JP2007176150A - 液滴吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液滴に照射するレーザ光の光学特性を安定させて、液滴からなるパターンの形状制御性を向上させた液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】吐出ヘッド32と相対向するマザー基板2M上の位置に照射位置PTを設定して、レーザヘッド34(反射ミラーM)と照射位置PTとの間に、液滴Fbから蒸発する「蒸発成分Ev」を吸引する吸引ポート33を配設するようにした。そして、ヘッドユニット30を「走査方向RA」に沿って走査させて、レーザ光Bの照射された液滴Fbを、吸引ポート33からレーザヘッド34に相対移動させるようにした。
【選択図】図6

Description

本発明は、液滴吐出装置に関する。
従来、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置には、画像を表示するための基板が備えられている。この種の基板には、品質管理や製造管理を目的として、その製造元や製品番号等の製造情報をコード化した識別コード(例えば、2次元コード)が形成されている。識別コードの製造方法には、金属箔にレーザ光を照射してコードパターンをスパッタ成膜するレーザスパッタ法や、研磨材を含んだ水を基板等に噴射してコードパターンを刻印するウォータージェット法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
上記レーザスパッタ法では、所望するサイズのコードパターンを得るために、金属箔と基板の間隙を数μm〜数十μmに調整しなければならない。そのため、基板と金属箔の表面に高い平坦性が要求され、しかも、基板と金属箔との間の間隙をμmオーダの精度で調整しなければならない。その結果、レーザスパッタ法は、対象基板の制限された汎用性の低い製造方法であった。また、ウォータージェット法では、基板の刻印時に、水や塵埃、研磨剤等を飛散させる。そのため、ウォータージェット法は、対象基板を汚染させる問題があった。
そこで、近年では、上記生産上の問題を解消する製造方法として、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、金属微粒子を含む液滴を液滴吐出ヘッドのノズルに吐出させて、その液滴を乾燥させることによりコードパターンを製造する。そのため、対象基板の適用範囲を容易に拡大させることができ、かつ、対象基板の汚染を回避させることができる。
インクジェット法は、基板に着弾した液滴を乾燥させることによりコードパターンを形成する。基板に着弾した液滴は、基板の表面状態や液滴の表面張力等に応じ、基板表面に沿って着弾後に直ちに濡れ広がる。そのため、インクジェット法では、液滴の乾燥に時間を要すると(例えば、100ミリ秒以上の時間を要すると)、着弾した液滴が基板表面で過剰に濡れ広がり、液滴の領域が対応するパターン形成領域から食み出す問題があった。
上記問題は、着弾した液滴の領域にレーザ光を照射し、着弾した液滴を瞬時に固化させることにより解決できる。一方、レーザ光の照射によって液滴を固化させると、液滴からの蒸発成分が各種の光学系に付着し、レーザ光の光学系を汚染させる虞がある。そのため、レーザ光を利用する液滴吐出装置には、蒸発成分を吸引する吸引手段を設け、レーザヘッドの周辺に浮遊する蒸発成分を吸引して排気させる必要がある。
液滴吐出装置では、従来より、蒸発成分を吸引する吸引手段を搭載して液滴吐出ヘッドの周辺に浮遊する蒸発成分を吸引し、液滴のにじみを抑制させる、あるいは液滴吐出ヘッド周辺の結露を回避させる提案がある。特許文献3は、着弾した液滴の領域をファンによる空気流や非接触真空吸引デバイスによる空気流に晒し、液滴の乾燥を促進させる。特許文献4は、液滴吐出ヘッドの上側周辺に揮発性物質を吸引する吸引手段を設け、液滴吐出ヘッドの下面周辺に浮遊して滞留する揮発性物質を液滴吐出ヘッドの下面周辺の空気と共に吸引して排除する。特許文献5は、印刷用紙の両側方、又は紫外線を照射する照射エリアよりも印刷用紙の搬送方向の下流側で吸引動作を行い、紫外線照射にともなう液滴からの蒸発成分を吸引する。
特開平11−77340号公報 特開2003−127537号公報 特開2003−136689号公報 特開2005−22194号公報 特開2003−145737号公報
しかしながら、特許文献3と特許文献4は、液滴のにじみ防止や結露防止を目的とするため、着弾した液滴周辺や液滴吐出ヘッド周辺の蒸発成分を吸引する一方で、吸引動作にともなう蒸発成分の流動経路と光学系の配置位置との間の関係について何ら検討していない。また、特許文献5は、電磁輻射線透過板や反射板などの光学系の保護を目的とする一方で、電磁輻射装置の直下で蒸発した蒸発成分を印刷用紙の両側、あるいは、照射位置の下流側から吸引する。そのため、吸引途中の蒸発成分が電磁輻射装置の直下を通過し、蒸発成分の一部が光学系に付着して光学系を汚染する。
この結果、上記液滴吐出装置では、レーザ照射にともなう蒸発成分により液滴吐出ヘッドやレーザ光の光学系を汚染させる問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液滴に照射するレーザ光の光学特性を安定させて、液滴からなるパターンの形状制御性を向上させた液滴吐出装置を提供することである。
本発明の液滴吐出装置は、対象物に液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと相対向する前記対象物の領域にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段と前記レーザ光の照射位置との間に設けられて前記液滴からの蒸発成分を吸引する吸引手段と、を備えた。
