JP2007166195A - 信号処理装置、信号処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも互いに隣接する周波数バンドについて、一方の周波数バンドから上記他方の周波数バンドへの漏れゲイン値に基づき他方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理と、この更新されたゲイン値が設定された場合における上記他方の周波数バンドからの漏れゲイン値に基づき上記一方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理とを交互に繰り返し行った結果に基づき、各周波数バンドごとに設定されるべきゲイン値を調整する。
【選択図】図4
Description
この場合、上記周波数−振幅特性については、予め聴取位置にマイクロフォンをセッティングしておき、スピーカから出力したテスト信号をこのマイクロフォンで検出した結果に基づき測定するようにされる。そして、この測定結果に基づき、目標とする周波数−振幅特性が得られるようにして音声信号に対する信号処理を行うようにされる。具体的には、例えば上述したGEQを利用して、目標の特性が得られるように各バンドのイコライザ素子の設定ゲインを調整するようにされる。
例えば、一般的にGEQでは、所謂EQカーブの中抜けが抑制されるように、各イコライザ素子のQ値を比較的低めの値に設定するということが行われる場合がある。このようにQ値が低めに設定されることによっては、例えば図4(a)に示されるようにして、各バンドのゲイン窓の特性(形状)として、中心周波数からの裾野が広くなる傾向となる。このことで、次の図4(b)に斜線部により示すようにして、それぞれ隣り合うバンド間で相互にゲインの漏れが生じてしまう。そして、このような漏れゲインが生じることで、各バンドに対して或るゲイン値を設定した場合は、実際のゲインとしてはそれ以上のゲインが得られてしまうこととなる。すなわち、単に測定結果から導き出された目標のゲイン値を設定したのでは、適正に目標の特性が得られなくなってしまうものである。
このようなことから、周波数−振幅特性の補正にGEQを用いる場合は、例えば上記EQカーブの中抜け抑制への対策などのために隣接するバンド間で漏れゲインが生じる場合に、適正に目標特性となるように補正を行うことが困難となる。
つまり、先ず、入力信号の所定複数の周波数バンドごとにゲインを可変設定するように構成されたゲイン設定手段を備える。
そして、上記周波数バンドごとに目標のゲインが得られるようにするにあたり、少なくとも互いに隣接する周波数バンドについて、一方の周波数バンドに目標のゲイン値が設定された場合の他方の周波数バンドへの漏れゲイン値を得ると共に、更新処理として、上記一方の周波数バンドから上記他方の周波数バンドへの漏れゲイン値に基づき上記他方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理と、この更新されたゲイン値が設定された場合における上記他方の周波数バンドからの漏れゲイン値に基づき上記一方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理とを交互に繰り返し行った結果に基づき、上記ゲイン設定手段により各周波数バンドごとに設定されるべきゲイン値を調整するゲイン調整手段を備えるようにした。
このようにゲイン値の更新が繰り返されることで、隣接するバンド間で漏れゲイン値は相互に変化していくことになるが、その過程において、実際に得られるゲインの値と目標値との誤差が減少していき、徐々に目標特性に近づいていくことになる。つまり、このようなゲイン値の更新処理が繰り返されることで、より高精度に実際のゲイン特性を目標特性に合わせ込むことができる。
また、このような本発明は、更新処理として、隣接バンドからの漏れゲイン値を加味してそのバンドについて設定されるべきゲイン値を算出するという比較的簡易な演算を繰り返せばよいだけであり、従って処理時間としては比較的短時間で済むものとできる。
つまりは、これにより、漏れゲインが生じる場合において実際のゲイン特性が目標特性となるように調整するにあっての処理時間は比較的短いものとでき、これによってユーザを待たせる時間としても短くできシステムの使用性低下を効果的に防止できる。
図1は、本発明の実施の形態としての信号処理装置を備えて構成されたAV(Audio Visual)アンプ1の内部構成について示している。
先ず、実施の形態のAVアンプ1は、周波数−振幅特性の補正など、各種音場補正を装置側で自動的に行う自動音場補正機能を有するように構成される。
