JP2007137701A - モールドプレス成形用光学ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上であり、高い耐候性を有し、しかも、モールドプレス成形に適した鉛不含有のモールドプレス成形用光学ガラスを提供することである。
【解決手段】本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上、軟化点が650℃以下の鉛を含まないモールドプレス成形用光学ガラスであって、△T={成形温度(101.0ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.20%以下、同粉末法耐酸性での重量減が1.2%以下であり、B23−La23−ZnO−Gd23系ガラスからなることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明はモールドプレス成形用光学ガラスに関するものである。
CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラや一般のカメラの撮影用レンズ等の光学レンズ用に、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上の光学ガラスが使用されている。従来、このようなガラスとしてSiO2−PbO−R'2O(R'2Oはアルカリ金属酸化物)を基本とした鉛含有ガラスが広く使用されていたが、近年では環境上の問題から、B23−RO(ROはアルカリ土類金属酸化物)−La23系ガラス等の非鉛系ガラスに切り替えられつつある。(例えば特許文献1、2参照)
特開平1−286934号公報 特開2000−16831号公報
これらの光ピックアップレンズや撮影用レンズは、次のようにして作製される。
まず溶融ガラスをノズルの先端から滴下し一旦液滴状ガラスを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。または溶融ガラスを急冷鋳造し一旦ガラスブロックを作製し、同じく研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。次に、精密加工を施した金型中で、プリフォームガラスを軟化状態となるまで加熱するとともに、加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる。この成形方法はモールドプレス成形法と呼ばれ、広く用いられている。このようにして光ピックアップレンズや撮影用レンズが作製される。
しかしながら、B23−RO(ROはアルカリ土類金属酸化物)−La23系ガラスは、ガラスの屈折率を高めるために、アルカリ土類金属酸化物(RO)を多量に含有しており、ガラスの切削、研磨、洗浄工程におけるガラス成分の研磨洗浄水や各種洗浄溶液中への溶出によって表面の変質が起こる等、耐候性が悪く、最終製品においても、高温多湿状態に長時間晒されるとガラスの表面が変質し、信頼性を損なうという問題がある。
また、上記のB23−RO−La23系ガラスは、軟化点(Ts)が高く、650℃を超えることもある。モールドプレス成形法では、硝材が軟化状態になるように軟化点付近まで加熱し成形するため、プレス金型は軟化点付近の温度まで昇温される。硝材の軟化点が高い場合、金型も高温となり、金型の酸化などの劣化が促進され成形精度が低下したり、ガラス成分の揮発による金型汚染が生じたり、ガラスと金型が融着しやすくなる等の問題が生じる。ガラスの軟化点を低下する目的で、この系のガラスにアルカリ金属酸化物(R’2O)をさらに添加することも考えられるが、R’2Oを含有させると、更に、耐候性が悪化する。
本発明の目的は、上記した問題を改善し、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上であり、高い耐候性を有し、しかも、モールドプレス成形に適した鉛不含有のモールドプレス成形用光学ガラスを提供することである。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上、軟化点が650℃以下の鉛を含まないモールドプレス成形用光学ガラスであって、△T={成形温度(101.0ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.20%以下、同粉末法耐酸性での重量減が1.2%以下であり、B23−La23−ZnO−Gd23系ガラスからなることを特徴とする。
また、本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、質量%で、B23 24〜45%、La23 5〜35%、ZnO 10〜30%、Ta25 0〜10%、Li2O 2〜10%、Na2O 0〜5%、K2O 0〜5%、R’2O(R’はLi、Na、Kの一種以上) 0〜15%、SiO2 6〜20%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、BaO 0〜10%、SrO 0〜15%、RO(RはMg、Ba、Srの一種以上) 0〜25%、ZrO2 0〜5%、Y23 0〜15%、Gd23 0.5〜20%、Sb23 0〜1%含有し、実質的にTiO2、Nb25、CaOを含まないことを特徴とする。