JP2007132326A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、内燃機関の制御装置に関し、吸気弁の作用角および/またはリフト量の連続可変による部分負荷時の出力調節を低負荷領域まで含めて行うことができるとともに、可変動弁機構の故障時にも車両が退避走行可能な出力を確実に発揮させることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】可変動弁機構による吸気弁の作用角およびリフト量を検出し(ステップS100)、可変動弁機構が正常であるか否かを判断する(ステップS110)。可変動弁機構の異常が検知された場合には、片方の吸気弁が大きな作用角およびリフト量となる片弁大リフト状態に固定する(ステップS121,S130)。運転者に、可変動弁機構の損傷発生を報知する(ステップS140)。
【選択図】図9

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、吸気弁の作用角および/またはリフト量を連続的に可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関を制御する装置として好適な内燃機関の制御装置に関する。
従来、ガソリンエンジン等の火花点火内燃機関においては、スロットル弁によって吸入空気を絞ることで、部分負荷時の出力調節を行うのが普通である。スロットル弁で吸入空気を絞ると、ポンピングロス(スロットルロス)が増大する。ガソリンエンジン搭載車の燃費がディーゼルエンジン搭載車より劣ることの一因は、この部分負荷時のポンピングロス増大にある。
これに対し、近年、吸気弁の作用角(作動角)およびリフト量を連続的に可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関が登場し始めている。この内燃機関によれば、吸気弁の作用角およびリフト量を全負荷時より小さくすることで、部分負荷時の出力調節を行うことができる。このため、この内燃機関によれば、ポンピングロスを低減し、燃費を改善することができる。
上記可変動弁機構が万一故障した場合を想定すると、吸気弁の作用角およびリフト量を変えることができなくなり、故障時の作用角およびリフト量に固定されてしまう事態が考えられる。このような事態が、小さな作用角およびリフト量の状態、例えばアイドル運転状態で起きた場合には、それ以降、アイドル相当の僅かな空気量しか筒内に吸入することができなくなる。このため、この場合には、車両が走行不能になってしまう。
可変動弁機構が故障した場合であっても、直ちに車両が走行不能になってしまうのは好ましくなく、安全な場所や修理工場などまで交通の流れを乱さずに自走できること、すなわち退避走行が可能なことが好ましい。
特開2004−84521号公報には、吸気弁の作用角を可変とする作用角変更手段と、開閉タイミングを変更するタイミング変更手段とを備えた内燃機関において、それらの可変動弁機構が故障した場合に、退避走行を可能とするための制御を行う装置が提案されている。この装置によれば、可変動弁機構故障時の退避走行性能を、制御ロジックによって可能な限り確保することができる。
特開2004−84521号公報
しかしながら、前述したような事態が発生した場合においては、上記従来技術のように制御ロジックのみに頼る手法では、十分な退避走行性能を確保することは困難である。その一方で、市販車に搭載するエンジンに対しては、フェイルセーフの観点から、可変動弁機構が故障した場合にも、確実に退避走行を可能とすることが要請される。
このようなことから、従来、吸気弁の作用角およびリフト量を連続可変とする可変動弁機構を市販車のエンジンに採用するに当たっては、作用角およびリフト量が機構上または制御上で最小となったときでも、退避走行可能な空気量を筒内に吸入できる状態となるように設計せざるを得なかった。この場合、その状態より負荷の小さい運転領域においては、従来と同様にスロットル弁で吸入空気を絞ることで出力を調節しなければならず、ポンピングロスが大きくなってしまう。このため、燃費改善の効果を十分に得ることができなかった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、吸気弁の作用角および/またはリフト量の連続可変による部分負荷時の出力調節を低負荷領域まで含めて行うことができるとともに、可変動弁機構の故障時にも車両が退避走行可能な出力を確実に発揮させることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
連続的に可変な作用角および/またはリフト量で吸気弁を駆動可能な可変動弁機構と、
退避走行に必要な出力を発生可能な吸入空気量を確保できる所定の作用角およびリフト量で前記吸気弁を駆動可能な固定動弁機構と、
前記吸気弁が前記可変動弁機構に従動する状態と、前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とを切り換える切換機構と、
前記可変動弁機構の異常を検知する異常検知手段と、
前記可変動弁機構の異常が検知された場合に、前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とするフェイルセーフ手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた場合に、前記内燃機関の運転領域を所定の機関回転数および負荷より低い側の範囲に制限する運転領域制限手段を更に備えることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた場合に、その後の退避走行における走行可能速度を推定する走行可能速度推定手段を更に備えることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた後に前記内燃機関の運転が停止された場合に、再始動時にも前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動するように、前記切換機構の状態を維持する維持手段を更に備えることを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記内燃機関の減速時にフューエルカットを行うフューエルカット手段と、
前記フューエルカットの実行中は、前記フェイルセーフ手段が機能することを禁止する禁止手段と、
を更に備えることを特徴とする。
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、
前記内燃機関は、一気筒当たり複数の吸気弁を備えるものであり、
前記可変動弁機構は、前記複数の吸気弁のすべてを駆動対象とするものであり、
前記固定動弁機構は、前記複数の吸気弁のうちの一部を駆動対象とするものであり、
前記切換機構は、前記一部の吸気弁が前記固定動弁機構に従動し、他の吸気弁が前記可変動弁装置に従動する状態に切り換え可能であることを特徴とする。
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、
前記可変動弁機構は、作用角および/またはリフト量に応じて変化する振幅で、カムの回転に同期して揺動する可変側揺動部材を有し、
前記固定動弁機構は、前記可変側揺動部材に隣接して配置され、カムの回転に同期して所定の振幅で揺動する固定側揺動部材を有し、
前記切換機構は、前記可変側揺動部材および前記固定側揺動部材の一方に設置された進退可能な連結ピンと、