このような自動音場補正機能を実現するための、AVアンプ1を含むAVシステムの概要を次の図2に示す。この図2では、AVシステムが5.1chサラウンドシステムで構成される場合を例示している。図示するようにAVアンプ1に対しては、前方正面スピーカSP-FC、前方右スピーカSP-FR、前方左スピーカSP-FL、後方右スピーカSP-RR、後方左スピーカSP-RLの5chスピーカと、サブウーファSP-SBの計6つのスピーカが接続される。
また、音響特性の測定のために必要なマイクロフォンMが聴取位置P-lにセッティングされ、これがAVアンプ1と接続されている。
また、図2に示したマイクロフォンMはマイク入力端子Tmに対し接続される。
つまり、端子t1が選択されることで音声入力端子Tinを介した外部からの音声入力が可能とされ、また端子t2が選択されることでマイク入力端子Tmを介したマイクロフォンMからの音声入力が可能とされる。
図示は省略しているが、このスイッチSWの切り替え制御は、音響特性の測定(この場合は特に周波数−振幅特性の測定)の際にマイクロフォンMからの音声入力が行われるようにして、後述するCPU9が行うようにされる。
例えば、音声信号処理としては、残響効果など各種音響効果を与えるための処理を行うようにされる。
また、この場合のDSP4では、例えば周波数−振幅特性や各スピーカSP−マイクロフォンM間の遅延時間など、自動音場補正のために必要な各種音響特性についての測定を行うようにされる。このような音響特性についての測定は、スピーカSPから例えばTSP(Time Streched Pulse)信号などのテスト信号を出力し、これをマイクロフォンMにて検出した結果に基づき行うようにされる。
なお、このような音響特性についての測定動作はCPU9からの指示に基づきDSP4が行うものとされるが、このような構成は周知でありここでの詳細な説明は省略する。
また、特にこの場合のDSP4は、GEQ(グラフィックイコライザ)として複数のイコライザ素子を備え、複数の周波数バンドごとにゲイン調整を行うように構成される。
このようなMPFによるイコライザ素子の構成要素をブロック図化したものを次の図3に示す。この図3に示されるように、MPFの構成要素としては遅延素子21、22、29、30、乗算器23、24、25、27、28、加算器26が設けられる。
図示するように音声信号は、乗算器23を介して加算器26に入力されると共に、遅延素子21と乗算器24を介しても加算器26に入力される。また遅延素子21を介した音声信号は遅延素子22→乗算器25を介しても加算器26に入力される。
また、加算器26の加算出力は、図示するように外部に出力されると共に、分岐して遅延素子29→乗算器27を介して加算器26に入力される。
DSP4では、このようなMPFとしてのデジタルフィルタ処理をプログラム制御による数値計算を行って実現するようにされる。
CPU9は、図示するバス7を介した通信を行って各部の制御を行うようにされる。図示するようにしてバス7を介しては、上記ROM10、RAM11、及び表示制御部12、DSP4が接続される。
この操作部8には、当該AVアンプ1の筐体外部に表出するようにして設けられた各種の操作子が備えられ、それらの操作に応じたコマンド信号をCPU9に供給する。CPU9は操作部8からのコマンド信号に応じた各種の制御動作を実行するようにされる。これによってAVアンプ1ではユーザの操作入力に応じた動作が実行されるようになっている。
また、操作部8としては、リモートコマンダから発せられた例えば赤外線信号等に依るコマンド信号を受信するコマンド受信部を備えるようにすることもできる。すなわち、このコマンド受信部として、上記リモートコマンダから操作に応じて発信されるコマンド信号を受信してこれをCPU9に供給するように構成するものである。
ユーザはこの操作子により各周波数バンドごとに設定されるべきゲイン値を指示入力することができる。CPU9は操作入力に応じた指示値をDSP4に与えることで、それら指示値に応じたゲインがそれぞれ対応するイコライザ素子のゲインとして設定されるように制御を行う。
例えば、所謂EQカーブの中抜けが抑制されるように各イコライザ素子のQ値を比較的低めの値に設定するということが行われる場合があり、その場合は次の図4(a)に示されるようにして、各周波数バンドのゲイン窓の特性(形状)として、中心周波数からの裾野が広くなる傾向となる。このことで、次の図4(b)の斜線部により示されるようにして、それぞれ隣り合うバンド間で相互にゲインの漏れが生じてしまう。つまり、図中バンドnについて見ると、それぞれ隣接するバンドn−1、バンドn+1からの漏れゲインが影響し、さらにこれらバンドn−1、バンドn+1に対してはバンドnからの漏れゲインが影響するといったものである。
