-15%Cr鋼に対して、Nb含有量と仕上げ焼鈍後の冷却速度を種々変化させて冷延焼鈍板(板厚:2mm)作製した。その際、板厚5mmとなるように熱間圧延し、熱延後に950〜1100℃の温度で熱延板焼鈍を施し、通常行われる酸洗及び圧延率60%の冷間圧延を行い、950〜1100℃の温度で仕上げ焼鈍を行った。
以上により得られた冷延焼鈍板について、0℃におけるVノッチシャルピー試験片の脆性破面率を測定した。本発明では、靱性をVノッチシャルピー試験(0℃)における脆性破面率で評価し、脆性破面率(%)が0%であるものを良好とした。図1は、靱性におよぼすNb含有量と仕上げ焼鈍後冷却速度(500℃まで)の関係を示すものである。なお、図1において、図中の数字は脆性破面率(%)を示している。
図1より、脆性破面率(0℃):0%を満たす条件を求めると下式のようになる。
50×[Nb]2≦R ただし、[Nb]:Nb含有量[mass%]、R:500℃までの冷却速度[℃/sec]
以上の知見に基づき、本発明においては、以下に示す成分組成に制御し、仕上げ焼鈍後の冷却速度を鋼のNb含有量に応じて制御することを特徴とし、具体的には50×[Nb]2[mass%]≦R[℃/sec]を満たすように冷却するものとする。
次に、本発明の成分組成について説明する。
(1)C:0.020%未満
Cは鋼の強度を増加させる元素であるが、0.020%以上含むと靱性および成形性の低下が顕著となるため、0.020%未満とする。成形性を考慮すると、C含有量は低いほど好ましく、好ましくは0.008%以下である。
(2)Si:0.10%以上0.50%未満
Siは脱酸剤としての作用を有するとともに、高温での耐酸化性を向上させる元素であり、このような効果は0.10%以上の添加で認められる。しかしながら、過剰な添加は成形性の低下を招くため、0.50%未満とする。好ましくは0.10%以上0.45%未満である。
(3)Mn:2.00%未満
Mnは脱酸剤としての作用を有するとともに、酸化皮膜の密着性を向上させる元素である。しかしながら、過剰に添加されると粗大なMnSを形成し、成形性、耐食性を低下させる。以上より、本発明では2.00%未満とする。好ましくは1.00%未満である。
(4)P:0.060%未満
Pは成形性、靱性を低下させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましいが、脱Pコストの観点から、0.060%未満とする。好ましくは0.030%未満である。
(5)S:0.008%未満
Sは耐食性を低下させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましいが、脱Sコストの観点から、0.008%未満とする。好ましくは0.005%未満である。
(6)Ni:1.00%未満
Niは靱性を向上させる元素であるが、過剰な添加は原料コストの増大を招くので1.00%未満とする。好ましくは0.01%以上0.80%未満である。
(7)Cr:12.0%以上16.0%未満
Crは耐食性、耐酸化性を向上させる元素であり、このような効果は12.0%以上の添加で認められる。ただし、過剰に添加されると靱性を低下させるので、16.0%未満とする。好ましくは13.0%以上16.0%未満である。
(8)N:0.020%未満
Nは鋼の靱性および成形性を低下させる元素であり、0.020%以上含むと靱性および成形性の低下が顕著となる。このため、0.020%未満とする。好ましくは0.010%未満である。
(9)Nb:10×(C+N)以上0.80%未満
NbはC、Nを固定することにより成形性、耐食性等を向上させ、また鋼に固溶することにより高温強度を高める効果を有する。このような効果は10×(C+N)以上の含有で認められる。しかしながら、過剰な添加は靱性の低下を招くため0.80%未満とする。好ましくは0.20%以上0.70%未満である。
(10)Mo:0.80%以上3.00%未満
Moは鋼に固溶することにより高温強度および耐食性を高める効果を有する。このような効果は0.80%以上の添加で認められる。しかしながら、3.00%以上含むと成形性が低下し、原料コストの増大も招くため、3.00%未満とする。好ましくは1.00%以上2.50%未満である。
また、本発明では、Nbを含んだ高温強度にすぐれたCr含有鋼板を、靱性を低下させずに製造するために、上述した通り、Nb含有量と仕上げ焼鈍後の冷却速度は式(1)の関係を満たすものとする。
50×[Nb]2≦R ・・・(1)
ただし、[Nb]:Nb含有量[mass%]、R:500℃までの冷却速度[℃/sec]
式(1)を満足しない場合には図1に示したように、析出物による靱性の低下が顕著となる。ここで、500℃までの冷却速度を規定したのは、500℃未満では元素の拡散が非常に遅くなり、冷却中の析出を考慮しなくても問題ないからである。
以上より、本発明の鋼板は、上記の必須添加元素で目的とする特性が得られるが、所望の特性に応じて以下の元素を含有することができる。
