JP2007179983A - 被覆鋼線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂被覆層の密着性に優れる被覆鋼線の製造方法、及び被覆鋼線の製造装置、並びに被覆鋼線を提供する。
【解決手段】製造装置1は、鋼材S1に伸線加工を施す伸線装置10と、伸線加工が施された伸線材S2に伸直加工を施す矯正装置20と、伸直加工が施された伸直材S3を250℃以上400℃以下に加熱する加熱装置30と、加熱材S4を150℃以上250℃以下に冷却する冷却装置40と、冷却された鋼線S5(S)の表面に接着性樹脂からなる樹脂被覆層Pを形成する押出装置50とを直列的に具える。この構成により、製造装置1は、伸線加工から被覆加工に亘って連続して行う。この製造装置1を用いて被覆鋼線S6を形成すると、樹脂被覆層Pが形成されるまでの間に鋼線S5表面に酸化被膜などが形成されにくく、また、同表面の清浄性が維持され易い。そのため、樹脂被覆層の密着力が向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼線表面に樹脂被覆層を具える被覆鋼線の製造方法、及び被覆鋼線の製造装置、並びに被覆鋼線に関するものである。特に、本発明は、鋼線に対する樹脂被覆層の密着力(接着力)がより高い被覆鋼線を得ることができる被覆鋼線の製造方法に関する。
従来より、通信用ケーブルとして、光ケーブルが知られている。光ケーブルは、光ファイバと、テンションメンバとなる金属線と、これら光ファイバ及び金属線を一体に被覆するシースとを具え、光ファイバと金属線とがほぼ並行するように配置された状態でこれらの表面にポリエチレンなどのシース用樹脂が押し出されて形成される。テンションメンバ用金属線には、鉄線、鋼線、表面に亜鉛めっきや亜鉛アルミめっきが施された鋼線などが使用される。これら金属線は、単線、又は複数の素線(単線)を撚り合わせてなる撚り線のいずれの形態も使用される。
光ケーブルによっては、シースの厚みが薄い場合や、接続作業などを行う際に樹脂被覆層を剥離し易いように引き裂き性に優れる樹脂、つまり強度が弱い樹脂をシース用樹脂として利用する場合がある。このような場合に金属線の表面にそのままシース用樹脂を押し出してシースを形成すると、金属線からシースが剥離し易い。そこで、このような場合、まず金属線の表面に接着剤又は接着性の良い樹脂を被覆して接着層を形成し、接着層が設けられた金属線にシース用樹脂を押し出すことが行われている(特許文献1参照)。この接着層を有する金属線は、伸線工程→伸直熱処理工程→接着層の被覆工程という手順を経て製造される。
例えば、伸線工程では、ドラムなどに巻回された鋼材を引き出して伸線ダイスで引き抜き、所定の径の伸線材となったら、得られた伸線材を巻取機で巻き取って、この工程を終える。伸直熱処理工程は、伸線加工により生じた曲がりを矯正して伸線材の伸直性を高めると共に、伸線材の弾性限度を向上するためにブルーイングを行う工程である。テンションメンバ用金属線では、高強度であることに加えて、伸直性に優れることが望まれる。そこで、テンションメンバ用金属線を製造する場合は、伸線後に伸直加工を行う。伸直熱処理工程は、具体的には、ドラムなどに巻回された伸線材を引き出して矯正ローラで矯正した後、矯正された伸直材にブルーイングを施して室温程度まで冷却し、得られた鋼線を巻取機で巻き取って、この工程を終える。被覆工程は、ドラムなどに巻回された鋼線を引き出し、接着性樹脂が鋼線に付着し易いように鋼線を所定の温度に加熱し、加熱状態にある鋼線を押出機に挿入してその表面に接着性樹脂を押し出し、その後、室温程度に冷却してから得られた被覆鋼線を巻取機で巻き取って、この工程を終える。このように各工程は、通常、独立して行われる。
特開2004−118112号公報
テンションメンバに供される接着層を具える金属線では、金属線からシース用樹脂が剥離し難いように、金属線に対する接着層の密着力(接着力)がより高いことが望まれる。しかし、上記従来の製造方法では、接着層の密着性をより高めることが難しい。
接着性樹脂が被覆される前の鋼線は、その表面の清浄性が接着層の密着性に影響を及ぼす。鋼線の表面に不純物などが存在すると、清浄性が低下する。そして、これら不純物は、接着性樹脂が鋼線に接触することを阻害するため、接着層が鋼線から剥離し易くなる。従って、鋼線表面の清浄性の低下は、接着層の密着力の低下を招く。しかし、高い清浄性を維持しながら鋼線を保管しようとすると、管理が煩雑である。
また、従来の製造方法では、鋼線に接着性樹脂を被覆する前において鋼線を加熱する。この加熱は、室温程度(20℃程度)にある鋼線が200℃程度となるように行われる。しかし、室温程度の鋼線を200℃程度の高温に加熱する場合、鋼線断面においてその中心部から表層部に亘って均一的な温度に制御することが難しく、鋼線の温度にばらつきが生じることがある。鋼線温度にばらつきがあると、鋼線表面の熱膨張状態の差により不均一な変形が生じると考えられる。そして、この変形などにより、接着性樹脂の付着度合いにもばらつきが生じ、接着層を具える金属線全体でみると、密着力が小さくなる。
更に、本発明者らは、従来の製造方法により得られた接着層を具える金属線を調べたところ、金属線の表面に酸化被膜が形成されており、この酸化被膜も、接着性樹脂が金属線に密着することを妨げて、接着層の密着力を低減させる一因となると考えた。このような酸化被膜が金属線の表面に形成されたのは、従来の製造方法では、伸直熱処理工程と被覆工程とを独立して行うことから、伸直熱処理工程の後、被覆工程を行うまでに時間がかかるためであると考えられる。また、従来の製造方法では、伸直熱処理工程と被覆工程とが独立していることで、ブルーイングのための加熱と、接着層の密着性を高めるための加熱という複数回の加熱を行うことから、酸化被膜が形成されると考えられる。
