JPWO2007037177A1 - 可変動弁装置 - Google Patents

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Abstract

両弁可変状態と片弁可変状態とを切り換える切換機構を備えた可変動弁装置に関し、切換機構の耐久性の向上を図る。車両発進前のアイドリング時は、内燃機関の運転状態は片弁小リフト領域にある(点A)。このときは、片弁可変状態とされている。車両発進後、運転状態は点A→B→Cと変化し、両弁大リフト領域へ移行する。その後、シフトアップするために、クラッチが切られ、アクセルペダルが解放されると、運転状態は片弁小リフト領域の点Aへ戻る。この場合において、両弁大リフト領域にある時間は短く、両弁可変状態へ切り換える実益は薄いので、点B→Cにおいて両弁可変状態への切換動作を禁止する。

Description

本発明は、可変動弁装置に係り、特に、バルブの開弁量を機械的に変更可能な可変動弁装置に関する。
従来、例えば、特許文献1に記載されるように、内燃機関の運転状況に応じてバルブのリフト量や作用角を機械的に変更する可変動弁装置が知られている。
特許文献1に記載される可変動弁装置では、カム軸に2つの回転カムが配置され、同一気筒に配置された2つの吸気バルブのうち、第1吸気バルブは第1回転カムによって開閉駆動され、第2吸気バルブは第2回転カムによって開閉駆動されるようになっている。そして、第1回転カムと第1吸気バルブとの間、および第2回転カムと第2吸気バルブとの間には、それぞれ四節リンク機構から構成される可変動弁伝達機構が配置されている。
上記可変動弁装置の四節リンク機構は、回転カムに当接する入力部を有する入力アーム、入力アームに揺動可能に連結される伝達アーム、伝達アームと揺動可能に連結されるとともに回転制御軸周りに揺動可能とされ、回転カムから伝達される駆動力を吸気バルブの開閉を行う出力部へ伝達する揺動アーム、および、回転制御軸を回転中心として回転駆動するとともに、入力アームと揺動可能に連結されるコントロールアーム、から構成されている。四節リンク機構の姿勢を制御して回転カムと入力部との相対位置を変更することで、吸気バルブの作用角およびリフト量を機械的に変更することができる。
また、上記可変動弁装置には、第1吸気バルブに係る四節リンク機構(第1リンク機構)と第2吸気バルブに係る四節リンク機構(第2リンク機構)とを連結する連結機構と、連結解除時に第2リンク機構の姿勢を第2吸気バルブの作用角が最大値になる姿勢に保持するための機構とが設けられている。連結機構は、各四節リンク機構のコントロールアームに形成された貫通穴と、貫通穴内に挿入される連結ピンとから構成されている。また、連結解除時に第2リンク機構の姿勢を保持する機構は、固定プレートに形成された貫通穴と、第2リンク機構のコントロールアーム(第2コントロールアーム)に形成された貫通穴と、前記の連結ピンとから構成されている。
連結ピンは、常に第2コントロールアームの貫通穴に係合しており、第2コントロールアームの貫通穴に係合したまま、第1リンク機構のコントロールアーム(第1コントロールアーム)側にも、固定プレート側にも移動できるようになっている。連結ピンが第1コントロールアーム側に移動し、第1コントロールアームの貫通穴に挿入されることで、第2コントロールアームは第1コントロールアームと連結ピンを介して連結される。コントロールアーム同士が連結されることで、第1リンク機構と第2リンク機構とは常に同一の姿勢をとることになる。したがって、この場合は、第1バルブと第2バルブとを同一の開弁量に制御することができる。
逆に、連結ピンが固定プレート側に移動し、固定プレートの貫通穴に挿入されることで、第2コントロールアームは固定プレートと連結ピンを介して連結される。第2コントロールアームと固定プレートが連結されることで、第2リンク機構の姿勢は一定の姿勢に固定されることになる。この場合は、第1リンク機構の姿勢を制御して回転カムと入力部との相対位置を変更することで、第2バルブの開弁量を固定した状態で、第1バルブの開弁量のみを機械的に変更することができる。
つまり、上記可変動弁装置によれば、第1吸気バルブと第2吸気バルブの開弁量を同一とする場合と、第1吸気バルブと第2吸気バルブの開弁量を相違させる場合とを選択的に実行することができる。これにより、第1吸気バルブと第2吸気バルブとの開弁量、特に各バルブのリフト量を相違させることによって、吸入流量を相違させ、燃焼室内においてスワール(旋回流)を発生させることが可能となり、燃焼室内における燃焼の安定化を図ることが可能となる。
日本特開2004−100555号公報
上述したように、上記可変動弁装置によれば、第1および第2吸気バルブの双方の開弁量を共に変化させ得る両弁可変状態と、第2吸気バルブの開弁量を固定して第1吸気バルブのみの開弁量を変化させる片弁可変状態との切り換えが可能である。両弁可変状態から片弁可変状態へ切り換える際には、第1コントロールアームのピン穴から連結ピンを抜く動作と、固定プレートのピン穴に連結ピンを挿入する動作の2つの動作が必要となる。また、片弁可変状態から両弁可変状態へ切り換える際には、固定プレートのピン穴から連結ピンを抜く動作と、第1コントロールアームのピン穴に連結ピンを挿入する動作の2つの動作が必要となる。
上記のような内燃機関では、運転状態に応じて、両弁可変状態と片弁可変状態とが切り換えられる。例えば、低回転・低負荷域においては、筒内にスワールを形成して燃焼改善を図る要求があるため片弁可変状態とされ、高回転・高負荷域においては多量の空気を吸入する要求があるため両弁可変状態とされる。つまり、内燃機関の制御装置は、運転領域のうちで、両弁可変状態とすべき両弁可変領域と、片弁可変状態とすべき片弁可変領域とを区分する規則を記憶しており、内燃機関の運転状態が両領域の境界を跨いで変化したら、それに応じて両弁可変状態と片弁可変状態との切り換えを行う。
しかしながら、両弁可変状態と片弁可変状態との切り換えが頻繁に行われると、切換機構を構成する上記の連結ピンやピン穴の摩耗が早期に進行してしまい、切換機構の耐久性に悪影響を及ぼし易い。また、切り換えが頻繁に行われると、切換動作に失敗する可能性も出てくる。万一、切換動作に失敗した場合には、本来の開弁特性が得られず、燃費やドライバビリティの観点で所期の性能を発揮することができなくなってしまう。
この発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、両弁可変状態と片弁可変状態とを切り換える切換機構を備えた可変動弁装置において、切換機構の耐久性の向上が図れる可変動弁装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、可変動弁装置であって、
同一気筒に設けられた同種の第1バルブおよび第2バルブの双方の開弁量を連続的に可変とする両弁可変状態と、前記第1バルブの開弁量を連続的に可変とし、前記第2バルブの開弁量を固定とする片弁可変状態とを切り換える切換機構を有する動弁機構と、
内燃機関の運転領域のうち、前記両弁可変状態にすべき両弁可変領域と、前記片弁可変状態にすべき片弁可変領域とを区分する規則を記憶した記憶手段と、
前記規則に従って前記切換機構に切換動作を行わせる通常制御手段と、
内燃機関の運転状態が前記両弁可変領域および前記片弁可変領域の一方から他方へ移行した場合に短時間のうちに元の領域へ戻ることが予想される所定の状況の成立を判断する状況判断手段と、
