以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。図1はドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図、図2はその垂直断面図、図3は図2と直角に断面した概略垂直断面図である。ドラム式洗濯乾燥機1は乾燥機能付きのものであり、略直方体形状の外箱10を有する。外箱10の内部には、水槽20と、洗濯対象であり乾燥対象でもある洗濯物を収容するドラム30とが配置されている。水槽20もドラム30も円筒形で、それぞれ一方の端面に洗濯物投入口21、31を有する。
ドラム30の底部中心からは外向きに軸32が突出する。この軸32が水槽20の底部中心に設けられた軸受22に支えられることにより、ドラム30と水槽20とはドラム30を内、水槽20を外とする同心配置となる。
水槽20とドラム30は、引張コイルバネ16と防振ダンパ17の組み合わせからなるサスペンション機構(図3参照)により、軸線が水平かやや斜めになるように外箱10内で支持される。この実施形態では水槽20とドラム30の軸線は水平面に対し角度θ(例えば15゜)の傾斜をなし、洗濯物投入口21、31の方がやや持ち上がった形になっている。これはドラム30の内部を見やすくするのと、洗濯物の出し入れを容易にするためである。
上記のように水槽20及びドラム30は回転軸が水平線と交差するものであり、その交差角θは0゜〜30゜の範囲が想定されているが、角度範囲に特に限定はない。
外箱10の正面側外壁には、洗濯物投入口21、31と向かい合うように開口11が設けられている。開口11の前面には横開きの扉12が設けられる。外箱10に設けた扉ロック装置(機構は図示しない)により、扉12を閉じた状態でロックすることができる。
軟質合成樹脂又はゴムよりなるドアパッキン13が開口11と洗濯物投入口21とを連結する。ドアパッキン13はドラム30の中で生じる水の飛沫や濡れた洗濯物を出し入れする際の水のしたたり、あるいは洗濯物投入口21からの溢水などが外箱10の内部を濡らすのを防ぐ。
ドアパッキン13の内周面には環状のリップ14が一体形設されていて、これが扉12の内面に設けられた突部15の外周に密着し、ドアパッキン13と扉12の隙間から水が漏れるのを防ぐ。突部15はドラム30の中の洗濯物が洗濯物投入口21からはみ出さないようにする役割を担う。突部15を透明材料で形成し、ドラム30の内部を見通せるようにしておいてもよい。
ドラム30の周壁には多数の脱水孔33が形設されている。この脱水孔33を通じドラム30と水槽20との間を洗濯水が行き来する。ドラム30の内周面には複数のバッフル34が所定間隔で設けられている。バッフル34はドラム30の回転に伴い洗濯物を引っかけては持ち上げ、上の方から落下させる。
ドラム30の外面及び洗濯物投入口31にはバランスウェイト35が取り付けられる。図2には洗濯物投入口31に取り付けられた環状のバランスウェイト35のみ示し、ドラム30の外面に取り付けられたバランスウェイトは図示していない。バランスウェイト35はドラム30が高速回転したときに発生する振動を抑制するものである。
水槽20の底部外面にはドラム駆動モータ40が取り付けられている。ドラム駆動モータ40はダイレクトドライブ形式のものであり、そのロータにドラム30の軸32が連結固定される。なお前記軸受22はドラム駆動モータ40のハウジングに取り付けられ、ドラム駆動モータ40の構成要素の一部となっている。
水槽20の上方の空間には電磁的に開閉する給水弁50が配置されている。給水弁50には水道水などの上水を供給する給水ホース51が接続されている。給水弁50は3連式のものであり、1個の入力ポートと3個の出力ポートを備え、出力ポート毎に独立して給水と止水が可能である。