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラや一般のカメラの撮影用レンズ等の光学レンズに使用される1.65〜1.75の屈折率(nd)、45以上のアッベ数(νd)を有している。また、軟化点が低くガラス成分が揮発し難いため、成形精度の低下および金型の劣化や汚染が生じない。しかも、作業温度範囲が広く、プリフォームガラスの量産性に優れるとともに、耐候性が良好であるため、製造工程や製品の使用中に物性の劣化や表面の変質を起こすことがない。それ故、モールドプレス成形用光学ガラスとして好適である。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、ガラスの屈折率(nd)が1.65〜1.75であり、アッベ数(νd)が45以上であるため、色分散が少なく、高機能で小型の光学素子用の光学レンズとして使用することができる。
また、ガラスの軟化点(Ts)が650℃以下(好ましくは625℃以下、より好ましくは615℃以下)であるため、低温でのプレス成形が可能となり、金型の劣化を抑制することができる。また、ガラス成分の揮発による金型汚染やガラスと金型との融着を抑えることができる。
また、ガラスの作業温度範囲(△T)が20℃以上(好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上)であるため、溶融、成形工程での失透ブツや脈理の発生を抑え、プリフォームガラスの量産を可能にすることができる。
また、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.20%以下(好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%以下)、同粉末法耐酸性での重量減が1.2%以下(好ましくは1.1%以下、より好ましくは1.0%以下)であるため、高い耐候性を有する。
さらに、本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、B23−La23−ZnO−Gd23系ガラスを基本組成とし、鉛を含まないガラスである。より具体的には、質量%で、B23 24〜45%、La23 5〜35%、ZnO 10〜30%、Gd23 0.5〜20%の基本組成を有するガラスである。一般に、B23−RO−La23系ガラスでは、高い屈折率を得るために、アルカリ土類金属酸化物であるROを多量に含有させており、この系のガラスの耐候性を低下させる原因となっている。そこで、本発明のガラスでは、屈折率を高める成分であるGd23を含有させて、ROの含有量を抑えることで、高い屈折率を維持しながら、ガラスの耐候性を改善している。また、ガラスの耐候性を改善したことにより、ガラスの軟化点を低下させる成分であるR’2O(アルカリ金属酸化物)を必要量添加することを可能にしている。
各成分の範囲を上記のように限定した理由を述べる。
23はガラスの骨格成分であり、耐失透性の向上に効果がある。また、アッベ数を高めたり、軟化点を低下させる成分である。また、モールドプレス成形におけるガラスと金型の融着防止にも効果がある。その含有量は24〜45%、好ましくは24.5〜35%、より好ましくは26.5〜30である。B23が45%より多くなると、ガラスの化学的耐久性が低下し、耐候性が著しく悪化する。一方、24%より少なくなると、耐失透性が低下し作業温度範囲を十分に確保できなくなる。
La23は、十分な作業温度範囲を確保するための成分であり、また、アッベ数を低下させることなく屈折率を高める効果がある。さらに、軟化点の上昇を抑え、また耐候性を向上させる効果もある。但し、高い屈折率を得るために多量に添加すると失透性が増大するため、Y23等によりその一部を置換する必要がある。その含有量は5〜35%、好ましくは7〜27%、より好ましくは9〜21%である。La23が35%より多くなると、失透性が強くなり、液相温度が上昇するため、作業温度範囲が著しく狭くなり、作業性が低下する。一方、5%より少なくなると、屈折率が低下したり、耐候性が悪化する。
ZnOは屈折率を高めるとともに、ガラスの失透を抑制する効果がある。その含有量は10〜30%、好ましくは10〜27%、より好ましくは11〜25%である。ZnOが30%より多くなると、ガラスの分相性が強くなり、均質なガラスが得難くなる。一方、10%より少なくなると、屈折率が低下したり、失透を抑える効果が得難くなり、液相温度が上昇し、作業温度範囲が狭くなる。
Gd23は屈折率を高める成分であるため、多量のROを含有させる必要がなくなり耐候性の向上に効果がある。また、Gd23にも耐候性を向上させる効果がある。また、ガラスの失透を抑制する効果があり、作業温度範囲を拡大することができる。その含有量は0.5〜20%、好ましくは1〜15%、さらに好ましくは6〜11%である。Gd23が20%より多くなると、ガラスの分相性が強くなり、均質なガラスが得難くなる。一方、0.5%より少なくなると上記の効果が得難くなる。
本発明のガラスは、軟化点を低下させるために、R’2O(R’はLi、Na、Kの一種以上)を含有させることができる。本発明においては、Gd23の導入により、ROの含有量を抑えることが可能となり、耐候性が改善されているため、R’2Oを含有しても実用上使用可能な耐候性を維持することができる。