本実施形態の液滴吐出装置によれば、液滴から蒸発する蒸発成分を、レーザ照射手段から見た照射位置側に流動させて吸引させることができる。また、液滴から蒸発する蒸発成分を、液滴吐出ヘッドから見た照射位置側に流動させて吸引させることができる。従って、蒸発成分によるレーザ照射手段の汚染と、液滴吐出手段の汚染と、を回避させることができる。その結果、レーザ照射手段によるレーザ照射動作と、液滴吐出手段による液滴吐出動作と、を安定させることができ、液滴からなるパターンの形状制御性を向上させるこができる。
この液滴吐出装置において、前記対象物と前記レーザ照射手段とを相対移動させて前記対象物に着弾した前記液滴を前記照射位置に配置させ、前記対象物と前記吸引手段とを相対移動させて前記照射位置の前記液滴を前記吸引手段と相対向する位置に配置させる相対移動手段を備えた構成であってもよい。
この液滴吐出装置によれば、相対移動手段が、照射位置の液滴を吸引手段に向かって相対移動させる。従って、液滴近傍に浮遊する蒸発成分を吸引手段に近接させることができ、レーザ照射手段の汚染と液滴吐出手段の汚染を、より確実に回避させることができる。
この液滴吐出装置において、前記相対移動手段は、前記対象物と前記レーザ照射手段とを相対移動させて、前記対象物に着弾した前記液滴の中で前記吸引手段と相対向する位置を通過した前記液滴を前記レーザ照射手段と相対向する位置に配置させる構成であってもよい。
この液滴吐出装置によれば、相対移動手段は、レーザ光を受けて蒸発成分の吸引された状態の液滴のみをレーザ照射手段と相対向する位置に配置させる。従って、レーザ照射手段の近傍で、蒸発成分の浮遊を確実に回避させることができる。
この液滴吐出装置において、前記相対移動手段は、少なくとも前記吸引手段、前記レーザ照射手段、前記液滴吐出ヘッドのいずれか1つを前記対象物上で移動させる多関節ロボットであってもよい。
この液滴吐出装置によれば、少なくとも吸引手段、レーザ照射手段、液滴吐出ヘッドのいずれか1つを、多関節ロボットによって、対象物上で移動させることができる。従って、少なくとも吸引手段、レーザ照射手段、液滴吐出ヘッドのいずれか1つの移動範囲を拡張させることができ、形状制御性を向上させた液滴からなるパターンの生産性を、さらに向上させることができる。
この液滴吐出装置において、前記液滴吐出ヘッドは、前記対象物との間の流路抵抗が、前記液滴吐出ヘッドの外側と前記対象物との間の流路抵抗よりも大きい構成であってもよい。
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドと対象物との間の空間における気体の流動を抑制させることができる。従って、液滴吐出ヘッドから吐出した液滴の飛行曲がりを回避させることができ、液滴の着弾精度を維持させることができる。その結果、液滴からなるパターンの形状制御性を、さらに向上させるこができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。まず、本発明の液滴吐出装置を利用して形成した識別コードを有する液晶表示装置1について説明する。
図1において、透明基板2の一側面(表面2a)には、その略中央位置に液晶分子を封入した四角形状の表示部3が形成され、その表示部3の外側には、走査線駆動回路4及びデータ線駆動回路5が形成されている。液晶表示装置1は、これら走査線駆動回路4が供給する走査信号と、データ線駆動回路5が供給するデータ信号と、に基づいて、前記表示部3内の液晶分子の配向状態を制御する。液晶表示装置1は、図示しない照明装置からの平面光を液晶分子の配向状態によって変調し、表示部3の領域に所望の画像を表示する。
表面2aの左側下隅には、一辺が約1mmの正方形からなるコード領域Sが区画形成され、そのコード領域Sの内部には、16行×16列のデータセルCが仮想分割されている。選択されたデータセルCには、それぞれパターンとしてのドットDが形成され、これら複数のドットDによって、液晶表示装置1の識別コード10が構成されている。本実施形態では、ドットDの形成されたデータセルCの中心位置を目標吐出位置Pとし、各データセルCの一辺の長さを「セル幅W」とする。
各ドットDは、半球状のパターンであって、その外径がデータセルCの一辺の長さ(前記「セル幅W」)で形成されている。ドットDは、金属微粒子(例えば、ニッケル微粒子やマンガン微粒子)を分散媒に分散させた液状体F(図5参照)を液滴FbにしてデータセルCに吐出し、データセルCに着弾した液滴Fbを乾燥及び焼成させることによって形成されている。着弾した液滴Fbの乾燥・焼成は、レーザ光B(図5参照)の照射によって行われる。
識別コード10は、各データセルC内のドットDの有無によって、液晶表示装置1の製品番号やロット番号等を再現可能にする。本実施形態では、上記透明基板2の長手方向をX矢印方向とし、X矢印方向と直交する方向をY矢印方向という。
次に、識別コード10を形成するための液滴吐出装置20について図2に従って説明する。尚、本実施形態では、複数の透明基板2を切出し可能にした対象物としてのマザー基板2Mに、各透明基板2に対応する複数の識別コード10を形成する場合について説明する。
図2において、液滴吐出装置20には、略直方体形状に形成された基台21が備えられて、その基台21の一側(X矢印方向側)には、複数のマザー基板2Mを収容する基板ストッカ22が配設されている。基板ストッカ22は、図2における上下方向(Z矢印方向及び反Z矢印方向)に移動して、収容する各マザー基板2Mをそれぞれ基台21上に搬出し、基台21上のマザー基板2Mを対応するスロットに搬入する。
基台21の上面21aであって、その基板ストッカ22側(反X矢印方向側)には、Y矢印方向に延びる走行装置23が配設されている。走行装置23は、その内部に走行モータMS(図7参照)を有し、走行モータMSの出力軸に駆動連結される搬送装置24をY矢印方向及び反Y矢印方向に走行させる。搬送装置24は、マザー基板2Mの裏面2Mbを吸着把持可能にした搬送アーム24aを有する水平多関節ロボットである。搬送装置24は、その内部に搬送モータMT(図7参照)を有し、搬送モータMTの出力軸に駆動連結される搬送アーム24aをXY平面上で伸縮自在に回動して上下方向に移動する。