給水弁50の3個の出力ポートのうち、第1のものと第2のものは、洗濯物投入口31に面する箇所に設けられた給水ノズル52を通じてドラム30に給水するのに用いられる。第1の出力ポートは洗剤投入ボックス54を経由して給水ノズル52に接続されている。第2の出力ポートは図示しない仕上剤投入ボックスを経由して給水ノズル52に接続されている。第3の出力ポートは乾燥運転の際に除湿用の水を供給するのに用いられるものであり、除湿用噴霧ノズル53に接続されている。除湿用噴霧ノズル53については後で説明する。
水槽20の最も低くなった箇所には排水口23が設けられ、ここに排水管60の一端が接続される。排水管60の他端はフィルタケーシング61に接続される。フィルタケーシング61の中には糸屑フィルタ62が挿入されている。糸屑フィルタ62は合成樹脂の網や布により形成され、水中の糸屑を捕集する。フィルタケーシング61の一端は着脱自在なキャップ63で閉ざされており、キャップ63を取り外して糸屑フィルタ62を掃除したり、交換したりすることができる。
フィルタケーシング61には排水管64を接続し、糸屑フィルタ62を通過した排水を外箱10の外に排出する。排水管64には排水ポンプ65が設けられている。
排水管64には、糸屑フィルタ62と排水ポンプ65の間の箇所に循環ポンプ66が設けられている。循環ポンプ66は糸屑フィルタ62を通過した水を戻り管67を通じて給水ノズル52に戻す働きをする。
排水ポンプ65は弁兼用であって、運転停止時には水を通さない。これに対し循環ポンプ66には弁の機能はなく、運転していないかぎり水は自由に下流側へ流れる。
フィルタケーシング61にはエアトラップ61aが設けられる。エアトラップ61aから導出された導圧パイプ68の上端には水位検知手段の構成要素である水位センサ69が設けられている。水位センサ69はエアトラップ61a内の圧力変化に応じて磁性体をコイル内で移動させ、その結果生じるコイルのインダクタンス変化を発振周波数の変化として検出し、この発振周波数の変化から水位を読みとるものである。読みとるのは水槽20の中の洗濯水の水位である。
洗濯・すすぎ・脱水を経た洗濯物はドラム30の中で乾燥される。ドラム30及びこれを囲む水槽20の内部は密閉乾燥室70となる。すなわち洗濯物は、ドラム式洗濯乾燥機1の外から取り入れた空気によってではなく、ドラム式洗濯乾燥機1の内部を循環する空気によって乾燥される。
上記のような循環乾燥を可能にするため、水槽20の外側に循環ダクト71が形成されている。循環ダクト71の一端は水槽20の排水口23の近傍に接続され、他端はドアパッキン13の上部に接続される。循環ダクト71の途中には送風機72と、乾燥用空気の加熱手段であるヒータ73が設けられる。送風機72は密閉乾燥室70の空気を水槽20の底部から吸い込み、吸い込んだ空気をドアパッキン13の上部から密閉乾燥室70に戻す。ヒータ73は送風機72の下流にあって、密閉乾燥室70に吹き込まれる空気を加熱する。
循環ダクト71を流れる空気は除湿手段によって除湿される。本実施形態では除湿用噴霧ノズル53が除湿手段を構成する。循環ダクト71は、水槽20の底部から立ち上がってドアパッキン13の方へと向きを変える屈曲点のあたりで流路断面積が広がっており、この箇所が冷却室74となっている。この冷却室74に除湿用噴霧ノズル53が設置される。
除湿用噴霧ノズル53は水を細かい水滴にして冷却室74に噴霧する。水滴の大きさは、送風機72に吸い込まれることなく重力で落下して水槽20に流入する程度に設定される。
外箱10の前部上面には操作パネル100が設けられる。操作パネル100には表示部と入力キーが配置される。
操作パネル100に近接して、外箱10の内部には制御装置80が配置される。図4に制御装置80の構成を示す。制御装置80の主たる構成要素はマイクロコンピュータ81である。マイクロコンピュータ81の中央演算ユニット82は制御部82aと演算部82bから構成される。制御部82aはROM84に記憶されている命令を取り出すと共にそれを実行する。演算部82bは、命令の実行段階で、制御部82aから与えられる制御信号に基づいて、各種入力機器やRAM83から入力されるデータに対し、二進加算、論理演算、増減、比較などの演算を行う。そのため、ROM84には各種機器を動作させるための手段、各種判断のために設定された条件、各種情報を処理するためのルールなどを記憶させておく。