前記所定の状況が成立している場合には、前記切換動作を禁止する禁止手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記所定の状況は、前記内燃機関と車両の駆動輪との間に介在する変速機の変速実行時から所定時間内にある状況であることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1の発明において、
前記所定の状況は、前記内燃機関と車両の駆動輪との間に介在する変速機のシフト位置がニュートラルまたはパーキングレンジにある状況であることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
内燃機関の運転状態が前記両弁可変領域および前記片弁可変領域の一方から他方へ移行した後、所定時間が経過しても元の領域へ戻らない場合には、前記切換動作の禁止を解除する禁止解除手段を備えることを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記禁止手段による禁止の回数または禁止の累積時間を計測する計測手段と、
前記禁止の回数または前記禁止の累積時間が所定値を超えた場合には、前記所定の状況が成立している場合であっても、前記切換機構の切換動作を許容する許容手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、
前記禁止手段により前記切換動作が禁止された場合に、目標開弁量を制限する開弁量制限手段を更に備えることを特徴とする。
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記動弁機構は、
前記両弁可変状態のときには前記第1バルブおよび前記第2バルブの双方を駆動し、前記片弁可変状態のときには前記第1バルブのみを駆動するメインカムと、
前記片弁可変状態のときに前記第2バルブを駆動するサブカムと、
を含み、
前記開弁量制限手段は、前記禁止手段により前記片弁可変状態から前記両弁可変状態への切換動作が禁止されて前記片弁可変状態に維持された場合に、前記サブカムとその相手側部材とが離間しないような範囲に目標開弁量を制限することを特徴とする。
第1の発明によれば、両弁可変状態と片弁可変状態とを、切換機構によって切り換えることができる。この切換動作は、内燃機関の運転状態に応じて、両弁可変領域と片弁可変領域とを区分する規則に従って行われる。ただし、両弁可変領域および片弁可変領域の一方から他方へ運転状態が移行した際、短時間のうちに元の領域へ戻ることが予想される所定の状況が成立している場合には、切換動作が禁止される。このため、この発明によれば、不要な切換動作を行うことを回避して、切換動作の頻度を少なくすることができる。よって、切換機構の摩耗や傷付きを抑制することができ、切換機構の耐久性を向上することができる。また、切換動作に失敗する可能性を小さくすることもできるので、運転状態に応じた開弁特性を常に実現することができ、良好な燃費特性、排気特性、およびドライバビリティを確実に得ることができる。
第2の発明によれば、変速機の変速実行直後に起き易い、不要な切換動作を確実に回避することができる。このため、走行中における切換動作の頻度を少なくすることができる。
第3の発明によれば、変速機がニュートラルまたはパーキングレンジの状態で行われるフリーアクセル運転(いわゆる空吹かし)時の不要な切換動作を確実に回避することができる。このため、フリーアクセル運転における切換動作の頻度を少なくすることができる。
第4の発明によれば、内燃機関の運転状態が両弁可変領域および片弁可変領域の一方から他方へ移行した後、短時間のうちに元の領域へ戻らなかった場合には、切換動作の禁止を解除して切換動作を実行させることができる。このため、切換動作が不要であると予想される状況であっても、切換動作が実際に必要とされている場合には切換動作を実行させることができ、好適な開弁特性を実現することができる。
第5の発明によれば、切換動作が禁止された回数または禁止された累積時間が所定値を超えた場合には、切換動作が不要と予想される状況が成立している場合であっても、切換動作を実行させることができる。これにより、如何なる状況においても、切換機構の機能を保持する上で必要な頻度の切換動作を実行させることができる。このため、長時間の不作動に起因して切換機構が固着するなどの弊害を防止することができる。
第6の発明によれば、両弁可変状態と片弁可変状態との切換動作が禁止された場合に、目標開弁量を制限することができる。このため、切換動作の禁止に伴う弊害(例えば騒音など)の発生を確実に防止することができる。
第7の発明によれば、動弁機構が、両弁可変状態のときには第1バルブおよび第2バルブの双方を駆動し、片弁可変状態のときには第1バルブのみを駆動するメインカムと、片弁可変状態のときに第2バルブを駆動するサブカムとを含む場合において、片弁可変状態から両弁可変状態への切換動作が禁止されて片弁可変状態に維持された場合に、サブカムとその相手側部材とが離間しないような範囲に目標開弁量を制限することができる。このため、離間したサブカムと相手側部材とが再接触(衝突)することを確実に防止することができるので、その衝撃で騒音が発生したり、サブカムや相手側部材の表面が損傷したりすることをより確実に防止することができる。
本発明の実施の形態1の可変動弁装置を備えたシステムの構成を説明するための図である。 本実施形態の可変動弁装置が備える動弁機構の構成を説明するための斜視図である。 図2に示す動弁機構における可変動弁機構の構成を説明するための図である。 図2に示す可変動弁機構及び固定動弁機構を示す分解斜視図である。 切換ピンを作動させるための油圧系の構成を示す概略図である。 両弁可変状態と片弁可変状態との切換マップを示す図である。 両弁可変状態と片弁可変状態との切換マップを示す図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態3において実行されるルーチンのフローチャートである。 第1吸気バルブおよび第2吸気バルブのバルブリフト(リフトカーブ)を示す図である。
符号の説明
1 内燃機関
2 気筒
3 ピストン
4 シリンダブロック
5 クランクシャフト
6 クランク角センサ
8 シリンダヘッド
10 燃焼室
11 点火プラグ
12 吸気ポート
14 吸気バルブ
15 吸気カム軸
16,17 吸気カム
18 可変動弁装置
19 吸気通路
20 インジェクタ
21 サージタンク
22 スロットルバルブ
23 スロットルモータ
24 アクセル開度センサ
25 スロットル開度センサ
26 エアフロメータ
27 エアクリーナ
28 排気ポート
30 排気通路
31 空燃比センサ
35 ロッカーアーム
36 ロッカーローラ
37 油圧式ラッシュアジャスタ
38 ロストモーションスプリング
40 可変動弁機構
41 制御軸
42 制御アーム
43 ボルト
44 中間アーム
45 ピン
50 揺動カムアーム
52 第1ローラ
53 第2ローラ
54 連結軸
60 ECU
62 シフトポジションセンサ
70 固定動弁機構
71 大リフトアーム
72 アーム連結機構
73 入力ローラ
74 切換ピン
75 油圧室
76 ピン穴
77 リターンスプリング
78 ピストン
81 油路
82 ポンプ
83 排出路
84 排出弁
85 オリフィス
実施の形態1.
[システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態1の可変動弁装置を備えたシステムの構成を説明するための図である。本実施の形態1のシステムは、動力源として車両に搭載された内燃機関1を備えている。内燃機関1は、複数の気筒2を有している。図1には、複数気筒のうちの1気筒のみを示している。
内燃機関1は、筒内にピストン3を収納したシリンダブロック4を備えている。ピストン3は、コンロッドを介してクランクシャフト5と接続されている。クランクシャフト5の近傍には、クランク角センサ6が設けられている。クランク角センサ6は、クランクシャフト5の回転角度を検出するように構成されている。
シリンダブロック4の上部にはシリンダヘッド8が組み付けられている。ピストン3上面からシリンダヘッド8までの空間は燃焼室10を形成している。シリンダヘッド8には、燃焼室10内の混合気に点火する点火プラグ11が設けられている。
シリンダヘッド8は、燃焼室10と連通する吸気ポート12を備えている。吸気ポート12と燃焼室10との接続部には吸気バルブ14が設けられている。吸気バルブ14と吸気カム軸15の吸気カム16との間には、動弁機構18が設けられている。動弁機構18の詳細については、後述する。
吸気ポート12には、吸気通路19が接続されている。吸気ポート12の近傍には、吸気ポート12内に燃料を噴射するインジェクタ20が設けられている。吸気通路19の途中にはサージタンク21が設けられている。
サージタンク21の上流にはスロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22は、スロットルモータ23により駆動される電子制御式のバルブである。スロットルバルブ22は、アクセル開度センサ24により検出されるアクセル開度AAに基づいて駆動されるものである。スロットルバルブ22の近傍には、スロットル開度センサ25が設けられている。スロットル開度センサ25は、スロットル開度TAを検出するように構成されている。スロットルバルブ22の上流には、エアフロメータ26が設けられている。エアフロメータ26は吸入空気量Gaを検出するように構成されている。エアフロメータ26の上流にはエアクリーナ27が設けられている。
また、シリンダヘッド8は、燃焼室10と連通する排気ポート28を備えている。排気ポート28と燃焼室10との接続部には排気バルブ29が設けられている。排気ポート28には排気通路30が接続されている。排気通路30には、排気空燃比を検出する空燃比センサ31が設けられている。
また、本実施の形態のシステムは、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60の出力側には、点火プラグ11、動弁機構18、インジェクタ20、スロットルモータ23のほか、後述する排出弁84(図5参照)等が接続されている。ECU60の入力側には、クランク角センサ6、スロットル開度センサ25、アクセル開度センサ24、エアフロメータ26、空燃比センサ31等が接続されている。ECU60は、各センサの出力に基づいて、燃料噴射制御や点火時期制御のような内燃機関全体の制御を実行する。
内燃機関1と、車両の駆動輪との間には、変速機(図示せず)が介在している。ECU60には、この変速機のシフト位置を検出するシフトポジションセンサ62が更に接続されている。なお、この変速機は、手動変速機、自動変速機の何れでも良い。
[可変動弁装置の構成]
図2は、本実施形態の可変動弁装置が備える動弁機構18の構成を説明するための斜視図である。
図2に示すように、吸気カム軸15には、1気筒当たり2つの吸気カム16,17が設けられている。そして、第1吸気カム16を中心にして左右対称に2つの第1吸気バルブ14Lおよび第2吸気バルブ14Rが配置されている。第1吸気カム16と吸気バルブ14L,14Rとの間には、第1吸気カム16の回転運動に各吸気バルブ14L,14Rのリフト運動を連動させる可変動弁機構40L,40Rがそれぞれ設けられている。一方、第2吸気カム17は、第1吸気カム16との間で、第2吸気バルブ14Rを挟むようにして配置されている。第2吸気カム17と第2吸気バルブ14Rとの間には、第2吸気カム17の回転運動に第2吸気バルブ14Rのリフト運動を連動させる固定動弁機構70が設けられている。本動弁機構18は、第2吸気バルブ14Rのリフト連動の連動先を、可変動弁機構40Rと固定動弁機構70との間で選択的に切り換えることができるように構成されている。
(1)可変動弁機構の詳細構成
図3は、図2に示す動弁機構18における可変動弁機構40の構成を説明するための図である。具体的には、図3は、可変動弁機構40を吸気カム軸15の軸方向から見た図である。尚、左右の可変動弁機構40L,40Rは、基本的には、第1吸気カム16に対して対称形であるので、ここでは左右の可変動弁機構40L,40Rを区別することなくその構成を説明する。また、本明細書および図面では、左右の可変動弁機構40L,40Rを区別しないときには、単に可変動弁機構40と表記する。同様に、可変動弁機構40L,40Rの各構成部品や吸気バルブ14L,14R等の対称に配置されている部品については、特に区別をする必要がある時以外は、左右を区別するL、Rの記号は付けないものとする。
図3に示すように、動弁機構18は、吸気バルブ14を開方向へ押圧するロッカーアーム35を有している。可変動弁機構40は、第1吸気カム16とロッカーアーム35との間に介在している。可変動弁機構40は、第1吸気カム16の回転運動とロッカーアーム35の揺動運動との連動状態を連続的に変化させるように構成されている。
可変動弁機構40は、吸気カム軸15と平行に配置された制御軸41を有している。制御軸41には、制御アーム42がボルト43によって固定されている。制御アーム42の一部は、制御軸41の径方向に突出している。制御アーム42の突出部には、中間アーム44がピン45によって取り付けられている。ピン45は、制御軸41の中心から偏心した位置に配置されている。よって、中間アーム44は、ピン45を中心にして揺動するように構成されている。
制御軸41には、揺動カムアーム50が揺動可能に支持されている。揺動カムアーム50は、第1吸気カム16に対向する側に、スライド面50aを有する。スライド面50aは、第2ローラ53に接触するように形成されている。スライド面50aは、第2ローラ53が揺動カムアーム50の先端側から制御軸41の軸中心側に向かって移動するほど、第1吸気カム16との間隔が徐々に狭まるような曲面で形成されている。また、揺動カムアーム50は、スライド面50aの反対側に、揺動カム面51を有する。揺動カム面51は、揺動カムアーム50の揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面51aと、非作用面51aから離れた位置ほど制御軸41の軸中心からの距離が遠くなるように形成された作用面51bとで構成されている。
スライド面50aと第1吸気カム16の周面との間には、第1ローラ52と第2ローラ53が配置されている。より具体的には、第1ローラ52は、第1吸気カム16の周面と接触するように配置されている。また、第2ローラ53は、揺動カムアーム50のスライド面50aに接触するように配置されている。第1ローラ52と第2ローラ53とは、共に中間アーム44の先端部に固定された連結軸54によって回転自在に支持されている。中間アーム44は、ピン45を支点として揺動するので、これらのローラ52,53もピン45から一定距離を保ちながらスライド面50aおよび第1吸気カム16の周面に沿って揺動する。
また、揺動カムアーム50には、バネ座50bが形成されている。このバネ座50bには、ロストモーションスプリング38の一端が掛けられている。ロストモーションスプリング38の他端は、内燃機関の静止部位に固定されている。ロストモーションスプリング38は圧縮バネである。ロストモーションスプリング38から受ける付勢力により、揺動カムアーム50のスライド面50aが第2ローラ53に押し当てられ、更に、第1ローラ52が第1吸気カム16に押し当てられる。これにより、第1ローラ52及び第2ローラ53は、スライド面50aと第1吸気カム16の周面とに両側から挟み込まれた状態で位置決めされる。