基台21の上面21aであって、そのY矢印方向両側には、表面2Maを上側にした状態のマザー基板2Mを載置する一対の載置台25R,25Lが併設されている。一対の載置台25R,25Lは、それぞれ載置するマザー基板2Mの裏面2Mb側に、搬送アーム24aを抜き差し可能にする空間(凹部25a)を有している。搬送アーム24aは、凹部25aの内部で上動あるいは下動してマザー基板2Mを搬送及び載置する。
走行装置23及び搬送装置24は、走行モータMS及び搬送モータMTが所定の駆動制御信号を受けるとき、前記基板ストッカ22内の各マザー基板2Mを搬出してマザー基板2Mを載置台25R,25Lのいずれか一方に載置する。また、走行装置23及び搬送装置24は、載置台25R,25Lに載置したマザー基板2Mを基板ストッカ22の所定のスロットに搬入して回収する。
尚、本実施形態では、図3に示すように、載置台25R,25Lに載置されたマザー基板2Mのコード領域Sであって、その最もX矢印方向側から順に、1行目コード領域S1、2行目コード領域S2、・・・、5行目コード領域S5という。
図2において、基台21の上面21aであって、前記一対の載置台25R,25Lの間には、相対移動手段としての多関節ロボット(以下単に、スカラロボットという。)26が配設されている。スカラロボット26には、基台21の上面21aに固設されて上方(Z矢印方向)に延びる主軸27が備えられている。
主軸27の上端には、主軸27に設置された第1モータM1(図7参照)の出力軸に駆動連結される第1アーム28aが水平方向(XY平面方向)に回動可能に連結されている。第1アーム28aの先端には、第1アーム28aに設置された第2モータM2(図7参照)の出力軸に駆動連結される第2アーム28bが水平方向に回動可能に連結されている。第2アーム28bの先端には、第2アーム28bに設置された第3モータM3(図7参照)の出力軸に駆動連結される円柱状の第3アーム28cがZ矢印方向に沿う軸心を回動中心にして回動可能に連結されている。第3アーム28cの下端には、ヘッドユニット30が配設されている。
ヘッドユニット30には、箱体状に形成されたケース31が備えられている。ケース31の下側には、液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという)32と、吸引手段を構成する吸引ポート33と、が配設されている。また、ケース31の一側面には、レーザ照射手段としてのレーザヘッド34が備えられている。
スカラロボット26は、第1、第2及び第3モータM1,M2,M3が所定の駆動制御信号を受けるとき、対応する第1、第2及び第3アーム28a,28b,28cを回動して、ヘッドユニット30を上面21a上の所定領域内で移動させる。
詳述すると、スカラロボット26は、図3に示すように、各コード領域S(各目標吐出位置P)の位置座標に基づいて生成される「目標軌跡R」に沿って、ヘッドユニット30を移動(走査)させる。すなわち、図3において、載置台25L上の矢印で示すように、スカラロボット26は、まず、第1、第2及び第3アーム28a、28b,28cを回動させて、ヘッドユニット30(第3アーム28cの先端)を1行目コード領域S1の反Y矢印方向側の位置(「始点SP」)に配置させる。この際、ヘッドユニット30は、その反Y矢印方向側から順に、レーザヘッド34、吸引ポート33、吐出ヘッド32を配置させる。
ヘッドユニット30を「始点SP」まで移動させると、スカラロボット26は、「始点SP」に位置するヘッドユニット30をY矢印方向に沿って走査させる。すなわち、スカラロボット26は、吸引ポート33をレーザヘッド34の液滴吐出ヘッド32側に先行させて走査させる。
ヘッドユニット30をY矢印方向に沿って走査させると、スカラロボット26は、第1、第2及び第3アーム28a、28b,28cを回動させて、ヘッドユニット30をマザー基板2MのY矢印方向外側で180度だけ左回りに回転させながら、2行目コード領域S2のY矢印方向側まで回動させる。2行目コード領域S2上に位置するヘッドユニット30は、そのY矢印方向側から順に、レーザヘッド34、吸引ポート33、吐出ヘッド32を配置させる。
ヘッドユニット30を2行目コード領域S2上まで回動させると、スカラロボット26は、第1、第2及び第3アーム28a、28b,28cを回動させて、ヘッドユニット30を反Y矢印方向に沿って走査させる。すなわち、スカラロボット26は、1行目コード領域S1と同じく、吸引ポート33をレーザヘッド34の液滴吐出ヘッド32側に先行させて走査させる。
以後同様にして、スカラロボット26は、3行目、4行目、5行目コード領域S3,S4,S5の順に、ヘッドユニット30をY矢印方向あるいは反Y矢印方向に沿って走査し、5行目コード領域S5のY矢印方向側の位置(「終点EP」)に移動させる。
従って、スカラロボット26は、滑らかな九十九折り状の「目標軌跡R」に沿ってヘッドユニット30を走査させる間に、常に、吸引ポート33をレーザヘッド34の液滴吐出ヘッド32側に先行させて走査する。尚、本実施形態では、ヘッドユニット30の走査される方向を、「走査方向RA」という。
図4及び図5は、ヘッドユニット30を説明する概略側面図であって、図6は、ヘッドユニット30を、マザー基板2Mから見た概略平面図である。
図4において、ケース31の内部には、液状体F(図5参照)を導出可能に収容する液状体タンク35が配設され、ケース31の下側には、液滴吐出ヘッド32が配設されている。液状体タンク35は、収容する液状体Fを吐出ヘッド32に導出する。
図5において、吐出ヘッド32の下側には、ノズルプレート36が備えられている。ノズルプレート36の下面(ノズル形成面36a)には、マザー基板2Mの法線方向(Z矢印方向)に沿う複数の円形孔(ノズルN)が貫通形成されている。図6において、各ノズルNは、ヘッドユニット30の「走査方向RA」と直交する方向に沿って配列形成されて、その形成ピッチが、「セル幅W」と同じサイズで形成されている。尚、本実施形態では、マザー基板2M上の位置であって、各ノズルNと相対向する位置を、それぞれ着弾位置PFという。
