JP5222595B2 - フェライト系ステンレス鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼材に関するものである。
使用に際し常温から高温域までの昇温、及び高温域から常温までの降温を繰り返す熱サイクル環境に曝される部材は、その熱サイクルに対する耐久性を保持するために、熱疲労特性に優れることが重要となる。このような部材としては、例えば、自動車排ガスが大気中に排出される前にその排ガスに接触するエキゾーストマニホールドなどの自動車排ガス部材が挙げられる。図1に、一回の熱サイクルにおけるステンレス鋼材の応力−歪み曲線を模式的に示す。この図1において発生応力が0となる二点間の歪み差を非弾性歪み範囲と定義する。非弾性歪み範囲が小さくなるほど、一回の熱サイクル当たりの塑性変形量が小さくなる結果、熱疲労特性が向上する、すなわち熱サイクル環境に曝されても鋼材が劣化し難くなる。
ところで近年、環境問題の高まりから自動車排ガス規制が厳しくなっており、自動車の燃費やエンジンの燃焼効率を更に高めることが必要とされている。そのため、自動車排ガスの温度も高いところで1000℃程度にまで上昇する傾向にある。ところが、現在実用化されている自動車排ガス部材は、最も熱疲労特性に優れるSUS444鋼を採用しても、1000℃では十分な熱疲労特性が得られない。そこで、1000℃程度又はそれ以上の温度でも十分に優れた熱疲労特性を示す鋼材が切望されている。
従来、そのような鋼材を得るために、鋼に特殊元素を添加し高温強度を高めることで上記非弾性歪み範囲を小さくする手法が主に試みられている。例えば特許文献1には、Fe−Crフェライト系合金での熱膨張係数の低下を意図して、質量%で、C:0.03%以下、Mn:5.0%以下、Cr:6〜40%、N:0.03%以下を含有し、Si:5%以下、W:2.0%以上6.0%以下、析出W:0.1%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、20℃〜800℃の平均熱膨張係数が12.6×10−6/℃より小さいことを特徴とするフェライト系Cr含有鋼材が提案されている。
特開2005−206944号公報
しかしながら、特許文献1で提案されたように単に特殊元素を鋼に添加するだけでは、1000℃程度での高温強度は僅かに向上するに過ぎない。これでは熱疲労特性の改善効果が十分ではなく、素材コスト、加工性、低温靱性の点も合わせて総合的に考慮すると、むしろ不利になることを避けられない。また、熱疲労特性を改善する別の手段として、低熱膨張化が考えられる。しかしながら、低熱膨張化のみによって十分に熱疲労特性を改善するには、高価なMo、Coを多量に添加する必要があるため、素材コストを合わせて総合的に考慮すると、やはり不利になる。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、高価な金属の添加をなるべく抑えた上で、熱疲労特性が十分に改善されたフェライト系ステンレス鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、SUS444鋼などの従来の鋼材を低熱膨張化するのに加えて、中温域(約500〜700℃)での高強度化を実現することが有効であると考えた。すなわち、本発明者らは、熱サイクルにおいて発生する歪みを低熱膨張化により減少させると共に、中温域〜常温(約500℃以下)での塑性変形を中温域での高強度化により抑制することで非弾性歪み範囲を小さくでき、本発明の目的を達成できると推測した。この概念を、熱サイクルにおける応力−歪み曲線で示すと、図2のようになる。
そして、本発明者らは、更に詳細に検討を重ねた結果、Mo、Cu、Coを添加したフェライト系ステンレス鋼材に、Cr、Mo、Coを更に所定量添加することで低熱膨張化が実現できることを見出した。それに加えて、本発明者らは、Cuを所定量添加することで中温域での高強度化が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。このCuの添加により、高価なMo、Coの添加量を減少しても、同等の熱疲労特性が得られることが判明した。
すなわち、本発明のフェライト系ステンレス鋼材は、C:0.000質量%超0.030質量%以下、Si:0.00質量%超1.00質量%以下、Mn:0.00質量%超1.50質量%以下、Cr:15.0〜25.0質量%、Mo:0.50〜3.00質量%、Cu:0.50〜2.00質量%、Co:0.50〜4.00質量%、N:0.000質量%超0.030質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼材であって、下記式(1)、(2)、(3)、(4)で表されるいずれかの条件及び下記式(5)で表される条件を満足するものである。
0.25×WCr+0.30×WMo+0.60×WCo−0.40×WCu≧5.7(ただし、WCr≦20、WCo≦3.0) (1)
0.25×WCr+0.30×WMo−0.10×WCo−0.40×WCu≧3.6(ただし、WCr≦20、WCo>3.0) (2)
