以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドについて説明する。本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドである。図1は本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図1は媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示している。また、図1において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図2は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図1および図2に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルティック(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に配置されたアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、この第1の再生シールド層3の上に配置された絶縁層4と、この絶縁層4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、MR素子5および絶縁層4を覆うように配置された絶縁層8と、この絶縁層8の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層9とを備えている。
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面30に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
磁気ヘッドは、更に、第2の再生シールド層9の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる非磁性層10と、この非磁性層10の上に配置された磁性材料よりなる中間磁性層11とを備えている。第1の再生シールド層3から中間磁性層11までの部分は、再生ヘッドを構成する。中間磁性層11は、再生シールド層の機能と後述する記録ヘッドにおける補助磁極としての機能とを有している。
磁気ヘッドは、更に、中間磁性層11の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる非磁性層12と、この非磁性層12の上に配置された磁性材料よりなるヨーク層13と、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料よりなり、ヨーク層13の周囲に配置された非磁性層14とを備えている。ヨーク層13の媒体対向面30側の端部は、媒体対向面30から離れた位置に配置されている。また、ヨーク層13および非磁性層14の上面は平坦化されている。
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層13および非磁性層14の上面の上に配置された磁性材料よりなる磁極層15と、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料よりなり、磁極層15の周囲に配置された非磁性層16とを備えている。磁極層15の下面は、ヨーク層13の上面に接している。また、磁極層15および非磁性層16の上面は平坦化されている。
磁気ヘッドは、更に、磁極層15および非磁性層16の上に配置されたギャップ層17と、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料よりなり、ギャップ層17の上において、後述するコイル19を配置すべき領域に配置された非磁性層18と、非磁性層18の上に配置されたコイル19と、このコイル19を覆うように形成された絶縁層20とを備えている。コイル19は、平面渦巻き形状をなしている。ギャップ層17には、コイル19の中心部に対応する位置に開口部が形成されている。絶縁層20は媒体対向面30に露出していない。なお、ギャップ層17は、非磁性導電層であってもよい。
磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなり、磁極層15、ギャップ層17および絶縁層20の上に配置された記録シールド層21を備えている。記録シールド層21は、ギャップ層17に形成された開口部を通して磁極層15に連結されている。また、記録シールド層21の媒体対向面30側の端部は、媒体対向面30に配置されている。非磁性層12から記録シールド層21までの部分は、記録ヘッドを構成する。
磁気ヘッドは、更に、記録シールド層21を覆うように形成されたアルミナ等の絶縁材料よりなる保護層22を備えている。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面30と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは記録媒体の進行方向Tの後側(スライダにおける空気流入端側)に配置され、記録ヘッドは記録媒体の進行方向Tの前側(スライダにおける空気流出端側)に配置されている。この磁気ヘッドでは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子5と、このMR素子5をシールドするための第1の再生シールド層3および第2の再生シールド層9とを備えている。MR素子5は、媒体対向面30の近傍に配置され、垂直磁気記録方式によって記録媒体に記録された情報を再生する。