R’2Oは軟化点を低下させるための成分であり、その合量は2〜15%、好ましくは2.5〜10%、より好ましくは3〜8%である。R’2Oが15%より多くなると、耐候性が著しく悪化したり、モールドプレス成形時にガラスからR’2Oが揮発してガラスと金型が融着しやすくなる。また、液相温度が著しく上昇して作業温度範囲が狭くなり、量産性に悪影響を与える。一方、2%より少なくなると、ガラスの軟化点を低下させる効果が得難くなる。
R’2Oの中でもLi2Oが最も軟化点を低下させる効果が大きい。その含有量は2〜10%、好ましくは2.5〜8%、さらに好ましくは3〜6%である。但し、Li2Oは失透性が高く、液相温度が高くなって作業性を悪化させる傾向があり、また、プレス成形時に金型との融着を引き起こしやすくする成分でもあるため、10%以下に制限される。
Na2O、K2Oは軟化点を低下させる効果があるが、多量に含有すると溶融時にB23‐R’2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長してしまう。また、モールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。このため、Na2Oの含有量は0〜5%、好ましくは0〜4%に制限される。同様にK2Oの含有量は0〜5%、好ましくは0〜4%に制限される。
SiO2はガラスの骨格を構成する成分であり、ガラスの失透を抑制し、作業温度範囲を広げる効果がある。また耐候性を向上させる効果もある。その含有量は6〜20%、好ましくは7〜18%、さらに好ましくは8〜15%である。SiO2が20%より多くなると、屈折率が著しく低下したり、軟化点が高くなる傾向にある。一方、6%より少なくなると上記の効果が得難くなる。
さらに本発明のガラスは、Al23、MgO、BaO、SrO、ZrO2、Y23、Ta25、Sb23等を含むことができる。
以下に上記成分について詳細に説明する。
Al23は骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる効果がある。その含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%、より好ましくはは0〜4%である。Al23は失透傾向を増大させる傾向があるが、10%以下であれば失透し難く、また溶融性が悪化しないため脈理や泡がガラス中に残ることがなく、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たすことができる。
RO(RはMg、Ba、Sr)は融剤として作用するとともに、B23−La23−ZnO−Gd23系ガラスにおいて、アッベ数を低下させずに屈折率を高める効果がある。その合量は0〜25%、好ましくは3〜20%、さらに好ましくは7〜18%である。ROが合量で25%を越えると、プリフォームガラスの溶融、成形工程中に失透ブツが析出し易く、液相温度が上がって作業温度範囲が狭くなり、量産化し難くなる。さらにガラスから研磨洗浄水や各種洗浄溶液中への溶出が激しくなり、また高温多湿状態でのガラス表面の変質が顕著となり、耐候性が著しく悪化する。
MgOは屈折率を高める成分であるが、ガラスの分相傾向を強めるため、その含有量は10%以下、特に5%以下に制限することが好ましい。
BaOは屈折率を高める成分であり、またこのガラス系においては軟化点を低下させる効果もある。しかし、高温多湿状態ではガラス表面に析出することがあるため、多量に含有させると最終製品の耐候性を著しく損なうことになる。それ故、その含有量は0〜10%、特に1〜9%、さらには2〜8%であることが好ましい。
SrOは屈折率を高める成分であり、他のRO成分に比べて液相温度を下げる効果があるため作業温度範囲を広げることができる。但し、SrOは、他のRO成分と同様、多量に含有すると耐候性が低下して製品の品質を著しく損なうことになる。SrOの含有量は0〜15%、特に1〜10%、さらには5〜9%であることが好ましい。
ZrO2は屈折率を高め、耐候性を向上させる成分である。また、中間酸化物としてガラスを形成するため、耐失透性を向上させる効果もある。但しZrO2の含有量が多くなると軟化点が上昇し、プレス成形性が悪化する。ZrO2の含有量は0〜5%、好ましくは0.5〜4%、より好ましくは1〜3%である。
23は、アッベ数を低下することなく屈折率を高める成分である。このためLa23との置換により耐失透性を改善することができる。また、適量添加することによって、B23−La23−ZnO系ガラスに起こりやすい分相を抑制する効果がある。その含有量は0〜15%、特に1〜10%、さらに2〜8%であることが好ましい。Y23が15%を超えるとガラスが失透しやすくなり、作業温度範囲が狭くなる。
Ta25は、屈折率を高める効果があり、その含有量は0〜10%、特に0.5〜5%、さらに1〜3%であることが好ましい。Ta25が10%より多くなるとアッベ数が低下し、所望の光学特性が得難くなる。
清澄剤としてSb23を添加することもできる。尚、ガラスに対する過度の着色を避けるため、Sb23の含有量は1%以下とする。
尚、TiO2、Nb25はガラスの屈折率を高める成分であるが、アッベ数を低下させたり、紫外域での吸収が大きく、390〜440nmでの透過率が減少し、短波長用レンズとしての使用に支障をきたすため、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。
