JP2018091083A - 土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材 - Google Patents

土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材 Download PDF

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Abstract

【課題】 損傷した土塗り壁の構造強度を大きく回復させつつ、工期の短い土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材を提供する。【解決手段】土塗り壁20の両面を型枠80で覆い、土塗り壁20と型枠80とを貫通するように形成された型枠保持孔90を介して緊結具91で型枠80を保持させる型枠作業工程と、型枠保持孔90から土塗り壁20内部に補修材50を注入する内部補修材注入工程と、緊結具91を緊結することで、補修材50を土塗り壁20内部に拡充させる補修材拡充工程とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、伝統木造建築における、損傷した土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材に関する。
地震等によって損傷を受けた土塗り壁の補修方法として、層間変形角1/50rad程度の損傷が軽微な場合には、損傷部分のみをはつり取り、数層に分けて、ガラス繊維ネットを挟み込みながら壁土を塗りつける方法がある(非特許文献1)。この補修方法は、元の土塗り壁と同等の構造強度を得ることができるとされている。
層間変形角1/10rad以上の大変形を受けた土塗り壁の補修方法は、既存の壁土を全て除去し再度壁土として練り直し、損傷した貫や小舞下地を補修した上で、新築時と同様の手順で壁を塗る方法を採用する場合が主であった(非特許文献2)。
國分 直輝、外4名、「歴史的町並みの地震防災対策に関する研究 その7 土蔵造耐力壁の補修方法とその効果」、日本建築学会大会学術講演梗概集(関東) 2015年9月、日本建築学会、2015年、P495−P496、 山之内 隆志、外4名、「歴史的町並みの地震防災対策に関する研究 その8 大変形を受けた土塗壁の補修効果に関する実験的検証」、日本建築学会大会学術講演梗概集(関東) 2015年9月、日本建築学会、2015年、P497−P498
ところで、非特許文献1に開示された補修方法では、壁面に生じたひび割れはほとんど閉じているので、ひび割れに補修材を注入することが困難である。また、ひび割れに補修材を注入できた場合でも、土塗り壁下地との界面強度が小さく、せん断力に抵抗できずに補修部分が剥離し、せん断強度を発揮できない。従って、このような補修方法では、土塗り壁の構造強度は十分に回復できない。
また、非特許文献2に開示された補修方法では、土塗り壁の構造強度は大きく回復するが、既存の壁土を全て除去し再度壁土として練り直し、損傷した貫や小舞下地を補修した上で、新築時と同様の手順で壁を塗るので、仕上がりまでに相当の時間を要する。従って、早急に復旧する必要がある場合には、この方法の採用は困難である。
そこで、本発明の目的は、損傷した土塗り壁の構造強度を大きく回復させつつ、工期の短い土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、土塗り壁の両面を型枠で覆い、前記土塗り壁と前記型枠とを貫通するように形成された型枠保持孔を介して緊結具で前記型枠を保持させる型枠作業工程と、前記型枠保持孔から前記土塗り壁内部に補修材を注入する内部補修材注入工程と、前記緊結具を緊結することで、前記補修材を前記土塗り壁内部に拡充させる補修材拡充工程とを備える。
外周部材と前記土塗り壁との間に生じた空隙に前記補修材を注入する外部補修材注入工程をさらに備えるとよい。
さらに前記土塗り壁に生じた亀裂に沿って注入孔を穿孔する注入孔穿孔工程を備え、前記外部補修材注入工程は、前記亀裂と前記注入孔とに前記補修材を注入するとよい。
