JP2007173173A - 燃料電池用触媒及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にH、アルキル誘導体、フェニル誘導体のいずれかである)からなる配位子と、遷移金属から選択される中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
RHNCSCSNHR ・・・ (1)
【選択図】なし
Description
この燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。これらの中で、PEFCは小型、軽量、簡便性などの利点から、自動車用、家庭用定置型コジェネレーションシステムや、携帯電話、ノートPCなどの電子端末機器用小型電源等、実用化に向けた検討が試されている。
PEFCで用いる燃料源には色々なものがあり、水素やアルコールなどが挙げられ、特に比較的安価で取り扱いの容易なメタノールを燃料に用いる直接メタノール型PEFCはDMFCと呼ばれ、小型化、軽量化が容易であり注目されている。
カソード(空気極):O2 + 4H+ + 4e− → 2H2O
この反応に使用される触媒として実用化されているのは、白金をカーボン粒子に担持させたものである。しかし、Ptを用いるために、コストが高く、埋蔵資源量が少ないので、例えば燃料電池車を世界規模で普及させるだけのPt量が地球上に存在しないという致命的な問題がある。
燃料電池のカソード触媒において必要な条件は、次の3条件が挙げられる。(1)酸素還元能力、(2)触媒が浸されている電解質膜は強酸性なので、それに耐えうることができる耐酸性(耐久性)、(3)低コスト、以上の3条件である。Ptは、上記記載のように、(1)及び(2)の条件はおおよそ満たしているが、(3)の条件は全くクリアできていない。
例えば、安価な金属であるCo、Feなどは金属単体のままでは耐酸性がなく容易に溶解してしまうが、非特許文献1では、これら安価な金属を用いて、ポルフィリン、クロロフィル、フタロシアニン、テトラアザアヌレン、シッフ塩基などの大環状化合物やその誘導体と金属錯体化した触媒の開発が進められている。しかし、上記記載の大環状化合物は高価なものであり、よってこれらの触媒はコストが高く、先述したカソード触媒において必要な条件の(3)を満たすことができない。又、これらの触媒の形態は、担体であるカーボンに担持した状態であるが、そのままでは耐久性が悪く、先述したカソード触媒において必要な条件の(2)を満たすことができない。この耐久性問題は、高温焼成処理を施すことで克服しているが、高温焼成といった工程が1つ増え製造コスト的に大きくロスしている。
述したような高温焼成処理を施すことで耐久性や高活性を発現している。よって、重合処理及び高温焼成処理いった工程が複雑であるため、製造コスト的に大きくロスしている。つまり、先述したカソード触媒において必要な条件の(3)を満たすことができない。
このように、安価な化合物で錯体化することで、安価な金属であるCoやFeといった金属をカソード触媒として用いることはできつつあるが、耐酸性(耐久性)を出すためには、重合や高温焼成といった製造工程が複雑かつ多段に渡る為、コスト面に問題が残っている。
1.下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にH、アルキル誘導体、フェニル誘導体のいずれかである)からなる配位子と、遷移金属から選択される中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
RHNCSCSNHR ・・・ (1)
3.該中心金属Mの酸化数が、2種類以上の酸化数を有することを特徴とする1又は2に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
4.上記一般式(1)中、RがHであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
6.該中心金属Mの塩を加えた後、更に、還元処理をすることを特徴とする5に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
7.該ジチオオキサミド誘導体の塩に、炭素粒子を分散させた後、中心金属Mの塩を加えることを特徴とする5又は6に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
8.該アミンが3級アミンであることを特徴とする5〜7のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
先ず、本発明の触媒についての詳細を説明する。
