JP2007137801A - 電荷輸送性化合物、それを用いた電荷輸送性膜及び電界発光素子 - Google Patents

電荷輸送性化合物、それを用いた電荷輸送性膜及び電界発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 塗布法により成膜する際の成膜性と得られる膜の電気特性との双方を高水準で達成することが可能である新規な電荷輸送性化合物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物。
【化1】
Figure 2007137801


[式中、X、X及びXは各々独立にハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、置換もしくは未置換のスチリル基、置換もしくは未置換のブタジエン基、又は、置換もしくは未置換のヒドラゾン基を、R、R及びRは各々独立に炭素数1〜18の1価の有機基を、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を、p1、p2及びp3は各々独立に0〜2の整数を、q1、q2及びq3は0又は1を示し、(q1+q2+q3)≧1の条件を満たす。]
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真感光体、有機電界発光(エレクトロルミネッセンス、EL)素子、メモリー素子、波長変換素子等の有機電子デバイスに用いられる新規な電荷輸送性化合物、それを用いた電荷輸送性膜及び電界発光素子に関する。
近年、有機光機能性材料は、電子写真感光体や、有機EL素子、メモリー素子、波長変換素子等の有機電子デバイスにおいて、生産性、材料設計の容易さ、安全性等の点から注目され、種々の改良が重ねられて実用化されている。
これら有機電子デバイスのうち、有機EL素子は、有機色素等の発光材料を含む発光層や正孔輸送層等の有機層を備えるものである。この有機EL素子は、陰極から電子が、陽極から正孔がそれぞれ発光層に注入されることにより発光層中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光材料が基底状態に戻る際の余分なエネルギーを光として放出する現象を利用して発光を行うものである。
有機EL素子において、素子内の有機層は数十から数百nmと非常に薄く、単位厚さ当たりに加わる電圧は非常に高くなり、数mA/cmという高い電流密度で駆動されるため大量のジュール熱を発生し、有機層のモルホルジー変化を引き起こす問題が生じている。また、長時間の使用による経時変化、酸素を含む雰囲気気体や湿気等による劣化も生じるため、より一層の熱的、化学的な安定性が要求されている。このような要求を満たすために、例えば、下記特許文献1には、アルキルエーテル基を有するテトラアリールベンジジン化合物を電荷輸送材料として用いた有機電界発光素子が提案されている。
また、上述の有機電子デバイスのうち、電子写真感光体としては、導電性支持体上に光導電性の有機材料を用いて感光層を形成した有機感光体が主流となっている。この電子写真感光体の分野では、感光体表面の磨耗を減少させるために機械強度を高くすることが極めて重要であり、種々の表面保護層を設ける提案がなされている。例えば、下記特許文献2及び3には、感光体表面の傷や磨耗の発生を抑制し、感光体の長寿命化を図るために、フェノール樹脂及び電荷輸送物質を含有する保護層を備える感光体が提案されている。
特開2002−75644号公報 特開2002−82469号公報 特開2003−186234号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された電荷輸送材料は、結晶性の高い構造を有しているため、大面積化、コスト等の観点から製造上好ましい塗布方式により薄膜を形成する場合、成膜性が悪く、膜形成が困難であるという問題を有している。また、上記特許文献1に記載された電荷輸送材料は、蒸着によって膜を形成した場合であっても、必ずしも十分な電気特性が得られず、更に、その結晶性の高さから、発光時にジュール熱が発生しやすく、有機EL素子の長期安定性に不安が残る。
一方、上記特許文献2及び3に記載された電子写真感光体は、保護層にフェノール樹脂を含有し、且つ、水酸基を有する電荷輸送材料を含有するものであり、機械的強度、耐久性の向上が図られている。しかしながら、かかる電子写真感光体においては、上記電荷輸送材料の末端水酸基が残留しやすく、電荷移動度、残留電位、環境安定性等の点で十分満足のいく特性が得られ難い。また、保護層を形成するための塗布液は、十分なポットライフが得られ難い。
電子写真感光体における電荷輸送材料としては、できるだけ極性の低い材料を用いることが、電荷トラップが起こりにくいことから好適である。一方、機械強度を向上させる場合には、熱硬化性材料等のように、逆に極性の高い材料を用いることの方が好適である。そのため、両方の特性を得ようとして単純に極性の高い熱硬化性樹脂と極性の低い疎水性の電荷輸送材料とを混合しても、これらは互いに相溶しにくく、均一な膜を得ることが困難となる。また、通常、積層型の感光体上に浸漬塗布によって保護層を設ける場合、下層の感光層をできるだけ侵さないように、塗布液にはアルコールやケトン系溶媒などが多く用いられる。しかしながら、上記特許文献2及び3等に記載されているような従来の電荷輸送材料では、これらの溶媒への溶解性が低いために良好な塗布液を得ることが難しく、塗膜の成膜性が不十分になるという問題がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、塗布法により成膜する際の成膜性と、得られる膜の電気特性との双方を高水準で達成することが可能な、有機EL素子や電子写真感光体等の有機電子デバイスに用いられる新規な電荷輸送性化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる電荷輸送性化合物を用いて形成される電荷輸送性膜及び電界発光素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物を提供する。
Figure 2007137801


[式(I)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、置換もしくは未置換のスチリル基、置換もしくは未置換のブタジエン基、又は、置換もしくは未置換のヒドラゾン基を示し、R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜18の1価の有機基を示し、L、L及びLは各々独立に、アルキレン基を示し、p1、p2及びp3は各々独立に、0〜2の整数を示し、q1、q2及びq3は、0又は1を示し、(q1+q2+q3)≧1の条件を満たす。]
かかる電荷輸送性化合物は、塗布法により成膜する際の成膜性が良好であるとともに、優れた電気特性を有する膜を形成することが可能である。また、本発明の電荷輸送性化合物は、酸性化合物の存在下で熱硬化させることが可能であるという性質を有しており、架橋構造を有する硬化膜を形成することが可能である。したがって、本発明の電荷輸送性化合物は、有機EL素子や電子写真感光体における電荷輸送材料として非常に有用である。
また、上記一般式(I)において、上記R、R及びRは各々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18の1価の炭化水素基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基を示し、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、rは1〜12の整数を示すことが好ましい。更に、上記一般式(I)において、上記R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基を示し、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、rは1〜12の整数を示すことがより好ましい。なお、上記rは、特に1〜4の整数であることが好ましい。
これらの条件を満たす本発明の電荷輸送性化合物は、塗布法により成膜する際の成膜性と得られる膜の電気特性との双方をより高水準で達成することができる。また、上記電荷輸送性化合物は、これを含む塗布液のポットライフを向上させることができる。更に、上記電荷輸送性化合物を用いて膜を形成した場合、得られる膜は環境安定性に優れるとともに、電荷のトラップサイトが十分に低減され、安定して良好な電気特性を得ることが可能となる。また、上記電荷輸送性化合物を用いて膜を形成した場合、得られる膜は結晶性が低くアモルファス状態を呈し、これを有機EL素子に適用した際には、発生するジュール熱により膜のモルホルジー変化が生じる現象が十分に抑制され、十分な素子寿命を得ることが可能となる。更にまた、上記電荷輸送性化合物を電子写真感光体における保護層の構成材料として用いた場合には、上記電荷輸送性化合物によって架橋構造が形成されるため、感光体表面の機械的強度及び環境安定性を向上させて、感光体の寿命を向上させることができる。
また、上記一般式(I)において、上記L、L及びLはメチレン基であることが好ましい。かかる条件を満たす本発明の電荷輸送性化合物は、塗布法により成膜する際の成膜性と得られる膜の電気特性との双方をより高水準で達成することができる。
更に、上記一般式(I)において、上記q1、q2及びq3は、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たすことが好ましい。かかる条件を満たす本発明の電荷輸送性化合物は、塗布法により成膜する際の成膜性と得られる膜の電気特性との双方をより高水準で達成することができる。また、上記電荷輸送性化合物を用いることにより、得られる膜の架橋密度を高めることができ、膜の機械的強度や環境安定性をより向上させることができる。
本発明はまた、上記本発明の電荷輸送性化合物を含む組成物を用いて形成される電荷輸送性膜を提供する。
かかる電荷輸送性膜は、上記本発明の電荷輸送性化合物を用いて形成されていることにより、良好な電気特性を示すことができるとともに、塗布法により成膜された場合には、良好な成膜性を得ることができる。そのため、有機EL素子や電子写真感光体を構成する電荷輸送性膜として非常に有用である。なお、本発明の電荷輸送性膜は、例えば、有機EL素子における正孔輸送層、及び、電子写真感光体における保護層や電荷輸送層として非常に有用である。
また、本発明の電荷輸送性膜は、酸性化合物を更に含む上記組成物を加熱硬化させてなるものであることが好ましい。こうして得られる電荷輸送性膜は、本発明の電荷輸送性化合物により架橋構造が形成されており、成膜性と電気特性との双方を高水準で達成することができるとともに、優れた機械的強度及び優れた環境安定性を得ることができる。
本発明は更に、互いに対向して配置された陽極及び陰極からなる電極対と、該電極対間に設けられた上記本発明の電荷輸送性膜からなる有機層と、を備える電界発光素子を提供する。
かかる電界発光素子は、上記本発明の電荷輸送性膜を有機層として備えることにより、十分に高い輝度と十分に長い寿命とを得ることができる。
本発明によれば、塗布法により成膜する際の成膜性と得られる膜の電気特性との双方を高水準で達成することが可能な、有機EL素子や電子写真感光体等の有機電子デバイスに有用な新規な電荷輸送性化合物を提供することができる。また、本発明によれば、かかる電荷輸送性化合物を用いて形成される電荷輸送性膜及び電界発光素子を提供することができる。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(電荷輸送性化合物)
本発明の電荷輸送性化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有するものである。
Figure 2007137801