図5において、各ノズルNの上側には、液状体タンク35に連通するキャビティ37が形成されている。キャビティ37は、液状体タンク35の導出する液状体Fをそれぞれ対応するノズルNに供給する。各キャビティ37の上側には、振動板38が貼り付けられている。振動板38は、上下方向に振動してキャビティ37内の容積を拡大・縮小する。振動板38の上側には、各ノズルNに対応する複数の圧電素子PZが配設されている。各圧電素子PZは、対応する着弾位置PFが目標吐出位置Pに位置するとき、所定の駆動信号(圧電素子駆動電圧COM1:図7参照)を受けて上下方向に収縮・伸張し、振動板38を振動させる。圧電素子PZが収縮・伸張すると、対応するノズルNの液状体Fの界面(メニスカス)が振動し、圧電素子駆動電圧COM1に応じた重量の液滴Fbが対応するノズルNから吐出される。吐出された液滴Fbは、ノズルプレート36とマザー基板2Mとの間の空間(飛行領域FS)を反Z矢印方向に沿って飛行し、対応する着弾位置PF、すなわち目標吐出位置Pに着弾する。目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、表面2Maで濡れ広がって、その外径をセル幅Wにする。
尚、本実施形態では、液滴Fbの吐出動作の開始時から、吐出した液滴Fbの外径がセル幅Wになるまでの時間を、「照射待機時間」という。また、本実施形態のヘッドユニット30は、この「照射待機時間」の間に、セル幅Wの2倍の距離(「照射待機距離Lw」)だけ走査される。
図4において、吸引ポート33は、下方を開口した箱体状に形成されて、その内部が、ケース31内に配設された吸引チューブ39に連結されている。吸引チューブ39は、第3アーム28c、第2アーム28b、第1アーム28a及び主軸27の内部に引き回されて、基台21内に配設された吸引ポンプ40(図2及び図3参照)に連結されている。すなわち、吸引ポート33は、吸引チューブ39を介して吸引ポンプ40に連結されている。
吸引ポート33とマザー基板2Mとの間の空間(気体)は、吸引ポンプ40が吸引を開始するための駆動信号を受けるとき、吸引ポート33及び吸引チューブ39によって吸引ポンプ40に吸引される。この際、吸引ポート33に対するマザー基板2M上の流路抵抗は、吐出ヘッド32(ノズルプレート36)とマザー基板2Mとの間の領域(前記飛行領域FS)で高くなる。そのため、マザー基板2M上の気体を吸引ポート33から吸引するとき、図6の矢印で示すように、吸引ポート33の「走査方向RA」側にある気体は、流路抵抗の高い領域、すなわち飛行領域FSを避けるように、吸引ポート33に吸引される。
従って、吐出ヘッド32は、吸引ポンプ40を駆動してマザー基板2M上の気体を吸引させるとき、飛行領域FSにおける気体の流動を抑制させることができ、吐出ヘッド32から吐出する液滴Fbの飛行方向を安定させることができる。
図4において、レーザヘッド34の内部には、各ノズルNに対応する複数の半導体レーザLDが、ノズルNの配列方向に沿って配列されている。各半導体レーザLDは、それぞ
れ半導体レーザLDを駆動制御するための信号(レーザ駆動電圧COM2:図7参照)を受けるとき、液滴Fbの吸収波長に対応した波長領域のレーザ光Bをその直下(反Z矢印方向)に出射する。レーザヘッド34の下端であって半導体レーザLDの直下(マザー基板2側)には、各半導体レーザLDに対応する反射ミラーMが、前記ノズルNの配列方向に沿って配列されている。反射ミラーMは、対応する半導体レーザLDからのレーザ光Bを全反射し、全反射したレーザ光Bを対応する目標吐出位置Pの吸引ポート33側に導く。
尚、図5に示すように、本実施形態では、マザー基板2M上の位置であって、表面2Maとレーザ光Bの光軸とが交差する位置を、照射位置PTという。照射位置PTと着弾位置PFとの間の距離は、前記「照射待機距離Lw」に設定されている。すなわち、本実施形態の照射位置PTは、目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbが前記「照射待機時間」の経過後に到達する位置である。
各半導体レーザLDは、それぞれ対応する照射位置PTが目標吐出位置Pに位置するとき、レーザ駆動電圧COM2を受けてレーザ光Bを出射する。半導体レーザLDからのレーザ光Bは、反射ミラーMに全反射されて、対応する照射位置PTに位置する液滴Fbの領域を照射する。液滴Fbの領域を照射するレーザ光Bは、液滴Fbの溶媒あるいは分散媒等を「蒸発成分Ev」として蒸発させて、液滴Fbの金属微粒子を焼成させる。これによって、目標吐出位置Pの領域に、データセルCに対応するサイズのドットDを形成させる。
この際、液滴Fbからの「蒸発成分Ev」は、図6に示すように、マザー基板2Mの法線方向から見て、各ノズルNと反射ミラーMとの間に位置する照射位置PTの近傍で浮遊する。
浮遊する「蒸発成分Ev」は、各ノズルNから見て照射位置PT側に位置する吸引ポート33により、順次「走査方向RA」の反対方向に向かって吸引される。この結果、「蒸発成分Ev」は、各ノズルNの移動する方向の反対方向に向かって吸引され、各ノズルNから離間する。さらに、浮遊する「蒸発成分Ev」は、反射ミラーMから見て照射位置PT側(「走査方向RA」側)に位置する吸引ポート33によって順次吸引される。この結果、「蒸発成分Ev」は、走査される反射ミラーM(レーザヘッド34)が照射位置PTに到達する前に、反射ミラーMの前段で吸引されて排気される。
従って、各ノズルNと反射ミラーMは、それぞれ「蒸発成分Ev」の付着を回避させることができ、吐出ヘッド32とレーザヘッド34は、それぞれ液滴Fbの吐出動作を安定させることができ、レーザ光Bの位置精度や照射強度等の光学特性を安定させることができる。
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図7に従って説明する。
