JP2007165753A - 導電性ペースト、積層セラミック電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられ、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止することができ、しかも優れた印刷性を有する導電性ペーストを提供すること。
【解決手段】積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストであって、導電性粉末と、有機ビヒクルとを含み、前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、前記ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストと、該ペーストを用いて製造された積層セラミック電子部品と、該電子部品の製造方法とに、関する。
近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミック電子部品においても、より一層の小型化・高容量化が進められている。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウムなどに代表されるセラミック粉末とバインダを主成分とするセラミックグリーンシートに、内部電極形成用の導電性ペーストを所定パターンで印刷して積層した後、同時焼成して一体焼結させ、最後に外部電極を形成して製造される。
内部電極形成用の導電性ペーストとしては、有機バインダを溶剤に溶解させた有機ビヒクル中に導電性粉末を分散させたものが用いられる。有機ビヒクル中の有機バインダとしては、たとえばエチルセルロースなどが使用され、有機ビヒクル中の溶剤としては、ターピネオールなどが使用されてきた。
しかしながら、ターピネオールを溶剤に使用した導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷すると、にじみ等の問題が発生することがあり、きちんとした所定膜厚の薄層化された電極パターンを形成することができなかった。
また、ターピネオールを溶剤に使用した導電性ペーストを、ブチラール樹脂を有機バインダとしたセラミックグリーンシートと組み合わせて使用した場合に、導電性ペースト中の溶剤がセラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が生じる。
こうしたシートアタック現象は、セラミックグリーンシートの厚みが比較的厚いうちは実用上問題とならない。しかしながら、セラミックグリーンシートの厚みが、たとえば5μm以下と薄い場合にシートアタック現象が生じると、導電性ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離する際に、セラミックグリーンシートが剥がれにくくなる。セラミックグリーンシートが剥がれにくくなると、この影響を受けてセラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、積層工程で正常な積層体が得られない。そして、正常な積層体が得られないと、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)が発生してしまい、歩留まりの低下を招いていた。
そこで近年、このシートアタック現象を改善するための方策がいくつか提案されている。たとえば、特許文献1,2では、内部電極を形成するための導電性ペースト用の溶剤として、ブチラールとの相溶性が比較的に低い溶剤を使用することが提案されている。具体的には、特許文献1ではジヒドロターピネオールを用いた導電性ペーストが、特許文献2ではジヒドロターピニルアセテートを用いた導電性ペーストが、それぞれ提案されている。
しかしながら、これらジヒドロターピネオールやジヒドロターピニルアセテートを溶剤に用いても、少なからずシートアタック現象が起こってしまい、結果として、セラミックグリーンシートの厚みバラツキが発生していた。そして、この厚みバラツキに起因して、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)が悪化し、さらには、デラミネーションが発生してしまうという問題があった。そのため、こうした従来の導電性ペーストでは、積層セラミックコンデンサの更なる小型化・高容量化に限界があった。
特開平9−17687号公報 特許2976268号公報
本発明の目的は、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられ、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止することができ、しかも優れた印刷性を有する導電性ペーストと、この導電性ペーストを用いて製造され、静電容量を高く保ちつつ、ショート不良率が低減され、耐電圧が高く、しかも層間剥離現象(デラミネーション)が有効に防止された積層セラミック電子部品と、該電子部品の製造方法と、を提供することである。
本発明者等は、導電性ペースト中に含有させる溶剤として、特定の溶剤を混合した混合溶剤を用いることで、導電性ペースト中にバインダとして含有されるエチルセルロースを良好に溶解し、優れた印刷性を実現しつつ、しかも、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストであって、
導電性粉末と、有機ビヒクルとを含み、
前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、
前記ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を含有することを特徴とする導電性ペーストが提供される。
好ましくは、前記溶剤として含有される、前記ターピニルアセテートと、前記イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、の割合が、重量比で20:80〜80:20の範囲である。
好ましくは、前記有機ビヒクル中の溶剤は、前記導電性粉末100重量部に対して50〜200重量部含有されている。
好ましくは、前記有機ビヒクル中の有機バインダが、前記導電性粉末100重量部に対して1〜10重量部含有される。
本発明に係る導電性ペーストにおいて、前記導電性粉末としては、セラミックグリーンシートと共に同時焼成する際の焼成温度や雰囲気に耐え得るものであればよい。例えば積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサである場合、Ag、Pd、Ni等の単体あるいはこれらの混合物、合金の粉末を用いることができ、特にNiまたはNi合金を主成分とすることが好ましい。積層セラミック電子部品が多層セラミック基板である場合、Ag,Pd,Cu等の単体あるいはこれらの混合物、合金の粉末を用いることができる。