[式(I)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、置換もしくは未置換のスチリル基、置換もしくは未置換のブタジエン基、又は、置換もしくは未置換のヒドラゾン基を示し、R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜18の1価の有機基を示し、L、L及びLは各々独立に、アルキレン基を示し、p1、p2及びp3は各々独立に、0〜2の整数を示し、q1、q2及びq3は、0又は1を示し、(q1+q2+q3)≧1の条件を満たす。]
ここで、上記一般式(I)中、R、R及びRは各々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18の1価の炭化水素基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、環を形成してもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの脂肪族炭化水素基であることが好ましく、rは1〜12の整数を示し、1〜4の整数であることが好ましい。
また、上記一般式(I)中、L、L及びLは各々独立に枝分かれしてもよい炭素数1〜18のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。
また、上記一般式(I)中、X、X及びXは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。
更に、上記一般式(I)中、q1、q2及びq3は、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たすことが好ましい。
上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物としてより具体的には、例えば、表1〜9に示す化合物(No.1〜125)が挙げられる。なお、下記化合物No.1〜125は、一般式(I)で示される化合物のX、X、X、R、R、R、L、L、L、p1、p2、p3、q1、q2及びq3を、下記の表に示されるように組み合わせたものである。
Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

Figure 2007137801

次に、上記一般式(I)で表される本発明の電荷輸送性化合物の合成方法について説明する。
上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物は、例えば、ヒドロキシアルキル基を有するトリフェニルアミン化合物を硫酸ジアルキル又はヨウ化アルキル等と反応させてヒドロキシアルキル基をエーテル化する方法により容易に合成可能である。その場合、使用する試薬としては、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等から任意に選ばれたものを用いることができ、ヒドロキシアルキル基に対して1〜3当量、好ましくは1〜2当量用いればよい。また、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、水素化ナトリウム及びナトリウム金属等から任意に選ばれたものを用いることができ、ヒドロキシアルキル基に対して1〜3当量、好ましくは1〜2当量用いればよい。また、反応は、0℃以上、使用溶剤の沸点以下の範囲内の温度で行うことができる。
また、反応の際に使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、それらから選択された単独の溶媒或いは2〜3種の混合溶媒を使用することができる。また、反応によっては、層間移動触媒として、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の4級アンモニウム塩を使用することができる。
(電荷輸送性膜)
本発明の電荷輸送性膜は、上記一般式(I)で表される本発明の電荷輸送性化合物を含む組成物を用いて形成されるものである。電荷輸送性膜は、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含む組成物を蒸着することにより形成することもできるが、上記組成物を塗布し、硬化させることにより形成することが好ましい。
上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の硬化のメカニズムは必ずしも明らかではないが、当該電荷輸送性化合物と酸性化合物とを含む組成物を加熱硬化させることにより、電荷輸送性化合物の架橋反応を進行せしめ、機械的強度に優れた硬化膜(電荷輸送性膜)を形成することが可能である。
電荷輸送性膜は、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物と酸性化合物とを任意の割合で混合してなる組成物を塗布した後、加熱することで形成可能であるが、成膜性の観点から、有機溶媒を含有させた組成物をスピンコーティング法、キャスト法、ディップ法等により塗布した後、加熱硬化させることが好ましい。その際の溶媒としては、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒、又は、それらの混合溶媒を用いることができる。
硬化温度は任意に設定可能であるが、好ましくは、室温から200℃であり、より好ましくは、100℃から150℃である。
硬化の際に用いられる酸性化合物としては、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、フェノール、安息香酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、成膜性や電気特性の観点から、フェノール及びスルホン酸類が好ましい。
加える酸性化合物の量は、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物100質量部に対して0.0001〜300質量部の範囲で任意に設定可能であるが、0.001〜150質量部であることが好ましい。また、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物は、それ単独で硬化膜を形成することも可能であるが、有機溶媒中で種々の結着樹脂に分子分散した組成物を塗布し、乾燥することで均一な塗膜を形成することもできる。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂と上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物とは親和性が強いため、均一な塗膜を容易に形成することが可能である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、結着樹脂中に分子分散する電荷輸送性化合物としては、上記一般式(I)で表わされる本発明の電荷輸送性化合物以外にも、電気特性を制御するために、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの他の電荷輸送性化合物を任意に混合することが可能である。上記組成物における電荷輸送性化合物と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5であることが好ましい。
なお、特に結着樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物の硬化反応も同時に起こり、より機械的強度の優れた電荷輸送性膜を得ることができるため、好ましい。
これらの組成液を塗布する方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング、スピンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
また、上記フェノール樹脂を含む組成物を硬化させてなる電荷輸送性膜は、機械的強度が強く耐刷性に優れるため、種々の有機電子デバイス(例えば、有機電界発光素子、電子写真感光体、メモリー素子、波長変換素子など)に利用することが可能である。
(電界発光素子)
本発明の電界発光素子は、互いに対向して配置された陽極及び陰極からなる電極対と、該電極対間に設けられた上記本発明の電荷輸送性膜からなる有機層と、を備えるものである。ここで、電極対間に設けられる有機層が1層である場合にはその層が、有機層が複数の場合にはそれらのうちの少なくとも1層が、本発明の電荷輸送性膜で構成されている。なお、有機層が1層の場合、当該有機層は発光層であり、有機層が複数の場合、それらのうちの少なくとも1層が発光層であり、他の層は、正孔輸送層又は電子輸送層である。
図1は、本発明の電界発光素子の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した電界発光素子100は、絶縁性基板21上に、透明電極(陽極)22、正孔輸送層23、発光層24、及び背面電極(陰極)26がこの順に形成されたものであり、正孔輸送層23は本発明の電荷輸送性膜からなる層である。
絶縁性基板21は、発光層24からの発光を絶縁性基板21の側から取り出すために、その発光に対する光透過性を有していること(透明又は半透明であること)が好ましく、ガラス基板、プラスチックフィルム等が好適に用いられる。なお、ここでいう光透過性とは、可視領域の光に対する透過率が10%以上であることを意味し、当該透過率は75%以上であることが好ましい。絶縁性基板21の厚みは、0.1〜100μmが好適である。
透明電極22は、後述する背面電極26と共に電極対を構成し、各電極には交流電源が接続される。図1に示した電界発光素子100の場合、透明電極22は正孔輸送層23に正孔を注入する陽極として機能し、他方、背面電極26は発光層24に電子を注入する陰極として機能する。
図1に示した電界発光素子100においては、絶縁性基板21の側から発光が取り出されるため、透明電極22が光透過性を有していることが好ましく、具体的には、可視領域の光に対する透過率が10%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。また、透明電極22としては、正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものがよく、仕事関数が4eV以上のものが好ましい。さらに、透明電極22のシート抵抗は、低いほど好ましく、数百Ω/cm以下が好ましく、10Ω/cm以下がより好ましい。
透明電極22の構成材料としては、具体的には、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化物、並びに金、白金、パラジウム等が挙げられる。透明電極22は、蒸着法、スパッタ法などにより上記材料を用いて形成することができる。透明電極22の厚みは、好ましくは0.01〜0.5μmである。
透明電極22、並びに後述する背面電極26の形状は特に制限されない。例えば、透明電極22及び背面電極26の個々を帯状とし、互いに交差する方向にそれぞれ延在し且つそれぞれ複数のストライプ状に設けてもよい。この場合、透明電極22及び背面電極26の一方が行電極、他方が列電極となり、両者の延在方向が互い直交するように配置することによりマトリクス電極が構成される。このマトリクス電極によって構成される各画素に所定電圧を印可することにより、発光層24が電界発光する。印可電圧は直流電圧又は交流電圧のいずれであってもよい。また、印可電圧の大きさは適宜選定されるが、例えば直流電圧を印可する場合、その電圧は4〜20Vが好ましく、また、電流密度は1〜200mA/cmが好ましい。
正孔輸送層23は、上述の通り、本発明の電荷輸送性膜で構成されており、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含む組成物を用いて形成されている。この正孔輸送層23は、透明電極22(陽極)と発光層24との間に設けられる。これにより、透明電極(陽極)22から注入される正孔が、正孔輸送層23を通って発光層24に移動し、背面電極(陰極)26から発光層24に注入される電子と再結合して電界発光する。
正孔輸送層23は、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物のみで構成されていてもよいが、必要に応じて電子輸送材料や他の正孔輸送材料等を含んでいてもよい。例えば、正孔輸送層23における正孔移動度を調節する点から、正孔輸送層23に更にテトラフェニレンジアミン誘導体を含有させることが好ましい。テトラフェニレンジアミン誘導体の含有量は、正孔輸送層23の固形分全量を基準として、1〜50質量%であることが好ましい。
また、成膜性の向上、ピンホールの防止等の点から、正孔輸送層23に適切な樹脂(ポリマー)及び/又は添加剤を加えてもよい。樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂などが挙げられる。また、添加剤としては、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
正孔輸送層23がフェニレンジアミン誘導体、樹脂又は添加剤を更に含有する場合、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の含有量は、正孔輸送層23の固形分全量を基準として、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
正孔輸送層23の形成は、真空蒸着などの蒸着法、又は、塗布法により行うことができる。ここで、大面積化、コスト等の観点から、正孔輸送層23の形成は、塗布法により行うことが好ましく、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含む組成物を用いることにより、形成される正孔輸送層23の成膜性を良好なものとすることができる。
塗布法として、より具体的には、スピンコーティング法、キャスト法、ディップ法等などが挙げられる。また、塗布法において用いられる組成物中の溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、正孔輸送層23を塗布法により形成するための組成物中には、本発明の電荷輸送性膜の説明において上述した酸性化合物を含有させることが好ましい。なお、加える酸性化合物の量は、本発明の電荷輸送性膜の説明において上述した通りである。
上記組成物を塗布して得られる塗膜の硬化温度は任意に設定可能であるが、好ましくは室温から200℃であり、より好ましくは100℃から150℃である。
正孔輸送層23の厚みは、材料に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.03〜0.2μmである。正孔輸送層23の厚みが0.01未満であると、ピンホールが発生しやすくなり、発光素子においてダークスポットが発生しやすくなる傾向にある。また、正孔輸送層23の厚みが2μmを超えると、正孔輸送層23の内部抵抗が上昇し、駆動電圧が大きくなる傾向にある。
発光層24は、発光材料(発光ドーピング材料等)を含んで構成される。発光材料としては、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が好適であり、例えば、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
発光層24に含まれる発光材料の好適な例としては、下記式(II−1)〜(II−15)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2007137801

Figure 2007137801

また、有機電界発光素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料をホスト材料とし、そのホスト材料と異なる色素化合物をゲスト材料としてドーピングしてもよい。ゲスト材料のドーピングの割合は、発光層24中の固形物全量を基準として、好ましくは0.001〜40質量%、より好ましくは0.001〜10質量%である。
ゲスト材料としての色素化合物は、発光材料との相容性がよく、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が好ましく、具体的には、DCM(4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン))誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン等が用いられる。色素化合物の好適な具体例としては、下記式(III−1)〜(III−4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2007137801

また、背面電極26から発光層24への電子注入特性及び電子輸送性を向上させる点から、発光層24に他の電子輸送材料を含有させることができる。電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が用いられる。電子輸送材料の好適な具体例としては、下記式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2007137801

また、電子輸送材料としては、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と強い電子相互作用を抑制する観点から、下記式(V)で表わされる化合物を用いることが好ましい。
Figure 2007137801

