JP2007157244A - 磁気記録媒体用支持体および磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体用支持体および磁気記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】
寸法安定性、長期保存性や走行耐久性に優れた支持体であって、特に磁気記録媒体とした際に環境変化による寸法変化が小さく、エラーレート少ない高密度磁気記録媒体とすることができる支持体を提供する。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの両面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)が設けられ、各M層の厚みがそれぞれ50〜200nmである磁気記録媒体用支持体であって、各M層の赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)が0.5〜2.0の範囲内の磁気記録媒体用支持体とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁気テープなどの磁気記録媒体に用いられる支持体と、該支持体を用いた磁性層を有する磁気記録媒体とに関する。
二軸延伸ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。近年、磁気テープなどの磁気記録媒体は、機材の軽量化、小型化、大容量化のため高密度化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有用である。しかしながら、記録トラックを小さくすると、テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化による変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題がある。したがって、テープの使用環境および保管環境での寸法安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。
この観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点で二軸延伸ポリエステルフィルムよりも優れた剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられることがある。しかしながら芳香族ポリアミドは高価格でコストがかかり、汎用記録媒体の支持体としては現実的ではない。
一方、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどを用いたポリエステルフィルムにおいても、延伸技術を用いて高強度化した磁気記録媒体用支持体が開発されている。しかしながら、温度や湿度に対する寸法安定性などの厳しい要求を満足することはいまだ困難である。
また、温度や湿度に対する寸法安定性を向上するために、ポリエステルフィルムの片面または両面に金属などの補強層を設ける方法も開示されている(特許文献1)。しかし、この文献に記載の方法では、補強層を設けるものの、期待されるほどには寸法安定性を向上することができない。
そこで鋭意検討した結果、寸法安定性には補強層の緻密さが重要であることを見出し、その緻密さを向上させるには補強層を酸化させるとともに適度に水酸化させることが必要であることを見出した。
なお、水酸化度を制御した酸化金属層を蒸着する技術はガスバリア性フィルムで開示されている(特許文献2)。しかし、ガスバリア性フィルムは酸化金属層の厚みが50nm以下と薄く、もともとポリエステルフィルムの膨張・収縮を抑制する効果が小さいものである。さらに、これらのガスバリア性フィルムは包装材料用途であるため、ベースフィルムの厚みが10μm以上と厚く、また表面が平滑ではないため、容易に蒸着ができるのに対し、磁気記録媒体用支持体に用いられるポリエステルフィルムは一般的に厚みが薄く、平滑であるために、これらの方法のように工夫無く蒸着すると熱による変形などにより、蒸着中にフィルム破れが多発する。
特開平7−272247号公報 特開平11−80934号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決し、寸法安定性に優れた磁気記録媒体用支持体を提供することにある。詳しくは、磁気記録媒体とした際に環境変化による寸法変化が少なく、長期保存性や走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体とすることができる支持体を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(5)を特徴とするものである。
(1)ポリエステルフィルムの両面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)が設けられ、各M層の厚みがそれぞれ50〜200nmである磁気記録媒体用支持体であって、各M層の赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)がそれぞれ0.5〜2.0の範囲内であることを特徴とする磁気記録媒体用支持体。
(2)光学濃度が0.7〜7.0の範囲内である、上記(1)に記載の磁気記録媒体用支持体。
(3)各M層の緻密率がそれぞれ90〜100%の範囲内である、上記(1)または(2)に記載の磁気記録媒体用支持体。
(4)各M層のアルゴンイオンスパッタレートがそれぞれ1.5〜3.0nm/minの範囲内である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
(5)少なくとも一方の表面の中心線平均粗さRaが0.5〜10nmの範囲内である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
(6)各M層がアルミニウム元素を含んでいる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体の少なくとも片面に磁性層が設けられた磁気記録媒体。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体とした際に、環境変化による寸法変化が小さく、長期保存性や走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体とすることができる。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、ポリエステルフィルムの両方の表面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)が形成されている。M層が片面にしか設けられていないと、ポリエステルフィルムとM層との収縮膨張応力の違いで大きくカールするため磁気テープにする際に問題となる。そのため、両面にM層が必要である。
本発明において、金属酸化物とは、例えば、Cu、Zn、Al、Si、Fe、Ag、Ti、Mg、Sn、Zr、In、Cr、Mn、V、Ni、Mo、Ce、Ga、Hf、Nb、Ta、Y、Wなどの金属成分を酸化させたものであって、組成分析を行った場合の平均組成における酸素原子含有量が10at.%以上となっているものをいう。なお、at.%とは、atomic%の略である。また、水酸化物とは金属と水酸基が結合したものであって、水酸化物を含むとは赤外分光法による金属−水酸基結合のピークを持つものをいい、金属−水酸基結合のピークを金属水酸化物のピークという。さらに、本発明でいう水とは、M層の金属酸化物に吸着した水をさし、水を含むとは赤外分光法による吸着水のピークを持つものをいう。M層に吸着した水のピークは3300cm−1にあり、金属水酸化物のピークはそれより高波数側に表れる。
また、本発明の磁気記録媒体用支持体は、各M層の赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)がそれぞれ特定範囲内にある。赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(以下、水酸化物比率という)は金属水酸化物の量を表す指標である。通常赤外分光法はプリズムとサンプルの密着度合いによって、ピーク強度が一律に増減するため、絶対値よりも種々のピークを相対的に比較することが好ましい手法である。そのため、どのような膜でも大きく変化しない吸着水との比をとることで金属水酸化物の量を指標化できる。
各M層は、水酸化物比率が後述するような範囲内であれば、両表面で異なる金属成分を含んでいても良く、また、複数種の金属成分を混合して含んでいても構わないが、より好ましくは両表面で同一種の金属成分を含む方が良い。中でも、酸化度および水酸化度の制御性、寸法安定性、生産性、環境性の観点から、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、珪素元素の少なくとも一種を含んでいることが好ましく、より好ましくはアルミニウム元素が主成分となっていることが好ましい。
各M層の厚みは、それぞれ50〜200nmである必要がある。M層の厚みが50nmより小さい場合、補強効果が小さく、寸法安定性が改善されない。M層の厚みの下限は、好ましくは60nm、より好ましくは70nmである。一方、M層の厚みが200nmより大きい場合は、クラックを生じやすく寸法安定性が悪化しやすい。また走行を繰り返すことで剥離や脱落が発生し易く、結果として寸法安定性が悪化する傾向にある。M層の厚みの上限は、好ましくは180nm、より好ましくは150nmである。好ましい範囲としては、60〜180nm、より好ましい範囲としては、70〜150nmである。