補修後の前記土塗り壁の壁厚が損傷前の前記土塗り壁の壁厚にほぼ同じくなるように、前記緊結具を緊結するとよい。
前記外周部材と前記土塗り壁との間に生じた前記空隙を拡幅する空隙拡幅工程をさらに備えるとよい。
また、本発明は、土塗り壁に生じた亀裂に沿って注入孔を穿孔する注入孔穿孔工程と、前記亀裂と前記注入孔とに補修材を注入する外部補修材注入工程とからなる。
前記補修材と接する前記土塗り壁の壁面調整に、吸水調整剤を用いるとよい。
また、本発明は、荒壁土と水酸化カルシウムと水とを混合してなり、荒壁土と、水酸化カルシウムとの体積比が、90:10〜50:50であり、水の混合体積比が、0.5以下である。
本発明によれば、損傷した土塗り壁の構造強度を大きく回復させつつ、工期の短い土塗り壁の補修を行うことができる。
本発明の土塗り壁の補修方法の一実施形態による補修の流れを示した側面断面図。 本発明の土塗り壁の補修方法の補修方法の一実施形態の作業工程のフローチャート。 (a)は、土塗り壁の補修方法の外部準備工程の準備工程(1)及び準備工程(2)を示した正面図、(b)は、同平面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の外部準備工程の準備工程(1)の空隙拡幅部分の拡大平面断面図、(b)は、Vカット部分の拡大平面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の外部補修材注入工程を示した正面図、(b)は、同平面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の型枠作業工程(1),(2)を示した正面図、(b)は、同側面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の型枠作業工程(4)を示した正面図、(b)は、同側面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の内部補修材注入工程の土塗り壁の壁厚の変化を示した拡大側面断面図、(b)は、(a)の亀裂部分をさらに拡大した側面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の補修材拡充工程を示した正面図、(b)は、同側面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法の補修材拡充工程の土塗り壁の壁厚の変化を示した拡大側面断面図、(b)は、(a)の亀裂部分をさらに拡大した側面断面図。 (a)は、土塗り壁の補修方法により補修した土塗り壁を示した正面図、(b)は、同側面断面図。
以下、本発明に係る土塗り壁の補修方法及び同方法に用いる補修材について、図1〜図11及び表1,表2を参照して説明する。
図1各図は、本発明に係る土塗り壁の補修方法の一実施形態により、損傷を受けた土塗り壁の補修の流れを示した側面断面図である。図1(a)は、地震や地盤沈下等によって伝統木造建築等に使用されている土塗り壁20に損傷が生じた状態を模式的に示している。図1(b)は、土塗り壁20の補修作業工程において、型枠保持孔に補修材を注入し、緊結具91で型枠80,80を緊結した状態を示している。図1(c)は、本発明による補修が完了し、土塗り壁20の内部にできた空隙35に補修材50が拡充された状態を示している。
図2は、本発明に係る土塗り壁の補修方法の一実施形態の作業工程のフローチャートである。この土塗り壁の補修方法は、大きく、外部補修工程と内部補修工程とから構成されており、亀裂部分などの軽度な損傷を外部補修する作業工程(軽度損傷補修工程:図2右側の作業フロー)と、壁内部に達する重度の損傷を補修する作業工程(重度損傷補修工程:図2左側の作業フロー)から構成されている。この土塗り壁の補修方法は、外部補修工程(図2上側の2つの作業フロー)のみを行ってもよい。土塗り壁の損傷状況に応じて、外部補修工程の軽度損傷補修工程のみを行ってもよいし、外部補修工程のうちの重度損傷補修工程のみを単独で行ってもよい。また、内部補修工程のみを行ってもよい。
