JP2007146546A - コンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法 - Google Patents

コンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】施工が容易で、長期間に渡り、補強効果を持続できるコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を提供する。
【解決手段】スリット溝17内には、面内,外方向を上下方向として、繊維強化樹脂成形体18が、埋設されている。
そして、この繊維強化樹脂成形体18が、スリット溝17の長手方向に沿って炭素繊維の方向を一致させて介装され、埋設された状態で、エポキシ樹脂材料19aがこのスリット溝17内に充填されて、硬化されることにより、この繊維強化樹脂成形体18が、この基礎16内にエポキシ樹脂19によって一体にとなるように広い接着面積で接着されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリート構造物補強構造及び補強方法に関し、特に、住宅等の建物の基礎部分に用いて好適な、更には、鉄筋補強の無い無筋基礎に好適なコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法に関するものである。
従来、図16に示すようなコンクリート構造物補強構造が知られている。
このような従来のコンクリート構造物補強構造は、住宅等の建物の既設の基礎1が、鉄筋が内部に設けられていない無筋基礎である場合等、強度を向上させる為に、用いられる補強構造である。
このような従来の補強構造では、既設の基礎1の側面部1aに、はつり1b,1bを形成する。
そして、抱き合わせる追加基礎2の鉄筋3の一部3a,3aを、このはつり1b,1bの中に位置させて、コンクリート4を打設するものである。
また、図17に示すようなコンクリート構造物補強構造も知られている(例えば、特許文献1等参照)。
このようなものでは、基礎5の立ち上がり部5aから、フーチング部5bに向けて、斜め下方向に穿孔6,6を形成して、ロッド状の繊維強化樹脂複合材7,7を挿入する。
そして、セメント系グラウト剤8を、これらの穿孔6内に充填して硬化させることで、基礎5と、繊維強化樹脂複合材7,7との間が接着される。
更に、図18に示すようなコンクリート構造物補強構造が知られている(例えば、特許文献2等参照)。
このようなものでは、既設の基礎11の外側面11aに補強体12が、複数のアンカーボルト13…によって締結されると共に、更に、ポリマーセメント14によって、接着されるように構成されている。
この補強体12は、平板状の鋼板12aの両側面に、各々炭素繊維シート12b,12bが、エポキシ樹脂を用いて接着されている。
そして、このように構成された従来のコンクリート構造物補強構造では、一定間隔を置いて、締結される複数のアンカーボルト13…の締結力に加えて、更に、前記補強体12が、ポリマーセメント14によって、密着するように接着される。
このため、強固な固定力が得られて、補強を確実なものとすることができる。
特許第3500810号公報(0006段落乃至0017段落、図1) 特開平10−121745号公報(0011段落乃至0015段落、図1,図3,図4)
このように構成された従来のコンクリート構造物補強構造では、図16に示すように、地中のフーチング部1cを切り欠いて、新たにフーチング部2aを形成しなければならず、施工が困難であった。
また、はつり1bの深さdも、人手でノミをハンマーで叩いたり、圧縮空気や油圧若しくは、電動モーターを動力としたハンマー等を用いて、専用のノミを叩き、コンクリートを砕くため、深さd及び大きさ等の寸法管理が困難であるといった問題があった。
また、図17に示すような従来のコンクリート構造物補強構造では、立ち上がり部5aとフーチング部5bとの間の強度を向上させることにより、地震等の横方向の外力に対して充分な強度を得るため、一定間隔で、複数の穿孔6…を、立ち上がり部5aの両側面から形成しなければならない。
特に、既設の建物に、このコンクリート構造物補強構造を適用しようとすると、建物内側に位置する立ち上がり部5aの一側面からは、穿孔6を形成しにくく、施工が困難であるといった問題があった。
更に、発泡スチロール材等で構成される保護材9,9を用いて、地中10に露出する前記繊維強化樹脂複合材7,7を保護しなければならず、部品点数の増大に伴い、更に施工を困難なものとしている。
また、図18に示す従来のコンクリート構造物補強構造では、前記ポリマーセメント14による前記補強体12の接着が剥がれると、前記アンカーボルト13で締結されている部分のみで、基礎11にこの補強体12が固定されることとなる。
このため、基礎11に一体となって補強効果を発揮する平板状の補強体12の機能が発揮されないと共に、アンカーボルト13部分に、応力が集中して、この部分からクラックを発生させてしまう虞もあった。
特に、基礎11の外側面11aを塞ぐように略全面に渡り、前記補強体12が貼り付けられると、基礎11内の水分が外気に蒸散されず、この水分によって、前記ポリマーセメント14による前記補強体12の接着が剥がれる虞があった。
そこで、この発明は、施工が容易で、長期間に渡り、補強効果を持続できるコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を提供することを課題としている。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、コンクリート構造物の外表面から一定の深さを有するスリット溝内に、長手方向を該スリット溝の長手方向に一致させる平板材を介装させて埋設すると共に、前記スリット溝の両内側面と対向する該平板材の両側面との間の空隙に充填されたエポキシ樹脂材料によって、該平板材の各両側面が、該スリット溝の内側面に各々固着されているコンクリート構造物補強構造を特徴としている。
また、請求項2に記載されたものは、前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部の厚み方向寸法のうち、外表面から約1/2未満で、略水平に形成されたスリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設する請求項1記載のコンクリート構造物補強構造を特徴としている。
