JP2007123511A - フェライト焼結磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】4500G近傍の残留磁束密度(Br)を有しながら、5000Oeを超える保磁力(HcJ)を得る。
【解決手段】六方晶構造を有するフェライトを主相とし、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、A、R、FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:3〜11原子%、R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子%、M:0.3〜4原子%である組成を有し、結晶粒子径が1.1μm以下の結晶粒子の数の比率が95%以上の焼結体からなる。
【選択図】図1
Description
近年、電子部品の小型化、高性能化への要求が高まっており、それに伴ってフェライト焼結磁石への小型化、高性能化が強く要求されている。例えば、特許第3157142号公報(特許文献1)には、従来のM型フェライト焼結磁石では達成不可能であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有する、フェライト焼結磁石が提案されている。
本発明のフェライト焼結磁石において、平均結晶粒子径が0.7μm以下であることが保磁力向上にとって好ましい。
<組織>
本発明のフェライト焼結磁石は、焼結体を構成する結晶粒子を制御することにより安定して高い保磁力を得る。結晶粒子径が1.1μm以下の結晶粒子の比率を95%以上とすることが、本願発明において必要である。結晶粒子径が1.1μm以下の結晶粒子の比率は、97%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
また本発明のフェライト焼結磁石は、保磁力向上のために、平均結晶粒子径を0.7μm以下とすることが好ましい。平均結晶粒子径は、0.65μm以下、さらには0.6μm以下であることが好ましい。
本発明のフェライト焼結磁石は、六方晶フェライト、好ましくは六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライトを主相とし、かつSr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、A、R、FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:3〜11原子%、R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子%、M:0.3〜4原子%である組成を有する。
また、好ましくは、A:3〜9原子%、R:0.5〜4原子%、Fe:86〜93原子%、M:0.5〜3原子%である。
また、より好ましくは0.04≦x≦0.5、0.04≦y≦0.5、0.7≦z≦1.2であり、さらに好ましくは0.1≦x≦0.4、0.1≦y≦0.4、0.8≦z≦1.1であり、特に好ましくは0.9≦z≦1.05である。
Si成分としてはSiO2を、Ca成分としてはCaCO3を、それぞれを使用するのが好ましい。添加量は、Si成分について好ましくは、SiO2換算で0.15〜1.35wt%で、より好ましくは0.30〜0.90wt%、さらに好ましくは0.45〜0.90wt%である。また、Ca成分について好ましくは、CaCo3換算で0.5〜2.5wt%で、より好ましくは1.0〜2.25wt%、さらに好ましくは1.25〜2.25wt%である。Ca成分のモル量とSi成分のモル量の比Ca/Siが高い保磁力(HcJ)を得るために重要であり、Ca/Si:0.35〜2.10、より好ましくはCa/Si:0.70〜1.75、さらに好ましくはCa/Si:1.05〜1.75である。
次に、本発明のフェライト焼結磁石の好適な製造方法について説明する。
この製造方法は、配合工程、仮焼工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、磁場中成形工程及び焼成工程を含むことが好ましい。ここで、微粉砕工程は、第1の微粉砕工程と第2の微粉砕工程に分かれ、かつ第1の微粉砕工程と第2の微粉砕工程の間に粉末熱処理工程を行う。この第1の微粉砕工程及び第2の微粉砕工程が、後述する実施例から理解できるように、本発明の結晶組織を得る上で有効である。