[土塗り壁の補修方法]
上述したように、本実施形態に係る土塗り壁の補修方法は、外部補修工程と内部補修工程とを備えている。外部補修工程は、外部準備工程と、外部補修材注入工程とからなる。内部補修工程は、型枠作業工程と、内部補修材注入工程と、補修材拡充工程とからなる。また、補修工程を終えた後、表面仕上を行う。なお、外部補修工程と内部補修工程とは、どちらの工程を先に行ってもよい。以下、各工程について説明を行う。
(外部補修工程)
外部準備工程は、準備工程(1)、準備工程(2)、準備工程(3)(図示せず)の3つに分かれている。
外部準備工程の準備工程(1)である空隙拡幅工程(図2:S1)は、図3及び図4(a)に示すように、本実施形態では外周部材1としての柱2及び横架材10(土台3、梁4など)と、土塗り壁20との間に生じた空隙30の拡幅を行う工程である。図1に示すように、土塗り壁20は、貫21、小舞下地22(間渡し竹23、小舞竹24)及びこれらに塗りつけられた荒壁25と、荒壁25に塗りつけられた中塗り26とからなる。空隙拡幅工程S1では、補修材50が空隙30の奥までスムーズに注入できるようにするために、空隙30の拡幅を行う。まず、土塗り壁20の浮いた部分の壁土28を除去する。壁土28は、補修材50として再利用することが望ましい。壁土28を再利用することで、補修材50と土塗り壁20とがなじみやすくなる。図4(a)に示すように、中塗り26部分の空隙30は、一方の隅角部を削って面取32を行い、荒壁25と柱2との間の空隙30への補修材50の充填性を高めることが好ましい。荒壁25と柱2との間の空隙30は、幅Wがなるべく均一になるように拡幅33を行う。
外部準備工程の準備工程(2)である注入孔穿孔工程(図2:S2)は、図3に示すように、土塗り壁20の表面の亀裂31に対して、亀裂31に沿って所定の間隔をあけた注入孔60,60,…を穿孔する工程である。電動ドリルなどを用いて、土塗り壁20の表面の亀裂31に、注入孔60,60,…を所定の間隔で貫21や小舞下地22の手前まで穿孔する。注入孔60,60,…の間隔は、亀裂31の長さや深さ、幅などに応じて適宜決定する。注入孔60の直径は、10〜20mm程度が好ましい。また、図4(b)に示すように、土塗り壁20の亀裂31に、断面がV字形となるように削って整形(以下、Vカット34と呼ぶ)を行うことが好ましい。
外部補修材注入工程(図2:S3,S4)は、図5に示すように、拡幅した空隙30及び注入孔60,60,…に、補修材50を注入する工程である。吸水調整材の養生期間が経過した後、足踏み式ポンプ、手動式ポンプ等を使用して補修材50を注入する。本実施形態では、補修材50は、荒壁土と消石灰(炭酸カルシウム)とを主成分としており、高性能AE減水剤等の流動化剤を添加して、注入に必要な流動性を確保するとともに収縮率を小さくすることが好ましい。
外部準備工程の準備工程(3)では、補修材50の注入に先立って、拡幅した空隙30及びその周囲、注入孔60,60,…及びその周囲に圧縮空気を送って清掃し、壁面調整に吸水調整材(NSハイフレックス等)を用い、すなわち適用することが好ましい。清掃を行うことで補修材50の浮きや剥落を防止することができる。吸水調整材を適用する手段としては、具体的には塗布、注入、噴霧することができる。これにより、塗りつけた補修材50の水分が急激に土塗り壁20に吸水されることを抑制し、ドライアウトを防止し、補修材50と土塗り壁20との接着耐久性を長期保持できる。
(内部補修工程)
型枠作業工程は、作業工程(1)、作業工程(2)、作業工程(3)(図示せず)及び作業工程(4)を備える。
作業工程(1)である型枠組立工程は、図6に示すように、土塗り壁20の両面に型枠80を組み立てる工程である。型枠80は、せき板81、縦端太(桟木)82を備える。型枠80を固定するために鋼製の丸パイプ等の横端太83を使用する。型枠80のせき板81は、本実施形態では木製合板からなる。鋼製、樹脂製等のせき板81を使用してもよい。真壁に補修を行う場合には、型枠80のせき板81が、土塗り壁20の表面に密接できるように型枠80を組み立てる。せき板81の寸法等に応じて縦端太82の寸法やピッチ及び横端太83の寸法やピッチ等を決定する。型枠80の必要な強度が小さい場合には、縦端太82や横端太83を省略してもよい。型枠80を立設させるために、鋼管などのサポートを使用してもよい。
