JP5213397B2 - 燃料電池用触媒及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。これらの中で、PEFCは小型、軽量、簡便性などの利点から、自動車用、家庭用定置型コジェネレーションシステムや、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電子端末機器用小型電源等、実用化に向けた検討がなされている。
これらのDEFCのアノード(燃料極)では、以下のようなエタノール電極酸化反応がおきている。
アノード(燃料極):C2H5OH+3H2O → 12H++2CO2+12e−
エタノールを燃料とする燃料電池のアノード触媒において必要な条件は、次の3条件が挙げられる。(1)エタノール酸化能力、(2)触媒が浸されている電解質膜は強酸性なので、それに耐えうることができる耐酸性(耐久性)、(3)低コスト、の3条件である。Ptは、上記記載のように、(1)及び(2)の条件はおおよそ満たしているが、(3)の条件は全くクリアできていない。
例えば、安価な金属であるCo、Feなどは金属単体のままでは耐酸性がなく容易に溶解してしまうが、非特許文献1では、これら安価な金属を用いて、ポルフィリン、クロロフィル、フタロシアニン、テトラアザアヌレン、シッフ塩基などの大環状化合物やその誘導体と金属錯体化した触媒の開発が進められている。しかし、上記記載の大環状化合物は高価なものであり、よってこれらの触媒はコストが高く、前述したアノード触媒において必要な条件の(3)を満たすことができない。又、これらの触媒の形態は、担体であるカーボンに担持した状態であるが、そのままでは耐久性が悪く、前述したアノード触媒において必要な条件の(2)を満たすことができない。この耐久性問題は、高温焼成処理を施すことで克服しているが、高温焼成といった工程が1つ増え製造コスト的に大きくロスしている。さらにこれらの触媒はカソード触媒としての開発であり、先述した必要な条件の(1)を目的としておらず、実際に必要な条件の(1)を満足しない。
このように、安価な化合物で錯体化することで、安価な金属であるCoやFeといった金属をカソード触媒として用いることは検討されているが、アノード触媒としての開発は未だなされていないのである。
1.下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にエチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基のいずれかの基である。)からなる配位子と、Mn、Fe、Co、Ni、Cuから選択される一種以上の中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とするエタノールを燃料とする固体高分子型燃料電池用アノード電極に設けるエタノール酸化触媒。
RHNCSCSNHR ・・・(1)
2.該ジチオオキサミド誘導体を溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液とし、
炭素粒子を分散させた後、中心金属Mの塩を加えることを特徴とする上記1.に記載のエタノールを燃料とする固体高分子型燃料電池用アノード電極に設けるエタノール酸化触媒の製造方法。
先ず、本発明の触媒についての詳細を説明する。
本発明の触媒は、下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にエチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基のいずれかである)からなる配位子と、遷移金属から選択される中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とする。
RHNCSCSNHR ・・・(1)
本発明における上記一般式(1)で示される化合物は図1で示される構造有する。
本発明におけるRは、各々独立にとり得ることができ、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基のいずれかである。独立にとり得るとは、2つのRが同じ基であっても異なる基であってもよいことを意味する。
中心金属Mからなる配位高分子金属錯体は、エタノール酸化触媒として機能していると考えられるが、アノード触媒として高い性能を発現する条件として、中心金属Mからなる配位高分子金属錯体が電子伝導性を持っているか配位高分子金属錯体のごく近傍に電子伝導性を有する、例えばカーボン粉等が存在することが重要である。
本発明におけるアノード触媒は、本発明の配位高分子金属錯体の触媒としての性能を阻害しない限り、それ以外の物質を担持させてもよい。例えば、金属、合金、ブロンズ型、ペロブスカイト型、パイロクロア型などの金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物などが挙げられる。又、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、銀を含んだ化合物を混在させても構わないが、本発明の目的から外れないように、混在させる量はできるだけ少量とするのが好ましい。
本発明の触媒は、ジチオオキサミド誘導体を溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液とし、炭素粒子を分散させた後、中心金属Mの塩を加えることで製造することを特徴とする。
本発明における溶媒は、ジチオオキサミド誘導体を溶解できるものであれば特に制限はなく、又、単一でも良いし、混合溶媒でも構わない。しかし、H2Oを溶媒とすると、後で加える中心金属Mと水酸化物塩を形成したり、H2O錯体を形成したりと、目的の錯体以外のものを形成してしまう恐れがあるので、H2Oを主とした溶媒は極力避けることが好ましい。又、後に加える中心金属Mの塩が反応しやすい環境を保持することを考慮すると、メタノール、エタノール、2−プロパノールといったアルコール類や、アセトニトリルが好ましい。
ジチオオキサミド誘導体を上記の溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液を作製する際の条件は、特に制限はなく、室温下、加熱下、還流下いずれでも可能である。また、必ずしもジチオオキサミド誘導体が溶媒に完全に溶解している必要はなく、一部溶解した懸濁状態であっても構わない。