また、発光層24には、更に必要に応じて、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物や他の正孔輸送材料等を含有させてもよい。
発光層24の形成は、真空蒸着などの蒸着法、あるいは上記材料を含む塗布液を用いた塗布法により行うことができる。
発光層24に用いられる発光材料としての有機低分子化合物は、真空蒸着法により、又は低分子と樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥することにより、良好な薄膜形成が可能であるものが好ましい。また、塗布法による場合、使用される樹脂としては、正孔輸送層23の説明において例示した樹脂を適用することができる。また、塗布法による場合、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン等を溶剤として用いることができる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
発光層24の層厚は、材料に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.03〜0.2μmである。発光層24の厚みが0.01未満であると、ピンホールが発生しやすくなり、発光素子においてダークスポットが発生しやすくなる傾向にある。また、発光層24の厚みが2μmを超えると、正孔輸送層23の内部抵抗が上昇し、駆動電圧が大きくなる傾向にある。
また、発光層24の形成工程において、発光材料へのゲスト材料のドープは以下の方法により行うことができる。すなわち、真空蒸着によって発光層24を形成する場合は、共蒸着によってドーピングを行い、塗布法により発光層24を形成する場合は、ホスト材料を含む塗布液(溶液又は分散液)中にゲスト材料を混合することでドーピングを行う。
背面電極26は、発光層24に電子を注入する陰極として機能するものである。背面電極26は、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属又は合金が好ましく使用される。特に好ましい材料としては、マグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム及びこれらの合金である。
電界発光素子100においては、電極22、26間に所定の電圧を印可することにより、陽極22から正孔輸送層23に正孔が、陰極26から発光層24に電子がそれぞれ注入される。そして、正孔と電子とが発光層24中で再結合することにより、発光層24中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光材料が基底状態に戻る際の余分なエネルギーが光として放出される(電界発光現象)。発光層24からの発光は、正孔輸送層23及び透明電極22を通って絶縁性基板21側の面から取り出される。このとき、正孔輸送層23が上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含有することにより、発光時の安定性及び保存安定性が十分に高められ、長期間又は繰り返し駆動した場合であっても十分な発光強度を得ることが可能となる。
図2は、本発明の電界発光素子の他の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2に示した電界発光素子110は、絶縁性基板21上に、透明電極22、電荷輸送性を有する発光層25、及び背面電極26がこの順に形成されたもので、発光層25は発光材料と上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物とを含有してなる本発明の電荷輸送性膜で構成されている。なお、電界発光素子110においては、発光層25が上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を必須成分として含有する点、並びに透明電極22と発光層25との間に正孔輸送層23が設けられていない点が異なるだけで、他の構成は図1を用いて説明した電界発光素子100と同様である。以下、発光層25について詳述する。
発光層25は、上述の通り、発光材料と上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物とを含有する組成物を用いて形成された層であり、正孔及び電子の双方に対する電荷輸送性を有する。発光材料としては、電界発光素子100の発光層24に含まれる発光材料と同様のものが挙げられ、中でも、上記式(II−1)〜(II−15)で表される化合物が好ましく使用される。
発光材料の含有量は、発光層25中の固形分全量を基準として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の含有量は、発光層25中の固形分全量を基準として、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜99質量%である。
また、電界発光素子100における発光層24の場合と同様に、発光層25の発光材料に、その発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。
発光層25は、上述の通り、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含有するために、正孔及び電子の双方に対する電荷輸送性を有するが、発光層25に注入される正孔と電子のバランスを調節するために、当該アリールアミン化合物以外の電子輸送材料を更に含有してもよい。電子輸送材料としては、上記式(IV−1)〜(IV−3)で表される化合物、並びに上記式(V)で表される化合物が挙げられ、中でも、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物との電子相互作用を抑制する点から、式(V)で表される化合物が好ましい。電子輸送材料の含有量は、発光層25中の固形分全量を基準として、1〜50質量%であることが好ましい。
また、発光層25は、電荷移動度を調節するために、テトラフェニレンジアミン誘導体を更に含有してもよい。また更に、電界発光素子100における正孔輸送層23と同様に、適切な樹脂、添加剤を更に含有させることができる。発光層25に用いる樹脂としては、正孔輸送層23の場合に例示したものが適用できる。
電子輸送性を有する発光層25の厚みは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.01〜0.8μmである。発光層25の厚みが1μmを超えると、内部抵抗が上昇し、駆動電圧が大きくなる傾向にある。また、発光層25の厚みが0.01μm未満であると、ピンホールが発生しやすくなり、素子においてダークスポットを発生しやすくなる傾向にある。
電界発光素子110においては、電極22、26間に所定の電圧を印可することにより、陽極22からの正孔と、陰極26からの電子とが発光層25にそれぞれ注入される。そして、正孔と電子とが発光層25中で再結合することにより、発光層24中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光材料が基底状態に戻る際の余分なエネルギーが光として放出される(電界発光現象)。発光層25からの発光は、透明電極22を通って絶縁性基板21側の面から取り出される。このとき、発光層25が上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を含有することにより、発光時の安定性及び保存安定性が十分に高められ、長期間又は繰り返し駆動した場合であっても十分な発光強度を得ることが可能となる。
なお、本発明は上述した電界発光素子100及び110に何ら限定されるものではない。例えば、図1、2に示した電界発光素子はいずれも正孔輸送層23並びに発光層24又は25が単層構造のものであるが、本発明の電界発光素子においては正孔輸送層及び/又は発光層を多層構造としてもよい。
また、図1、2に示した電界発光素子はいずれも発光層24又は25と背面電極26とが密接して配置されたものであるが、本発明の電界発光素子は発光層と背面電極との間に電子輸送層を更に備えていてもよい。電子輸送層を形成することは、電界発光素子の耐久性及び発光効率が向上する点で好ましく、特に、発光層24又は25の発光材料として蒸着法又は塗布法による成膜性が低い材料を用いた場合、あるいは発光層24又は25の電子注入特性又は電子輸送性が低い場合に、これらを改善する手段として非常に有効である。
電子輸送層の構成材料としては、上述した電子輸送材料が好適に使用される。電子輸送層の厚みは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.01〜0.8μmである。電子輸送層の厚みが1μmを超えると、内部抵抗が上昇し、駆動電圧が大きくなる傾向にある。また、電子輸送層の厚みが0.01μm未満であると、ピンホールが発生しやすくなり、素子においてダークスポットを発生しやすくなる傾向にある。
また、素子の水分や酸素による劣化を防ぐために、背面電極26側の面上に保護層を更に設けてもよい。保護層の構成材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO、TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法などが適用可能である。保護層の厚みは、好ましくは0.01〜10μmである。
また、上述した電界発光素子100及び110では、絶縁性基板21に近い側に配置される透明電極22を陽極とし、背面電極26を陰極としたが、本発明では、背面電極又は透明電極のいずれを陽極としてもよい。例えば、絶縁性基板上に、陰極、発光層、正孔輸送層、陽極をこの順序で積層し、陰極を透明電極とすることにより、発光層からの発光を絶縁性基板の側から取り出すことができる。
(電子写真感光体)
次に、本発明の電荷輸送性膜を電子写真感光体に適用する場合の例について説明する。
図3は、電子写真感光体の好適な一例を示す模式断面図である。図3に示した電子写真感光体200は、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性支持体3上に、下引層4、電荷発生層1、電荷輸送層2及び保護層5が順次積層された構造を有するものである。電子写真感光体200においては、電荷発生層1、電荷輸送層2及び保護層5により感光層6が構成されている。そして、電子写真感光体200においては、保護層5が本発明の電荷輸送性膜からなる層となっている。以下、電子写真感光体200を構成する各要素について説明する。
導電性支持体3としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。
また、電子写真感光体200がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性支持体3表面は、中心線平均粗さRaが0.04〜0.5μmとなるように粗面化することが好ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるため干渉防止効果が不十分となる傾向にあり、Raが0.5μmを超えると、画質が粗くなる傾向にある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止のための粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて導電性支持体3に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性支持体3を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましい。
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極として電解質溶液中で陽極酸化することにより、アルミニウム表面に酸化膜を形成する処理である。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、0.3〜15μmであることが好ましい。膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が不十分となる傾向にある。また、膜厚が15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
また、導電性支持体3には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10〜11質量%の範囲、クロム酸が3〜5質量%の範囲、フッ酸が0.5〜2質量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5〜18質量%の範囲が好ましい。処理温度は42〜48℃が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3〜15μmが好ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬すること、又は90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚は、0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
下引層4は、例えば、有機金属化合物及び/又は結着樹脂を含有して構成される。
有機金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等が挙げられる。有機金属化合物としては、特に、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
結着樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることができる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
また、下引層4には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させることもできる。
また、下引層4中には、低残留電位化や環境安定性の観点から、電子輸送性顔料を混合/分散することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。
また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、結着樹脂等で表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引層の強度を低下させ、塗膜欠陥を生じる原因となるため、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下で使用される。
下引層4中には、電気特性の向上や光散乱性の向上等の目的により、各種の有機化合物の微粉末若しくは無機化合物の微粉末を添加することができる。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が有効である。添加微粉末の粒径は、0.01〜2μmのものが好ましい。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引層4の固形分の総質量に対して、質量比で10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
また、下引層4中には、電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。
下引層4は、上記各構成材料を含有する下引層形成用塗布液を用いて形成される。
下引層形成用塗布液の混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、振動ボールミル、コロイドミル、ペイントシェーカー、超音波等を用いる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や結着樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであればよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、下引層4を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
塗布後、塗膜を乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った導電性支持体3は、その欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引層4を形成することが好ましい。
下引層4の膜厚は、好ましくは0.01〜30μm、より好ましくは0.05〜30μm、さらに好ましくは0.1〜30μm、特に好ましくは0.2〜25μmである。
電荷発生層1は、電荷発生材料を含有して、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有して構成される。
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛等の無機顔料等既知のもの全て使用することができる。電荷発生材料としては、380nm〜500nmの露光波長の光源を用いる場合には無機顔料が好ましく、700nm〜800nmの露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、又は特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
電荷発生層1は、上記電荷発生材料を用いて蒸着により、又は上記電荷発生材料及び結着樹脂を含有する電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷発生層形成用塗布液は、電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)が、10:1〜1:10であることが好ましい。また、これらを分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。この際、分散によって該の結晶型が変化しない条件が必要とされる。なお、上記の分散法のいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。
さらに、この分散の際、粒子を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
また、これらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、電荷発生層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
電荷発生層1の膜厚は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜2.0μmである。
電荷輸送層2は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して構成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(VI−1)、(VI−2)又は(VI−3)で表される化合物が好ましい。
Figure 2007137801