このようなことから、周波数−振幅特性の補正にGEQを用いる場合は、例えば上記のようなEQカーブの中抜け抑制への対策などのために隣接するバンド間で漏れゲインが生じる場合に、適正に目標特性となるように補正を行うことが困難となる。
つまり、例えば次の図5(a)に示されるような周波数−振幅特性が得られた場合には、これをフラットな特性とするために、図5(b)に示されるように図5(a)の各バンドの振幅を相殺するようなゲイン特性を設定するものである。具体的には、各バンドの中心周波数の振幅値の極性を反転させた値を設定する。
なお、この図6を始め以下の説明においては、簡単のために、漏れゲインによる影響はそれぞれ隣り合うバンドからのみ及ぶものとして説明を続ける。すなわち、周波数バンドnに対しては、隣接する周波数バンドn−1、周波数バンドn+1からの漏れゲインのみが影響するというものである。
確認のために述べておくと、ここにおいて漏れゲインの影響が及ぶ範囲とは、中心周波数のゲイン値を最大とした場合での漏れゲインが及ぶ範囲として考える。
また、さらに以下では簡単のため、GEQのバンド数は5バンドのみとされる場合を例示する。
これに応じて設定されるべき各バンドの中心周波数の目標ゲイン値(dB)は、図示するようにしてバンド1=6、バンド2=8、バンド3=4、バンド4=8、バンド5=6となる。
ここでは、図6に示されるようにして先ずは奇数番目のバンド(バンド1、バンド3、バンド5)についてそれぞれの目標ゲイン値を仮決めするものとする。
つまりは、中心周波数のゲイン値が決定されれば、(Q値が或る値に固定されている条件下では)そのバンドのゲイン窓の形状を特定でき、このゲイン窓の形状から隣接バンドへの漏れゲインの値も特定することができる。
具体的に、このような中心周波数のゲイン値に応じた隣接バンドへの漏れゲインの値の特定の手法としては、例えば予め中心周波数のゲイン値と漏れゲイン値との対応関係をデータテーブル化しておき、中心周波数のゲイン値の決定ごとに対応する漏れゲイン値を読み出すことで実現できる。或いは、中心周波数のゲイン値と漏れゲイン値との対応関係を表す関数を用いて算出することもできる。
例えば、仮にバンド1、バンド3からバンド2に対する漏れゲインの値が合計で5dBであったとすれば、この場合のバンド2の中心周波数の目標ゲイン値は8dBであるので、この目標値とするために設定されるべき中心周波数のゲイン値は8dB−5dB=3dBであると見積もることができる。
その後、奇数番目のゲインはこの偶数番目のバンドからの漏れに応じて更新され、さらにこの奇数番目の更新値に応じた漏れゲインに基づき偶数番目のバンドのゲイン値も更新されることになるが、もともと偶数番目のバンドのゲイン値が奇数番目の仮決め値に応じて設定された値である以上、その誤差の成分は含まれ続けるものとなる。
先ず図7では、各バンドごとの目標値を示している。この場合、バンド1〜バンド5の中心周波数の目標ゲイン値(dB)は、先の図6においても説明したようにバンド1=6、バンド2=8、バンド3=4、バンド4=8、バンド5=6である。
そして、この図7では、図中の「算出値」により、各バンドごとにその中心周波数の見積もり値(更新値)の遷移を示し、さらに各バンドの間にはこの更新値の遷移に応じた隣接バンドへの漏れゲインの値の遷移も示している。
先ず1セット目においては、上記奇数番目バンドの仮決め値に応じた漏れゲイン値が見積もられることで、偶数番目バンドに設定すべき中心周波数のゲイン値を見積もることができる。具体的に、バンド2については、バンド1、バンド3からの漏れゲイン値が影響し、それら漏れゲイン値(dB)の合計が「5」となるので、目標のゲイン値「8」とするために8dB−5dB=3dBが計算される。また、バンド4については、バンド3、バンド5からの漏れゲイン値が影響し、それら漏れゲイン値の合計が同様に「5」となるので、目標のゲイン値「8」とするために8dB−5dB=3dBが計算される。
そして、この漏れゲイン値に基づき、奇数番目バンドに設定されるべき中心周波数のゲイン値を更新する。つまり、バンド1については、バンド2からの漏れゲイン値「1.5」が影響するので、目標のゲイン値「6」とするために6dB−1.5dB=4.5dBが計算される。またバンド3についてはバンド2及びバンド4からの漏れゲイン値(1.5db+1.5dB=3dB)が影響し、目標のゲイン値「4」とするために4dB−3dB=1dBが計算される。さらにバンド5についてはバンド4からの漏れゲイン値「1.5」が影響し、目標のゲイン値「6」とするために6dB−1.5dB=4.5dBが計算される。