揺動カムアーム50の下方には、上記ロッカーアーム35が配置されている。ロッカーアーム35には、揺動カム面51に対向するようにロッカーローラ36が設けられている。ロッカーローラ36は、ロッカーアーム35の中間部に回転自在に取り付けられている。ロッカーアーム35の一端は、バルブ14のバルブシャフト14aに当接されており、ロッカーアーム35の他端は、油圧式ラッシュアジャスタ37によって回転自在に支持されている。リフト作動の際、バルブシャフト14aは、図示しないバルブスプリングによって、閉方向、すなわち、ロッカーアーム35を押し上げる方向に付勢されている。ロッカーローラ36は、この付勢力と油圧式ラッシュアジャスタ37によって揺動カムアーム50の揺動カム面51に押し当てられている。
上述した可変動弁機構40の構成によれば、第1吸気カム16の回転に伴って、第1吸気カム16の押圧力が第1ローラ52及び第2ローラ53を介してスライド面50aに伝達される。その結果、揺動カム面51とロッカーローラ36との接点が非作用面51aから作用面51bにまで及ぶと、ロッカーアーム35が押し下げられ、バルブ14が開弁する。
また、可変動弁機構40の構成によれば、制御軸41の回転位置を変化させると、スライド面50a上における第2ローラ53の位置が変化し、リフト動作時の揺動カムアーム50の揺動範囲が変化する。より具体的には、制御軸41を図3における反時計回り方向に回転させると、スライド面50a上における第2ローラ53の位置が揺動カムアーム50の先端側に移動する。そうすると、第1吸気カム16の押圧力が伝達されることで揺動カムアーム50が揺動動作を開始した後に、現実にロッカーアーム35が押圧され始めるまでに要する揺動カムアーム50の回転角度は、制御軸41が図3における反時計回り方向に回転するほど大きくなる。つまり、制御軸41を図3における反時計回り方向に回転させることにより、バルブ14の作用角及びリフト量を小さくすることができる。逆に、制御軸41を時計回り方向に回転させることにより、バルブ14の作用角及びリフト量を大きくすることができる。
上述したように、本実施形態の可変動弁機構40は、バルブ14の作用角及びリフト量を共に可変とするものである。本明細書では、作用角及びリフト量を総称して「開弁量」と呼ぶこととする。なお、本発明における可変動弁機構は、作用角及びリフト量の一方を可変とするものでもよい。
(2)固定動弁機構の詳細構成
次に、図2及び図4を参照して、固定動弁機構70の詳細な構成について説明する。図4は、図2に示す可変動弁機構40及び固定動弁機構70を示す分解斜視図である。
図2に示すように、固定動弁機構70は、第2吸気カム17と第2揺動カムアーム50Rとの間に介在している。固定動弁機構70は、第2揺動カムアーム50Rの揺動運動を第2吸気カム17の回転運動に連動させるものである。固定動弁機構70は、第2吸気カム17によって駆動される大リフトアーム71と、大リフトアーム71を第2揺動カムアーム50Rに結合させるアーム連結機構72(図4参照)とを備えている。アーム連結機構72は、後述する切換ピン74、油圧室75、ピン穴76、リターンスプリング77及びピストン78によって構成されている。
大リフトアーム71は、制御軸41上に第2揺動カムアーム50Rと並んで配置され、第2揺動カムアーム50Rとは独立して揺動可能となっている。大リフトアーム71には、第2吸気カム17の周面に接触する入力ローラ73が回転可能に支持されている。
図4に示すように、大リフトアーム71には、バネ座71aが形成されている。このバネ座71aには、上記揺動カムアーム50と同様に、図示しないロストモーションスプリングが掛けられている。このロストモーションスプリングのバネ力によって、入力ローラ73が第2吸気カム17の周面に押し当てられる。
大リフトアーム71は、第2揺動カムアーム50Rに向けて出し入れ可能な切換ピン74を備えている。大リフトアーム71には、第2揺動カムアーム50R側に開口部を有する油圧室75が形成されている。この油圧室75内に切換ピン74が嵌め込まれている。油圧室75は、後述する油圧系に接続されている。油圧系により油圧室75内の油圧が高められた場合に、切換ピン74は、その油圧によって油圧室75から第2揺動カムアーム50Rに向けて押し出される。
一方、第2揺動カムアーム50Rには、大リフトアーム71側に開口部を有するピン穴76が形成されている。切換ピン74とピン穴76は、制御軸41の中心からの距離が等しい位置に形成されている。ピン穴76内には、その奥側からリターンスプリング77と、リフタとしてのピストン78とが配置されている。
図5は、切換ピン74を作動させるための油圧系の構成を示す概略図である。
図5に示すように、制御軸41内には、油路81が形成されている。この油路81は、油圧室75と、制御軸41と大リフトアーム71との摺動隙間と、制御軸41と第2揺動カムアーム50Rとの摺動隙間とにそれぞれ接続されている。また、この油路81は、ポンプ82に接続されている。油路81の途中には、排出路83が接続されている。排出路83には、排出弁84が設けられている。さらに、排出路83における排出弁84の下流にはオリフィス85が設けられている。
ポンプ82で加圧された潤滑油は、油路81を通って上記摺動隙間に供給される。また、油路81を流れる潤滑油の一部は、油圧室75に供給される。よって、油圧室75内の油圧を上げることができる。一方、排出弁84を開弁操作すると、排出路83から潤滑油が排出される。これにより、油圧室75内の油圧を下げることができる。油圧室75内の油圧を制御することにより、切換ピン74を作動させることができる。
[実施の形態1の特徴]
(片弁可変状態)
大リフトアーム71は第2吸気カム17に駆動されて常に揺動しているが、第2吸気カム17のベース円部分が入力ローラ73に接触している期間においては、瞬間的に静止している。また、第2揺動カムアーム50Rも、第1吸気カム16に駆動されて揺動しているが、第1吸気カム16のベース円部分が第1ローラ52に接触している期間においては、瞬間的に静止している。この両者の静止期間は重なっている。つまり、大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとが同時に静止する期間が存在する。
上記静止状態における第2揺動カムアーム50Rの角度は、制御軸41の回転位置に応じて変化する。よって、大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとの静止状態において、切換ピン74の位置とピン穴76の位置とを一致させることができるような制御軸41の回転位置が存在する。この制御軸41の回転位置を以下「ピン切換位置」と称する。つまり、動弁機構18では、制御軸41の回転位置をピン切換位置にすることにより、ピン穴76の位置と切換ピン74の位置とを一致させることができる。よって、この状態のときに、以下のようにして、アーム連結機構72の切換動作を実行することができる。
ピン穴76の位置と切換ピン74の位置とが一致したとき、切換ピン74はピストン78に当接する。このとき、リターンスプリング77がピストン78を押す力よりも、油圧室75内の油圧が切換ピン74を押す力の方が大きければ、切換ピン74は、ピストン78をピン穴76の奥に押し込むようにしてピン穴76内に進入する。つまり、油圧室75内の油圧を油圧系により上げることで、切換ピン74をピン穴76に挿入することができる。切換ピン74がピン穴76内に挿入されると、第2揺動カムアーム50Rと大リフトアーム71とが連結される。これにより、第2吸気バルブ14Rのリフト運動の連動先を可変動弁機構20Rから固定動弁機構70へ切り換えることができる。