そして、請求項3に記載されたものは、前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部に存在するクラックに交差するように、外表面から厚み方向寸法の約1/2未満で、前記スリット溝を形成して、該スリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設すると共に、該平板材と、該スリット溝との間の空隙に充填されるエポキシ樹脂材料を、前記クラック内の空間内に到るまで、硬化状態で一体となるように充填する請求項1記載のコンクリート構造物補強構造を特徴としている。
更に、請求項4に記載されたものは、前記平板材は、前記スリット溝の長手方向に沿って炭素繊維の方向を一致させた繊維強化樹脂成形体である請求項1乃至3のうち何れか一項記載のコンクリート構造物補強構造を特徴としている。
また、請求項5に記載されたものは、コンクリート構造物の外表面から一定の深さを有するスリット溝を切削形成すると共に、該スリット溝内に、該スリット溝の長手方向に沿って長手方向を一致させた平板材を介装させて埋設し、該平板材と、スリット溝の内側面との間の空隙にエポキシ樹脂材料を充填して、該エポキシ樹脂材料の硬化により、該平板材の両側面を、該スリット溝の内側面に固着させるコンクリート構造物補強方法を特徴としている。
そして、請求項6に記載されたものは、前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部の厚み方向寸法のうち、外表面から約1/2未満で、略水平に形成されたスリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を介装して埋設した後、エポキシ樹脂材料を該スリット溝内に充填する請求項5記載のコンクリート構造物補強方法を特徴としている。
更に、請求項7に記載されたものは、前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部に存在するクラックに交差するように、外表面から厚み方向寸法の約1/2未満のスリット溝を形成して、該スリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設すると共に、該平板材と、該スリット溝との間の空隙にエポキシ樹脂材料を充填すると共に、前記クラック内の空間内に、充填されたエポキシ樹脂材料と共に、両エポキシ樹脂材料が硬化状態で一体となる請求項5記載のコンクリート構造物補強方法を特徴としている。
そして、請求項8に記載されたものは、前記エポキシ樹脂材料の充填には、低圧樹脂注入用スクイズプレートが用いられている請求項5乃至7のうち何れか一項記載のコンクリート構造物補強方法を特徴としている。
このように構成された本願発明の請求項1記載のものは、前記平板材の両側面が、対向する前記スリット溝の両内側面との間の空隙に充填されたエポキシ樹脂材料によって、前記スリット溝の内側面に各々固定されて、前記基礎と該平板材が一体化する。
このため、接着面積が、片方の側面のみが接着される場合に比して、約2倍となり、接着強度を大きくすることができる。
また、前記平板材は、スリット溝の長手方向に一致する長手方向で、該スリット溝内に介在されている。
このため、該平板材に、直接、剥離方向への外力が加わることが無い。また、コンクリート構造物の外表面が覆われることも無く、該コンクリート構造物から水分が、蒸散される為、接着力の低下も抑制される。
コンクリートは、経年により劣化するが、通常、表層面より内側に、向かって中性化(酸化)が進み、圧縮強度が低下していく。
本発明が適用される対象物件が、経年変化している場合、表層面の劣化が進行している場合が多い。
このため、表層面近傍に前記平板材等を貼設する場合に比して、前記スリット溝を設けて平板材を介装させて、より芯に近い部分に平板材を埋設させて固着させるものの方が、より接着状態の信頼性を向上させることが出来る。
また、請求項2に記載されたものは、前記スリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材が埋設されている。
該平板材は、前記スリット溝内に、長手方向を該スリット溝の長手方向に一致させて設けられている。
このため、前記基礎に架かる上下方向の荷重は、該平板材の面内,外方向の力として受け止められる。
このため、例えば、ロッド状(丸棒状)の鉄筋や或いは、他の形状の繊維強化樹脂複合材が埋設されているものに比して、効果的に補強が行える。
しかも、前記スリット溝は、該基礎の立ち上がり部の厚み方向寸法のうち、外表面から約1/2未満以内であるので、約半分を超える寸法の基礎は、そのまま残される。
このため、既設の建物が、基礎の上部に載置されたままの状態で、該基礎に略水平方向のスリット溝を形成しても問題なく、補強施工を行うことができる。
また、補強の対象となる基礎には、モルタル仕上げ若しくは、塗装仕上げ等の仕上げ面を有し、コンクリート構造体が露出していない場合がある。
このような場合、従来のように、表層面近傍に前記平板材等を直接貼設しようとすると、モルタル仕上げ若しくは、塗装仕上げ等の仕上げ面を、はつり・剥離する工程が前工程で必要となる。
これに対して、請求項2に記載されたものでは、前記平板材の厚み程度のスリット溝を、仕上げ厚を見込んで設けることにより、従来のような仕上げ面を、はつり・剥離する工程を省略することが出来る。
従って、施工工程数を減少させて、施工コストの上昇を抑制できる。
そして、請求項3に記載されたものは、前記基礎の立ち上がり部に存在するクラック内のエポキシ樹脂と、交差するように、前記スリット溝内に、埋設された平板材を接着するエポキシ樹脂とが、硬化状態では、一体となる。
通常、クラックが発生する部分の周囲は、荷重集中等、再度、クラックが発生する確率が高い。
このため、該クラックを補修する際に用いるエポキシ樹脂と、周囲を補強する平板材を固定するエポキシ樹脂とが、交差部分の近傍で、一体となることにより、強度が更に向上し、効果的に補修後に周囲の補強が行われて、クラックの再発を防止しつつ、耐震等の補強となる。