各M層は、赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)が、0.5〜2.0の範囲内である必要がある。上記したようにM層の厚みを50〜200nmとするとき、金属酸化物の層は隙間が多く緻密性の低い構造となり易い。その結果、期待されるほど十分な寸法安定性を発現することができない。しかしながら、金属酸化物とともに金属水酸化物および水でM層を構成すると、金属水酸化物および水が隙間を埋めることになり、結果的に緻密性の高い構造となる。その結果、寸法安定性を向上することができる。ただし、M層に含まれる水が多くなり水酸化物比率が0.5より小さくなると、M層が経時変化をおこしやすく寸法安定性が悪くなる。一方、水酸化物が多くなりすぎて、水酸化物比率が2.0より大きくなると、水酸化物は強度が低いため、環境変化に対するポリエステルフィルムの膨張や収縮を抑える効果が小さくなる。水酸化物比率の下限は、好ましくは0.6、より好ましくは0.7である。水酸化物比率の上限は、好ましくは1.9、より好ましくは1.8である。
M層の金属水酸化物と水のピーク強度は、後述するように、蒸着工程での水蒸気ガス導入量や高湿度下の巻き返し条件で制御することができる。金属水酸化物のピーク強度は水蒸気ガスの導入量の影響が大きく、水蒸気ガス導入量を増やすとピーク強度が大きくなる。水のピーク強度は高湿度下の巻き返し条件の影響が大きく、低温で高湿度であるほどピーク強度が大きくなる。つまり、水酸化物比率を大きくするには、水酸化物のピーク強度を大きくし、水のピーク強度を小さくするように制御すれば良く、水酸化物比率を小さくするには、その逆となる。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、光学濃度が0.7〜7.0であることが好ましい。光学濃度とは、ランベルト−ベールの法則より求められる数値で、下記式のように光線透過率と蒸着厚み(M層の総厚み)から算出される。光学濃度が小さいほど酸化が進んでいることを示し、大きいほど酸化が不完全であることを示す。
Figure 2007157244
光学濃度が0.7より小さい場合、酸化が進みすぎているため、脆く割れやすいという問題がある。光学濃度の下限はより好ましくは0.8、さらに好ましくは0.9である。一方、7.0より大きい場合、酸化が不充分であるため、強度が弱く、補強効果が小さくなり寸法安定性が向上しない問題がある。光学濃度の上限はより好ましくは6.5、さらに好ましくは6.0である。
M層の緻密率は、両面共に90〜100%の範囲内であることが好ましい。緻密率とは、M層に空隙がなく、緻密に形成されていることを表す指標で、光電子分光法よりM層の組成を分析し、組成をなす物質の密度から理想的な密度を算出するとともに、X線反射率法によってM層の密度を測定し、実測密度/理想密度の比から緻密率を算出することで求められる。緻密率を90%以上にするということは、M層の空隙を少なくし、寸法安定性をさらに高めることになる。緻密率はより好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上である。緻密率は100%が上限である。
各M層のアルゴンイオンスパッタレートはそれぞれ1.5〜3.0nm/minであることが好ましい。アルゴンイオンスパッタレートとは、アルゴンイオンビームをM層に照射し、それによって掘り進められる速度を表し、M層の材質が硬いほど、掘りにくくスパッタレートが小さくなる。スパッタレートが1.5nm/minより小さい場合、M層が硬すぎるため、湾曲や屈曲した時にクラックが入りやすくなってしまう。好ましくは1.7nm/minであり、より好ましくは1.9nm/minである。3.0nm/minより大きい場合、M層が柔らかすぎ、強度が低いため環境変化に対するポリエステルフィルムの膨張や収縮を抑える効果が小さくなる。好ましくは2.8nm/minで、より好ましくは2.6nm/minである。
そして、本発明の磁気記録媒体用支持体においては、磁性層を設ける側の表面(A)の中心線平均粗さRaが0.5nm〜10nmであることが好ましい。磁性層を設ける側の表面(A)のRaが0.5nmより小さい場合は、フィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、磁気ヘッドとの摩擦が大きくなり、磁気テープ特性が低下しやすい。また、Raが10nmより大きい場合は、高密度記録の磁気テープとして用いる場合に、電磁変換特性が低下することがある。磁性層を設ける側の表面(A)のRaの下限は、より好ましくは2nm、さらに好ましくは3nmであり、上限は9nm、さらに好ましくは8nmである。より好ましい範囲としては、2〜9nm、さらに好ましい範囲としては、3〜8nmである。
一方、バックコート層側の表面(B)の中心線平均粗さRaは3〜30nmであることが好ましい。バックコート層側の表面(B)のRaが3nmより小さい場合は、フィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、ガイドロールとの摩擦が大きくなり、テープ走行性が低下することがある。また、Raが30nmより大きい場合は、フィルムロールやパンケーキとして保管する際に、表面突起が反対側の表面に転写し、電磁変換特性が低下する傾向がある。バックコート層側の表面(B)のRaの下限は、より好ましくは5nm、さらに好ましくは7nmであり、上限は20nm、さらに好ましくは15nmである。より好ましい範囲としては、5〜20nm、さらに好ましい範囲としては7〜15nmである。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、幅方向の湿度膨張係数が−3〜10ppm/%RHであることも好ましい。湿度膨張係数が上記範囲内であることは、磁気記録媒体への加工工程や磁気記録媒体の記録再生時の高湿条件での寸法安定性の観点から好ましい。幅方向の湿度膨張係数の上限は、より好ましくは8ppm/%RH、さらに好ましくは7ppm/%RHである。幅方向の湿度膨張係数の下限はより好ましくは−1ppm/%RH、さらに好ましくは0ppm/%RHである。より好ましい範囲としては、−1〜8ppm/%RH、さらに好ましい範囲としては0〜7ppm/%RHである。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、長手方向のヤング率が5〜13GPaであることが好ましい。長手方向のヤング率が5GPaより小さい場合、テープドライブ内での長手方向への張力によって長手方向に伸び、この伸び変形により幅方向に収縮し、記録トラックずれという問題が発生しやすい。長手方向のヤング率の下限は、より好ましくは6GPa、さらに好ましくは7GPaである。一方、長手方向のヤング率が13GPaより大きい場合、幅方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり、幅方向のヤング率が不足し、エッジダメージの原因となる。長手方向のヤング率の上限は、より好ましくは12GPa、さらに好ましくは11GPaである。より好ましい範囲としては、6〜12GPa、さらに好ましい範囲としては7〜11GPaである。
本発明の磁気記録媒体用支持体は、幅方向のヤング率が5〜13GPaの範囲であることが好ましい。幅方向のヤング率が5GPaより小さい場合、エッジダメージの原因となったりすることがある。幅方向のヤング率の下限は、より好ましくは6GPa、さらに好ましくは7GPaである。一方、幅方向のヤング率が13GPaより大きい場合、長手方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり長手方向の張力により変形しやすくなったり、スリット性が悪化することがある。幅方向のヤング率の上限は、より好ましくは12GPa、さらに好ましくは11GPaである。より好ましい範囲としては、6〜12GPa、さらに好ましい範囲としては7〜11GPaである。
なお、本発明において、支持体の長手方向とは、一般的にMD方向といわれる方向であって、ポリエステルフィルム製造工程時の長手方向と同じ方向を指し、支持体の幅方向とは、一般的にTD方向といわれる方向であって、ポリエステルフィルム製造工程時の幅方向と同じ方向を指す。
本発明において、ポリエステルフィルムとは、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものである。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。また、これらの共重合体、および変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂との混合物でも良い。特に、上記ポリエステル樹脂とポリイミド系樹脂の混合物は混合割合によって耐熱性(ガラス転移温度)を制御できるため、使用条件に合わせたポリマー設計ができるため好ましい。ポリマーの混合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
Figure 2007157244
ただし、式中のRは、
Figure 2007157244
Figure 2007157244
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。また、式中のRは、
Figure 2007157244
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。
溶融成形性やポリエステルとの親和性などの点から、下記一般式で示されるような、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが特に好ましい。