この場合、第2揺動カムアーム50Rには、吸気カム軸15の回転運動が第2吸気カム17から大リフトアーム71を介して伝達される。第2吸気バルブ14Rの開弁量は、第2吸気カム17、大リフトアーム71および第2揺動カムアーム50Rの形状及び位置関係によって機械的に決まり、制御軸41の回転位置に関係なく常に一定の開弁量(大リフト及び大作用角)に固定される。これに対し、第1揺動カムアーム50Lには、第1吸気カム16から第1ローラ52及び第2ローラ53Lを介して第1吸気カム16の回転運動が伝達される。よって、第1吸気バルブ14Lの開弁量は、制御軸41の回転位置に連動して変化することになる。
このように、第2吸気バルブ14Rの開弁量が大開弁量に固定され、第1吸気バルブ14Lの開弁量のみが制御軸41の回転位置に応じて変化する状態を、本明細書では「片弁可変状態」と呼ぶ。片弁可変状態では、第2吸気バルブ14Rを大リフトとし、第1吸気バルブ14Lを小リフトとすることができる。これにより、第2吸気バルブ14Rからは多量の空気が、第1吸気バルブ14Lからは少量の空気が筒内に流入する。この流入量の偏りにより、筒内にスワール流(旋回流)を形成することができる。スワール流を形成することにより、低回転・低負荷域での燃焼の改善が図れる。
(両弁可変状態)
一方、ピン穴76の位置と切換ピン74の位置とが一致したときに、油圧室75内の油圧を下げることで、切換ピン74をピン穴76から抜くことができる。これにより、大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとの連結が解除される。よって、第2吸気バルブ14Rのリフト運動の連動先を固定動弁機構70から可変動弁機構20Rへ切り換えることができる。
この場合、カム軸15の回転運動は、第1吸気カム16から第1及び第2ローラ52,53を介して、第1及び第2揺動カムアーム50L,50Rのそれぞれのスライド面50aに伝達される。よって、第1吸気バルブ14L及び第2吸気バルブ14Rの開弁量は、共に、制御軸41の回転に連動して変化することとなる。従って、第1吸気バルブ14Lの開弁量と第2吸気バルブ14Rの開弁量とを制御軸41の回転位置に応じて共に変化させることができる。このように、第1吸気バルブ14Lおよび第2吸気バルブ14Rの開弁量が揃って可変となる状態を、本明細書では「両弁可変状態」と称する。
ECU60は、内燃機関1の運転状態(具体的には機関回転数NEおよび負荷)に応じて、両弁可変状態と片弁可変状態とを切り換えるようになっている。図6は、ECU60が記憶している、両弁可変状態と片弁可変状態との切換マップを示す図である。この切換マップには、横軸に機関回転数NE、縦軸に負荷をそれぞれとることにより、内燃機関1の運転領域が表されている。
ここで言う「負荷」とは、内燃機関1のトルク、負荷率、あるいはアクセル開度AAなど、内燃機関1の負荷に相関を有する何れかの指標を意味する。ECU60は、アクセル開度センサ24、エアフロメータ26等のセンサ出力に基づいて、この負荷の値を算出することができる。また、ECU60は、クランク角センサ6の出力に基づいて、機関回転数NEを算出することができる。このようにして、ECU60は、内燃機関1の現在の運転状態が切換マップ中のどこにあるかを検知することができる。
図6中、切換ピン作動線Pは、両弁可変状態と片弁可変状態との切り換えが行われる境界を表す。また、図6中、二つ並んだ丸印は第1吸気バルブ14Lおよび第2吸気バルブ14Rを表し、その丸印の中の文字は開弁量の大小を表す。
図6に示すように、切換ピン作動線Pよりも低回転・低負荷側の領域は、片弁可変状態とされる領域である。この領域を本実施形態では「片弁小リフト領域」と称する。片弁小リフト領域では、アーム連結機構72の切換ピン74は、ピン穴76に挿入された連結状態とされる。
一方、切換ピン作動線Pよりも高回転・高負荷側の領域は、両弁可変状態とされる領域である。この領域を本実施形態では「両弁大リフト領域」と称する。この両弁大リフト領域では、アーム連結機構72の切換ピン74は、ピン穴76から抜去された状態、すなわち非連結状態とされる。
ECU60は、通常時は、上述のような切換マップに従って片弁可変状態と両弁可変状態とを切り換える。一般には、低回転・低負荷側の領域では燃焼が不安定・不完全になり易い。これに対し、本実施形態では、低回転・低負荷側の片弁小リフト領域において、第2吸気バルブ14Rを大リフトとし第1吸気バルブ14Lを小リフトとすることにより、スワールを形成して燃焼を改善することができる。このため、燃費および排気エミッションの低減が図れる。一方、高回転・高負荷側の両弁大リフト領域では、両吸気バルブ14のリフトを共に大きくすることにより、十分な量の空気を筒内に吸入することができる。
ECU60は、内燃機関1の運転状態が片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ移行した場合、通常時は直ちに切換ピン74をピン穴76から抜去して、両弁可変状態へ切り換える。しかしながら、運転状態が片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ移行した場合であっても、状況によっては、短時間のうちにまた片弁小リフト領域へ戻ることが考えられる。
そのような状況の一例としては、車両発進後の加速時が挙げられる。車両発進前、内燃機関1は図6中の点Aで示すアイドリング状態にある。1速で発進した後、車両が加速するに従い、運転状態は、図6中の点A→Bと変化し、更に点B→Cと変化する。その後、2速にシフトアップするために、クラッチが切られ、アクセルペダルが解放される。これにより、内燃機関1の運転状態はアイドリング状態へ戻るので、点C→Aへ戻る。
3速、4速とシフトアップするときにも、上記と同様の変化が生じる。すなわち、車両発進後の加速時には、内燃機関1の運転状態は、比較的短時間のうちに、図6中の点A→B→C→Aと循環する。このような場合に、図6に示す切換マップに従って直ちにアーム連結機構72の切換動作を行うこととすると、点B→Cで切換ピン74がピン穴76から抜去された後、まもなく、点C→Aで切換ピン74がピン穴76に再挿入されることとなる。すなわち、点B→C→Aにおいて両弁可変状態が維持される時間は極めて短い。このため、両弁可変状態に切り換えるメリットは少ない。むしろ、切換ピン74の頻繁な抜き差しによって、切換ピン74やピン穴76の摩耗を進行させたり、傷付きを招いたりするというデメリットの方が大きい。そこで、本実施形態では、アーム結合機構72の耐久性に鑑み、上記のような場合には、切換ピン74の切換動作を行わないこととした。
上記のような回避すべき切換動作は、変速機の変速に伴うものである。そこで、本実施形態では、変速に伴う切換動作を識別してこれを回避するため、変速機の変速直後の所定時間内においては、アーム結合機構72の切換動作を一時的に禁止することとした。
上記のような処理によれば、車両発進後の加速時のみならず、次のような状況においても、必要性の低い切換動作を識別して、それを回避することができる。図7中の点D〜Kの変化は、高速走行中に上り坂にさしかかった場合の運転状態の変化を示す。この場合、内燃機関1の運転状態は、次のように変化する。車両が上り坂にさしかかると、登坂抵抗によって車速が徐々に低下し、これに伴って機関回転数NEも徐々に低下する(D→E)。そうすると、運転者は車速の回復を所望してシフトダウン操作を行う。このシフトダウン操作のため、クラッチが切られ、アクセルペダルが解放されると、内燃機関1はアイドル状態へ向かって変化する(E→F)。シフトダウン後、アクセルペダルが踏まれることにより、内燃機関1は高回転・高負荷状態へと変化する(F→G)。そのまま加速が継続されることにより、機関回転数NEが上昇する(G→H)。車速が十分に回復すると、運転者はシフトアップ操作を行う。このシフトアップ操作のため、クラッチが切られ、アクセルペダルが解放されると、内燃機関1はアイドル状態へ向かって変化する(H→I)。シフトアップ後、機関回転数NEはシフトアップ前より低い回転数となる(I→J)。その後、この変速段にて、定常運転が行われる(J→K)。