このように奇数番目バンドに設定されるべき中心周波数のゲイン値が更新されることで、偶数番目バンドへの漏れゲイン値としても更新される。すなわち、バンド1からの漏れゲイン値(dB)は「2.25」、バンド3からの漏れゲイン値は「0.5」、バンド5からの漏れゲイン値は「2.25」となる。
これに応じた奇数番目バンドへの漏れゲイン値は、図示するようにそれぞれ2.6dBであり、これに伴いバンド1の更新値は3.4dB、バンド3の更新値は−1.2dB、バンド5の更新値は3.4dBとなる。なお、厳密には、この場合の偶数番目バンドからの漏れゲイン値は2.625dBとなるが、説明の便宜上小数点第2位以下は四捨五入している。
また、これら偶数番目バンドの更新値に応じた漏れゲイン値は3.45dBであり、これに伴いバンド1の更新値は2.55dB、バンド3の更新値は−2.9dB、バンド5の更新値は2.55dBとなる。
また、これら偶数番目バンドの更新値に応じた漏れゲイン値は4.1dB(小数点第2位以下四捨五入)であり、これに伴いバンド1の更新値は1.9dB、バンド3の更新値は−4.2dB、バンド5の更新値は1.9dBとなる。
一方で、偶数番目バンドについては、このように奇数番目バンドの更新値が常に実際のゲイン値=目標ゲイン値となるようにされることで、実際に得られるゲインの値と目標のゲイン値とが一致しないものとなる。つまり、例えば1セット目終了時点において、偶数番目バンドで実際に得られるゲインの値は、設定値(更新値)が3dB、隣接奇数番目バンドからの合計漏れゲイン値が2.75(2.25+0.5)dBより、5.75dBとなって、目標値8dBと一致しないといったものである。
これにより、隣接バンドへの漏れゲインが生じる場合において実際のゲインが目標のゲインとなるように調整するにあっての処理時間は比較的短いものとでき、これによってユーザを待たせる時間としても短くすることができ、システムの使用性低下を効果的に防止することができる。
なお、この図に示す処理動作は図1に示したCPU9が例えばROM10に格納されるプログラムに基づいて実行するものである。また、この図においては、既に周波数−振幅特性についての測定が行われた状態にあるものとする。
そして、続くステップS102においては、先ずは奇数番目のバンドのゲイン目標値から隣接する偶数番目のバンドへの漏れゲインの値をそれぞれ算出する。なお、漏れゲインの値は、先に述べたようにして中心周波数のゲイン値と漏れゲイン値との対応関係を表す関数を用いて算出することもできるが、これらの対応関係を表すテーブル情報を参照することによって取得するようにすることもできる。
ここで、このステップS104における更新動作(算出動作)について、各バンドの中心周波数をnとした場合、その更新値G[n]は以下のようにして求める。
すなわち、周波数特性の測定結果より得られた中心周波数nの振幅値をTrgt[n]、中心周波数nに対する中心周波数n−1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n−1]、中心周波数nに対する中心周波数n+1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n+1]とした場合、
G[n]=−(Trgt[n]+LG[n−1]+LG[n+1])
により求める。
例えば先の図7の例において、1セット目のバンド2の更新値G[n]=3dBは、振幅値Trgt[n]=−8、中心周波数n−1のバンド(つまりバンド1)からの漏れゲイン値LG[n−1]=3、中心周波数n+1のバンド(つまりバンド3)からの漏れゲイン値LG[n+1]=2より、G[n]=−(−8+3+2)=3から求められる。
そして、ステップS106では、隣接する偶数番目のバンドからの漏れゲインの値を加味して奇数番目のバンドのゲインG-oddの値を更新する。このステップS106の更新動作としても、先のステップS104と同様に、各バンドの中心周波数をnとしたとき、その更新値G[n]については、周波数特性の測定結果より得られた中心周波数nの振幅値をTrgt[n]、中心周波数nに対する中心周波数n−1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n−1]、中心周波数nに対する中心周波数n+1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n+1]とした場合、
G[n]=−(Trgt[n]+LG[n−1]+LG[n+1])
により求める。
また、ステップS107では、更新したゲインG-oddの値から、隣接する偶数番目のバンドへの漏れゲインの値を算出する。
