JP2009001834A - 高温強度、耐熱性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.020mass%未満、Si:0.10mass%超0.50mass%未満、Mn:2.0mass%未満、P:0.040mass%未満、S:0.010mass%未満、Cr:12.0mass%以上16.0mass%未満、Ni:1.00mass%未満、N:0.020mass%未満、Nb:10×(C+N)以上1.00mass%未満、Mo:0.80mass%超3.0mass%未満、W:1〜5mass%、(Mo+W):3.0〜5.8mass%、Ti:0.01〜0.3mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する耐熱性と加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】図2
Description
C:0.006mass%、N:0.007mass%、Si:0.3mass%、Mn:0.4mass%、Cr:15mass%、Nb:0.45mass%、Mo:1.5mass%およびW:2.7mass%の成分組成を有する鋼をベースとし、これにTi含有量を0.01〜0.32mass%の範囲で変化させた鋼を溶製し、熱間圧延し、冷間圧延して板厚2mmの冷延板を作製し、この冷延板について、後述する実施例と同様にして、常温における伸びとr値を測定した。
本発明は、上記知見に基き開発したものである。
C:0.020mass%未満
Cは、鋼の強度を増加させる元素である。しかし、C含有量が0.020mass%以上になると、常温における靭性および加工性の低下が大きくなる。よって、加工性を重視する本発明では、C含有量を0.020mass%未満とする。なお、加工性を向上する観点からは、C含有量は低いほど好ましく、0.008mass%以下とするのが望ましい。ただし、所望の強度を確保するためには、Cは0.001mass%以上含有するのが好ましい。より好ましいCの範囲は0.002〜0.008mass%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、900℃以上の高温での耐酸化性を向上させるのに有効な元素であり、このような効果は、0.10mass%超の添加で発現する。一方、0.50mass%以上の添加は、固溶硬化により、常温での伸びを低下させ、加工性の低下を招く。よって、Siは0.10mass%超0.50mass%未満とする。好ましくは、0.20mass%超え0.45mass%以下である。
Mnは、脱酸剤として作用するが、2.0mass%以上の過剰な添加は、高温で、γ相の生成を促進して耐熱性を低下させる。そのため、本発明では、Mnは2.0mass%未満とする。好ましくは、1.5mass%以下である。
Pは、常温での鋼の靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましく、本発明では、0.040mass%未満とする。好ましくは、0.030mass%以下である。
Sは、常温における伸びおよびr値を低下させ、加工性を劣化させるとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を劣化させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましい。また、Sは、ラーベス相の析出を促進する元素でもあり、鋼を硬質化させる。よって、本発明では、Sを0.010mass%未満とする。なお、過剰なSの低減は、製造コストの上昇を招くため、下限は0.002mass%程度とするのが望ましい。好ましいSの範囲は0.002〜0.006mass%である。
Crは、耐食性、耐酸化性を向上させる元素であり、本発明の鋼においては重要な元素の1つである。また、Crは、ラーベス相(本発明の組成範囲では(Fe,Cr)2(Mo,Nb))の生成を促進する元素であり、Crを16.0mass%以上含有すると、ラーベス相の析出が促進されて鋼を硬質化する。一方、Cr含有量が12.0mass%未満では、耐酸化性、耐食性が劣化する。よって、本発明では、Crは12.0mass%以上16.0mass%未満の範囲とする。なお、Cr添加量は、必要な耐酸化性、耐熱性レベルに応じて上記範囲内で適宜選択すればよいが、特に耐酸化性が要求される場合には、14.0mass%以上16.0mass%未満の範囲とするのが好ましい。
Niは、靭性を向上させる元素であるが、高価であり、また、強力なγ相形成元素であるため、高温で、γ相の生成を促進し、耐酸化性を低下させる。よって、Niは1.0mass%未満とする。なお、好ましくは、0.05mass%以上0.60mass%以下である。
Nは、常温における鋼の靭性および加工性を劣化させる元素であり、0.020mass%以上含有すると、靭性および加工性の劣化が大きくなる。このため、Nは0.020mass%未満とする。なお、本発明では、Nはできるだけ低減するのが好ましく、0.010mass%以下とするのが望ましい。
Nbは、C,Nを固定し、高温強度を高める他、加工性、耐食性、溶接部の粒界腐食性を向上する元素であり、このような効果は、Nbを10×(C+N)以上添加することにより発現する。一方、1.0mass%以上の添加は、ラーベス相が多量に析出して、常温強度を高め、靭性、表面性状を劣化させる。このため、Nbは10×(C+N)以上1.00mass%未満の範囲で添加する。なお、とくに優れた高温強度が要求される場合には、Nbは0.30mass%超とすることが好ましい。より好ましくは、0.30〜0.70mass%の範囲である。
Moは、固溶状態で存在することにより、高温における耐力を増加させるとともに、耐食性や耐酸化性を向上する作用を有する。このような効果は、0.8mass%を超える添加量で認められる。一方、3.0mass%以上添加すると、ラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するMo量が減少して、高温での耐力、耐食性の改善効果が小さくなるとともに、常温強度が増加し硬質化する。よって、本発明においては、Moは0.8mass%超3.0mass%未満とする。好ましくは、1.50mass%超3.00mass%未満の範囲である。