図7において、液滴吐出装置20には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置51が設けられている。制御装置51は、第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)の現在位置と各種制御プログラムに従って、走行装置23、搬送装置24及びスカラロボット26を駆動し、吐出ヘッド32及びレーザヘッド34を駆動制御させる。
制御装置51には、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有した入力装置52が接続され、識別コード10に関する情報が、既定形式の「描画データIa」として入力される。制御装置51は、入力装置52からの描画データIaに所定の展開処理を施してビットマップデータBMDを生成し、ビットマップデータBMDに基づいて、各目標吐出位置Pの直交座標系における位置座標(教示座標Tp)を生成する。さらに、制御装置
51は、描画データIaに対してビットマップデータBMDと異なる展開処理を施し、圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成する。
制御装置51には、記憶部51Aが設けられて、ビットマップデータBMD等の各種データや識別コード10を製造するための各種プログラムを格納する。ビットマップデータBMDは、直交座標系における描画平面(マザー基板2Mの表面2Ma)を仮想分割した各位置に、それぞれ液滴Fbを吐出させるか否かを示すデータであって、設定された各ビットの値(0あるいは1)に応じて、各圧電素子PZを駆動するか否かを規定するためのデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、吐出ヘッド32を各行目コード領域S1〜S5上に走査させるときに、各ノズルNから液滴Fbを吐出させるか否かを規定させるためのデータである。制御装置51は、ビットマップデータBMDを所定のクロック信号に同期させた吐出制御信号SIとして順次吐出ヘッド駆動回路56にシリアル転送する。
制御装置51には、補間演算部51Bが設けられて、連続する教示座標Tpの間の空間に所定の補間周期で補間処理(例えば、直線補間や円弧補間等)を施し、「目標軌跡R」を構成する複数の補間点の位置座標(補間座標)を順次演算する。補間演算部51Bは、対応する教示座標Tpと同教示座標Tpまでの空間を補間する複数の補間座標とからなる情報(軌跡情報TaI)を生成し、その軌跡情報TaIを逆演算部51Cに順次出力する。
逆演算部51Cは、補間演算部51Bからの軌跡情報TaIに基づいて、第3アーム28cの先端位置を、教示座標Tpや教示座標Tpの間を補間する複数の補間座標に相対させるためのスカラロボット26の姿勢(各モータM1,M2,M3の回動角等)を順次演算する。すなわち、逆演算部51Cは、吸引ポート33をレーザヘッド34の「走査方向RA」側に先行させて「目標軌跡R」に沿って走査させるためのスカラロボット26の姿勢に関する情報(アーム回動情報θI)を順次生成する。逆演算部51Cは、生成したアーム回動情報θIをスカラロボット駆動回路55に出力する。
制御装置51には、走行装置駆動回路53が接続されて、走行装置駆動回路53に対応する駆動制御信号を出力する。走行装置駆動回路53には、走行モータMSと走行モータ回転検出器MSEが接続されている。走行装置駆動回路53は、制御装置51からの駆動制御信号に応答して走行モータMSを正転または逆転させ、走行モータ回転検出器MSEからの検出信号に基づいて搬送装置24の移動方向及び移動量を演算する。
制御装置51には、搬送装置駆動回路54が接続されて、搬送装置駆動回路54に対応する駆動制御信号を出力する。搬送装置駆動回路54には、搬送モータMTと搬送モータ回転検出器MTEが接続されている。搬送装置駆動回路54は、制御装置51からの駆動制御信号に応答して搬送モータMTを正転または逆転させ、搬送モータ回転検出器MTEからの検出信号に基づいて搬送アーム24aの移動方向及び移動量を演算する。
制御装置51には、スカラロボット駆動回路55が接続されて、スカラロボット駆動回路55に対応する駆動制御信号(前記アーム回動情報θI)を出力する。スカラロボット駆動回路55には、第1モータM1、第2モータM2及び第3モータM3が接続され、制御装置51からのアーム回動情報θIに応答して第1、第2及び第3モータM1,M2,M3を正転または逆転させる。また、スカラロボット駆動回路55には、第1モータ回転検出器M1E、第2モータ回転検出器M2E及び第3モータ回転検出器M3Eが接続され、第1、第2及び第3モータ回転検出器M1E,M2E,M3Eからの検出信号に基づいて第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)の移動方向及び移動量を演算する。
制御装置51は、スカラロボット駆動回路55を介して、ヘッドユニット30を「目標軌跡R」に沿うような九十九折り状に走査させる。制御装置51は、スカラロボット駆動回路55からの演算結果(吐出ヘッド32の現在位置)に基づいて各種制御信号を出力する。
詳述すると、制御装置51は、ヘッドユニット30の走査を開始するタイミングで、すなわち吐出ヘッド32が「始点SP」に位置するタイミングで、吸引ポンプ40を駆動させるための信号(吸引開始信号TP1)を生成して吸引ポンプ駆動回路58に出力する。
また、制御装置51は、吐出ヘッド32(各着弾位置PF)がマザー基板2M上の各コード領域S(各目標吐出位置P)に位置するタイミングで、液滴Fbを吐出させるための信号(吐出タイミング信号LP)を生成して吐出ヘッド駆動回路56に出力する。
さらに、制御装置51は、ヘッドユニット30の走査を終了するタイミング、すなわち吐出ヘッド32が「終点EP」に位置するタイミングで、吸引ポンプ40を停止させるための信号(吸引終了信号TP2)を生成して吸引ポンプ駆動回路58に出力する。