上記式(VI−1)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、nは1又は2を示す。また、Ar11及びAr12は置換もしくは未置換のアリール基、−C−C(R18)=C(R19)(R20)、又は、−C−CH=CH−CH=C(Ar)を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R18、R19、R20は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、又は、置換もしくは未置換のアリール基を示し、Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。
Figure 2007137801

上記式(VI−2)中、R15、R15’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、を示す。また、R16、R16’、R17及びR17’は同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、−C−C(R18)=C(R19)(R20)、又は、−C−CH=CH−CH=C(Ar)を示し、R18、R19、R20は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、又は、置換もしくは未置換のアリール基を示し、Arは、置換もしくは未置換のアリール基を示す。n及びnは0〜2の整数を示す。
Figure 2007137801

上記式(VI−3)中、R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−C−CH=CH−CH=C(Ar)を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R22及びR23はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材などの高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層2は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて構成される。電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法を使用できる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層1上に塗布する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
電荷輸送層2の膜厚は、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
保護層5は、電子写真感光体200における最表面層であり、表面層の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、且つ、トナーの転写効率を上げるために設けられる層である。この保護層5は、本発明の電荷輸送性膜からなる層であり、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物を含む組成物を用いて形成されている。
保護層5には更に、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いることもできる。
また、結着樹脂としては、フェノール樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びポリベンズイミダゾール樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、特に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂が機械的強度の点から好ましく用いられる。
フェノール樹脂としては、レゾルシン、ビスフェノールなど、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノールなどの水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZなどのビスフェノール類、ビフェノール類など、フェノール構造を有する化合物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等を酸触媒、又は、アルカリ触媒下で反応させ、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類、トリメチロールフェノール類のモノマー、及びそれらの混合物、又はそれらをオリゴマー化されたもの、およびモノマーとオリゴマーの混合物などが使用される。このうち、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子がオリゴマー、それ以下のものがモノマーである。
上記酸触媒としては、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、リン酸などが挙げられる。また、アルカリ触媒としては、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)、Ba(OH)、CaO、MgO等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物、アミン系触媒、酢酸亜鉛および酢酸ナトリウムなどの酢酸塩類などが挙げられる。アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。なお、塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる場合が多いため、減圧で留去させるか、酸で中和するか、シリカゲルなどの吸着剤や、イオン交換樹脂などと接触させることにより不活性化、あるいは、除去することが好ましい。
メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂としては、メチロール基がそのままのメチロールタイプ、メチロール基がすべてアルキルエーテル化されたフルエーテルタイプ、あるいは、フルイミノタイプ、メチロールとイミノ基の混合タイプなど種々のものが使用できるが、塗布液の安定性の観点から、エーテルタイプのものが好ましい。
ウレタン樹脂としては、多官能イソシアネート、イソシアヌレート、あるいは、これらをアルコールや、ケトンでブロックしたブロックイソシアネートなどが使用でき、塗布液の安定性の観点から、ブロックイソシアネート、あるいは、イソシアヌレートが好ましく、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物と混合、塗布後、加熱架橋することで保護層を形成することができる。
シリコーン樹脂としては、後述の一般式(VII)、あるいは、一般式(VIII)で表わされる化合物などから誘導される樹脂を使用できる。
上述の樹脂は1種を単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物と、かかる樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、保護層5に、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を所望の割合で混合した場合には、電荷輸送層2との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥などを抑制することができる。
保護層5には、保護層5の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(VII)で表わされる化合物を添加することもできる。
Si(R30(4−c) (VII)
[式(VII)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換もしくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、cは1〜4の整数を示す。]
上記一般式(VII)で表わされる化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、保護層5には、その強度を高めるために、下記一般式(VIII)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R(3−a) (VIII)
[式(VIII)中、Bは2価の有機基を示し、Rは水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示す。]
上記一般式(VIII)で表わされる化合物として具体的には、下記化合物(VIII−1)〜(VIII−16)を好ましいものとして挙げることができる。
Figure 2007137801

また、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、トルク低減のため、保護層5には下記一般式(IX)で表される繰り返し構造単位を持つ環状化合物又はその誘導体のうちの少なくとも一種を含有させることが好ましい。
Figure 2007137801


