以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1には、本実施の形態に係る画像形成装置を模式的に示した。
図1に示されるように、画像形成装置10には、図示を省略するケーシングの略中央部に像担持体12が設けられている。像担持体12は、円筒状で、詳細は後述するが最表面が保護層によって形成されており、ギアやモータ等を含んで構成される駆動部46により、所定方向(図1矢印A方向)に一定速度で回転可能に設けられている。
像担持体12の近傍には、像担持体12に回転方向に沿って、帯電装置14、露光装置16、現像装置18、転写装置22、摩耗装置24、及びクリーニング装置26が設けられている。
帯電装置14は、像担持体12表面(周面)を所定の帯電電位(例えば、400V)に帯電させる。帯電装置14は、帯電電圧を帯電装置14に印加するための帯電電圧印加部28に接続されており、帯電電圧印加部28から帯電電圧が印加されることによって、像担持体12表面を所定の帯電電位となるように帯電させる。
露光装置16は、レーザダイオード等の露光部を含んで構成されており、後述する制御部30から入力された画像データに対応した光ビームを像担持体12上に走査露光することによって、像担持体12上に画像データの画像に応じた静電潜像を形成する。
露光装置16は、露光量制御部32に信号授受可能に接続されており、露光量制御部32から入力された信号に応じた露光量の光ビームを像担持体12へ露光するように制御可能に設けられている。
像担持体12の表面上の光ビームが露光された露光領域では、光ビームの露光量に応じて表面電位が低下する。例えば、黒ベタの画像を形成するための露光により、電位は約100Vに低下する。この光ビームの露光量に応じた表面の電位の変化によって、像担持体12上には静電潜像が形成される。なお、この光ビームの露光により表面電位が露光前に比べて変化した領域を、露光部または露光領域と称し、この露光部の電位を露光電位と称する。なお、この露光部によって形成される像が、上記静電潜像に相当する。
現像装置18は、露光装置16によって像担持体12上に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤によって現像することで、静電潜像を現像して該静電潜像に応じたトナー像を像担持体12上に形成する。この静電潜像は、現像バイアス印加部52から現像バイアス電圧が印加されることで、所定の現像バイアス電位となるように帯電された現像ロール50に担持されたトナーによって現像される。この現像装置18については後述する。
転写装置22は、記録媒体20を像担持体12との間で挟持搬送するための転写ロール36と、転写ロール36に転写電圧を印加するための転写電圧印加部34と、を含んで構成されている。転写装置22では、転写電圧印加部34から転写電圧が印加されると、像担持体12上のトナー像を構成する各トナーが転写ロール36側に移動することにより、記録媒体20上に像担持体12上のトナー像が転写される。
記録媒体20上に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって、記録媒体20上に定着される。
摩耗装置24は、像担持体12表面の保護層を摩耗する(詳細後述)。クリーニング装置26は、像担持体12上の転写に関与しなかった残留トナーや紙粉等の異物を像担持体12表面から除去する。
現像装置18は、ハウジング54の内部に、像担持体12側に配設された現像ロール50と、ハウジング54内の二成分現像剤を貯留する貯留部56に設けられ、貯留している二成分現像剤を撹拌及びハウジング54内で搬送すると共に、現像ロール50へ供給するための一対のオーガ58が設けられている。また、現像装置18のハウジング54には、ハウジング54内の貯留部56へとトナーを供給するためのトナー供給部60が設けられている。トナー供給部60は、ハウジング54内へトナーを供給する状態または供給不可能な状態の何れかとなるように制御するための図示を省略する開閉扉を開閉駆動するための駆動部64を含んで構成されている。
なお、上記二成分現像剤は、トナーとキャリアとからなり、トナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含み、目的に応じて外添剤が添加される。キャリアは、鉄等の磁性粉末が適用され、磁性粉末表面に樹脂被覆層を有していてもよい。
現像装置18には、上記一対のオーガ58を回転駆動するための駆動部68が設けられている。この駆動部68の駆動力が図示を省略するギア等を介して一対のオーガ58に伝達されることで、一対のオーガ58が所定方向に回転駆動される。
ハウジング54の内側底部には、貯留部56に貯留されている二成分現像剤におけるトナーの濃度を測定するための濃度測定装置62が設けられている。
現像ロール50は、非磁性導電材料からなる円筒状のスリーブ50Aと、スリーブ50Aの中空内に配置されたマグネットロール50Bとで構成されている。マグネットロール50Bは、固定支持され、スリーブ50Aは、図示を省略する駆動源により一定方向(図1中、矢印B方向)に回転駆動されるように構成されている。また、現像ロール50のスリーブ50Aには、現像バイアス印加部52が電気的に接続されており、現像バイアス印加部52から印加された現像バイアス電圧に応じた現像バイアス電位に帯電される。
この現像装置18では、ハウジング54内に収容された二成分現像剤が一対のオーガ58の回転駆動により撹拌されつつハウジング54内を搬送される。このとき。二成分現像剤のトナーとキャリアとが混合撹拌されることにより、各トナーは所定の極性に摩擦帯電される。さらに、オーガ58で撹拌搬送された二成分現像剤は、現像ロール50側に供給されて、現像ロール50の表面に二成分現像剤による磁気ブラシを形成した状態で担持される。
この二成分現像剤による磁気ブラシは、図示を省略する規制部材によって所定の厚さとなるように規制される。層厚を規制された磁気ブラシは、現像ロール50の回転によって像担持体12表面と対向する領域(以下、現像領域という)に達すると、現像バイアス印加部52からスリーブ50Aに印加されている現像バイアス電圧によって、現像ロール50と像担持体12との間に形成される現像電界によって、二成分現像剤に含まれるトナーのみが像担持体12の潜像部分に静電的に付着して現像が行われる。
摩耗装置24は、図3(A)に示すように、摩耗部材72を含んで構成されている。摩耗部材72は、繊維状物質を含んで構成された連続面を有するロール状に形成されている。摩耗部材72は、像担持体12の回転方向(図1、図3(A)、図3(B)中矢印A方向)に対して反回転方向(図3(A)中、矢印C方向)に回転可能に設けられるとともに、像担持体12表面に当接された当接位置、及び像担持体12の表面から離間された離間位置の何れかに位置されるように位置制御及び回転制御するための摩耗部材制御部70にシャフト76を介して接続されている。
摩耗部材制御部70によって、摩耗部材72が像担持体12表面に当接された当接位置へと移動されると共に、像担持体12の反回転方向への回転がなされることで、像担持体12表面が摩耗される。また、摩耗部材制御部70によって、摩耗部材72が像担持体12表面から離間された離間位置へと移動されると、像担持体12の摩耗が終了される。
なお、摩耗部材72は、図3(B)に示すようにブレード状に構成された摩耗部材74としてもよい。この場合には、摩耗部材制御部70は、摩耗部材74を像担持体12表面に当接された当接位置へと移動制御することで、像担持体12を摩耗する状態とし、摩耗部材74を像担持体12から離間された離間位置へと移動制御することで、像担持体12を摩耗されない状態へと遷移させることができる。なお、摩耗部材74の像担持体12との当接面における、像担持体12の回転方向長さが像担持体12の回転軸方向長さより短い場合には、摩耗部材74を、像担持体12の回転軸方向一端から他端に向かって表面摩耗がなされるように移動させるための移動機構を設けるようにすればよい。
画像形成装置10は、更に、第1の電位センサー38、第2の電位センサー40、トナー濃度検出装置42、温度湿度測定装置44、制御部30、光学センサー41、及び各種情報を表示するための表示部31を含んで構成されている。