作業工程(2)である型枠保持孔穿孔工程は、土塗り壁20と土塗り壁20に密接させて立設させた型枠80,80とに、ボルト等からなる緊結具91を通すための型枠保持孔90,90,…を、穿孔する工程である。電動ドリルなどを用いて、土塗り壁20及び型枠80,80に、型枠保持孔90,90,…を穿孔する。型枠保持孔90,90,…の相互の間隔は、型枠80の平面性が確保できる程度の間隔にすることが望ましいが、土塗り壁20の損傷の程度や、土塗り壁20の厚さなどに応じて適宜調整する。
作業工程(3)である内部下地調整工程では、型枠保持孔90,90,…に、第一下地調整工程同様に圧縮空気を送って清掃し、吸水調整材(NSハイフレックス等)を適用する。
作業工程(4)S6である型枠保持工程では、図7,図8に示すように、型枠保持孔90,90,…にボルト92,92,…を通し、ワッシャ93,93,…を介して、レンチやラチェット等を用いてナット94,94,…と螺合させる。土塗り壁20の壁厚は、t1になるように型枠80を保持させる。型枠保持孔90,90,…のうち、補修材注入用の注入孔90a,90a,…には、緊結具91としてのボルト92,92,…を通さない。注入孔90a,90a,…には、一方の型枠80,80,…の側の開口を、注入した補修材50が流出しないようにプラグ95,95,…を挿嵌させておく。注入孔90aの数や位置は、土塗り壁20の破損状況や大きさなどから適宜決定する。型枠保持孔90の直径は、注入孔60と同様に、10〜20mm程度が好ましい。ボルト92、ワッシャ93、ナット94以外の構成の緊結具91を使用してもよい。プラグ95には、余分な補修材50を土塗り壁20の内部から壁の外に流出させることが出来るように溝を設けておくとよい。
内部補修材注入工程S7は、図7,図8に示すように、注入孔90a,90a,…に、外部補修材注入工程同様に補修材50を注入する工程である。土塗り壁20のもとの壁厚t0よりもΔ1分だけ厚い壁厚t1になるまで補修材50を、注入孔90aから注入する。Δ1は、土塗り壁20の破損状況や、補修材50の乾燥による収縮を考慮して決定する。
補修材拡充工程S8は、図9及び図10に示すように、注入孔90a,90a,…の他方の型枠80,80,…の側の開口にもプラグ95,95,…を挿嵌させ、型枠保持孔90,90,…に通した緊結具91,91,…を緊結して補修後の土塗り壁20の壁厚をt2とする工程である。補修後の壁厚t2は、補修材50が乾燥した後に壁厚が補修前の壁厚t0と同じになる壁厚である。Δ2は、補修材50が、土塗り壁20の内部の破損により生じた空隙35を満たすための寸法であり、Δ1−Δ2は補修材50が乾燥により収縮する寸法である。緊結具91を緊結することで、補修材50を、土塗り壁20の壁体内部の破損により生じた空隙35にまで十分に拡充させることができる。その後、注入孔90a,90a,…にプラグ95,95,…を挿嵌させるだけでもよいし、注入孔90a,90a,…にもボルト92,92,…を通し、ワッシャ93,93,…を介して、ナット94,94,…と螺合させてもよい。従って、補修後の土塗り壁20の強度は、従来の補修を行った場合に比べて高くなる。その後、養生期間を確保する。
型枠撤去工程は、型枠80を撤去し、緊結具91を通していた型枠保持孔90に補修材50を注入する工程である。レンチやラチェット等を用いてナット94を緩めて、ボルト92、ワッシャ93及びナット94を撤去する。型枠80及びその補助部材を撤去した後、型枠保持孔90に補修材50を注入する。補修材50を注入する際には、補強のため型枠保持孔90内に結び目をつけた麻縄などの補強紐材100を予め埋設しておくとよい。
(仕上げ工程)
