JP2007197310A - 結晶化ガラスおよびそれを用いた反射鏡基材並びに反射鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐熱性と耐熱衝撃性に優れ、しかも成形時に失透が発生しにくいLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の結晶化ガラスは、質量%で、SiO2 55〜66%、Al23 20〜30%、Li2O 3.1〜7%、TiO2 1〜5%、ZrO2 0.5〜3%、P25 0.5〜5%、B23 0.1〜2.4%、Na2O+K2O 0.3〜5%、BaO 0.1〜3%、P25/B23が1.2超の組成を含有し、ガラス転移点が620℃以上であり、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスに関し、より具体的には、照明機器や映写機等に組み込まれる光源ランプの反射鏡基材に適した結晶化ガラスに関する。
Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスは、耐熱性に優れていることから、従来より高温下で使用される種々の材料、例えば石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、電子部品焼成用セッター、電子レンジ用棚板、電磁調理器やガス調理器のトッププレート、防火戸用窓ガラス、カラーフィルターやイメージセンサ用基板といった電子製品用基板等に使用されている。また近年では、照明機器や映写機等に組み込まれる光源ランプの反射鏡基材としても使用されることが多くなってきている。
光源ランプは、光源ランプと、これが発する光を集光し、一定方向に反射する反射鏡(リフレクター)から基本的に構成される。また反射鏡は、回転放物面や回転楕円面を成す凹状の反射面を有する反射鏡基材と、その反射面に形成される多層反射膜から構成される。この多層反射膜は、赤外線を透過し、可視光線は反射する光学特性を備えており、スパッタリング法や真空蒸着法で反射面に被覆形成される。
従来より光源ランプの反射鏡基材としては、耐熱性を有するホウケイ酸ガラスが使用されてきたが、近年、液晶プロジェクターを始めとする多くの分野でランプ機器の高輝度化と小型化が進んできており、これに伴って反射鏡基材にはより高い耐熱性が要求されている。つまりランプ機器の高輝度化によりランプの発熱が一層激しくなり、且つ、小型化によりランプと反射鏡との距離が縮まっているため、反射鏡部分が600℃以上の高温に曝されるようになってきている。そのため、ホウケイ酸ガラスからなる従来の反射鏡基材に替わって、より耐熱性と耐熱衝撃性に優れたLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスからなる反射鏡基材が使用されるようになってきている。
このような事情から、Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを用いた反射鏡基材が各種提案され、例えば、表面の平均粗さが0.03μm以下の表面性状を持つもの(特許文献1)、0.2〜2.0μmの大きな結晶を析出させて光散乱性を付与したもの(特許文献2)、近赤外線域の透過率を高くしたもの(特許文献3)等が提案されている。
特公平7−37334号公報 特公平7−92527号公報 特開2002−326837号公報
特許文献1に記載の結晶化ガラスは、溶融温度を低くすることによって、ガラス成形時に平滑な表面を得ることを可能にしているが、溶融温度が低下すると、転移温度も低下するため、高輝度用反射鏡基材に要求される耐熱性を満足することができなくなる。
また特許文献2に記載の結晶化ガラスは、結晶粒子を可視光の波長より大きく成長させて光散乱特性を付与させたものであるが、表面粗さが大きくなるため、均一な反射膜を形成するのが困難になる。
さらに特許文献3に記載の結晶化ガラスは、作業温度域(成形温度と液相温度との差)が狭いため、成形時に失透が発生しやすい。すなわち、一般にLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを製造する場合、まず原ガラスを溶融し、所定の形状に成形した後、結晶化のための熱処理を施す方法が採られる。ガラスを溶融するための溶融炉では、オリフィスと呼ばれる出口から成形部に溶融ガラスが流れ出すが、このオリフィス部は、大気に曝されているため、溶融ガラスの温度が低下しやすい。そのためガラスの成形温度と液相温度との差が小さいと、成形時にZrO2やZrSiO4といったZr系結晶やムライト等の結晶が失透相として析出しやすくなり、生産性が著しく低下するという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、耐熱性と耐熱衝撃性に優れ、しかも成形時に失透が発生しにくいLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを提供することを目的とする。