Figure 2007157244
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 2007157244
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい
Figure 2007157244
または
Figure 2007157244
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。
本発明において、ポリエステルフィルムは2層以上の積層構成であることが好ましい。特に、本発明の支持体は、磁気記録媒体に用いるため、一方の表面には、優れた電磁変換特性を得るための平滑さが求められ、他方の表面には、製膜・加工工程での搬送や、磁気テープの走行性や走行耐久性を付与するための粗さが求められる。そのため、ポリエステルフィルムを2層以上の積層構成にすることが好ましい。
ポリエステルフィルムには、その表面に易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などが添加されていてもよい。粒子の粒径はTEMなどによって調べることができ、粒子の添加量はX線マイクロアナライザーや熱分解ガスクロマト質量分析などによって調べることができる。
本発明において、支持体としての厚みは、用途に応じて適宜決定できるが、通常磁気記録媒体用途では2〜7μmが好ましい。この厚みが2μmより小さい場合、磁気テープにした際に電磁変換特性が低下することがある。一方、この厚みが7μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になる場合がある。したがって、高密度磁気記録媒体用途の場合、厚みの下限は、好ましくは3μm、より好ましくは4μmであり、上限は、好ましくは6.5μm、より好ましくは6μmである。より好ましい範囲としては3〜6.5μm、より好ましい範囲としては4〜6μmである。
また、本発明の支持体を構成するポリエステルフィルムの厚みは、2〜6μmであることが好ましい。この厚みが2μmより小さい場合は、磁気テープにした際にテープに腰がなくなるため、電磁変換特性が低下することがある。ポリエステルフィルムの厚みの下限は、より好ましくは3μm、さらに好ましくは4μmである。一方、ポリエステルフィルムの厚みが6μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になる場合がある。ポリエステルフィルムの厚みの上限は、より好ましくは5.8μm、さらに好ましくは5.6μmである。より好ましい範囲としては3〜5.8μm、さらに好ましい範囲としては4〜5.6μmである。
上記したような本発明の磁気記録媒体用支持体は、たとえば次のように製造される。
まず、支持体を構成するポリエステルフィルムを製造する。ポリエステルフィルムを製造するには、たとえばポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。また、ポリエステルフィルムの表面に易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などを添加することも好ましい。さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。延伸工程は、特に限定されないが、各方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち再縦、再横延伸を行う方法が高密度記録の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
特に同時二軸延伸法を用いることが好ましい。逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、製膜工程で長手方向、幅方向に結晶が均一に成長するため、安定して高倍率に延伸しやすい。なお、ここでいう同時二軸延伸とは、長手方向と幅方向の延伸が同時に行われる工程を含む延伸方式である。必ずしも、すべての区間で長手方向と幅方向が同時に延伸されている必要はなく、長手方向の延伸が先にはじまり、その途中から幅方向にも延伸を行い(同時延伸)、長手方向の延伸が先に終了し、残りを幅方向のみ延伸するような方式でもよい。延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
次に、上記のようにして得られたポリエステルフィルムの両面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)を設ける。M層の形成方法としては、基本的に物理蒸着法や化学蒸着法を用いることができる。ポリエステルフィルムへの化学蒸着法にはプラズマCVD法、光CVD法などがあるが、化学蒸着法は成膜速度が遅く生産性が悪い問題がある。物理蒸着法には真空蒸着法、スパッタリング法があり、特に反応性の上げやすさから真空蒸着法が好ましく、さらに電子ビーム蒸着法が好ましい。このとき、水酸化物比率の値を上述のとおりとするために、金属と水とを積極的に反応させる必要があり、そのため、蒸着直後に高湿度下で巻き返したり蒸着中に酸素ガス以外の水蒸気を含むガスを供給する。さらに水と積極的に反応させるためには、蒸着された金属酸化物の反応性を高める必要がある。そのためには、蒸着時に導入する酸素ガスと金属蒸気との反応時間を短くすればよく、フィルム搬送速度を調整することで制御できる。
本発明の磁気記録媒体用支持体の光学濃度を制御するには、基本的には金属蒸発量と酸素ガス導入量を制御する必要がある。金属蒸発量が一定であれば、酸素ガス導入量を減らせば光学濃度が大きくなり、酸素ガス導入量を増やせば光学濃度が小さくなる。逆に酸素ガス導入量が一定であれば、金属蒸発量を減らせば光学濃度が小さくなり、金属蒸発量を増やせば光学濃度が大きくなる。このとき、酸素ガスは、蒸着源の真横から金属蒸気の流れる方向と同じ方向に供給することが好ましい。
また、M層の緻密率を制御するには、基本的に、水酸化物比率が関係しているため、水蒸気ガス導入量や高湿度下の巻き返しでの温湿度条件で制御することができる。具体的には、金属蒸気のエネルギーを高くしたり蒸着中の冷却効率を高めることで緻密率を高くすることができ、蒸着方式によって制御することができる。例えば金属蒸気のエネルギーを高めるためには、電子ビームによる高エネルギー供給によって蒸着をおこなう電子ビーム蒸着法などがあり、また蒸着チャンバ内にプラズマ発生装置を取り付け、プラズマ雰囲気中蒸着を行う方法などもある。冷却効率を高めるには、冷却ドラムとフィルムの密着性を高めれば良く、フィルムの表面粗さを平滑にすれば良い。
M層のアルゴンイオンスパッタレートを制御するには、基本的に、緻密さや酸化度によって変化するため、水蒸気ガスや酸素ガスの導入量を制御する必要がある。酸化度が高いほどスパッタレートは小さくなる。しかし、酸化度が高くても緻密さが低いとスパッタレートは大きくなってしまう。緻密さも同時に高めるためには蒸着時の水蒸気ガスと酸素ガスの導入量の比を制御する必要があり、水蒸気ガスを酸素ガスの2〜20%程度含ませるとスパッタレートが小さくなる。
また、支持体の表面の中心線平均粗さRaを上記範囲内とするためには、ポリエステルフィルムの表面粗さを変更することで制御できる。金属成分の種類やM層の膜厚、酸化度を変更することでも制御できる。ポリエステルフィルムの表面粗さは不活性粒子の粒径を大きくするか、添加量を増やすことで粗くすることができる。表面を粗くすれば、支持体表面の中心線平均粗さRaも大きくなる。また、M層の膜厚を厚くすることでも支持体表面の中心線平均粗さRaは大きくなる。M層の厚みを厚くするとM層の構造が柱状構造になりやすく、その結果、局部的に堆積成長した柱状構造が表面を粗くする。さらに、上記したように酸化度を高めることでも、支持体表面の中心線平均粗さRaを大きくすることができる。中でもM層の厚みの影響が大きい。
支持体の湿度膨張係数は、M層の金属成分の種類や厚み、酸化度などで制御することができる。
支持体の長手方向のヤング率は、ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率でほとんど決まる。一方、支持体の幅方向のヤング率も、ポリエステルフィルムの幅方向のヤング率でほとんど決まる。したがって、ポリエステルフィルムの長手方向、幅方向のヤング率を制御すればよい。ポリエステルフィルムのヤング率は、延伸倍率や延伸温度によって制御できる。基本的には、総面積延伸倍率を高くしたり、延伸温度を低くすれば、製造したポリエステルフィルムのヤング率は高くなる。
また、支持体のヤング率は、M層を構成する金属成分の種類やM層の厚み、酸化度によっても制御できる。M層自体の強度を高く、膜厚を厚くすることで支持体のヤング率を高めることができる。
なお、本発明においては、ポリエステルフィルムやそのポリエステルフィルムを用いて得られた支持体に、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
以下、本発明の支持体の製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。もちろん、本願はPETフィルムを用いた支持体に限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
まず、ポリエチレンテレフタレートを準備する。ポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
フィルムを構成するポリエステルに不活性粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。