マイクロコンピュータ81は複数のI/Oポートからなる入出力部85を備える。中央演算ユニット82にはカウント部86及びタイマー87が付属する。カウント部86は運転時間等をカウントし、カウントした時間等はRAM83に一時的に保持される。また、電源回路88とリセット回路89がマイクロコンピュータ81に接続されている。電源回路88は商用電源の電圧を各回路に適した電圧に変換し、電源端子Vdd、Vssを通じて供給する。リセット回路89はマイクロコンピュータ81の初期化を行う。
入出力部85には次の要素が接続される。すなわち入力キー回路90、状態検知回路91、表示部駆動回路92、ブザー駆動回路93、及び負荷駆動回路94である。
入力キー回路90には操作パネル100に配置された入力キー101が接続される。ここでは「入力キー」という言葉を集合名詞として用いており、キーの個数が1個ということではない。状態検知回路91は水位センサ69やアンバランスセンサ95、振動センサ96、温度センサ97といったセンサ類からの信号をデジタル信号に変換する。
アンバランスセンサ95は脱水時のアンバランス状態を検知する。ドラム駆動モータ40の回転数のばらつきによりアンバランス判定を行う方式を採用するときはホールセンサやタコジェネレータをアンバランスセンサ95とすることができる。ドラム駆動モータ40の電流値の変化量でアンバランス判定を行う方式を採用するときはカレントトランスなどをアンバランスセンサ95とすることができる。
振動センサ96は図3に見られるように水槽20の外面に取り付けられて水槽20の振動を検知する。振動センサ96としては複数方向の振動加速度の検知が可能なものを選ぶ。例えば汎用の2軸加速度センサであって、基準電圧2.5V、1G当たり±0.3Vの出力電圧を出力するものが使用可能である。パッケージに収納した2軸加速度センサは、図5に見られるように、水平面内でX方向とY方向の振動加速度を検知できる。
温度センサ97は密閉乾燥室70の内部温度を計測する。温度センサ97としてはサーミスタなどを用いることができる。
表示部駆動回路92は操作パネル100に配置された液晶表示パネルなどからなる表示部102の表示内容を制御する。ブザー駆動回路93は操作パネル100の裏側に設置されたブザー103を鳴動させる。
負荷駆動回路94には次の負荷が接続される。すなわちドラム駆動モータ40、給水弁50、排水ポンプ65、循環ポンプ66、送風機72、及びヒータ73である。
制御装置80は、異常が生じたことを報知手段により使用者に報知する。報知手段を構成するのは表示部101及びブザー102である。ブザー102はキー操作が行われたときや洗濯終了時にも鳴動する。
入力キー回路90と状態検知回路91から出力される信号は、ROM84に記憶されているプログラムに従ってマイクロコンピュータ81で演算処理される。その処理結果に基づきマイクロコンピュータ81は表示部駆動回路92、ブザー駆動回路93、及び負荷駆動回路94に信号を出力し、ドラム式洗濯乾燥機1における一連の工程を実行する。
続いてドラム式洗濯乾燥機1の動作を説明する。まず扉12を開け、ドラム30の中に洗濯物を入れる。洗剤投入ボックス54の中には洗剤を入れる。必要なら仕上剤投入ボックス(図示せず)の中に仕上剤を入れる。
洗剤の投入準備を整えた後、扉12を閉じ、操作パネル100の操作に移る。入力キー101の中の電源キーを「入」にし、スタートキーを押せば、ドラム式洗濯乾燥機1の動作がスタートする。ドラム式洗濯乾燥機1の運転は前もって設定されていた標準運転モード(毛布やウール製品などの特殊な洗濯物以外の洗濯物に関し、量、布質、水位などを自動的に判断し、洗濯から脱水までの自動運転を行うモード)で行われるが、スタートキーを押す前に他の入力キーを操作することにより、標準運転モード以外の任意のモードに設定し直すことも可能である。