加えて、上述のように従来の製造方法では、複数回の加熱を行うことから、エネルギーの低減が望まれる。また、従来の製造方法では、伸線工程と、伸直熱処理工程と、被覆工程とが全て独立しているため、リードタイムが長くなり、生産性の低下を招くだけでなく、コスト高にもなる。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その主目的は、鋼線に対する樹脂被覆層の密着性に優れる被覆鋼線を製造する被覆鋼線の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、鋼線に対する樹脂被覆層の密着性に優れる被覆鋼線を製造する被覆鋼線の製造装置を提供することにある。更に、本発明の別の目的は、鋼線に対する樹脂被覆層の密着性に優れる被覆鋼線を提供することにある。
本発明製造方法は、従来独立して行われていた伸線工程と、伸直熱処理工程と、被覆工程とを連続して行うことで上記主目的を達成する。具体的には、本発明は、鋼線表面に樹脂被覆層を形成する被覆鋼線の製造方法であって、以下の伸線工程から、伸直工程、加熱工程、温度調整工程、被覆工程に亘って連続して行うことを特徴とする。
I.鋼材に伸線加工を施して伸線材を製造する伸線工程
II.上記伸線材に伸直加工を施して伸直材を製造する伸直工程
III.上記伸直材を250℃以上400℃以下に加熱する加熱工程
IV.上記加熱工程で所定の温度に加熱された加熱材を150℃以上250℃以下に冷却する温度調整工程
V.上記温度調整工程で所定の温度に調整された鋼線の表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する被覆工程
本発明製造方法は、上記のように伸線工程から伸直工程、加熱工程、温度調整工程、被覆工程に亘る各工程を連続して行う。そのため、本発明製造方法は、煩雑な管理を行うことなく、清浄な鋼線表面に樹脂被覆層を形成することができる。また、本発明製造方法は、加熱工程が一回であるため、伸直熱処理工程と被覆工程とで複数の加熱を行う従来の製造方法と比較して、樹脂被覆層形成前の鋼線表面に形成される酸化被膜を低減することができる。更に、本発明製造方法は、樹脂被覆層の形成前において、十分に高温状態にある加熱材を冷却して、所定の温度となるように温度調整を行う構成である。そのため、室温程度の鋼線を高温に加熱する従来の製造方法と比較して、本発明製造方法では、樹脂被覆層形成前の鋼線温度にばらつきが生じにくく、その断面において均一的な温度とすることができる。加えて、本発明製造方法は、冷却による温度調整後直ちに鋼線表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する構成である。そのため、伸直熱処理工程と被覆工程との間があいており、その間鋼線が大気などに曝されることがある従来の製造方法と比較して、本発明製造方法は、樹脂被覆層形成前の鋼線表面に酸化被膜が形成されにくい。このような本発明製造方法により得られた被覆鋼線は、樹脂被覆層が鋼線に強固に密着している。具体的には、本発明被覆鋼線は、接着性樹脂からなる樹脂被覆層の引抜力が10N以上である。
上記本発明製造方法は、以下の構成を具える本発明製造装置に適用することができる。本発明製造装置は、鋼線表面に樹脂被覆層を形成する被覆鋼線の製造装置であって、以下のi〜xiの各手段を具えることを特徴とする。
i.鋼材に伸線加工を施す伸線手段
ii.上記伸線手段から得られた伸線材に伸直加工を施す伸直手段
iii.上記伸直手段から得られた伸直材を250℃以上400℃以下に加熱する加熱手段
iv.上記加熱手段により所定の温度に加熱された加熱材を150℃以上250℃以下に冷却する冷却手段
v.上記冷却手段により所定の温度に調整された鋼線の表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する被覆手段
vi.上記鋼材から伸線材、伸直材、加熱材、鋼線、樹脂被覆層を具える被覆鋼線に亘る一連長の長尺材に所定の張力を付与する張力付与手段
vii.上記伸線手段が伸線加工を行う際の伸線速度を調整する伸線速度調整手段
viii.上記加熱手段が伸直材を加熱する際の加熱温度を調整する温度調整手段
ix.上記被覆手段が樹脂被覆層を形成する際の接着性樹脂の押出量を調整する押出調整手段
x.上記鋼材から伸線材、伸直材、加熱材、鋼線、樹脂被覆層を具える被覆鋼線に亘る一連長の長尺材を移送する移送手段
xi.上記伸線速度調整手段及び温度調整手段並びに押出調整手段が上記移送手段と同期して動作するように制御を行う同期制御手段
本発明製造装置は、鋼材が伸線手段に供され、伸線手段により得られた伸線材が伸直手段に供され、伸直手段により得られた伸直材が加熱手段に供され、加熱手段により得られた加熱材が冷却手段に供され、冷却手段により得られた鋼線が被覆手段に供されるように、伸線手段と、伸直手段と、加熱手段と、冷却手段と、被覆手段とを直列的に並べて具える。この構成により本発明製造装置は、上記伸線工程から伸直工程、加熱工程、温度調整工程、被覆工程に亘る各工程を連続して行う本発明製造方法を実現することができる。従って、本発明製造装置は、鋼線に対する樹脂被覆層の密着性に優れた被覆鋼線を生産性よく製造することができる。
