請求項1記載の発明は、電極回転ユニットが、回転軸に、移動電極を備えた回転基部材と前記回転軸を回転する回転駆動手段が結合されることにより形成され、前記回転駆動手段の回転角度は、部品供給通路からの部品が移動電極の保持部に供給される被供給位置と、この被供給位置から回転して部品が相手方部材に対向した溶接位置をとるように設定され、前記電極回転ユニットは、左右方向および前後方向に移動する移動機構とこの移動機構に結合されているとともに前記回転軸の向きを変える回転機構を介して支持されていることを特徴とするプロジェクション溶接装置である。
回転軸に、移動電極を備えた回転基部材と前記回転軸を回転する回転駆動手段が結合されることにより形成された電極回転ユニットが、左右方向,前後方向および回転方向に移動するので、移動電極を所定の位置に正確に到達させることができ、部品を相手方部材の所定の箇所に正しく溶接することができる。そして、回転軸の向きが前記回転機構によって変えられるので、移動電極が進出する方向に回転軸を存在させることなく、移動電極を狭い箇所へ到達させることができる。
回転動作をする回転基部材に移動電極が取り付けられ、この移動電極に、部品が保持部に供給される被供給位置と、部品が相手方部材に対向した溶接位置との2位置を付与したので、被供給位置において部品が移動電極に保持されてから、回転駆動手段によって溶接位置に回動する。このようにして、前記被供給位置を移動電極への部品供給が最も行いやすい位置とすることができ、この部品供給が確実に行える。さらに、前記溶接位置を相手方部材に対して最も溶接しやすい位置に設定することができ、溶接動作が確実なものとなる。
さらに、前記被供給位置は、例えば、溶接位置にある移動電極が相手方部材に向かう進出方向とは逆の側に配置することが望ましい。こうすることにより、溶接位置から離隔した箇所で部品が移動電極に供給されるので、供給に必要な構造物などの配置が行いやすくなる。上述のように、移動電極の被供給位置が回転基部材の回転角度によって設定されるので、上述の利点がえられるような最適の部品供給位置が設定でき、円滑で確実な移動電極への部品供給にとって効果的である。
請求項2記載の発明は、前記移動機構は、ガイドレールを含む左右動ガイド手段とガイドレールを含む前後動ガイド手段とをほぼ直角に食い違って交差させて構成されている請求項1記載のプロジェクション溶接装置である。
前記左右動ガイド手段と前記前後動ガイド手段とをほぼ直角に食い違って交差した状態で組み合わせて、電極回転ユニットがいわゆるX方向とY方向に移動するものであるから、移動電極を所定の溶接位置に自由に到達させることができる。
この回転機構は、筒状の内筒軸の外側に外筒軸を組み合わせて構成されているので、軸の直径を大きく設定することができる。そのために軸心が狂いにくくて支持安定性や軸剛性の高い軸構造で回転機構が形成されるので、電極回転ユニットの回転軌跡が所定の軌跡となって、移動電極の移動や到達箇所が正確に求められる。さらに、筒状の軸構造であるから、電極回転ユニットに対する各種の導通線や部品供給ホース,冷却水ホースなどを筒内部に配置することができて、これらの損傷を回避し溶接装置をコンパクトにすることが可能となる。
さらに、前記部品供給ホースが接続されている部品供給管や被供給位置にある移動電極の中心軸を、回転機構の回転軸線と同軸にすることにより、部品供給管と移動電極との相対位置を常に合致させることができ、移動電極への部品供給が正確に果たされる。上述のように常に同軸状態にしておくことにより、動作機構中に軸心合わせの構造を特別に設ける必要がなく、構造簡素化の点で効果的である。
請求項4記載の発明は、前記回転機構と前記電極回転ユニットとの間に、溶接位置におかれた移動電極を相手方部材に到達させる進退駆動手段が配置されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
前記進退駆動手段によって、左右方向,前後方向および回転方向に移動した移動電極が、そこに保持された部品が相手方部材に対向した状態で、相手方部材の方へ進出するので、所定の箇所に対して確実な部品溶接が実現する。つまり、移動電極が、左右方向であるX方向と、前後方向であるY方向と、相手方部材に向かうZ方向との3方向に移動するので、所定の箇所に対して確実な部品溶接が実現する。
請求項5記載の発明は、前記前後動ガイド手段に支持基部材が取り付けられ、この支持基部材に前記回転機構が取り付けられている請求項2〜請求項4のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