本発明の触媒は、下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にH、アルキル誘導体、フェニル誘導体のいずれかである)からなる配位子と、遷移金属から選択される中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とする。
RHNCSCSNHR ・・・ (1)
本発明におけるRは、各々独立にとり得ることができ、H、アルキル誘導体、フェニル誘導体のいずれかである。アルキル誘導体とは、CH3、C2H5、C3H7、C4H9 などの炭化水素及びこれらの水素が置換基で置換されたものとし、フェニル誘導体とは、C6H5及びC6H5の水素が置換基で置換されたものとする。また上記記載の置換基とは、炭化水素基、ハロゲン基、水酸基、フェニル基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カルボン酸基、アルデヒド基などを示し特に制限はない。
特に、配位高分子金属錯体を形成した際の安定な高分子結合の発現や、高電子伝導性の発現などといった観点から、Rは、好ましくは、Hや、CH3、C2H5といった炭素数の短い炭化水素及びこれらの水素が置換基で置換されたアルキル誘導体であり、更に好ましくは、Hである。
カソード触媒として高い性能を発現する条件として、中心金属Mからなる配位高分子金属錯体が電子伝導性を持っている事と、酸素の還元に伴って中心金属Mも酸化還元反応(酸化数の変化)をおこす事の2点が挙げられる。以下に具体的に説明すると、前者は、中心金属Mにとって高酸化状態の価数と、その状態からジチオオキサミド誘導体の軌道と相互作用できる中心金属Mの軌道に電子が注入された低酸化状態の価数が混在することで、中心金属Mからなる配位高分子金属錯体が電子伝導性を持つことができる事である。後者は、まず上記記載の中心金属Mにとって低酸化状態の価数に酸素が吸着し、このとき中心金属Mは酸化され高酸化状態の価数となり、次いで酸素が解離しながらプロトン存在下で水になり、このとき中心金属Mは還元され低酸化状態の価数に戻る事である。以上より、中心金属Mは少なくとも2種類以上の酸化数を有することが望まれ、中心金属Mからなる配位高分子金属錯体は、酸素還元触媒として機能していると考えられる。
また、上記のように1電子幅の混合状態が2種類に限らず、2電子幅混合状態が2種類でも良いし、更には、3種類以上でも構わない。
先述したように、本発明における中心金属Mの好ましい金属は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ruである。各金属の安定にとり得る酸化数を考慮すると、Mn、Fe、Co、Ni、Ruにおいては+2価、+3価の混合状態、Cuにおいては+1価、+2価の混合状態が好ましい。
本発明の触媒は、ジチオオキサミド誘導体を溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液とした後、該溶液にアミンを加えてジチオオキサミド誘導体の塩とし、その後、中心金属Mの塩を加えることで製造されることを特徴とする。
本発明における溶媒は、ジチオオキサミド誘導体を溶解できるものであれば特に制限はなく、又、単一でも良いし、混合溶媒でも構わない。しかし、H2Oを溶媒とすると、後で加える中心金属Mと水酸化物塩を形成したり、H2O錯体を形成したりと、目的の錯体以外のものを形成してしまう恐れがあるので、H2Oを主とした溶媒は極力避けることが好ましい。又、後に加える中心金属Mの塩が反応しやすい環境を保持することを考慮すると、メタノール、エタノール、2−プロパノールといったアルコール類、アセトニトリルが好ましい。
ジチオオキサミド誘導体を上記記載の溶媒に溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液を作製する際の条件は特に制限はなく、室温下、加熱下、還流下いずれでも可能である。また、必ずしもジチオオキサミド誘導体が溶媒に完全に溶解している必要はなく、一部溶解した顕濁状態であっても構わない。
、本発明におけるアミンは、上記記載のような塩を形成できるものであれば特に制限はないが、ジチオオキサミド誘導体溶液と効率よく反応するためには、用いる溶媒に対する溶解度が高いものが好ましい。中でも、ジチオオキサミド誘導体のアミノ基と効率よく塩を形成できるといった観点や、アミン自身が配位子となってしまい、後に加える中心金属Mと錯体形成をしてしまう恐れを避けるといった観点から、好ましくは3級アミンがよく、例えば、ピリジン、ピラジン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
ジチオオキサミド誘導体溶液にアミンを加えてジチオオキサミド誘導体の塩を作製する際の条件は特に制限はなく、室温下、加熱下、還流下いずれでも可能である。