更に、請求項4に記載されたものは、前記平板材を構成する繊維強化樹脂成形体が、前記スリット溝の長手方向に沿って炭素繊維の方向を一致させている。
このため、前記基礎に架かる上下方向の荷重が、炭素繊維の並び方向と略直交して、最も強度を有する伸張方向の力に分散されて支持されるため、少ない該平板材の材料量で、耐震補強等として充分な強度を、基礎に与えることができる。
また、請求項5に記載されたものは、例えば、ディスクサンダー装置等を用いて、コンクリート構造物の外表面から一定の深さを有するスリット溝が切削形成される。
該ディスクサンダー装置は、切削する深さを、外表面から一定の深さとすることができるので、精度の良好な施工管理が可能である。
また、該スリット溝内に、該スリット溝の長手方向に沿って長手方向を一致させた平板材を介装させて埋設する際にも、外表面から一定の深さが一定であるので、該平板材の位置決めが容易に行える。
そして、請求項6に記載されたものは、前記建物の基礎の立ち上がり部に、外表面から約1/2未満のスリット溝を形成する作業を、既設の建物の屋外側で行うことができる。
また、基礎のフーチング部を地中から掘り起こす必要も無く、地上に露出した立ち上がり部に施工できるので、施工作業性が良好である。
施工後、略水平に形成されたスリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材が介装されて、エポキシ樹脂材料によって、固定されているので、鉄筋を内部に設けた基礎と略同程度の強度を基礎に与えることができる。
このため、例えば、無筋の基礎等の建物であっても、容易に基礎の強度を向上させて、鉄筋を有する基礎と同程度の強度の基礎とする耐震補強を行うことが出来る。
更に、請求項7に記載されたものは、該平板材と、該スリット溝との間の空隙にエポキシ樹脂材料を充填する補強作業を、前記クラック内の空間内に、エポキシ樹脂材料を充填する補修作業と共に同時に行える。
また、充填に用いるエポキシ樹脂材料や施工工具が共通のものを使用できる。
このため、更に、施工作業性が良好であると共に、同時に充填された同一材料で構成されるエポキシ樹脂材料は、前記繊維強化樹脂成形体に対する親和性に加えて、平板材交差する部分での親和性が良好で、界面を発生させずに、硬化後の強度を良好なものとすることができる。
そして、請求項8に記載されたものは、前記エポキシ樹脂材料の充填に、低圧樹脂注入用スクイズプレートを用いることにより、充填時に持続的な充填圧力を与えることができる。
このため、前記平板材と、該スリット溝との間の空隙に充填されるエポキシ樹脂材料を、微細な隙間まで万遍なく行き渡らせて、更に、強固な接着力を与えることができる。
また、エポキシ樹脂材料が硬化によって、体積を収縮させても、長時間に渡り持続的な充填圧力を与えることができるため、体積減少分を補填できる。
このため、硬化後のエポキシ樹脂にヒケを発生させること無く、所望の接着力を与えることができる。
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法について説明する。
図1乃至図15は、この発明の最良の実施の形態のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
まず、図1及び図2を用いて、主な構成から説明すると、この実施の形態のコンクリート構造物補強構造では、図1に示すような既存の住宅等の建物15のコンクリート構造物としての基礎16の補強を行うため、無筋の基礎16のフーチング部16cに連設された立ち上がり部16aの外側面16bには、厚み方向寸法(約120mm〜200mm)のうち、外表面から約1/2未満で、好ましくは1/3以内の寸法で、略水平にスリット溝17が、一定深さd1まで切削形成されている。
このスリット溝17内には、面内,外方向を上下方向として、前記平板材としての繊維強化樹脂成形体18が、埋設されている。
この実施の形態の繊維強化樹脂成形体18としては、炭素繊維を長手方向に配した2種類以上の炭素繊維強化プラスチック板(幅50mm×厚さ1.2mm、又は、幅25mm×厚さ1.2mm等)が、コンクリート構造物の寸法や、補強要求強度に合わせて、使い分けられて適宜使用される。
そして、この繊維強化樹脂成形体18が、前記スリット溝17の長手方向に沿って炭素繊維の方向を一致させて介装され、埋設された状態で、エポキシ樹脂材料がこのスリット溝17内に充填されて、硬化されることにより、この繊維強化樹脂成形体18が、この基礎16内にエポキシ樹脂19によって一体になるように広い接着面積で接着されている。
次に、図3を用いて、この実施の形態のコンクリート構造物補強方法を説明する。
尚、図3では、理解の容易の為、コンクリート構造物としての基礎16の向きを約90度変えると共に、形状等を簡略化して示している。
この実施の形態では、図3中(a)に示すように、基礎16の外表面である外側面16bから一定の深さを有するスリット溝17が、ディスクサンダー装置20によって切削形成される。
この実施の形態では、このスリット溝17の幅方向寸法が、約2〜3mmで、前記幅50mmの繊維強化樹脂成形体18を用いる場合は、奥行き方向寸法が、外側面16bからの深さd1=約55mm,前記幅25mmの繊維強化樹脂成形体18を用いる場合は、側面16bからの深さd1=約30mmとなるように切削される。
次に、乾燥養生後、図3中(b)に示すように、スリット溝17内に、スリット溝17の長手方向に沿って長手方向を一致させた平板材としての繊維強化樹脂成形体18を介装させて埋設する。
そして、図3中(c)に示すように、一定間隔を置いて、低圧樹脂注入用スクイズプレートとしての低圧樹脂注入用スクイズドームプレート(SDプレートという)21,21が、このスリット溝17を跨ぐように、前記外側面16bに装着される。
この実施の形態の前記低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21は、図4,図5に示すように、主に、底面部21aの略中央位置に形成された注入孔21bから、コンクリート構造物に存在するクラックk若しくは、空隙内に、長時間に渡り、持続的な充填圧力を与えながら、樹脂材料を注入する為、伸縮自在なゴム製の上膜体21cが設けられている。
