JP2007132420A - 車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 油圧に応じて駆動側プーリ310及び従動側プーリ320の回転半径を変化させる油圧式アクチュエータと、車両情報から目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、目標変速比から前記駆動側プーリ及び前記従動側プーリに対する目標油圧を演算し、目標油圧と実油圧とに基づく比例制御及び積分制御を含むフィードバック制御によって前記油圧式アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段100とを有し、アクチュエータ制御手段100は、積分制御の制御ゲインを、変速比の切り換え時には、目標変速比と実変速比との偏差に応じて可変に設定する。
【選択図】 図1
Description
こうしたPI制御やPID制御では、I制御(積分制御)項が含まれるため、過去の偏差の影響が与えられて制御を安定させることができる反面、作動油量の収支から速やかに作動油を供給できないこと等に起因して実油圧が目標油圧に到達せずに偏差が累積されていった後に、ようやく実油圧が目標油圧に到達した場合には、油圧のオーバーシュートやアンダーシュートが生じてしまう。
このように、積分制御が含まれる油圧フィードバックコントローラにおいては、油圧のオーバーシュートを防止することが必要であるが、これに関する従来技術としては、現在の油圧に対し所定値以上離れた油圧が指示された場合には1次遅れのフィルタを通して目標値をなまし、油圧のオーバーシュートを防止するという技術(特許文献1)や、フィードフォワードとフィードバックを含む2自由度制御系において、一定時間遅らせた目標値に対してフィードバック制御を行なうという技術(特許文献2)がある。
・第1の課題
変速時において油量収支等の物理的な限界で目標とする油圧が出ない場合の油圧限界値や油圧変化量の限界値を知ることが難しいため、油量収支から求めた油圧限界の設定が難しく、上述の従来技術では油圧目標値に対する1次遅れフィルタの時定数及び一定時間遅らせるための遅れ時間等の設定が難しい。
・第2の課題
また、変速時、プライマリ側及びセカンダリ側のうち、一方の油圧が大きくなった時には他方の低圧側の油圧がつれ上がり、油圧が上昇する現象が起こる。このような場合に低圧側で積分器の含まれる油圧フィードバック制御を行なえば、変速終了等でつれ上がりの現象が無くなると実油圧はアンダーシュートを起こし、ベルト滑りが発生するおそれがあるが、上述の従来技術では、このような課題の解決は困難である。
あるいは、前記積分制御の制御ゲインは、前記目標変速比と前記実変速比との偏差が大きいほど小さく、該偏差が小さいほど大きく設定されることが好ましい。
さらに、前記目標変速比設定手段は、車両情報検出手段により検出された車両情報に基づいて、前記目標変速比である変速完了後の第1目標変速比を設定するとともに、予め設定された変化率以下で該第1目標変速比に漸近する第2目標変速比を設定し、前記アクチュエータ制御手段は、該第2目標変速比と前記油圧検出手段により検出された実油圧とに基づいて前記フィードバック制御を行なうことが好ましい。
[実施形態]
図1〜図6は、本発明の一実施形態を説明するもので、図1はそのCVT油圧制御装置を搭載した車両のシステム構成図、図2〜図4はその制御系の構成図、図5はその油圧制御部で用いる積分ゲイン設定マップを示す図、図6はそのCVT油圧制御による各目標値と実際値とを対比して示す図である。
図1は、CVT油圧制御装置(車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置)を搭載した車両(自動車)のシステム構成図である。エンジン10の動力はトルクコンバータ20及び前後進クラッチ30を介してCVT(変速部)300に伝達される。CVT300は駆動側のプライマリプーリ310及び従動側のセカンダリプーリ320からなり、両者の間に介在されたベルト330により動力伝達を行なう。
オイルポンプ40により発生した油圧は第1調圧弁51によりライン圧に調整され、プライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72に供給される。また、第2調圧弁52によりパイロット圧とされてプライマリソレノイド108及びセカンダリソレノイド109に供給される。CVTコントロールユニット100はプライマリソレノイド108及びセカンダリソレノイド109を制御し、供給されたパイロット圧を所望の信号圧に調整してプライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72に供給する。