記録ヘッドは、磁極層15、ギャップ層17、コイル19および記録シールド層21を備えている。コイル19は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。磁極層15は、媒体対向面30に配置された端面を有し、コイル19によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。記録シールド層21は、媒体対向面30に配置された端面を有し、媒体対向面30から離れた位置において磁極層15に連結されている。ギャップ層17は、媒体対向面30に配置された端面を有し、磁極層15と記録シールド層21との間に設けられている。
コイル19の少なくとも一部は、磁極層15および記録シールド層21に対して絶縁された状態で、磁極層15と記録シールド層21との間に配置されている。磁極層15、ヨーク層13および記録シールド層21は、コイル19によって発生された磁界に対応する磁束を通過させる磁路を構成する。
媒体対向面30において、記録シールド層21の端面は、磁極層15の端面に対して、ギャップ層17の厚みによる所定の間隔を開けて記録媒体の進行方向Tの前側(スライダにおける空気流出端側)に配置されている。記録シールド層21の端面の幅は、磁極層15の端面の幅よりも大きい。また、記録シールド層21の端面の面積は、磁極層15の端面の面積よりも大きい。記録シールド層21は、磁極層15の端面より発生された磁束を吸い込むことにより、磁界勾配を急峻にすることができる。また、記録シールド層21は、磁極層15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能も有する。また、記録シールド層21は、磁極層15の端面より発生される還流磁束のうちの不要な広がり成分を、記録媒体に達する前に吸い込むことにより、磁気的なシールドとして機能する。
次に、図3を参照して、磁極層15の形状について詳しく説明する。図3は、磁極層15の平面図である。図3に示したように、磁極層15は、トラック幅規定部15Aと、媒体対向面30から離れた位置に配置されトラック幅規定部15Aに連結された幅広部15Bとを有している。トラック幅規定部15Aは、媒体対向面30に配置されトラック幅を規定する端面を有している。トラック幅規定部15Aの上面の幅は、ほぼ一定になっている。幅広部15Bの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界の位置ではトラック幅規定部15Aの幅と等しく、媒体対向面30から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面30に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。
媒体対向面30におけるトラック幅規定部15Aの上面の幅、すなわちトラック幅は、例えば0.08〜0.30μmの範囲内である。ネックハイトは、例えば0.05〜0.5μmの範囲内である。幅広部15Bの最大の幅は、例えば5〜30μmの範囲内である。磁極層15の厚さは、0.15〜0.4μmの範囲内であることが好ましい。
図2に示したように、媒体対向面30に配置された磁極層15(トラック幅規定部15A)の端面は、基板1から遠い第1の辺A1と、第1の辺A1とは反対側の第2の辺A2と、第1の辺A1の一端と第2の辺A2の一端とを結ぶ第3の辺A3と、第1の辺A1の他端と第2の辺A2の他端とを結ぶ第4の辺A4とを有する台形形状をなしている。第1の辺A1は、トラック幅を規定する。磁極層15の端面の幅は、第2の辺A2に近づくに従って、すなわち基板1に近づくに従って小さくなっている。これにより、スキューに起因して、あるトラックへの情報の書き込み時に隣接トラックの情報が消去される現象を抑制することができる。なお、スキューとは、円盤状の記録媒体における円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きのことである。なお、磁極層15の端面の形状は、長方形または正方形であってもよい。また、磁極層15の端面の形状は、第2の辺A2がない三角形であってもよい。
なお、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下のような種々の変更が可能である。まず、ヨーク層13は設けられていなくてもよいし、磁極層15の上側に設けられていてもよいし、磁極層15の上下にそれぞれ設けられていてもよい。また、平面渦巻き状のコイル19の代わりに、磁極層15を中心にして螺旋状に配置されたコイルを設けてもよい。あるいは、磁極層15の上下にそれぞれ、平面渦巻き状のコイルを設けてもよい。また、記録シールド層21は、2つ以上の層によって形成されていてもよい。