前記可変側揺動部材および前記固定側揺動部材の他方に形成され、前記連結ピンが挿入可能なピン穴とを有し、
前記ピン穴の入口部分には、前記連結ピンと前記ピン穴との中心位置が一致していない状態でも挿入を可能とするように前記連結ピンを案内するガイド面が形成されていることを特徴とする。
第1の発明によれば、吸気弁を駆動する可変動弁機構に異常が発生した場合に、吸気弁を固定動弁機構によって駆動することができる。固定動弁機構は、退避走行をするのに必要な吸入空気量が確保できるような作用角およびリフト量で吸気弁を駆動する。このため、第1の発明によれば、可変動弁機構が故障した場合であっても、車両の退避走行を確実に可能とすることができる。そして、第1の発明によれば、可変動弁機構故障時の退避走行性能を固定動弁機構によって確保することができるので、可変動弁機構の作用角および/またはリフト量の最小値を退避走行性能確保のために制限する必要がなく、よって、吸気弁の作用角および/またはリフト量の最小値を十分に小さくすることができる。このため、可変動弁機構の正常時には、吸気弁の作用角および/またはリフト量の連続可変による部分負荷時の出力調節を低負荷領域まで含めて行うことができる。それゆえ、ポンピングロスを最大限に削減することができ、可変動弁機構による燃費改善効果を最大限に活用することができる。
第2の発明によれば、退避走行時、内燃機関の運転領域を所定の機関回転数および負荷より低い側の範囲に制限することができる。このため、退避走行中に内燃機関に過度の負担がかかるのを回避することができるので、可変動弁機構の損傷がそれ以上に進展・拡大するのを確実に防止することができる。
第3の発明によれば、退避走行時、車両の走行可能速度を推定することができる。そして、その走行可能速度を車両の運転者に報知することにより、運転者は、予定の時間までに目的地へ到達することができるかどうかなどを判断することができ、不安にならないで済む。
第4の発明によれば、退避走行の途中で内燃機関の運転が停止された場合の再始動時にも、吸気弁を確実に固定動弁機構に従動させることができる。このため、再始動時に十分な筒内吸入空気量を確保することができ、再始動を失敗なく行うことができる。
第5の発明によれば、退避走行時、減速フューエルカットの実行中は、吸気弁が固定動弁機構に従動するのを防止することができる。このため、退避走行時の減速フューエルカット中に排気浄化触媒に多量の空気が流れるのを回避することができ、排気浄化触媒の劣化が進行するのを抑制することができる。
第6の発明によれば、一気筒当たり複数の吸気弁を備えた内燃機関において、同一気筒の一部の吸気弁を固定動弁機構に従動させ、他の吸気弁を可変動弁装置に従動させることにより、複数の吸気弁の作用角および/またはリフト量に差をつけることができる。この状態とすることにより、筒内に過流(スワール、タンブル)を効果的に発生させることができ、燃焼の改善が図れる。
第7の発明によれば、可変側揺動部材および固定側揺動部材の一方に設置された進退可能な連結ピンと、両者の他方に形成されたピン穴との中心位置が一致していない状態であっても、連結ピンがガイド面に案内されることにより、連結ピンをピン穴に確実に挿入することができる。このため、可変動弁機構がいかなる大きさの作用角および/またはリフト量の状態で固着していても、切換機構による切り換えを確実に行うことができる。
実施の形態1.
[システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。実施の形態1のシステムは、車両に動力源として搭載される火花点火式の内燃機関1を備えている。内燃機関1は、複数の気筒2を有している。図1には、複数気筒のうちの1気筒のみが示されている。
内燃機関1は、ピストン3と、ピストン3を収納したシリンダブロック4とを備えている。ピストン3は、コンロッドを介してクランク軸5と接続されている。クランク軸5の近傍には、クランク角センサ6が設けられている。クランク角センサ6は、クランク軸5の回転角度を検出するように構成されている。
シリンダブロック4の上部にはシリンダヘッド8が組み付けられている。シリンダヘッド8には、燃焼室10内の混合気に点火する点火プラグ11が設けられている。
シリンダヘッド8は、燃焼室10と連通する吸気ポート12を備えている。吸気ポート12と燃焼室10との接続部には、一気筒当たり第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの二つの吸気弁が設けられている。第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rは、吸気カム軸15、可変動弁機構40、および固定動弁機構70により駆動される。可変動弁機構40および固定動弁機構70の詳細については、後述する。
吸気ポート12には、吸気通路19が接続されている。吸気ポート12の近傍には、吸気ポート12内に燃料を噴射するインジェクタ20が設けられている。吸気通路19の途中にはサージタンク21が設けられている。
サージタンク21の上流にはスロットル弁22が設けられている。スロットル弁22は、スロットルモータ23により駆動される電子制御スロットルである。スロットル弁22は、アクセル開度センサ24により検出されるアクセル開度に基づいて駆動されるものである。スロットル弁22の近傍には、スロットル開度センサ25が設けられている。スロットル開度センサ25は、スロットル開度を検出するように構成されている。スロットル弁22の上流には、エアフロメータ26が設けられている。エアフロメータ26は吸入空気量Gaを検出するように構成されている。エアフロメータ26の上流にはエアクリーナ27が設けられている。
また、シリンダヘッド8は、燃焼室10と連通する排気ポート28を備えている。排気ポート28と燃焼室10との接続部には排気弁29が設けられている。排気ポート28には排気通路30が接続されている。排気通路30には、排気空燃比を検出する空燃比センサ31が設けられている。
また、本実施の形態のシステムは、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60の出力側には、点火プラグ11、インジェクタ20、スロットルモータ23のほか、可変動弁機構40を可変動作させるためのモータ46や、後述するOCV84(図5参照)等が接続されている。ECU60の入力側には、クランク角センサ6、スロットル開度センサ25、アクセル開度センサ24、エアフロメータ26、空燃比センサ31や、可変動弁機構40の状態を検出する回転角センサ47等が接続されている。ECU60は、各センサの出力に基づいて、燃料噴射制御、点火時期制御や、後述する吸気弁動弁機構に対する制御のような、内燃機関全体の制御を実行する。
[吸気弁動弁機構の概要]
図2は、本実施形態における吸気弁動弁機構の構成を説明するための斜視図である。図2に示すように、内燃機関1は、1気筒当たり、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの二つの吸気弁を有している。これらの吸気弁は、吸気カム軸15の回転に同期して、開閉する。吸気カム軸15には、可変動弁機構40に属する吸気カム16と、固定動弁機構70に属する吸気カム17とが設けられている。吸気カム軸15は、内燃機関1のクランク軸5により駆動され、クランク軸5の2分の1の速度で回転する。