この上膜体21cと前記底面部21aとの間には、前記上膜体21cの伸縮により容積を可変する樹脂溜まり空間21dが設けられていて、前記底面部21aの側縁部21fから突設される樹脂受け入れ口部21eと連通するように構成されている。
また、この樹脂受け入れ口部21eの樹脂通路内には、逆止弁21gが設けられていて、受け入れた樹脂材料が逆流しないように構成されている。
更に、この低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21には、前記上膜体21cが膨張しすぎないようにガイドするドーム部21hが、前記底面部21aの周縁部から一体となるように、上部を一部切り欠いた略中空球体形状を呈して形成されている。
また、この低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21,21間で、前記スリット溝17の開口部17c表面側には、EVA樹脂等の熱可塑性樹脂材料からなるホットメルト材22が、グルーガン23から捻出されて、冷却硬化されることにより、この開口部17aを覆う閉塞膜層24が形成される。
更に、図3中(d)に示すように、前記繊維強化樹脂成形体18と、スリット溝17の内側面17b,17bとの間の空隙25(図3中(c)参照)に、二液混合タイプの低粘度エポキシ接着剤からなるエポキシ樹脂材料19aが、注入ガン装置Gによって充填されて、エポキシ樹脂材料19aの硬化により、この繊維強化樹脂成形体18の上,下両側面18a,18aが、スリット溝17の内側面17b,17bに、ロッド等に比して広い接着面積で固着される(図1,図2参照)。
このように構成された実施の形態のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、ダイヤモンドカッターが取り付けられたディスクサンダー装置20が用いられて、コンクリート構造物である基礎16の外側面16bから一定の深さd1を有するスリット溝17が切削形成される。
ディスクサンダー装置20は、容易に切削する深さを、外表面から一定の深さとすることができるので、精度の良好な施工管理が可能である。
また、スリット溝17内に、スリット溝17の長手方向に沿って長手方向を一致させた繊維強化樹脂成形体18を、炭素繊維の方向も一致させて介装させて埋設する際にも、外側面16aから一定の深さが一定であるので、繊維強化樹脂成形体18の位置決めが容易に行える。
前記空隙25に充填されたエポキシ樹脂材料19aの硬化により、前記繊維強化樹脂成形体18の両側面18a,18aは、対向する前記スリット溝17の両内側面17b,17bとの間のエポキシ樹脂19によって、両内側面17b,17bに各々固定されて、前記基礎16と繊維強化樹脂成形体18が一体化する。
このため、接着面積が、片方の側面のみが接着される場合に比して、約2倍となり、接着強度を大きくすることができる。
また、前記繊維強化樹脂成形体18は、スリット溝17の長手方向に一致する長手方向で、スリット溝17内に介在されている。
このため、外部に露出する部分が無く、繊維強化樹脂成形体18に、直接、剥離方向への外力が加わることが無い。
しかも、この実施の形態では、図1に示す様に、基礎16の立ち上がり部16aの外側面16bに、略水平方向にスリット溝17が形成されるのみで、例えば、従来のようにボルト等が露出することもなく、外観品質を良好なものとすることができる。
また、基礎16の立ち上がり部16aの外側面16bが、全域で覆われることも無く、基礎16内の水分が、蒸散される為、接着力の低下も抑制される。
一般にコンクリートは、経年により劣化するが、通常、表層面より内側に、向かって中性化(酸化)が進み、圧縮強度が低下していく。
本発明が適用される対象物件が、経年変化している場合、表層面の劣化が進行している場合が多い。
このため、表層面近傍に前記平板材等を貼設する場合に比して、前記スリット溝17を設けて繊維強化樹脂成形体18を介装させて、より芯に近い部分に繊維強化樹脂成形体18を埋設させて固着させるものの方が、より接着状態の信頼性を向上させることが出来る。
このように、本実施の形態によれば、施工が容易で、長期間に渡り、鉄筋で補強されたコンクリート構造物と略同等の強度を有する補強効果を持続できるコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法が提供される。
Figure 2007146546
上記表1は、この実施の形態で構成されたコンクリート構造物補強構造の破壊荷重試験の結果を、他の構造のコンクリート構造物と比較したものを示している。
この破壊荷重試験では、縦横高さの寸法を150mm×530mm×150mmとするコンクリート構造物が、図15に示すように、下部試験治具支持点間寸法450mmの支持台の上に載置されると共に、上部試験治具支点間寸法200mmの加圧台で上方から、毎分2mmの速さで、このコンクリート構造物が破壊するまで行い、1回〜数回にわたり破壊荷重を測定した。
ここで、この破壊荷重試験に使用したアムスラー試験機の最大荷重は100トンである。 そして、破壊に到る破壊荷重の平均値を算出した。
この試験結果から、無筋のコンクリート構造物の破壊荷重を1とした場合の各補強構造の試験結果を比較すると、幅50mmの繊維強化樹脂成形体(CCF)18を用いたコンクリート補強構造物では、鉄筋(φ13)を有するコンクリート補強構造物よりも、高い耐荷重強度を得られることが分かる。
また、幅50mmの繊維強化樹脂成形体18を用いたコンクリート補強構造物と、幅25mmの繊維強化樹脂成形体18を用いたコンクリート補強構造物とでは、さほど補強効果が変わらないことがわかる。
このため、無筋の基礎16等の建物15であっても、深さ1/3以内の浅いスリット溝17内に、前記繊維強化樹脂成形体18をエポキシ樹脂19で固定することで、容易に基礎16の強度を向上させて、鉄筋を有する基礎と同程度の強度の基礎とする耐震補強を行うことが出来る。
図6乃至図9は、この実施の形態の実施例1のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