本発明に係る導電性ペーストには、必要に応じて可塑剤や分散剤等の添加剤を含有していてもよい。
また、本発明によれば、ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、上記いずれかの導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を用いて製造され、
内部電極層と、厚さ3μm以下の誘電体層と、を有する積層セラミック電子部品が提供される。
さらに、本発明によれば、ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、上記いずれかの導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を焼成する積層セラミック電子部品の製造方法が提供される。
本発明において、導電性ペーストに含有させる一方の溶剤であるターピニルアセテートは、セラミックグリーンシートに有機バインダとして含まれるブチラール樹脂を溶解または膨潤させない(非相溶)。また、同様に、このターピニルアセテートと組み合わせて用いられる、もう一方の溶剤であるイソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートも、ブチラール樹脂を溶解または膨潤させない(非相溶)。このため、これらの溶剤を混合して用いた導電性ペーストを使用することにより、シートアタックを有効に防止することができる。このため、セラミックグリーンシートの厚みを、たとえば5μm以下と薄層化した場合でも、導電性ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離するに際して、セラミックグリーンシートの剥離性が向上し、セラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生することを効果的に抑制できる。すなわち、セラミックグリーンシートを今まで以上に薄層化しても、シートアタック現象が発生することはない。その結果、厚みが5μm以下と極めて薄いセラミックグリーンシートを適用しても正常な積層体が得られ、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)を発生させるおそれが少なくなる。
しかも、本発明においては、一方の溶剤であるターピニルアセテートと、もう一方の溶剤であるイソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を混合して用いる。このため、上記シートアタックの防止効果に加えて、各溶剤を単独で使用した場合と比較して、得られるペーストの印刷性を向上させることができ、その結果、印刷後の電極層の厚みむらを解消できる。そして、電極層の厚みむらを解消できることにより、焼成時における電極途切れの発生や電極の球状化を有効に防止することができ、電極途切れや電極の球状化に起因する静電容量の低下の防止を図ることができる。
以上のことから、本発明の導電性ペーストは、最終物たる積層セラミック電子部品の小型化・高容量化に極めて有益である。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられ、シートアタックを生じない導電性ペーストと、この導電性ペーストを用いて製造され、静電容量を高く保ちつつ、ショート不良率が低減され、耐電圧が高く、しかもデラミネーションが有効に防止された積層セラミック電子部品と、該積層セラミック電子部の製造方法と、を提供することができる。
積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックLC部品、多層セラミック基板等が例示される。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)は本発明の実施例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真、図2(B)、図2(C)は比較例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真である。
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2は、後述するセラミックグリーンシートを焼成して形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及び/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層2の厚みは、本実施形態では、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下に薄層化されている。
内部電極層3は、後述する所定パターンの導電性ペーストを焼成して形成される。内部電極層3の厚さは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下に薄層化されている。
外部電極4の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極4の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
誘電体ペーストの準備
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉体(誘電体原料)と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉体としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉体は、通常、平均粒子径が0.4μm以下、好ましくは0.1〜3.0μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダは、本実施形態ではポリビニルブチラールが用いられる。そのポリビニルブチラールの重合度は、好ましくは300〜2400、より好ましくは500〜2000である。また、樹脂のブチラール化度は、好ましくは50〜81.6%、より好ましくは63〜80%であり、その残留アセチル基量は、好ましくは6%未満、より好ましくは3%以下である。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、特に限定されるものではなく、ターピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、たとえば、約1〜約50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
本実施形態では、有機ビヒクル中の有機バインダにポリビニルブチラールを用いるので、この場合の可塑剤の含有量は、バインダ100重量部に対して、約25〜約100重量部であることが好ましい。