次に、この未延伸フィルムを同時二軸延伸テンターに導いて、長手および幅方向に同時に二軸延伸を行う。延伸速度は長手、幅方向ともに100〜20,000%/分の範囲で行うのが好ましい。より好ましくは、500〜10,000%/分、さらに好ましくは2,000〜7,000%/分である。延伸速度が100%/分よりも小さい場合には、フィルムが熱にさらされる時間が長くなるため、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず、製造したフィルムのヤング率が低下することがある。また、20,000%/分よりも大きい場合には、延伸時点で分子間の絡み合いが生成しやすくなり、延伸性が低下して、高倍率の延伸が困難となることがある。
また、1段目の延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。長手方向および幅方向それぞれの1段目の延伸工程における温度は、Tg〜Tg+30℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+5℃〜Tg+20℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、再延伸性が低下して、高倍率に安定して延伸することが困難となることがある。また、上記範囲よりも延伸温度が高い場合には、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず、製造したフィルムのヤング率が低下することがある。
延伸倍率は、用いるポリマーの種類や延伸温度によって異なり、また多段延伸の場合も異なるが、総面積延伸倍率(総縦延伸倍率×総横延伸倍率)が、20〜40倍の範囲になるようにすることが好ましい。より好ましくは25〜35倍である。長手方向、幅方向の一方向の総延伸倍率としては、2.5〜8倍が好ましく、より好ましくは、3〜7倍である。延伸倍率が上記範囲より小さい場合には、延伸ムラなどが発生しフィルムの加工適性が低下することがある。また、延伸倍率が上記範囲より大きい場合には、延伸破れが多発して、生産性が低下する場合がある。なお、各方向に関して延伸を多段で行う場合、1段目の長手、幅方向それぞれにおける延伸倍率は、2.5〜5倍が好ましく、より好ましくは3〜4倍である。また、1段目における好ましい面積延伸倍率は8〜16倍であり、より好ましくは、9〜14倍である。これらの延伸倍率の値は、特に同時二軸延伸法を採用する場合に好適な値であるが、逐次二軸延伸法でも適用できる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法が多段延伸、すなわち再延伸工程を含む場合、2段目の延伸温度はTg+40℃〜Tg+120℃が好ましく、さらに好ましくはTg+60℃〜Tg+100℃である。なお、3段の延伸を行う場合、2段目の延伸温度としては上記温度範囲の中でも比較的低い延伸温度とする方がよい。延伸温度が上記範囲を外れる場合には、熱量不足や結晶化の進みすぎによって、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、十分に配向を高めることができず、強度が低下する場合がある。さらに3段目の延伸を行う場合には、3段目の延伸温度は2段目の延伸温度よりも高く、後述する熱処理の温度よりも低いことが好ましい。なお、3段目の延伸を行うとヤング率や熱的寸法安定性が向上し易い。
また、再延伸を行う場合の一方向における延伸倍率は、1.05〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.2〜1.8倍である。再延伸の面積延伸倍率としては、1.4〜4倍が好ましく、より好ましくは1.9〜3倍である。さらに3段目の延伸を行う場合には、3段目の延伸倍率(一方向)は、1.05〜1.2倍が好ましく、面積延伸倍率は1.1〜1.4が好ましい。
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。熱処理条件は、ポリマーの種類によっても異なるが、熱処理温度は、150℃〜230℃が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。
次に、上記のようにして得られたPETフィルムの両面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)を設ける方法を説明する。
PETフィルム表面にM層を形成するには、たとえば図2に示すような真空蒸着装置を用いる。この真空蒸着装置11においては、真空チャンバ12の内部をポリエステルフィルムが巻出しロール部13から冷却ドラム16を経て巻取りロール部18へと走行する。そのときに、るつぼ23内の金属材料19を電子銃20から照射した電子ビーム21で加熱蒸発させるとともに、ガス供給ノズル24から酸素ガスを導入し、蒸発した金属を酸化反応させながら冷却ドラム16上のポリエステルフィルムに蒸着する。本発明は両面にM層が必要なため、片方の表面(1面目)に金属酸化物を蒸着した後巻取りロール部18から片面蒸着ポリエステルフィルムを取り外し、それを巻出しロール部13にセットし同じように反対側の表面(2面目)に金属酸化物を蒸着する。なお、この真空蒸着装置11は、酸化度を容易に制御できるように、ガス供給ノズル24を蒸着源であるるつぼ23の真横に設置し、かつ、金属蒸気と酸素ガスとが同じ方向に流れるようにしている。その結果、金属蒸気と酸素ガスとの反応空間も大きくなっている。
ここで、真空チャンバ12の内部は1.0×10−8〜1.0×10Paに減圧することが好ましい。さらに緻密で劣化部分の少ないM層を形成させるために好ましくは、1.0×10−6〜1.0×10−1Paに減圧することが好ましい。
冷却ドラム16は、その表面温度を−40〜60℃の範囲内にすることが好ましい。より好ましくは−35〜30℃、さらに好ましくは−30〜0℃である。
電子ビーム21は、その出力が2.0〜8.0kWの範囲内のもので行うのが好ましい。より好ましくは3.0〜7.0kW、さらに好ましくは4.0〜6.0kWの範囲内である。なお、直接ルツボを加熱することで金属材料19を加熱蒸発させてもよい。
酸素ガスは、ガス流量制御装置26を用いて0.5〜20L/minの流量で真空チャンバ12内部に導入する。より好ましくは1.5〜15L/min、さらに好ましくは2.0〜10L/minである。
真空チャンバ12の内部におけるポリエステルフィルムの搬送速度は20〜200m/minが好ましい。より好ましくは30〜100m/min、さらに好ましくは40〜80m/minである。搬送速度が20m/minより遅すぎる場合、上記のようなM層厚みに制御するためには金属の蒸発量をかなり小さくする必要がある。そのため、酸素ガス導入量も減らす必要がでてくるために、酸化度の制御が非常に難しくなる。搬送速度が200m/minより速くなると、冷却ドラムとの接触時間が短くなるため熱による破れやシワが発生し、生産性が損なわれる。
真空チャンバ12の内部におけるポリエステルフィルムの搬送張力は50〜150N/mが好ましい。より好ましくは70〜120N/m、さらに好ましくは80〜100N/mである。ただし、2面目の蒸着時には搬送張力を1面目より弱めることが好ましい。2面目の搬送張力は1面目の搬送張力より5〜30N/m低いことが好ましく、より好ましくは7〜25N/m低く、さらに好ましくは10〜20N/m低いことが好ましい。これは、1面目の蒸着時にポリエステルフィルムが熱負荷を受け収縮しようとする力を失うため、2面目の蒸着時に1面目と同様の搬送張力で走行させると、熱による破れやシワが発生し、生産性が損なわれるからである。さらに、ポリエステルフィルムの表面粗さが面によって異なる場合は、先に粗い方の面を蒸着することが好ましい。これは2面目蒸着時に冷却ドラムへの密着性を高めるためである。蒸着は片面ずつ行っても良いし、両面を1工程で行っても良い。
このように、PETフィルム表面に金属酸化物の層を設けた後、次いで、その層を水蒸気に接触させることで水酸化させ、水酸化物比率(M層の金属水酸化物のピーク強度と吸着水のピーク強度との比)が上記範囲内となるようにする。そのために、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返すことが必要である。特に、水酸化物比率を上記範囲内とするためには、水蒸気とPETフィルム表面の金属酸化物の層との接触時間を長くする必要があり、高湿度下での巻き返しを行うことが好ましい
高湿度下での巻き返しは温度20〜40℃、相対湿度60〜90%RHの範囲内で行うことが好ましい。温度は25〜30℃がより好ましい。温度が20℃より低い場合、結露しやすく、支持体がブロッキングを起こしたり、搬送ロールへの張り付きなどの問題が生じやすい。40℃より高い場合は支持体のポリエステルフィルムが膨張してしまうため、巻き返しが終わったあと常温に戻すと収縮しロール形状が悪化するなどの問題が生じやすい。相対湿度は70〜80%RHがより好ましい。60%RHより低いと水蒸気との反応が不充分となり、水酸化物比率を高めにくくなる。90%RHより高いと結露の可能性があり、また水酸化するだけでなく、M層に残存する未反応の水を増やすことになり問題となり易い。
巻き返しの搬送速度は20〜100m/minが好ましい。より好ましくは40〜80m/minである。20mより遅い場合、張力調節が難しく、シワが入り易く、逆に100m/minより速い場合は、水蒸気との接触が少なくなり、水酸化が十分に進行しにくくなる。
なお、水酸化物比率を上記範囲内とするためには、上記のような高湿度下で巻き返すほか、金属酸化物蒸着時の酸素ガスに水蒸気ガスを混合させることも好ましい。もちろん、その両方を行ってもよい。金属酸化物蒸着時の酸素ガスに水蒸気ガスを混合させる場合、水蒸気ガスは酸素ガスの2〜20%程度含ませるのが好ましい。流量としては0.004〜2L/minが好ましい。