本実施の形態に係る磁気ヘッドを含む磁気ディスク装置における記録媒体は、例えば、基板と、この基板上に順に積層された水平磁化層および垂直磁化層を備えている。垂直磁化層は、情報を記録する層である。水平磁化層は、磁束を通過させる磁路を形成する層である。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。この製造方法では、まず、基板1の上に、絶縁層2および第1の再生シールド層3を順に形成する。次に、第1のシールド層3の上に、絶縁層4、MR素子5および絶縁層8を順に形成する。次に、絶縁層8の上に第2の再生シールド層9を形成する。次に、第2の再生シールド層9の上に、非磁性層10、中間磁性層11および非磁性層12を順に形成する。
次に、非磁性層12の上にヨーク層13を形成する。次に、ヨーク層13を覆うように、非磁性層14を形成する。次に、ヨーク層13の上面が露出するまで、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって非磁性層14を研磨する。これにより、ヨーク層13および非磁性層14の上面が平坦化される。
次に、ヨーク層13および非磁性層14の上面の上に磁極層15を形成する。次に、磁極層15を覆うように、非磁性層16を形成する。次に、磁極層15の上面が露出するまで、例えばCMPによって非磁性層16を研磨する。これにより、磁極層15および非磁性層16の上面が平坦化される。
次に、磁極層15および非磁性層16の上に、ギャップ層17および非磁性層18を順に形成する。次に、非磁性層18の上にコイル19を形成する。次に、コイル19を覆うように、絶縁層20を形成する。次に、磁極層15、ギャップ層17および絶縁層20の上に、記録シールド層21を形成する。次に、記録シールド層21を覆うように、保護層22を形成する。
次に、保護層22の上に配線や端子等を形成し、スライダ単位で基板を切断し、媒体対向面30の研磨、浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
磁極層15は、本実施の形態に係る軟磁性膜を含んでいる。以下、本実施の形態に係る軟磁性膜について詳しく説明する。本実施の形態に係る軟磁性膜は、主要元素が鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)のうちの少なくとも鉄およびコバルトである合金よりなるものである。この軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜において、鉄の含有量は50重量%以上70重量%以下であり、コバルトの含有量は30重量%以上50重量%以下であり、ニッケルの含有量は0重量%以上10重量%以下であり、酸素(O)の含有量は0重量%以上0.01重量%以下であり、炭素(C)の含有量は0重量%以上0.1重量%以下であり、硫黄(S)の含有量は0.20重量%以上0.33重量%以下である。本実施の形態に係る軟磁性膜の飽和磁束密度は、2.2T以上である。また、本実施の形態に係る軟磁性膜の腐食電流密度は、0以上3.0×10-6A/cm2以下である。また、本実施の形態に係る軟磁性膜の内部応力の大きさは、0以上400MPa以下であることが好ましい。
また、軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜における鉄、コバルトおよびニッケル以外の元素(以下、不純物元素と言う。)の含有量は、1.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。
次に、本実施の形態に係る軟磁性膜の製造方法について説明する。本実施の形態に係る軟磁性膜の製造方法は、0.00087〜0.0022mol/Lのサッカリンナトリウムを含むめっき浴を用い、且つ方向が交互に切り替わるめっき電流を用いて電気めっきを行って、軟磁性膜を製造する工程を備えている。
本実施の形態におけるめっき浴は、サッカリンナトリウムの他に、例えば、硫酸鉄七水和物(濃度20〜60g/L)、硫酸コバルト七水和物(濃度10〜50g/L)、硫酸ニッケル六水和物(濃度0〜40g/L)、ほう酸(濃度27g/L)、硫酸アンモニウム(濃度20g/L)、塩化アンモニウム(濃度5g/L)、ラウリル硫酸ナトリウム(濃度0.01g/L)を含む。めっき浴のpHは、例えば2.0〜3.0である。本実施の形態に係る軟磁性膜における鉄、コバルト、ニッケルの各含有量は、めっき浴における硫酸鉄七水和物、硫酸コバルト七水和物、硫酸ニッケル六水和物の各濃度および比率を変えることにより制御することができる。
本実施の形態に係る軟磁性膜の製造方法において、めっき電流は、陰極に合金が析出するように作用する第1の方向の電流と第1の方向とは逆方向の第2の方向の電流とが交互に切り替わるものであり、且つ第1の方向の電流の時間積分値は、第2の方向の電流の時間積分値よりも大きいことが好ましい。これにより、軟磁性膜の成長を確実に進行させることができる。
図8は、本実施の形態におけるめっき電流の波形の一例を示している。図8において、横軸は時間を表し、縦軸は電流密度を表している。この例では、めっき電流の波形は矩形波形状になっている。図8では、陽極の電位が陰極の電位よりも高いときの電流密度を正の値で表し、陰極の電位が陽極の電位よりも高いときの電流密度を負の値で表している。陽極の電位が陰極の電位よりも高いときの電流は、めっき浴内では陽極から陰極へ向かう方向に流れる。この方向が上記第1の方向である。この第1の方向の電流は、陰極に合金が析出するように作用する。陰極の電位が陽極の電位よりも高いときの電流は、第1の方向とは逆方向に流れる。この方向が上記第2の方向である。第2の方向の電流は、陰極に析出した合金が溶解するように作用する。図8に示した例のめっき電流は、第1の方向の電流と第2の方向の電流とが交互に切り替わるものである。また、第1の方向の電流の電流密度の時間積分値は、第2の方向の電流の電流密度の時間積分値よりも大きい。以下、例えば図8に示したように、方向が交互に切り替わるめっき電流を両極性パルス電流と呼ぶ。