以下、本発明をより詳しく説明する。
伸線加工に供する被加工材としては、代表的には、圧延材、圧延材にある程度の伸線加工を施した伸線加工材、これら圧延材表面や伸線加工材の表面に亜鉛や亜鉛アルミといった金属めっきが施されたものが挙げられる。このような被加工材として、本発明では、特に、鋼からなるもの、鉄からなるもの、鋼からなるものの表面に上記金属めっきが施されたもの、鉄からなるものの表面に上記金属めっきが施されたものを用い、これらをまとめて「鋼材」と呼ぶ。従って、上記金属めっきが施された鋼材を用いた場合、本発明製造方法又は本発明装置により得られた本発明被覆鋼線は、金属めっき層の表面に接着性樹脂からなる樹脂被覆層を具える。
本発明装置は、伸線手段を具えており、この伸線手段を用いて上記鋼材に伸線加工を施す。伸線手段としては、伸線ダイスを具える伸線装置が代表的である。このような伸線手段を用いて鋼材が所望の大きさ(断面積)の伸線材となるように伸線加工を行う。伸線装置として、複数の伸線ダイスを具えたものを利用してもよい。例えば、ダイス孔の径が異なる複数の伸線ダイスを多段に具え、伸線材の大きさを段階的に変化させる(小さくする)ように構成された伸線装置を利用してもよい。伸線加工は、乾式潤滑剤、油性潤滑剤、湿式潤滑剤といった潤滑剤を用いて行う、いわゆる湿式加工とすることが好ましい。本発明被覆鋼線を光ケーブルのテンションメンバに利用する場合、直径φ2〜3mm程度の鋼材を用意し、直径φ0.4〜1.6mm程度の伸線材が得られるような伸線装置を利用するとよい。
本発明装置は、伸線加工を行う際の伸線速度を調整可能な伸線速度調整手段を具える。伸線速度調整手段としては、例えば、回転可能なキャプスタンを具えるキャプスタン装置が挙げられる。この装置では、キャプスタンの回転速度を適宜調整することで、伸線速度を調整できる。このような伸線速度調整手段は、伸線手段と後述する伸直手段との間に配置する。速度調整手段を経た伸線材は、後述する移送手段により次の伸直手段に移行される。そのため、伸線速度と長尺材の移動速度とが同調していないと、鋼材を引き抜く量と伸直手段に送られる伸線材の量とがアンバランスになる。そこで、本発明装置では、伸線速度調整手段が移送手段と同期して動作するように、この調整手段を後述する同期制御手段により制御する。
本発明装置は、伸直手段を具えており、この伸直手段を用いて上記伸線材に伸直加工を施す。伸直手段としては、矯正ローラを具える矯正装置が代表的である。本発明被覆鋼線を光ケーブルのテンションメンバに利用する場合、伸直性に優れることが望まれる。そこで、本発明装置には、所望の伸直性を有する被覆鋼線が得られるように伸直手段を具える。伸直手段に送られてきた伸線材は、後述する移送手段により所定の速度で伸直手段を通過することで、伸直加工が施される。得られた伸直材は、移送手段により後述する加熱手段に送られる。
伸直材を後述する加熱手段で加熱するにあたり、伸直材表面の清浄性を高めることが好ましい。例えば、本発明装置は、伸直手段と加熱手段との間に、伸直材表面を清浄にする清浄手段を具えてもよい。清浄手段としては、例えば、超音波清浄装置やエアワイパを具える装置などが挙げられる。上述のように潤滑剤を用いて伸線加工を行う場合、伸線材表面には、潤滑剤が残留しており、この伸線材にそのまま伸直加工を施すと、得られた伸直材表面にも潤滑剤が残留する。この潤滑剤は、鋼線と接着性樹脂との付着を阻害する要因となり得る。また、潤滑剤が付着された状態の伸直材を加熱すると、焼付きが生じる恐れもある。そこで、本発明装置は、上記清浄手段を具えることで、潤滑剤を除去して伸直材表面をより清浄にすることができる。清浄手段として超音波清浄装置を用いる場合、洗浄に用いた流体(例えば、水)を効率よく乾燥させるためにエアワイパといった強制乾燥手段を具えるものが好ましい。清浄手段に送られてきた伸直材は、後述する移送手段により所定の速度で清浄手段を通過することで清浄にされて、移送手段により後述する加熱手段に送られる。
本発明装置は、加熱手段を具えており、この加熱手段を用いて上記伸直材を所定の温度に加熱する。この加熱は、伸直材の弾性限度を上昇し、伸直性を更に向上するために行うものであり、いわゆるブルーイングに該当する。加熱温度は、250℃以上400℃以下とする。より好ましくは、280℃以上350℃以下である。伸線材の加熱温度を250℃未満とすると、上記弾性限度の向上が得られにくい。また、本発明装置は、伸直材を加熱した後に後述する冷却手段で冷却して所定の温度に調整された鋼線を被覆手段に供する構成である。そのため、加熱温度が250℃未満の低温である場合、この低温加熱材を更に冷却すると、冷却後の鋼線の温度が、接着性樹脂の被覆の際に求められる最低温度:150℃よりも低くなる恐れがある。そこで、本発明では、伸直材を250℃以上に加熱する。ただし、加熱温度が400℃超となると、温度が高過ぎて、伸直材の表面に酸化被膜が形成される恐れがある。そこで、加熱温度は、400℃以下とする。加熱手段としては、例えば、高周波式加熱装置、ヒータ式加熱装置などが挙げられる。高周波式加熱装置を利用すると、1.加熱材の表面に酸化被膜ができ難く、2.電流出力を変化させることで簡単に温度の調整が行え、3.高速加熱が可能である、といった多くの効果を奏することができる。加熱手段には、加熱温度を調整可能な温度調整手段を具えておく。加熱手段に送られてきた伸直材は、後述する移送手段により所定の速度で加熱手段を通過することで、加熱される。そのため、伸直材の加熱状態は、伸直材の移動速度に依存する。従って、温度調整手段は、移送手段と同期して動作するように、後述する同期制御手段により制御する。所定の温度に加熱された加熱材は、移送手段により後述する冷却手段に送られる。