本発明者は、Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを構成する各成分の含有量を所定範囲に規制し、特にガラスの液相温度と転移点に影響を与えるP25とB23の含有量と、両成分の含有比率を厳密に規制することによって、ガラス転移点を高くしつつ、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)を大きくすることができるという知見を得、本発明を提案するに到った。
すなわち本発明の結晶化ガラスは、質量%で、SiO2 55〜66%、Al23 20〜30%、Li2O 3.1〜7%、TiO2 1〜5%、ZrO2 0.5〜3%、P25 0.5〜5%、B23 0.1〜2.4%、Na2O+K2O 0.3〜5%、BaO 0.1〜3%、P25/B23が1.2超の組成を含有し、ガラス転移点が620℃以上であり、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上であることを特徴とする。
また本発明の反射鏡基材は、上記の結晶化ガラスから作製されてなることを特徴とし、本発明の反射鏡は、上記の反射鏡基材の内表面(反射面)に多層反射膜が形成されてなることを特徴とする。
本発明の結晶化ガラスは、ガラス転移点が620℃以上であるため、耐熱性に優れ、しかも結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上であるため、成形時に失透が発生しがたく、安定して生産することが可能である。
本発明の結晶化ガラスは、質量%で、SiO2 55〜66%、Al23 20〜30%、Li2O 3.1〜7%、TiO2 1〜5%、ZrO2 0.5〜3%、P25 0.5〜5.0%、B23 0.1〜2.4%、Na2O+K2O 0.3〜5%、BaO 0.1〜3%、P25/B23が1.2超の組成を含有し、ガラス転移点が620℃以上であり、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上である。尚、本発明において、成形温度とは、溶融ガラスを成形する時の温度を意味し、具体的には、ガラス粘度が103.3ポイズの時の温度を意味する。また液相温度とは、ガラス(溶融体)と結晶の初相との間の平衡温度で、その温度以上では結晶が存在しない温度を意味する。成形温度と液相温度との差(ΔT)、つまり作業温度域が大きいほど、ガラスを成形する時に失透が発生しにくくなる。
本発明の結晶化ガラスは、ガラス転移点が620℃以上であるため、例えば液晶プロジェクター用反射鏡基材のような高温下で使用される用途においても十分な耐熱性が達成できる。結晶化ガラスのガラス転移点は、650℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましい。
また本発明の結晶化ガラスは、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上であるため、ガラスを成形する時に失透が発生しがたい。生産性をより向上するという観点から、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。
また本発明の結晶化ガラスは、成形温度を低くするほど、成形型の劣化を抑えることができるため、成形温度は1450℃以下、好ましくは1430℃以下、さらに好ましくは1420℃以下であることが望ましい。
また本発明の結晶化ガラスは、主結晶としてβ−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を析出することが好ましい。特にβ−石英固溶体は、負の熱膨張係数を有するため、これを析出する結晶化ガラスは、熱膨張係数を限りなくゼロに近づけることができる。そのためβ−石英固溶体を含む結晶化ガラスは、非常に優れた耐熱衝撃性を備えている。
またβ−石英固溶体は、結晶粒径が小さく、これが析出した結晶化ガラスの表面は平滑であるため、特に反射鏡基材として使用する結晶化ガラスとして好適である。つまり反射鏡基材の内面には、多層反射膜を形成する必要があるため、基材として使用する結晶化ガラス表面の平滑性が悪いと反射膜面も粗くなり、反射率の高い反射膜が得られないからである。従って、結晶化ガラス中のβ−石英固溶体の結晶粒径はできるだけ小さいことが好ましく、ガラス組成や結晶化条件を適宜調整することによって、β−石英固溶体の平均粒径を0.2μm未満、好ましくは0.18μm未満、より好ましくは0.1μm未満となるように制御すべきである。