(11)Cu:1.00%未満、Ti:0.50%未満、V:0.50%未満、B:0.0100%未満のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ti、V、Bはいずれも加工性、成形性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して含むことができる。
Cuは成形性および耐食性を向上させる元素である。このような効果は0.05%以上の添加で顕著となるが、1.00%以上添加するとε-Cuが析出し脆化する。よって、含有する場合は、1.00%未満とする。好ましくは0.05%以上0.10%未満である。
Tiは成形性を向上させる元素である。このような効果は0.02%以上で顕著となるが、0.50%以上添加すると粗大なTi(C、N)が析出し、表面性状を劣化させる。よって、含有する場合は、0.50%未満とする。好ましくは0.02%以上0.40%未満である。
Vは成形性を向上させる元素である。このような効果は0.05%以上で顕著となるが、0.50%以上添加すると、粗大なV(C、N)が析出し、表面性状を劣化させる。よって、含有する場合は、0.50%未満とする。好ましくは0.05%以上0.40%未満である。
Bは加工性、特に2次加工性を向上させる元素である。このような効果は0.0005%以上で顕著となるが、0.0100%以上添加するとBNが析出し、加工性が低下する。よって、含有する場合は、0.0100%未満とする。好ましくは0.0005%以上0.0050%未満である。
(12)W:5.00%未満、Co:3.00%未満、Ta:3.00%未満のうちから選ばれた1種または2種以上
W、Co、Taはいずれも高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて含むことができる。このような効果は0.50%以上の添加で顕著となるが、Wは5.00%以上、Coは3.00%以上、Taは3.00%以上添加すると鋼が脆化する。よって、含有する場合は、Wは5.00%未満、Coは3.00%未満、Taは3.00%未満とする。好ましくは、Wは0.80%以上3.00%未満、Coは0.80%以上2.00%未満、Taは0.80%以上2.00%未満である。
(13)Al:2.00%未満
Alは脱酸剤としての作用を有し、製鋼過程においてAl脱酸を行う場合は不可避的に含まれるが、必要に応じて積極的に添加してもよい。Alは耐酸化性を向上させる元素であり、0.10%以上添加すると、その効果が顕著となるが、2.00%以上添加すると加工性が著しく低下する。よって、含有する場合は、2.00%未満とする。耐酸化性向上を目的とする場合、好ましくは0.30%以上2.00%未満、より好ましくは0.30%以上1.50%未満である。
(14)REM:0.10%未満、Zr:0.50%未満のうちから選ばれた1種または2種
REM(希土類元素)、Zrはいずれも耐酸化性を向上させる元素であり、本発明では、必要に応じ、1種または2種を選択して含むことができる。このような効果はREMを0.03%以上、Zrを0.05%以上添加することで顕著となるが、REMを0.10%以上、Zrを0.50%以上添加すると、鋼が顕著に脆化する。よって、含有する場合は、REMは0.10%未満、Zrは0.50%未満とする。好ましくはREMは0.03%以上0.08%未満、Zr:0.10%以上、0.40%未満である。
上記以外の残部はFe及び不可避的不純物とする。
次に本発明の高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法について説明する。
まず、転炉、電気炉等で上記の化学成分範囲に調整された溶鋼を溶製する。場合によっては、強攪拌・真空酸素脱炭処理(SS−VOD)により2次精錬を行うのが好適である。次いで、上記溶鋼から連続鋳造または造塊でスラブを溶製する。鋳造方法は、生産性、品質の面から連続鋳造が好ましい。
鋳造により得られたスラブは、必要により再加熱し、熱間圧延し、800〜1100℃の温度で熱延板焼鈍したのち酸洗する。場合によっては、熱延板焼鈍は省略してもよい。
酸洗された熱延板は冷間圧延、仕上げ焼鈍、冷却、酸洗の各工程を順次経て、冷延焼鈍板とする。
冷間圧延時の圧延率は、所望の機械特性を得るためには50%以上とすることが好ましい。仕上げ焼鈍は、生産性の向上、仕上げ焼鈍後の冷却速度制御の容易性という観点から連続焼鈍が好ましい。酸洗は、例えば、硫酸電解等、通常行われている手段を用いて行うことができる。また、冷間圧延は1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延としてもよい。冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の工程は繰り返し行ってもよい。さらに光沢性が要求される場合にはスキンパス等を施しても加工性の良好な鋼板として製造できる。
ここで、仕上げ焼鈍後の冷却は、上述した通り、冷却速度を鋼のNb含有量に応じて、50×[Nb]2[mass%]≦R[℃/sec]を満たすように制御して行うものとする。冷却方法については特に限定されるものではなく、上記冷却速度を制御できるものであればよく、例えば、仕上げ焼鈍後の鋼板について、高速での通板、空気の吹き付け、水の吹き付けあるいは水槽内での通板といった方法を単独、あるいは組み合わせで用いることができる。