上記式(IX)中、A及びAはそれぞれ独立に1価の有機基を示す。
上記一般式(IX)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
また、保護層5には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層5の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
更に、保護層5には、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を改善するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、併用してもよい。微粒子の一例として、ケイ素含有微粒子を挙げることができる。ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径1〜100nm、好ましくは10〜30nmの酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。最表面層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から保護層5の全固形分中の0.1〜50質量%の範囲、好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、平均粒子径1〜500nm、好ましくは10〜100nmの、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。電子写真感光体における保護層5中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層5の全固形分中の0.1〜30質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される様な、上記フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層5を形成するための組成物中に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、あるいは加圧下などで含浸処理してもよい。
また、保護層5には、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。保護層5にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」以上三共ライフテック社製、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上、旭電化社製、「スミライザーTPS」以上住友化学社製、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」以上住友化学社製、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」以上、旭電化社製が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
保護層5は、上述した各構成材料を含む組成物を硬化させることにより形成することができる。
架橋樹脂として、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などを用いる場合、これらの樹脂から合成時の触媒を除去するために、該樹脂をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿などの処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)などの陰イオン交換樹脂が挙げられる。
また、無機固体としては、Zr(OPCHCHSOH)、Th(OPCHCHCOOH)などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類など複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;LiSO、MgSOなどの金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;LiNO、Mn(NOなどの金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
また、保護層5を形成するための組成物には、必要に応じて有機溶剤を含有させることができる。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等の他、種々の溶媒が挙げられる。なお、電子写真感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系又はケトン系溶剤、あるいは、それらの混合系溶剤を用いることが好ましく、また、沸点が50〜150℃のものを用いることが好ましい。これらは任意に混合して使用することができる。溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物が析出したり、所望の膜厚が得られにくくなるため、保護層5を形成するための組成物中に含まれる固形分の合計1質量部に対して、0.5〜30質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましい。
さらに、保護層5を形成するための組成物に含まれる、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物や架橋樹脂等を硬化させるために、本発明の電荷輸送性膜の説明において上述したような酸性化合物等の硬化触媒を使用することが好ましい。かかる硬化触媒としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類などの光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び、無水カルボン酸化合物などが好ましく挙げられる。
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF、FeCl、SnCl、AlCl、ZnCl等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの触媒の使用量は特に制限されないが、組成物中に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることが特に好ましい。
また、硬度、接着性、可とう性などの膜特性の調整のために、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルビスフェノール類、フェノールエポキシ樹脂などのエポキシ含有化合物、テレフタル酸、マレイン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸など、あるいは、それらの無水物を添加してもよい。添加量としては、上記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物1質量部に対し、0.05〜1質量部、好ましくは0.1〜0.7質量部で用いられる。
保護層5を形成するための組成物を電荷輸送層2上に塗布する場合、塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、塗布後、塗膜を乾燥させることで保護層5が形成する。
なお、塗布の際には1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
また、組成物を架橋させて保護層5を形成する際、硬化温度は100〜170℃とすることが好ましく、100〜160℃とすることがより好ましい。また、硬化時間は、好ましくは30分〜2時間、より好ましくは30分〜1時間であり、加熱温度を他段階に変化させてもよい。
架橋反応を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのいわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気下で行うことにより、電気特性の悪化を防止することができる。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気下よりも硬化温度を高く設定することができ、その際の硬化温度は好ましくは100〜180℃、より好ましくは110〜160℃である。また、硬化時間は、好ましくは30分〜2時間、より好ましくは30分〜1時間である。
保護層5の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。
また、保護層5の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈してよい。
長寿命感光体で表面への付着が課題となる酸化劣化物などは、例えばNOやオゾンガスが感光層内部に浸透し、感光層の一部が化学的に劣化することなどによって生じると考えられる。従って、最表面層のガス透過が起こりにくいほど、すなわち、酸素透過係数が低いほど酸化劣化物などは生じにくく、高画質、長寿命に有利である。一方、酸化劣化物などが生じてしまった場合、これらが電子写真感光体最表面に付着したままの状態だと、画質に悪影響を及ぼす。従って、これら酸化劣化物などを、クリーニングブレード、ブラシなど何らかの方法で除去する必要があるが、長期に渡ってクリーニング部材の機能を安定化させるためには、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑材を付与することが効果的である。
感光層6には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、感光層6を構成する電荷発生層1、電荷輸送層2又は保護層5の少なくとも一層に添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
以上、本発明の電荷輸送性膜を用いた電子写真感光体の好適な一例について説明したが、上記のものに限定されるものではない。例えば、図3に示した電子写真感光体200は、導電性支持体3上に、下引層4、電荷発生層1、電荷輸送層2及び保護層5が順次積層された構造を有しているが、電子写真感光体は、図4に示す電子写真感光体210のように、下引層を有していなくてもよい。また、図5に示す電子写真感光体220のように、保護層を有していなくてもよく、図6に示す電子写真感光体230のように、下引層及び保護層の両方を有していなくてもよい。また、図3〜6に示した電子写真感光体において、電荷発生層1と電荷輸送層2の積層順序はいずれが上層であってもよい。
なお、電子写真感光体220及び230のように電子写真感光体が保護層を有していない場合、電荷輸送層2を本発明の電荷輸送性膜からなる層とすることができる。このとき、電荷輸送層2に使用する電荷輸送材料としては、上記一般式(I)で表わされる本発明の電荷輸送性化合物を単独で用いてもよいが、本発明の電荷輸送性化合物と電荷輸送層2の説明において上述した電荷輸送材料とを組み合わせて用いてもよい。
また、電子写真感光体200及び210のように電子写真感光体が保護層5を有する場合であっても、保護層5の代わりに電荷輸送層2を本発明の電荷輸送性膜からなる層とすることができる。また、保護層5及び電荷輸送層2の両方を本発明の電荷輸送性膜からなる層とすることもできる。
また、電子写真感光体は、図7に示す電子写真感光体240のような、いわゆる単層型感光体であってもよい。この場合、感光層は、電荷発生材料と結着樹脂とを含有して形成される単層型感光層を有することとなり、この単層型感光層が本発明の電荷輸送性膜からなる層となる。ここで、電荷発生材料としては、機能分離型感光層における電荷発生層に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層及び電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として好ましくは10〜85質量%、より好ましくは20〜50質量%である。また、単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5〜50質量%とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとすることがさらに好ましい。
(画像形成装置)
図8は、上記電子写真感光体を備える画像形成装置の好適な一例を示す模式図である。図8に示す画像形成装置300は、画像形成装置本体(図示せず)に、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ30と、露光装置40と、転写装置50と、中間転写体60とを備える。なお、画像形成装置300において、露光装置40はプロセスカートリッジ30の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置50は中間転写体60を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体60はその一部が電子写真感光体7に当接可能に配置されている。
プロセスカートリッジ30は、ケース内に電子写真感光体7とともに帯電装置31、現像装置35、クリーニング装置37及び繊維状部材(歯ブラシ形状)39を、取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
ここで、帯電装置31は、電子写感光体7を接触方式により帯電させるものである。また、現像装置35は、電子写真感光体7上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
以下、現像装置35に使用されるトナーについて説明する。かかるトナーとしては、平均形状係数(ML/A)が100〜150であることが好ましく、100〜140であることがより好ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が2〜12μmであることが好ましく、3〜9μmであることがより好ましい。このような平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
現像装置35に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