次に、磁気記録媒体を製造する方法を説明する。上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(A)に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布する。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5〜1.5μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面(B)にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・2−エチルヘキシルオレート : 1.5重量部
・パルミチン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・アルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(LTO4やLTO5など)や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)M層の厚み
下記条件にて断面観察を行い、得られた合計9点の厚み[nm]の平均値を算出し、M層の厚み[nm]とする。
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型 日立製
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:20万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD−ZD断面
測定回数:1視野につき3点、3視野を測定する。
(2)M層における金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比
下記条件にて、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)の全反射測定法(ATR法)を行う。測定面とプリズムを密着させ測定を行い、続いて同様に逆面にプリズムを密着させ測定する。得られたスペクトルから金属水酸化物のピークと水(吸着水)のピークの強度を読み取り、ピーク強度比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)を算出する。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計FTS−55A Bio−Rad製
光源 :SiC
検出器 :DTGS
ビームスプリッター: Ge/KBr
分解能 : 4cm−1
積算回数: 256
付属装置:角度可変ATRアタッチメント
プリズム:Ge
入射角 :60°
偏光 :なし
測定回数:2回測定し平均値を採用する。
なお、後述する実施例で用いる物質のピーク位置は下記の通りである。
吸着水;3350cm−1
水酸化アルミニウム;3600cm−1
水酸化銅;3650cm−1
水酸化亜鉛;3600cm−1
(3)組成分析
下記条件にて、深さ方向の組成分析を行う。炭素濃度が50at.%を越える深さをM層とポリエステルフィルムとの界面とし、表層から界面までを等分に5分割し、それぞれの区間の中央点を測定点として組成分析を行う。得られた各測定点の組成から平均値を算出し、本発明における平均組成とする。なお、M層とポリエステルフィルムの界面までのスパッタ時間[min]はスパッタレートを算出する時に必要となる。
測定装置:X線光電子分光機 Quantera−SXM 米国PHI社製
励起X線:monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
X線径 :100[μm]
光電子脱出角度:45°
ラスター領域:2×2[mm]
Arイオンエッチング: 2.0[kV] 1.5×10−7[Torr]
スパッタ速度:3.68nm/min(SiO換算値)
データ処理:9−point smoothing
ピークの結合エネルギー値から元素情報が得られ、各ピークの面積比を用いて組成を定量化(at.%)する。さらに、金属元素のピークは結合状態(メタル−酸素,メタル−水酸基,メタル−メタルなど)によってそれぞれ結合状態のピークへ分割ができ、それぞれの結合状態のピークの面積比から酸化物、水酸化物、単体金属などの組成比を定量化[%]する。
(4)光学濃度
(1)と(7)の方法にて求められる両面のM層の総厚みと全光線透過率からランベルト−ベールの法則(式1)を用いて算出する。
Figure 2007157244
(5)緻密率
(3)と(8)の方法にて求められるM層の組成と密度から(式2)を用いて算出する。
Figure 2007157244
なお、組成比から求まる理想密度とは酸化物、水酸化物、単体金属などの一般的な密度を組成比によって分配し算出した密度である。金属元素によっては何種類かの酸化物、水酸化物を持つものもあり、n種の酸化物、水酸化物を有する元素からなるM層の理想密度は次のように表される。
Figure 2007157244
また、例えばM層が下記4種のアルミニウムで構成されている場合は次のようになる
・金属アルミニウム 密度2.7[g/cm] 組成比10%
・水酸化アルミニウム(ギブサイト) 密度2.4[g/cm] 組成比40%
・水酸化アルミニウム(ベーマイト) 密度3.0[g/cm] 組成比5%
・酸化アルミニウム(γアルミナ) 密度3.6[g/cm] 組成比45%
Figure 2007157244
さらに、後述する実施例で用いる化合物の密度は下記の通りであり、それ以外の化合物については化学大辞典(共立出版)や実験化学便覧新版(共立出版)に記載されている値を参照する。
・酸化銅(I)6.0[g/cm]、酸化銅(II)6.3[g/cm]、水酸化銅3.95[g/cm
・酸化亜鉛5.5[g/cm]、水酸化亜鉛3.05[g/cm
(6)スパッタレート
(1)と(3)の方法にて求められるM層の厚みとスパッタ時間から(式3)を用いて算出する。
Figure 2007157244
(7)全光線透過率
JIS−K7105に準拠し、下記測定装置を用いて支持体を測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における全光線透過率とする。
測定装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用) スガ試験機社製
光源 :ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:5回測定する。
(8)M層の密度
THE TRC NEWS(東レリサーチセンター(株)、1995、No.53、P.40)に記載されているX線反射率法(Grazing Incidence X−ray Reflectively technique)にてM層の密度を測定する。なお、測定は片面ずつ行う。
発生装置 :(株)学電機社製 RU−H2R (回転対陰極型)
光学配置 :Si(111)チャンネルカットモノクロメーター2基を用いて、角度発散を1000分の2°に抑えてある。
検出器 :高速シンチレーションカウンター
サンプルサイズ :10mm×10mm
測定回数 :2回測定し平均値を採用する。
入射X線波長 :0.1541nm(CuKα線)
出力 :40kV 100mA
測定角度(θ) :0.05〜2.0°
ステップ(θ) :0.005°
スキャン速度(θ):0.025°/min
(9)中心線平均粗さRa
触針式表面粗さ計を用いて下記条件にて支持体の中心線平均粗さRaを測定する。幅方向に20回走査して測定を行い、得られた結果の平均値を本発明における中心線平均粗さRaとする。
測定装置 :小坂研究所製高精度薄膜段差測定器ET−10
触針先端半径:0.5μm
触針荷重 :5mg
測定長 :1mm
カットオフ値:0.08mm
測定環境 :温度23℃湿度65%RH
(10)湿度膨張係数
下記条件にて支持体の湿度膨張係数測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
測定装置:大倉インダストリー製テープ伸び試験機
試料サイズ:幅10mm×試長間200mm
荷重:10g
測定回数:3回
測定温度:30℃
測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し、昇湿速度1[%RH/分]で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと寸法変化量ΔL[mm]を測定した。次式から湿度膨張係数[ppm/%RH]を算出した。
湿度膨張係数[ppm/%RH]=10×{(ΔL/200)/(80−40)}
(11)ヤング率
ASTM−D882に準拠して支持体のヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
(12)固有粘度
ポリエステルペレットをオルトクロロフェノール中へ溶解し、25℃で測定した溶液粘度から下式に基づいて固有粘度[η]計算する。
ηsp/C=[η]+K・[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定する。
(13)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で未延伸のポリエステルフィルムの比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定する。
装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量 :5mg