このような状況では、図7に示す切換マップに従って直ちにアーム連結機構72の切換動作を行うこととすると、F→Gで切換ピン74がピン穴76から抜去された後、まもなく、H→Iで切換ピン74がピン穴76に再挿入される。この場合にも、両弁可変状態が維持される時間は極めて短いので、わざわざ両弁可変状態に切り換えるメリットは少なく、むしろ、切換ピン74やピン穴76の摩耗を進行させるというデメリットの方が大きい。すなわち、この場合の切換動作も、回避すべきものと言える。本実施形態によれば、点Fで行われる変速の実行を検知し、その後所定時間内のアーム結合機構72の切換動作を一時的に禁止することにより、上記回避すべき切換動作を行わないようにすることができる。
[実施の形態1における具体的処理]
図8は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。なお、本ルーチンは、所定時間ごとに周期的に実行されるものとする。図8に示すルーチンによれば、まず、変速機の変速が実施されたか否かが判別される(ステップ100)。変速の実施の有無は、シフトポジションセンサ62により検出することができる。このステップ100において変速が実施されていないと判別された場合には、アーム連結機構72の切換動作を禁止する必要がないので、以下の処理は行われない。この場合には、片弁可変状態と両弁可変状態との切り換えを切換マップに従って直ちに行う通常制御が継続される。
一方、ステップ100において変速が実施されたと判別された場合には、次に、その変速の実施時から所定時間内に、内燃機関1の運転状態が片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ変化したか否かが判別される(ステップ102)。ここでの所定時間は、図6のB→C→Aの変化や、図7のF→G→H→Iの変化に要する時間を調査したデータ等に基づいて定められるものであり、予めECU60に記憶されている。
このステップ102において片弁小リフト領域から両弁大リフト領域への変化が認められない場合は、アーム連結機構72の切り換え命令が出ていないことを意味する。この場合には、切換動作を禁止する必要はないので、以下の処理は行われず、通常制御が継続される。
一方、このステップ102において片弁小リフト領域から両弁大リフト領域への変化が認められた場合には、アーム連結機構72の切換動作が禁止される(ステップ104)。すなわち、内燃機関1の運転状態が両弁大リフト領域に移行したものの、切換ピン74をピン穴76に挿入したままとし、両弁可変状態への切り換えを実行しない。このステップ102で片弁小リフト領域から両弁大リフト領域への変化が認められた場合、その変化は図6中のB→Cや図7中のF→Gのような変化に相当し、短時間のうちに片弁小リフト領域へ戻ることが予想される。上記ステップ104の処理によれば、このような場合の切換動作を回避することができる。
図8に示すルーチンでは、次に、片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ運転状態が変化してからの経過時間が所定時間に達したか否かが判別される(ステップ106)。本実施形態では、上記ステップ104の処理により、片弁小リフト領域へ短時間のうちに戻ることを予想して、両弁可変状態への切換を回避している。しかしながら、車両の走行条件や運転者の操作内容によっては、すぐには片弁小リフト領域へ戻らず、両弁大リフト領域にとどまる場合もある。そのような場合には、内燃機関1に所期の性能を発揮させるため、両弁可変状態へ切り換えた方が望ましい。そこで、本実施形態では、上記ステップ106において両弁大リフト領域へ変化してからの経過時間が所定時間に達しても片弁小リフト領域へ戻っていない場合には、本ルーチンの処理を終了して(RETURN)、通常制御へ戻ることとした。通常制御へ戻ることにより、切換マップに従って、両弁可変状態への切換動作が実行される。なお、ここでの所定時間は、内燃機関1の種類や搭載車両の用途などによってもその好ましい値は異なるが、通常、数秒〜十数秒程度とされる。
図8に示すルーチンでは、次に、片弁小リフト領域および両弁大リフト領域以外の領域へ運転状態が変化したか否かが判別される(ステップ108)。ここで、片弁小リフト領域および両弁大リフト領域以外の領域とは、両弁可変リフト領域のことを言う。両弁可変リフト領域とは、両弁可変状態として、両吸気バルブ14のリフト量を共に中リフト〜小リフトに可変制御する領域である。この両弁可変リフト領域は、例えば内燃機関1の減速時、エンジンブレーキの利きをよくするなどの目的で設定される。この両弁可変リフト領域の範囲は、切換マップとは別個にECU60に記憶されている。
上記ステップ108において運転状態が両弁可変リフト領域へ変化した場合には、本ルーチンの処理を終了して(RETURN)、通常制御へ戻ることとした。通常制御へ戻ることにより、所定の規則に基づいて、両弁可変状態への切換動作が実行される。なお、両弁可変リフト領域は、減速時に限らず、軽負荷運転時、アイドリング時、低温始動時、冷間時等においても必要に応じて設定することができる。
図8に示すルーチンでは、次に、運転状態が両弁大リフト領域から片弁小リフト領域へ戻ったか否かが判別される(ステップ110)。このときには、上記ステップ104の処理により、両弁可変状態への切換実行が禁止された状態になっている。その状況の下で、運転状態が片弁小リフト領域へ戻ってきたときには、両弁可変状態への切換命令もなくなるので、切換動作を禁止する必要もなくなる。そこで、この場合には、本ルーチンの処理を終了して(RETURN)、通常制御へ戻ることとした。一方、上記ステップ110において、運転状態が未だ両弁大リフト領域にある場合には、上記ステップ106以下の処理が再度実行される。
以上述べたような処理によれば、アーム連結機構72の切換動作を実行する必要性の低い場合には、その切換動作が禁止される。このため、アーム連結機構72が必要以上に摩耗するのを回避することができ、アーム連結機構72の耐久性を向上することができる。
ところで、上述した実施の形態1では、変速機の変速の実施をシフトポジションセンサ62によって検出しているが、変速の検出方法はこれに限定されるものではない。例えば、クラッチの断接を検出するクラッチセンサを設け、クラッチが切られたことをもって変速の実施を検出してもよい(手動変速機の場合)。あるいは、機関回転数NEと車速との比に基づいて、変速の実施を検出することもできる。車速センサはいかなる車両にも通常設置されているものであるので、このような車速を用いる方法によれば、新たにセンサを追加することなく変速の実施を検出することができる。
また、上述した実施の形態1では、所定の状況下で片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ移行した場合の切換動作の実行を禁止することとしているが、本発明では、この逆に、両弁大リフト領域から片弁小リフト領域へ移行した場合の切換動作の実行を禁止することとしてもよい。
また、上述した実施の形態1では、第1吸気バルブ14Lおよび第2吸気バルブ14Rの開弁量(両弁可変状態のとき)、あるいは第1吸気バルブ14Lの開弁量(片弁可変状態のとき)を連続的に可変とする動弁機構を例に説明したが、本発明は、これらの開弁量を多段的に(多段階に)可変とする動弁機構の場合にも適用することができる。
また、上述した実施の形態1では、本発明を吸気バルブの可変動弁装置に適用した場合について説明したが、本発明は排気バルブの可変動弁装置にも適用することが可能である。
なお、上記の各変形例は、以下に説明する他の実施形態においても同様に適用可能である。