また、CaOは屈折率を高める成分であるが、高温多湿環境下では炭酸塩を形成し、製品表面の曇りという不良を引き起こすため、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。
さらに、PbO及びAs23は環境上の理由から、Ag及びハロゲン類は光可逆変色キャリヤーとなるため、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。
尚、本発明における「実質的なガラスへの導入を避ける」とは、含有量が0.1%以下であることを意味する。
また、本発明のモールドプレス成形用光学ガラスにおいて、モールドプレス成形時におけるガラスと金型の融着をより防止するには、上記特徴に加えて、ガラスの塩基性度を11以下(好ましくは9.5以下)にすることが望ましい。
尚、本発明において、塩基性度とは、(酸素原子のモル数の総和/陽イオンのField Strengthの総和)×100として定義され、Field Strength(以下F.S.と表記する)は[数1]により求められる。
Zはイオン価数、rはイオン半径を示している。尚、本発明におけるZ、rの数値は表1の値(『科学便覧基礎偏 改訂2版(1975年 丸善株式会社発行)』に記載された値)を用いた。本発明者の知見によれば、塩基性度が低いほど、金型と融着しにくくなる。以下にガラスの塩基性度が融着を支配する機構について説明する。
ここでSiO2を例に挙げて、ガラスの塩基性度の求め方を示す。
まず、酸素原子のモル数を求める。1molのSiO2中には、2molの酸素原子が含まれる。よって、この酸素の原子数2molに、ガラス組成中のSiO2のモル%を掛けることで、ガラス中のSiO2が持つ酸素原子のモル数が求められる。同様に各成分の酸素原子のモル数を求め、その合計を「酸素原子のモル数の総和」とする。
次にF.S.を求める。陽イオンSi4+はZ=4、r=0.4であるため、F.S.=25となる。Si4+はSiO2に1mol含まれているのでガラス中のF.S.は、25×1(mol)×(組成中のSiO2のモル%)として求められる。
これを各成分について求め、その合計を「陽イオンのF.S.の総和」とする。
そして「酸素原子のモル数の総和」を「陽イオンのF.S.の総和」で割った値に100をかけたものを「ガラスの塩基性度」とする。
次にガラスの塩基性度が融着を支配する機構について説明する。
ガラスの塩基性度はガラス中の酸素の電子がガラス中の陽イオンにどのくらい引きつけられているかを示す指標になる。塩基性度の高いガラスではガラス中の陽イオンによる酸素の電子の引きつけが弱い。したがって、塩基性度の高いガラスは、電子を求める傾向の強い陽イオン(金型成分)と接した際、塩基性度の低いガラスに比べガラス中に金型からの陽イオンの侵入が起きやすい。金型成分である陽イオンがガラス中へ侵入(拡散)すると、界面付近のガラス相中の金型成分濃度が増加する。これによりガラス相と金型相の組成差が減少するため、両者の間の親和性が増し、ガラスが金型に濡れやすくなる。このような機構により、ガラスと金型が融着すると考えられる。従って塩基性度が低くなるにしたがって、ガラス中に金型成分が侵入しにくくなり、ガラスと金型は融着しなくなる。
具体的にはガラスの塩基性度が11以下、好ましくは9.5以下であれば融着が起こらなくなると考えられる。ガラスの塩基性度が9.5を超えると金型と融着する傾向が現れ、11を超えるとガラスと金型が融着して製品の面精度が損なわれ、量産性が顕著に悪化する傾向にある。
次に、本発明のガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等を製造する方法を述べる。
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉中で溶融する。
次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下し一旦液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。または溶融ガラスを急冷鋳造し一旦ガラスブロックを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。
続いて、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスに入れて軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる。この成形方法はモールドプレス成形法と呼ばれ、広く用いられている。このようにして光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることができる。
以下、本発明のモールドプレス成形用光学ガラスを実施例に基づいて詳細に説明する。
表2及び3は、本発明の実施例(試料No.1〜10)を示している。
各試料は次のようにして調製した。まず表に示す組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1250℃で2時間溶融した。溶融後、融液をカーボン板上に流しだし、更にアニール後、各測定に適した試料を作製した。
得られた試料について、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、軟化点(Ts)、成形温度(TW)、液相温度(TL)、作業温度範囲(△T)、耐水性及び耐酸性を測定した。また塩基性度を算出した。それらの結果を各表に示す。