ジチオオキサミド誘導体の塩に、中心金属Mの塩を反応させ、本発明の触媒を作製する際の条件は特に制限はなく、室温下、加熱下、還流下いずれでも可能である。
又、以上の工程を行う際のガス雰囲気下は、大気中、酸素中、不活性ガス中のいずれでも可能である。
上記のガス調整法では目的の中心金属Mの酸化数とすることが出来ない場合は、前述した触媒製造方法の後に、更に、還元処理を施すことで目的の酸化数にするのが好ましい。
燃料電池の形状などについては、電解質膜として固体高分子型電解質を使用すれば特に限定されるものではなく、任意形状の電解質膜上にアノード、カソードを密着させた電極接合体として用いることができる。
本発明の燃料電池としては、本発明の触媒をアノードに有する必要があるが、その構造は従来公知のものと同様でよく、又、カソードおよび固体高分子型電解質も、従来公知のものと同様でよい。例えば、カソード電極に使用する触媒は、白金などを使用することができ、固体高分子型電解質は、アシプレックス、ナフィオンなどの商標名で市販されているものを使用することができる。
本発明の触媒を用いて電極を形成するには、本発明の触媒にバインダーを添加して固体高分子型電解質のアノード側に触媒層を形成し、カソード側にも同様に公知の触媒をバインダーに添加して触媒層とすれば良い。必要に応じて、拡散層、集電体をホットプレスなどにより一体化して、電極接合体とする。
実施例及び比較例において用いる測定法は以下のとおりである。
赤外分光法(FT−IR)の測定は、FT/IR−460Plus460(日本分光社製)のフーリエ変換赤外分光光度計を用い、KBr錠剤法を用いて、400〜4000cm−1の範囲をResolution=4cm−1として行う。
熱重量測定(TG)は、TGA50((株)島津製作所製)を用い、空気中において、10℃/分で25℃〜500℃まで昇温し、500℃で5分間ホールドといった工程で測定する。
X線光電子分光分析(XPS)は、ESCALAB250(サーモエレクトロン社製)を用い、励起源はmono.AlKαで、約2mmΦの皿型資料台を用いて測定する。
電気化学試験は、ポテンシオガルバノスタット:Solartron1280Z(英国ソーラトロン社製)を用いて行い、各々の条件等の詳細は各実施例内に記載する。
以下、実施例1〜6において、本発明における触媒の製造方法を具体的に説明する。
N,N’−ジエチル−1,2−ジチオオキサミド(C2H5HNCSCSNHC2H5)0.88gをエタノール20ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、CuSO4・5H2O1.25gをH2O50mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら5時間放置した後、析出した粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、本発明の触媒0.98gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)−1,2−ジチオオキサミド(HOC 2 H 4 HNCSCSNHC2H4OH)1.04gをエタノール20ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、CuSO4・5H2O1.25gをH2O50mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら2時間放置した後、析出した粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、本発明の触媒1.33gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
N,N’−ジプロピル−1,2−ジチオオキサミド(C3H5HNCSCSNHC3H5)0.51gをエタノール30ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、CuSO4・5H2O0.62ggをH2O30mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら7時間放置した後、析出した粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、本発明の触媒0.61gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
定した。
N,N’−ジエチル−1,2−ジチオオキサミド(C2H5HNCSCSNHC2H5)0.88gをエタノール100ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、この溶液に、導電性担体としてケッチェンブラックECP600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株):商品名)2gを加えた後、10分間超音波分散を行なった。その後この分散液を攪拌しながら、CuSO4・5H2O1.25gをH2O50mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら5時間放置した後、ケッチェンブラックを含んだ粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、導電性担体であるケッチェンブラック上に担持した本発明の触媒2.89gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)−1,2−ジチオオキサミド(HOC 2 H 4 HNCSCSNHC2H 4 OH)1.04gをエタノール20ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、この溶液に、導電性担体としてケッチェンブラックECP600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株):商品名)2gを加えた後、10分間超音波分散を行なった。その後この分散液を攪拌しながら、CuSO4・5H4O1.25gをH2O50mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら2時間放置した後、ケッチェンブラックを含んだ粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、導電性担体であるケッチェンブラック上に担持した本発明の触媒3.12gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
