JP5218716B2 - フェライト磁性材料 - Google Patents
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Description
近年、電子部品の小型化、高性能化への要求が高まっており、それに伴ってフェライト焼結磁石への小型化、高性能化が強く要求されている。例えば、特開平11−154604号公報(特許文献1)には、従来のM型フェライト焼結磁石では達成不可能であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有するフェライト焼結磁石が提案されている。このフェライト焼結磁石は、少なくともSr、La及びCoを含有し、六方晶M型フェライトの主成分を有するものである。また、特開平11−97226号公報(特許文献2)、特開平11−195516号公報(特許文献3)にSr、Pr及びCo又はSr、Nd及びCoを有する六方晶M型フェライトについて開示されている。
そこで本発明は、Coの含有量を低減しても、高い残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を得ることのできるフェライト磁性材料を提供することを目的とする。
以上の知見に基づく本願の第1の発明は、Sr、La、Ce、Fe、Co及びMnを構成元素として含む六方晶構造を有するフェライトを主成分とし、この主成分におけるSr、La、Ce、Fe、Co及びMnそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、組成式:Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)zで示されることを特徴とするフェライト磁性材料である。
ただし、上記組成式において、m、n、x、y及びzは、0<m≦0.65、0≦n≦0.90、0.08≦x≦0.30、0≦y≦0.25、1.01≦z≦1.08である。
本願の第1の発明において、Ba及び/又はPbで、Srの30原子%以下を置換することができる。本願の第2の発明においても同様である。
ただし、上記組成式において、m、n、x、y及びzは、0<m<0.65、0<n≦0.90、0.08≦x≦0.30、0≦y≦0.25、1.01≦z≦1.08である。また、RはPr及びNdの少なくとも1種である。
また、本発明によれば、Coの一部をより安価なMnで置換することによって高価なCo量を低減しても高い磁気特性を得ることができるため、フェライト磁性材料の低コスト化にとって有効である。
第1の発明に係るフェライト磁性材料は、Sr、La、Ce、Fe、Co及びMnを構成元素として含む六方晶構造を有するフェライトを主成分とし、この主成分におけるSr、La、Ce、Fe、Co及びMnそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、組成式:Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)zで示されることを特徴とするフェライト磁性材料である。
ただし、上記組成式において、
m、n、x、y及びzは、
0<m≦0.65、
0≦n≦0.90、
0.08≦x≦0.30、
0≦y≦0.25、
1.01≦z≦1.08である。
なお、上記組成式は、M型フェライトを示す一般式に基づいているが、酸素の表記を省略している。
ただし、上記組成式において、
m、n、x、y及びzは、
0<m≦0.65、
0<n≦0.90、
0.08≦x≦0.30、
0≦y≦0.25、
1.01≦z≦1.08である。
なお、第1の発明はMnの含有を任意としているのに対して、第2の発明はMnの含有を必須とする。第2の発明はCeに比べて高価なPr、Ndを含むため、その分Coの一部を安価なMnで置換することを必須として、フェライト磁性材料の低コスト化に資するためである。
(La1−mCem)(x):
上記組成式においてxが大きくなるにつれて、残留磁束密度(Br)は大きくなるのに対して保磁力(HcJ)は小さくなり、0.08≦x≦0.30の範囲において高い残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を得ることができる。好ましいxの値は0.10≦x≦0.25、より好ましいxの値は0.10≦x≦0.20である。
mが0を超えると磁気特性が向上するが、mが0.65を超えると、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)が低下する。そこで本発明は0<m≦0.65とする。好ましいmの値は0.10≦m≦0.60、さらに好ましいmの値は0.20≦m≦0.50である。
CoのMnによる置換量を示すnは、0.90を超えるとMnを置換しない場合よりも磁気特性が低下してしまう。そこで本発明では、nを0<n≦0.90とする。好ましいnの値は0.20≦n≦0.85、さらに好ましいnの値は0.30≦n≦0.70である。
Co及びMnの総量を示すyが小さすぎると飽和磁化向上効果及び/又は異方性磁場向上効果が不充分となってくる。しかし、yが大きすぎると、六方晶M型フェライト中に置換固溶できない過剰なCo及びMnが存在することになる。また、Co及びMnが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(Ha)の劣化が大きくなってくる。そこで本発明は0≦y≦0.25とする。好ましいyの値は0.02≦y≦0.20、さらに好ましくは0.04≦y≦0.18である。
組成式Sr1−x(La1−mCe/Rm)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)zにおいて、zが小さすぎるとSrやLa、Ceを含む異相が増加するため、またzが大きすぎるとα−Fe2O3やCo、Mnを含むスピネルフェライト相等の異相が増加するため、磁気特性が低下する。したがって本発明におけるzは、1.01≦z≦1.08とすることが好ましい。好ましいzの値は1.02≦z≦1.07、さらに好ましいzの値は1.03≦z≦1.06である。