可変動弁機構40は、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの両方を駆動対象とし、それらの作用角およびリフト量を連続的に可変とすることができる。これに対し、固定動弁機構70は、第2吸気弁14Rのみを駆動対象とし、大きな作用角およびリフト量で開閉させる。そして、このような吸気弁動弁機構は、第2吸気弁14Rが可変動弁機構40に従動する状態と、固定動弁機構70に従動する状態とを、選択的に切り換えることができるように構成されている。
図3は、図2に示す吸気弁動弁機構を吸気カム軸15に平行な方向から見た図である。図3に示すように、第1吸気弁14Lは、その弁軸(ステム)14aの端部がロッカーアーム35の一端に押圧されることにより、リフトする。ロッカーアーム35の他端は、油圧式ラッシュアジャスタ37を介してシリンダヘッド8に支持されている。ロッカーアーム35の中間部には、ロッカーローラ36が回転自在に取り付けられている。また、第2吸気弁14Rに対しても、同様のロッカーアーム35、ロッカーローラ36、および油圧式ラッシュアジャスタ37が設けられている。
[可変動弁機構40の詳細構成]
以下、可変動弁機構40の構成について詳細に説明するが、第1吸気弁14L用の構造と第2吸気弁14R用の構造とは共通する部分があるので、その共通部分は第1吸気弁14L用についてのみ説明する。
図3に示すように、可変動弁機構40は、吸気カム軸15と平行に配置された制御軸41を有している。制御軸41には、制御アーム42がボルト43によって固定されている。制御アーム42の一部は、制御軸41の径方向に突出している。制御アーム42の突出部には、中間アーム44がピン45によって取り付けられている。ピン45は、制御軸41の中心から偏心した位置に配置されている。よって、中間アーム44は、ピン45を中心にして揺動するように構成されている。制御軸41、制御アーム42、および中間アーム44は、第1吸気弁14Lと第2吸気弁14Rとに共用される。
図2に示すように、制御軸41には、第1吸気弁14L用の揺動カムアーム50Lと、第2吸気弁14R用の揺動カムアーム50Rとがそれぞれ揺動可能に支持されている。この両者の構造、およびその周囲の構造は、共通であるので、揺動カムアーム50L側についてのみ説明する。
図3に示すように、揺動カムアーム50Lは、吸気カム16に対向する側に、スライド面50aを有する。スライド面50aには、第2ローラ53が接触している。スライド面50aは、第2ローラ53が揺動カムアーム50Lの先端側から制御軸41の軸中心側に向かって移動するほど、吸気カム16との間隔が徐々に狭まるような曲面で形成されている。
吸気カム16の周面には、第2ローラ53と同軸上に設けられた第1ローラ52が接触している。第1ローラ52と第2ローラ53とは、共に中間アーム44の先端部に固定された連結軸54によって回転自在に支持されている。中間アーム44は、ピン45を支点として揺動するので、これらのローラ52,53もピン45から一定距離を保ちながらスライド面50aおよび吸気カム16の周面に沿って揺動する。
また、揺動カムアーム50Lには、スライド面50aの反対側に、揺動カム面51が形成されている。揺動カムアーム50Lの下方には、前述したロッカーアーム35が位置しており、ロッカーローラ36は、揺動カム面51に接触している。揺動カム面51は、揺動カムアーム50Lの揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面(基礎円部分)51aと、非作用面51aから離れた位置ほど制御軸41の軸中心からの距離が遠くなるように形成された作用面51bとで構成されている。
揺動カムアーム50Lには、バネ座50bが形成されている。このバネ座50bには、ロストモーションスプリング38の一端が掛けられている。ロストモーションスプリング38の他端は、シリンダヘッド8に固定されている。ロストモーションスプリング38から受ける付勢力により、揺動カムアーム50Lのスライド面50aが第2ローラ53に押し当てられ、更に、第1ローラ52が吸気カム16に押し当てられる。これにより、第1ローラ52および第2ローラ53は、スライド面50aと吸気カム16の周面とに両側から挟み込まれた状態で位置決めされる。
上述した可変動弁機構40の構成によれば、吸気カム16の回転に伴って、吸気カム16の押圧力が第1ローラ52および第2ローラ53を介してスライド面50aに伝達される。その結果、揺動カム面51とロッカーローラ56との接点が非作用面51aから作用面51bにまで及ぶと、ロッカーアーム35が押し下げられ、第1吸気弁14L、第2吸気弁14Rがリフト(開弁)する。
また、可変動弁機構40の構成によれば、制御軸41の回転角度を変化させると、スライド面50a上における第2ローラ53の位置が変化し、リフト動作時の揺動カムアーム50L,50Rの振幅(揺動範囲)が変化する。より具体的には、制御軸41を図3における反時計回りに回転させると、スライド面50a上における第2ローラ53の位置が揺動カムアーム50L,50Rの先端側に移動する。そうすると、吸気カム16の押圧力が伝達されることで揺動カムアーム50L,50Rが揺動動作を開始した後に、現実にロッカーアーム35が押圧され始めるまでに要する揺動カムアーム50L,50Rの回転角度は、制御軸41が図3における反時計回り方向に回転するほど大きくなる。つまり、制御軸41を図3における反時計回り方向に回転させることにより、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量を小さくすることができる。逆に、制御軸41を時計回り方向に回転させることにより、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量を大きくすることができる。
可変動弁機構40は、制御軸41を回転させる回転駆動機構を備えている。この回転駆動機構の構成は、特に限定されないが、本実施形態では、制御軸41の一端側に固定したウォームホイールとこのウォームホイールに噛み合うウォームギヤとからなる歯車機構48と、前記ウォームギヤを回転駆動するモータ46とで構成されるものとする。モータ46は、ECU60からの指令に従って正・逆両方向に作動可能になっている。モータ46を作動することにより、制御軸41の回転位置を調節することができ、可変動弁機構40により実現される作用角およびリフト量を変化させることができる。
本実施形態のシステムには、可変動弁機構40が実現している作用角およびリフト量を検出するセンサとして、回転角センサ47が設けられている。回転角センサ47は、モータ46、歯車機構48、および制御軸41のいずれかの回転部材の回転角(回転量)を検出するように配置される。この回転角センサ47の発した信号は、ECU60に入力される。ECU60は、回転角センサ47の信号に基づいて、現在の作用角およびリフト量を把握することができる。
[固定動弁機構70の詳細構成]
次に、図2および図4を参照して、固定動弁機構70の詳細な構成について説明する。図4は、可変動弁機構40および固定動弁機構70の一部分の分解斜視図である。
図2および図4に示すように、固定動弁機構70は、吸気カム17と、大リフトアーム71とを有している。大リフトアーム71は、揺動カムアーム50Rと並んで配置され、制御軸41を中心に揺動可能になっている。大リフトアーム71には、吸気カム17の周面に接触するローラ73が回転可能に支持されている。大リフトアーム71は、ロストモーションスプリング(図示せず)により、ローラ73が吸気カム17の周面に押し当てられるような方向に付勢されている。
大リフトアーム71は、吸気カム17の回転に同期して揺動する。その振幅は、可変動弁機構40が最大の作用角およびリフト量の状態にあるときの揺動カムアーム50L,50Rの振幅と同じにされている。