セラミックグリーンシートの形成
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、キャリアシート上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度の厚みで、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートは、焼成後に図1に示す誘電体層2となる。
キャリアシートとしては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシートの厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
セラミックグリーンシートは、キャリアシートに形成された後に乾燥される。セラミックグリーンシートの乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。
乾燥後のセラミックグリーンシートの厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。本実施形態では、乾燥後のセラミックグリーンシートの厚みが、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下となるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。
電極層の形成
(3)次に、キャリアシート上に形成されたセラミックグリーンシートの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)を形成する。
電極層の厚さは、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5〜1.5μmである。電極層の厚さが厚すぎると、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。
電極層の厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
電極層の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる導電性ペーストは、導電性粉末と有機ビヒクルとを含有する。
導電性粉末としては、特に限定されないが、Cu、Ni及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、Co及びAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電性粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電性粉末の粒子径は、通常、球状の場合、平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.4μm程度のものを用いる。より一層確実に薄層化を実現するためである。
導電性粉末は、導電性ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜50重量%含まれる。
有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。
有機バインダは、本実施形態ではエチルセルロースを主成分とする。有機バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、エチルセルロースと組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、アクリル樹脂などがある。
有機バインダは、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部で含まれる。バインダ量が少なすぎると、印刷後の皮膜強度が低下する傾向にあり、多すぎると、焼成前の電極パターンの金属充填密度が低下し、焼成後に形成される内部電極の平滑性を維持することができない。
溶剤としては、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート(isobornyl propionate)、イソボニルブチレート(isobornyl butyrate)及びイソボニルイソブチレート(isobornyl isobutyrete)から選択される1種以上(以下、適宜、これら3種の溶剤をまとめて「イソボニル基含有溶剤」とする)と、を含有するものを用いる。すなわち、本実施形態では、溶剤として、ターピニルアセテートと、上記したイソボニル基含有溶剤と、を混合した混合溶剤を用いる。これらの溶剤を混合して用いることにより、各溶剤を単独で使用した場合と比較して、印刷性を向上させることができ、その結果、印刷後の電極層の厚みむらを解消できる。そして、電極層の厚みむらを解消できることにより、焼成時における電極途切れの発生や電極の球状化を有効に防止することができ、電極途切れや電極の球状化に起因する静電容量の低下の防止を図ることができる。
なお、このような効果が得られる理由としては、必ずしも明らかではなく、種々の理由が考えられるが、これらを混合して用いることにより、各溶剤を単独で用いた場合と比較して、ペーストの物理特性を示す指標の一つであるクリープ特性を向上できることが理由の一例として挙げられる。クリープ特性とは、ペーストの物理特性、特に印刷性に関連する指標であり、ある粘度のペーストを基材などに垂らすと、該基材上で垂らされたペーストは自然に平坦になろうとする(レベリングされる)が、クリープ特性とは、このペーストのレベリングのし易さを示す指標である。クリープ特性が良いと、レベリング性に優れていることを意味し、たとえば、ペーストを印刷した場合において、印刷後のペースト膜が平坦に形成され易くなると考えられる。すなわち、厚みむらが解消されると考えられる。
これらの溶剤の比率は、重量比で、ターピニルアセテート:イソボニル基含有溶剤=80:20〜20:80であることが好ましく、より好ましくは60:40〜40:60である。ターピニルアセテートの比率が多すぎても、また、イソボニル基含有溶剤の比率が多すぎても、得られるペーストの印刷性が低下してしまい、印刷後の電極層に厚みむらが発生し、その結果、電極途切れや電極の球状化に起因する静電容量の低下が発生し易くなる。
溶剤中における、ターピニルアセテートとイソボニル基含有溶剤との合計の含有量は、溶剤全体100重量%に対して、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。微量であるが、ターピニルアセテートとイソボニル基含有溶剤とからなる混合溶剤と組み合わせて用いることが可能な溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどがある。