ステップS108において、カウント値Nが閾値th-N未満であるとして否定結果が得られた場合は、図示するようにステップS109に進んでカウント値Nをインクリメント(+1)し、ステップS104に戻るようにされる。つまり、これによって予め定められた所定回数分、ゲイン値についての更新動作が実行されるようになっている。
これによって各バンドの中心周波数のゲイン値が更新動作により得られたゲイン値に調整されることになる。
先ず、このように漏れゲインが2つ隣りまで影響する場合は、逆を言えば漏れゲインは3つ隣りまでは影響しないものとなるので、次の図9に示されているように、2つ飛ばしごとのバンドについては漏れゲインの影響がないとして目標ゲイン値が得られると見積もることができる。つまりこれにより、この場合はこれら2つ飛ばしごとのバンドの中心周波数のゲイン値を目標ゲイン値に仮決めすることができる。
なお、以下の説明では、これら2つ飛ばしごとのバンドとしての、漏れゲインの影響を考慮せずに仮決めを行うことのできるバンドのことを「仮決めバンド」と称する。
例えば図9の例では、バンド数が1〜8の8バンドであると仮定し、そのうちバンド1、バンド4、バンド7を仮決めバンドとした場合を示している。
つまり、先ず、仮決めバンドの1つ右隣りとなるバンド(仮決め+1バンドと称する)については、未だ仮決め+2バンドのゲイン値が見積もられておらず、従ってここからの漏れゲインはないものとして扱うものとし、上記仮決めバンドからの漏れゲインのみを考慮して目標値とするためのゲイン値を見積もる。
そして、仮決め+2バンド(仮決めバンドの右2つ隣りのバンド)については、上記のようにして仮決めバンド、仮決め+1バンドのゲイン値が見積もられたことで、これら仮決めバンド、及び仮決め+1バンドからの双方の漏れゲインを考慮したゲイン値を見積もる。
これに対し、上記仮決め+2バンドについてのゲイン値の見積もりは、影響する全てのバンドからの漏れゲインを考慮して行われる。この点で、先の図7で言えば、1セット目の偶数番目のバンドについてのゲイン値の算出に相当するものであると捉えることができる。
つまりは、この場合の更新動作では、このような仮決め+2バンドのゲイン値の算出から、更新動作の1セット目が開始されるものとなる。
つまり、仮決めバンドについては、仮決め+1バンド、仮決め+2バンドからの漏れゲインを考慮して、実際のゲインの値が目標値となるようにゲイン値を更新する。また、仮決め+1バンドについては、仮決めバンド、仮決め+2バンドからの漏れゲインを考慮して実際のゲインの値が目標値となるようにゲイン値を更新する。さらに、仮決め+2バンドについては、仮決めバンド、仮決め+1バンドからの漏れゲインを考慮して実際のゲインの値が目標値となるようにゲイン値を更新する。
但し、この場合も図7の場合と同様の原理により、ゲイン値の更新動作が繰り返されることで、同様に各バンドの実際のゲイン値と目標値との誤差が減少していくものとなる。そしてこの場合も、設定されるゲイン値の最小調整単位などに応じた所定回数分更新を行った時点で、誤差が最小となって実際のゲイン特性が目標特性に最も近づくことになる。
つまり、このようにゲイン値の更新動作を所定回数繰り返し行うことで、この場合も実際のゲイン特性が目標特性となるようにゲイン調整を行うことができる。
また、ステップS202においては、バンド1から2つ飛ばしごとのバンド(仮決めバンド)の目標ゲイン値から仮決め+1バンド、仮決め+2バンドへの漏れゲイン値を算出する。
ここで、このステップS206と後のステップS208、S210おける更新動作(算出動作)について、更新対象とするバンドの中心周波数をnとした場合、その更新値G[n]は以下のようにして求める。
すなわち、周波数特性の測定結果より得られた中心周波数nの振幅値をTrgt[n]とし、中心周波数nに対する中心周波数n−1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n−1]、中心周波数nに対する中心周波数n−2のバンドからの漏れゲイン値をLG[n−2]、中心周波数nに対する中心周波数n+1のバンドからの漏れゲイン値をLG[n+1]、中心周波数nに対する中心周波数n+2のバンドからの漏れゲイン値をLG[n+2]とした場合、
G[n]=−(Trgt[n]+LG[n−2]+LG[n−1]+LG[n+1]+LG[n+2])
により求める。
つまり、この場合は2つ隣りのバンドからの漏れゲインも影響するので、その分図8の場合よりも漏れゲインの項数が増えることになる。