例えば、上記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(R2dtoaH2と略する)にR=Hであるジチオオキサミド(H2dtoaH2と略する)、アミンにピリジン(C5H5N)、中心金属Mの塩にCo(CH3COCH=C(O−)CH3)3を用いた場合の反応経路を推察すると以下のようになる。H2dtoaH2と2等量のC5H5Nが[(C5H5NH)2・(H2dtoa)]で表される塩を形成し、2/3等量のCo(CH3COCH=C(O−)CH3)3を添加すると、中心金属Coと錯形成し、本発明の触媒である2/3等量の[Co(H2dtoa)1.5]で表される配位高分子金属錯体が生成し、その際副生成物の2等量のC5H5NとCH3COCH2COCH3ができるが、配位高分子金属錯体との溶解度の差により分離できる。
上記記載のガス調整法では目的の中心金属Mの酸化数とすることが出来ない場合は、先述した触媒製造方法の後に、更に、還元処理をすることで目的の酸化数にすることが好ましい。
本発明における還元処理とは、還元電位を与えるなどの電気化学的な還元や、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムといった適切な還元剤を反応させる化学的な還元や、還元ガスを用いて焼成する還元などが挙げられ、中心金属Mがなり得ることができれば、いずれの方法でも構わない。
による還元も、その構造保持を考慮すると困難な場合が多く、従って電気化学的な還元処理が好ましい。電気化学的な還元処理としては、例えば、支持電解質を加えたH2O電解液からなる一般的な電気化学セルにおいて、配位高分子金属錯体を分散させておき、卑な電位をかけることで、水の電気分解から発生させた水素を用いる方法が挙げられる。この方法では、還元領域の電位を与えながら、かつ水素も与えることで還元され、ジチオオキサミド誘導体のアミノ基にプロトンが付加しつつ、中心金属Mが還元され酸化数を小さくできる。
燃料電池の形状などについては、電解質膜として固体高分子型電解質を使用すれば特に限定されるものではなく、任意形状の電解質膜上にアノード、カソードを密着させた電極接合体として用いることができる。
本発明の燃料電池としては、本発明の触媒をカソード電極に有する必要があるが、その構造は従来公知のものと同様でよく、又、アノード電極および固体高分子型電解質も、従来公知のものと同様でよい。例えば、アノード電極に使用する触媒は、白金、白金−ルテニウム合金などを使用することができ、固体高分子型電解質は、アシプレックス、ナフィオンなどの商標名で市販されているものを使用することができる。
本発明の触媒を用いて電極を形成するには、本発明の触媒にバインダーを添加して固体高分子型電解質のカソード側に触媒層を形成し、アノード側にも同様に公知の触媒をバインダーに添加して触媒層とすれば良い。必要に応じて、拡散層、集電体をホットプレスなどにより一体化して、電極接合体とする。
実施例及び比較例において用いる測定法は以下のとおりである。
赤外分光法(FT−IR)の測定は、SYSTEM2000 COMPRISIN(パーキンエルマー社製)を用い、KBr錠剤法を用いて、400〜4000cm−1の範囲をResolution=4cm−1として行う。
10℃/分で25℃〜500℃まで昇温し、500℃で5分間ホールドといった工程で測定する。
X線光電子分光分析(XPS)は、ESCALAB250(サーモエレクトロン社製)を用い、励起源はmono.AlKαで、約2mmΦの皿型資料台を用いて測定する。
電気化学的な還元処理及び電気化学試験は、ポテンシオガルバノスタット:Solartron1280Z(英国ソーラトロン社製)を用いて行い、おのおのの条件等の詳細は各実施例内に記載する。
以下、実施例1〜4において、本発明における触媒の製造方法を具体的に説明する。又、比較例1と比較して、本発明における触媒の製造方法が優れていることを明確に示す。
ジチオオキサミド(H2dtoaH2)0.5gをエタノール30ml中、約60℃下においてできるだけ溶解させた後、ピリジン0.67mlを滴下ししばらく攪拌させて溶液状態とした。次に、Cu(CH3COO)2・H2O0.86gのエタノール顕濁液50mlを、上記溶液に加えた。還流反応を約2時間行った後、放冷し、析出してきた粉末を吸引ろ過より取り出した。得られた粉末をエタノールで十分に洗浄した後、デシケーター中で乾燥させた。
ジチオオキサミド(H2dtoaH2)1.0gをエタノール60ml中、約60℃下においてできるだけ溶解させた後、ピリジン1.34mlを滴下ししばらく攪拌させて溶液状態とした。次に、Co(CH3COCH=C(O−)CH3)31.98gのエタノール顕濁液100mlを、上記溶液に加えた。還流反応を約2.5時間行った後、放冷し、析出してきた粉末を吸引ろ過より取り出した。得られた粉末をエタノールで十分に洗浄した後、デシケーター中で乾燥させた。以上の工程により、本発明の触媒:[Co(H2dtoa)1.5]の組成で表させる配位高分子金属錯体1.30gを得た。組成は、FT−IR及びTGにより決定した。