[片弁切換機構72の構成]
図4に示すように、揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71との間には、両者を連結および連結解除可能な片弁切換機構72が設けられている。片弁切換機構72は、連結ピン74、ピン収納穴75、ピン穴76、リターンスプリング77、およびピストン78を備えている。片弁切換機構72を連結状態とすると、揺動カムアーム50Rは、大リフトアーム71と一体となり、最大の作用角およびリフト量に対応する振幅で揺動することとなる。このため、可変動弁機構40の状態に関わらず、第2吸気弁14Rが大きな作用角およびリフト量で駆動される。
大リフトアーム71には、揺動カムアーム50R側に開口するピン収納穴75が形成されている。このピン収納穴75内に連結ピン74が嵌め込まれている。連結ピン74は、ピン収納穴75の外へ突出したり、ピン収納穴75内に退避したりすることができる。ピン収納穴75は、後述する油圧系に接続されている。油圧系によりピン収納穴75内の油圧を高めることにより、連結ピン74をピン収納穴75から押し出すことができる。
揺動カムアーム50Rには、大リフトアーム71側に開口するピン穴76が形成されている。連結ピン74とピン穴76は、制御軸41の中心から等距離に配置されている。これにより、揺動カムアーム50Rが大リフトアーム71に対して所定の回転角度に位置したとき、ピン穴76の位置と連結ピン74の位置とが一致するようになっている。ピン穴76内には、その奥側からリターンスプリング77と、リフタとしてのピストン78とが配置されている。
図5は、連結ピン74を作動させるための油圧系の構成を示す概略図である。図5に示すように、制御軸41内には、油路81が形成されている。この油路81は、ピン収納穴75と、制御軸41と大リフトアーム71との摺動隙間と、制御軸41と揺動カムアーム50Rとの摺動隙間とにそれぞれ接続されている。この油路81には、内燃機関1のオイルポンプ82から油圧が供給される。油路81の途中には、排出路83が接続されている。排出路83には、OCV(オイルコントロールバルブ)84が設けられている。OCV84は、ECU60により、その開度がデューティー制御される。さらに、排出路83におけるOCV84の下流にはオリフィス85が設けられている。
OCV84が閉じられていると、オイルポンプ82で加圧された潤滑油は、油路81を通って上記摺動隙間に供給される。また、油路81を流れる潤滑油の一部は、ピン収納穴75に供給される。よって、ピン収納穴75内の油圧を上げることができる。一方、OCV84を開くと、排出路83から潤滑油が排出される。これにより、ピン収納穴75内の油圧を下げることができる。
連結ピン74がピン穴76に挿入していない状態では、揺動カムアーム50Rおよび大リフトアーム71は、別々に揺動しているが、ゼロリフトのとき(吸気弁閉期間)には、両者は共に静止する。この静止期間に、連結ピン74をピン穴76に挿入することができる。
ゼロリフトのときの揺動カムアーム50Rの姿勢は、可変動弁機構40の第2ローラ53の位置によって、つまり作用角およびリフト量によって、角度が異なる。このため、連結ピン74をピン穴76に挿入するには、まず、OCV84を閉じてピン収納穴75内の油圧を上昇させ、次いで、連結ピン74とピン穴76との位置がゼロリフト状態で一致するような所定の作用角およびリフト量となるように、制御軸41の回転位置を調整する。そうすると、連結ピン74とピン穴76との位置が一致した瞬間に、連結ピン74が押し出されて、ピン穴76に挿入することができる。このようにして、揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71とを連結ピン74を介して連結することができる。
上記の連結を解除する場合には、OCV84を開き、ピン収納穴75内の油圧を下げる。すると、リターンスプリング77がピストン78を介して連結ピン74を押し戻すことにより、連結ピン74がピン穴76から抜ける。このようにして、揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71との連結を解除することができる。
[両弁等リフト状態]
揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71とが連結されていない状態では、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rは、共に可変動弁機構40に従動する。この状態を以下「両弁等リフト状態」と称する。図6(A)は、両弁等リフト状態での第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rのリフト線図である。この図に示すように、両弁等リフト状態では、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量は互いに等しくなる。そして、制御軸41を回転させることで両者の作用角およびリフト量を揃って連続的に変化させることができる。
本実施形態では、両弁等リフト状態で第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量を最小とした状態では、スロットル弁22で吸入空気を絞らなくても、筒内吸入空気量をアイドル運転相当かまたはそれに近い僅かな空気量にすることができるように、可変動弁機構40が設計されている。よって、内燃機関1では、部分負荷時の出力調節を、アイドル運転付近の低負荷領域も含めて、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量の連続可変によって行うことが可能である。このため、ポンピングロス(スロットルロス)を最大限に削減することができ、燃費を大幅に改善することができる。
この両弁等リフト状態のときは、固定動弁機構70は、吸気弁の駆動には関与せず、遊んだ状態となる。
[片弁大リフト状態]
揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71とを連結した状態とすると、揺動カムアーム50Rは、最大の作用角およびリフト量に対応する振幅で常に揺動している大リフトアーム71と一体となる。このため、揺動カムアーム50Rは、そのスライド面50aが第2ローラ53から離れ、最大の作用角およびリフト量に対応する振幅で揺動するようになる。よって、この状態では、第2吸気弁14Rは、可変動弁機構40の状態によらず、常に最大の作用角およびリフト量で運動する。このような状態を以下「片弁大リフト状態」と称する。
図6(B)は、片弁大リフト状態での第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rのリフト線図である。第1吸気弁14Rは、片弁大リフト状態においても、両弁等リフト状態のときと同様に可変動弁機構40に従動する。このため、片弁大リフト状態において制御軸41を回転させると、図6(B)に示すように、第2吸気弁14Rを最大の作用角およびリフト量としたまま、第1吸気弁14Lの作用角およびリフト量を連続的に変化させることができる。
この片弁大リフト状態では、第1吸気弁14Lの作用角およびリフト量を第2吸気弁14Rより小さくすることができる。このようにすると、主として第2吸気弁14Rのみを通して筒内に空気を流入させることができる。このため、筒内に強い過流(スワール、タンブル)を形成することができる。内燃機関1では、例えば中負荷・中回転域などにおいて、片弁大リフト状態とすることにより、筒内に強い過流を形成し、燃焼速度を速めて燃焼を改善することができる。