入力キー回路90からの信号を受け、マイクロコンピュータ81は負荷駆動回路94に信号を送って負荷の駆動を開始する。まず、水槽20の中の水が所定水位に達したことを水位センサ69が検知するまで給水が行われる。給水は給水弁50の第1の出力ポートを使って行われ、水は洗剤投入ボックス54の中の洗剤を溶かし込みつつ給水ノズル52よりドラム30に注がれる。この時排水ポンプ65は運転停止状態にあり、排水管64を閉ざしている。水位センサ69が設定水位を検知したら給水弁50は閉じる。そして洗い工程が開始される。
最初は「なじませタンブリング」の段階であり、ドラム30が低速で回転する。洗濯物はゆっくりしたペースで水から持ち上げられては再び水の中に落下する。洗濯物のこの動きが「タンブリング」である。「なじませタンブリング」の目的は、洗濯物に水を十分に吸収させることと、洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がすことである。
「なじませタンブリング」の段階が終了したら、ドラム30は「洗いタンブリング」の段階に移る。ドラム30は「なじませタンブリング」の時よりもやや速い速度で回転し、洗濯物を高く持ち上げては落下させる。この落下時の衝撃により洗濯物の繊維の間に洗剤を溶かした水の噴流が発生し、洗濯物が洗われる。
「洗いタンブリング」の間中、循環ポンプ66を運転する。これにより水槽20の中の水は、排水管60→糸屑フィルタ62→循環ポンプ66→戻り管67→給水ノズル52という経路で循環し、水中の糸屑は糸屑フィルタ62により捕捉される。なお、すすぎ工程でも同様に循環ポンプ66の運転を行う。
「洗いタンブリング」の段階が終了した後、「バランス工程」に移る。「バランス工程」ではドラム30がゆるやかに回転する。ドラム30がゆるやかに回転した場合、洗濯物は高い位置に持ち上げられる前に、低い位置でドラム30から離れて落下する。このため洗濯物は、高い位置から落下したときのようにドラム30の内壁にたたきつけられてぺたりとへばりつくようなことがなく、むしろドラム30の内壁を転がるような感じになり、洗濯物同士比較的ふんわりと重なる。この状態だとドラム30が高速の脱水回転を始めたときに洗濯物が四方に分散しやすい。すなわちバランスをとりやすい。このような理由で、ドラム30をゆるやかに回転させて洗濯物をほぐし、脱水回転に備えるのである。
洗い工程終了後、中間脱水工程を経てすすぎ工程に移行する。中間脱水工程では循環ポンプ66が運転を停止し、排水ポンプ65が運転を開始する。排水ポンプ65が運転を開始すると水槽20の中の水は排水管64を通じて機外に排水される。
所定時間が経過し、洗濯物から大部分の水が抜けたところでアンバランス検知が行われる。アンバランス検知では、ドラム30を低速ではあるがその内周面に洗濯物が貼り付いて落下しない程度の回転速度で回転させ、その状態でドラム30の偏芯荷重の大きさを表す偏芯量を検知し、これをアンバランス量とする。アンバランス量が所定値以下ならばドラム30高速回転させても大きな振動は生じないものと判断し、ドラム30を高速回転に移行させる。
ドラム30が高速回転すると、洗濯物が遠心力でドラム30の内周面に押し付けられる。洗濯物に含まれていた洗濯水は遠心力で振り切られ、水槽20の内面を伝って落下し、排水口23より排水ポンプ65へ流れて機外に排水される。中間脱水に割り当てられた時間が経過すると負荷駆動回路94はドラム駆動モータ40と排水ポンプ65を停止し、水槽20にすすぎ水を溜める態勢を整える。
上記のようにすすぎ水を溜める態勢が整ったところですすぎ水を給水する。通常の場合、給水弁50は第1の出力ポートを通じて給水を行う。水槽20の中の水位がためすすぎ用の設定水位に達すると給水は停止され、すすぎ工程が開始される。
最初、洗い工程と同様に「なじませタンブリング」の段階があり、その後「すすぎタンブリング」の段階に移る。ドラム30は洗濯物を水にくぐらせては持ち上げ、落下させる。これにより洗濯物のすすぎが行われる。
「すすぎタンブリング」の段階が終了した後、洗い工程と同様に「バランス工程」を経て脱水工程に移る。脱水工程は複数回(例えば3回)繰り返される予備脱水とその後の本脱水により構成される。