制御装置51には、吐出ヘッド駆動回路56が接続されて、吐出タイミング信号LPを出力する。制御装置51は、圧電素子駆動電圧COM1を吐出タイミング信号LPに同期させて吐出ヘッド駆動回路56に出力する。また、制御装置51は、吐出制御信号SIを吐出ヘッド駆動回路56にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路56は、制御装置51からの吐出制御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。吐出ヘッド駆動回路56は、制御装置51からの吐出タイミング信号LPを受けるとき、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZにそれぞれ圧電素子駆動電圧COM1を供給する。さらに、吐出ヘッド駆動回路56は、制御装置51からの吐出タイミング信号LPを受けるとき、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをレーザヘッド駆動回路57に出力する。
制御装置51には、レーザヘッド駆動回路57が接続されて、レーザ駆動電圧COM2を吐出タイミング信号LPに同期させて出力する。レーザヘッド駆動回路57は、吐出ヘッド駆動回路56からの吐出制御信号SIを受けるとき、所定の時間(「照射待機時間」)だけ待機し、吐出制御信号SIに対応した各半導体レーザLDにそれぞれレーザ駆動電圧COM2を供給する。
制御装置51は、レーザヘッド駆動回路57が吐出制御信号SIを受けるとき、レーザヘッド駆動回路57を照射待機時間だけ待機させ、ヘッドユニット30を「照射待機時間」だけ走査させる。制御装置51は、ヘッドユニット30が「照射待機時間」だけ走査されて照射位置PTが対応する「目標着弾位置P」に位置するとき、レーザヘッド駆動回路57を駆動制御し、「目標着弾位置P」の液滴Fbの領域に向かってレーザ光Bを照射させる。
制御装置51には、吸引ポンプ駆動回路58が接続されて、吸引ポンプ駆動回路58に対応する駆動制御信号(前記吸引開始信号TP1及び吸引終了信号TP2)を出力する。吸引ポンプ駆動回路58には、吸引ポンプ40が接続されている。吸引ポンプ駆動回路58は、制御装置51からの吸引開始信号TP1に応答して吸引ポンプ40の吸引を開始させるとともに、制御装置51からの吸引終了信号TP2に応答して吸引ポンプ40の吸引を停止させる。制御装置51は、ヘッドユニット30を「目標軌跡R」に沿って走査させる間、吸引ポンプ40を駆動させて吸引ポート33からの吸引を継続させる。
次に、液滴吐出装置20を使って識別コード10を形成する方法について説明する。
まず、入力装置52を操作して描画データIaを制御装置51に入力する。すると、制御装置51は、走行装置23及び搬送装置24を駆動制御して基板ストッカ22のマザー基板2Mを搬出し、搬出したマザー基板2Mを載置台25R(あるいは載置台25L)に載置させる。また、制御装置51は、入力装置52からの描画データIaに所定の展開処理を施して、ビットマップデータBMD及び教示座標Tpを生成し、これらビットマップデータBMD及び教示座標Tpを記憶部51Aに格納する。そして、ビットマップデータBMD及び教示座標Tpを格納すると、制御装置51は、スカラロボット駆動回路55を介して、第3アーム28cの先端を「始点SP」まで移動させる。
この間、制御装置51は、補間演算部51Bを介して、1行目コード領域S1の「始点SP」側に位置する教示座標Tpから順に、後続する教示座標Tpまでの間を補間する複数の補間座標を順次生成する。制御装置51は、複数の補間座標と後続する教示座標Tpとからなる軌跡情報TaIを逆演算部51Cに順次出力する。軌跡情報TaIを逆演算部51Cに出力すると、制御装置51は、逆演算部51Cを介して、複数の補間座標と後続する教示座標Tpのそれぞれに対応したアーム回動情報θIを順次生成する。
制御装置51は、第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)が「始点SP」に配置されると、吸引開始信号TP1を吸引ポンプ駆動回路58に出力して、吸引ポンプ40による吸引ポート33からの吸引を開始させる。また、制御装置51は、吐出ヘッド32が「始点SP」に配置されると、逆演算部51Cを介して、前記アーム回動情報θIをスカラロボット駆動回路55に順次出力し、ヘッドユニット30の走査を開始させる。すなわち、制御装置51は、「走査方向RA」に沿って吸引ポート33をレーザヘッド34と液滴吐出ヘッド32との間に配置させながら、「始点SP」のヘッドユニット30を「目標軌跡R」に沿って走査させ始める。
この間、制御装置51は、スカラロボット駆動回路55からの演算結果に基づいて、着弾位置PFが1行目コード領域S1の最も反Y矢印方向側に位置する目標吐出位置Pに到達したか否かを判断する。また、制御装置51は、吐出ヘッド駆動回路56に吐出制御信号SIと圧電素子駆動電圧COM1を出力し、レーザヘッド駆動回路57にレーザ駆動電圧COM2を出力する。
そして、制御装置51は、着弾位置PFが1行目コード領域S1の最も反Y矢印側に位置する目標吐出位置Pに到達すると、吐出ヘッド駆動回路56に吐出タイミング信号LPを出力して、吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZに、それぞれ圧電素子駆動電圧COM1を供給する。吐出制御信号SIに基づいて選択されたノズルNは、それぞれ圧電素子駆動電圧COM1を受けて液滴Fbを一斉に吐出させる。吐出された各液滴Fbは、飛行領域FSを飛行してマザー基板2Mの表面2Maに着弾する。
この際、吐出された各液滴Fbは、飛行領域FS内の気体の流動が抑制されているため、飛行曲がりを来たすことなく、反Z矢印方向に飛行して、対応する目標吐出位置Pに着弾する。目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、対応する目標吐出位置Pの領域(データセルC内)で濡れ広がり、吐出動作の開始から「照射待機時間」だけ経過すると、その外径をセル幅Wにする。