0.15×WCr−0.30×WMo−0.60×WCo+0.40×WCu≦2.3(ただし、WCr>20、WCo≦3.0) (3)
0.15×WCr−0.30×WMo+0.10×WCo+0.40×WCu≦4.4(ただし、WCr>20、WCo>3.0) (4)
25×WMo+3.0×WCo+50×WCu≧70 (5)
ここで、式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)中、WCr、WMo、WCo、WCuはそれぞれ、上記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するCr、Mo、Co、Cuの含有割合(単位:質量%)を示す。
上記式(1)〜(4)における各元素の含有割合の係数は、その元素1質量%当たりの熱膨張係数の変化量を示す。各元素の含有割合が、Cr及びCoの各含有割合の範囲内で、該当する上記式(1)〜(4)のいずれかの条件を満足することで、フェライト系ステンレス鋼材の熱膨張係数が12.0×10−6/℃以下となる。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼材は、Nb:0.00質量%超0.80質量%以下、及び/又は、W:0.00質量%超3.00質量%以下を更に含有し、下記式(6)で表される条件を満足すると好ましい。これにより、本発明のフェライト系ステンレス鋼材は、熱疲労特性に一層優れたものとなる。
25×WMo+3.0×WCo+50×WCu+12×WNb+30×W≧70 (6)
ここで、式(6)中、WCr、WMo、WCo、WCu、WNb、Wはそれぞれ、上記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するMo、Co、Cu、Nb、Wの含有割合(単位:質量%)を示す。なお、本発明のフェライト系ステンレス鋼材がNb及びWのいずれか一方のみを含有する場合、上記式(6)及び下記式(7)における含有されていないNb又はWの含有割合(WNb、W)は0となる。
同様の観点から、本発明のフェライト系ステンレス鋼材が、下記式(7)で表される条件を満足すると更に好ましい。
25×WMo+3.0×WCo+50×WCu+12×WNb+30×W≧100 (7)
ここで、式(7)中、WCr、WMo、WCo、WCu、WNb、Wはそれぞれ、上記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するMo、Co、Cu、Nb、Wの含有割合(単位:質量%)を示す。
本発明のフェライト系ステンレス鋼材は、Ti:0.00質量%超0.40質量%以下を更に含有すると好ましい。これにより、炭窒化物の固定が促進され鋼材の機械強度が更に高まると共に、良好な加工性を維持することができる。また、本発明のフェライト系ステンレス鋼材は、30℃〜1000℃間での熱膨張係数が12.0×10−6/℃以下であると好ましい。
本発明のフェライト系ステンレス鋼材によれば、高価な金属の添加をなるべく抑えた上で、熱疲労特性を十分に改善することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
まず、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材(以下、場合によって単に「ステンレス鋼材」、「鋼材」ともいう。)について説明する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、C:0.000質量%超0.030質量%以下、Si:0.00質量%超1.00質量%以下、Mn:0.00質量%超1.50質量%以下、Cr:15.0〜25.0質量%、Mo:0.50〜3.00質量%、Cu:0.50〜2.00質量%、Co:0.50〜4.00質量%、N:0.000質量%超0.030質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼材であって、下記式(1)、(2)、(3)、(4)で表されるいずれかの条件および下記式(5)で表される条件を満足するものである。
0.25×WCr+0.30×WMo+0.60×WCo−0.40×WCu≧5.7(ただし、WCr≦20、WCo≦3.0) (1)
0.25×WCr+0.30×WMo−0.10×WCo−0.40×WCu≧3.6(ただし、WCr≦20、WCo>3.0) (2)
0.15×WCr−0.30×WMo−0.60×WCo+0.40×WCu≦2.3(ただし、WCr>20、WCo≦3.0) (3)
0.15×WCr−0.30×WMo+0.10×WCo+0.40×WCu≦4.4(ただし、WCr>20、WCo>3.0) (4)
25×WMo+3.0×WCo+50×WCu≧70 (5)