[作用角・リフト量のマップ]
図7は、ECU60が記憶する第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量のマップである。本システムでは、図7に示すマップに従って、可変動弁機構40による作用角およびリフト量の調整や、片弁切換機構72による両弁等リフト状態と片弁大リフト状態との切換が行われる。
図7に示すマップは、横軸に機関回転数NEをとり、縦軸に負荷をとって示されている。本システムでは、機関回転数NEはクランク角センサ6の信号に基づいて検出することができる。また、負荷は、アクセル開度、あるいはエアフロメータ26により検出される吸入空気量Gaなどに基づいて、検出することができる。これにより、ECU60は、内燃機関1の現在の運転状態が図7のマップ中のどこにあるかを検知することができる。
図7中には、二つ並んだ丸印が数組描かれている。各組の二つの丸印のうちの右側の丸印内の文字は第1吸気弁14Lの作用角およびリフト量を表しており、左側の丸印内の文字は第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量を表している。
本マップでは、高負荷域、高回転域、および低負荷域は、両弁等リフト状態とすべき領域として定められてる。この領域を以下「両弁等リフト領域」と称する。両弁等リフト領域においては、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの両方の作用角およびリフト量を連続可変することで、筒内吸入空気量の調節、すなわち内燃機関1の出力調節を行うことができる。
また、本マップでは、低中回転・中負荷域は、片弁大リフト状態とすべき領域として定められている。この領域を以下「片弁大リフト領域」と称する。片弁大リフト領域においては、第1吸気弁14Lのみの作用角およびリフト量を連続可変することで、筒内吸入空気量の調節、すなわち内燃機関1の出力調節を行うことができる。
そして、内燃機関1の運転状態が両弁等リフト領域と片弁大リフト領域との境界をまたいで移行した場合には、片弁切換機構72の作動により、両弁等リフト状態と片弁大リフト状態との切り換えが行われる。
[実施の形態1の特徴]
可変動弁機構40のように、吸気弁の作用角およびリフト量を連続可変する機構を採用した場合には、可変動弁機構40が万一故障した場合であっても、車両の退避走行を確実に可能とすることが、フェイルセーフの観点から要請される。
本実施形態における可変動弁機構40の故障(異常)とは、可変動弁機構40の構成部品(モータ46、歯車機構48、制御軸41、アーム類、ローラ、ベアリング等)の損傷、破損により、作用角およびリフト量の可変動作が円滑に行えない状態や、可変動作が不能になる状態を言うものとする。
可変動弁機構40の上記のような故障は、図7のマップで定められる目標の作用角およびリフト量に、回転角センサ47により検出される実際の作用角およびリフト量が追従しているかどうかにより、検知することができる。すなわち、目標の作用角およびリフト量と、実際の作用角およびリフト量とに間に食い違いがあれば、可変動弁機構40に故障が発生したと判断することができる。
ところで、本実施形態の吸気弁動弁機構では、片弁大リフト状態とすることにより、第2吸気弁14Rを常に最大の作用角およびリフト量に固定することができる。一方の第2吸気弁14Rが最大の作用角およびリフト量になっていれば、もう一方の第1吸気弁14Lの作用角およびリフト量が最小だったとしても、最大吸入量の半分以上の筒内吸入空気量を確保することが可能である。従って、片弁大リフト状態のときには、内燃機関1の最大出力(最大トルク)の少なくとも半分以上の出力(トルク)を発揮することが可能である。そして、最大出力の半分の出力を発揮できれば、退避走行を行うことは十分に可能である。
そこで、本実施形態では、可変動弁機構40の故障が検知された場合には、それ以降、図7に示すマップにかかわらずに、片弁大リフト状態を維持する制御を行うこととした。
この制御によれば、可変動弁機構40の故障を検知した時点で、既に片弁大リフト状態にあった場合、すなわち連結ピン74がピン穴76に挿入された状態にあった場合には、その状態を継続するべく、OCV84が閉じた状態に維持される。
一方、可変動弁機構40の故障を検知した時点で、両弁等リフト状態にあった場合、すなわち連結ピン74がピン穴76に挿入していない状態にあった場合には、片弁大リフト状態へ移行するべく、連結ピン74をピン穴76に挿入する必要がある。前述したように、ゼロリフト状態で連結ピン74とピン穴76との位置を一致させるには、可変動弁機構40が所定の作用角およびリフト量の状態にあることが必要である。このため、可変動弁機構40の故障後に連結ピン74をピン穴76に挿入しようとした場合には、連結ピン74とピン穴76との位置が一致していない可能性が大であるとともに、可変動弁機構40が故障しているので、両者の位置を一致させることも困難である。
そこで、本実施形態では、以下に説明するように、片弁切換機構72の構造に工夫を加えることにより、連結ピン74とピン穴76との中心位置が一致していない状態でも、連結ピン74をピン穴76に挿入できるようにした。
図8は、片弁切換機構72を拡大して示す断面図である。図8(A)に示すように、ピン穴76の入口部分には、ガイド面79が形成されている。図8(A)では、連結ピン74とピン穴76との中心位置がずれた状態になっている。このような場合であっても、油圧により連結ピン74が押し出される過程で、連結ピン74の先端周縁部がガイド面79に沿って摺動することにより、連結ピン74がピン穴76の中心方向へ案内される。その結果、図8(B)に示すように、連結ピン74とピン穴76との中心位置が一致し、連結ピン74をピン穴76に挿入することが可能となる。
このように、本実施形態では、可変動弁機構40がいかなる大きさの作用角およびリフト量の状態で故障した場合であっても、連結ピン74をピン穴76に挿入することができるので、両弁等リフト状態と片弁大リフト状態との切り換えを行うことができる。
[実施の形態1における具体的処理]
図9は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。なお、本ルーチンは、所定時間ごとに周期的に実行されるものとする。
図9に示すルーチンによれば、まず、可変動弁機構40が実現している作用角およびリフト量が検出される(ステップS100)。この現実の作用角およびリフト量は、前述したように回転角センサ47の信号に基づいて算出することができる。
次に、可変動弁機構40が正常に動作しているか否かが判断される(ステップS110)。具体的には、まず、上記ステップS100で検出された現実の作用角およびリフト量と、目標の作用角およびリフト量とを比較する。目標の作用角およびリフト量は、現在の機関回転数NEおよび負荷に基づき、図7に示す作用角・リフト量マップに従って、他のルーチンにおいて算出されているものとする。そして、作用角およびリフト量の現実値と目標値との偏差が所定の判定値以下であった場合には、可変動弁機構40が正常に動作していると判断できる。この場合には、そのまま本ルーチンを終了する。
これに対し、上記ステップS110において、作用角およびリフト量の現実値と目標値との偏差が所定の判定値を超えていた場合には、運転状態に応じた適切な作用角およびリフト量が得られていない事態となっており、可変動弁機構40に異常(故障)が生じていると判断できる。そこで、この場合には、十分な退避走行性能を確保するべく、これ以降、片弁大リフト状態で内燃機関1を運転する。