本脱水では当然のことながらドラム30が高速回転し、強い遠心力が長時間洗濯物に加わる。洗濯物がたっぷり水を含んだ状態でいきなり本脱水に突入すると、洗濯物の布地が遠心力で脱水孔33に食い込み、脱水終了後にドラム30が回転停止しても洗濯物がドラム30の内周面に貼り付いたまま落下してこなくなる。この状態で乾燥工程に移行すると、洗濯物の中でもドラム30の中心の空間に面する部位は良く乾燥するが、ドラム30の内面に接している部位は乾燥しないという、乾燥ムラが生じてしまう。
そこで、ドラム30が回転を停止したときに洗濯物がドラム30の内周面から落下する程度の回転速度又は脱水時間に設定した予備脱水を複数回繰り返し、洗濯物の脱水度を徐々に上げて行く。ある程度の脱水度に達したところで本脱水に移行すれば、洗濯物の布地が脱水孔33に食い込むこともなく、ドラム30の回転停止後、洗濯物はドラム30の内周面から落下する。それから乾燥工程を開始すれば、洗濯物はタンブリングしつつ乾燥されることになり、乾燥ムラの問題は発生しない。
すすぎ工程とそれに続く脱水工程は設定回数だけ繰り返される。すすぎ時に洗濯物を仕上剤で仕上げるときは、給水弁50の第2の出力ポートを適宜のタイミングで開き、仕上剤投入ボックスの中の仕上剤をすすぎ水に投入する。
上記説明では水槽20の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を実行するものとしたが、常に新しい水を補給する注水すすぎ、あるいは洗濯物に水のシャワーを注ぎかけるシャワーすすぎを行うこととしてもよい。
最終のすすぎ工程と、それに引き続く脱水工程が終了した後、乾燥工程に移行する。乾燥工程では、ドラム30を回転させつつ送風機72とヒータ73に通電する。この時のドラム回転制御が本発明の眼目であるが、これについては後で詳細に説明する。送風機72は密閉乾燥室70と循環ダクト71を循環する循環気流を形成し、ヒータ73はその循環気流を加熱する。洗濯物は加熱されて温風となった循環気流に曝され、水分を奪われる。
制御装置80は温度センサ97や湿度センサ(図示せず)により密閉乾燥室70内の温度や湿度をモニターし、適宜のタイミングで給水弁50の第3の出力ポートを開いて除湿用噴霧ノズル53に給水する。給水された除湿用噴霧ノズル53は除湿水の噴霧を発生する。除湿水の噴霧は前述のように比較的大きな水滴により構成されるものであり、水滴は循環気流によって送風機72の方に吹きやられることなく落下する。落下する水に循環気流が接触すると循環気流の温度が低下し、循環気流中の水分が凝縮する。凝縮した水分は除湿水と一体化して循環ダクト71を流下し、水槽20に入る。そして排水口23から排水される。
乾燥工程は、所定時間が経過するまで、あるいは循環気流の湿度が所定値まで下がったことを湿度センサが検知するまで、続けられる。乾燥工程が終わったら送風工程に入る。送風工程は乾燥後の洗濯物を冷却するために行われるものであり、洗濯物をタンブリングさせつつ送風機72を運転し、また所定タイミングで除湿用噴霧ノズル53から除湿水を噴霧する。洗濯物が十分に冷えたらドラム式洗濯乾燥機1は停止する。そして扉12のロックが解除され、洗濯物を取り出し得る状態になる。
続いて乾燥工程時の動作制御を図6以下の図に基づき説明する。
最初に、比較対照のため、本発明を実施しなかった場合の動作フロー例を図13に基づき説明する。この動作フローでは、ステップ#301において送風機72、ヒータ73、給水弁50、及び排水ポンプ65がONになる。給水弁50をONにするのは言うまでもなく第3の出力ポートを開いて除湿用噴霧ノズル53に給水するためである。続いてステップ#302でドラム駆動モータ40が低速(例えば50rpm)の回転を始め、低速回転乾燥がスタートする。低速回転乾燥のことを「低速タンブリング」と称する。
低速タンブリングは洗濯物をタンブリングしつつ温風を循環させて行われ、その間密閉乾燥室70の温度と湿度がモニターされる。ステップ#303で乾燥工程を終了しても良いとの判定がなされたら乾燥工程は終了し、送風工程に移行する。