試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(14)寸法安定性
(幅寸法測定)
1m幅にスリットした支持体を、張力20kg/mで搬送させ、支持体の一方の表面(A)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布し(上層が磁性塗料で、塗布厚0.2μm、下層が非磁性塗料で塗布厚0.9μm。)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させる。次いで反対側の表面(B)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理した後、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとする。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(重量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1922Oe)、飽和磁化:146Am /kg(146emu/g)、BET比表面積:53m /g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10重量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1重量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10重量部
(数平均分子量:25000,スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5重量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5重量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1重量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1重量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10重量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10重量部
(数平均分子量:25000,スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1重量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5重量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95重量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10重量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1重量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20重量部
(数平均分子量:25000,スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1重量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
カセットテープのカートリッジからテープを取り出し、下記恒温恒湿槽内へ図1のように作製したシート幅測定装置を入れ、幅寸法測定を行う。なお、図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを使って幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重となる分銅4を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を発振すると、レーザー発振器1から幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られ、受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープの幅として測定される。3回の測定結果の平均値を本発明における幅とする。
測定装置:(株)アヤハエンジニアリング社製シート幅測定装置
レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機 キーエンス社製LS−5040
荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
恒温恒湿槽:(株)カトー社製SE−25VL−A
荷重4:分銅(長手方向)
試料サイズ:幅1/2inch×長さ250mm
保持時間:5時間
測定回数:3回測定する。
(幅寸法変化率)
2つの条件でそれぞれ幅寸法(l,l)を測定し、次式にて寸法変化率を算出する。次の基準で寸法安定性を評価する。×を不合格とする。
A条件:10℃10%RH 張力1.0N
B条件:29℃80%RH 張力0.6N
幅寸法変化率[ppm]=10×((l−l)/l
◎:幅寸法変化率が0[ppm]以上500[ppm]未満
○:幅寸法変化率が500[ppm]以上800[ppm]未満
×:幅寸法変化率が800[ppm]以上
(15)長期保存性
上記(14)で作製したカセットテープからテープを取り出し上記(14)の方法で幅寸法変化率Rを算出する。次に、残りのカセットテープをカートリッジに入れたまま、下記条件にて強制環境処理を行い、もう一度(14)の方法で幅寸法変化率Rを算出し、その変化量の絶対値|R−R|を算出して次の基準で長期保存性を評価する。×を不合格とする。
強制環境条件:10℃80%RH10日間→50℃20%RH10日間
○:変化量|R−R|≦50ppmの場合
△:50<変化量|R−R|<200ppmの場合
×:200≦変化量|R−R|の場合
(16)エラーレート
上記(14)で作製したカセットテープを、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて23℃、50%RHの環境で記録・再生(記録波長0.55μm)することで評価する。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。 エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
(17)走行耐久性
走行中の張力に対する耐久性評価を行うため、上記(14)で作製したカセットテープについて上記(16)の方法でエラーレートEを算出する。次に、下記条件にて強制走行試験を行い、もう一度(16)の方法でエラーレートEを算出し、その増加率(E/E)を算出した。次の基準で走行耐久性を評価する。
走行装置:IBM社製LTOドライブ3580−L11
走行期間:30日間
走行回数:1時間に1回
環境条件:30℃80%RH
○:増加率(E1/E0)≦1の場合
△:1<増加率(E1/E0)<10の場合
×:10≦増加率(E1/E0)の場合
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)をPENと表記する。
(参考例1)
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部および三酸化アンチモン0.05重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5重量%エチレングリコール溶液を1重量部(リン酸トリメチルとして0.05重量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達したら、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットXを得た。
(参考例2)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレットXを98重量部と平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10重量%水スラリーを20重量部(球状架橋ポリスチレンとして2重量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の真空度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.62のPETペレットYを得た。
(参考例3)
平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子ではなく平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を用いたこと以外、参考例2と同様の方法にて、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.62のPETペレットZを得た。
(参考例4)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03重量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024重量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042重量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023重量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートペレットPを得た。