溶剤は、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは50〜200重量部、より好ましくは80〜100重量部で含まれる。溶剤量が少なすぎるとペースト粘度が高くなりすぎ、多すぎるとペースト粘度が低くなりすぎる不都合がある。
有機ビヒクル中の上記有機バインダ及び溶剤の合計含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、有機バインダ及び溶剤とともに有機ビヒクル中に含有させることが可能なものとしては、可塑剤、レベリング剤などがある。
導電性ペースト中には、上記誘電体ペーストに含まれるセラミック粉体と同じセラミック粉体が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。セラミック粉体(共材)は、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電性粉末の焼結抑制効果が低下し、内部電極のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、内部電極のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
接着性の改善のために、導電性ペーストには、可塑剤が含まれてもよい。可塑剤としては、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。本実施形態では、好ましくは、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ブチルブチレングリコール(BPBG)、フタル酸ジドデシル(DDP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、セバシン酸ジブチルなどが用いられる。中でも、フタル酸ジオクチル(DOP)が特に好ましい。可塑剤は、有機ビヒクル中の有機バインダ100重量部に対して、好ましくは25〜150重量部、より好ましくは25〜100重量部で含有される。可塑剤の添加により、そのペーストを用いて形成される電極層の接着力は高まり、電極層とセラミックグリーンシートとの接着力が向上する。このような効果を得るためには、可塑剤の添加量は、25重量部以上が好ましい。ただし添加量が150重量部を越えると、そのペーストを用いて形成される電極層から過剰な可塑剤が滲み出すため好ましくない。
導電性ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
グリーンチップの作製、焼成など
(4)次に、以上のような、所定パターンの電極層が表面に形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストを作製した。
誘電体ペーストの作製
BaTiO系セラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)と、溶剤としてのメタノールを準備した。次に、セラミック粉末100重量部に対して、10重量部の有機バインダと、150重量部の溶剤とをそれぞれ秤量し、ボールミルで混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。
導電性ペーストの作製
導電性ペーストを作製するための有機ビヒクルを、次の方法により調製した。
すなわち、まず、溶剤としてのターピニルアセテート及びイソボニルイソブチレートを準備し、次いで、準備したターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとを表1に示す割合(重量比)で混合した(表1の試料番号1〜8)。そして、有機バインダとしてのエチルセルロースを準備し、上記にて混合した溶剤100重量部に対して10重量部のエチルセルロースを溶解させて、有機ビヒクルを調製した。
次いで、導電性粉末としての平均粒径が0.2μmのNi粒子を準備し、この導電性粉末100重量部に対して、上記にて準備した有機ビヒクルを30〜70重量部添加して、ボールミルで混練することにより、スラリー化して導電性ペーストを得た。
すなわち、本実施例では、溶剤としてのターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの割合(重量比)を表1に示すように変化させた複数の導電性ペーストを調製した(ただし、表1の試料番号1は、溶剤としてターピニルアセテートのみを、試料番号8は、溶剤としてイソボニルイソブチレートのみを使用した試料である。)。
試験用試料の作製
PETフィルム上に、上記にて作製した誘電体ペーストをドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが1μmのセラミックグリーンシートを形成した。
次に、得られたセラミックグリーンシートの上に、上記にて作製した導電性ペースト(表1の試料番号1〜8)を用いて、スクリーン印刷法によって所定パターンで形成することにより、厚さ約1.0μmの電極パターンを持つセラミックグリーンシート(試験用試料)を得た。すなわち、PETフィルム、セラミックグリーンシート、電極パターンの順で積層されたシートを得た。
試験用試料の評価
得られた試験用試料を用い、「シートアタックの有無」と、「セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性」を評価した。
「シートアタックの有無」は、セラミックグリーンシートの電極パターン側とは反対面(PETフィルムに接する面)より目視により観察し、変形度合いと色合いによりセラミックグリーンシートの溶解度合いを確認することにより行った。その結果、セラミックグリーンシートの溶解を観察できなかった。
「セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性」については、試験用試料からPETフィルムを剥がす際の剥離強度を測定することにより行った。剥離強度の測定は、9cm×20cmのPET付セラミックグリーンシートの端(剥離のきっかけを作るのりしろ部分)にロードセルを粘着テープでつけて、上に移動させながら荷重(負荷)を計るようにして行った。その結果、剥離強度が5.0gf以下と適正な値を示した。これにより、セラミックグリーンシートに対する必要な保持力を維持できるとともに、剥離作業の効率性が期待できる。
試験用試料の顕微鏡観察
また、本実施例においては、上記各評価に加えて、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤を用いた試料(試料番号4)、イソボニルイソブチレートのみを溶剤として用いた試料(試料番号1)、ターピニルアセテートのみを溶剤として用いた試料(試料番号8)について、顕微鏡観察を行うことにより、電極の印刷状態を確認した。具体的には、PETフィルム側から、試験用試料に対して光を当てた状態にて、PETフィルムと反対側(すなわち、電極パターン側)から、試験用試料を観察することにより行った。得られた顕微鏡写真を図2(A)〜図2(C)に示す。