第1の電位センサー38は、像担持体12表面の表面電位を測定する。第1の電位センサー38は、露光装置16による露光位置より像担持体12の回転方向下流側で、且つ現像装置18による現像位置より像担持体12の回転方向上流側の、上記像担持体12表面から所定距離隔てられた位置に設けられている。このため、第1の電位センサー38は、像担持体12表面の、露光装置16によって露光された領域の表面電位(以下、露光電位CVLと称する)を測定可能な位置に設けられている。
第2の電位センサー40は、像担持体12表面の表面電位を測定する。第2の電位センサーは、現像装置18による現像位置より、像担持体12の回転方向下流側で、且つ転写装置22による転写位置より像担持体12の回転方向上流側の、上記像担持体12表面から所定距離隔てられた位置に設けられている。このため、第2の電位センサー40は、像担持体12のトナー像の形成領域の表面の電位を測定可能な位置に設けられている。
光学センサー41は、現像装置18による現像位置より像担持体12の回転方向下流側で、且つ転写装置22による転写位置より像担持体12の回転方向上流側の、上記像担持体12表面から所定距離隔てられた位置に設けられている。光学センサー41は、像担持体12上に担持されたトナー像の濃度を検出する。光学センサー41は、像担持体12上に光を照射するLED等の発光素子と、発光素子から照射されて像担持体12表面で反射された光を受光するためのフォトダイオードとを含んで構成されている。
トナー濃度検出装置42は、転写装置22によってトナー像を転写された記録媒体20上に転写されたトナー像に対向する位置に設けられ、記録媒体20上のトナー像の濃度を検出する。
温度湿度測定装置44は、画像形成装置10内の環境温度及び環境湿度を測定する。
制御部30は、画像形成装置10全体を制御する。制御部30は、CPU等を含むマイクロコンピュータを含んで構成され、上記露光装置16、露光量制御部32、第1の電位センサー38、第2の電位センサー40、トナー濃度検出装置42、転写電圧印加部34、帯電電圧印加部28、温度湿度測定装置44、摩耗部材制御部70、濃度測定装置62、駆動部68、駆動部64、現像バイアス印加部52、光学センサー41、及び帯電電圧印加部28と互いにデータや信号を授受可能に接続されている。
制御部30は、後述する各種対応情報、各種データ、後述する図4、図6、図8、図9、図11、及び図14に示す処理ルーチン等を予め記憶すると共に、後述する各種データを記憶するためのメモリ30Aと、像担持体12の回転数を計数するためのカウンタ30Bとを含んで構成されている。
−像担持体−
次に本発明に用いられる像担持体12について説明する。本発明に用いられる像担持体12としては、最表面に、電荷輸送能を有する保護層を有する公知の像担持体を利用することができるが、例えば、以下に示す層構成を有する像担持体12を用いることが好ましい。
ここで、上記電荷輸送能とは、電荷輸送材料(carrier transport material:CTM)によって(正孔)電荷を像担持体表面に輸送(電荷移動度)できる能力をいう。
図2は、本発明の画像形成装置に用いられる像担持体12の一例を示す模式断面図である。
像担持体12は、導電性基体80の表面に、下引き層82、電荷発生層84、電荷輸送層86、保護層90を順に積層したものであり、電荷発生層84、及び電荷輸送層86は感光層92を構成している。なお、保護層90は、電荷輸送能を有することが必須であると共に、架橋構造を有する樹脂が含まれていることが好ましい。また、保護層90は必要に応じて省略してもよい。
次に、像担持体12を構成する各層の詳細について説明する。
導電性基体80としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。感光ドラムがレーザープリンターに使用される場合には、レーザーの発振波長としては350nmから850nmのものが好ましく、短波長のものほど解像度に優れるため好ましい。
また、レーザー光を露光する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体80の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm〜0.5μmに粗面化することが好ましい。Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、Raが0.5μmより大きいと、画質が粗くなる場合がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、あるいは、回転する砥石に導電性基体80を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましい。
陽極酸化処理はアルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の層厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が、10〜11重量%の範囲、クロム酸が3〜5重量%の範囲、フッ酸が0.5〜2重量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は、13.5〜18重量%の範囲が好ましい。処理温度は、42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の層厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
陽極酸化処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の層厚については0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
また、所望により導電性基体80と感光層92との間に中間層として下引き層82を形成することもできる。用いられる材料としてはジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物、とくに有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、従来から下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。
これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。また、下引き層82中には電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。
また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため95重量%以下、好ましくは90重量%以下で使用される。
混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等をもちいる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
下引き層82の厚みは一般的には、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜25μmが適当である。また、下引き層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布したものを乾燥させて下引き層82を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基材は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、中間層を形成することが好ましい。
次に電荷発生層84について説明する。
電荷発生層84を構成する電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など既知のもの全て使用することができるが、特に380nm〜500nmの露光波長を用いる場合には無機顔料が好ましく、700nm〜800nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。