前記支持基部材は、左右方向および前後方向に移動する状態になっており、この支持基部材に対して内筒軸や外筒軸などからなる回転機構が取り付けられている。換言すると、前後動ガイド手段に支持基部材を介して回転機構が取り付けられているので、前後動ガイド手段に対する回転機構の取付剛性を向上することができる。同時に、回転機構の取り付け構造が簡素化される。また、支持基部材に電動モータなどの回転駆動源を取り付けることにより、回転機構に対する回転力の入力が行いやすくなる。
請求項6記載の発明は、前記外筒軸に前記進退駆動手段を介して電極回転ユニットが取り付けられている請求項3〜請求項5のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
請求項7記載の発明は、前記被供給位置にある移動電極と部品供給通路の軸線が、前記回転機構の回転軸線と同軸になっている請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
上述のような同軸の状態になっているので、電極回転ユニットがX方向,Y方向および回転方向に移動をしている最中であっても、部品供給通路から移動電極への部品供給が可能となる。したがって、電極回転ユニットを所定の位置に移動させることと移動電極へ部品供給を行うこととが同時に実行できて、溶接時間の短縮にとって効果的である。
請求項8記載の発明は、部品供給通路と保持部との間に、部品を一時的に係止する一時係止手段が配置されている請求項1〜請求項7のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
一般に、部品供給通路内を移動してくる部品は圧縮空気で搬送されるので、その搬送速度は高速になる。このような速度で部品が移動電極の保持部に激突すると、保持部の耐久性が低下する恐れがある。本発明では、上述のように、部品を一時的に係止してから保持部へ移行させるものであるから、保持部に対する部品の衝撃が緩和され、保持部の保持機能が長期にわたって維持できる。
請求項9記載の発明は、前記回転基部材および移動電極の回転軸とは反対側に、溶接装置が前記相手方部材に干渉しないようにするための干渉回避空間が設けられている請求項1〜請求項8のいずれかに記載のプロジェクション溶接装置である。
前記干渉回避空間を設けたので、相手方部材に起立した形状部分があっても、移動電極をこの起立した形状部分の直近まで接近させて溶接することができ、部品の溶接可能な領域が拡大する。すなわち、前記回転軸やそれに関連する構造物が干渉回避空間に存在していないので、移動電極を起立形状部分の直近まで接近させることができる。
図1〜図5は、第1の実施例である。
図1は、装置の縦断正面図、図2は、図1の装置を右側から見た部分的な側面図である。この溶接装置よって溶接される部品としては、プロジェクションナットやプロジェクションボルト、あるいはそれ以外の溶着用突起を有するものなど色々な部品がある。この実施例では、図3(B)に示すプロジェクションボルトが溶接の対象部品であり、鋼板部品に溶接される。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現することもある。
図3(B)において、鉄製のプロジェクションボルト1は、雄ねじが設けられた軸部2と軸部2と一体のフランジ部3と軸部2とは反対側のフランジ面に設けられた溶着用突起4から構成されている。そして、図4に示すように、ボルト1は鋼板部品5に溶接されるもので、黒く塗りつぶした箇所が、溶融部6である。
図1,図2に示す溶接装置全体は、符号7で示されている。溶接装置7は、主としてX方向である左右方向とY方向である前後方向の移動を行う移動機構8と、この移動機構8に結合されている回転機構9と、この回転機構9に結合されている電極回転ユニット10から構成されている。
前記移動機構8について説明する。
移動機構8は、X方向の進退動作をえるための左右動ガイド手段11とY方向の進退動作をえるための前後動ガイド手段12とが直角に食い違って交差した状態で構成されている。