ここで、式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)中、WCr、WMo、WCo、WCuはそれぞれ、上記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するCr、Mo、Co、Cuの含有割合(単位:質量%)を示す。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高温強度、特にクリープ特性を改善するために、C及びNを含有する。ただし、鋼材中のC及びNの含有割合は、鋼材の総質量に対してそれぞれ0.000質量%超0.030質量%以下であると好ましく、それらの合計の含有割合が0.030質量%以下であるとより好ましい。これにより、ステンレス鋼材の酸化特性、加工性、低温靱性及び溶接性を更に優れたものとでき、また、C及びNを固定するためにこれらと反応して炭窒化物を形成するTi、Nbの添加量をより減少することが可能となる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高温酸化を抑制する観点、特にスケール剥離性を抑制する観点から、Siを含有する。ただし、鋼材中のSiの含有割合(WSi)は、鋼材の総質量に対して0.00質量%超1.00質量%以下であると好ましく、0.10〜0.50質量%であるとより好ましい。これにより、鋼材の加工性、特に延性の低下をより有効に防止することができ、低温靱性の低下を更に効果的に抑制することができる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高温酸化を抑制する観点、特にスケール剥離性を抑制する観点から、Mnを含有する。ただし、鋼材中のMnの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.00質量%超1.50質量%以下であると好ましく、0.00質量%超1.00質量%以下であるとより好ましい。これにより、鋼材の加工性及び溶接性の低下をより抑制することができる。また、Mnはオーステナイト相安定化元素であるため、Crの含有量が少ない場合にMnの添加によりマルテンサイト相の形成が促進され、熱疲労特性及び加工性が低下することとなる。この熱疲労特性及び加工性の低下を更に有効に防止する観点からも、鋼材中のMnの含有割合を上記範囲内に調整することが好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、その低熱膨張化、すなわち熱膨張係数の低下を実現すると共に、フェライト相を安定化し、高温材料に重要視される耐酸化性を高める観点から、Crを含有する。ただし、鋼材中のCrの含有割合は、鋼材の総質量に対して15.0〜25.0質量%であり、18.0〜23.0質量%であると好ましい。これにより、鋼材は更に優れた熱疲労特性を示すと共に、その脆化を抑制し、硬さの上昇に伴う加工性の低下をより有効に防止することができる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、優れた熱疲労特性を高いレベルで確保する観点から、Moを含有する。本実施形態の鋼材の熱疲労特性をより優れたものとするために、鋼材中のMoの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.50質量%以上であると好ましく、1.00質量%以上であるとより好ましい。また、Moの含有割合の上限は、3.00質量%であると好ましく、2.50質量%であるとより好ましい。これにより、鋼材の脆化を抑制し、硬さの上昇に伴う加工性の低下をより有効に防止することができる。また、材料コストの低減にも繋がる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、中温域から常温での強度を向上させるためにCuを含有する。本発明者らの検討によると、Cuは900℃以上の温度ではそのほぼ全量が固溶しており、冷却に伴い微細なε−Cu相として析出する。このε−Cu相の析出により、鋼材の中温域から常温での強度が向上し、優れた熱疲労特性に寄与する。また、本実施形態の鋼材におけるCuの固溶及び析出は、上限が900℃以上の熱サイクル環境に曝される場合であれば常に発現する。つまり、冷却により一旦析出したε−Cu相を形成するCuは、900℃以上に加熱されれば再び固溶する。したがって、上記熱サイクルを繰り返す環境下では、ε−Cu相の粗大化は抑制されるので、その析出による強度向上効果を長期に亘って維持することができる。中温域から常温での強度の向上を十分に高くする観点から、本実施形態の鋼材中のCuの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.50質量%以上であり、1.00質量%以上であると好ましい。ただし、鋼材の脆化を抑制し、硬さの上昇に伴う加工性の低下をより有効に防止する観点から、このCuの含有割合は、2.00質量%以下であると好ましく、1.70質量%以下であるとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、優れた熱疲労特性を高いレベルで確保する観点から、Coを含有する。CoはCr、Moと同様に鋼材の熱膨張を抑制する作用を有するが、その熱膨張抑制効果は、Cr、Moよりも非常に大きなものである。熱膨張抑制効果をより高いレベルで奏する観点から、鋼材中のCoの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.50質量%以上であり、2.00質量%以上であるとより好ましい。ただし、熱膨張抑制効果の向上の程度が小さくなる観点、及び材料コストを抑制する観点から、Coの含有割合は4.00質量%以下であると好ましく、3.50質量%以下であるとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、炭窒化物を形成してC、Nを固定することで、高温強度を上昇させる観点から、Nbを含有してもよい。この効果を更に有効に発揮させる観点から、鋼材中のNbの含有割合は、下記式(8)