現像装置35に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、平均粒径としては0.1〜10μmの範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲である。
現像装置35に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子等を加えることができる。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
また、上記無機微粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
粒子径としては、平均粒子径で好ましくは5nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜800nm、さらに好ましくは5nm〜700nmでのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機微粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
クリーニング装置37は、繊維状部材(ロール形状)37aと、クリーニングブレード37bとを備える。
クリーニング装置37は、繊維状部材37a及びクリーニングブレード37bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材37aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材37aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材37aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等や、トレシー(東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状又は絨毯状に植毛したブラシ状のもの等を挙げることができる。また、繊維状部材37aとしては、上述したものに、導電性粉末やイオン導電剤を配合して導電性を付与したり、繊維一本一本の内部又は外部に導電層が形成されたもの等を用いることもできる。導電性を付与した場合、その抵抗値としては繊維単体で1×10〜1×10Ωのものが好ましい。また、繊維状部材37aの繊維の太さは、好ましくは30d(デニール)以下、より好ましくは20d以下であり、繊維の密度は好ましくは2万本/inch以上、より好ましくは3万本/inch以上である。
クリーニング装置37には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共にクリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが好ましい。
例えば、繊維状部材37aとしてロール状のものを用いる場合、金属石鹸、ワックス等の潤滑性物質と接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが好ましい。クリーニングブレード37bとしては、通常のゴムブレードが用いられる。このようにクリーニングブレード37bとしてゴムブレードを使用する場合には、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することは、ブレードの欠けや磨耗を抑制することに特に効果的である。
以上説明したプロセスカートリッジ30は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
露光装置40としては、帯電した電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置40の光源としては、半導体レーザ、LEDアレイ等の光源を用いることができるが、記録速度の点から、マルチビーム方式の面発光レーザーを用いることが好ましい。
転写装置50としては、電子写真感光体7上のトナー像を被転写媒体(中間転写体60)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
中間転写体60としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体60の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。
なお、上述した電子写真感光体を使用する際には、プリント用紙からの紙粉やタルク等が発生し、それが電子写真感光体へ付着し易く、また上記電子写真感光体は耐磨耗性が高いため、紙粉やタルク等の除去が困難である。従って、紙粉やタルク等の付着を防止し、安定した画像を得るために、中間転写体60を用いることが好ましい。
また、被転写媒体とは、電子写真感光体7上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体7から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体60を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
図9は、画像形成装置の他の一例を示す模式図である。図9に示す画像形成装置310は、電子写真感光体7が画像形成装置本体に固定され、帯電装置32、現像装置35及びクリーニング装置37がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、帯電装置32は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えている。
画像形成装置310においては、電子写真感光体7とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置32、現像装置35及びクリーニング装置37が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
上述した電子写真感光体は耐磨耗性に優れるため、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置32、現像装置35又はクリーニング装置37をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
なお、画像形成装置310は、帯電装置32、現像装置35及びクリーニング装置37がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置300と同様の構成を有している。
図10は、画像形成装置の他の一例を示す模式図である。画像形成装置320は、プロセスカートリッジ30を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置320では、中間転写体60上に4つのプロセスカートリッジ30がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置320は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置300と同様の構成を有している。
タンデム方式の画像形成装置320では、各色の使用割合により各電子写真感光体の磨耗量が異なってくるために、各電子写真感光体の電気特性が異なってくる傾向がある。これに伴い、トナー現像特性が初期の状態から除々に変化してプリント画像の色合いが変化し、安定な画像を得ることができなくなる傾向にある。特に、画像形成装置を小型化するために、小径の電子写真感光体が使用される傾向にあり、30mmφ以下のものを用いたときにはこの傾向が顕著になる。ここで、電子写真感光体に、上述した電子写真感光体の構成を採用すると、その直径を30mmφ以下とした場合にもその表面の磨耗が十分に抑制される。したがって、上述した電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置に対して特に有効である。
図11は、画像形成装置の他の一例を示す模式図である。図11に示した画像形成装置330は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置330は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される感光体ドラム7を備えており、感光体ドラム7の上方には、感光体ドラム7の外周面を帯電させる帯電装置32が設けられている。
また、帯電装置32の上方には面発光レーザーアレイを露光光源として備える露光装置40が配置されている。露光装置40は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体ドラム7の外周面上を感光体ドラム7の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した感光体ドラム7の外周面上に静電潜像が形成される。
感光体ドラム7の側方には現像装置35が配置されている。現像装置35は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器35Y,35M,35C,35Kが設けられている。現像器35Y,35M,35C,35Kは各々現像ローラ36を備え、内部に各々Y,M,C,Kの色のトナーを貯留している。
画像形成装置330でのフルカラーの画像の形成は、感光体ドラム7が4回転する間に行われる。すなわち、感光体ドラム7が4回転する間、帯電装置32は感光体ドラム7の外周面の帯電、露光装置30は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザービームを感光体ドラム7の外周面上で走査させることを、感光体ドラム7が1回転する毎にレーザービームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また現像装置35は、現像器35Y,35M,35C,35Kの何れかの現像ローラ36が感光体ドラム7の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、感光体ドラム7の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、感光体ドラム7の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、感光体ドラム7が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、感光体ドラム7が1回転する毎に、感光体ドラム7の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、感光体ドラム7が4回転した時点で感光体ドラム7の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
また、感光体ドラム7の略下方には無端の中間転写ベルト60が配設されている。中間転写ベルト60はローラ61,63,65に巻掛けられており、外周面が感光体ドラム7の外周面に接触するように配置されている。ローラ61,63,65は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト60を図11矢印B方向に回転させる。
中間転写ベルト60を挟んで感光体ドラム7の反対側には転写装置(転写器)50が配置されており、感光体ドラム7の外周面上に形成されたトナー像は転写装置50によって中間転写ベルト60の画像形成面に転写される。
また、感光体ドラム7を挟んで現像装置35の反対側には、感光体ドラム7の外周面に潤滑剤供給装置39及びクリーニング装置37が配置されている。感光体ドラム7の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト60に転写されると、潤滑剤供給装置39により感光体ドラム7の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域がクリーニング装置37により清浄化される。
中間転写ベルト60よりも下方側にはトレイ70が配置されており、トレイ70内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。トレイ70の左斜め上方には取り出しローラ71が配置されており、取り出しローラ71による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対73、ローラ75が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ71が回転されることによりトレイ70から取り出され、ローラ対73、ローラ75によって搬送される。
また、中間転写ベルト60を挟んでローラ65の反対側には転写装置52が配置されている。ローラ対73、ローラ75によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト60と転写器52の間に送り込まれ、中間転写ベルト60の画像形成面に形成されたトナー像が転写装置52によって転写される。転写装置52よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着装置54が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置54によって溶融定着された後に画像形成装置330の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
4,4’−ビスヒドロキシメチルトリフェニルアミン100gをテトラヒドロフラン600mlに溶解し、カリウムt−ブトキシド120gを加えて1時間撹拌した。これに、ヨウ化メチル160gをテトラヒドロフラン80mlに溶解させた溶液を、2時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、2時間よく撹拌したのち、分液ロートに移し、トルエン500mlを加え、蒸留水500mlで4回洗浄した。トルエン層を乾燥し、溶媒を留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記式(X)で表わされる電荷輸送性化合物(A)102gを得た。得られた電荷輸送性化合物(A)のIRスペクトルを図12に示す。なお、IRスペクトルは、赤外分光光度計(HORIBA FT−730、堀場製作所社製)にて測定した。
Figure 2007137801