ジチオオキサミド(H2NCSCSNH2)0.25gをエタノール50ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、この溶液に、Cu(CH3COO)2・H2O0.42gをエタノール20mlに室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら2時間放置した後、析出した粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、本発明の比較例の触媒0.52gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
ジチオオキサミド(H2NCSCSNH2)0.25gをエタノール50ml中、室温下で撹拌・溶解させた後、この溶液に、導電性担体としてケッチェンブラックECP600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株):商品名)2gを加えた後、10分間超音波分散を行なった。その後この分散液を攪拌しながら、Cu(CH3COO)2・H2O0.42gを室温下にて溶解した溶液を加えた。室温下にて攪拌しながら2時間放置した後、ケッチェンブラックを含んだ粉末を吸引濾過により取り出した。得られた粉末を精製水及びエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥機にて1昼夜乾燥させ、導電性担体であるケッチェンブラック上に担持した本発明の比較例の触媒2.55gを得た。組成は、FT−IR、TG及びXPSにより決定した。
次に、比較例3〜4及び実施例7〜8において、本発明の触媒性能を具体的に説明する。
[比較例3]
比較例1により得られたCu触媒のエタノール酸化活性を以下の方法により評価した。まず、触媒の粉末0.04gに精製水を加え4gに調整し、10分間超音波を印加して分散させ、1重量%触媒懸濁液を得た。この触媒懸濁液を20μl採取し、鏡面研磨したグラッシーカーボン電極(直径6mm)上に滴下し、乾燥機において50℃で乾燥させた。次に導電性樹脂溶液(アシプレックス、旭化成ケミカルズ登録商標、含有量1.0%エタノール溶液)を20μl滴下し、窒素雰囲気中、120℃で2時間乾燥することで固定化してCu試験電極を作成した。
次に得られた[Cu(dtoa)]試験電極を作用極とし、対極には白金板、参照極には可逆水素電極(RHE)を用い、0.5M硫酸、1Mエタノール水溶液中で3電極式の電気化学セルを用いて、電位規制法によりエタノール酸化電流と電極電位の関係を測定し、0.6Vvs.RHEにおける酸化電流値を求めて、エタノール酸化活性を評価した。酸化電流値が高いほど触媒活性が高いことを示すが、0.001mAとほとんど活性を示さなかった。
比較例2により得られた炭素粉末を含むCu触媒の電気化学特性を以下の方法により評価した。まず、触媒の粉末0.04gに精製水を加え4gに調整し、10分間超音波を印加して分散させ、1重量%触媒懸濁液を得た。この触媒懸濁液を20μl採取し、鏡面研磨したグラッシーカーボン電極(直径6mm)上に滴下し、乾燥機において50℃で乾燥させた。次に導電性樹脂溶液(アシプレックス、旭化成ケミカルズ登録商標、含有量1.0%エタノール溶液)を20μl滴下し、窒素雰囲気中、120℃で2時間乾燥することで固定化し、Cu試験電極を作成した。
次に得られた炭素粉末と[Cu(dtoa)]から成る試験電極について、比較例1と同様の方法でエタノール酸化活性を評価した。酸化電流値が高いほど触媒活性が高いことを示すが、0.001mAとほとんど活性を示さなかった。
実施例4により得られたCu触媒の電気化学特性を以下の方法によって評価した。まず、触媒の粉末0.04gに精製水を加え4gに調整し、10分間超音波を印加して分散させ、1重量%触媒懸濁液を得た。この触媒懸濁液を20μl採取し、鏡面研磨したグラッシーカーボン電極(直径6mm)上に滴下し、乾燥機において50℃で乾燥させた。次に導電性樹脂溶液(アシプレックス、旭化成ケミカルズ登録商標、含有量1.0%エタノール溶液)を20μl滴下し、窒素雰囲気中、120℃で2時間乾燥することで固定化し、Cu試験電極を作成した。
次に得られた[Cu(C2H4dtoa)]試験電極を作用極とし、対極には白金板、参照極には可逆水素電極(RHE)を用い、0.5M硫酸、1Mエタノール水溶液中で3電極式の電気化学セルを用いて、電位規制法によりエタノール酸化電流と電極電位の関係を測定し、0.6Vvs.RHEにおける酸化電流値を求めて、エタノール酸化活性を評価した。酸化電流値が高いほど触媒活性が高いことを示し、0.24mAと高いエタノール酸化活性を示した。
実施例6により得られた炭素粉末を含むCu触媒の電気化学特性評価した。評価方法は、実施例7と同様である。エタノール酸化電流値は2.5mAと高いエタノール酸化活性を示した。
Claims (2)
- 下記一般式(1)で表されるジチオオキサミド誘導体(下記一般式(1)中、Rは、各々独立にエチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基のいずれかの基である。)からなる配位子と、Mn、Fe、Co、Ni、Cuから選択される一種以上の中心金属Mとからなる配位高分子金属錯体を含有することを特徴とするエタノールを燃料とする固体高分子型燃料電池用アノード電極に設けるエタノール酸化触媒。
RHNCSCSNHR ・・・(1) - 該ジチオオキサミド誘導体を溶媒に溶解させてジチオオキサミド誘導体溶液とし、炭素粒子を分散させた後、中心金属Mの塩を加えることを特徴とする請求項1に記載のエタノールを燃料とする固体高分子型燃料電池用アノード電極に設けるエタノール酸化触媒の製造方法。
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