左右動ガイド手段11について説明する。図1の左右方向、つまり図2の紙面に対して垂直方向に2本平行に配置されたガイドレール13が機枠などの静止部材14に固定され、この各ガイドレール13の下部にスライドベアリング15がそれぞれ少なくとも2つ取り付けられている。そして、ガイドレール13の架橋部材19に固定した電動モータ16によってスクリュウシャフト17が回転するようになっている。スクリュウシャフト17はガイドレール13の長手方向に配置され、それを回転自在に支持する軸受部材18がガイドレール13の架橋部材20に溶接などで固定されている。スライドベアリング15は、ガイドレール13に沿って進退するとともに、前後動ガイド手段12のガイドレール21を吊り下げるようになっている。
上述のガイドレール13の長手方向およびスクリュウシャフト17の軸線方向がX方向である。
前後動ガイド手段12について説明する。図1の紙面に対して垂直方向、つまり図2の左右方向に2本平行に配置されたガイドレール21が前記スライドベアリング15によって吊り下げられている。この各ガイドレール21の下部にスライドベアリング22がそれぞれ少なくとも2つ取り付けられている。そして、ガイドレール21の架橋部材23に固定した電動モータ24によってスクリュウシャフト25が回転するようになっている。スクリュウシャフト25はガイドレール21の長手方向に配置され、それを回転自在に支持する軸受部材26がガイドレール21の架橋部材27に溶接などで固定されている。スライドベアリング22は、ガイドレール21に沿って進退するとともに、後述の支持基部材28を吊り下げるようになっている。
上述のガイドレール21の長手方向およびスクリュウシャフト25の軸線方向がY方向である。
前記前後動ガイド手段12側の架橋部材29に溶接などで固定された伝動部材30をスクリュウシャフト17が貫通しており、スクリュウシャフト17が回転すると、この伝動部材30を介して前後動ガイド手段12がX方向に進退する。
また、前記支持基部材28に溶接などで固定された伝動部材31をスクリュウシャフト25が貫通しており、スクリュウシャフト25が回転すると、この伝動部材31を介して支持基部材28がY方向に進退する。
上述の移動機構8は、X方向の進退動作をえるための左右動ガイド手段11と、Y方向の進退動作をえるための前後動ガイド手段12とが直角に食い違って交差しているもので、一般的に実用化されているものである。
つぎに、回転機構9について説明する。
回転機構9は、断面円形の中空の内筒軸33が支持基部材28に固定され、その外側にベアリング34を介して断面円形の外筒軸35が回転自在な状態で組み合わされている。内筒軸33の上部には雄ねじ36が形成され、支持基部材28にボルトなどで固定したリング状のナット部材37に雄ねじ36がねじ込んである。なお、符号32はナット部材37に対するロックナットである。また、前記ベアリング34に対しても、ロックナット38が上下2箇所で締め付けてある。
外筒軸35に対して回転力を付与するために、電動モータ39を使用している。この電動モータ39は、支持基部材28の下側に取付片40を用いて固定されている。電動モータ39によって回転するピニオン41が、外筒軸35に固定したリングギヤ42にかみ合っている。電動モータ39にはステップモータを採用し、パルス入力でピニオン41に所定回転数の回転をさせてリングギヤ42に所定角度の回転をさせる。これによって、外筒軸35も所定角度の回転がなされて、前記電極回転ユニット10の回転角度が設定される。上記ステップモータに代えて外筒軸35を回転させることができる。例えば、進退式のラックをリングギヤ42にかみ合わせることも可能である。
内筒軸33の内部空間は、支持基部材28に設けた通孔43に連通している。
内筒軸33の下端部に、支持部材45が固定ボルト46で固定されている。この支持部材45に部品供給通路を形成する部品供給管47が取り付けてある。部品供給管47は断面円形とされ、その軸線は内筒軸33の回転軸線Oと同軸になっている。部品供給管47に部品供給ホース48が接合され、その端部はパーツフィーダ49に接続してある。この部品供給ホース48は、ウレタン樹脂や塩化ビニールなどの柔軟性のある合成樹脂で作られている。
前記回転軸線Oは、X方向やY方向に直交した向きに設定してある。そして、回転軸線Oは、X方向,Y方向に対するZ方向を形成している。
このパーツフィーダ49としては、振動式ボウルの移送通路から送出するもの、回転板に取り付けた磁石で所定個数の部品を吸着してそれを送出通路から送出するもの、あるいは、回転円板で搬送通路に部品を移動させこの部品が移送通路から送出されるもの等いろいろなものが採用できる。この実施例では、振動式ボウルの移送通路から送出する形式のものが採用されている。パーツフィーダ49の部品送出管に、部品供給ホース48内へ圧縮空気を噴射する空気噴射管44が接続してある。