[実施例2]
4−ヒドロキシメチルトリフェニルアミン100gをテトラヒドロフラン600mlに溶解し、カリウムt−ブトキシド60gを加えて1時間撹拌した。これに、ヨウ化メチル80gをテトラヒドロフラン40mlに溶解させた溶液を、2時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、2時間よく撹拌したのち、分液ロートに移し、トルエン500mlを加え、蒸留水500mlで4回洗浄した。トルエン層を乾燥し、溶媒を留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記式(XI)で表わされる電荷輸送性化合物(B)82gを得た。得られた電荷輸送性化合物(B)のIRスペクトルを図13に示す。なお、IRスペクトルは、赤外分光光度計(HORIBA FT−730、堀場製作所社製)にて測定した。
Figure 2007137801

[実施例3]
ガラス基板上にITO膜を備えるITOガラス基板を用意し、そのITO膜を2mm幅の短冊状にエッチングしてITO電極(陽極)を形成した。このITOガラス基板を、イソプロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
次に、ITOガラス基板のITO電極が形成されている面上に、昇華精製した銅フタロシアニンを真空蒸着することにより厚さ0.015μmの薄膜を形成し、次いで、上記電荷輸送性化合物(A)を蒸着することにより厚さ0.050μmの薄膜を形成した。これにより、ITO電極上に2層構造の正孔輸送層を形成した。
次に、上記正孔輸送層上に、発光材料としての上記式(II−1)で表される化合物(Alq)を蒸着することにより厚さ0.060μmの発光層を形成した。
更に、上記発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.13μm厚の短冊状のMg−Ag電極(陰極)を形成し、有機電界発光素子を得た。なお、ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの延在方向が直交するように形成した。得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
[実施例4]
実施例3と同様にして、ITO電極の形成を行った。
次に、ITOガラス基板のITO電極が形成されている面上に、昇華精製した銅フタロシアニンを蒸着することにより厚さ0.015μmの薄膜を形成した。次いで、上記電荷輸送性化合物(A)1質量部とp−トルエンスルホン酸0.005質量部とをトルエン50質量部に溶解させた塗布液をスピンコートし、窒素雰囲気下、120℃で10分間加熱硬化することにより、厚さ0.050μmの薄膜を形成した。これにより、ITO電極上に2層構造の正孔輸送層を形成した。
その後、実施例3と同様にして発行層及びMg−Ag電極を形成し、有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
[実施例5]
電荷輸送性化合物(A)の代わりに、電荷輸送性化合物(B)を用いた以外は実施例4と同様にして、有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
[比較例1]
電荷輸送性化合物(A)の代わりに、下記式(XII)で表わされる化合物を用いた以外は実施例3と同様にして、有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
Figure 2007137801

[比較例2]
電荷輸送性化合物(A)の代わりに、上記式(XII)で表わされる化合物を用いた以外は実施例4と同様にして有機電界発光素子の作製を行ったが、上記式(XII)で表わされる化合物を含む塗布液の塗布時に膜が濁り成膜できなかったため、有機電界発光素子が得られなかった。
[比較例3]
電荷輸送性化合物(A)の代わりに、下記式(XIII)で表わされる化合物を用いた以外は実施例4と同様にして有機電界発光素子の作製を行ったが、下記式(XIII)で表わされる化合物を含む塗布液の塗布時に膜が濁り成膜できなかったため、有機電界発光素子が得られなかった。
Figure 2007137801