まず、この実施例1のコンクリート構造物補強方法の施工順序に沿って説明すると、図6に示すように、既設の住宅等の建物15には、建物本体15aを上面部に載置して支持するコンクリート構造物としての基礎26が、フーチング部及び立ち上がり部26aの下側一部を地中10に埋設されて設けられている。
そして、この基礎26の立ち上がり部26aに存在する上下方向のクラックkに、交点pで交差するように、外表面26bから厚み方向寸法の約1/3以内(深さ30mm/立ち上がり部の基礎幅150mm)で、前記スリット溝17が、前記ディスクサンダー装置20によって形成される。
この実施例1では、前記建物15の基礎26の立ち上がり部26aに、外表面26bから約1/2未満のスリット溝17を形成する作業を、既設の建物15の屋外側で行うことができる。
また、基礎26のフーチング部を地中から掘り起こす必要も無く、地上に露出した立ち上がり部26aに施工できるので、施工作業性が良好である。
更に、補強の対象となる基礎には、モルタル仕上げ若しくは、塗装仕上げ等の仕上げ面を有し、コンクリート構造体が露出していない場合がある。
このような場合、従来のように、基礎26の表層面近傍に前記平板材等を直接貼設しようとすると、モルタル仕上げ若しくは、塗装仕上げ等の仕上げ面を、はつり・剥離する工程が前工程で必要となる。
これに対して、この実施例1では、繊維強化樹脂成形体18の厚み程度のスリット溝17を、仕上げ厚を、見込んで、基礎26に設けることにより、従来のような仕上げ面を、はつり・剥離する工程を省略することが出来る。
従って、施工工程数を減少させて、施工コストの上昇を抑制できる。
スリット溝17周縁の乾燥養生後、次に、図7に示すように、このスリット溝17内に、面内,外方向を上下方向として、前記繊維強化樹脂成形体18が介装されて埋設される。
このように、施工現場で、スリット溝17内に、このスリット溝17の長手方向に沿って長手方向を一致させた前記繊維強化樹脂成形体18を介装させて埋設する際にも、前記スリット溝17の外表面から一定の深さd1が、長手方向で一定であるので、繊維強化樹脂成形体18の位置決めが容易に行える。
そして、図8に示すように、一定間隔を置いて、低圧樹脂注入用スクイズプレートとしての低圧樹脂注入用スクイズドームプレート(SDプレート)21,21が、このスリット溝17及び前記クラックkを跨ぐように、前記外側面26bに装着される。
また、この低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21,21間で、前記スリット溝17の開口部17a表面側及びクラックkの開口部表面側には、EVA樹脂製の熱可塑性樹脂材料からなるホットメルト材22がグルーガン23から捻出されて、この開口部17a及びクラックkの開口表面側が、ホットメルト材22の閉塞膜層24によって覆われる。
この閉塞膜層24が、冷却されて硬化した後、更に、図8中に示すように、前記繊維強化樹脂成形体18と、スリット溝17の内側面17b,17bとの間の空隙25(図3中(c)参照)に、二液混合タイプのエポキシ樹脂材料19aが、注入ガン装置Gによって充填される。
このエポキシ樹脂材料19aの硬化により、この繊維強化樹脂成形体18の両側面が、スリット溝17の内側面17b,17bに固着される(図1,図2参照)。
この実施例1では、図4及び図5に示すような前記低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21…が、各々30cm〜40cmの間隔を置いて用いられている。
この低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21では、前記樹脂受け入れ口部21eに、注入ガン装置Gの先端を挿入し、前記樹脂溜まり空間21d内に向けて、エポキシ樹脂材料19aを注入すると、前記上膜体21cが、膨張して、この樹脂溜まり空間21dの容量が拡大する。
この樹脂受け入れ口部21eの樹脂通路内に設けられた逆止弁21gによって、受け入れたエポキシ樹脂材料19aが逆流しない。
このため、前記底面部21aの略中央位置に形成された注入孔21bから、コンクリート構造物のクラックk若しくは、スリット溝17内の繊維強化樹脂成形体18との空隙25に、長時間に渡り、持続的な充填圧力が与えられながら、前記エポキシ樹脂材料19aが、充填される。
このように、繊維強化樹脂成形体18と、スリット溝17との間の空隙25に充填されたエポキシ樹脂材料19aは、前記クラックk内の空間内に充填されるエポキシ樹脂材料19aと、交点p近傍で混合されて、硬化状態で一体となるように充填される。
硬化後、図9に示すように、前記低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21…を取り外し、ホットメルト材22等、仕上げ材で、閉塞膜層24の表面を整えて、補修及び補強の施工が概略完了する。
次に、この実施例1の作用効果について説明する。
このように構成された実施例1のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、前記実施の形態の作用効果に加えて、更に、繊維強化樹脂成形体18と、このスリット溝17との間の空隙25にエポキシ樹脂材料を充填する補強作業を、前記クラックk内の空間内に、エポキシ樹脂材料を充填する補修作業と共に同時に行える。
また、充填に用いるエポキシ樹脂材料19aや、低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21…及び注入ガン装置G等の治具或いは施工工具が、共通のものを使用できる。
このため、更に、施工作業性が良好であると共に、前記各低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21,21から同時に充填された同一材料で構成されるエポキシ樹脂材料19aは、前記繊維強化樹脂成形体18に対する親和性に加えて、クラックkとスリット溝17が交差する交点p部分でのエポキシ樹脂材料19a同士の親和性が良好で、界面を発生させずに、硬化後の強度を良好なものとすることができる。
そして、前記エポキシ樹脂材料19aの充填に、低圧樹脂注入用スクイズプレート21を用いることにより、充填時に持続的な充填圧力を与えることができる。