その中でも、特開平5−263007号公報及び、特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び、特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び、特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
また、電荷発生材料と混合して用いられる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができ、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。
好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生材料と結着樹脂との配合比は(重量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって該の結晶型が変化しない条件が必要とされる。ちなみに本発明で実施した前記の分散法のいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。
さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、本発明で用いる電荷発生層84の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。また、電荷発生層84を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
次いで、電荷輸送層86について説明する。
電荷輸送層86としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層86は、電荷輸送材料と結着樹脂とを用いて形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を用いて形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
さらに電荷輸送層86に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。
特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
さらに、本発明の画像形成装置10に用いられる像担持体12の電荷輸送層86は、フッ素樹脂粒子を含有することが好ましい。フッ素系樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。このようなフッ素系樹脂による樹脂粒子としてのフッ素樹脂粒子の体積平均一次粒径は、1μm以下が好ましく、0.1〜0.5μmが更に好ましい。体積平均一次粒径が0.05μm未満となると、電荷輸送層86に含有されたときのフッ素樹脂粒子の分散時の凝集が進みやすくなる。また、1μmを上回ると、画質欠陥が発生しやすくなるという問題がある。
このようなフッ素樹脂粒子を電荷輸送層86に含有することで、像担持体12の摩擦摩耗力を低減し、像担持体12のキズや摩耗を抑制することができる。
電荷輸送層86中に含有するフッ素樹脂の含有量は、電荷輸送層86を構成する材料全量に対して、0.1〜40質量%が適当であり、1〜30質量%がより好ましく、特に好ましくは、3〜10質量%である。
フッ素樹脂の含有量が0.1質量%未満では、フッ素樹脂粒子の分散による摩擦低減効果として、帯電装置14として帯電ロールを用いて像担持体12に接触させる場合において好ましい効果が得られないという問題がある。一方、フッ素樹脂の含有量が40質量%を超えると、光透過性や電荷輸送性が顕著に減少すると共に、像担持体12が画像形成装置10において繰り返し使用されることにより、残留電位の上昇が問題となる。
本発明で用いる電荷輸送層86の厚みは一般的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
さらに電荷輸送層86を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による像担持体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
使用可能な電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等や、一般式(I)で示される化合物をあげることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
次いで、保護層90について説明する。
次に、本発明に用いられる像担持体12の最表面層には、電荷輸送能を有し、且つ架橋構造を有する樹脂を含有する保護層90が設けられている。
本発明においては、像担持体12の最表面層である保護層90に架橋構造を有する樹脂が含まれると、像担持体12表面の硬度を高めて耐磨耗性をより向上させることが可能になる。このように、像担持体12の最表面層に保護層90が設けられることで、感光層92の磨耗が抑制可能となるように構成されている。
この保護層90を構成する材料としては、耐磨耗性を向上させ十分な硬度を確保するために、架橋構造を有する樹脂を用いることが好ましい。このような材料を用いない場合には、表面の硬度が低く十分な耐磨耗性が得られないため、磨耗が進行しやすいという問題がある。
なお、保護層90には、架橋構造を有する樹脂に加えて、更に架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性微粒子、電荷輸送材料(電荷輸送能を有する化合物)、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子を含むことができる。
保護層90の形成に際しては、必要に応じてシリコーンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。また、保護層90の形成方法の詳細については後述するが、保護層90の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体と、電荷輸送材料を少なくとも含む保護層形成用溶液が用いられる。
なお、架橋構造を有する樹脂としては、保護層の硬度を確保する点から種々の材料を用いることができるが、特性上、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらの中でも特にシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が耐久性の点で最も好ましい。
なお、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂は絶縁性であり、電荷輸送能の付与が必要となる。
ここで、本発明で用いられる保護層90は、電気特性や画質維持性などの観点から、架橋構造を有する樹脂が電荷輸送性を有している(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ことが好ましい。この場合、保護層90が、電荷輸送層86の一部として機能することもできる。
このような電荷輸送能を有する構造単位を含み、且つ、架橋構造を有する樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種の電荷輸送性材料(電荷輸送能を有する構造単位)を含むフェノール系樹脂又はシロキサン系樹脂であるであることがより好ましい。
なお、フェノール系樹脂の合成に用いられるフェノール誘導体としては、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物が利用でき、一般にフェノール樹脂の合成用原料として市販されているものが利用できる。