図2は、CVTコントロールユニット100の概略制御ブロック図である。CVTコントロールユニット100は、目標変速比演算部101,実変速比演算部102,入力トルク演算部103,変速制御部200,推力油圧換算部220,油圧制御部230,油圧電流換算部250,電流制御部260の各機能要素を備えている。
実変速比演算部102は、プライマリ回転センサ及びセカンダリ回転センサから入力されたプライマリプーリ回転数Npri及びセカンダリプーリ回転数Nsecに基づき実変速比ipを演算し、変速制御部200へ出力する。
推力電流換算部250は、各油圧指示値Ppri*,Psec*の値をそれぞれ電流値に変換する。つまり、各プーリ310,320に与える油圧を制御するには、プライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72のソレノイド108,109への供給電流を制御すればよく、予め把握されている油圧と電流と対応関係に基づいて、プライマリプーリ油圧指示値Ppri*及びセカンダリプーリ油圧指示値Psec*の値をそれぞれプライマリソレノイド108への供給電流値Ipri及びセカンダリソレノイド109への供給電流値Isecに変換する。
CVT(変速部)300に接続された油圧回路270は、プライマリソレノイド108及びセカンダリソレノイド109が電流供給に応じて作動して、油圧弁、即ち、プライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72の開度を調整し、これにより、CVT(変速部)300では、プライマリプーリ310及びセカンダリプーリ320の推力が制御されて、変速比が調整されるようになっている。
変速制御部200は、図3に示すように、滑り下限推力演算部204,推力比演算部205,基礎バランス推力演算部206,差推力演算部207,変速フィードバック制御部(変速フィードバック量演算部)209,滑り防止及び油圧最小推力配分演算部(以下、推力配分演算部)210を有している。
滑り下限推力演算部204は、実変速比演算部102により演算された実変速比ipと、入力トルク演算部103により演算された入力トルクTinとに基づきプライマリプーリ310及びセカンダリプーリ320における滑り下限推力Flp,Flsを演算し、基礎バランス推力演算部206へ出力する。
ここで、滑り下限推力Flp,Flsとは、ベルトスリップが発生せずに各プーリとベルトのトルク伝達が可能な各プーリの推力である。具体的には、プライマリプーリ310における伝達トルク及びベルト回転半径をTpri,Rpri、プーリの狭角をθ、プーリとベルトとの動摩擦係数をμとすれば、プライマリプーリ310の伝達トルクTpriは、
Tpri=Rpri×2μ×Fpri/cosθ
即ち、
Fpri=Tpri×cosθ/(2μ×Rpri)
であり、プライマリプーリ310においてベルトスリップが発生しない条件は、
プーリとベルト間の摩擦力≧伝達トルク
であるから、安全率をεpriとすれば、プライマリプーリ310における滑り下限推力Flpは、
Flp=εpri×Tpri×cosθ/(2μ×Rpri)
一方、セカンダリプーリ320における滑り下限推力Flsについても、プライマリプーリ310の場合と同様に求められ、
Fls=εsec×Tsec×cosθ/(2μ×Rsec)
ここで、プライマリプーリ310とセカンダリプーリ320におけるベルト張力Tは同一であるため、
T=Tpri/Rpri=Tsec/Rsec
したがって、
Tsec=Tpri×Rsec/Rpri
よって
Fls=εsec×(Tpri×Rsec/Rpri)×cosθ/(2μ×Rsec)
=εsec×Tpri×cosθ/(2μ×Rpri)
=(εsec/εpri)Flp
プライマリ側とセカンダリ側の安全率を同一値とすれば
Flp=Fls=F
となり、プライマリプーリ310の滑り下限推力Flpとセカンダリプーリ320の滑り下限推力Flsとは同一値Fとなる。
基礎バランス推力演算部206は、滑り下限推力演算部204から入力された滑り下限推力Flp,Flsと、推力比演算部205から入力された推力比RFとに基づいて、プライマリプーリ310及びセカンダリプーリ320の基礎バランス推力Fp*,Fs*を演算し、推力配分演算部210に出力する。
変速フィードバック制御部209は、実変速比が目標変速に確実に追従するようにフィードバック制御量Ufbを設定する。このフィードバック制御量Ufbは、次式から求める。
e=xSA−xSR
ただし、e:ストロークエラー,xSA:目標セカンダリストローク,xSR:実セカンダリストローク,KP:比例ゲイン,KI:積分ゲイン,KD:微分ゲイン
推力配分演算部210は、基礎バランス推力演算部206,差推力演算部207,変速フィードバック制御部209からそれぞれ入力された基礎バランス推力Fp*,Fs*,差推力dF,フィードバック制御量Ufbに基づいて、プライマリ推力指令値Fpri,セカンダリ推力指令値Fsecを演算し、油圧換算部106へ出力する。