このため、前記繊維強化樹脂成形体18と、スリット溝17との間の空隙、特に、繊維強化樹脂成形体18の奥側端面と、スリット溝17底部との間の空隙や或いはクラックkの細部にも、徐々にエポキシ樹脂材料19aが到達して、充填されるエポキシ樹脂材料を、微細な隙間まで万遍なく行き渡らせることにより、更に、強固な接着力を与えることができる。
また、エポキシ樹脂材料19aが硬化によって、体積を収縮させても、長時間に渡り持続的な充填圧力を与えることができるため、体積減少分を補填できる。
このため、硬化後のエポキシ樹脂材料19aにヒケを発生させること無く、所望の接着力を与えることができる。特に、この実施例1では、前記繊維強化樹脂成形体18と、スリット溝17との間の空隙に加えて、クラックk内の空隙にも、エポキシ樹脂材料19aを充填する為、充填量が多く、体積減少分も多いので、低圧樹脂注入用スクイズドームプレート21を用いて、硬化時にこれらの空隙内を略完全に満たして、所望の接着強度を与えることができる。
更に、この実施例1では、前記基礎26の立ち上がり部26aに存在するクラックk内のエポキシ樹脂材料19aと、交差するように、前記スリット溝17内に、埋設された繊維強化樹脂成形体18を接着するエポキシ樹脂材料19aとが、硬化状態では、一体となる。
通常、クラックkが発生した部分の周囲は、荷重集中等、再度、新たなクラックが発生する確率が高い。
この実施例1では、このクラックkを補修する際に用いるエポキシ樹脂19と、周囲を補強する繊維強化樹脂成形体18の固定に用いるエポキシ樹脂19とが、交差部分(交点p)の近傍で、一体となり、前記繊維強化樹脂成形体18を、このクラックkを横断させた状態で一体となるように接着される。
従って、再度新たなクラックが発生しやすい部分に、前記繊維強化樹脂成形体18を位置させて、水平方向に広い範囲で補強出来、主に上下方向に発生するクラックkに沿ったクラックk内の充填補修のみを行う場合に比して、強度が更に向上する。
このように、同一作業手順で、効果的に補修後の周囲の補強も同時に行われて、クラックの再発を防止しつつ、上下方向に架かる剪断応力に対しても補強出来、耐震等の補強とすることができる。
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
図10及び図11は、この実施の形態の実施例2のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
この実施例2のコンクリート構造物補強構造に用いられる平板材としての繊維強化樹脂成形体28には、図10に示すように、長手方向に、一定間隔を置いて複数の樹脂挿通孔28b…が、上,下両側面28a,28aを貫通するように、幅方向略中央に開口形成されている。
次に、この実施例2のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法の作用効果について説明する。
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例2の作用効果に加えて、更に、図11に示すように、スリット溝17内のエポキシ樹脂19が、前記繊維強化樹脂成形体28の複数の樹脂挿通孔28b…内に侵入して硬化する。
このため、前記繊維強化樹脂成形体28の上下両側面28a,28a側のエポキシ樹脂19が、これらの樹脂挿通孔28b…を介して、連結されて一体となり、上下両側面28a,28a側に接着される各エポキシ樹脂19,19を剥離しにくくすることができる。
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と略同様であるので説明を省略する。
図12は、この実施の形態の実施例3のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
なお、前記実施の形態及び実施例1,2と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
この実施例3のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、基礎として、鉄筋部37が内部に設けられた鉄筋構造の鉄筋基礎36に、前記実施の形態のコンクリート構造物補強構造である深さ1/3以内の浅いスリット溝17内に、前記繊維強化樹脂成形体18をエポキシ樹脂19で固定することで、容易に基礎16の強度を向上させる構造を適用したものである。
このように構成されたこの実施例3のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、前記実施の形態の作用効果に加えて、更に、鉄筋部37を有する鉄筋基礎36であっても、スリット溝17の深さを、立ち上がり部の幅の1/2未満若しくは1/3以内と設定することにより、内部の鉄筋部37を、前記ダイヤモンドカッターが取り付けられたディスクサンダー装置20で切断してしまう虞がない。 施工後、前記エポキシ樹脂19が、スリット溝17内に、前記繊維強化樹脂成形体18を介装状態で一体に固定するので、更に、基礎36の強度が向上して、耐震性能を容易に良好なものとすることができる。
しかも、前記エポキシ樹脂19及び、スリット溝17内に固着された前記繊維強化樹脂成形体18は、耐腐食性を有しているので、例えば、前記鉄筋部37が、錆等の発生により、一部若しくは全部腐食していても、補強により、長期間に渡り、正常な鉄筋部37と略同等の強度を与えられて、しかも、補強効果を持続させることができる。 他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1又は2と略同様であるので説明を省略する。
図13は、この実施の形態の実施例4のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至3と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
この実施例4のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、建物15の基礎46の立ち上がり部46aに、内,外を貫通する配管用貫通孔47,48…が、複数形成されていて、図示省略の配管パイプが、これらの配管用貫通孔47,48…内に挿通されるように構成されている。