また、フェノール誘導体は、メチロール基を含むものも利用でき、例えば、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーとの混合物が挙げられる。
なお、本明細書においては、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
また、フェノール系樹脂の合成に用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド等が利用できる。フェノール系樹脂の合成にさいしては、これら原料を、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得ることができるが、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる場合がある。このため、塩基性触媒を利用した場合は、触媒を利用した反応終了後に、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
本発明に用いられる架橋構造を有するフェノール系樹脂としては、上述したような公知のフェノール系樹脂を更に架橋反応させたものであってもよく、ノボラック型のようにフェノール系樹脂自体が架橋構造を有しているものであってもよい。なお、前者の場合は、レゾール型フェノール樹脂を用いることがより好ましい。
なお、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種の電荷輸送材料としては、下記一般式(I)〜(VII)で示される化合物であることが好ましい。また、複数のエポキシ基を有する電荷輸送材料としては、下記一般式(IV)で示される化合物であることが好ましい。
・一般式(I)
F−[(X1)m1−(R1)m2−Y]m3
上記一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、X1は酸素原子又は硫黄原子を、R1はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Yは水酸基、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)又はアミノ基(−NH2)を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を、m3は1〜4の整数を示す。
・一般式(II)
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4
上記一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は1〜4の整数を示す。
・一般式(III)
F−[D−Si(R3)(3-a)Qa]b
一般式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)又は置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。
また、上記可とう性を有する2価の基Dとしては、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β-2−、−CγH2γ-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
・一般式(IV)
F−[(X4)n1−(R4)n2−(Z)n3G]n4
上記一般式(IV)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X4は酸素原子又は硫黄原子を、R4はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は2〜4の整数を示す。
・一般式(V)
F−[(X5)n1R5−ZH]n2
ここで、上記一般式(V)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X5は酸素原子又は硫黄原子を、R5はアルキレン基を、Zは酸素原子、硫黄原子、N又はCOOを、n1は0又は1を、n2は1〜4の整数を示す。なお、一般式(V)中、ZHは水酸基、チオール基、アミノ基又はカルボキシル基を示す。
ここで、一般式(VI)中、Fは正孔輸送性を有するn7価の有機基を、Tは2価の基を、Yは酸素原子又は硫黄原子を、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を、R9は1価の有機基を、m1は0又は1を、n7は1〜4の整数を、それぞれ示す。但し、R8とR9は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。
ここで、一般式(VII)中、Fは正孔輸送性を有するn8価の有機基を、Tは2価の基を、R10は1価の有機基を、m2は0又は1を、n8は1〜4の整数を、それぞれ示す。
上記一般式(I)〜(VII)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基Fとしては、下記一般式(VIII)で示される化合物が好ましい。
一般式(VIII)中、Ar1〜Ar4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、kは0または1である。
ここで、kが1の場合は、Ar1〜Ar5のうち1〜4個は、一般式(I)〜(VII)で示される化合物における、−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、−[D−Si(R3)(3-a)Qa]、−[(X4)n1−(R4)n2−(Z)n3G]n4、−[(X5)n1R5−ZH]n2で示される部位、一般式(VI)中の有機基Fと結合している部位(括弧内に示される基)、又は、一般式(VII)中の有機基Fと結合している部位(括弧内に示される基)と結合可能な結合手を有し、kが0の場合は、Ar1、Ar2、Ar5のうち1〜2個は、一般式(I)〜(VII)で示される化合物における、−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、−[D−Si(R3)(3-a)Qa]、−[(X4)n1−(R4)n2−(Z)n3G]n4、−[(X5)n1R5−ZH]n2で示される部位、一般式(VI)中の有機基Fと結合している部位(括弧内に示される基)、又は、一般式(VII)中の有機基Fと結合している部位(括弧内に示される基)と結合可能な結合手を有する。
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。
金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層90の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
また、保護層90には、保護層90の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(IX−1)で示される化合物を添加することもできる。
・一般式(IX−1) Si(R30)(4-c)Qc
上記式(IX−1)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
上記一般式(IX−1)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。
すなわちシランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコーン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
保護層90は、上述した構成材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層上に塗布して硬化させることで形成される。
保護層90は、上述した電荷輸送材料を用いて形成されることから、保護層形成用塗布液に触媒を添加すること、又は、保護層形成用塗布液作製時に触媒を用いることが好ましい。