Nb≧8×(W+W) (8)
で表される条件を満足することが好ましい。ここで、式(8)中、WNb、W、Wはそれぞれ鋼材の総質量に対するNb、C、Nの含有割合(単位:質量%)を示す。炭窒化物を形成しないNbは鋼材の材料強度を高める点で有効である。ただし、鋼材の加工性、低温靱性及び溶接高温割れに対する感受性の低下を抑制する観点から、鋼材中のNbの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.00質量%超0.80質量%以下であると好ましく、0.00質量%超0.50質量%以下であるとより好ましく、0.00質量%超0.30質量%以下であると更に好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高温強度を高めると共に中温域から常温での強度も改善する観点から、Wを含有すると好ましい。ただし、鋼材中のWの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.00質量%超3.00質量%以下であると好ましい。これにより、鋼材の脆化を抑制し、硬さの上昇に伴う加工性の低下をより有効に防止することができる。また、材料コストの低減にも寄与できる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、炭窒化物を形成してC、Nを固定することで、加工性を向上させる観点から、Tiを含有してもよい。この効果を更に有効に発揮させる観点から、鋼材中のTiの含有割合は、下記式(9)
Ti≧5×(W+W) (9)
で表される条件を満足することが好ましい。ここで、式(9)中、WTi、W、Wはそれぞれ鋼材の総質量に対するTi、C、Nの含有割合(単位:質量%)を示す。鋼材の加工性の低下を防止し、材料コストを低減する観点から、鋼材中のTiの含有割合は、鋼材の総質量に対して0.00質量%超0.40質量%以下であると好ましく、0.00質量%超0.30質量%以下であるとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、上記式(1)、(2)、(3)、(4)で表されるいずれかの条件及び上記式(5)で表される条件を満足する。このような組成を有することにより、本実施形態の鋼材は、Mo、Coなどの高価な金属の添加をなるべく抑えた上で、熱疲労特性が十分に改善されたフェライト系ステンレス鋼材を提供することができる。また、鋼材がNb及び/又はWを含有する場合、同様の観点から、上記式(6)で表される条件を満足すると好ましく、上記式(7)で表される条件を満足するとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、上記各元素の他、例えば一般的な不純物元素であるP、S、Oなどを含有してもよい。ただし、その含有量は可能な限り少なくすることが好ましい。鋼材中のP、S、Oの含有割合は、鋼材の総質量に対して、それぞれ0.040質量%以下、0.030質量%以下、0.020質量%以下であると好ましい。ただし、本実施形態の鋼材の加工性や靱性を更に高めるために、これらの元素を更に少なくしてもよい。また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、耐熱性を改善する元素であるZr、Y、REM(希土類元素)、熱間加工性を改善する元素であるCa、Mg、Bなどを、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じて含有してもよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、各元素の組成を上述の範囲で調整することにより、30℃〜1000℃間での熱膨張係数を12.0×10−6/℃以下にすることができる。これにより、常温から1000℃を超える程度の高温までの温度範囲で熱サイクルを繰り返す環境に曝されても、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、その熱疲労特性を十分に優れた状態で長期に亘って保持することができる。なお、熱膨張係数は、4mm×4mm×50mmの板状試験片を、示差膨張分析装置(標準試料:石英)により昇温速度1℃/秒で30℃〜1000℃に加熱し、その際の試験片の膨張量を測定し、30℃〜1000℃での平均熱膨張係数として算出した値である。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、各元素の組成を上述の範囲で調整することにより、後述する冷却速度にて焼鈍した鋼版において、200℃での0.2%耐力を270MPa以上にすることができる。これにより、熱サイクル中に発生する非弾性歪み範囲が小さくなり熱疲労特性が向上する。なお、0.2%耐力はJIS G 0567に準拠して測定した値である。