そして、これらの配管用貫通孔47,48…の上側に、スリット溝17が略水平に切削形成されて、前記繊維強化樹脂成形体18…が埋設されると共に、この繊維強化樹脂成形体18の上,下両側面18a,18aが、充填されたエポキシ樹脂19によって、スリット溝17の内側面17b,17bに固着されるように構成されている。
このように構成されたこの実施例4のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、前記実施の形態及び実施例1乃至3の作用効果に加えて、更に、基礎46の構築後に、配管用貫通孔47,48…が開口形成されても、これらの配管用貫通孔47,48…の上部に、前記スリット溝17を形成して、前記繊維強化樹脂成形体18をエポキシ樹脂19で固定することにより、容易に基礎46の強度を向上させる補強を行うことが出来る。
しかも、この実施例4では、前記複数の配管用貫通孔47,48…の上部に渡り、水平に、一本の繊維強化樹脂成形体18をスリット溝17内に埋設固着させることで、補強を行えるので、例えば、配管用貫通孔47,48…毎に補強を行わなけばならないものに比して、施工が容易である。
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至4と略同様であるので説明を省略する。
図14は、この実施の形態の実施例5のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法を示すものである。
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至4と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
この実施例5のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法では、建物15の側壁部が、コンクリート構造物としてのRCコンクリート壁部56によって構成されているものを示している。
このRCコンクリート壁部56では、施工後、壁面56aを一部除去して、出入り口部或いは窓部等を設けるため、開口部56bを形成する場合がある。
この場合、開口部56bの各周縁部56c,56d,56e…には、各々スリット溝17…が、開口部56bを形成する切断線から一定距離離間されて、この切断線に沿って切削形成される。
そして、前記繊維強化樹脂成形体18…が埋設されると共に、この繊維強化樹脂成形体18の各両側面18a,18aが、これらのスリット溝17の内側面17b,17bに、充填されたエポキシ樹脂19によって、固着されるように構成されている。
次に、この実施例5のコンクリート構造物補強構造及びコンクリート構造物補強方法の作用効果について説明する。
この実施例5では、前記実施の形態及び実施例1乃至4の作用効果に加えて、更に、開口部56bを形成する際に、周縁部56c,56d,56e…に、容易に補強を行うことが出来る。補強施工の順序は、前記開口部56bを形成する前であっても、後であってもよい。
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至4と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
即ち、前記実施例1では、平板材として、炭素繊維を長手方向に配した炭素繊維強化プラスチック板である繊維強化樹脂成形体18を用いたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、アラミド繊維強化プラスチック板(幅50mm×厚さ1.2mm,幅25mm×厚さ1.2mm等)、ガラス繊維強化プラスチック板(幅50mm×厚さ1.2mm,幅25mm×厚さ1.2mm等)、セラミック繊維強化プラスチック板(幅50mm×厚さ1.2mm,幅25mm×厚さ1.2mm等)や、或いは、これらの繊維が混合されて形成される樹脂成形体、鉄板(幅50mm×厚さ1.0mm,幅25mm×厚さ1.0mm等)、ステンレス板(幅50mm×厚さ1.0mm,幅25mm×厚さ1.0mm等)等、金属製の板材で、エポキシ樹脂材料によって固定される接着面積を有し、コンクリート構造物の剪断応力を、面内外方向で、平面状に分散させるように受け止める際、所望の強度を発揮するものであれば、形状、材質、及び数量が特に限定されるものではない。
また、予め前記スリット溝17に前記エポキシ樹脂材料19aを注入しておいて、後から、前記繊維強化樹脂成形体18をこのスリット溝17内に挿入してもよい。
更に、実施例2のコンクリート構造物補強構造では、繊維強化樹脂成形体28に複数の樹脂挿通孔28b…が形成されているが、これらの樹脂挿通孔28b…の大きさ、数については、補強効果が大幅に低下しない範囲内で設定されているものであればよい。
そして、前記実施例4では、前記複数の配管用貫通孔47,48…の上部に渡り、水平に、一本の繊維強化樹脂成形体18がスリット溝17内に埋設固着されているが、特にこれに限らず、下部及び、配管用貫通孔の側面周囲をも同様に補強してもよい。
この発明の最良の実施の形態のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、建物の基礎部分の正面図である。 実施の形態のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、図1中A−A線に沿った位置での基礎の断面図である。 実施の形態のコンクリート構造物補強構造に用いる補強施工方法の一例を示し、(a)は、ディスクサンダー装置を用いて、スリット溝を形成する様子を説明する模式的な斜視図、(b)は、繊維強化樹脂成形体を埋設する様子を説明する模式的な斜視図、(c)は、スリット溝の開口部を熱可塑性樹脂材料で閉塞する様子を説明する模式的な斜視図、(d)は、エポキシ樹脂材料を充填する様子を説明する模式的な斜視図である。 実施の形態のコンクリート構造物補強構造及び補強方法に用いる低圧樹脂注入用スクイズドームプレートの構成を説明する縦断面図である。 実施の形態のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、低圧樹脂注入用スクイズドームプレートを用いて、樹脂材料を注入する様子を説明する断面図である。 