用いられる触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒、さらに系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
また、架橋構造を有するフェノール系樹脂を含む保護層90を形成する場合、得られた樹脂から合成時に利用した触媒を除去するために、樹脂をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿等の処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
例えば、イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂が挙げられる。
また、無機固体としては、Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4,MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、像担持体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層の形成に使用される電荷輸送材料としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1重量部に対し好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部とすることが好ましい。
保護層形成用塗布液を用いて保護層を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な層厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な層厚を得ることができる。なお、複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
電荷輸送層86上に保護層形成用塗布液を塗布後には、硬化処理を行う。
なお、保護層90が、電荷輸送能を有し且つ架橋構造を有するフェノール系樹脂を含む場合、通常、硬化処理の際には、フェノール誘導体の架橋反応を促進し、保護層90の機械強度を上げるためには硬化温度は高く、硬化時間長いほど好ましい。
硬化処理の際の硬化温度は100〜170℃が好ましく、100〜150℃が、さらに100〜140℃がより好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。
また、硬化処理(架橋反応)を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の、いわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)下が効果的である。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気(酸素含有雰囲気)下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は100〜160℃(好ましくは110〜150℃)とすることが可能である。また、硬化時間は30分〜2時間(好ましくは30分〜1時間)とすることが可能である。
また、一般式(I)で示される化合物を用いる場合において、「−(X1)m1−(R1)m2−Y」で示される部位が、「−CH2−OH」からなる場合が最も硬化温度による電気特性の影響が大きい傾向があり、酸化に対して敏感であるので、上記好ましい温度範囲で硬化処理を行うことが好ましい。
さらに、硬化処理の際には、硬化触媒を使用することが好ましい。
硬化触媒としては、例えば、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類等の光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、無水カルボン酸化合物等が挙げられる。
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。
また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら硬化触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液に含まれる固形分の合計100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部が特に好ましい。
また、保護層90を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ、硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このように形成された保護層90が、画像形成装置10によって画像形成処理が行われることで摩耗されると、保護層90の下層側にある感光層92が摩耗されると言う問題がある。感光層92の摩耗が発生した状態で、感光層92の摩耗が未発生のときと同一の画像形成条件で画像形成装置10において画像形成処理が実行されると、画質劣化が発生するという問題がある。
なお、この画像形成条件とは、帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLを示している。
そこで、本発明の画像形成装置10の制御部30では、所定時間毎に図4に示す処理が実行されて、ステップ100へ進む。
ステップ100では、予めメモリ30Aに記憶されている、画像形成条件初期値を読み取る。
また、本実施の形態では、画像形成条件初期値とは、予め定めた基準パターンを形成したときの像担持体12上の基準パターンに対応する領域内の所定領域内のトナー重量としての現像量が、予め定めた基準現像量となるように予め定められた、帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、露光量VL、及びトナーの帯電量を示している。なお、以下では、この画像形成条件初期値としての、帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、露光量VL、及びトナーの帯電量各々を、初期帯電電圧、初期現像バイアス電圧、初期露光量、及び基準帯電量と称する。
また、上記「基準パターン」とは、現像量の調整の基準となるようなパターンであればよく、所定の濃度及び形状のパターンであればよいが、濃度がより濃い方が望ましい。
また、「基準現像量」とは、この基準パターンを記録媒体20に形成するときに、像担持体12上に現像される、この基準パターンに応じたトナー像に含まれるトナーの量を示している。また、現像量とは、特定のパターンを記録媒体20に形成するときに、像担持体12上に現像される、この特定のパターンに応じたトナー像に含まれるトナーの量を示している。
次のステップ102では、保護層厚検出用パターンの形成処理を実行する。
保護層厚検出用パターンとは、図5(A)に示すような像担持体12の周方向に向かって伸びた形状の白色パターン94である。
ステップ100の処理では、帯電電圧印加部28から帯電装置14へ上記ステップ100で読み取った帯電電圧を印加するように帯電電圧印加部28を制御する。これによって、像担持体12は、帯電装置14に印加された帯電電圧に応じた帯電電位に帯電される。
次に、露光装置16へ上記保護層厚検出用パターンを示す画像データを出力すると共に、上記ステップ100で読み取った露光量で上記保護層厚検出用パターンに応じて変調した光ビームを像担持体12へ走査露光するように、露光量制御部32及び露光装置16を制御する。これによって、像担持体12上には、上記ステップ100で読み取った露光量による光ビームが走査露光されて、静電潜像が形成される。また静電潜像が形成された領域は、この光ビームの露光量に応じて低下した露光電位となる。
次に、現像装置18のスリーブ50Aに、上記ステップ100で読み取った現像バイアス電圧VBを印加することで、スリーブ50Aを印加した現像バイアス電圧VBに応じた現像バイアス電位に帯電させることにより、現像ロール50上に担持された二成分現像剤のトナーが像担持体12の静電潜像側へと移行し、静電潜像に応じたトナー像が形成される。このトナー像は、上記保護層厚検出用パターンを示すトナー像である。