具体的には、まず、現在の運転状態が作用角・リフト量マップにおける片弁大リフト領域にあるか否かが判別される(ステップS120)。現在の運転状態が片弁大リフト領域にあった場合には片弁大リフト状態が既に実現されている。そこで、この場合には、以降、作用角・リフト量マップに従うことを禁止し、片弁大リフト状態をそのまま維持するように、OCV84を制御する(ステップS121)。
一方、上記ステップS120において、現在の運転状態が両弁等リフト領域にあった場合には、現在は両弁等リフト状態にあるので、片弁大リフト状態への切換動作を行う(ステップS130)。具体的には、OCV84を閉じて連結ピン74を油圧により押し出して、ピン穴76に挿入する。そして、ステップS130では、連結ピン74の挿入後、作用角・リフト量マップに従うことを禁止し、片弁大リフト状態を維持するように、OCV84を制御する。
上記の処理により、可変動弁機構40に異常が発生した場合には、それ以降、常に片弁大リフト状態で内燃機関1が運転される。このため、退避走行に必要な出力を発生するための筒内吸入空気量を確実に確保することができる。そして、本ルーチンでは、次に、車両の運転者に、可変動弁機構40に異常が発生した旨を報知する(ステップS140)。この報知は、例えばインストルメントパネル内のウォーニングランプを点灯することなどにより行われる。可変動弁機構40の異常を運転者に報知することにより、運転者に、退避走行中の走行安全と機関保護への配慮を喚起するととともに、異常個所の早期確認および修理を促すことができる。
以上説明したように、本実施形態では、可変動弁機構40が故障したときであっても、退避走行性能を確実に確保することができる。このため、退避走行性能確保のために吸気弁の作用角およびリフト量の最小値が制限されることがないので、可変動弁機構40による燃費改善効果を最大限に活用することができる。
すなわち、本実施形態では、部分負荷時の出力調節を、アイドル運転付近の低負荷領域も含めて、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの作用角およびリフト量の連続可変によって行うことが可能である。このため、ポンピングロス(スロットルロス)を最大限に削減することができ、燃費を大幅に改善することができる。
また、本実施形態では、退避走行時、片弁大リフト状態とされるので、最大出力のほぼ半分またはそれ以上の出力を発揮することが可能である。このため、比較的大きな出力を要する退避走行も行うことができる。
また、本実施形態では、通常運転時にも運転領域によっては片弁大リフト状態を使用することとしている。このため、退避走行時の機関運転状態と通常時の正常な機関運転状態との乖離が少ないので、違和感のない安全な退避走行を行うことができる。
また、上述した実施の形態1においては、第2吸気弁14Rが前記第1の発明における「吸気弁」に、片弁切換機構72が前記第1の発明における「切換機構」に、それぞれ相当している。また、ECU60が、上記ステップS100およびS110の処理を実行することにより前記第1の発明における「異常検知手段」が、上記ステップS120、S122およびS130の処理を実行することにより、前記第1の発明における「フェイルセーフ手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、揺動カムアーム50Rが前記第7の発明における「可変側揺動部材」に、大リフトアーム71が前記第7の発明における「固定側揺動部材」に、それぞれ相当している。
実施の形態2.
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。本実施形態のシステムは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を用いて、ECU60に、図9に示すルーチンに代えて、後述する図10に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
[実施の形態2の特徴]
可変動弁機構40の故障後に退避走行を行う場合には、内燃機関1にできるだけ負担のかからない機関運転がなされるのが好ましい。そこで、本実施形態では、退避走行を行う場合には、正常時における片弁大リフト領域内での最大出力点での機関回転数NEおよび負荷より低い範囲に、内燃機関1の運転領域を制限することとした。
また、退避走行時には、内燃機関1の出力が制限されるため、車両の走行速度も制限される。運転者の立場に立つと、このことを予め知ることができた方が安心である。そこで、本実施形態では、退避走行時、車両の走行可能速度を推定し、それを運転者に知らせることとした。
[実施の形態2における具体的処理]
図10は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。なお、図10において、図9に示すステップと同一のステップには、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図10に示すルーチンによれば、ステップS100からS121およびS130までは前記実施の形態1と同様の処理が行われる。すなわち、可変動弁機構40の異常が検知された場合には、それ以降、片弁大リフト状態に強制的に固定される。
次に、内燃機関1の運転領域を、正常時における片弁大リフト領域内での最大出力点の機関回転数NEおよび負荷より低い範囲に制限する制御が開始される(ステップS150)。具体的には、内燃機関1の機関回転数NEおよび負荷が、上記制限範囲を超えないように、燃料噴射量を制限する。これにより、内燃機関1の運転状態が、比較的低い機関回転数NEおよび負荷の領域に限定されるので、退避走行中に内燃機関1にかかる負担を小さくすることができる。このため、退避走行中に可変動弁機構40の損傷がそれ以上に進展・拡大するのを確実に防止することができる。
次に、エアフロメータ26の信号に基づいて、現在の退避走行状態における吸入空気量が検出される(ステップS160)。そして、この検出された吸入空気量に基づいて、走行可能速度が推定される(ステップS170)。具体的には、まず、検出された吸入空気量の下で発生可能な現状での最大出力を算出する。ECU60には、吸入空気量と最大出力との相関関係が予め記憶されており、その相関関係に基づいて、現状での最大出力が算出される。ECU60には、更に、車両の走行性能曲線情報が予め記憶されている。その走行性能曲線情報に、上記現状での最大出力を照らし合わせることにより、走行可能速度が算出される。この場合、走行可能速度は、道路勾配毎に算出してもよい。
上記ステップS170で算出された走行可能速度の情報は、可変動弁装置40の故障のために機関出力を制限している旨の情報とともに、例えばインストルメントパネル内に設けた表示部に表示され、運転者に報知される(ステップS180)。これにより、運転者は、現状での走行可能速度を知ることができるので、予定の時間までに目的地へ到達することができるかどうかなどを判断することができ、不安を感じずに済む。
上述した実施の形態2においては、ECU60が、上記ステップS150の処理を実行することにより前記第2の発明における「運転領域制限手段」が、上記ステップS160およびS170の処理を実行することにより、前記第3の発明における「走行可能速度推定手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態3.