この間、制御装置51は、吐出ヘッド駆動回路56を介して、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをレーザヘッド駆動回路57に出力する。
そして、制御装置51は、吐出動作の開始から「照射待機時間」だけ経過すると、各照射位置PTを目標吐出位置Pに相対させて、吐出制御信号SIに基づいて選択された半導体レーザLDにそれぞれレーザ駆動電圧COM2を供給する。吐出制御信号SIに基づいて選択された半導体レーザLDは、それぞれレーザ駆動電圧COM2を受けてレーザ光B
を一斉に出射させる。出射されたレーザ光Bは、反射ミラーMの全反射によって、対応する照射位置PT、すなわち目標吐出位置Pでセル幅Wになる液滴Fbの領域を照射する。レーザ光Bの照射された液滴Fbは、その溶媒あるいは分散媒等を「蒸発成分Ev」として蒸発(乾燥)して金属微粒子を焼成し、外径がセル幅WからなるドットDとして表面2Maに固着する。これによって、セル幅Wに整合したドットDが形成される。
この際、照射位置PTの近傍で浮遊する「蒸発成分Ev」は、各ノズルNの照射位置PT側であって、反射ミラーMの照射位置PT側に位置する吸引ポート33によって順次吸引される。その結果、照射位置PTの近傍で浮遊する「蒸発成分Ev」は、ノズルN(吐出ヘッド32)と反射ミラーM(レーザヘッド34)に到達することなく、これらノズルN(吐出ヘッド32)と反射ミラーM(レーザヘッド34)との間から排気される。
以後、同様に、制御装置51は、吸引ポート33を走査方向RAに沿ってレーザヘッド34と液滴吐出ヘッド32との間に配置させながら、ヘッドユニット30を「目標軌跡R」に沿って走査させる。そして、制御装置51は、各着弾位置PFが目標吐出位置Pに到達するたびに、選択したノズルNから液滴Fbを吐出させて、着弾した液滴Fbがセル幅Wになるタイミングで、同液滴Fbの領域にレーザ光Bを照射させる。これによって、制御装置51は、「蒸発成分Ev」によるノズルN(吐出ヘッド32)と反射ミラーM(レーザヘッド34)の汚染を回避させて、マザー基板2M上の各コード領域Sに全てのドットDを形成させる。
全てのドットDを形成してヘッドユニット30を「終点EP」まで走査させると、制御装置51は、吸引終了信号TP2を吸引ポンプ駆動回路58に出力して、吸引ポンプ40による吸引ポート33からの吸引を停止させる。吸引ポート33からの吸引を停止させると、制御装置51は、走行装置23及び搬送装置24を駆動制御して、ドットDの形成されたマザー基板2Mを基板ストッカ22に搬入し、識別コード10の形成動作を終了する。
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、レーザヘッド34(反射ミラーM)の照射位置PT側に、「蒸発成分Ev」を吸引する吸引ポート33を配設した。従って、レーザ光Bの照射された液滴Fbからの「蒸発成分Ev」を、レーザヘッド34(反射ミラーM)の照射位置PT側で吸引させることができる。その結果、レーザヘッド34(反射ミラーM)に対する「蒸発成分Ev」の付着(汚染)を回避させることができ、レーザ光Bの光学特性を安定させることができる。ひいては、液滴FbからなるドットDの形状制御性を向上させることができる。
(2)上記実施形態によれば、レーザヘッド34(反射ミラーM)と照射位置PTとの間に吸引ポート33を配置した。従って、照射位置PTの吐出ヘッド32側に吸引ポート33を配置し、照射位置PTの吐出ヘッド32側から吸引する場合に比べて、反射ミラーMに向かう「蒸発成分Ev」を、反射ミラーMに到達する前に、確実に吸引させることができる。その結果、レーザ光Bの光学特性を、より安定させることができる。
(3)上記実施形態によれば、吐出ヘッド32と相対向する位置に、レーザ光Bの照射位置PTを設定し、吐出ヘッド32とレーザヘッド34との間に、吸引ポート33を配置した。従って、吐出ヘッド32(各ノズルN)に向かう「蒸発成分Ev」を吸引させることができ、「蒸発成分Ev」に起因した吐出ヘッド32(各ノズルN)の汚染を回避させることができる。その結果、液滴吐出動作の安定化を図ることができる。
(4)上記実施形態によれば、吸引ポート33に対するマザー基板2M上の流路抵抗を
、飛行領域FSで高くした。従って、「蒸発成分Ev」を吸引ポート33から吸引させる際に、飛行領域FSにおける気体の流動を抑制させることができ、吐出ヘッド32から吐出する液滴Fbの飛行方向を安定させることができる。
(5)上記実施形態によれば、ヘッドユニット30を「走査方向RA」に沿って走査し、レーザ光Bの照射された液滴Fbを、吸引ポート33の直下からレーザヘッド34の直下に移動させた。従って、レーザ光Bの照射された液滴Fbは、レーザヘッド34の直下に到達する前に、確実に吸引ポート33の直下を通過する。この結果、「蒸発成分Ev」は、レーザヘッド34(反射ミラーM)の近傍に到達する前に、吸引ポート33からの吸引によって確実に排気される。よって、レーザ光Bの光学特性を変動させることなく、吸引ポート33とレーザヘッド34をマザー基板2M上で移動させることができる。そのため、識別コード10の生産性を向上させることができる。
(6)上記実施形態によれば、ヘッドユニット30を「走査方向RA」に走査し、レーザ光Bの照射された液滴Fbを吐出ヘッド32から吸引ポート33に向けて、すなわち、「走査方向RA]の反対方向に向けて移動させた。従って、各ノズルNの移動する方向と「蒸発成分Ev」の吸引方向と、を反対にすることができ、各ノズルの走査速度分だけ、「蒸発成分Ev」をより速く各ノズルNから離間させることができる。その結果、液滴吐出動作を変動させることなく、吐出ヘッド32をマザー基板2M上で移動させることができる。そのため、識別コード10の生産性を、さらに向上させることができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、吐出ヘッド32、吸引ポート33及びレーザヘッド34をマザー基板2M上で移動させる構成にした。これに限らず、例えば、吐出ヘッド32、吸引ポート33及びレーザヘッド34を固定し、吐出ヘッド32、吸引ポート33及びレーザヘッド34に対して、マザー基板2M(載置台25L,25R)を移動させる構成であってもよい。