上記のように低速タンブリングを行うだけではなかなか乾燥が進展しない。そこで本発明では、洗濯物がドラム30の内周面に貼り付く回転数(例えば100rpm)以上の回転数でドラム30を回転させる、高速回転乾燥を併用することにより、乾燥のスピードアップと、乾燥に要するエネルギーの節減を図る。高速回転乾燥では洗濯物のタンブリングは生じないのであるが、「低速タンブリング」との対比のため、便宜上高速回転乾燥のことを「高速タンブリング」と称する。
本発明による乾燥工程制御の第1例を図6のフローチャートに基づき説明する。この動作フローにおいて、ステップ#251の内容は図13のステップ#301と同一である。ステップ#252の低速タンブリングはドラム30の回転を所定周期で反転させつつ行われる。所定周期は、例えば50rpmで左回転50秒ON→3秒OFF→50rpmで右回転50秒ON→3秒OFFといった具合に設定される。
ステップ#253では低速タンブリング開始後設定時間が経過したかどうかをチェックする。設定時間が経過したらステップ#254に進み、高速タンブリングをスタートさせる。高速タンブリングは洗濯物がドラム30の内周面に貼り付く回転数以上の回転数でドラム30を回転させつつ温風を循環させて行われる。
洗濯物がドラム30の内周面に貼り付く回転数以上の回転数でドラム30を回転させると、洗濯物が外側に寄るためドラム30の中心に空間が生じる。この空間の存在により温風の循環効率が上がり、洗濯物を乾燥させるのに要するエネルギーが少なくて済む。
高速タンブリングも所定周期でドラム30の回転方向を反転させて行う。所定周期は、例えば200rpmで左回転80秒ON→5秒OFF→200rpmで右回転80秒ON→5秒OFFといった具合に設定される。
高速タンブリングがスタートしたらステップ#255に進む。ステップ#255では水槽20の異常振動を検知する。水槽20の異常振動検知にはアンバランスセンサ95を用いても良いが、アンバランスセンサ95はアンバランス量を一定時間内のドラム30の回転数のバラツキやドラム駆動モータ40の電流値の変化などで検知するため、検知に時間がかかる。そこで、振動センサ96を用いて水槽20の異常振動検知を行う。
振動センサ96は図5におけるX方向とY方向の振動加速度信号を発生する。振動加速度信号は状態検知回路91を介して制御部80に取り込まれ、制御部80はX方向とY方向の振動加速度の合成値より異常判定を行う。一方向の振動だけから異常判定を行う訳ではないので、異常判定を精度良く行うことができる。
異常振動でない場合の波形例を図11に示す。図11では振動が電圧をもって表されている。高速回転を開始することにより、低速回転時より振幅は大きくなるものの、図中破線で示すしきい値を超えるほどではない。従って制御装置80は異常振動との判定を下さない。
異常振動との判定が下されなければステップ#256に進む。ステップ#256では乾燥工程を終了する条件が整ったかどうかをチェックする。所定時間の経過により、あるいは循環気流の湿度が所定値まで下がったことにより、乾燥工程を終了する条件が整ったと判定できたら乾燥工程を終了し、送風工程に移行する。
洗濯物のバランスが悪く、水槽20が左右に大きく揺れて外箱10に接触するような場合、図12のようにX方向の振幅がしきい値を超える。この現象が生じたときは制御装置80は異常振動と判定する。
異常振動と判定したらステップ#255からステップ#257に進む。そして負荷駆動回路94に接続された全負荷を停止させる。ドラム30の回転が停止するので、水槽20が外箱10の内面に衝突して騒音を発したり、ドラム式洗濯乾燥機1全体が定位置から動いたりすることがない。
水槽20が前後に大きく揺れるような場合はY方向の振幅がしきい値を超える。この時も異常振動と判定し、ステップ#255からステップ#257に進む。そして全負荷を停止させる。
本発明による乾燥工程制御の第2例を図7のフローチャートに基づき説明する。この動作フローにおいて、ステップ#261〜#266の内容は第1例のステップ#251〜#256と同一であり、ステップ#267のみ第1例のステップ#257と異なる。