表1に示す成分組成を有する種々のCr含有鋼30kgをアルゴン雰囲気の下で溶製した。得られた鋼塊を1200℃に加熱後、熱間圧延により板厚5mmの熱延板とし、800〜1100℃の熱延板焼鈍と酸洗処理を施した。次いで、冷間圧延により板厚2mmの冷延板とし、800〜1100℃の仕上げ焼鈍後、保熱や放冷、空気吹き付け、水冷などにより表1に示す冷却速度にて制御冷却を行い、再度、酸洗処理を施し冷延焼鈍板を得た。
このようにして得られた冷延焼鈍板について、以下に記載の評価方法に基づき、高温強度、靱性を評価した。
Figure 2007197779
(1)高温強度
各冷延焼鈍板からJIS Z 2201に規定された13号B試験片を各2本ずつ採取(圧延方向を引張方向とした)し、JIS G 0567の規定に準拠して、試験温度:900℃、歪速度:0.3%/minの条件で高温引張試験を実施した。900℃における0.2%耐力(σ0.2at 900℃)を測定し、2本の平均値を求め、σ0.2 at 900℃が17MPa以上を良好(○)、17MPa未満を不良(×)と判断した。
(2)靱性
各冷延焼鈍板からJIS Z 2202に規定された4号試験片(ただし幅は2mmとした)を各3本ずつ採取(圧延方向に採取、衝撃方向は圧延幅方向、ただし、試験片の幅は冷延焼鈍板の板厚である)し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:0℃の条件でシャルピー衝撃試験を実施した。0℃における脆性破面率(B)を測定し、3本とも脆性破面率(B)が0%の場合を良好(○)、それ以外の場合を不良(×)と判断した。
以上から得られた結果を表2に示す。
Figure 2007197779
表2より、本発明例であるNo.1からNo.29では、冷却中の析出による靱性の低下を抑制できており、優れた高温強度と靱性を両立することができている。
一方、比較例であるNo.30からNo.42では、高温強度あるいは靱性のどちらかが劣っている。No.30およびNo.32はCあるいはNの量が本発明範囲外と高いため、炭窒化物が多量に析出し、靱性が低下している。No.31はP量が本発明範囲外と高いために靱性が低下している。No.33はNb量が本発明範囲外と低いために、目標の高温強度が得られていない。No.34はNb量が本発明範囲外と高いために、析出物の量が多くなり靱性が低下している。No.35からNo.40は各元素が過剰に添加されているために脆化している。No.41およびNo.42は仕上げ焼鈍後の冷却速度が本発明範囲外と小さいために、冷却中に析出が起こり靱性が低下している。
自動車やオートバイの排気管、プラントの排気ダクト、熱交換器、燃料電池等を中心に、耐熱性、成形性、高温強度および靱性が要求される高温環境で使用されるような部材として好適である。
靱性におよぼすNb量と冷却速度との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. mass%で、C:0.020%未満、Si:0.10%以上0.50%未満、Mn:2.00%未満、P:0.060%未満、S:0.008%未満、Ni:1.00%未満、Cr:12.0%以上16.0%未満、N:0.020%未満、Nb:10×(C+N)%以上0.80%未満、Mo:0.80%以上3.00%未満を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる冷延鋼板を焼鈍後冷却するにあたり、冷却速度が下記式を満たすように冷却することを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
    50×[Nb]2≦R ただし、[Nb]:Nb含有量[mass%]、R:500℃までの冷却速度[℃/sec]
  2. 前記鋼板が、さらに、mass%で、Cu:1.00%未満、Ti:0.50%未満、V:0.50%未満、B:0.0100%未満のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼板が、さらに、mass%で、W:5.00%未満、Co:3.00%未満、Ta:3.00%未満のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼板が、さらに、mass%で、Al:2.00%未満を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板が、さらに、mass%で、REM:0.10%未満、Zr:0.50%未満のうちから選ばれた1種または2種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする高温強度と靱性に優れたCr含有鋼板。
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