<成膜性の評価>
実施例3〜5及び比較例1〜3の各有機電界発光素子について、正孔輸送層を成膜できたかどうか、及び、成膜できた場合には成膜後の膜表面の状態を光学顕微鏡により観察して欠陥の有無を確認し、これらを成膜性として評価した。その結果を表11に示す。
<素子特性の評価>
実施例3〜5及び比較例1の各有機電界発光素子について、以下のようにして素子特性を評価した。
真空中(0.133Pa)で、ITO電極をプラス(陽極)、Mg−Ag電極をマイナス(陰極)とし、これらの間に直流電圧を印加して発光させ、そのときの最高輝度及び発光色を評価した。それらの結果を表11に示す。
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の測定を以下のようにして行った。すなわち、初期輝度が50cd/mとなるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命とした。また、このときの駆動電流密度を素子寿命と共に表11に示す。
Figure 2007137801

表11に示した結果から明らかなように、本発明の有機電界発光素子(実施例3〜5)は、本発明の電荷輸送性化合物を用いた正孔輸送層の成膜性が良好であるとともに、比較例1の有機電界発光素子と比較して、優れた電気特性を得ることができ、モルホルジー変化がなく長寿命な素子を形成可能であることが確認された。
[実施例6]
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4質量部を溶解させたn−ブチルアルコール170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を混合攪拌し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法により、ホーニング処理した直径30mmアルミニウム基材上に塗布し、140℃で1時間の硬化処理を行い、膜厚1.4μmの下引層を形成した。
次に、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン15質量部、バインダー樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−ブチルアセテート300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて3時間分散した。得られた分散液を電荷発生層形成用塗布液として上記下引層上に浸漬塗布し、室温で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
さらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万)6質量部とを、クロルベンゼン80質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃、40分間の乾燥を行うことにより、膜厚21μmの電荷輸送層を形成した。
次に、上記電荷輸送性化合物(A)6質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)4質量部、レゾール型フェノール樹脂(PR−50404、住友ベークライト社製)2質量部、メチルフェニルポリシロキサン0.05質量部、及び、安息香酸0.5質量部を、n−ブタノール15質量部及びメチルエチルケトン5質量部に溶解させて保護層形成用塗布液を得た。得られて塗布液を浸漬コーティング法で上記電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分間乾燥させて、膜厚3μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
[実施例7]
実施例6と同様にして、アルミニウム基材上に下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成した。
次に、上記電荷輸送性化合物(A)6質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)4質量部、変性エポキシ樹脂(アデカレジンEP−49−28、旭電化工業社製)2質量部、メチルフェニルポリシロキサン0.05質量部、及び、ドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量部を、n−ブタノール15質量部及びメチルエチルケトン5質量部に溶解させて保護層形成用塗布液を得た。得られて塗布液を浸漬コーティング法で上記電荷輸送層上に塗布し、140℃で40分間乾燥させて、膜厚2μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
[実施例8]
実施例6と同様にして、アルミニウム基材上に下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成した。次に、上記電荷輸送性化合物(A)に代えて、電荷輸送性化合物(B)を用いた以外は実施例6と同様にして、上記電荷輸送層上に膜厚3μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
[比較例4]
実施例6と同様にして、アルミニウム基材上に下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成した。
次に、上記電荷輸送性化合物(A)に代えて、下記式(XIV)で表わされる電荷輸送性化合物を用いた以外は実施例6と同様にして、上記電荷輸送層上に膜厚3μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
Figure 2007137801

[比較例5]
実施例6と同様にして、アルミニウム基材上に下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成した。
次に、上記電荷輸送性化合物(A)に代えて、上記式(XIII)で表わされる電荷輸送性化合物を用いた以外は実施例6と同様にして、上記電荷輸送層上に膜厚3μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
[比較例6]
実施例6と同様にして、アルミニウム基材上に下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成した。
次に、上記電荷輸送性化合物(A)に代えて、下記式(XV)で表わされる電荷輸送性化合物を用いた以外は実施例6と同様にして、上記電荷輸送層上に膜厚3μmの保護層を形成した。これにより、電子写真感光体を得た。
Figure 2007137801

<成膜性の評価>
実施例6〜8及び比較例4〜6の各電子写真感光体について、保護層表面の状態を光学顕微鏡により観察して欠陥の有無を確認し、これを成膜性として評価した。その結果を表12に示す。
<電子写真感光体の電子写真特性評価試験>
実施例6〜8及び比較例4〜6の各電子写真感光体をレーザープリンタ−スキャナー(商品名:XP−15の改造機、富士ゼロックス社製)に搭載し、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
(初期の電気特性評価)
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面電位[V]を測定した。次に、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に50mJ/mの光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の残留電位[V]を測定した。
ここで、残留電位の値(絶対値)が小さいほど、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表12に示す。
(環境安定性評価)
上記の操作を高温高湿(28℃、85%RH)、低温低湿(10℃、15%RH)の2つの異なる環境下で行い、それぞれ露光後の残留電位(高温高湿での残留電位をA[V]、低温低湿での残留電位をB[V]とする)測定を行い、これらの異なる環境間での残留電位の変動量ΔV[V]を求めた。この変動量ΔVの値が小さいほど、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性が高いと評価される。これらの結果を表12に示す。
Figure 2007137801

表12に示した結果から明らかなように、本発明の電荷輸送性化合物を用いた電子写真感光体(実施例6〜8)によれば、他の電荷輸送性化合物を用いた電子写真感光体(比較例4〜6)と比較して、本発明の電荷輸送性化合物を含む電荷輸送性膜としての保護層の成膜性が良好であり、残留電位や環境変動が少なく良好な電気特性が得られることが確認された。
本発明の電界発光素子の好適な一実施形態を示す模式断面図である。 本発明の電界発光素子の他の好適な一実施形態を示す模式断面図である。 電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。 電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。 電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。 電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。 電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。 画像形成装置の一例を示す模式図である。 画像形成装置の他の一例を示す模式図である。 画像形成装置の他の一例を示す模式図である。 画像形成装置の他の一例を示す模式図である。 実施例1で得られた電荷輸送性化合物(A)のIRスペクトルを示す図である。 実施例2で得られた電荷輸送性化合物(B)のIRスペクトルを示す図である。
符号の説明
1…電荷発生層、2…電荷輸送層、3…導電性支持体、4…下引層、5…保護層、6…感光層、7…電子写真感光体、21…絶縁性基板、22…透明電極(陽極)、23…正孔輸送層、24、25…発光層、26…背面電極(陰極)、100、110…電界発光素子、200,210,220,230,240…電子写真感光体。

Claims (8)

  1. 下記一般式(I)で表わされる電荷輸送性化合物。
    Figure 2007137801


    [式(I)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、置換もしくは未置換のスチリル基、置換もしくは未置換のブタジエン基、又は、置換もしくは未置換のヒドラゾン基を示し、R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜18の1価の有機基を示し、L、L及びLは各々独立に、アルキレン基を示し、p1、p2及びp3は各々独立に、0〜2の整数を示し、q1、q2及びq3は、0又は1を示し、(q1+q2+q3)≧1の条件を満たす。]
  2. 前記一般式(I)において、前記R、R及びRは各々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18の1価の炭化水素基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基を示し、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、rは1〜12の整数を示す、請求項1記載の電荷輸送性化合物。
  3. 前記一般式(I)において、前記R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又は、−(CH−O−Rで表わされる基を示し、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、rは1〜12の整数を示す、請求項1又は2記載の電荷輸送性化合物。
  4. 前記一般式(I)において、前記L、L及びLがメチレン基である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電荷輸送性化合物。
  5. 前記一般式(I)において、前記q1、q2及びq3が、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たす、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電荷輸送性化合物。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電荷輸送性化合物を含む組成物を用いて形成される、電荷輸送性膜。
  7. 酸性化合物を更に含む前記組成物を加熱硬化させてなる、請求項6記載の電荷輸送性膜。
  8. 互いに対向して配置された陽極及び陰極からなる電極対と、
    該電極対間に設けられた請求項6又は7記載の電荷輸送性膜からなる有機層と、
    を備える電界発光素子。
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