本発明装置は、冷却手段を具えており、この冷却手段は、上記加熱手段により加熱された加熱材を所定の温度となるように冷却して、加熱材の温度調整を行うための手段である。樹脂被覆層を形成する際、鋼線に対する接着性樹脂の密着性を高めるためには、鋼線がある程度の高温状態にあることが望まれる。しかし、加熱手段により加熱された直後の加熱材は、その温度が250℃以上であり、樹脂被覆層の形成に適した温度よりも高い。そこで、本発明では、加熱材の温度が樹脂被覆層の形成に適した温度となるように冷却手段で冷却して温度調整を行う。加熱材が150℃未満に冷却されると接着性樹脂が密着しにくく、250℃超であると、鋼線表面を接着性樹脂が流動して適切な厚さの樹脂被覆層が設けられない。そこで、冷却手段は、加熱材の温度が150℃以上250℃以下となるように冷却する。特に、150℃以上200℃以下が好ましい。なお、冷却された鋼線の温度を250℃とする場合、加熱材の加熱温度は250℃超とする。冷却手段としては、例えば、エアワイパを具える冷却装置が挙げられる。冷却手段として、例えば、流体を貯留する冷却槽を具え、この冷却槽に加熱材を浸漬させて加熱材を冷却する装置を利用してもよいが、この装置の場合、冷却された鋼線表面に流体が付着するため、この流体を除去する必要がある。これに対し、エアワイパを具える装置では、加熱材に強制的にエアを吹き付けて冷却を行う構成であるため、冷却されて所定の温度に調整された鋼線を速やかに被覆手段に供することができる。冷却手段は、冷却温度を調整可能に構成しておく。例えば、エアワイパを具える装置では、吹き付けるエアの量を調整することで冷却温度を調整できるようにしてもよい。また、冷却手段に送られてきた加熱材は、後述する移送手段により所定の速度で冷却手段を通過することで冷却される。そのため、加熱材の冷却状態は、加熱材の移動速度にある程度影響を受ける。従って、加熱材の移動速度に応じて冷却温度を調整することが好ましい。所定の温度に調整された鋼線は、移送手段により後述する被覆手段に送られる。
本発明装置は、被覆手段を具えており、この被覆手段を用いて所定の温度にある上記鋼線の表面に樹脂被覆層を形成する。本発明では、樹脂被覆層の形成を押し出しにて行う。そこで、被覆手段には、押出装置を用いる。樹脂被覆層の形成に用いる樹脂は、接着性樹脂とする。接着性樹脂としては、例えば、接着性ポリオレフィン、ウレタン樹脂などが挙げられる。従来より接着層の形成に用いられている樹脂を利用してもよい。被覆手段には、接着性樹脂の押出量を調整可能な押出調整手段を具えておく。押出量の調整は、例えば、押出装置に具えるスクリューの回転速度を調整することで行うことができる。押出量は、所望する樹脂被覆層の厚さに応じて適宜選択するとよい。被覆手段に送られてきた鋼線は、後述する移送手段により所定の速度で被覆手段を通過することで、樹脂被覆層が形成される。そのため、樹脂被覆層が適切な厚さになるようにするには、鋼線の移動速度に応じて押出量を調整することが望まれる。そこで、押出調整手段は、移送手段と同期して動作するように後述する同期制御手段により制御する。樹脂被覆層を具えた被覆鋼線は、巻取機などで巻き取る。
本発明装置は、上記伸線手段、伸直手段、加熱手段、冷却手段、被覆手段を直列的に配置させて具える。そのため、本発明装置を用いて被覆鋼線を製造すると、鋼材から伸線材、伸直材、加熱材、鋼線、そして樹脂被覆層を具える被覆鋼線に亘る一連長の長尺材が上記各手段に渡され、各手段は、この長尺材により連結された状態となる。
本発明装置は、伸直手段に加えて加熱手段を具えることで伸直性に優れる被覆鋼線を製造することができる。更に、本発明装置は、伸線材にある程度張力を付与して伸直加工を行う構成とすると、伸直性をより高められる。また、伸直工程以降の各工程において長尺材の伸直性が維持されるようにするには、上記長尺材全体にある程度張力を付与することが挙げられる。そこで、本発明装置は、上記長尺材に所定の張力を付与する張力付与手段を具える。長尺材に付与する張力は、所望の伸直性が得られるように適宜選択するとよい。張力付与手段は、長尺材全体に所定の張力が付与できるように、被覆手段よりも下流側(巻取機側)に配置する。張力付与手段としては、例えば、ダンサローラを具えるダンサ装置などが挙げられる。ダンサ装置は、ダンサローラを適宜回転させて長尺材を巻き取ることで、長尺材に張力を付与する。ダンサローラの回転速度を調整することで、張力の大きさを調整することができる。ダンサローラの回転速度は、長尺材の移動速度に応じて調整することが好ましい。