仕上げ工程は、土塗り壁20の表面の仕上げをする工程である(図11参照)。土塗り壁20の表面は、補修材50と古い塗壁とが混在しているので、土塗り壁20の表面全体に仕上げを施して土塗り壁20の表面のムラを目立たなくすることが好ましい。中塗りで仕上げてもよいし、漆喰等で仕上げてもよい。
本実施形態によると、外周部材(柱2及び土台3、梁4などの横架材10)と土塗り壁20との間に生じた空隙30を拡幅し、互いに所定の間隔をあけて土塗り壁20及び型枠80を貫通する型枠保持孔90,90,…を、貫21及び小舞下地22を避けて穿孔し、型枠80を緊結具91で締めることで、補修材50を土塗り壁20内部の破損により生じた空隙35に拡充できるので、土塗り壁の構造強度を大きく回復させることができる。また、土塗り壁20の亀裂31に注入孔60,60,…を穿孔し、亀裂31と注入孔60,60,…とに補修材50を注入するので、注入孔60に注入された補修剤50と土塗り壁20とのかみ合わせ効果によりせん断変形を抑制できる。従って、損傷した土塗り壁20の構造強度を大きく回復させつつ、工期の短い土塗り壁の補修を行うことができる。
[土塗り壁の補修材]
上述した土塗り壁20の補修方法に使用する補修材50は、荒壁土と水酸化カルシウム(消石灰)と水との混合材料である。荒壁土は、本実施形態では愛知県産の荒壁用粘土を使用した。水酸化カルシウムは、セメントを使用した場合と同等のせん断強度を有するので、補修材50の強度を向上させることができ、補修した土塗り壁20の強度を高めることができる。強度増加をさらに要する場合は、水酸化カルシウムに代えて、普通セメントを使用してもよい。
補修材50の荒壁土と水酸化カルシウムとは、体積比で90:10〜50:50の範囲とする。荒壁土が90%より多いと、補修材50の強度が低下し、水酸化カルシウムが50%よりも多いと、補修材50が練り混ぜ性状が悪くなる。水の混合体積比は、0.5以下が好ましい。水の体積比がこの値を超えると、補修材50はダレを生じ、また、乾燥収縮が大きくなり、ひび割れを生じやすくなる。また、補修材50の練り混ぜを十分に行うために、高性能AE減水剤等の流動化剤を添加するとよい。
以下、実施例に適用するための各試験の概要を示す。
[土塗り壁の補修材の実験]
(補修材の材料試験)
補修材の選定に当たって、補修材の材料試験を行った。材料の選定では、現場で補修材の調合を行う左官職人が使い慣れた材料であること、文化財などに適用できるように主材料が伝統材料であることに加えて、十分な強度を有すること、低収縮であること、及びひび割れ部分への注入が可能な流動性があることを条件とした。
補修材単体の特性を確認するために長さ変化試験を行った。長さ変化試験は型枠の内法寸法(40×40×160mm)を基準とした収縮率を求めた。
補修材は、表1の1−1から3−3に示す8ケースで、各ケースとも主材料は荒壁用の原土、流動性を得るための混和剤は高性能AE減水剤とした。硬化材は、用いない(荒壁土単体)・消石灰・普通セメントの3種類とし、硬化材を用いない荒壁土単体は水量、消石灰混合は消石灰置換率、普通セメント混合は水セメント比W/Cをパラメータとした。なお、ケース0は補修材なしの場合である。
(長さ変化試験、強度試験)
表2に4週材齢時における長さ変化試験(収縮率)、圧縮強度、せん断強度試験結果を示す。各値は3供試体の平均値である。
(1)長さ変化試験
収縮率は、荒壁土単体、消石灰混合、セメント混合の順で大きかった。荒壁土単体の密度は、乾燥収縮によって他のケースよりも大きくなった。
(2)強度試験
補修面の強度を確認するために、標準供試体モールドを用いた圧縮強度試験と、平板試験体による補修面の一面せん断試験を実施し、その結果を表2に示す(表2参照)。一面せん断試験では、上下に分かれたせん断箱に供試体を納め、垂直方向に載荷した状態で、上箱または下箱に水平方向の力(せん断力)を加える。このとき、供試体に生ずる抵抗力を測定して、土のせん断強さおよびせん断応力とせん断変位の関係を求める。一面せん断試験の供試体は、300×300×90mmの木枠に荒壁土材料を詰めて成型した後、中央を切断して2分割し、自然乾燥させた。ひび割れを模擬した幅4mm程度の隙間を設けて供試体を型枠に取り付け、各種補修材により隙間の充填を行った。その際、接合面両面に吸水調整のためにハイフレックスを塗布した。なお、Case0は2分割しない、1枚板である。本実験は補修面のせん断強度を確認する試験であるため、接合部で必ず破壊が生じるように加力角度を設定した。