部品供給ホース48や後述の導通線,冷却水ホースなどが内筒軸33や通孔43内を通過している。
つぎに、電極回転ユニット10について説明する。
前記外筒軸35に、その直径方向に突出させて形成した取付け部材50が設けられ、ここに進退駆動手段であるエアシリンダ51がボルトなどで固定してある。エアシリンダ51は、そのピストンロッド52の進退方向が前記回転軸線Oと平行になるように配置してある。
前記ピストンロッド52の下端部に、板状の基部材53が結合されている。この基部材53に円筒状の軸受54が固定され、そこに回転軸55が回転自在な状態で支持してある。この回転軸55の軸線は前記回転軸線Oに直交している。前記基部材53に回転駆動手段56が固定され、その出力軸が回転軸55の端部に結合され、回転軸55を90度,120度,180度のように所定角度回転するようになっている。
回転駆動手段56としては、パルス入力で所定角度の回転変位をえるステップモータが採用される。このステップモータは一般的なものであるが、これに代えて回転ベーンを備えたエアモータを使用することも可能である。このエアモータは、回転シリンダを貫通する軸にベーンが設けられ、このベーンに空気圧を作用させて回転変位をえるものであり、これも一般的に採用されている回転駆動手段である。
前記回転軸55の他端部には、厚板状の部材で形成された回転基部材57が結合され、この回転基部材57に移動電極58が取り付けられている。移動電極58は、90度間隔で4本取り付けてあり、各移動電極58の先端部が回転軸55と同心の仮想円上に位置するように、各移動電極58の長さが設定してある(図6参照)。このように移動電極58が90度間隔で4本設けてあるので、前記回転駆動手段56は90度ずつ回転変位をする。
図3(B)に示すように、符号60で示された保持部が移動電極58に形成されている。この保持部60はボルト1の軸部2を保持するものであればよく、クランプ板ばねで軸部2を挟み付けるものや、軸部2を収容孔内に保持するものなど種々な形態で実現することができる。この実施例では、後者の形式を採用している。
すなわち、移動電極58の中心部に軸部2の受入孔61が形成され、その奥部に永久磁石62が固定されている。この受入孔61の軸線は、前記回転軸線Oと同軸になっている。したがって、前記部品供給管47と移動電極58すなわち受入孔61とが、後述の「被供給位置」において同軸上に配置されていることになる。
図3(B)に示すように、1つの移動電極58の保持部60(受入孔61)が部品供給通路を構成する部品供給管47と同軸になっている状態が、「被供給位置」である。このように1つの移動電極58が被供給位置にあるときには、図1に示すように、他の移動電極58の保持部60にボルト1が保持されていて相手方部材である鋼板部品5に対向しており、この状態が「溶接位置」である。なお、移動電極58を1本にすることも可能であり、さらに、移動電極58を2本や3本にすることも可能である。このような場合には、回転駆動手段の動作角度が、それぞれ180度,120度に設定される。
前記被供給位置は、溶接位置にある移動電極58が鋼板部品5に向かう進出方向とは逆の側に配置してある。こうすることにより、溶接位置から離隔した箇所でボルト1が移動電極58に供給されるので、供給に必要な構造物などの配置が行いやすくなる。
図1に示すように、移動電極58に溶接電流の通電を行うために、回転軸55の円筒面63に圧接されるコンタクタ64が配置されている。コンタクタ64は、円筒面63に密着する円弧面を有するブロック部材で構成され、溶接変圧器(図示していない)から伸びてきている導通線65が結線してある。この導通線65は、前述のように内筒軸33や通孔43内をとおってコンタクタ64に接合されている。
そして、コンタクタ64は溶接電流を通電するときに円筒面63に密着するので、そのためにエアシリンダ66のピストンロッド67に結合されている。通電時にエアシリンダ66の進出動作でコンタクタ64が円筒面63に圧接される。また、回転軸55が回転するときには、エアシリンダ66の後退動作で円筒面63から離れて通電されなくなる。なお、エアシリンダ66は、前記エアシリンダ51に固定されている。