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。本実施形態のシステムは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を用いて、ECU60に、図9に示すルーチンに代えて、後述する図11に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
[実施の形態3の特徴]
可変動弁機構40の故障後に退避走行している場合にも、一旦駐車して内燃機関1を停止したい場合もあり得る。通常の制御では、内燃機関1が停止されると、すなわちイグニッションスイッチがオフされると、OCV84への通電(デューティー信号印加)も停止されるようになっている。OCV84への通電が停止されると、OCV84はデフォルト状態である開状態になり、その結果、連結ピン74に付加されていた油圧が抜けるので、リターンスプリング77によって連結ピン74が押し戻されてしまう。
すなわち、片弁大リフト状態に固定して退避走行をしている途中で、内燃機関1を停止すると、その停止期間中に揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71との連結が自然に解除され、両弁等リフト状態に戻ってしまう。この場合、仮に可変動弁機構40が小さな作用角およびリフト量の状態で固着していたとすると、内燃機関1を再始動するとき、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの両方ともが小さな作用角およびリフト量でしか開弁しないこととなる。このような場合には、筒内吸入空気量が少なすぎて、再始動ができないおそれがある。
そこで、本実施形態では、退避走行する場合には、イグニッションスイッチがオフされた後もOCV84への通電を継続するように、ECU60の制御内容を変更することとした。これにより、内燃機関1の停止中も片弁大リフト状態が維持され、再始動を片弁大リフト状態で行うことができる。よって、再始動時、筒内吸入空気量を十分確保することができ、再始動を確実に行うことができる。なお、イグニッションスイッチがオフの状態でも、ECU60にはバッテリからの通電を継続しているのが普通であるので、上記のように制御内容を変更することは容易に可能である。
[実施の形態3における具体的処理]
図11は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。なお、図11において、図9に示すステップと同一のステップには、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図11に示すルーチンは、図9に示すルーチンと比べて、ステップS110とS120との間にステップS111およびS112が挿入されていること以外は同一である。
すなわち、図11に示すルーチンによれば、ステップS110で可変動弁機構40の異常が検知された場合には、次に、ステップS100で検出された現実の作用角およびリフト量が、両弁等リフト状態になったとしても再始動可能な作用角およびリフト量であるかどうかを判別する(ステップS111)。ECU60には、両弁等リフト状態で確実に再始動が可能な最小の作用角およびリフト量が予め記憶されており、これとの比較により、ステップS111の判別を行う。
上記ステップS111において、両弁等リフト状態では再始動できない小さな作用角およびリフト量だった場合には、次に、イグニッションスイッチがオフされた後にもOCV84への通電を継続するように、ECU60の制御内容の一部を変更する(ステップS112)。その後は、実施の形態1と同様のステップS120以下の処理が実行される。
一方、上記ステップS111において、両弁等リフト状態でも再始動可能な比較的大きい作用角およびリフト量だった場合には、内燃機関1の停止中に片弁大リフト状態から両弁等リフト状態へ戻ってしまったとしても、再始動に問題はない。そこで、この場合には、上記ステップS112の処理をスキップして、ステップS120以下の処理を実行する。
以上の処理により、本実施形態では、退避走行時、可変動弁機構40が小さな作用角およびリフト量の状態で固着していた場合であっても、内燃機関1の再始動を確実に行うことができる。
なお、上述した実施の形態3においては、ECU60が上記ステップS112の処理を実行することにより前記第4の発明における「維持手段」が実現されている。
実施の形態4.