一連長の長尺材は、伸線手段から、伸直手段、加熱手段、冷却手段、被覆手段までの各手段に亘って順次、各手段から加工や処理が施されるように、伸線手段側から被覆手段側に亘って、より詳しくは、鋼材が巻回されたサプライから被覆鋼線を巻き取る巻取機までの間に亘って所定の速度で移動させる必要がある。そこで、本発明装置は、この長尺材を移送する移送手段を具える。この移送手段は、長尺材の移動速度が調整可能な構成としておく。このような移送手段としては、例えば、回転可能なキャプスタンを具えるキャプスタン装置が好適に利用できる。キャプスタン装置を利用する場合、キャプスタンの回転速度を調整することで、長尺材の移動速度を調整できる。移送手段は、長尺材全体を所定の速度で移動させることができるように、被覆手段の下流側(巻取機側)に配置する。移送手段としてキャプスタン装置を利用する場合、キャプスタンによる長尺材(被覆鋼線)の巻取動作は、長尺材に張力が付与された状態で行うことが好ましい。そこで、移送手段は、被覆手段よりも下流側で、上記張力付与手段よりも上流側(被覆手段側)に配することが好ましい。張力付与手段としてダンサ装置を用いる場合、被覆鋼線は、ダンサローラの回転により、移送手段からダンサ装置に送られ、巻取機の回転により、ダンサ装置から巻取機に送られる。巻取機の回転速度は、長尺材の移動速度に応じて調整することが好ましい。
長尺材の移動速度は、上述したように伸線速度、加熱状態、樹脂被覆層の厚さに影響を与える。そこで、本発明装置は、移送手段が、伸線速度調整手段、温度調整手段、押出調整手段と同期して動作するように制御可能な同期制御手段を具える。同期制御手段は、市販のコンピュータなどが利用できる。
その他、本発明装置は、被覆手段の出口側に第二の冷却手段を具える構成としてもよい。この構成により、被覆手段が接着性樹脂を鋼線表面に押し出した後、樹脂の硬化を促進すると共に、高温の鋼線を冷却することができる。第二冷却手段としては、接着性樹脂を十分に硬化することができればよく、例えば、水などの流体を貯留した冷媒槽を有する冷却装置や、強制的に冷却エアを吹き付けるエアワイパを具える冷却装置などが挙げられる。水を充填した冷却槽を具える冷却装置を用いる場合、被覆鋼線表面に付着した水は、乾燥により容易に除去することができる。この乾燥は、自然乾燥としてもよいが、別途乾燥手段を具えて、強制的に乾燥を行う構成とすると、乾燥時間を短縮できる。乾燥手段としては、例えば、エアワイパが挙げられる。水などの流体を充填した冷却槽を用いず、エアワイパで冷却を行う場合、被覆鋼線表面に流体が残留せず、乾燥などの後工程も不要である。
その他、本発明装置は、得られた被覆鋼線の検査手段を具えていてもよい。検査手段としては、例えば、樹脂被覆層の厚みを測定する線径測定装置や、表面欠陥の有無を検出する欠陥検出装置などが挙げられる。このような検査手段は、上記第二冷却手段の下流側に配置するとよい。
上記本発明方法及び本発明装置により得られた本発明被覆鋼線は、樹脂被覆層の密着性に優れる。具体的には、樹脂被覆層の引抜力が10N以上という高い密着性を有する被覆鋼線である。引抜力は、以下のように測定する。被覆鋼線を所定の長さに切断して短尺材とし、この短尺材の一端側の樹脂被覆層を除去して鋼線を露出させ、他端側は樹脂被覆層を残しておく。つまり、短尺材の長手方向に所定長さの樹脂被覆層を有するものを作製し、これをサンプルとする。そして、所定径のダイス孔を有するダイスにこのサンプルを挿通し、サンプルの鋼線露出部分を把持してダイスから引き抜き、樹脂被覆層がダイスにより剥ぎ取られるときの力を引抜力とする。引抜力が大きいほど、樹脂被覆層は、鋼線から剥がれ難い、つまり、鋼線に密着しており、密着性が高いといえる。
本発明被覆鋼線は、樹脂被覆層の密着性が高いだけでなく、伸直性にも優れる。従って、高い伸直性が求められる光ケーブルのテンションメンバに好適である。光ケーブルには、架空用、引込用(ドロップ線)、屋内用(インドア線)と呼ばれるものがあり、架空用、引込用のように屋外に布設されるものは、高い防食性が望まれるため、伸線加工に供する鋼材には、金属めっき層、特に、亜鉛めっき層、亜鉛アルミめっき層のいずれかを具えるものが好適である。屋内用では、上記二つのケーブルほどの高い防食性を有していなくてもよいため、伸線加工に供する鋼材は、上記金属めっき層が有っても無くてもよい。
本発明製造方法及び本発明製造装置は、伸線工程から被覆工程に亘って連続して行う構成であるため、表面清浄性に優れ、かつ十分に加熱されており、更に表面に酸化被膜がほとんどない状態にある鋼線に対して樹脂被覆層の形成を行うことができる。つまり、本発明方法及び本発明装置は、鋼線と樹脂被覆層との密着を阻害する異物や酸化被膜といった介在物が鋼線表面にほとんど存在せず、かつ密着性を高めるのに十分な温度状態にある鋼線に樹脂被覆層を形成できる。そのため、本発明方法及び本発明装置により得られた本発明被覆鋼線は、従来の方法により得られた被覆鋼線と比較して、樹脂被覆層の密着性に優れる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は、本発明被覆鋼線の製造装置の概略構成図、(B)は、本発明被覆鋼線の断面図である。この製造装置1は、鋼線S表面に接着性樹脂からなる樹脂被覆層Pが形成された被覆鋼線S6を製造する装置であり、伸線加工から、伸直加工、熱処理、被覆層の形成に亘る工程を連続して行う。
製造装置1は、鋼材S1に伸線加工を施す伸線装置10と、伸線加工が施された伸線材S2に伸直加工を施す矯正装置20と、伸直加工が施された伸直材S3を所定の温度に加熱する加熱装置30と、所定の温度に加熱された加熱材S4を冷却して温度調整を行う冷却装置40と、所定の温度に調整された鋼線S5の表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する押出装置50とを具える。これら伸線装置10,矯正装置20,加熱装置30,冷却装置40,押出装置50は、上流側に伸線装置10が、下流側に押出装置50が配されるように直列的に並べられている。また、この製造装置1は、鋼材S1から伸線材S2,伸直材S3,加熱材S4,鋼線S5,被覆鋼線S6に至る一連長の長尺材Sを一定の速度で移送させるキャプスタン装置60と、長尺材Sに対して、所定の張力を付与するダンサ装置70とを具える。キャプスタン装置60は、押出装置50の下流側に、ダンサ装置70は、キャプスタン装置60の下流側に配している。この構成により、長尺材Sは、一定の張力が付与された状態で一定の速度で各装置10〜50を移動して、各加工や処理が施される。