ステップS212において、カウント値Nが閾値th-N未満であるとして否定結果が得られた場合は、図示するようにステップS213に進んでカウント値Nをインクリメント(+1)し、ステップS206に戻るようにされる。つまり、これによって予め定められた所定回数分ゲイン値についての更新動作が実行される。
これによって各バンドの中心周波数のゲイン値が更新動作により得られたゲイン値に調整されることになる。
その上で、先の例での仮決め+2バンドのように、影響する全てのバンドからの漏れゲインの値が見積もられることになるバンドについてのゲイン値の算出から、更新動作を開始する。例えば3つ隣りのバンドからの漏れゲインも影響する場合では、仮決めバンド・仮決め+1バンド・仮決め+2バンドについて影響する漏れゲインを加味してゲイン値を見積もり、それ以降は仮決め+3バンド→仮決めバンド→仮決め+1バンド→仮決め+2バンドの順で、それぞれ3つ隣りまでのバンドからの漏れゲインの値を加味したゲイン値の更新を行うことになる。
そして、このようなゲイン値の更新動作を予め定められた所定回数分行うことで、この場合も更新値の誤差が徐々に減少していき実際のゲイン特性を目標特性に最も近づけるようにすることができる。
例えば、実施の形態としての信号処理装置の動作は、CPU9とDSP4とにより実現するように構成する場合を例示したが、DSP4が単体で実現するように構成することもできる。その場合、DSP4が図8(図10)に示した処理動作を実行するように構成すればよい。
なお、先にも述べたように、例えば図7の例のように漏れゲインが隣接バンドにのみ及ぶ場合であって、初回に奇数番目バンドのゲイン値を目標値に仮決めした場合には、偶数番目のバンドの方で実際のゲインの値が常に誤差を含むものとなるので、偶数番目バンドにおける実際のゲインの値とその目標値との誤差を測定することになる。
その場合、設定されたQ値と中心周波数とに応じて、他のバンドへの漏れゲイン値が変化することになるので、例えば設定可能なQ値と中心周波数の組み合わせごとにそれぞれの漏れゲイン値を対応づけたテーブル情報を用意する、或いは設定可能なQ値と中心周波数の組み合わせごとにそれぞれの漏れゲイン値を算出するための関数を用いて漏れゲインを算出するように構成すればよい。
これによって設定されたQ値と中心周波数とに応じた適切な漏れゲインを加味して各バンドのゲイン値を適切に更新することができる。
Claims (3)
- 入力信号の所定複数の周波数バンドごとにゲインを可変設定するように構成されたゲイン設定手段と、
上記周波数バンドごとに目標のゲインが得られるようにするにあたり、少なくとも互いに隣接する周波数バンドについて、一方の周波数バンドに目標のゲイン値が設定された場合の他方の周波数バンドへの漏れゲイン値を得ると共に、
更新処理として、上記一方の周波数バンドから上記他方の周波数バンドへの漏れゲイン値に基づき上記他方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理と、この更新されたゲイン値が設定された場合における上記他方の周波数バンドからの漏れゲイン値に基づき上記一方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理とを交互に繰り返し行った結果に基づき、上記ゲイン設定手段により各周波数バンドごとに設定されるべきゲイン値を調整するゲイン調整手段と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。 - 上記ゲイン調整手段は、
予め定められた所定複数回分上記更新処理を行うようにされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 入力信号の所定複数の周波数バンドごとに目標のゲインが得られるようにゲイン調整を行う信号処理方法であって、
少なくとも互いに隣接する周波数バンドについて、一方の周波数バンドに目標のゲイン値が設定された場合の他方の周波数バンドへの漏れゲイン値を得ると共に、
更新処理として、上記一方の周波数バンドから上記他方の周波数バンドへの漏れゲイン値に基づき上記他方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理と、この更新されたゲイン値が設定された場合における上記他方の周波数バンドからの漏れゲイン値に基づき上記一方の周波数バンドに設定されるべきゲイン値を更新する処理とを交互に繰り返し行った結果に基づき、各周波数バンドごとに設定されるべきゲイン値を調整するようにした、
ことを特徴とする信号処理方法。
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