以上説明した本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、上記組成を有する以外は、常法により製造することができる。また、この鋼材は、常法により板状などの所定の形状に成形、加工されてもよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高温強度を必要以上に高めることを回避し、低熱膨張化と中温域での高強度化とを組み合わせた合理的な成分設計を本発明者らが検討した結果、初めて完成されたものである。この鋼材において、Cr、Coの含有割合が一定の範囲では、Moの含有量を増加させるのに伴い、鋼材の熱膨張係数が低下し、中温域での機械強度が向上する。また、Coの含有量を増加させるのに伴い、鋼材の熱膨張係数は低下し、Coの含有割合が3質量%を超えると、熱膨張係数が緩やかに上昇する傾向にある。また、Coの含有量の増減は、中温域の機械強度に大きな影響を示さない。Cuの含有量を増加させるのに伴い、鋼材の熱膨張係数は多少上昇するものの、Cuは高温域からの冷却に際し微細なε−Cu相を析出するため、中温域での機械強度を大幅に向上させる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、上述のような組成を有することで、SUS444鋼と同等以上の中温での機械強度を有すると共に、その30℃〜1000℃間での熱膨張係数を12.0×10−6/℃以下に調整できる。その結果、この鋼材はSUS444鋼よりも優れた熱疲労特性を示す。また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、高価な特殊元素の多量添加に頼ることなく、その熱疲労特性を十分に改善することができる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼材は、特に最高温度が1000℃を超える高温域と常温との間での熱サイクル環境に曝される部材に好適に用いられる。そのような用途としては自動車排ガス部材が挙げられ、特にエキゾーストマニホールドが好ましい。その他の用途としては、例えば触媒コンバーターケース、フロントパイプなどの自動車や二輪車排ガス経路部材を始め、LNG発電のダクト、マイクロガスタービン、燃料電池改質器、ガスヒートポンプなどの各種排ガス経路部材が挙げられる。
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<フェライト系ステンレス鋼試験片の作製>
表1に示す組成を有する24種類のステンレス鋼(鋼No.1〜24)を真空溶解炉で溶製して30kgのインゴットに鋳造した。得られたインゴットを熱間圧延し、更に1050℃で焼鈍を施すことで、板厚約4.5mmのフェライト系ステンレス熱延焼鈍板を得た。得られた熱延焼鈍板を、4mm×4mm×50mmの板状に切削加工して熱膨張係数測定用の試験片を得た。さらに、この熱延焼鈍板に冷間圧延と仕上焼鈍とを施し、板厚2.0mmの冷延焼鈍板を作製し、高温引張試験に供した。また、上記インゴットから熱間鍛造により直径約25mmの円柱体を作製し、この円柱体に対して1050℃の仕上焼鈍を施して、熱疲労試験用の試験片を得た。表1中、「計算値A」は式(1)、(2)、(3)、(4)における左辺のいずれかを用いた計算値であり、用いた式は「式」の欄に示す。また、「計算値B」は式(5)における左辺を用いた計算値である。さらに、計算値Cは、式(6)における左辺(すなわち、式(7)における左辺)を用いた計算値である。なお、比較鋼No.17はSUS444鋼相当の鋼材である。
Figure 0005222595
<熱膨張係数測定>
上述のようにして得られた板状の試験片を、示差膨張分析装置(株式会社リガク製、赤外線加熱式熱膨張測定装置(TMA)、標準試料:石英)により昇温速度1℃/秒で30℃〜1000℃に加熱した。その際の試験片の膨張量を測定し、30℃〜1000℃での平均熱膨張係数(α30−1000℃)として算出した。結果を表2に示す。
Figure 0005222595
<引張試験>
上述のようにして仕上焼鈍して得られた冷延焼鈍板を再度1050℃に加熱した後、約3℃/秒の冷却速度で冷却した。冷却後の試験片について、JIS G 0567に準拠して、0.2%耐力を測定した。この測定は200℃及び1000℃で行った。結果を表2に示す。表中「σ1000℃」は1000℃での0.2%耐力、「σ200℃」は200℃での0.2%耐力を示す。
<熱疲労試験>