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜10の各試料は、屈折率が1.6500〜1.7359、アッベ数が48.3以上、軟化点が625℃以下である。また作業温度範囲が24℃以上であり、作業性が優れている。しかも耐水性は重量減が0.10%以下、耐酸性は重量減が1.10%以下であり、耐候性が良好である。また塩基性度が8.07以下であり、金型との融着が起こりにくいと考えられる。
尚、屈折率(nd)は、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。
アッベ数(νd)は、上記したd線の屈折率と水素ランプのF線(486.1nm)、同じく水素ランプのC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd−1)/(nF−nC)]式から算出した。
軟化点(Ts)は、日本工業規格R−3104に基づいたファイバーエロンゲーション法によって測定した。
作業温度範囲(△T)は、次のようして求めた。まず、成形温度(TW)を白金球引上げ法により測定し、101.0ポイズに相当する温度として求めた。また、液相温度(TL)は、最大粒径が297〜500μmの粉末状になるよう試料を粉砕、分級してから白金製のボートに入れ、温度勾配を有する電気炉に24時間保持した後、空気中で放冷し、光学顕微鏡で失透の析出位置を求めることで測定した。このようにして得られた成形温度(TW)と液相温度(TL)の差を作業温度範囲(△T)とした。
耐水性及び耐酸性は、日本光学硝子工業会規格06−1975に基づき、ガラス試料を粒度420〜590μmに破砕し、その比重グラムを秤量して白金篭に入れ、それを試薬の入ったフラスコに入れて沸騰水浴中で60分間処理し、処理後の粉末ガラスの質量減(重量%)を算出したものである。尚、耐水性評価で用いた試薬はpH6.5〜7.5に調整した純水であり、耐酸性評価で用いた試薬は0.01Nに調整した硝酸水溶液である。
塩基性度は、(酸素原子のモル数の総和/陽イオンのField Strengthの総和)×100の式に基づいて算出したものである。尚、式中のField Strength(以下F.S.と表記する)は上記の[数1]により求めた。
尚、Zはイオン価数、rはイオン半径を示しおり、Z、rの数値は表1の値を用いた。

Claims (8)

  1. 屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が45以上、軟化点が650℃以下の鉛を含まないモールドプレス成形用光学ガラスであって、△T={成形温度(101.0ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.20%以下、同粉末法耐酸性での重量減が1.2%以下であり、B23−La23−ZnO−Gd23系ガラスからなることを特徴とするモールドプレス成形用光学ガラス。
  2. 質量%で、B23 24〜45%、La23 5〜35%、ZnO 10〜30%、Gd23 0.5〜20%含有することを特徴とする請求項1記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  3. 質量%で、R’2O(R’はLi、Na、Kの一種以上)を2〜15%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  4. 質量%で、Li2Oを2〜10%、Na2Oを0〜5%、K2Oを0〜5%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  5. 質量%で、SiO2 6〜20%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、BaO 0〜10%、SrO 0〜15%、ZrO2 0〜5%、Y23 0〜15%、Ta25 0〜10%、Sb23 0〜1%含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  6. 質量%で、RO(RはMg、Ba、Srの一種以上)を0〜25%含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  7. 実質的にTiO2、Nb25、CaOを含まないことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のモールドプレス成形用光学ガラス。
  8. 質量%で、B23 24〜45%、La23 5〜35%、ZnO 10〜30%、Ta25 0〜10%、Li2O 2〜10%、Na2O 0〜5%、K2O 0〜5%、R’2O(R’はLi、Na、Kの一種以上) 0〜15%、SiO2 6〜20%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、BaO 0〜10%、SrO 0〜15%、RO(RはMg、Ba、Srの一種以上) 0〜25%、ZrO2 0〜5%、Y23 0〜15%、Gd23 0.5〜20%、Sb23 0〜1%含有し、実質的にTiO2、Nb25、CaOを含まないことを特徴とするモールドプレス成形用光学ガラス。
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