図2(A)〜図2(C)において、図2(A)は、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤を用いた試料(試料番号4)の顕微鏡写真であり、図2(B)は、イソボニルイソブチレートのみを溶剤として用いた試料(試料番号1)の顕微鏡写真であり、図2(C)は、ターピニルアセテートのみを溶剤として用いた試料(試料番号8)の顕微鏡写真である。なお、図2(A)〜図2(C)において、黒色部分は、電極厚みが厚く、単位面積当たりのNiの充填量が多い(光が透過し難い)部分であり、一方、白色部分は、電極厚みが薄く、単位面積当たりのNiの充填量が少ない(光が透過し易い)部分である。
図2(A)〜図2(C)を比較することにより、イソボニルイソブチレート、ターピニルアセテートをそれぞれ単独で使用した場合(図2(B)、図2(C))には、形成した電極パターンに厚みむらが発生してしまう(黒色部分と白色部分が点在する)のに対し、これらを混合して用いることにより(図2(A))、電極パターンの厚みむらを低減できることが確認できる。
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストと、導電性ペーストを用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、PETフィルム上に誘電体ペーストをドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、乾燥後の厚みが1μmのセラミックグリーンシートを形成した。本実施例では、このセラミックグリーンシートを第1グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、得られた第1グリーンシートの上に、導電性ペーストをスクリーン印刷法によって所定パターンで形成し、厚さ約1μmの電極パターンを持つセラミックグリーンシートを得た。本実施例では、このセラミックグリーンシートを第2グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、第1グリーンシートを厚さが150μmになるまで積層してセラミックグリーンシート群を形成した。このセラミックグリーンシート群の上に、第2グリーンシートを250枚積層した。そして、この上にさらに、前記同様の複数の第1グリーンシートからなるセラミックグリーンシート群を積層、形成し、温度70℃及び圧力1.5トン/cmの条件で加熱・加圧してグリーンセラミック積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したN2ガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
次に、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨した後、In−Ga合金を塗布して、試験用電極を形成し、積層セラミックチップコンデンサ試料を得た。
コンデンサ試料のサイズは、縦1.6mm×横0.8mm×高さ0.8mmであり、一対の内部電極層間に挟まれる誘電体層2の厚みは約1μm、内部電極層3の厚みは1μmであった。
コンデンサ試料の評価
得られたコンデンサ試料の静電容量、ショート不良特性、耐電圧特性(IR特性)及びデラミネーションの有無を評価した。
静電容量については、基準温度25℃でデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)を用いて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定し、1.8nF以上を良好とした。
ショート不良特性については、テスターで1.5V印加、1MΩ以下品を不良と判断し、不良率が5%未満を良好とした。
耐電圧特性(IR特性)については、定格電圧(6.3V)の12倍の直流電圧を3秒印加し、抵抗が10Ω未満のコンデンサ試料を故障と判断し、平均故障率が1.9%未満を良好とした。
デラミネーションの有無については、焼上げ素地を研磨して積層状態を目視にて不具合を観察した。
結果を表1に示す。
表1に示すように、導電性ペーストのための溶剤として、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤を用い、これらの混合比率を20:80〜80:20(重量比)の範囲内として作製したコンデンサ試料(試料番号3〜6)は、静電容量、ショート不良、故障率、デラミネーションのいずれも良好な結果となった。
これに対して、導電性ペーストのための溶剤として、それぞれターピニルアセテートのみ、イソボニルイソブチレートのみを用いて作製したコンデンサ試料(試料番号1,8)は、静電容量が低下する結果となった。なお、この理由としては、これらの溶剤を単独で使用した場合には、導電性ペーストの印刷性(特に、レベリング性)が低下してしまい、印刷後の電極層に厚みむらが発生し、その結果、焼成時に電極途切れや電極の球状化が発生してしまい、これらに起因して、静電容量が低下したと考えられる。
また、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの混合比率を本発明の好ましい範囲外として作製したコンデンサ試料(試料番号2,7)においても、同様に、静電容量が低下する結果となった。上記と同様の理由によると考えられる。
実施例2
導電性ペーストを作製する際に、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルブチレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、試験用試料及び積層セラミックチップコンデンサ試料(表2に示す試料番号11〜17)を作製し、実施例1と同様に評価した。
試験用試料を評価した結果、実施例2においても、シートアタックの発生は認められず、セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性も良好であった。また、積層セラミックチップコンデンサ試料の評価結果については、表2に示す通りである。
表2中、試料番号8は、実施例1の試料番号8と同じ試料である。
表2より、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルブチレートを使用した場合においても、同様の結果が得られることが確認できる。
実施例3