既往の研究によると本試験で採用した一面せん断試験方法は、供試体の縁端部以外では、せん断応力度τと垂直応力度σnとは一定であり、さらに供試体の破壊時には、ひび割れが発生しており、応力分布は一様であると考えられるので、次式により実験結果を評価する。
τ=Psinθ/A
P:荷重、θ:補修面の法線と加力方向とのなす角度、A:補修面の面積(試験後破断面位置で測定した寸法)
せん断強度は、消石灰混合としたものは消石灰置換率が高いほど、またセメント混合としたものはW/Cが低いほど、高くなる結果となった。
塗り土壁の補修材に関する要素試験を行い、以下の結論を得た。
1)塗り土壁の補修材としては、可能な限り伝統材料を用いることが望ましいため、普通セメント混合に比べ若干収縮量が大きいが同等のせん断強度を有する消石灰混合の荒壁土を採用する。
2)消石灰置換率が高いほど収縮率は小さく、せん断強度は大きくなるが、置換率が高いと、流動性の調整が難しいことから、補修材の消石灰置換率は30%とした。
なお、本発明は上述した実施形態及び実験例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
1 外周部材
2 柱
3 土台
4 梁
10 横架材
20 土塗り壁
25 荒壁
26 中塗り
30 空隙
31 亀裂
35 空隙
50 補修材
60 注入孔
80 型枠
90 型枠保持孔
90a 注入孔(型枠保持孔)
91 緊結具
100 補強紐材

Claims (8)

  1. 土塗り壁の両面を型枠で覆い、前記土塗り壁と前記型枠とを貫通するように形成された型枠保持孔を介して緊結具で前記型枠を保持させる型枠作業工程と、
    前記型枠保持孔から前記土塗り壁内部に補修材を注入する内部補修材注入工程と、
    前記緊結具を緊結することで、前記補修材を前記土塗り壁内部に拡充させる補修材拡充工程とを備える土塗り壁の補修方法。
  2. 外周部材と前記土塗り壁との間に生じた空隙に前記補修材を注入する外部補修材注入工程をさらに備える請求項1に記載の土塗り壁の補修方法。
  3. さらに前記土塗り壁に生じた亀裂に沿って注入孔を穿孔する注入孔穿孔工程を備え、
    前記外部補修材注入工程は、前記亀裂と前記注入孔とに前記補修材を注入する請求項1又は2に記載の土塗り壁の補修方法。
  4. 補修後の前記土塗り壁の壁厚が損傷前の前記土塗り壁の壁厚にほぼ同じくなるように、前記緊結具を緊結する請求項1から3のいずれか1項に記載の土塗り壁の補修方法。
  5. 前記外周部材と前記土塗り壁との間に生じた前記空隙を拡幅する空隙拡幅工程をさらに備える請求項1から4のいずれか1項に記載の土塗り壁の補修方法。
  6. 土塗り壁に生じた亀裂に沿って注入孔を穿孔する注入孔穿孔工程と、
    前記亀裂と前記注入孔とに補修材を注入する外部補修材注入工程とからなる土塗り壁の補修方法。
  7. 前記補修材と接する前記土塗り壁の壁面調整に、吸水調整剤を用いる請求項1から6のいずれか1項に記載の土塗り壁の補修方法。
  8. 荒壁土と水酸化カルシウムと水とを混合してなり、
    荒壁土と、水酸化カルシウムとの体積比が、90:10〜50:50であり、
    水の混合体積比が、0.5以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の土塗り壁の補修方法に用いる補修材。
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JPS55136376A (en) * 1979-04-09 1980-10-24 Takao Izuhara Method of repairing earthen wall

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