図9は、本実施の形態におけるめっき電流と比較するための比較例のめっき電流の波形を示している。図9において、横軸は時間を表し、縦軸は電流密度を表している。図9に示したように、比較例のめっき電流は、電流の方向が変化しないパルス状の電流である。このめっき電流の波形は矩形波形状である。比較例のめっき電流は、めっき浴内では陽極から陰極へ向かう方向に流れる。比較例のめっき電流では、電流が流れる状態と電流が流れない状態とが交互に現れる。以下、図9に示したような波形のめっき電流をノーマルパルス電流と呼ぶ。
以下、実験の結果も参照しながら、本実施の形態に係る軟磁性膜およびその製造方法の特徴について詳しく説明する。本実施の形態に係る軟磁性膜は、主要元素が鉄、コバルトおよびニッケルのうちの少なくとも鉄およびコバルトである合金(以下、鉄・コバルト・ニッケル系合金とも言う。)よりなるものである。この軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜において、鉄の含有量は50重量%以上70重量%以下であり、コバルトの含有量は30重量%以上50重量%以下であり、ニッケルの含有量は0重量%以上10重量%以下である。この組成範囲内の軟磁性膜は、2.2T以上という大きな飽和磁束密度を有するという特徴を有する。
ところで、一般的に、鉄・コバルト・ニッケル系合金では、鉄の含有量が多くなると、合金の腐食電位が高くなる。ここで、鉄・コバルト・ニッケル系合金よりなる軟磁性膜における鉄の含有量と腐食電位との関係を調べた実験の結果を図10に示す。図10において、横軸は鉄の含有量(重量%)を表し、縦軸は腐食電位(mV)を表している。なお、腐食電位は、標準水素電極に対して0.196mVの電位差を有する銀/塩化銀電極を標準電極として用いて測定した。
図10から分かるように、上記組成範囲内の軟磁性膜では、腐食電位が高くなって、腐食が発生しやすくなる。ただし、軟磁性膜の腐食しやすさは、軟磁性膜における不純物元素の含有量によっても変化する。一般的に、不純物元素の含有量が多くなると、軟磁性膜の耐食性は低下する。
本実施の形態では、サッカリンナトリウムを含むめっき浴を用い、且つ方向が交互に切り替わるめっき電流を用いて、電気めっきを行って軟磁性膜を製造する。サッカリンナトリウムは、めっき膜の内部応力を緩和するための添加剤として一般的なものである。軟磁性膜の内部応力が大きいと、軟磁性膜が下地から剥離したり、軟磁性膜においてクラックが発生したりするという問題が発生する。そのため、本実施の形態では、軟磁性膜の内部応力を小さくするために、サッカリンナトリウムを含むめっき浴を用いて軟磁性膜を製造する。
しかし、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量を多くすると、軟磁性膜における不純物元素の含有量も多くなり、その結果、軟磁性膜の耐食性が低下する。ここで、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性における不純物元素の含有量との関係を調べた実験の結果を、図11ないし図13に示す。なお、この実験では、軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜における鉄の含有量、コバルトの含有量およびニッケルの含有量を、それぞれ、62重量%、35重量%、3重量%とした。また、磁性膜は、図8に示した両極性パルス電流を用いて作製した。実験では、この両極性パルス電流において、第1の方向の電流の電流密度のピーク値を31.9mA/cm2とし、第1の方向の電流の1回の持続時間を25ミリ秒とし、第2の方向の電流の電流密度のピーク値を−9.6mA/cm2とし、第2の方向の電流の1回の持続時間を15ミリ秒とした。
図11は、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜における硫黄の含有量との関係を示している。図11において、横軸はサッカリンナトリウムの添加量(mol/L)を表し、縦軸は硫黄の含有量(重量%)を表している。図11において、記号Rは、本実施の形態におけるサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00087〜0.0022mol/Lを示している。なお、本実施の形態において、サッカリンナトリウムの添加量の範囲を0.00087〜0.0022mol/Lとしている理由については、後で説明する。
ところで、特許文献1には、めっき浴におけるサッカリンの添加量として、0.5g/dm3という値が開示されている。このサッカリンの添加量を、サッカリンナトリウムの添加量に換算すると、0.00273mol/Lとなる。図11では、このサッカリンナトリウムの添加量0.00273mol/Lとそれに対応する硫黄の含有量を、記号R1で示す点で表している。