次のステップ104では、像担持体12の最表面層である保護層90の層厚を測定する保護層層厚測定処理が実行される。
ステップ104の処理では、図6に示すように、ステップ200において、上記ステップ102における保護層厚検出用パターンに応じた静電潜像の電位を、第1の電位センサー38による検出結果を読み取ることによって取得する。第1の電位センサー38による出力は、保護層厚検出用パターンが像担持体12の周方向に延びた形状であることから、該保護層厚検出用パターンが形成された像担持体12上の領域が、第1の電位センサー38との対向位置を通過すると、通過する前、通過中、及び通過後の電位検出結果は、異なり、略矩形状の波形を示す。このため、保護層厚検出用パターンの形成処理が開始された後に、第1の電位センサー38によって検出される電位の変化が開始された後に、再度電位の変化が生じる間での間の電位を、静電潜像の領域に応じた電位、すなわち露光電位として読み取ることができる。
次のステップ202では、上記ステップ102における保護層厚検出用パターンに応じたトナー像が形成された領域の表面電位を、第2の電位センサー40による検出結果に基づいて取得する。このトナー像が形成された領域の表面電位は、上記露光電位と同様にして求めることができる。
次のステップ204では、上記ステップ202で求めた露光電位と、上記ステップ202で求めた表面電位との差分の絶対値を算出する。
次のステップ206では、上記ステップ204で算出した差分に対応する保護層層厚を求める。
ここで、図7に示すように、同一のパターンを形成したときにおける、第1の電位センサー38及び第2の電位センサー40によって検出される、このパターンに応じた領域の表面電位は、感光層92の層厚が変動しても一定であるが、保護層90の層厚が薄くなるほど、表面電位の差は小さくなる。
そこで、メモリ30Aに、予め上記画像形成装置10において、層厚を除々に変化させたときの各層厚に対応付けて、上記保護層厚検出用パターンを形成したときの第1の電位センサー38と、第2の電位センサー40と、の表面電位測定結果の差分の絶対値を予め記憶する。そして、上記ステップ202で求めた差分に対応する層厚を、メモリ30Aから読み取ることによって、保護層の層厚を得ることができる。
次のステップ106では、上記ステップ104で得られた保護層90の層厚が、予め定められた保護層の下限値以上であるか否かを判別する。
この保護層の下限値とは、画像形成装置10において、予め定めた濃度の基準パターンを形成したときの現像量が、画像形成条件の変更を行わない状態で同一であるような下限値である。
上記ステップ106で否定されると、ステップ108へ進み、感光層92上の保護層90の研磨を行うように、摩耗装置24を制御する。具体的には、摩耗装置24の摩耗部材72が、像担持体12表面に離間された離間位置から当接された当接位置へと移動するように摩耗部材制御部70へ制御指示信号を出力すると共に、摩耗部材72がロール状である場合には、像担持体12の反回転方向に摩耗部材72が回転されるように、摩耗部材制御部70へ制御指示信号を出力すればよい。
摩耗部材制御部70の制御によって、摩耗部材72が像担持体12表面に当接されて、保護層90の研磨が開始される。
次のステップ110では、像担持体12の最表面層が感光層92であるか否かを判別し、否定されると上記ステップ108へ戻り、肯定されるとステップ112へ進む。
上記ステップ110の判断は、例えば、第1の電位センサー38による検出結果と第2の電位センサー40による検出結果との電位差の差分と、感光層92の層厚が摩耗されていない状態に対応する層厚であり且つ感光層92が像担持体12の最表面層を構成しているときにおける第1の電位センサー38による検出結果と第2の電位センサー40による検出結果との電位差の差分と、を比較し、同一である場合に、像担持体12の最表面層が感光層92であると判別するようにすればよい。
次のステップ112では、保護層90を有さない像担持体12における画像形成条件調製処理(詳細後述。図11参照)を実行した後に、ステップ114へ進む。この画像形成条件調製処理とは、予め定めた基準パターンを形成したときの像担持体12上の基準パターンに対応する領域内のトナー重量としての現像量が、予め定めた基準現像量となるように、画像形成条件を調製する処理である。
従って、予め定めた基準現像量となるような画像形成条件とは、上記画像形成装置10において、上記基準パターンを記録媒体20に形成するときに印加する帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLを予め測定した結果を示している。なお、この画像形成条件に、像担持体12上に担持されるトナー帯電量を含めてもよい。
一方、上記ステップ106で肯定されて、像担持体12の最表面層としての保護層90の層厚が予め定められた所定値以上である場合には、ステップ116へ進み、保護層90を有する像担持体12における、トナーの帯電量調製処理(詳細後述。図8参照)を実行した後に、ステップ118へ進む。
この、トナーの帯電量調整処理とは、予め定めた基準パターンを形成したときの像担持体12上の基準パターンに対応する領域内の所定領域内のトナー重量としての現像量が、予め定めた基準現像量となるように、像担持体12上に担持されたトナーの帯電量を上記基準帯電量となるように調整する処理である。
ステップ114では、上記ステップ112の処理が実行されることによって新たに設定されて、メモリ30Aに記憶された画像形成条件を読取り、次のステップ118において、読み取った画像形成条件で画像形成処理を行う。
ステップ118では、具体的には、上記ステップ114で読み取った画像形成条件による帯電電圧VHを帯電装置14へ印加することを示す信号を帯電電圧印加部28へ出力し、上記基準パターンと同一の濃度では、上記ステップ118で読み取った画像形成条件による露光量で露光を行い、該濃度に対応する露光量を基準露光量として、濃度変動に応じて露光量を制御することを示す信号を露光量制御部32へ出力する。また、上記ステップ118で読み取った画像形成条件による現像バイアス電圧を印加することを示す信号を現像バイアス印加部52へ出力する。
次のステップ120では、予め記憶した所定枚数の画像形成処理が実行されたか否かを判別し、否定されると上記ステップ118へ戻り、肯定されるとステップ122へ進む。
ステップ112では、図示を省略するスイッチがユーザによって操作されることで、画像処理終了を示す信号が入力されたか否かを判別し、否定されると上記ステップ100へ戻り、肯定されると本ルーチンを終了する。
図4及び図6に示すように、本発明の画像形成装置10では、保護層の層厚が所定値未満である場合でも、予め定めた濃度及び大きさの基準パターンを形成したときの現像量が予め定めた基準現像量となるように画像形成条件を調製し、調製した画像形成条件に基づいて画像形成処理を実行するので、保護層が摩耗された場合であっても、継続して画質劣化を抑制しつつ画像形成処理を継続して実行することができる。
また、本発明の画像形成装置10では、保護層90の層厚が所定値以上である場合についても、予め定めた上記基準パターンを形成したときの現像量が予め定めた基準現像量となるように画像形成条件を調製し、調製した画像形成条件に基づいて画像形成処理を実行するので、保護層90が画質に影響を与える程度に摩耗される前後において、同一の画質を維持することができ、画質劣化を抑制することができる。
次に上記ステップ116で実行される処理を、図8を用いて説明する。
上記ステップ116では、保護層90が形成されているときにおける画像形成条件調製処理が行われる。
ステップ300では、トナー帯電量検出用パターン形成処理を実行する。
トナー帯電量検出用パターンとは、図5(B)に示すような、像担持体12の周方向に向かって伸びた形状の黒色パターン96である。
ステップ300の処理では、帯電電圧印加部28から帯電装置14へ上記ステップ100で読み取った帯電電圧を印加するように、帯電電圧印加部28を制御する。これによって、像担持体12は、帯電装置14に印加された帯電電圧に応じた帯電電位に帯電される。