あるいは、吐出ヘッド32を固定し、吸引ポート33とレーザヘッド34をマザー基板2Mに対して移動させる構成にしてもよく、吐出ヘッド32及びレーザヘッド34を固定して、吸引ポート33のみを移動させる構成であってもよい。さらには、これらの組み合わせによって、吐出ヘッド32、吸引ポート33及びレーザヘッド34とマザー基板2Mとを相対移動させる構成であってもよい。
つまり、レーザ光Bの照射位置PT側に吸引ポート33を配置する構成であればよい。
・上記実施形態では、レーザヘッド34と照射位置PTとの間に吸引ポート33を配設する構成にした。これに限らず、例えば、照射位置PTの直上に吸引ポート33を配設する構成にしてもよい。
・上記実施形態では、照射位置PTを、吐出ヘッド32と相対向する位置に設ける構成にした。これに限らず、例えば、照射位置PTを、吐出ヘッド32と相対向する領域から離間した位置に設ける構成にしてもよく、レーザヘッド34の吸引ポート33側に設ける構成であればよい。
・上記実施形態では、相対移動手段をスカラロボット26に具体化した。これに限らず、例えば、相対移動手段は、載置したマザー基板2Mをレーザヘッド34に対して移動する載置台であってもよく、あるいは、搭載したレーザヘッド34をマザー基板2Mに対して移動するキャリッジ等であってもよい。すなわち、相対移動手段は、吸引ポート33とマザー基板2M、又は、レーザヘッド34とマザー基板2Mとを相対移動させるものであればよい。
・上記実施形態では、液滴Fbの領域に照射するレーザ光Bによって、液滴Fbを乾燥・焼成する構成にした。これに限らず、例えば、照射するレーザ光Bのエネルギーによって、液滴Fbを所望の方向に流動させる構成にしてもよく、あるいは、レーザ光Bを液滴Fbの外縁のみに照射して液滴Fbをピニングする構成にしてもよい。すなわち、液滴Fbの領域に照射するレーザ光Bによって液滴Fbからなるパターンを形成する構成であればよい。
・上記実施形態では、液滴Fbによって半円球状のドットDを形成する構成にしたが、これに限らず、例えば、楕円形状のドットや線状のパターンを形成する構成であってもよい。
・上記実施形態では、吐出した液滴Fbによって識別コード10のドットDを形成する構成にした。これに限らず、例えば、液晶表示装置1や平面状の電子放出素子を備えて同素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSED等)等、各種表示装置に設けられる各種薄膜、金属配線、カラーフィルタ等を形成する構成にしてもよい。すなわち、着弾した液滴Fbによってパターンを形成する構成であればよい。
・上記実施形態では、対象物をマザー基板2Mに具体化したが、これに限らず、例えばシリコン基板やフレキシブル基板、あるいは金属基板等であってもよく、着弾した液滴Fbによってパターンを形成する対象物であればよい。
本実施形態における液晶表示装置を示す平面図。 同じく、液滴吐出装置を示す概略斜視図。 同じく、液適吐出装置を示す概略平面図。 同じく、ヘッドユニットを説明する概略側面図。 同じく、液滴吐出ヘッドを説明する概略側面図。 同じく、ヘッドユニットを説明する説明図。 同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
符号の説明
2M…対象物としてのマザー基板、20…液滴吐出装置、26…相対移動手段としての多関節ロボット、32…液滴吐出ヘッド、33…吸引手段を構成する吸引ポート、34…レーザ照射手段としてのレーザヘッド、B…レーザ光、Ev…蒸発成分、Fb…液滴、PT…照射位置。

Claims (5)

  1. 対象物に液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドと、
    前記液滴吐出ヘッドと相対向する前記対象物の領域にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
    前記レーザ照射手段と前記レーザ光の照射位置との間に設けられて前記液滴からの蒸発成分を吸引する吸引手段と、
    を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
    前記対象物と前記レーザ照射手段とを相対移動させて前記対象物に着弾した前記液滴を前記照射位置に配置させ、前記対象物と前記吸引手段とを相対移動させて前記照射位置の前記液滴を前記吸引手段と相対向する位置に配置させる相対移動手段を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
  3. 請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
    前記相対移動手段は、
    前記対象物と前記レーザ照射手段とを相対移動させて、前記対象物に着弾した前記液滴の中で前記吸引手段と相対向する位置を通過した前記液滴を前記レーザ照射手段と相対向する位置に配置させることを特徴とする液滴吐出装置。
  4. 請求項2又は3に記載の液滴吐出装置であって、
    前記相対移動手段は、
    少なくとも前記吸引手段、前記レーザ照射手段、前記液滴吐出ヘッドのいずれか1つを前記対象物上で移動させる多関節ロボットであることを特徴とする液滴吐出装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の液滴吐出装置であって、
    前記液滴吐出ヘッドは、
    前記対象物との間の流路抵抗が、前記液滴吐出ヘッドの外側と前記対象物との間の流路抵抗よりも大きいことを特徴とする液滴吐出装置。
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