(参考例5)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例4にて作製したペレットPを98重量部と平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10重量%水スラリーを20重量部(球状架橋ポリスチレンとして2重量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の真空度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.65のPENペレットQを得た。
(参考例6)
平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子ではなく平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を用いたこと以外、参考例5と同様の方法にて、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.65のPENペレットRを得た。
(実施例1)
押出機M、N2台を用い、280℃に加熱された押出機Mには、参考例1、2で得られたPETペレットX98重量部、PETペレットY2重量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Nには、参考例1〜3で得られたPETペレットX89.5重量部、PETペレットY10重量部、およびPETペレットZ0.5重量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比M(A面側)/N(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度90℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度165℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.4倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度205℃で2.5秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
次に、図2に示す真空蒸着装置11の巻出しロール部13に得られたポリエステルフィルムをセットし、1.5×10−3Paの真空度にした後に、−20℃の冷却ドラム16を介してポリエステルフィルムを搬送速度60m/min、搬送張力100Nで走行させた。このとき、99.99重量%のアルミニウムを電子ビーム(出力5.1kW)で加熱蒸発させ、さらに蒸発源であるるつぼ23の真横に設置したガス供給ノズル24から酸素ガスを2.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.2L/minで金属蒸気と同じ方向に供給し、酸化アルミの蒸着薄膜層(厚み100nm)をフィルムのB面側の層の上に形成して巻取った。次に搬送張力を80Nにしたこと以外は同様にしてフィルムのA面側の層の上に酸化アルミの蒸着薄膜層を設けた。両面を蒸着した後、真空蒸着装置内を常圧に戻し、巻取ったフィルムを搬送速度50m/min、温度25℃、相対湿度75%RHの高湿度下で巻き返し、40℃の環境で2日間エージングして、磁気記録媒体用支持体を得た。
得られた磁気記録媒体用支持体を評価したところ、ポリエステルフィルムの両面に酸化アルミを含有するM層を持ち、表1に示すように、各M層の厚みおよびM層内の水酸化物比率が本発明の範囲内であった。また、磁気テープとして使用した際に寸法安定性、長期保存性、走行耐久性ともに優れた特性を有していた。
(実施例2)
蒸着工程で水蒸気ガスを導入しなかったこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例3)
蒸着工程での水蒸気ガス導入量を0.6L/minと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例4)
蒸着工程での搬送速度を120m/min、酸素ガス導入量を2.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.2L/min、電子ビーム出力を5.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例5)
蒸着工程での搬送速度を25m/min、酸素ガス導入量を2.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.2L/min、電子ビーム出力を5.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例6)
押出機を2台使わずに、280℃に加熱された押出機Mに、参考例1〜3で得られたPETペレットX89.5重量部、PETペレットY10重量部およびPETペレットZ0.5重量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、単層で二軸配向ポリエステルフィルムを作製したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例7)
蒸着工程での搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を5.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.5L/min、電子ビーム出力を5.4kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例8)
蒸着工程での搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を1.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.1L/min、電子ビーム出力を5.4kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例9)
蒸着工程での搬送速度を20m/min、酸素ガス導入量を0.7L/min、水蒸気ガス導入量を0.07L/min、電子ビーム出力を1.7kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例10)
290℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1で得られたPETペレットX50重量%とGE Plastics社製のポリエーテルイミド“Ultem1010”(固有粘度0.68)のペレット50重量%を供給し、ブレンドチップ(I)を作製した。
押出機M、N2台を用い、295℃に加熱された押出機Mには、参考例1、2で得られたPETペレットX88重量%、PETペレットY2重量%と、ブレンドチップ(I)10重量%を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Nには、参考例1〜3で得られたPETペレットX79.5重量%、PETペレットY10重量%、PETペレットZ0.5重量%と、ブレンドチップ(I)10重量%を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比M(A面側)/N(B面側)=5/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度95℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度170℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.4倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度210℃で2.5秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
上記したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例11)
押出機M、N2台を用い、280℃に加熱された押出機Mには、参考例4、5で得られたPENペレットP98重量部、PENペレットQ2重量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Nには、参考例4〜6で得られたPENペレットP89.5重量部、PENペレットQ10重量部、およびPENペレットR0.5重量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比M(A面側)/N(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
また、得られた未延伸フィルムをリニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度135℃、延伸速度6,000%で4.0倍×4.0倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.2倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度220℃で2.5秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