次に、露光装置16へ上記トナー帯電量検出用パターンを示す画像データを出力すると共に、上記ステップ100で読み取った露光量で上記トナー帯電量検出用パターンに応じて変調した光ビームを像担持体12へ走査露光するように、露光量制御部32及び露光装置16を制御する。これによって、像担持体12上には、上記ステップ100で読み取った露光量の光ビームが走査露光されて、静電潜像が形成される。また静電潜像が形成された領域は、この光ビームの露光量に応じて変動した露光電位となる。
次に、現像装置18のスリーブ50Aに、上記ステップ100で読み取った現像バイアス電圧VBを印加することで、印加した現像バイアス電圧VBに応じた現像バイアス電位にスリーブ50Aを帯電させることにより、現像ロール50上に担持された二成分現像剤のトナーが像担持体12の静電潜像側へと移行し、像担持体12上には、静電潜像に応じたトナー像が形成される。このトナー像は、上記トナー帯電量検出用パターンに対応するトナー像である。
次のステップ302では、像担持体12上に担持されたトナーの帯電量である、トナー帯電量(TV)を算出するトナー帯電量算出処理(詳細後述)が実行される。
次のステップ304では、上記ステップ302で算出された、像担持体12上に担持されたトナーの帯電量が上記基準帯電量と等しいか否かを判別する。
ステップ304の判断において、上記ステップ302で算出されたトナー帯電量が基準帯電量と等しい場合には、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ304の判断において、上記ステップ302で算出されたトナー帯電量が基準帯電量より多い場合には、ステップ306へ進み、上記基準パターンを形成したときの像担持体12上のトナー帯電量が基準帯電量と等しくなるように、トナー帯電量低下制御を実行した後に、本ルーチンを終了する。
トナー帯電量低下制御とは、具体的には、現像装置18内の二成分現像剤の、キャリアに対するトナーの量が予め定められている基準トナー量より少なくなるように、トナー供給部60からハウジング54内に定期的に供給されるトナーの量を減少させる処理であり、駆動部64の制御によって実行される。
また、現像装置18内の一対のオーガ58の所定時間当りの回転数を基準回転数より減少させるように、駆動部68を制御する。
なお、上記「基準トナー量」は、上記基準パターンを形成したときの像担持体12上の基準パターンに対応する領域内の所定領域内のトナー重量としての現像量が、予め定めた上記基準現像量となるときの、ハウジング54内の二成分現像剤に対するトナーの量を示している。
また、上記「基準回転数」は、上記基準パターンを形成したときの像担持体12上の基準パターンに対応する領域内の所定領域内のトナー重量としての現像量が、予め定めた上記基準現像量となるときの回転数として予め定めた所定時間当りの一対のオーガ58各々の回転数を示している。
一方、上記ステップ304の判断において、上記ステップ302で算出されたトナー帯電量が基準帯電量より少ない場合には、ステップ308へ進み、上記基準パターンを形成したときの像担持体12上のトナー帯電量が基準帯電量と等しくなるように、トナー帯電量上昇制御をした後に、本ルーチンを終了する。
トナー帯電量上昇制御とは、具体的には、現像装置18内の二成分現像剤の、キャリアに対するトナーの量が多くなるように、トナー供給部60からハウジング内に定期的に供給されるトナーの量を増加させる処理であり、駆動部64の制御によって実行される。
また、現像装置18の中の一対のオーガ58の所定時間当りの回転数を基準回転数より増加させるように、駆動部68を制御する。
次に、上記ステップ302で実行される像担持体12上に担持されたトナーの帯電量TV算出処理を、図9を参照して説明する。
図9に示されるように、トナーの帯電量算出処理では、ステップ400において、上記ステップ300におけるトナー帯電量検出用パターンに応じた静電潜像の電位を、上記ステップ200と同様にして第1の電位センサー38による検出結果を読み取ることによって取得する。ステップ400で取得した第1の電位センサー38による検出結果をVpとする。
次のステップ402では、上記ステップ300におけるトナー帯電量検出用パターンに応じたトナー像が形成された像担持体12上の領域の表面電位を、第2の電位センサー40による検出結果に基づいて取得する。このトナー像が形成された領域の表面電位は、上記ステップ200と同様にして求めることができる。このステップ402で取得した第2の電位センサー40による検出結果をVtとする。
次のステップ404では、上記ステップ300におけるトナー帯電量検出用パターンに応じたトナー像が形成された像担持体12上の領域の濃度を示すデータを、光学センサー41から取得する。
メモリ30Aには、図10に示すように、光学センサー41による出力結果としての像担持体12上のトナー像の濃度を示すデータに対応する、トナー現像量が予め記憶されている。
次のステップ406では、上記ステップ404で取得したトナーの濃度を示すデータに対応するトナーの現像量を、メモリ30Aから読み取ることによって、上記トナー帯電量検出用パターンを形成したときの現像量を算出する。このステップ406で算出した現像量をDmとする。
次のステップ408では、上記ステップ400から上記ステップ406の処理によって取得した第1の電位センサー38による検出結果Vp、第2の電位センサー40による検出結果Vt、及び現像量Dmに基づいて、トナー帯電量TVを算出する。
トナー帯電量TVは、下記式(1)に基づいて算出することができる。
[式]
TV=α×(|Vt−Vp|/Dm) 式(1)
なお、上記式(1)中、αは現像特性の温度・湿度に対する変化分を補正するための補正係数であって、上記式(1)中の(|Vt−Vp|/Dm)の値(すなわち現像特性)が、予め定めた温度及び湿度環境下で測定された値となるように、補正するための補正係数である。
なお、この補正係数αは、トナー帯電量検出用パターンを形成するときの画像形成装置10内の温度及び湿度の測定結果、及び現像装置18内に設けられた濃度測定装置62の測定結果に対応して、予めメモリ30Aに記憶するようにすればよい。
以上図8及び図9の処理ルーチンに示したように、本発明の画像形成装置10では、像担持体12の保護層90の層厚が所定値以上であるときに、予め定めた基準パターンを形成したときの現像量が、予め定めた基準現像量となるように、像担持体12上に担持されたトナーの帯電量を調整することができる。
このため、トナーの帯電量の変動による画質劣化を抑制することができる。
次に、上記ステップ112で行われる画像形成条件調整処理を、図11を参照して説明する。
上記ステップ112の処理では、図11に示すように、ステップ500において像担持体12の感光層92の層厚を測定する層厚測定処理が実行される(詳細後述)。
次のステップ502では、上記ステップ500で測定した感光層92の層厚が許容下限値より大きいか否かを判断する。
ステップ502の判断は、予めメモリ30Aに感光層92の許容下限値を記憶し、この記憶した許容下限値と上記ステップ500で測定した感光層92の層厚とを比較することによって可能である。
この許容下限値とは、画像形成装置10に搭載される像担持体12としての機能を果たす事の可能な臨界値であって、例えば、この許容下限値未満の層厚の感光層92では、帯電、静電潜像の担持、及びトナー像の担持を行い、許容される画質の画像を形成することが困難となる。
上記ステップ502で否定され、上記ステップ500において測定された感光層92の層厚が、許容下限値未満である場合には、ステップ504へ進み、像担持体12の交換要求を示す情報を表示部31に表示した後に、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ502で肯定されると、ステップ506へ進み、上記ステップ500で測定された感光層92の層厚測定結果に対応する帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLを設定する。