上述のようにして得られた直径約25mmの円柱体の試験片を、標点間部の直径10mmの熱疲労試験片に更に加工した。サーボパルサ型熱疲労試験装置(株式会社島津製作所製、商品名「EHF−EM 100kN」)を用いて、拘束率50%の条件で大気中で熱サイクルに曝して熱疲労試験を行った。熱サイクルは、200℃から昇温速度3℃/秒で1000℃まで昇温し、1000℃で0.5分間保持し、次いで冷却速度3℃/秒で200℃まで冷却し、200℃で0.5分間保持するサイクルを1サイクルとした。この熱サイクルを10サイクル繰り返し、その際の応力−歪み曲線を作成し、10サイクル目の非弾性歪み範囲(Δεp200−1000℃)を導出した。結果を表2に示す。
本発明に係る鋼(発明鋼)No.1〜16は、いずれもSUS444鋼に相当する比較鋼No.17よりも高温強度が低くなった。しかしながら、これらの発明鋼は比較鋼よりも熱膨張係数が小さく、及び/又は、200℃での0.2%耐力が大きいため、優れた熱疲労特性を示した。例えば、Mo、Coの含有割合を低くした発明鋼No.7は、熱膨張係数がそれほど小さくなっていないものの、Cu、Nbを添加したことによって、200℃での0.2%耐力が大きくなり、比較鋼に比べて大幅に改善された熱疲労特性を示した。
一方、比較鋼No.17よりも熱膨張係数を小さくした比較鋼No.18、19、21、23、24は、200℃での0.2%耐力が低く、熱疲労特性の大幅な改善には至らなかった。また、200℃での0.2%耐力を大きくした比較鋼No.20は、熱膨張係数が大きく、やはり熱疲労特性の大幅な改善には至らなかった。
熱疲労試験の一回の熱サイクルにおけるステンレス鋼材の応力−歪み曲線の模式図である。 熱疲労試験の一回の熱サイクルにおける従来及び本発明に係るステンレス鋼材の応力−歪み曲線の模式図である。

Claims (5)

  1. C:0.000質量%超0.030質量%以下、Si:0.00質量%超1.00質量%以下、Mn:0.00質量%超1.50質量%以下、Cr:15.0〜25.0質量%、Mo:0.50〜3.00質量%、Cu:0.50〜2.00質量%、Co:0.50〜4.00質量%、N:0.000質量%超0.030質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼材であって、
    下記式(1)〜(4)で表されるいずれかの条件及び下記式(5)で表される条件を満足する、フェライト系ステンレス鋼材。
    0.25×WCr+0.30×WMo+0.60×WCo−0.40×WCu≧5.7(ただし、WCr≦20、WCo≦3.0) (1)
    0.25×WCr+0.30×WMo−0.10×WCo−0.40×WCu≧3.6(ただし、WCr≦20、WCo>3.0) (2)
    0.15×WCr−0.30×WMo−0.60×WCo+0.40×WCu≦2.3(ただし、WCr>20、WCo≦3.0) (3)
    0.15×WCr−0.30×WMo+0.10×WCo+0.40×WCu≦4.4(ただし、WCr>20、WCo>3.0) (4)
    25×WMo+3.0×WCo+50×WCu≧70 (5)
    (式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)中、WCr、WMo、WCo、WCuはそれぞれ、前記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するCr、Mo、Co、Cuの含有割合(単位:質量%)を示す。)
  2. Nb:0.00質量%超0.80質量%以下、及び/又は、W:0.00質量%超3.00質量%以下を更に含有し、下記式(6)で表される条件を満足する、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼材。
    25×WMo+3.0×WCo+50×WCu+12×WNb+30×W≧70 (6)
    (式(6)中、WCr、WMo、WCo、WCu、WNb、Wはそれぞれ、前記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するMo、Co、Cu、Nb、Wの含有割合(単位:質量%)を示す。)
  3. 下記式(7)で表される条件を満足する、請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼材。
    25×WMo+3.0×WCo+50×WCu+12×WNb+30×W≧100 (7)
    (式(7)中、WCr、WMo、WCo、WCu、WNb、Wはそれぞれ、前記フェライト系ステンレス鋼材の総質量に対するMo、Co、Cu、Nb、Wの含有割合(単位:質量%)を示す。)
  4. Ti:0.00質量%超0.40質量%以下を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼材。
  5. 30℃〜1000℃間での熱膨張係数が12.0×10−6/℃以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼材。
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