ステップ#265で異常振動と判定したらステップ#267に進む。ステップ#267ではドラム30の回転数をドラム30内で洗濯物がタンブリングする程度にまで低下させる。すなわち低速タンブリングに戻す。低速タンブリングでは洗濯物が絡まりアンバランスな状態になっていても洗濯物がタンブリングしているためドラム30に大きな遠心力がかからず、水槽20が異常振動することはない。
乾燥の進行をステップ#266でチェックする。乾燥工程を終了する条件が整ったと判定できたら乾燥工程を終了し、送風工程に移行する。
この制御では、水槽20が異常振動したときにはドラム30の回転数が低下するので、水槽20が外箱10の内面に衝突して騒音を発したり、ドラム式洗濯乾燥機1全体が定位置から動いたりすることがない。またドラム30の回転数は低下するものの乾燥動作自体は続行されるので、時間の無駄が生じない。
本発明による乾燥工程制御の第3例を図8のフローチャートに基づき説明する。この動作フローにおいて、ステップ#271〜#276の内容は第1例のステップ#251〜#256と同一である。
ステップ#275で異常振動と判定したらステップ#277に進む。ステップ#277では高速タンブリングを停止する。続くステップ#278では停止直前のドラム30の回転方向が右回転であったかどうかをチェックする。右回転でない、すなわち左回転であった場合はステップ#279に進む。右回転であった場合はステップ#280に進む。
ステップ#279に進んだときは、それまでの回転方向と逆の右回転から高速タンブリングを再開する。ステップ#280に進んだときは、それまでの回転方向と逆の左回転から高速タンブリングを再開する。このように、それまでの回転方向と逆方向に回転を開始することにより、絡んだ洗濯物をほぐしてバランスを回復させることができる。そしてステップ#276で乾燥工程を終了する条件が整ったかどうかをチェックし、乾燥工程を終了する条件が整ったと判定できたら乾燥工程を終了し、送風工程に移行する。
停止後に再開する乾燥運転を高速タンブリングでなく低速タンブリングとしてもよい。低速タンブリングにしておけば、洗濯物の絡まりをほぐせなくても異常振動が再発することはない。
本発明による乾燥工程制御の第4例を図9のフローチャートに基づき説明する。この動作フローにおいて、ステップ#281〜#286の内容は第1例のステップ#251〜#256と同一である。
ステップ#285で異常振動と判定したらステップ#287に進む。ステップ#287では高速タンブリングを停止する。続くステップ#288では洗濯物の絡まりをほぐすほぐし運転を行う。ほぐし運転は、例えば回転数50rpmで左回転5秒ON→3秒OFF→50rpmで右回転5秒ON→3秒OFFといった具合に、短い周期で回転方向を反転する運転を2分間継続するものとする。
設定時間が経過したらステップ#284に戻る。そして高速タンブリングを再開する。
このように、水槽20が異常振動したときはドラム30を停止させたうえでドラム30に洗濯物ほぐし動作を行わせることにより、洗濯物のアンバランスをその都度解消し、乾燥工程を継続することができる。
本発明による乾燥工程制御の第5例を図10のフローチャートに基づき説明する。この動作フローにおいて、ステップ#291〜#296の内容は第1例のステップ#251〜#256と同一である。
ステップ#295で異常振動と判定したらステップ#297に進む。そして負荷駆動回路94に接続された全負荷を停止させる。その後ステップ#298に進み、表示部101とブザー102の一方又は両方を用いてエラー報知を行う。これにより、洗濯物のアンバランスにより乾燥工程が中断したことを速やかに使用者に知らせ、回復措置をとらせることができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。なお上記説明中に現れた具体的数値はあくまでも例示であり、発明の内容に限定を加えるものではない。