また、特許文献2には、サッカリンナトリウムの添加量の範囲として0.5〜2g/Lという範囲が開示されている。この範囲を、mol/Lの単位で表すと、0.00244〜0.00975mol/Lとなる。図11において、記号R2は、このサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00244〜0.00975mol/Lの一部を示している。
図12は、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜における酸素の含有量との関係を示している。図12において、横軸はサッカリンナトリウムの添加量(mol/L)を表し、縦軸は酸素の含有量(重量%)を表している。図12において、記号Rは、本実施の形態におけるサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00087〜0.0022mol/Lを示している。また、図12において、記号R1で示す点は、特許文献1に開示されたサッカリンの添加量を換算して得られるサッカリンナトリウムの添加量0.00273mol/Lとそれに対応する酸素の含有量を表している。また、図12において、記号R2は、特許文献2に開示されたサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00244〜0.00975mol/Lの一部を示している。
図13は、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜における炭素の含有量との関係を示している。図13において、横軸はサッカリンナトリウムの添加量(mol/L)を表し、縦軸は炭素の含有量(重量%)を表している。図13において、記号Rは、本実施の形態におけるサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00087〜0.0022mol/Lを示している。また、図13において、記号R1で示す点は、特許文献1に開示されたサッカリンの添加量を換算して得られるサッカリンナトリウムの添加量0.00273mol/Lとそれに対応する炭素の含有量を表している。また、図13において、記号R2は、特許文献2に開示されたサッカリンナトリウムの添加量の範囲0.00244〜0.00975mol/Lの一部を示している。
図11ないし図13から分かるように、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量が多くなると、軟磁性膜における不純物元素である硫黄、酸素および炭素の各含有量も多くなる。従って、軟磁性膜における不純物元素の各含有量を少なくする観点からは、サッカリンナトリウムの添加量は少ない方がよい。しかし、サッカリンナトリウムの添加量を少なくすると、軟磁性膜の内部応力が大きくなる。
ここで、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜の内部応力との関係を調べた実験の結果を図14に示す。図14において、横軸はサッカリンナトリウムの添加量(mol/L)を表し、縦軸は軟磁性膜の内部応力(MPa)を表している。なお、この実験では、軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜における鉄の含有量、コバルトの含有量およびニッケルの含有量を、それぞれ62重量%、35重量%、3重量%とした。また、この実験では、図8に示した両極性パルス電流を用いて作製した軟磁性膜と、図9に示したノーマルパルス電流を用いて作製した軟磁性膜とで内部応力を比較した。なお、この実験で作製した軟磁性膜の内部応力は、全て引張り応力であった。
実験では、両極性パルス電流を用いて軟磁性膜を作製する際には、第1の方向の電流の電流密度のピーク値を31.9mA/cm2とし、第1の方向の電流の1回の持続時間を25ミリ秒とし、第2の方向の電流の電流密度のピーク値を−9.6mA/cm2とし、第2の方向の電流の1回の持続時間を15ミリ秒とした。また、実験では、ノーマルパルス電流を用いて軟磁性膜を作製する際には、電流が流れる状態のときの電流密度のピーク値を31.9mA/cm2とし、電流が流れる状態の1回の持続時間および電流が流れない状態の1回の持続時間を、いずれも25ミリ秒とした。
図14において、塗りつぶされた丸形の点は、両極性パルス電流を用いて作製した軟磁性膜におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜の内部応力とを表している。また、図14において、塗りつぶされていない四角形の点は、ノーマルパルス電流を用いて作製した軟磁性膜におけるサッカリンナトリウムの添加量と軟磁性膜の内部応力とを表している。
図14から分かるように、両極性パルス電流を用いて作製した軟磁性膜では、ノーマルパルス電流を用いて作製した軟磁性膜に比べて内部応力が小さくなる。従って、両極性パルス電流を用いて軟磁性膜を作製することにより、ノーマルパルス電流を用いて軟磁性膜を作製する場合に比べて、サッカリンナトリウムの添加量の添加量を少なくしながら、内部応力の小さな軟磁性膜を得ることができる。