さらに、推力比が1以下のもとに、セカンダリ推力がセカンダリ滑り下限値Flsより小さいかを判断し、セカンダリ推力がセカンダリ滑り下限値Flsより小さいなら、セカンダリ推力Fsecと滑り下限値Flsとの差を計算し(ΔFs=Fls−Fsec)、プライマリ推力
をFlp+ΔFsに変更し(Fpri=Flp+ΔFs)、セカンダリ推力をFlsに変更する(Fsec=Fls)。
また、推力比が1よりも大のもとに、プライマリ推力がプライマリ滑り下限値Flpよりも小さいかを判断し、プライマリ推力がプライマリ滑り下限値Flpよりも小さいなら、プライマリ推力Fpriと滑り下限値Flpとの差を計算し(ΔFp=Flp−Fpri)、プライマリ推力をプライマリ推力下限値Flpに変更しFpri=Flp)、セカンダリ推力をFlp+ΔFsに変更する(Fsec=Fls+ΔFp)。
油圧制御部230は、図4に示すように、油圧フィードフォワード制御器231と、減算器232と、比例制御器233と、積分ゲイン算出部234と、積分制御器235と、加算器236と、油圧指示演算部237と、油圧指示クリップ部238とをそなえ、プライマリプーリ油圧Ppri及びセカンダリプーリ油圧Psecの各目標油圧Ppri-t,Psec-t(以下、プライマリとセカンダリとを区別しない場合、Ptで示す)に基づいてプライマリプーリ310の油圧指示値Ppri*及びセカンダリプーリ320の油圧指示値Psec*(以下、プライマリとセカンダリとを区別しない場合、P*で示す)を設定する。なお、減算器232と、比例制御器233と、積分ゲイン算出部234と、積分制御器235と、加算器236とから、油圧フィードバック制御部が構成される。
油圧フィードフォワード制御器231は、目標油圧Ptに基づいてフィードフォワード制御値を設定する。このフィードフォワード制御値は、例えば、図4に示すチャートC1のように目標油圧Ptがα0からα1に変化した際に、この到達目標圧(第1目標変速比に相当する油圧)α1をそのまま目標油圧(第2目標変速比に相当する油圧)Ptとするのではなく、チャートC2に示すように、まず、到達目標圧α1の半分程度の増加量に抑制した値(≒α0+(α1+α0)/2)を目標油圧Ptとして、その後、目標油圧Pt一旦減少させた後、到達目標圧α1まで増加するように設定される。
積分ゲイン算出部234は、フィードバック制御の積分項のゲインGIを算出する。この積分ゲインGIは、図5に示すように、変速比誤差Δip(目標変速比ip*と実変速比ipとの差,Δip=ip*−ip)が所定の範囲内であれば、最大値(例えば1)に、変速比誤差の大きさが所定の範囲を超えると、超えた量に応じて減少するように設定される。ここでは、線形に減少される。
油圧指示演算部237では、このようにして油圧フィードフォワード制御器231で設定されたフィードフォワード制御値と、減算器232,比例制御器233,積分制御器235,及び加算器236からなる油圧フィードバック制御部で設定されたフィードバック制御値とから、油圧指示値を設定する。この場合、フィードフォワード制御値とフィードバック制御値とを単純に加算するか、又は、それぞれにゲインをかけて加算をして、油圧指示値を設定する。
本発明の一実施形態としての車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置は、上述のように構成されているので、図2に示すように、CVTコントロールユニット100では、目標変速比演算部101によって、それぞれ検出された車速VSP,プライマリプーリ回転数Npri及びススロットル開度TV0に基づき目標変速比ip*が演算され、実変速比演算部102によって、それぞれ検出されたプライマリ回転数Npri及びセカンダリプーリ回転数Nsecに基づき実変速比ipが演算される。また、入力トルク演算部103によって、入力トルクTinが入力される。
これにより、油圧回路270では、プライマリソレノイド108及びセカンダリソレノイド109が電流供給に応じて作動して、各油圧弁71,72の開度を調整することで、CVT(変速部)300におけるプライマリプーリ310及びセカンダリプーリ320の推力が制御されて、変速比が調整される。
また、油圧制御部230では、目標油圧Ptが変化した場合に、油圧フィードフォワード制御器231において、到達目標圧α1よりも増加量を抑制した値に目標油圧Ptを設定し、油圧フィードバック部において、そのフィルタ232aにより、目標油圧Ptが、予め設定された変化率以下で到達目標圧α1に漸近するように、即ち、急変しないように設定される。このように目標油圧Ptの急変を抑制した上でフィードバック制御を行なうようにするため、これによっても、上記のオーバーシュートやアンダーシュートの抑制効果が得られる。