配合工程は、原料粉末を所定の割合となるように秤量後、湿式アトライタ、ボールミル等で1〜20時間程度混合、粉砕処理する。出発原料としては、フェライト構成元素(Fe、元素A、元素R、元素M等)の1種を含有する化合物、またはこれらの2種以上を含有する化合物を用いればよい。化合物としては酸化物、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等を用いる。出発原料の平均粒径は特に限定されないが、通常、0.1〜2.0μm程度とすることが好ましい。出発原料は、仮焼前の本工程ですべてを混合する必要はなく、各化合物の一部または全部を仮焼の後に添加する構成にしても良い。例えば、Co等の元素Mは、一部または全部を後添加とする方が好ましい。なお、本願明細書において、仮焼工程の前に添加する行為を前添加といい、仮焼工程の後に添加する行為を後添加ということにする。
この他、配合工程において、Ca成分を添加(前添加)してもよい。Ca成分はSi成分と同様、六方晶M型フェライトの焼結性の改善、磁気特性の制御、及び焼結体の結晶粒径の調整等を目的として添加される。Ca成分としては、例えばCaCO3、CaO等を使用することができる。Ca成分の添加量は、本工程ですべてを混合する必要はなく、一部、好ましくは全部を後述する後添加としてもよい。
配合工程で得られた原料組成物を仮焼する。仮焼は、通常、空気中等の酸化性雰囲気中で行われる。仮焼温度は1000〜1350℃の温度範囲で行うことが好ましく、1050〜1300℃がより好ましく、1100〜1300℃がさらに好ましい。安定時間は1秒間〜10時間、さらには1秒間〜3時間が好ましい。仮焼後の物質は、実質的にマグネトプランバイト(M)型のフェライト構造を有し、その一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下である。
仮焼体は、一般に顆粒状、塊状等になっており、そのままでは所望の形状に成形ができないため、粉砕する。本工程で主成分、副成分の原料の一部を添加することができ、それが後添加である。粉砕工程は、粗粉砕工程と微粉砕工程に分かれる。なお、仮焼体を所定の粒度に粉砕することにより、ボンディッド磁石用のフェライト磁石粉末とすることもできる。
前述のように、仮焼体は一般に顆粒状、塊状等であるので、これを粗粉砕することが好ましい。粗粉砕工程では、振動ミル等を使用し、平均粒径が0.5〜5μmになるまで処理される。なお、ここで得られた粉末を粗粉砕粉と呼ぶことにする。
微粉砕工程は、以下に示すように、第1の微粉砕工程と第2の微粉砕工程に分け、かつ第1の微粉砕工程と第2の微粉砕工程の間に粉末熱処理工程を行うことができる。
<第1の微粉砕工程>
第1の微粉砕工程では粗粉をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して平均粒径で0.08〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第1の微粉砕工程は、粗粉をなくすこと、さらには磁気特性向上のために焼結後の組織を微細にすることを目的として行うものであり、比表面積(BET法による)としては20〜25m2/gの範囲とするのが好ましい。
粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gあたり60〜100時間処理すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第1の微粉砕工程に先立って主成分、副成分の一部を添加することができる。
粉末熱処理工程では、第1の微粉砕で得られた微粉を600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃で、1秒〜100時間保持する熱処理を行う。
第1の微粉砕を経ることにより0.1μm未満の粉末である超微粉が不可避的に生じてしまう。超微粉が存在すると後続の磁場中成形工程で不具合が生じることがある。例えば、湿式成形時に超微粉が多いと水抜けが悪く成形できない等の不具合が生じる。そこで、本実施の形態では磁場中成形工程に先立ち熱処理を行う。つまり、この熱処理は、第1の微粉砕で生じた0.1μm未満の超微粉をそれ以上の粒径の微粉(例えば0.1〜0.2μmの微粉)と反応させることにより、超微粉の量を減少させることを目的として行うものである。この熱処理により超微粉が減少し、成形性を向上させることができる。このときの熱処理雰囲気は、大気中で行えばよい。
続く第2の微粉砕工程では熱処理された微粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第2の微粉砕工程は、粒度調整やネッキングの除去、添加物の分散性向上を目的として行うものであり、比表面積(BET法による)としては10〜20m2/g、さらには10〜15m2/gの範囲とするのが好ましい。この範囲に比表面積が調整されると、超微粒子が存在していたとしてもその量は少なく、成形性に悪影響を与えない。つまり、第1の微粉砕工程、粉末熱処理工程及び第2の微粉砕工程を経ることにより、成形性に悪影響を与えることなく、かつ焼結後の組織を微細化するという要求を満足することができる。