また本発明の結晶化ガラスは、主結晶としてβ−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を析出させることによって、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を、−5〜15×10-7/℃に調整することが可能である。平均線熱膨張係数が、−5×10-7/℃より小さいと、多層反射膜のような正に大きい線熱膨張係数を有する材料を表面に形成した場合、その熱膨張差が大きくなるため、膜が剥離したり、クラックが入る等の不具合が発生しやすくなる。一方、平均線熱膨張係数が、15×10-7/℃より大きいと、加熱・冷却によって結晶化ガラスの内部に温度分布が生じた場合に割れやすくなる。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数は、−3〜11×10-7/℃であることが好ましく、さらには−1〜3×10-7/℃であることが好ましい。
次に本発明の結晶化ガラスの組成を上記のように限定した理由を以下に述べる。
SiO2は、ガラスの骨格を形成すると共に、結晶を構成する成分であり、その含有量は55〜66%、好ましくは55〜65%、より好ましくは59〜65%、さらに好ましくは60〜64%である。SiO2が55%より少ないと、失透傾向が強まり、生産が困難となる。一方、66%より多いと、ガラスの粘度が高くなりすぎ、ガラスの溶融が困難となる。
Al23も、ガラスの骨格を形成すると共に、結晶を構成する成分であり、その含有量は20〜30%、好ましくは20〜25%、より好ましくは21〜24.5%である。Al23が20%より少ないと、ガラスの粘度が高くなりすぎ、ガラスの溶融が困難となる。一方、30%より多いと、ガラスの失透傾向が強まり、生産歩留まりが低下する。
Li2Oは結晶構成成分であり、結晶性に大きな影響を与えると共に、ガラスの粘性を低下させる働きがあり、その含有量は3.1〜7%、好ましくは3.5〜5%、より好ましくは4〜5%である。Li2Oが3.1%より少ないと、ガラスの結晶性が弱くなり、熱膨張係数が大きくなりすぎるため、耐熱衝撃性が低下する。一方、7%より多いと、結晶性が強くなりすぎ、ガラスが失透しやすくなる。
TiO2は、核形成剤であり、その含有量は1〜5%、好ましくは1.5〜3.5%、より好ましくは1.5〜3%である。TiO2が1%より少ないと、析出結晶が少なく、各結晶が粗大に成長するため、結晶化ガラスの表面粗さが大きくなりやすい。一方、5%より多いと、ガラスが失透しやすくなる。
ZrO2も核形成剤であり、その含有量は0.5〜3%、好ましくは1〜3%である。ZrO2が0.5%より少ないと、析出結晶が少なく、各結晶が粗大に成長するため、結晶化ガラスの表面粗さが大きくなりやすい。一方、3%より多いと、ガラスの溶融が困難となると共に、ガラスが失透しやすくなる。
25は、分相による核形成促進剤として働き、ガラスの結晶性を向上させる成分であり、その含有量は0.5〜5%、好ましくは0.5〜3.8%、より好ましくは0.5〜3.0%である。P25が0.5%より少ないと、結晶の析出量が少なくなり、熱膨張係数が大きくなるため、耐熱衝撃性が低下する。一方、5%より多いと、ガラスの粘度が高くなりガラスの溶融が困難となる。
23は、ガラスの液相温度を下げる効果があり、その含有量は0.1〜2.4%、好ましくは0.1〜2%、より好ましくは0.1〜1.2%、さらに好ましくは0.1〜1%である。B23が0.1%より少ないと、ガラスが失透しやすくなり、液相温度が高くなる。一方、2.4%より多いと、ガラス転移点が低下する。
Na2OとK2Oは、ガラスの溶融性を向上すると共に、熱膨張係数を調整する成分であり、合量で0.3〜5%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜4%に規制する。Na2O+K2Oが、0.3%より少ないと、ガラスの溶融が困難となり、一方、5%より多いと、線熱膨張係数が大きくなりすぎるため好ましくない。特にNa2O/K2Oが2.5超となるように規制すると、ガラスの溶融性を向上し、熱膨張係数を調整する効果がより大きくなるため望ましい。
アルカリ土類成分もアルカリ成分と同様に、溶融性を向上させ、熱膨張係数を調整する効果を有する。アルカリ土類のうち特にBaOは、ガラスの結晶性を強め、結晶粒径を小さくして結晶化ガラスの表面粗さを小さくすると共に作業温度域を広げる作用があり、その含有量は0.1〜3%である。BaOが、0.1%より少ないと、上記の効果が得られず、3%より多いと、結晶化ガラスのガラス転移点が小さくなりすぎ、耐熱性が低下する。BaOの好ましい含有量は0.1〜2.5%、より好ましくは0.5〜2.5%、さらに好ましくは0.5〜2%である。
尚、MgO、CaO、SrOは、BaOと同様にガラスの溶融性を高め、熱膨張係数を調整できる任意成分であり、必要に応じてそれぞれ3%まで含有させることができる。