エアシリンダ51や66に接合される複数本の空気吸排ホース(図示していない)は、外筒軸35に取り付けられた空気分配ユニット68から配管されている。エアシリンダ51,66および空気分配ユニット68などが外筒軸35に取り付けてあるので、外筒軸35が回転してもエアシリンダ51,66と空気分配ユニット68との相対位置が変わらないので、上記空気吸排ホースが伸縮することがなく、同ホースの耐久性が向上するという効果がある。
図1に示すように、冷却水ホース81によって送られた冷却水が、軸受54から回転軸55,回転基部材57の各内部を通って移動電極58を冷却するようになっている。この冷却水ホース81は内筒軸33や通孔43をとおして軸受54に接続されている。
つぎに、ボルト1の一時係止手段について説明する。
高速で搬送されてきたボルト1が直接受入孔61内に進入すると、受入孔61の開口縁の損傷、例えば、急速に進行する摩耗などのおそれがある。このような現象を回避するために、図3に示すように、ボルト1を一時的に係止する一時係止手段70が設けられている。一時係止手段70としては、搬送されてきたボルト1を一旦停止してから、ゆっくりと移動させるものであればよく、停止機能を果たす部材と再び移動させる機能の構造を備えている。
この実施例では、一対の開閉部材に一旦停止機能が付与されている。2つの開閉部材71A,71Bは、それらが合致している状態で一旦停止機能を果たしている。開閉部材71A,71Bが閉じている状態で有底のテーパ孔72が形成され、その底部材72A,72Bに軸部2の挿入孔73が形成されている。この挿入孔73とテーパ孔72は、前記回転軸線Oと同軸になっている。
図3(A)に示すように、両開閉部材71A,71Bにエアシリンダ74A,74Bのピストンロッド75A,75Bが結合してある。両エアシリンダ74A,74Bは支持板76上に対向させて固定してある。したがって、エアシリンダ74A,74Bが進退すると、両開閉部材71A,71Bは左右対称の状態で開閉する。
前記支持板76にブラケット77が固定されている。前記支持部材45に固定されたエアシリンダ78のピストンロッド79がこのブラケット77に結合されている。前記ピストンロッド79の進退方向は、回転軸線Oと平行になっている。
したがって、搬送されてきたボルト1は、その軸部2が挿入孔73を通過するのと同時に、フランジ部3がテーパ孔72の底部材72A,72Bに受け止められてストッパ機能が果たされる。この状態で軸部2は回転軸線Oと同軸になっている。それからエアシリンダ78の動作で一時係止手段70全体が回転軸線Oに沿って下降すると、軸部2の先端部が受入孔61内に挿入される。その後、エアシリンダ74A,74Bの動作で開閉部材71A,71Bが両側に後退して開くと、フランジ部3がテーパ孔72の底部を通過し軸部2が受入孔61内に入りきって永久磁石62に吸引される。このようにして移動電極58へのボルト保持がなされる。
上述のように、テーパ孔72に回転軸線Oと同軸状態で一時係止されたボルト1が、エアシリンダ78の動作で受入孔61内に挿入されるので、ボルト1は確実に受入孔61内に挿入され、移動電極58へのボルト供給が確実に果たされるという効果がある。
上述の動作と逆の動作をして、開閉部材71A,71Bが次のボルト1の到達に待機する。
つぎに、干渉回避空間について説明する。
図1および図5に示すように、回転基部材57および移動電極58の右側で一時係止手段70の下側の部位に、干渉回避空間82が設けてある。換言すると、前記回転基部材57および移動電極58の回転軸55とは反対側に、溶接装置すなわち一時係止手段70の下側の部分が鋼板部品5に干渉しないようにするための干渉回避空間82が設けられている。
鋼板部品5の形状には種々なものがある。その一例として図5に示すように、隆起部5Aや起立壁5Bを有するものがある。図5に示すように、回転基部材57や移動電極58が、起立壁5Bの間近まで接近し起立壁5Bと隆起部5Aの間にボルト1の溶接がなされる。したがって、干渉回避空間82を確保することにより、狭い箇所へのボルト溶接が可能となる。
なお、図1,図4および図5において、符号59は通電用のバックバーであり、その上に鋼板部品5の支持片69が固定されている。
上記の各エアシリンダ51,66,74A,74B,78などを、進退出力をする電動モータに置き換えることも可能である。
上述の実施例の動作を説明する。
パーツフィーダ49から圧縮空気で部品供給ホース48内を搬送されてきたボルト1が、部品供給管47を通過して一時係止手段70のテーパ孔72に受け止められここで一時係止がなされる。その後、前述のようにして軸部2が受入孔61内に挿入される。