粉砕方法にもよるが、ボールミルで湿式粉砕する場合には、微粉砕粉末200gあたり10〜40時間処理すればよい。第2の微粉砕工程を第1の微粉砕工程と同程度の条件で行うと超微粉が再度生成されることになることと、第1の微粉砕工程ですでに所望する粒径がほとんど得られていることから、第2の微粉砕工程は、通常、第1の微粉砕工程よりも粉砕条件が軽減されたものとする。ここで、粉砕条件が軽減されているか否かは、粉砕時間に限らず、粉砕時に投入される機械的なエネルギを基準にして判断すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第2の微粉砕工程に先立って主成分、副成分の一部を添加することができる。
磁場中成形工程は、乾式成形、もしくは湿式成形のいずれの方法でも行うことができるが、磁気的配向度を高くするためには、湿式成形で行うことが好ましい。よって、以下では、湿式成形用スラリの調製について説明した上で、磁場中成形工程の説明を行う。
湿式成形を行う場合、微粉砕工程を湿式で行い、得られたスラリを所定の濃度に濃縮し、湿式成形用スラリとする。濃縮は、遠心分離やフィルタープレス等によって行えば良い。この場合、微粉砕粉が、湿式成形用スラリ中の30〜80wt%程度を占めることが好ましい。また、分散媒としては水が好ましく、さらに、グルコン酸及び/又はグルコン酸塩、ソルビトール等の界面活性剤が添加されていることが好ましい。次いで、湿式成形用スラリを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2程度、印加磁場は5〜15kOe程度とすれば良い。なお、分散媒は水に限らず、非水系溶媒を使用しても良い。非水系の分散媒を使用する場合には、トルエンやキシレン等の有機溶媒を使用することができる。この場合には、オレイン酸等の界面活性剤を添加することが好ましい。
得られた成形体を焼成し、焼結体とする。焼成は、通常、大気中等の酸化性雰囲気中で行われる。焼成温度は1120〜1270℃、好ましくは1140〜1240℃の温度範囲で行い、保持する時間は0.5〜3時間程度とすれば良い。
以上の配合原料を湿式アトライタで2時間混合、粉砕してスラリ状の原料組成物を得た。このスラリを乾燥後、大気中1200℃で2.5時間(No.1〜8)、又は1350℃で2.5時間(No.9、10)保持する仮焼を行った。
式(a):La0.3Sr0.7Fe11.9Co0.2
式(b):La0.6Ca0.1Sr0.3Fe11.2Co0.4
式(c):La0.6Sr0.4Fe11.2Co0.4
次の微粉砕はボールミルにより2段階で行った。
第1の微粉砕は、得られた粗粉砕粉210gに対して、水400ml及びソルビトールを1.2wt%添加し、湿式ボールミルにて88時間処理した。
第1の微粉砕後に、微粉砕粉末を大気雰囲気中、800℃で10分、1時間保持する条件で熱処理を行った。なお、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/分とした。
続いて、ボールミルを用いて湿式粉砕する第2の微粉砕を行った。第2の微粉砕の前に、表1に「最終BM」と示されている副成分を表1に記載された量だけ添加した(後添加)。以上で構成される粉末200gに対して、水400ml及びソルビトールを1.2wt%添加し、湿式ボールミルにて20時間処理した。
なお、表1のNo.1については、上記の粗粉砕後、得られた粗粉砕粉210gに対して水400ml及びソルビトールを1.2wt%添加し(後添加)、湿式ボールミルにて40時間処理する微粉砕を行った後に、磁場中成形、焼結を後述する条件で行った。
また、表1のNo.9、10については、ソルビトールを第2の微粉砕の前だけに添加した以外は、上記と同様に微粉砕を2段階で行った。
Claims (2)
- 六方晶構造を有するフェライトを主相とし、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、A、R、FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:3〜11原子%、R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子%、M:0.3〜4原子%である組成を有し、結晶粒子径が1.1μm以下の結晶粒子の数の比率が95%以上の焼結体からなることを特徴とするフェライト焼結磁石。
- 前記焼結体の平均結晶粒子径が0.7μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結磁石。
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