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、上記の実施形態では、積分制御の制御ゲインは、目標変速比と実変速比との偏差の大きさが大きいほど小さく、この偏差の大きさが小さいほど大きく設定されるが、よりシンプルに、予め設定された基準の偏差に基づいて、偏差(の大きさ)が大きい領域(第1領域)では制御ゲインを相対的に小さい一定値に、偏差が小さい領域(第2領域)では制御ゲインを相対的に大きい一定値に設定するようにしてもよい。
20 トルクコンバータ
30 前後進クラッチ
40 オイルポンプ
51 第1調圧弁
52 第2調圧弁
71 プライマリ調圧弁
72 セカンダリ調圧弁
100 コントロールユニット
101 車速センサ
102 プライマリ回転センサ
103 セカンダリ回転センサ
104 エンジン回転センサ
105 スロットル開度センサ
108 プライマリソレノイド
109 セカンダリソレノイド
106 油圧換算部
107 電流変換部
200 変速比制御部
201 目標変速比演算部
202 実変速比演算部
203 入力トルク演算部
204 滑り下限推力演算部
205 推力比演算部
206 基礎バランス推力演算部
207 差推力演算部
209 変速フィードバック制御部(変速フィードバック量演算部)
210 滑り防止及び油圧最小推力配分演算部(以下、推力配分演算部)
230 油圧制御部
231 油圧フィードフォワード制御器
232 減算器
233 比例制御器
234 積分ゲイン算出部
235 積分制御器
236 加算器
237 油圧指示演算部
238 油圧指示クリップ部
310 プライマリプーリ
311 プライマリスライドプーリ
320 セカンダリプーリ
321 セカンダリスライドプーリ
330 ベルト
Claims (4)
- 駆動側プーリと従動側プーリとをベルトで連結し、前記両プーリに与える油圧を調整することにより前記両プーリにおける前記ベルトの回転半径を変化させ、変速比を調整する車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置であって、
前記油圧に応じて前記駆動側プーリ及び前記従動側プーリの前記回転半径を変化させる油圧式アクチュエータと、
車両情報を検出する車両情報検出手段と、
前記車両情報検出手段により検出された車両情報に基づいて、目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、
前記油圧の実値を検出する油圧検出手段と、
前記目標変速比設定手段により設定された目標変速比に基づいて、前記駆動側プーリ及び前記従動側プーリに対する目標油圧を演算し、該目標油圧と前記油圧検出手段により検出された実油圧とに基づく比例制御及び積分制御を含むフィードバック制御によって前記油圧式アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段とを有するコントロールユニットとを備えるとともに、
前記変速比の実値を検出する変速比検出手段をそなえ、
前記アクチュエータ制御手段は、変速比の切り換え時には、前記積分制御の制御ゲインを、前記目標変速比設定手段により設定された目標変速比と前記変速比検出手段により検出された実変速比との偏差に応じて可変に設定する制御ゲイン設定手段をそなえている
ことを特徴とする、車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置。 - 前記積分制御の制御ゲインは、前記目標変速比と前記実変速比との偏差が大きい第1領域では、該偏差が小さい第2領域よりも小さく設定される
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置。 - 前記積分制御の制御ゲインは、前記目標変速比と前記実変速比との偏差が大きいほど小さく、該偏差が小さいほど大きく設定される
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置。 - 前記目標変速比設定手段は、車両情報検出手段により検出された車両情報に基づいて、前記目標変速比である変速完了後の第1目標変速比を設定するとともに、予め設定された変化率以下で該第1目標変速比に漸近する第2目標変速比を設定し、
前記アクチュエータ制御手段は、該第2目標変速比と前記油圧検出手段により検出された実油圧とに基づいて前記フィードバック制御を行なう
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置。
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