また、上述した実施の形態1においては、片弁小リフト領域が前記第1の発明における「片弁可変領域」に、両弁大リフト領域が前記第1の発明における「両弁可変領域」に、アーム連結機構72が前記第1の発明における「切換機構」に、ECU60が前記第1の発明における「記憶手段」に、それぞれ相当している。また、ECU60が、切換マップに従ってアーム連結機構72に切換動作を実行させることにより前記第1の発明における「通常制御手段」が、上記ステップ100および102の処理を実行することにより前記第1の発明における「状況判断手段」が、上記ステップ104の処理を実行することにより、前記第1の発明における「禁止手段」が、上記ステップ106の処理を実行することにより、前記第4の発明における「禁止解除手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。本実施形態のシステムは、実施の形態1と同様のハードウェア構成を用いて、ECU60に、後述する図9に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
車両停止時に運転者がアクセルペダルを踏むことにより、内燃機関1にフリーアクセル運転(いわゆる空吹かし)を行わせる場合がある。このフリーアクセル運転が長時間に渡って行われることは極めて少ない。よって、フリーアクセル運転時において運転状態が片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ変化した場合も、短時間のうちに片弁小リフト領域へ戻ることが予想される。そこで、本実施形態では、この場合にも、両弁可変状態への切換の実行を回避し、アーム連結機構72の耐久性の向上を図ることとした。
[実施の形態2における具体的処理]
図9は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。図9に示すルーチンによれば、まず、変速機のシフト位置がニュートラル(手動変速機または自動変速機の場合)あるいはパーキングレンジ(自動変速機の場合)にあるか否かが、シフトポジションセンサ62の出力に基づいて判別される(ステップ120)。シフト位置がニュートラルあるいはパーキングレンジにない場合には、フリーアクセル運転が行われることはないので、以下の処理は実行されない。
上記ステップ120において、シフト位置がニュートラルあるいはパーキングレンジにある場合には、次に、内燃機関1の運転状態が片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ変化したか否かが判別される(ステップ122)。両弁大リフト領域への変化が認められた場合には、フリーアクセル運転が行われていると判断することができる。このため、この場合には、アーム連結機構72の切換動作が禁止される(ステップ124)。すなわち、内燃機関1の運転状態が両弁大リフト領域に移行したものの、切換ピン74をピン穴76に挿入したままとし、両弁可変状態への切り換えを実行しない。
図9に示すルーチンでは、次に、運転状態が両弁大リフト領域以外の領域、すなわち片弁小リフト領域あるいは両弁可変リフト領域へ変化したか否かが判別される(ステップ126)。両弁大リフト領域以外の領域への変化が認められた場合には、フリーアクセル運転が終了したと判断できるので、本ルーチンを終了して、通常制御へ復帰する(RETURN)。一方、両弁大リフト領域以外の領域への変化が認めらない場合には、フリーアクセル運転が継続している判断できる。この場合には、上記ステップ124へ戻り、切換動作の禁止状態が維持される。
以上のような処理によれば、フリーアクセル運転時、アーム連結機構72が無駄に切換動作を行うことを回避することができ、アーム連結機構72の耐久性の向上を図ることができる。
実施の形態3.
[実施の形態3の特徴]
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。本実施形態のハードウェア構成は、実施の形態1と同様である。そして、本実施形態のシステムは、ECU60に、実施の形態1または2の処理に加えて、後述する図10に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
前述したように、アーム連結機構72では、内燃機関1の潤滑油の油圧によって切換ピン74を動かすようになっている。内燃機関1が運転を続ける中で、潤滑油中には、スラッジ(粘性物)が生じることがある。万一、このスラッジが切換ピン74の周囲に付着した状態で切換ピン74が長時間動作しなかったような場合には、切換ピン74が油圧室75内あるいはピン穴76内で固着し、動作不能となる可能性もある。
実施の形態1や実施の形態2では、前述したように、アーム連結機構72の切換動作を一定の場合に禁止することとした。このため、アーム連結機構72の切換動作を実行する機会が少なくなる。アーム連結機構72の切換動作を実行する機会が少なくなると、切換ピン74が長時間に動かされない状態が起き易くなり、その結果、切換ピン74がスラッジによって固着してしまう可能性が大きくなる。
そこで、本実施形態では、アーム連結機構72の切換動作の禁止回数あるいは禁止の累積時間が所定値を超えた場合には、切換動作を許容して、切換ピン74の固着を防止することとした。
[実施の形態3における具体的処理]
図10は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU60が実行するルーチンのフローチャートである。図10に示すルーチンは、図8または図9に示すルーチンと併せて実行される。
図10に示すルーチンでは、図8または図9に示すルーチンの処理によってアーム連結機構72の切換動作が禁止された回数および累積時間を計測する処理が行われ、その回数および時間がECU60に記憶される(ステップ130)。そして、その禁止の回数および累積時間の何れかが、それぞれに対して予め定められた所定値を超えたか否かが判別される(ステップ132)。ここでの所定値は、内燃機関1や搭載車両の特性に応じて定められた値であり、ECU60に予め記憶されている。この値は、切換ピン74が固着に至る前に確実に切換動作を行わせることができるような値とされる。
上記ステップ132において、禁止の回数および累積時間の何れかが所定値を超えた場合には、図8または図9に示すルーチンの制御(切換禁止制御)を中止し、通常制御に復帰する(ステップ134)。通常制御においては、切換マップに従ってアーム連結機構72の切換動作が実行される。
次いで、通常制御において、アーム連結機構72の切換動作が実際に実施されたか否かが判別される(ステップ136)。アーム連結機構72の切換動作が実際に実施された場合には、切換ピン74の固着防止が達成されたこととなる。この場合には、図8または図9に示すルーチンによる切換禁止制御の中止を解除し、切換禁止制御を実行可能な状態に戻す(ステップ138)。これに伴い、上記ステップ130で記憶していた禁止の回数および累積時間が0にリセットされる。なお、上記の処理では、アーム連結機構72の切換動作が実際に実施されたか否かに基づいて、切換禁止制御を実行可能な状態に戻すか否かを判断することとしているが、この判断の手法はこれに限定されるものではない。すなわち、この判断は、アーム連結機構72の切換指示があったか否かに基づいて行うこととしてもよい。
以上のような処理によれば、実施の形態1や実施の形態2の処理を行う上で、アーム連結機構72の切換動作実行機会の減少に起因する切換ピン74の固着を確実に防止することができる。
なお、上述した実施の形態3においては、ECU60が、上記ステップ130の処理を実行することにより前記第5の発明における「計測手段」が、上記ステップ132および134の処理を実行することにより、前記第5の発明における「許容手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態4.