実施の形態の実施例1のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、建物の基礎に、ディスクサンダー装置を用いて、スリット溝を形成する様子を説明する斜視図である。 実施例1のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、繊維強化樹脂成形体を埋設する様子を説明する斜視図である。 実施例1のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、スリット溝の開口部を熱可塑性樹脂材料で閉塞して、低圧樹脂注入用スクイズドームプレートを用いて樹脂材料を充填する様子を説明する斜視図である。 実施例1のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、低圧樹脂注入用スクイズドームプレートが取り外されて仕上げられた外観を示す斜視図である。 実施の形態の実施例2のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、繊維強化樹脂成形体の平面図である。 実施例2のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、図1中A−A線に沿った位置に相当する位置での基礎の断面図である。 実施の形態の実施例3のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、図1中A−A線に沿った位置に相当する位置での基礎の断面図である。 実施の形態の実施例4のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、建物の基礎部分の正面図である。 実施の形態の実施例5のコンクリート構造物補強構造及び補強方法で、RC建物のRC壁部に、開口部を形成する様子を示す正面図である。 コンクリート構造物補強構造の破壊荷重試験の模式図である。 一従来例のコンクリート構造物補強構造で、基礎の縦断面図である。 他の従来例のコンクリート構造物補強構造で、基礎の縦断面図である。 その他の従来例のコンクリート構造物補強構造で、基礎の縦断面図である。
符号の説明
15 建物
16,26,36,46 基礎(コンクリート構造物)
16a,26a 立ち上がり部
16b,26b 外側面(外表面)
17 スリット溝
17b,17b 内側面
18 繊維強化樹脂成形体(平板材)
19 エポキシ樹脂
19a エポキシ樹脂材料
21 低圧樹脂注入用スクイズドームプレート(低圧樹脂注入用スクイズプレート)
56 RCコンクリート壁部(コンクリート構造物)
k クラック
p 交点

Claims (8)

  1. コンクリート構造物の外表面から一定の深さを有するスリット溝内に、長手方向を該スリット溝の長手方向に一致させる平板材を介装させて埋設すると共に、前記スリット溝の両内側面と対向する該平板材の両側面との間の空隙に充填されたエポキシ樹脂材料によって、該平板材の各両側面が、該スリット溝の内側面に各々固着されていることを特徴とするコンクリート構造物補強構造。
  2. 前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部の厚み方向寸法のうち、外表面から約1/2未満で、略水平に形成されたスリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物補強構造。
  3. 前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部に存在するクラックに交差するように、外表面から厚み方向寸法の約1/2未満で、前記スリット溝を形成して、該スリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設すると共に、該平板材と、該スリット溝との間の空隙に充填されるエポキシ樹脂材料を、前記クラック内の空間内に到るまで、硬化状態で一体となるように充填することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物補強構造。
  4. 前記平板材は、前記スリット溝の長手方向に沿って炭素繊維の方向を一致させた繊維強化樹脂成形体であることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項記載のコンクリート構造物補強構造。
  5. コンクリート構造物の外表面から一定の深さを有するスリット溝を切削形成すると共に、該スリット溝内に、該スリット溝の長手方向に沿って長手方向を一致させた平板材を介装させて埋設し、該平板材と、スリット溝の内側面との間の空隙にエポキシ樹脂材料を充填して、該エポキシ樹脂材料の硬化により、該平板材の両側面を、該スリット溝の内側面に固着させることを特徴とするコンクリート構造物補強方法。
  6. 前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部の厚み方向寸法のうち、外表面から約1/2未満で、略水平に形成されたスリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を介装して埋設した後、エポキシ樹脂材料を該スリット溝内に充填することを特徴とする請求項5記載のコンクリート構造物補強方法。
  7. 前記コンクリート構造物は、建物の基礎であり、該基礎の立ち上がり部に存在するクラックに交差するように、外表面から厚み方向寸法の約1/2未満のスリット溝を形成して、該スリット溝内に、面内,外方向を上下方向として、前記平板材を埋設すると共に、該平板材と、該スリット溝との間の空隙にエポキシ樹脂材料を充填すると共に、前記クラック内の空間内に、充填されたエポキシ樹脂材料と共に、両エポキシ樹脂材料が硬化状態で一体となることを特徴とする請求項5記載のコンクリート構造物補強方法。
  8. 前記エポキシ樹脂材料の充填には、低圧樹脂注入用スクイズプレートが用いられていることを特徴とする請求項5乃至7のうち何れか一項記載のコンクリート構造物補強方法。
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