伸線装置10は、伸線ダイス(図示せず)を複数多段に具える。サプライ100から引き出されて伸線装置10に導入された鋼材S1は、これらダイスにより所定の線径の伸線材S2に加工される。伸線装置10では、潤滑剤を用いた湿式伸線加工を行う。伸線装置10の出口側には、伸線キャプスタン装置11を配置し、所定の速度でキャプスタンを回転させて、鋼材S1を伸線装置10に導入すると共に、得られた伸線材S2を巻き取る。このキャプスタンの回転速度を適宜調整することで伸線速度が調整されて、矯正装置20に送られる伸線材の量も調整される。また、製造装置1では、上述のように鋼材S1及び伸線材S2を含む長尺材Sを下流側に配されたキャプスタン装置60の駆動により伸線装置10側から押出装置50側に移動させる。そのため、製造装置1は、伸線速度の調整を行う伸線キャプスタン装置11と、長尺材S全体の速度調整を行うキャプスタン装置60とが同期して動作するように制御する同期制御手段(図示せず)を具える。
矯正装置20は、複数の矯正ローラを具えており、これら矯正ローラにて伸線材S2に生じた曲がりなどを矯正し、伸直性を高める。製造装置1では、矯正装置20により得られた伸直材S3を加熱装置30により加熱する前に、伸直材S3の表面を清浄にする清浄装置80を具える。伸直材S3の表面には、伸線加工の際に利用した潤滑剤が残留している。清浄装置80は、この潤滑剤の除去を行うものであり、超音波洗浄装置である。この超音波洗浄装置は、出口側(加熱装置30側)にエアワイパを具え、洗浄後、伸直材S3に付着した洗浄用水をこのエアワイパで強制乾燥する構成である。
加熱装置30は、伸直材S3の弾性限度を向上させて伸直性をより高めるために伸直材S3を加熱するものであり、いわゆるブルーイングに相当する熱処理を行う。加熱装置30は、高周波式加熱装置であり、温度調整手段(図示せず)にて電流出力を調整して加熱温度の調整を行う。具体的には、伸直材S3の表面が250℃以上400℃以下となるように温度調整手段を調節する。加熱温度は、伸直材S3の移動速度に影響を受けるため、温度調整手段もキャプスタン装置60と同期して動作するように同期制御手段により制御される。
冷却装置40は、所定の温度に加熱された加熱材S4が樹脂被覆層の形成に適切な温度となるように加熱材S4を冷却して温度を調整するものである。この冷却装置40は、エアワイパを具えた装置であり、加熱材S4に強制的にエアを吹き付けて加熱材S4を冷却する。冷却温度は、エアの吹き付け量により調整する。また、冷却温度は、加熱材S4の移動速度に影響を受けるため、冷却装置40は、冷却された鋼線S5の表面温度が150℃以上250℃以下となるように、長尺材Sの速度に応じてエアの吹き付け量を調整する。
押出装置50は、所定の温度に調整された鋼線S5に接着性樹脂を押し出して、鋼線S5表面に樹脂被覆層を形成するものである。押出装置50には、スクリューの回転速度を調整する押出調整手段(図示せず)を具えており、樹脂被覆層の厚みが所定の厚さとなるように、押出調整手段により回転速度を調整して押出量を調整する。また、樹脂被覆層の厚みが適切な大きさとなるように、長尺材Sの移動速度と押出量とを同調させる。具体的には、押出調整手段がキャプスタン装置60と同期して動作するように同期制御手段により制御する。
製造装置1は、鋼線S5の表面に接着性樹脂が被覆された後、樹脂を効率よく硬化させると共に鋼線を冷却するために、押出装置50の出口側に別途、樹脂冷却装置51を具える。この樹脂冷却装置51は、冷却用水が充填され、接着性樹脂が塗布された鋼線を浸漬させる冷却槽と、冷却槽の出口側にエアワイパとを具え、冷却槽にて順次同鋼線を冷却して樹脂を硬化させ、被覆鋼線S6の表面に付着した冷却水を上記エアワイパにて強制乾燥させる構成である。
キャプスタン装置60は、樹脂冷却装置51の下流側に配置され、一定の速度で回転するキャプスタンで被覆鋼線S6を巻き取ることで、鋼材S1から、伸線材S2、伸直材S3、加熱材S4、鋼線S5、被覆鋼線S6に亘る一連長の長尺材Sを伸線装置10側から樹脂冷却装置51側に一定の速度で移動させる。キャプスタン装置60に具えるキャプスタンの回転速度を調整することで、長尺材Sの速度が調整される。この長尺材Sの移動速度は、伸線加工における伸線速度、ブルーイングを行う際の伸直材の加熱状態、樹脂被覆層の厚さ(接着性樹脂の押出量)に影響を与える。そこで、キャプスタン装置60は、伸線速度調整手段、温度調整手段、押出調整手段と同期して動作するように、同期制御手段(図示せず)により制御される。同期制御手段は、市販のコンピュータを用いている。上述した冷却装置40におけるエアの吹き付け量の調整も同期制御手段により制御させてもよい。また、後述する巻取機110の回転速度も、キャプスタン装置60と同期して動作するように同期制御手段により制御してもよい。