上記したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例12)
押出条件を制御してポリエステルフィルムの厚みを4.0μmにしたこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例13)
蒸着工程での金属材料を99.99重量%銅へ変更し、搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を3.0L/min、水蒸気ガス導入量を0.4L/min、電子ビーム出力を6.5kWとしたこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例14)
蒸着工程での金属材料を99.9999重量%亜鉛へ変更し、搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を2.5L/min、水蒸気ガス導入量を0.2L/min、電子ビーム出力を5.8kWとしたこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(比較例1)
蒸着工程で酸素ガスおよび水蒸気ガスを供給しないこと、そして、高湿度下での巻き返しを行わないこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体はM層を持たず、また、表1に示すように磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(比較例2)
蒸着工程で水蒸気ガスを供給しないこと、そして、高湿度下での巻き返しを行わないこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は表1に示すように水酸化物比率が0.3であり、また磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(比較例3)
蒸着工程での水蒸気ガス導入量を2.1L/minと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は、表1に示すように、水酸化物比率が2.2であり、また磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(比較例4)
蒸着工程での搬送速度を220m/min、酸素ガス導入量を8L/min、水蒸気ガス導入量を0.8L/min、電子ビーム出力を9.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は、表1に示すように、M層の厚みが40nmであり、また磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(比較例5)
蒸着工程での搬送速度を10m/min、酸素ガス導入量を0.3L/min、電子ビーム出力を4.2kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は、表1に示すように、M層の厚みが250nmであり、また磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(比較例6)
両面ではなく片面だけに蒸着したこと以外は実施例1と同様の方法にて磁気記録媒体用支持体を得た。得られた磁気記録媒体用支持体は、蒸着膜が片面のみであり、また表1に示すように、磁気テープとして使用した際に劣る特性であった。
(実施例15)
次の点以外は実施例1と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度90℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度165℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.6倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度175℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例16)
次の点以外は実施例10と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度95℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度170℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.6倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度175℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例17)
次の点以外は実施例11と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度125℃、延伸速度6,000%で3.5倍×4.2倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.1×1.4倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度195℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例18)
次の点以外は実施例1と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度90℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度165℃で長手方向および幅方向に同時に1.6×1.2倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度175℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例19)
次の点以外は実施例10と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度95℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度170℃で長手方向および幅方向に同時に1.6×1.2倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度175℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例20)
次の点以外は実施例11と同様の方法にて記録媒体用支持体を得た。すなわち、得られた未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用い、長手方向および幅方向に同時に、温度125℃、延伸速度6,000%で4.2倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.1倍に再延伸した。さらに幅方向に1.05倍の延伸を行いながら温度195℃で1秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。得られた記録媒体用支持体は磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
Figure 2007157244
幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置の模式図である。 本発明の支持体を製造する際に用いられる真空蒸着装置の模式図である。
符号の説明
1:レーザー発振器
2:受光部
3:荷重検出器
4:荷重
5:フリーロール
6:フリーロール
7:フリーロール
8:フリーロール
9:磁気テープ
10:レーザー光
11:真空蒸着装置
12:真空チャンバ
13:巻出しロール部
14:ポリエステルフィルム
15:ガイドロール
16:冷却ドラム
17:蒸着チャンバ
18:巻取りロール部
19:金属材料
20:電子銃
21:電子ビーム
22:酸素ガスボンベ
23:るつぼ
24:ガス供給ノズル
25:マスク
26:ガス流量制御装置
27:水蒸気ガスボンベ

Claims (7)

  1. ポリエステルフィルムの両面に金属酸化物、金属水酸化物および水を含む層(M層)が設けられ、各M層の厚みがそれぞれ50〜200nmである磁気記録媒体用支持体であって、各M層の赤外分光法による金属水酸化物のピーク強度と水のピーク強度との比(金属水酸化物のピーク強度/水のピーク強度)がそれぞれ0.5〜2.0の範囲内にあることを特徴とする磁気記録媒体用支持体。
  2. 光学濃度が0.7〜7.0の範囲内にある、請求項1に記載の磁気記録媒体用支持体。
  3. 各M層の緻密率がそれぞれ90〜100%の範囲内である、請求項1または2に記載の磁気記録媒体用支持体。
  4. 各M層のアルゴンイオンスパッタレートがそれぞれ1.5〜3.0nm/minの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
  5. 少なくとも一方の表面の中心線平均粗さRaが0.5〜10nmの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
  6. 各M層がアルミニウム元素を含んでいる、請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体用支持体の少なくとも片面に磁性層が設けられた磁気記録媒体。
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