また本発明においては、P25/B23が1.2超となるように規制する。この比率を満たす場合、P25による核形成効果が向上し、比較的短時間で均質な結晶化ガラスを得ることができる。更に、液相温度を低下させたり、結晶化ガラスのガラス転移点を高め、耐熱性を向上することができる。P25/B23の値は1.5超であることが好ましく、2.1超であることがより好ましい。ただし、P25/B23の値が高くなりすぎると、逆に原ガラスの液相温度が高くなるため、20.0以下(好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下、最も好ましくは6.0以下)に規制すべきである。
本発明においては、上記成分以外にも、種々の成分を含有させることが可能である。
例えば、清澄効果を向上させるため、As23、Sb23、SnO2、Cl等の清澄剤を2%まで含有することが可能である。ただしAs23は、環境負荷物質であるため、使用を避けることが好ましい。As23を含有しない場合、Sb23+SnO2+Clを0.2〜2%に規制することが好ましく、さらにはSb23を0.05〜1.5%、SnO2を0.02〜1%、Clを0〜1%に規制することが好ましい。
またFe23、V25、NiO、CoO等の着色剤を2%まで含有することも可能である。尚、Fe23を少なくするほど、結晶化ガラスの近赤外線における透過率が高くなり、これを反射鏡基材に使用した場合の温度上昇を抑えることができる。しかしながら、着色剤としての効果を得るためには、Fe23を200ppm超含有させることが必要であり、その場合には原料コストを低下させることも可能となる。つまりFe23を200ppm以下に規制しようとすると、高純度原料を使用する必要が生じるため、コストが著しく上昇する。従って、Fe23は、210〜1000ppm、好ましくは220〜800ppmに規制すべきである。
さらに、ZnOも1%程度まで含有させることができるが、ZnOは液相温度を下げ、ガラスを失透させやすくするため、実質的に含有しないことが好ましい。
以下に本発明の結晶化ガラスの製造方法を説明する。
まず所望の組成を有するガラスとなるように原料を調製し、これを約1550〜1750℃で4〜20時間溶融した後、所望の形状に成形することによって結晶性ガラス成形体を作製する。次いで、得られた結晶性ガラス成形体を600〜800℃で0.5〜5時間保持して核形成を行い、β−石英固溶体を含む結晶化ガラスとする場合は800〜950℃で0.5〜3時間熱処理して結晶(β−石英固溶体)をガラス内部に析出させる。またβ−スポジュメン固溶体を含む結晶化ガラスとする場合は核形成後に1050〜1250℃で0.5〜2時間熱処理して結晶(β−スポジュメン固溶体)をガラス内部に析出させる。
また本発明の結晶化ガラスを使用して反射鏡を作製する場合は、以下のように行う。
まず溶融ガラスを、プレス成形法、ブロー成形法、遠心鋳造法等によって、回転放物面や回転楕円面のような凹面を備えた椀状の反射鏡基材の形状に成形する。次いで、得られたガラス成形体を所望の条件で熱処理し、結晶化させることによって結晶化ガラスからなる反射鏡基材を作製する。次いで、得られた反射鏡基材の凹面(反射面)に対し、蒸着法、スパッタ法、CVD法、スピンコート法等によって多層反射膜を形成する。尚、反射鏡基材を成形した後、結晶化する前に、凹面をファイアポリッシュ(火炎による研磨)を施しておくと、結晶化した後の表面粗さが小さくなるため好ましい。
以下、本発明の結晶化ガラスを実施例に基づいて詳細に説明する。
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜5)と比較例(試料No.6、7)を示すものである。
Figure 2007197310
表1の各ガラス試料は、以下のようにして作製した。
まず表中のガラス組成となるように原料を調合し、均一に混合した後、白金坩堝を用いて1600℃で16時間溶融した。次いで、溶融したガラスをカーボン上に流し出し、5mm厚の板状に成形した後、電気炉で700℃から室温まで100℃/時間の速度で降温することによって徐冷を行った。
こうして得られた各ガラス試料について、成形温度と液相温度を測定し、その温度差(ΔT)を算出した。表1から明らかなように、実施例である試料No.1〜5は、いずれもΔTが120℃以上であるため、成形時に失透が発生しがたい。一方、比較例である試料No.6と7は、ΔTが75℃以下であるため、成形性に劣っていた。
次に、上記の試料No.1〜7のガラス試料を電気炉に入れ、室温から300℃/時間の速度で780℃まで昇温した後、そのまま3時間保持し、さらに90℃/時間の速度で890℃まで昇温した後、そのまま1時間保持した。その後、炉冷することによって結晶化ガラスを作製した。
こうして得られた試料No.1〜7の結晶化ガラスについて、主結晶相と結晶の平均粒径を調べると共に線熱膨張係数と転移点を測定した。表1から明らかなように、実施例である試料No.1〜5は、いずれも主結晶としてβ−石英固溶体を析出し、その平均結晶粒径は0.07μmであった。また線熱膨張係数は、−5〜2×10-7/℃であり、転移点は655℃以上であった。一方、比較例である試料No.6及び7は、実施例に比べて転移点が低いため、耐熱性に劣っていた。また試料No.7は、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出し、その平均結晶粒径は1μmであり、表面粗さも大きかった。