ここで、軟磁性膜の下地からの剥離を防止するためには、軟磁性膜の内部応力の大きさは400MPa以下であることが好ましい。図14から分かるように、両極性パルス電流を用いて作製した軟磁性膜の内部応力の大きさを400MPa以下にするには、サッカリンナトリウムの添加量を0.00087mol/L以上とする必要がある。これが、本実施の形態におけるサッカリンナトリウムの添加量の範囲の下限値が0.00087mol/Lである理由である。
次に、両極性パルス電流を用いて作製した軟磁性膜における酸素の含有量、炭素の含有量および腐食電流密度の関係について調べた実験の結果について説明する。この実験では、以下の組成範囲内の多数の軟磁性膜を作製し、それらにおける酸素の含有量、炭素の含有量および腐食電流密度を調べた。上記組成範囲は、軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、鉄の含有量が50重量%以上70重量%以下、コバルトの含有量が30重量%以上50重量%以下、ニッケルの含有量が0重量%以上10重量%以下の範囲である。なお、上記軟磁性膜における硫黄の含有量は、0.2重量%以上0.4重量%以下である。また、実験では、両極性パルス電流において、第1の方向の電流の電流密度のピーク値を31.9mA/cm2とし、第1の方向の電流の1回の持続時間を25ミリ秒とし、第2の方向の電流の電流密度のピーク値を−9.6mA/cm2とし、第2の方向の電流の1回の持続時間を15ミリ秒とした。
実験で作製した多数の軟磁性膜における酸素の含有量および炭素の含有量を図15に示す。図15において、横軸は酸素の含有量(重量%)を表し、縦軸は炭素の含有量(重量%)を表している。また、図15において、塗りつぶされた四角形の点および塗りつぶされていない四角形の点は、各軟磁性膜における酸素の含有量および炭素の含有量を表している。なお、塗りつぶされた四角形の点は、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2以下であることを表し、塗りつぶされていない四角形の点は、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2を超えていることを表している。図15に示した実験結果では、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2以下となる軟磁性膜のほとんどにおいて、酸素の含有量は0重量%以上0.01重量%以下であり、且つ炭素の含有量は0重量%以上0.1重量%以下である。また、図15に示した実験結果では、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2を超える軟磁性膜では、酸素の含有量が0重量%以上0.01重量%以下であり、且つ炭素の含有量が0重量%以上0.1重量%以下であるものは存在していない。
また、実験では、上記の軟磁性膜における腐食電流密度と上記の軟磁性膜を用いて構成された磁極層15を含む磁気ヘッドの歩留りとの関係について調べた。その結果を、図16に示す。図16において、横軸は腐食電流密度(×10-6A/cm2)を表し、縦軸は磁気ヘッドの歩留り(%)を表している。なお、磁気ヘッドの歩留りとは、製造された磁気ヘッドの全数に対する良品の磁気ヘッドの割合である。ここでは、良品の磁気ヘッドとは、磁極層15に腐食が発生していない磁気ヘッドを言う。磁極層15に腐食が発生しているか否かは、集束イオンビームを用いて磁極層15の断面を形成し、この断面を走査電子顕微鏡で観察することによって確認した。
図16から分かるように、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2以下の場合には、磁気ヘッドの歩留りはほぼ100%になるのに対し、腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2を超えると、腐食電流密度が大きくなるほど磁気ヘッドの歩留りが低下する。このことから、磁気ヘッドの歩留りを大きくするためには、軟磁性膜における腐食電流密度は、3.0×10-6A/cm2以下であることが好ましいことが分かる。
更に、図15に示した実験結果から、軟磁性膜における腐食電流密度を3.0×10-6A/cm2以下にするためには、軟磁性膜における酸素の含有量が0重量%以上0.01重量%以下で、且つ軟磁性膜における炭素の含有量が0重量%以上0.1重量%以下であることが好ましいことが分かる。これが、本実施の形態において、軟磁性膜における酸素の含有量を0重量%以上0.01重量%以下と規定し、軟磁性膜における炭素の含有量を0重量%以上0.1重量%以下と規定している理由である。
また、図12から、両極性パルス電流を用いて作製される軟磁性膜における酸素の含有量を0.01重量%以下とするには、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量を0.0022mol/L以下とする必要があることが分かる。また、図13から、両極性パルス電流を用いて作製される軟磁性膜における炭素の含有量を0.1重量%以下とするには、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量を0.00245mol/L以下とする必要があることが分かる。これらのことから、軟磁性膜における酸素の含有量を0重量%以上0.01重量%以下とし、且つ軟磁性膜における炭素の含有量を0重量%以上0.1重量%以下とするには、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量を0.0022mol/L以下とする必要があることが分かる。これが、本実施の形態におけるサッカリンナトリウムの添加量の範囲の上限値が0.0022mol/Lである理由である。