実施例2において、Co(CH3COCH=C(O−)CH3)3をFe(CH3COCH=C(O−)CH3)31.96gに代え、その他は実施例2と同様な工程を施した。以上の工程により、本発明の触媒:[Fe(H2dtoa)1.5]の組成で表させる配位高分子金属錯体0.50gを得た。組成は、FT−IR及びTGにより決定した。
ジチオオキサミド(H2dtoaH2)0.5gをエタノール70ml中、約60℃下に溶解させた後、ピリジン0.67mlを滴下ししばらく攪拌させて溶液状態とした。こ
の溶液に、導電性担体としてケッチェンブラックEC(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)登録商標)1.08gを加えた後、10分間超音波分散を行った。以下、実施例1と同様な工程を施した。以上の工程により、本発明の触媒:[Cu(H2dtoa)]/C及び[Cu(H2dtoaH)]/Cが混合した組成で表される導電性担体であるカーボン上に担持した配位高分子金属錯体1.57gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
実施例2において、ピリジンを添加しないこと以外は、実施例2と同様な工程により還流反応を行った。しかし、目的の配位高分子金属錯体は得られなかった。
以下、実施例5〜6において、本発明における触媒の酸素還元活性を示し、固体高分子型燃料電池用カソード触媒として有用であることを具体的に説明する。
次に、実施例5〜6において、本発明の触媒性能を具体的に説明する。
実施例1により得られたCu触媒の電気化学特性を下記の方法によって評価した。まず、触媒の粉末0.04gに精製水を加え4gに調整し、10分間超音波を印加して分散させ、1重量%触媒懸濁液を得た。この触媒懸濁液を20μl採取し、鏡面研磨したグラッシーカーボン電極(直径8mm)上に滴下し、乾燥機において50℃で乾燥させた。次に導電性樹脂溶液(アシプレックス、旭化成ケミカルズ登録商標、含有量1.0%エタノール溶液)を20μl滴下し、窒素雰囲気中、120℃で2時間乾燥することで固定化し、Cu試験電極を作成した。
実施例4により得られたCu触媒の電気化学特性評価した。評価方法は、実施例5と同様である。酸素還元開始電位は0.55Vであり、酸素還元活性を示した。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にH、アルキル誘導体、フェニル誘導体のいずれかである)からなる配位子と、遷移金属から選択される中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
RHNCSCSNHR ・・・ (1) - 該中心金属Mが、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ruから選択される一種以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
- 該中心金属Mが、2種類以上の酸化数を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
- 上記一般式(1)中、RがHであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒。
- 該ジチオオキサミド誘導体を溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液とした後、該溶液にアミンを加えてジチオオキサミド誘導体の塩とし、その後、中心金属Mの塩を加えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
- 該中心金属Mの塩を加えた後、更に、還元処理をすることを特徴とする請求項5に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
- 該ジチオオキサミド誘導体の塩に、炭素粒子を分散させた後、中心金属Mの塩を加えることを特徴とする請求項5又は6に記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
- 該アミンが3級アミンであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用カソード触媒の製造方法。
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