このようにしてボルト1が移動電極58に保持されると、今度は、回転駆動手段56によって回転基部材57が90度回転してすでにボルト1が保持されている移動電極58が溶接位置に停止する。
ついで、左右動ガイド手段11の電動モータ16、前後動ガイド手段12の電動モータ24、回転機構9の電動モータ39などの動作により、電極回転ユニット10の溶接位置にある移動電極58が、左右方向であるX方向、前後方向であるY方向および回転機構9の回転軸線Oを中心にした回転移動によって、所定の位置に到達する。
それからエアシリンダ51が動作して移動電極58がZ方向に移動して、そこに保持されたボルト1の溶着用突起4が鋼板部品5に圧接される。それに引き続いて溶接電流がコンタクタ64から通電され、溶着用突起4が鋼板部品5に溶着される。この溶着後に移動電極58がエアシリンダ51で引き上げられると、ボルト1は鋼板部品5と一体になってそこに残り、溶接が完了する。
なお、上述の動作順序を変更して、移動電極58を所定の位置に移動させてからボルト1を受入孔61内に供給し、それからエアシリンダ51で移動電極58を進出するようにすることも可能である。
また、上述のような動作を順を追って行うために、一般的に採用されているシーケンス制御装置を用いて、各電動モータ,各エアシリンダへの空気切換制御弁および溶接電流の通電などを個々に動作させるのである。
以上に説明した実施例の作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
回転軸55に、移動電極58を備えた回転基部材57と前記回転軸55を回転する回転駆動手段56が結合されることにより形成された電極回転ユニット10が、左右方向,前後方向および回転方向に移動するので、移動電極58を所定の位置に正確に到達させることができ、ボルト1を鋼板部品5の所定の箇所に正しく溶接することができる。そして、回転軸55の向きが前記回転機構9によって変えられるので、移動電極58が進出する方向に回転軸55を存在させることなく、移動電極58を狭い箇所へ到達させることができる。
回転動作をする回転基部材57に移動電極58が取り付けられ、この移動電極58に、ボルト1が保持部60に供給される被供給位置と、ボルト1が鋼板部品5に対向した溶接位置との2位置を付与したので、被供給位置においてボルト1が移動電極58に保持されてから、回転駆動手段56によって溶接位置に回動する。このようにして、前記被供給位置を移動電極58へのボルト供給が最も行いやすい位置とすることができ、このボルト供給が確実に行える。さらに、前記溶接位置を鋼板部品5に対して最も溶接しやすい位置に設定することができ、溶接動作が確実なものとなる。
移動電極58の溶接位置が回転基部材57の回転角度によって設定されるので、溶接動作にとって最適の溶接位置が設定でき、ボルト1の溶接位置が正確で良好な溶接品質が確保できる。
さらに、前記被供給位置は、例えば、溶接位置にある移動電極58が鋼板部品5に向かう進出方向とは逆の側に配置することが望ましい。こうすることにより、溶接位置から離隔した箇所でボルト1が移動電極58に供給されるので、供給に必要な構造物などの配置が行いやすくなる。上述のように、移動電極58の被供給位置が回転基部材57の回転角度によって設定されるので、上述の利点がえられるような最適の部品供給位置が設定でき、円滑で確実な移動電極58へのボルト供給にとって効果的である。
前記移動機構58は、ガイドレール13を含む左右動ガイド手段11とガイドレール21を含む前後動ガイド手段12とをほぼ直角に食い違って交差させて構成されている。
前記左右動ガイド手段11と前記前後動ガイド手段12とをほぼ直角に食い違って交差した状態で組み合わせて、電極回転ユニット10がいわゆるX方向とY方向に移動するものであるから、移動電極58を所定の溶接位置に自由に到達させることができる。
前記回転機構9は、内筒軸33に回転自在な状態で外筒軸35を組み合わせて構成されている。
この回転機構9は、筒状の内筒軸33の外側に外筒軸35を組み合わせて構成されているので、軸の直径を大きく設定することができる。そのために軸心が狂いにくくて支持安定性や軸剛性の高い軸構造で回転機構9が形成されるので、電極回転ユニット10の回転軌跡が所定の軌跡となって、移動電極58の移動や到達箇所が正確に求められる。さらに、筒状の軸構造であるから、電極回転ユニット10に対する各種の導通線65や部品供給ホース48,冷却水ホース81などを筒内部に配置することができて、これらの損傷を回避し溶接装置7をコンパクトにすることが可能となる。