導電性ペーストを作製する際に、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルプロピオネートを使用した以外は、実施例1と同様にして、試験用試料及び積層セラミックチップコンデンサ試料(表2に示す試料番号21〜27)を作製し、実施例1と同様に評価した。
試験用試料を評価した結果、実施例3においても、シートアタックの発生は認められず、セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性も良好であった。また、積層セラミックチップコンデンサ試料の評価結果については、表3に示す通りである。
表3中、試料番号8は、実施例1の試料番号8と同じ試料である。
表3より、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルプロピオネートを使用した場合においても、同様の結果が得られることが確認できる。
実施例4
導電性ペーストを作製する際に、ターピネオールとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤の代わりに、ターピネオール(試料番号31)、ジヒドロターピネオール(試料番号32)、ジヒドロターピニルアセテート(試料番号33)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックチップコンデンサ試料を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
なお、表4には、実施例1〜3の試料番号4,14,24の結果についても併記した。
表4より、本発明の範囲内の実施例である、ターピニルアセテートとイソボニル基含有溶剤との混合溶剤を含有する導電性ペーストを用いて作製したコンデンサ試料(試料番号4,14,24)は、ターピネオールやジヒドロターピネオールを含む導電性ペーストを用いて作製されたコンデンサ試料(試料番号31,32)と比較して、ショート不良、故障率、デラミネーションのいずれを見ても飛躍的に向上していることが確認できる。また、ジヒドロターピニルアセテートを含む導電性ペーストを用いて作製されたコンデンサ試料(試料番号33)と比較した場合についても、上記性能の向上が認められる。このような結果となった理由としては、試料番号4,14,24においてはシートアタックが有効に防止されているのに対し、試料番号31〜33においてはシートアタックが発生したことによると考えられる。
実施例5
溶剤として、表5に示すような溶剤を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製した。すなわち、実施例5においては、溶剤として、ターピニルアセテートのみを使用した導電性ペースト、イソボニルイソブチレートのみを使用した導電性ペースト、及びターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとを50:50(重量比)で混合した混合溶剤を使用した導電性ペーストをそれぞれ作製した。
クリープ特性の評価
得られた各導電性ペーストについて、「クリープ特性」を評価した。「クリープ特性」は、各導電性ペーストに1Paの応力を与えたときの最大クリープ値(クリープmax)を、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスRS1、英弘精機社製)により測定することにより評価した。最大クリープ値が大きいほどクリープ特性に優れ、すなわちレベリング性に優れ、溶解性が高い(よく溶けている)ものと考えられる。また、溶解性が高いと経時的粘度変化も少ないと判断できる。結果を表5に示す。
表5より、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとを混合した混合溶剤を使用した導電性ペーストにおいては、それぞれターピニルアセテートのみ、イソボニルイソブチレートのみを使用して調製した導電性ペーストと比較して、クリープmaxが高くなることが確認できる。すなわち、これらを混合して用いることにより、それぞれ単独で用いた場合と比較して、レベリング性に優れ、印刷性(特に、印刷後のペースト膜の平坦性)が良好になると判断できる。なお、実施例1〜3のように、ターピニルアセテートとイソボニル基含有溶剤とを混合した混合溶剤を使用した場合において、それぞれ単独で用いた場合と比較して、良好な結果(特に、静電容量の向上効果)が得られたのは、このような特性に関連していると考えられる。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)は本発明の実施例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真、図2(B)、図2(C)は比較例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

Claims (7)

  1. 積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストであって、
    導電性粉末と、有機ビヒクルとを含み、
    前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、
    前記ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記溶剤として含有される、前記ターピニルアセテートと、前記イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、の割合が、重量比で20:80〜80:20の範囲である請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記有機ビヒクル中の溶剤が、前記導電性粉末100重量部に対して50〜200重量部含有されている請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記有機ビヒクル中の有機バインダが、前記導電性粉末100重量部に対して1〜10重量部含有されている請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 前記導電性粉末が、NiまたはNi合金を主成分とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
  6. ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を用いて製造され、
    内部電極層と、厚さ3μm以下の誘電体層と、を有する積層セラミック電子部品。
  7. ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を焼成する積層セラミック電子部品の製造方法。
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