ダンサ装置70は、回転可能なダンサローラを具え、このローラを回転させて長尺材Sを巻き取ることで、一連長の長尺材Sに所定の張力を付与するものであり、上記キャプスタン装置60の下流側に配される。ローラの回転速度を調整することで、張力の大きさを適宜調整する。また、ローラの回転速度は、長尺材Sの移動速度に応じて適宜調整する。ダンサ装置70により長尺材S全体に張力が付与されることで、1.伸線加工の際に曲がりなどが生じにくくなり伸直性を高めることができる、2.伸直加工の際に伸直性をより高めることができる、3.伸直加工後においても高い伸直性が維持され易い、といった効果がある。そのため、得られた被覆鋼線S6は、高い伸直性を有する。
その他、製造装置1は、樹脂冷却装置51とキャプスタン装置60との間に線径検査装置90,欠陥検出装置91を配置させており、得られた被覆鋼線S6の線径の測定や表面欠陥の検出を行うことができる構成である。そして、検査などが行われた被覆鋼線S6は、巻取機110で巻き取られる。巻取機110は、所定の速度で回転するドラムにより被覆鋼線S6を巻き取る構成であり、その回転速度は、長尺材Sの移動速度に応じて調整する。
上記構成を具える製造装置1は、キャプスタン装置60を駆動させて長尺材Sを巻き取ることで、伸線装置10から、伸線キャプスタン装置11、矯正装置20、清浄装置80、加熱装置30、冷却装置40、押出装置50、樹脂冷却装置51、線径測定装置90、欠陥検出装置91に亘って長尺材Sを進行させ、最終的に被覆鋼線S6を製造する。より具体的には、製造装置1は、キャプスタン装置60の駆動及び伸線キャプスタン装置11の駆動により、サプライ100から引き出された鋼材S1を伸線装置10に導入させ、主として伸線キャプスタン装置11にて伸線材S2を巻き取ることで鋼材S1を伸線ダイスに通過させて伸線加工を施す。伸線キャプスタン装置11に巻き取られた伸線材S2は、キャプスタン装置60の駆動により伸線キャプスタン装置11から引き出されて矯正装置20に送られて伸直加工が施される。伸直加工が施された伸直材S3は、キャプスタン装置60の駆動により、矯正装置20から清浄装置80に送られて、その表面が清浄にされてから加熱装置30に送られ、所定の温度に加熱される。加熱された加熱材S4は、キャプスタン装置60の駆動により、加熱装置30から冷却装置40に送られて冷却される。冷却されて所定の温度に調整された鋼線S5は、キャプスタン装置60の駆動により冷却装置40から押出装置50に送られて、その表面に接着性樹脂が押し出され、同表面に樹脂が塗布された状態となる。表面に樹脂が塗布された被覆鋼線S6は、キャプスタン装置60の駆動により、押出装置50から樹脂冷却装置51に送られて冷却され、樹脂が十分に硬化される。そして、被覆鋼線S6は、キャプスタン装置60の駆動により、樹脂冷却装置51から線径測定装置90、欠陥検出装置91に順に送られて適宜線径測定や欠陥の検出が行われる。検査などが行われた被覆鋼線S6は、キャプスタン装置60のキャプスタンに巻き取られ、その一端は、ダンサ装置70のダンサローラに巻き取られる。従って、被覆鋼線S6は、ダンサ装置70の駆動により、キャプスタン装置60からダンサ装置70に送られ、更に、巻取機110の回転により、ダンサ装置70から巻取機110に送られて、巻取機110に巻き取られる。このように製造装置1は、伸線加工から、伸直加工、加熱加工、被覆加工までを連続して行う。
<試験例>
鋼線表面に樹脂被覆層を具える被覆鋼線を作製し、得られた被覆鋼線について、樹脂被覆層の引抜力(N)、引張強度(N/mm)、伸直度(mm/500mm又はmm/1000mm)、自転度合い(回/5m又は回/15m)を調べた。被加工材には、亜鉛めっきが施された鋼材(C:0.60質量%含有の硬鋼線 JIS G 3521相当材)を用いた。表1に被覆鋼線の製造条件を示す。
Figure 2007179983
表1において加熱条件の加熱温度とは、加熱された際の鋼線表面の温度であり、被覆条件の鋼線温度とは、被覆直前の鋼線表面の温度であり、押出装置温度とは、押し出す際の接着性樹脂の温度であり、加工速度とは、被覆鋼線の製造速度である。なお、比較材において加工速度は、後述する被覆工程における製造速度である。
表1に示す試料No.1,2は、図1に示す本発明製造装置を用いて、表1に示す条件で製造した被覆鋼線である。比較材A,Bは、伸線工程と、伸直熱処理工程と、被覆工程とを独立して行う従来の製造方法で、表1に示す条件で製造した被覆鋼線である。具体的には、伸線工程では、鋼材に伸線加工を施して伸線材を作製し、得られた伸線材を巻取機で巻き取る。伸直熱処理工程では、巻き取られた伸線材を引き出して、矯正ローラによる伸直加工、高周波式加熱装置によるブルーイング、室温程度までの冷却を順次行って鋼線を作製し、巻取機で巻き取る。被覆工程では、巻き取られた鋼線を引き出して、高周波式加熱装置による予備加熱、押出装置による被覆、室温程度までの冷却を順次行って、比較材A,Bを作製した。
引抜力は、以下のように測定した。図2(A)は、引抜力の測定方法を説明する説明図、(B)は、伸直度の測定方法を説明する説明図である。得られた被覆鋼線を所定の長さに切断して短尺材とし、この短尺材の一端側の樹脂被覆層をナイフなどで除去して鋼線Sを露出させ、他端側に所定の長さの樹脂被覆層Pが残された状態のサンプルSamを作製する。外径0.50〜0.60mmの被覆鋼線の短尺材は、長さを300mmとし、樹脂被覆層Pを10mm残し、外径1.30〜1.40mmの被覆鋼線の短尺材は、長さを300mmとし、樹脂被覆層Pを10mm残した。サンプルSamにおいて露出された鋼線S側をダイス孔径が0.51mm(外径0.50〜0.60mmのサンプル用)のダイスD(図2では断面を示す)、又はダイス孔径が1.22mm(外径1.30〜1.40mmのサンプル用)のダイスDに挿通し、ダイス孔から突出した部分を把持してサンプルSamを引き抜き、樹脂被覆層Pが剥離されるときの力を引抜力として測定する。評価は、各試料、比較材のサンプルSamを10個作製して行った。その結果を表2に示す。