さらに、前記部品供給ホース48が接続されている部品供給管47や被供給位置にある移動電極58の中心軸を、回転機構9の回転軸線Oと同軸にすることにより、部品供給管47と移動電極58との相対位置を常に合致させることができ、移動電極58へのボルト供給が正確に果たされる。上述のように常に同軸状態にしておくことにより、動作機構中に軸心合わせの構造を特別に設ける必要がなく、構造簡素化の点で効果的である。
前記回転機構9と前記電極回転ユニット10との間に、溶接位置におかれた移動電極58を鋼板部品5に到達させるエアシリンダ51が配置されている。
前記エアシリンダ51によって、左右方向,前後方向および回転方向に移動した移動電極58が、そこに保持されたボルト1が鋼板部品5に対向した状態で、鋼板部品5の方へ進出するので、所定の箇所に対して確実なボルト溶接が実現する。つまり、移動電極58が、左右方向であるX方向と、前後方向であるY方向と、鋼板部品5に向かうZ方向との3方向に移動するので、所定の箇所に対して確実なボルト溶接が実現する。
前記前後動ガイド手段12に支持基部材28が取り付けられ、この支持基部材28に前記回転機構9が取り付けられている。
前記支持基部材28は、左右方向および前後方向に移動する状態になっており、この支持基部材28に対して内筒軸33や外筒軸35などからなる回転機構9が取り付けられている。換言すると、前後動ガイド手段12に支持基部材28を介して回転機構9が取り付けられているので、前後動ガイド手段12に対する回転機構9の取付剛性を向上することができる。同時に、回転機構9の取り付け構造が簡素化される。また、支持基部材28に電動モータ39などの回転駆動源を取り付けることにより、回転機構9に対する回転力の入力が行いやすくなる。
前記外筒軸35に前記エアシリンダ51を介して電極回転ユニット10が取り付けられている。
このように外筒軸35と電極回転ユニット10との間にエアシリンダ51が配置してあるので、エアシリンダ51の配置が簡単に行える。
前記被供給位置にある移動電極58と部品供給管47の軸線が、前記回転機構9の回転軸線Oと同軸になっている。
上述のような同軸の状態になっているので、電極回転ユニット10がX方向,Y方向および回転方向に移動をしている最中であっても、部品供給管47から移動電極58へのボルト供給が可能となる。したがって、電極回転ユニット10を所定の位置に移動させることと移動電極58へボルト供給を行うこととが同時に実行できて、溶接時間の短縮にとって効果的である。
部品供給管47と保持部60との間に、ボルト1を一時的に係止する一時係止手段70が配置されている。
一般に、部品供給通路内を移動してくる部品は圧縮空気で搬送されるので、その搬送速度は高速になる。このような速度でボルト1が移動電極58の保持部60に激突すると、受入孔61の耐久性が低下する恐れがある。上述のように、ボルト1をテーパ孔72で一時的に係止してから受入孔61へ移行させるものであるから、受入孔61に対するボルト1の衝撃が緩和され、受入孔61の保持機能が長期にわたって維持できる。
前記回転基部材57および移動電極58の回転軸55とは反対側に、溶接装置7の一時係止手段70が前記鋼板部品5に干渉しないようにするための干渉回避空間82が設けられている。
前記干渉回避空間82を設けたので、鋼板部品5に起立した形状部分5Bがあっても、移動電極58をこの起立した形状部分5Bの直近まで接近させて溶接することができ、ボルト1の溶接可能な領域が拡大する。すなわち、前記回転軸55やそれに関連する構造物が干渉回避空間82に存在していないので、移動電極58を起立形状部分5Bの直近まで接近させることができる。
内筒軸33に固定した支持部材45に部品供給管47とエアシリンダ78が取り付けられ、このエアシリンダ78のピストンロッド79に一時係止手段70が支持されている。したがって、支持部材45を基部材として部品供給管47と一時係止手段70が集約されているので、一時係止手段70のテーパ孔72と部品供給管47との軸心合わせが正確にしかも容易に行える。
支持基部材28の下側に固定した電動モータ39で外筒軸35を回転させる構造であるから、電動モータ39が支持基部材28と回転機構9との間に収まり、外筒軸35の回転駆動構造がコンパクトになる。