尚、表中の各特性は、次のようにして測定した。
成形温度は、各ガラス試料の高温粘度曲線を周知の白金球引き上げ法で求めた後、ガラスの103.3ポイズに相当する温度を読みとり、その温度を成形温度とした。
液相温度は、各ガラス試料を白金ボートに入れ、1550℃で30分間リメルトした後、直ちに温度勾配炉に入れて20時間保持した。次いで、白金ボートを取り出し、結晶が析出した最高温度を測定し、その温度を液相温度とした。各ガラス試料の析出結晶は、いずれもZr系の結晶であるZrO2又はZrSiO4であった。
線熱膨張係数と転移点は、各結晶化ガラス試料の30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数とガラス転移点を、差動検出式相対膨張計(マックサイエンス製TD−5000S)を用いて測定した。
また結晶化ガラスの主結晶は、周知のX線回折法により同定したものであり、表中の主結晶相の欄に記載したβ−Qは、β−石英固溶体を意味しており、β−Sは、β−スポジュメン固溶体を意味している。さらに平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−5400)にて結晶を観察し、無作為に選んだ100個の結晶の粒径を測定し、その平均値を求めた。
次に実施例である試料No.1〜5の結晶化ガラスから反射鏡基材を作製した後、図1に示すように、反射鏡基材11の内表面12に、TiO2とSiO2を交互に25層蒸着することによって多層反射膜13を形成した反射鏡10を作製した。こうして得られた反射鏡10に100WのHIDランプを取り付け、1000時間の点灯試験を行ったところ、いずれの反射鏡基材11にも、割れやクラックは発生せず、また多層反射膜13の剥離やクラックも発生しなかった。
本発明の結晶化ガラスは、成形時に失透が発生しがたいため、生産性に優れ、しかも耐熱性に優れているため、高温下で使用される種々の材料、例えば石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、電子部品焼成用セッター、電子レンジ用棚板、電磁調理器やガス調理器のトッププレート、防火戸用窓ガラス、カラーフィルターやイメージセンサー用基板といった電子製品用基板、光源ランプの反射鏡基材等に使用することができ、特に液晶プロジェクターに使用される光源ランプの反射鏡基材に適している。
本発明の結晶化ガラスを反射鏡基材として使用した反射鏡を示す説明図である。
符号の説明
10 反射鏡
11 反射鏡基材
12 内表面
13 多層反射膜

Claims (9)

  1. 質量%で、SiO2 55〜66%、Al23 20〜30%、Li2O 3.1〜7%、TiO2 1〜5%、ZrO2 0.5〜3%、P25 0.5〜5%、B23 0.1〜2.4%、Na2O+K2O 0.3〜5%、BaO 0.1〜3%、P25/B23が1.2超の組成を含有し、ガラス転移点が620℃以上であり、結晶化前の原ガラスの作業温度域(成形温度と液相温度との差)が80℃以上であることを特徴とする結晶化ガラス。
  2. Na2O/K2Oが2.5超であることを特徴とする請求項1記載の結晶化ガラス。
  3. 実質的にAs23を含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載の結晶化ガラス。
  4. 成形温度が1450℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
  5. 主結晶相として、β−石英固溶体またはβ−スポジュメン固溶体を析出してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
  6. 主結晶相として、β−石英固溶体を析出し、その平均粒径が0.2μm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の結晶化ガラス。
  7. 30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が、−5〜15×10-7/℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の結晶化ガラス。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の結晶化ガラスから作製されてなることを特徴とする反射鏡基材。
  9. 請求項8に記載の反射鏡基材の内表面に多層反射膜が形成されてなることを特徴とする反射鏡。
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