引張強度は、JIS Z 2241に基づいて測定した。伸直度は、以下のように測定した。得られた被覆鋼線を所定長さに切断してサンプルSamとし、図2(B)に示すようにサンプルSamの両端部が水平台200に接するように配置した際、水平台200とサンプルSamとの間の距離lが最も大きいところを測定し、この距離lを伸直度として測定する。伸直度の測定における試料No.1及び比較材Aの所定長さは、500mm、試料No.2及び比較材Bの所定長さは、1000mmとした。自転度合いは、得られた被覆鋼線を所定長さに切断してサンプルとし、サンプルの一端側からみたときの他端側の回転状態を測定する。自転度合いの測定における試料No.1及び比較材Aの所定長さは、5m、試料No.2及び比較材Bの所定長さは、15mとした。これら引張強度、伸直度、自転度合いを表2に示す。
Figure 2007179983
表2において試料No.1,2の評価の下に記載された括弧内の数値は、光ケーブルのテンションメンバに要求される基準値の一例である。表2に示すように伸線加工から被覆加工に亘って連続して行った試料No.1は、比較材Aに比較して、引抜力が高く、試料No.1と同様に伸線加工から被覆加工まで連続して行った試料No.2は、比較材Bに比較して引抜力が高い。これらのことから、試料No.1,2は、従来の製造方法で得られた比較材よりも、樹脂被覆層の密着力が高められていることがわかる。更に、試料No.1,2は、伸直度が高く、自転度合いが小さく、テンションメンバに要求される基準値を十分に上回っている。従って、上述したように伸線加工から被覆加工に亘って連続して行って得られた被覆鋼線は、高い伸直性が望まれる光ケーブルのテンションメンバに好適に利用できると期待される。
本発明製造方法及び本発明製造装置は、鋼線表面に接着性樹脂からなる樹脂被覆層が形成された被覆鋼線の製造に利用される。また、本発明被覆鋼線は、屋外又は屋内に配される光ケーブルのテンションメンバとして好適に利用することができる。
(A)は、本発明製造装置の概略構成図、(B)は、本発明被覆鋼線の断面図である。 (A)は、引抜力の測定方法を説明する説明図、(B)は、伸直度の測定方法を説明する説明図である。
符号の説明
1 製造装置
10 伸線装置 11 伸線キャプスタン装置 20 矯正装置
30 加熱装置 40 冷却装置 50 押出装置 51 樹脂冷却装置
60 キャプスタン装置 70 ダンサ装置 80 清浄装置
90 線径検査装置 91 欠陥検出装置
100 サプライ 110 巻取機 200 水平台

Claims (3)

  1. 鋼線表面に樹脂被覆層を形成する被覆鋼線の製造方法であって、
    鋼材に伸線加工を施して伸線材を製造する伸線工程と、
    前記伸線材に伸直加工を施して伸直材を製造する伸直工程と、
    前記伸直材を250℃以上400℃以下に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で所定の温度に加熱された加熱材を150℃以上250℃以下に冷却する温度調整工程と、
    前記温度調整工程で所定の温度に調整された鋼線の表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する被覆工程とを有し、
    前記伸線工程から、伸直工程、加熱工程、温度調整工程、被覆工程に亘って連続して行うことを特徴とする被覆鋼線の製造方法。
  2. 鋼線表面に樹脂被覆層を形成する被覆鋼線の製造装置であって、
    鋼材に伸線加工を施す伸線手段と、
    前記伸線手段により得られた伸線材に伸直加工を施す伸直手段と、
    前記伸直手段により得られた伸直材を250℃以上400℃以下に加熱する加熱手段と、
    前記加熱手段により所定の温度に加熱された加熱材を150℃以上250℃以下に冷却する冷却手段と、
    前記冷却手段により所定の温度に調整された鋼線の表面に接着性樹脂を押し出して樹脂被覆層を形成する被覆手段と、
    前記鋼材から伸線材、伸直材、加熱材、鋼線、樹脂被覆層を具える被覆鋼線に亘る一連長の長尺材に所定の張力を付与する張力付与手段と、
    前記伸線手段が伸線加工を行う際の伸線速度を調整する伸線速度調整手段と、
    前記加熱手段が伸直材を加熱する際の加熱温度を調整する温度調整手段と、
    前記被覆手段が樹脂被覆層を形成する際の接着性樹脂の押出量を調整する押出調整手段と、
    前記鋼材から伸線材、伸直材、加熱材、鋼線、樹脂被覆層を具える被覆鋼線に亘る一連長の長尺材を移送する移送手段と、
    前記伸線速度調整手段、温度調整手段、押出調整手段が前記移送手段と同期して動作するように制御を行う同期制御手段とを具えることを特徴とする被覆鋼線の製造装置。
  3. 鋼線表面に樹脂被覆層を具える被覆鋼線であって、
    前記樹脂被覆層は、接着性樹脂からなり、
    前記樹脂被覆層の引抜力が10N以上であることを特徴とする被覆鋼線。
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