ステップ502の処理は、予めメモリ30Aに、図12に示すように、感光層92の層厚に対応する帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVLを予め記憶する。この感光層92の層厚に対応する帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVL各々は、予め定めた基準パターンを形成したときの現像量が予め定めた基準現像量となるように、感光層92の層厚に応じて測定された帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVLを示している。
また、メモリ30Aには、このような各感光層92の層厚に応じた帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVLが測定されたときに印加した、帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLが、予め対応付けて記憶されている。
このため、制御部30では、まず、上記ステップ500で求めた感光層92の層厚に対応する帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVLを、メモリ30Aに記憶されている図12に示される対応表に基づいて求める。
次に、求めた帯電電位CVH、現像バイアス電位CVB、及び露光電位CVLに対応する、帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLをメモリ30Aから読み取ることによって、感光層92の層厚に対応する帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLを得ることができる。
次のステップ508では、画像形成装置10内の湿度を示す湿度情報を、温度湿度測定装置44から読取る。
次のステップ510では、現像装置18内の二成分現像剤に対するトナーの濃度を示すトナー濃度情報を、濃度測定装置62の測定結果を読み取ることによって取得する。
次のステップ512では、上記ステップ508で読み取った湿度情報及び、上記ステップ510で取得した現像装置18内のトナー濃度を示すトナー濃度情報に基づいて、トナーの帯電量を取得する。
トナーの帯電量は、メモリ30Aに、図13に示すように、湿度及び現像装置18内のトナー濃度に対応するトナー帯電量を予め記憶し、メモリ30Aに記憶された、この湿度及びトナー濃度に対応するトナー帯電量を読み取ることによって、取得することができる。
なお、この湿度及び現像装置18内のトナー濃度に対応するトナー帯電量は、予め測定すればよい。
ここで、図13に示すように、現像装置18内のトナー濃度が高くなるほど、トナーの帯電量は小さくなり、湿度が高くなるほど、トナーの帯電量は低くなる。すなわち、トナー濃度が高くなるほど、また湿度が高くなるほどトナーの帯電量は、上記基準帯電量より低くなる。また、トナー濃度が低くなるほど、また湿度が低くなるほどトナーの帯電量は高くなる。
トナーの帯電量が基準帯電量より低くなると、トナーのキャリアに対する付着力が低下することから、同一の画像を形成する場合であっても現像量が多くなり、カブリ(本来白抜けとなる非画像部にトナーが付着して濃度が高くなる現象)が発生するという問題がある。また、反対に、トナーの帯電量が基準帯電量より高くなると、トナーのキャリアに対する付着力が大きくなり、現像装置18の現像ロール50から像担持体12表面へのトナーの移動が起こりにくくなり、現像量の低下が発生する。
そこで、次のステップ514では、上記ステップ502で取得したトナーの帯電量が、上記基準帯電量(上記ステップ304参照)より高い場合には、基準帯電量より高くなるほど、現像コントラスト(露光電位CVLと現像バイアス電位CVBとの差の絶対値)が大きくなるように、上記ステップ506で求めた露光量VL、現像バイアス電圧VBを補正する。
反対に、トナーの帯電量が上記基準帯電量より低い場合には、基準帯電量より低くなるほど、現像コントラスト(露光電位CVLと現像バイアス電位CVBとの差の絶対値)が小さくなるように、上記ステップ506で求めた露光量VL及び現像バイアス電圧VBを補正する。
次のステップ516では、上記ステップ514で補正した帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VLを、画像形成条件としてメモリ30Aに記憶した後に、本ルーチンを終了する。なお、既に画像形成条件が記憶されている場合には、上書きするようにすればよい。
なお、上記ステップ516の次に、上記メモリ30Aに記憶した画像形成条件で、上記ステップ116に示すような、トナー帯電量調整処理を実行するようにしてもよい。このようにすれば、さらに現像装置18内のトナー帯電量を調整することができる。
次に、上記ステップ500で実行される、感光層層厚測定処理の一例を、図14を用いて説明する。
上記ステップ500の感光層層厚測定処理では、図14に示されるように、ステップ600において、メモリ30Aに予め記憶されている、感光層層厚検出時の画像形成条件(帯電電圧VH、現像バイアス電圧VB、及び露光量VL)を読み取る。
この、感光層層厚検出時の画像形成条件とは例えば上記ステップ516で求めた画像形成条件、すなわち前回の感光層の層厚測定結果に基づいて、設定される。
次のステップ602では、上記ステップ600で読み取った帯電電圧VH、及び現像バイアス電圧VB各々を帯電装置14及びスリーブ50A各々に印加するように、帯電電圧印加部28及び現像バイアス印加部52各々へ信号出力を行う。
次のステップ602では、上記ステップ600で読み取った露光量VLを基準として、露光量を6段階に変化させて(以下、露光量E0〜E5と称する)(図15参照)、各露光量で図15に示すような矩形画像に応じた静電潜像を像担持体12上に形成するように、露光装置16を制御する。
次のステップ604では、第1の電位センサー38の検出結果を読み取ることで、上記露光量E0〜E5各々の矩形画像に応じた静電潜像形成領域の表面電位(すなわち帯電電位)を取得する。
次のステップ606では、温度湿度測定装置44による温度測定結果を読み取ることで、像担持体12周辺の温度を取得する。
ここで、像担持体12周辺の温度が高くなり、感光層92の温度が高くなるほど、感光層92が同一の層厚であった場合であっても表面電位は低下する。このため、本発明の画像形成装置10では、メモリ30Aに予め、感光層92の表面周辺の温度の単位温度当りの、表面電位の変化量を示す情報を予め記憶するものとする。
次のステップ608では、上記ステップ606で読み取った温度情報の温度の、予め定めた基準温度からの変動量に対応する、表面電位の変化量をメモリ30Aから読取り、読取り結果に基づいて、上記ステップ604で取得した各静電潜像に対応する表面電位を補正する。
次のステップ610では、上記ステップ608で補正した、露光量E0〜E5各々の矩形画像に応じた静電潜像形成領域の表面電位に基づいて、この露光量に対する表面電位を示す線図が、予めメモリ30Aに記憶された、感光層92の層厚に対応する線図(図16参照)の何れに対応するかを判別することで、感光層92の層厚を取得した後に、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の画像形成装置10によれば、保護層90の層厚が所定値未満である場合でも、予め定めた基準パターンを形成したときの現像量が予め定めた基準現像量となるように画像形成条件を調製し、調製した画像形成条件に基づいて画像形成処理を実行するので、保護層90が摩耗された場合であっても、継続して画質劣化を抑制しつつ画像形成処理を継続して実行することができる。
また、本発明の画像形成装置10では、保護層の層厚が所定値以上である場合についても、予め定めた基準パターンを形成したときの現像量が予め定めた基準現像量となるように画像形成条件を調製し、調製した画像形成条件に基づいて画像形成処理を実行するので、保護層が摩耗されて画質に影響を与える程度に摩耗される前後において、同一の画質を維持することができ、画質劣化を抑制することができる。