次に、図12を参照して、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。本実施形態のシステムは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を用いて、ECU60に、図9に示すルーチンに代えて、後述する図12に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
[実施の形態4の特徴]
内燃機関1の減速時には、燃料の節約等の目的で、フューエルカットを行うのが普通である。それゆえ、内燃機関1の減速時には、吸気通路から排気通路にかけて燃料を含まない空気が流通する。一方、内燃機関1の排気通路に配置されている排気浄化触媒は、高温環境下でリーンなガスの供給を受けることにより劣化し易いという特性を有している。このため、フューエルカット中における触媒の劣化を抑制するうえでは、内燃機関1の減速時における流通空気量を少量とすることが望まれる。そこで、通常時の制御においては、内燃機関1の減速時、第1吸気弁14Lおよび第2吸気弁14Rの双方の作用角およびリフト量を小さくして流通空気量を少なくするために、両弁等リフト状態が選択される。
これに対し、前述した実施の形態1〜3では、可変動弁機構40が故障した場合、内燃機関1の運転状態によらず、片弁大リフト状態に強制的に固定されるので、内燃機関1の減速時も片弁大リフト状態が維持される。その結果、フューエルカット中に触媒を流れる空気量が多くなるため、触媒の劣化が進行し易い。
そこで、本実施形態では、可変動弁機構40の異常が検知された場合であっても、内燃機関1の減速中は片弁大リフト状態に強制的に固定する制御を行わずに、通常時と同じ制御を行い、内燃機関1の減速が終了した後に、片弁大リフト状態に強制的に固定する制御を行うこととした。
[実施の形態4における具体的処理]
図12は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。なお、図12において、図9に示すステップと同一のステップには、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図11に示すルーチンは、図9に示すルーチンと比べて、ステップS110とS120との間にステップS115が挿入されていること以外は同一である。
すなわち、図11に示すルーチンによれば、ステップS110で可変動弁機構40の異常が検知された場合には、次に、内燃機関1が減速中であるか否かが判別される(ステップS115)。具体的には、アクセル開度がゼロであり、かつ機関回転数NEが所定値以上である場合には、内燃機関1が減速中であると判別される。あるいは、車速変化率やブレーキ信号等を利用して内燃機関1の減速を判定してもよい。
上記ステップS115で、内燃機関1が減速中であることが認められた場合には、以下の処理を行うことなく、本ルーチンが終了される。これにより、吸気弁動弁機構に対しては、図7に示すマップに従った通常制御が行われるので、両弁等リフト状態とされる。このため、減速フューエルカット中に排気浄化触媒に流通する空気量を片弁大リフト状態に比して少量とすることができるので、排気浄化触媒の劣化を抑制することができる。
内燃機関1の減速が終了すると、上記ステップS115において減速中でないことが認められる。この場合には、その後、実施の形態1と同様のステップS120以下の処理が実行される。これにより、片弁大リフト状態に強制的に固定され、退避走行性能を確保することができる。
なお、上述した実施の形態4においては、ECU60が、内燃機関1の減速時にフューエルカットを実行することにより前記第5の発明における「フューエルカット手段」が、上記ステップS115の処理を実行することにより前記第5の発明における「禁止手段」が、それぞれ実現されている。
以上述べた各実施の形態では、両弁等リフト状態と片弁大リフト状態とを切り換える機能を備えたシステムについて説明したが、本発明は、そのような切り換え機能を備えたシステムに限定されるものではない。例えば、本発明は、通常時に同一気筒の二つの吸気弁の作用角およびリフト量を連続的に可変とする可変動弁機構と、この可変動弁機構の異常時に、退避走行可能な空気量を確保し得る所定の作用角およびリフト量でその二つの吸気弁を駆動可能な固定動弁機構とを備えたシステムに適用することも可能である。すなわち、本発明における固定動弁機構は、通常時には利用されず、可変動弁機構の異常時にのみ利用されるものでもよい。
また、本発明における可変動弁機構は、吸気弁の作用角およびリフト量の双方を連続的に可変とするものに限定されるものではなく、作用角およびリフト量の一方を連続的に可変とするものであってもよい。また、本発明では、一気筒当たりの吸気弁の数は2個に限定されるものではなく、1個でも、3個以上でもよい。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 本発明の実施の形態1における吸気弁動弁機構の構成を説明するための斜視図である。 図2に示す吸気弁動弁機構を吸気カム軸に平行な方向から見た図である。 可変動弁機構および固定動弁機構の一部分の分解斜視図である。 連結ピンを作動させるための油圧系の構成を示す概略図である。 両弁等リフト状態および片弁大リフト状態での第1吸気弁および第2吸気弁のリフト線図である。 第1吸気弁および第2吸気弁の作用角およびリフト量のマップである。 片弁切換機構を拡大して示す断面図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態3において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態4において実行されるルーチンのフローチャートである。
符号の説明
1 内燃機関
6 クランク角センサ
10 燃焼室
11 点火プラグ
12 吸気ポート
14 吸気弁
15 吸気カム軸
16,17 吸気カム
19 吸気通路
20 インジェクタ
22 スロットル弁
24 アクセル開度センサ
25 スロットル開度センサ
26 エアフロメータ
28 排気ポート
30 排気通路
35 ロッカーアーム
36 ロッカーローラ
37 油圧式ラッシュアジャスタ
38 ロストモーションスプリング
40 可変動弁機構
41 制御軸
42 制御アーム
44 中間アーム
45 ピン
46 モータ
47 回転角センサ
48 歯車機構
50 揺動カムアーム
52 第1ローラ
53 第2ローラ
54 連結軸
60 ECU
70 固定動弁機構
71 大リフトアーム
72 片弁切換機構
73 ローラ
74 連結ピン
75 ピン収納穴
76 ピン穴
77 リターンスプリング
78 ピストン
79 ガイド面
81 油路
82 オイルポンプ
83 排出路
84 OCV
85 オリフィス

Claims (7)

  1. 連続的に可変な作用角および/またはリフト量で吸気弁を駆動可能な可変動弁機構と、
    退避走行に必要な出力を発生可能な吸入空気量を確保できる所定の作用角およびリフト量で前記吸気弁を駆動可能な固定動弁機構と、
    前記吸気弁が前記可変動弁機構に従動する状態と、前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とを切り換える切換機構と、
    前記可変動弁機構の異常を検知する異常検知手段と、
    前記可変動弁機構の異常が検知された場合に、前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とするフェイルセーフ手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた場合に、前記内燃機関の運転領域を所定の機関回転数および負荷より低い側の範囲に制限する運転領域制限手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた場合に、その後の退避走行における走行可能速度を推定する走行可能速度推定手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記フェイルセーフ手段により前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動する状態とされた後に前記内燃機関の運転が停止された場合に、再始動時にも前記吸気弁が前記固定動弁機構に従動するように、前記切換機構の状態を維持する維持手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記内燃機関の減速時にフューエルカットを行うフューエルカット手段と、
    前記フューエルカットの実行中は、前記フェイルセーフ手段が機能することを禁止する禁止手段と、
    を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記内燃機関は、一気筒当たり複数の吸気弁を備えるものであり、
    前記可変動弁機構は、前記複数の吸気弁のすべてを駆動対象とするものであり、
    前記固定動弁機構は、前記複数の吸気弁のうちの一部を駆動対象とするものであり、
    前記切換機構は、前記一部の吸気弁が前記固定動弁機構に従動し、他の吸気弁が前記可変動弁装置に従動する状態に切り換え可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記可変動弁機構は、作用角および/またはリフト量に応じて変化する振幅で、カムの回転に同期して揺動する可変側揺動部材を有し、
    前記固定動弁機構は、前記可変側揺動部材に隣接して配置され、カムの回転に同期して所定の振幅で揺動する固定側揺動部材を有し、
    前記切換機構は、前記可変側揺動部材および前記固定側揺動部材の一方に設置された進退可能な連結ピンと、
    前記可変側揺動部材および前記固定側揺動部材の他方に形成され、前記連結ピンが挿入可能なピン穴とを有し、
    前記ピン穴の入口部分には、前記連結ピンと前記ピン穴との中心位置が一致していない状態でも挿入を可能とするように前記連結ピンを案内するガイド面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
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