また、図11から、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量が0.00087〜0.0022mol/Lの範囲内のとき、両極性パルス電流を用いて作製される軟磁性膜における硫黄の含有量は、0.20重量%以上0.33重量%以下となる。これが、本実施の形態において、軟磁性膜における硫黄の含有量を0.20重量%以上0.33重量%以下と規定している理由である。
次に、軟磁性膜を作製する際のめっき電流の形態と、軟磁性膜における炭素の含有量、酸素の含有量および腐食電流密度との関係を調べた実験の結果について説明する。この実験では、軟磁性膜に含まれる鉄、コバルトおよびニッケルの合計を100重量%としたとき、軟磁性膜における鉄の含有量、コバルトの含有量およびニッケルの含有量を、それぞれ、62重量%、35重量%、3重量%とした。また、実験では、めっき浴におけるサッカリンナトリウムの添加量を0.002mol/Lとした。また、実験では、直流、ノーマルパルス電流、両極性パルス電流の3種類のめっき電流のそれぞれを用いて軟磁性膜を作製した。作製された軟磁性膜におけるめっき電流の形態と、炭素の含有量(重量%)、酸素の含有量(重量%)および腐食電流密度(A/cm2)の関係を下記の表に示す。なお、作製された軟磁性膜における硫黄の含有量は、0.2重量%以上0.4重量%以下である。また、この実験におけるノーマルパルス電流と両極性パルス電流の条件は、図14を参照して説明した実験の場合と同じである。また、この実験において、直流のめっき電流を用いて軟磁性膜を作製する際における電流密度は、31.9mA/cm2の一定値とした。
この実験から分かるように、めっき電流を両極性パルス電流として軟磁性膜を作製することにより、めっき電流を直流やノーマルパルス電流として軟磁性膜を作製する場合に比べて、軟磁性膜における炭素の含有量および酸素の含有量を大幅に少なくすることができると共に、軟磁性膜の腐食電流密度を小さくすることができる。めっき電流を直流やノーマルパルス電流として軟磁性膜を作製する場合には、軟磁性膜における酸素の含有量を0.01重量%以下とし、且つ軟磁性膜における炭素の含有量を0.1重量%以下とすることは困難である。これに対し、めっき電流を両極性パルス電流として軟磁性膜を作製する場合には、軟磁性膜における酸素の含有量を0.01重量%以下とし、且つ軟磁性膜における炭素の含有量を0.1重量%以下とすることが可能になる。これにより、軟磁性膜の腐食電流密度を3.0×10-6A/cm2以下にして、磁気ヘッドの歩留りを大きくすることができる。
なお、本実施の形態におけるめっき電流は、図8に示した波形の電流に限らず、方向が交互に切り替わる電流であればよい。本実施の形態におけるめっき電流の波形は、例えば、図17に示したような波形であってもよい。図17において、横軸は時間、縦軸は電流密度を表している。図17に示しためっき電流の波形は、電流密度が正の値のときの電流密度のピーク値が、電流密度が負の値のときの電流密度のピーク値よりも大きくなる正弦波形状である。本実施の形態において、めっき電流が、図8に示した波形の電流以外であっても、方向が交互に切り替わる電流であれば、めっき電流が図8に示した波形の電流である場合と同様の効果を得ることができる。
なお、方向が交互に切り替わるめっき電流を用いて軟磁性膜を製造することにより、軟磁性膜における不純物元素の含有量が少なくなる理由は、以下のように考えられる。方向が交互に切り替わるめっき電流を用いて軟磁性膜を製造する場合には、めっき電流の方向が第2の方向のときに、陰極において陽極反応が生じ、不純物元素がイオン化される。そのため、方向が交互に切り替わるめっき電流を用いて軟磁性膜を製造する場合には、電流の方向が変化しないめっき電流を用いて軟磁性膜を製造する場合に比べて、陰極に析出する合金に不純物元素が取り込まれることが抑制されると考えられる。
以上説明したように、本実施の形態に係る軟磁性膜またはその製造方法によれば、飽和磁束密度が大きく、且つ腐食電流密度が3.0×10-6A/cm2以下となって耐食性に優れた軟磁性膜を実現することができる。また、本実施の形態に係る磁気ヘッドによれば、飽和磁束密度が大きく、且つ耐食性に優れた磁極層を備えた磁気ヘッドを実現することができる。また、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法によれば、飽和磁束密度が大きく、且つ耐食性に優れた磁極層を備えた磁気ヘッドを、高い歩留りで安定して製造することができる。