Wは、Moと同様、固溶状態で存在することにより高温耐力を増加させるとともに、耐食性・耐酸化性を向上する作用を有する。このような効果は、1mass%以上の含有で認められ、一方、5mass%を超えると、ラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するW量が飽和するほか、靭性や加工性の低下をもたらす。よって、本発明では、Wは1〜5mass%の範囲とする。好ましくは2mass%以上4mass%未満である。
Mo,Wは、上述のように同様の効果を有する元素であるが、本発明の目標である、900℃における0.2%耐力(σ0.2):25MPa以上を達成するためには、先述したように、(Mo+W)を3.0mass%以上添加する必要がある。一方、(Mo+W)が5.8mass%を超えると、900℃における0.2%耐力の向上効果が飽和すると共に、靭性や加工性の低下を招く。よって、本発明では、(Mo+W)は3.0〜5.8mass%の範囲とする。好ましくは3.5〜5mass%の範囲である。
Tiは、前述したように、常温における伸び、r値を向上するのに有効な元素であり、0.01mass%以上の添加でその効果が得られる。一方、0.3mass%を超える添加は、鋼板表面にTi系酸化物や窒化物に起因した「ヘゲ状」欠陥を発生させ、表面品質の低下を招く。よって、Tiの添加量は0.01〜0.3mass%とする。好ましくは0.05〜0.25mass%の範囲である。
Cuは、耐食性を特に向上させる作用を有する。しかし、1.5mass%を超える過剰の添加は、ε−Cuが析出し、脆化を招く。よって、Cuは、1.5mass%以下添加するのが好ましい。
本発明の鋼を製造する方法は、とくに限定されるものではなく、フェライト系ステンレス鋼の製造に用いられている一般的な方法であれば、いずれも好適に用いることができる。例えば、上述した本発明に適合する成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉等を利用し、あるいはさらに取鍋精錬、真空精錬等の2次精錬を利用して溶製し、次いで、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とし、その後、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程を順次経て冷延焼鈍板(製品)とすることができる。なお、上記冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延としてもよい。また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の工程は繰り返し行ってもよい。また、場合によっては、熱延板焼鈍は省略してもよい。さらに、鋼板表面の光沢性が要求される場合にはスキンパス圧延等を施してもよい。
各冷延焼鈍板から、圧延方向を引張方向としたJIS13号B試験片を各2本ずつ採取し、JIS G0567に準拠して、温度:900℃、歪速度:0.3%/minで高温引張試験を実施し、900℃における0.2%耐力(σ0.2)を測定し、2本の平均値を求めた。その結果、900℃におけるσ0.2が25MPa以上を高温強度良好(○)、25MPa未満を高温強度不良(×)と評価した。
(2)加工性(平均El、平均r値)
各冷延焼鈍板の圧延方向、圧延方向に45°方向、および圧延方向に90°方向の各方向から、JIS13号B試験片を各2本ずつ採取し、JIS Z2241に準拠して、常温(20℃)での引張試験を実施し、上記各方向の伸び(El0,El45,El90)を測定し、2本の平均値を求めた。得られた各方向の伸びから、下記(1)式;
平均伸びEl=(El0+2El45+El90)/4 ・・・(1)
を用いて各方向の平均伸びElを算出した。
また、上記と同様にして、各方向のr値(r0,r45,r90)を測定し、下記(2)式;
平均r値=(r0+2r45+r90)/4 ・・・(2)
を用いて各方向の平均r値を算出した。
(3)耐酸化性
各冷延焼鈍板から、試験片(厚さ2mm×幅20mm×長さ30mm)を各2枚ずつ採取し、それらの試験片を、1000℃に保持された大気雰囲気の加熱炉に200時間保持し、試験前後における試験片の質量測定値から、加熱試験による質量変化を算出し、2枚の平均値を求めた。これらの結果から、質量変化の絶対値が5mg/cm2以内であったものを耐酸化性良好(○)、絶対値が5mg/cm2超であったものを耐酸化性不良(×)と評価した。得られた結果を表2に示した。
Claims (2)
- C:0.020mass%未満、Si:0.10mass%超0.50mass%未満、Mn:2.0mass%未満、P:0.040mass%未満、S:0.010mass%未満、Cr:12.0mass%以上16.0mass%未満、Ni:1.0mass%未満、N:0.020mass%未満、Nb:10×(C+N)以上1.0mass%未満、Mo:0.8mass%超3.0mass%未満、W:1〜5mass%、(Mo+W):3.0〜5.8mass%、Ti:0.01〜0.3mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する高温強度、耐熱性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
- 上記成分組成に加えてさらに、Cu:1.5mass%以下、B:0.003mass%以下、Al:0.1mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびCo:0.5mass%以下の中のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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