[実施の形態4の特徴]
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態のハードウェア構成は、実施の形態1と同様である。そして、本実施形態は、基本的には、実施の形態1または2と同様の処理を行うものとする。
図11は、第1吸気バルブ14Lおよび第2吸気バルブ14Rのバルブリフト(リフトカーブ)を示す図である。本実施形態において、両弁可変状態のとき、第1吸気バルブ14Lのバルブリフトと第2吸気バルブ14Rのバルブリフトとは、ほぼ等しいものとする。図11中のバルブリフトA〜Eは、それぞれ、次のようなバルブリフトである。
バルブリフトAは、両弁大リフト領域(両弁可変状態)における最大のバルブリフトである。このバルブリフトは、内燃機関1に対する最大出力性能要求に基づいて予め設定されている。
バルブリフトBは、制御軸41の回転位置がピン切換位置にある状態、つまり切換ピン74の位置とピン穴76の位置とが一致する状態であって、大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとが連結されていない状態におけるバルブリフトである。
バルブリフトCは、大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとが連結され、第2吸気バルブ14Rが大開弁量に固定された状態、すなわち片弁可変状態における、第2吸気バルブ14Rのバルブリフトである。
バルブリフトDは、可変動弁機構40で設定可能な最小のバルブリフトである。バルブリフトEは、可変動弁機構40で設定可能な最大のバルブリフトである。本実施形態では、バルブリフトAが使用範囲の上限とされるので、このバルブリフトEは実際には使用されない。
片弁小リフト領域では、目標バルブリフトは、バルブリフトDからバルブリフトBまでの範囲に設定されている。つまり、片弁小リフト領域では、制御軸41の目標位置は、ピン切換位置から、それより小リフト小作用角側の範囲とされる。一方、両弁大リフト領域では、目標バルブリフトは、バルブリフトBからバルブリフトAまでの範囲に設定されている。つまり、両弁大リフト領域では、制御軸41の目標位置は、バルブリフトBに相当するピン切換位置から、それより大リフト大作用角側のバルブリフトAに相当する位置までの範囲とされる。
上述したように、片弁小リフト領域における目標バルブリフトの上限は、バルブリフトBとされている。そして、通常制御においては、片弁小リフト領域においては、片弁可変状態、すなわち大リフトアーム71と第2揺動カムアーム50Rとが連結された状態が実現される。よって、動弁機構18が片弁可変状態にあるときには、通常は、バルブリフトB以下の範囲を目標バルブリフトとして制御される。
これに対し、実施の形態1や実施の形態2では、前述したように、片弁小リフト領域から両弁大リフト領域へ移行した場合であっても、片弁可変状態から両弁可変状態への切換動作が禁止され、片弁可変状態に維持される場合がある(図8中のステップ104、あるいは図9中のステップ124)。このため、動弁機構18が片弁可変状態のときに、バルブリフトBより大きい目標バルブリフトが設定される場合がある。このような場合、次のような事態が生ずる。
片弁可変状態においては、前述したように、通常は、第2吸気カム17が大リフトアーム71を駆動し、大リフトアーム71が切換ピン74を介して第2揺動カムアーム50Rを駆動している。しかしながら、片弁可変状態において、制御軸41がバルブリフトBに相当するピン切換位置を超えて大リフト大作用角側に回転されると、第2吸気カム17が第2揺動カムアーム50Rを揺動させる範囲よりも、第1吸気カム16が第2揺動カムアーム50Rを揺動させる範囲の方が大きくなるので、第2揺動カムアーム50Rが切換ピン74を介して大リフトアーム71を逆駆動する状態となる。このため、この状態では、大リフトアーム71の入力ローラ73が第2吸気カム17から離間してしまう。
このようにして大リフトアーム71の入力ローラ73が第2吸気カム17から離間した状態から、機関回転数NEや負荷が急激に減少した場合、制御軸41が瞬時に小リフト小作用角側へ回転される。すると、大リフトアーム71の入力ローラ73と第2吸気カム17とが再接触(衝突)し、その衝撃で騒音が発生したり、入力ローラ73や第2吸気カム17の表面が損傷したりするおそれがある。
そこで、本実施形態では、上記のような事態を防止するため、片弁可変状態から両弁可変状態への切換動作が禁止された場合(図8中のステップ104、あるいは図9中のステップ124)、すなわち片弁可変状態に維持されたままで両弁大リフト領域に入った場合には、目標バルブリフトをバルブリフトB以下に制限することとした。これにより、動弁機構18が片弁可変状態のときに制御軸41がバルブリフトBに相当するピン切換位置を超えて大リフト大作用角側に回転されることを防止することができる。よって、大リフトアーム71の入力ローラ73が第2吸気カム17から離間する事態が生ずることを確実に防止することができる。このため、騒音が発生したり、入力ローラ73や第2吸気カム17の表面が損傷したりすることをより確実に防止することができる。
なお、本実施形態では、前述したように、両弁大リフト領域における元々の目標バルブリフトがバルブリフトBからバルブリフトAまでの範囲であるので、片弁可変状態から両弁可変状態への切換動作が禁止された場合にバルブリフトB以下に制限することとすると、実際上は、目標バルブリフトがバルブリフトBに固定されることとなる。
本実施形態は、上述した点以外は、前記実施の形態1あるいは2と同様であるので、これ以上の説明は省略する。
なお、上述した実施の形態4においては、ECU60が、片弁可変状態から両弁可変状態への切換動作が禁止された場合(図8中のステップ104、あるいは図9中のステップ124)において目標バルブリフト(目標開弁量)をバルブリフトB以下に制限することにより前記第6および第7の発明における「開弁量制限手段」が実現されている。また、第1吸気バルブ16が前記第7の発明における「メインカム」に、第2吸気バルブ17が前記第7の発明における「サブカム」に、大リフトアーム71の入力ローラ73が前記第7の発明における「相手側部材」に、それぞれ相当している。

Claims (7)

  1. 同一気筒に設けられた同種の第1バルブおよび第2バルブの双方の開弁量を連続的または多段的に可変とする両弁可変状態と、前記第1バルブの開弁量を連続的または多段的に可変とし、前記第2バルブの開弁量を固定とする片弁可変状態とを切り換える切換機構を有する動弁機構と、
    内燃機関の運転領域のうち、前記両弁可変状態にすべき両弁可変領域と、前記片弁可変状態にすべき片弁可変領域とを区分する規則を記憶した記憶手段と、
    前記規則に従って前記切換機構に切換動作を行わせる通常制御手段と、
    内燃機関の運転状態が前記両弁可変領域および前記片弁可変領域の一方から他方へ移行した場合に短時間のうちに元の領域へ戻ることが予想される所定の状況の成立を判断する状況判断手段と、
    前記所定の状況が成立している場合には、前記切換動作を禁止する禁止手段と、
    を備えることを特徴とする可変動弁装置。
  2. 前記所定の状況は、前記内燃機関と車両の駆動輪との間に介在する変速機の変速実行時から所定時間内にある状況であることを特徴とする請求項1記載の可変動弁装置。
  3. 前記所定の状況は、前記内燃機関と車両の駆動輪との間に介在する変速機のシフト位置がニュートラルまたはパーキングレンジにある状況であることを特徴とする請求項1記載の可変動弁装置。
  4. 内燃機関の運転状態が前記両弁可変領域および前記片弁可変領域の一方から他方へ移行した後、所定時間が経過しても元の領域へ戻らない場合には、前記切換動作の禁止を解除する禁止解除手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の可変動弁装置。
  5. 前記禁止手段による禁止の回数または禁止の累積時間を計測する計測手段と、
    前記禁止の回数または前記禁止の累積時間が所定値を超えた場合には、前記所定の状況が成立している場合であっても、前記切換機構の切換動作を許容する許容手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の可変動弁装置。
  6. 前記禁止手段により前記切換動作が禁止された場合に、目標開弁量を制限する開弁量制限手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の可変動弁装置。
  7. 前記動弁機構は、
    前記両弁可変状態のときには前記第1バルブおよび前記第2バルブの双方を駆動し、前記片弁可変状態のときには前記第1バルブのみを駆動するメインカムと、
    前記片弁可変状態のときに前記第2バルブを駆動するサブカムと、
    を含み、
    前記開弁量制限手段は、前記禁止手段により前記片弁可変状態から前記両弁可変状態への切換動作が禁止されて前記片弁可変状態に維持された場合に、前記サブカムとその相手側部材とが離間しないような範囲に目標開弁量を制限することを特徴とする請求項6記載の可変動弁装置。
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