以下、図1および図2に示した磁気ヘッドを含むスライダ、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリおよび磁気ディスク装置について説明する。まず、図4を参照して、スライダ210について説明する。磁気ディスク装置において、スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体である磁気ディスクに対向するように配置される。このスライダ210は、主に図1における基板1および保護層22からなる基体211を備えている。基体211は、ほぼ六面体形状をなしている。基体211の六面のうちの一面は、磁気ディスクに対向するようになっている。この一面には、媒体対向面(エアベアリング面)30が形成されている。磁気ディスクが図4におけるz方向に回転すると、磁気ディスクとスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、図4におけるy方向の下方に揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によって磁気ディスクの表面から浮上するようになっている。なお、図4におけるx方向は、磁気ディスクのトラック横断方向である。スライダ210の空気流出側の端部(図4における左下の端部)の近傍には、本実施の形態に係る磁気ヘッド100が形成されている。
次に、図5を参照して、ヘッドジンバルアセンブリ220について説明する。ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、このスライダ210を弾性的に支持するサスペンション221とを備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム222、このロードビーム222の一端部に設けられると共にスライダ210が接合され、スライダ210に適度な自由度を与えるフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224とを有している。ベースプレート224は、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向xに移動させるためのアクチュエータのアーム230に取り付けられるようになっている。アクチュエータは、アーム230と、このアーム230を駆動するボイスコイルモータとを有している。フレクシャ223において、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
ヘッドジンバルアセンブリ220は、アクチュエータのアーム230に取り付けられる。1つのアーム230にヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。また、複数のアームを有するキャリッジの各アームにヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドスタックアセンブリと呼ばれる。
図5は、ヘッドアームアセンブリを示している。このヘッドアームアセンブリでは、アーム230の一端部にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には、アーム230を回動自在に支持するための軸234に取り付けられる軸受け部233が設けられている。
次に、図6および図7を参照して、ヘッドスタックアセンブリの一例と磁気ディスク装置について説明する。図6は磁気ディスク装置の要部を示す説明図、図7は磁気ディスク装置の平面図である。ヘッドスタックアセンブリ250は、複数のアーム252を有するキャリッジ251を有している。複数のアーム252には、複数のヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251においてアーム252とは反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル253が取り付けられている。ヘッドスタックアセンブリ250は、磁気ディスク装置に組み込まれる。磁気ディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚の磁気ディスク262を有している。各磁気ディスク262毎に、磁気ディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置される。また、ボイスコイルモータは、ヘッドスタックアセンブリ250のコイル253を挟んで対向する位置に配置された永久磁石263を有している。
スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250およびアクチュエータは、本発明における位置決め装置に対応し、スライダ210を支持すると共に磁気ディスク262に対して位置決めする。
磁気ディスク装置では、アクチュエータによって、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向に移動させて、スライダ210を磁気ディスク262に対して位置決めする。スライダ210に含まれる磁気ヘッドは、記録ヘッドによって、磁気ディスク262に情報を記録し、再生ヘッドによって、磁気ディスク262に記録されている情報を再生する。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の軟磁性膜は、垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドにおける磁極層に限らず、長手磁気記録用の薄膜磁気ヘッドにおける磁極層にも適用することができる。
また、本発明の軟磁性膜は、薄膜磁気ヘッドにおける磁極層に限らず、飽和磁束密度が大きく、且つ耐食性に優れていることが要求される軟磁性膜全般に適用することができる。