本発明は、Srを用いることを必須とする。ただし、六方晶M型フェライトの一般式であるMFe12O19において、MとしてSrとともに用いられることが知られているBa及び/又はPbで、Srの一部、例えばSrの30原子%以下程度置換することを本発明は許容する。また、原料の純度によって、Ba及び/又はPbは不純物として0.1wt%程度混入することがあり、本発明はこのような形態をも包含する。
フェライト粒子は、通常、これをバインダで結合したボンディッド磁石に用いられる。バインダとしては、通常ニトリルゴム(NBRゴム)、塩素化ポリエチレン、ナイロン12(ポリアミド樹脂)、ナイロン6(ポリアミド樹脂)等が用いられる。
始めに、フェライト粒子の製造方法について説明する。
フェライト粒子の製造方法としては、固相反応法、共沈法や水熱合成法等の液相法、ガラス析出化法、噴霧熱分解法、及び気相法等の各種の方法を用いることができる。この中で、ボンディッド磁石用のフェライト粒子の製造方法として、現在工業的に最も広く行われているのは固相反応法である。
固相反応法では、原料として、Fe、Sr、La、Ce、Co及びSi、Caを含む粉末を用い、これらの粉末の混合物を焼成(仮焼)することにより製造される。この仮焼体においては、フェライトの一次粒子は凝集しており、所謂「顆粒」状態となっている。このため、その後粉砕を行う場合が多い。粉砕は、乾式又は湿式にて行われるが、その場合にフェライト粒子に歪みが導入されて磁気特性(主に保磁力)が劣化するため、粉砕後にアニール処理が行われる場合が多い。
次いで、上述したように、仮焼体を粉砕ないし解砕してフェライト粒子の粉末とする。そして、このフェライト粒子をボンディッド磁石として利用する場合は樹脂、金属、ゴム等の各種バインダと混練し、磁場中又は無磁場中で成形する。その後、必要に応じて硬化を行なってボンディッド磁石とする。
フェライト焼結体は、上記フェライト粒子の製造法で述べた各種の方法で製造したフェライト粒子を成形し、焼結することにより製造することができる。なお、フェライト焼結体を製造する過程の磁場中成形法には乾式成形と湿式成形があるが、以下では乾式成形を例に説明する。
原料粉末を仮焼して得られる仮焼体は一般に顆粒状、塊状等になっており、そのままでは所望の形状に成形ができないため、粉砕する。また、所望の最終組成に調整するための原料粉末、及び添加物等を混合するために、粉砕工程が必要である。粉砕工程は、粗粉砕工程と微粉砕工程に分かれる。
粗粉砕粉を湿式アトライタ、ボールミル、ジェットミル等によって粉砕し、平均粒径0.08〜3.0μm、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.2〜1.5μm程度に粉砕する。微粉砕工程は、粗粉砕粉をなくすこと、後添加物を充分に混合すること、及び磁気特性向上のために焼結体の結晶粒子を微細化すること等を目的として行われる。得られた微粉砕粉の比表面積(BET法により求められる)としては、5〜10m2/g程度とすることが好ましい。粉砕時間は、粉砕方法にもよるが、例えば湿式アトライタでは30分間〜10時間、ボールミルによる湿式粉砕では10〜40時間程度、処理すればよい。
乾式成形法を行う上で、接着剤(バインダを用いる。バインダの理想としては、接着作用に優れ、かつ粒子が磁気的に容易軸方向に整列することを阻害しない事が望まれている。従来からパラフィンワックス、樟脳等、種々のものが利用されている。
バインダの添加量は0.2〜1.5wt%程度が好ましい。添加量が少なすぎると、バインダとしての効果は発揮されず、保型力が弱くなってしまう。また、添加量が多すぎると、粒子が磁気的に容易軸方向に整列することを阻害され、残留磁束密度(Br)等の磁気特性が劣化してしまう。また、焼結時の有機物の炭化により、焼結体にクラックが発生し、あるいは焼結体の密度低下による残留磁束密度(Br)等の磁気特性が劣化してしまう。
成形助剤の添加方法としては、バインダと磁性粉末を混合した後に添加することが望ましい。バインダと磁性粉末のまわりに成形助剤が存在することにより、成形助剤の役割である摩擦の低減、流動性の向上、成形性の向上等の効果が顕著にあらわれる。ただし、バインダ添加前、あるいは同時に添加を行うこともできる。
磁場中乾式成形における、印加磁界は3〜12kOe(239〜955kA/m)程度、成形圧力は0.1〜5ton/cm2程度とされる。この様に形成された成形物は通常、次工程の焼成工程により焼成される。
また、バインダ、成形助剤等を添加した場合、100〜500℃程度の範囲で、例えば2.5℃/分程度の昇温速度とすることで脱脂処理を行い、バインダ、成形助剤を充分に除去することが好ましい。
また、Co、さらにはMnの添加時期についても特に限定されるものではなく、必要に応じて適切な時期に添加されれば良いが、後添加されることが好ましい。
これらの主成分を構成する出発原料を、焼成後の主成分が以下の式となるように秤量した。
組成式:
Sr1−x(La1−mRm)x(Fe12−0.077(Co1−0.75Mn0.75)0.077)1.033O19
x=0.14、m=0〜0.43(表1に示す)
上記出発原料のうち、酸化鉄(Fe2O3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)及び水酸化ランタン(La(OH)3)の一部を混合し、さらに、上記主成分に対して0.3wt%の酸化ケイ素(SiO2)を副成分として添加した。この混合原料を湿式アトライタで1時間混合、粉砕してスラリ状の原料組成物を得た。このスラリを乾燥後、大気中1300℃で2.5時間保持する仮焼を行った。なお、水酸化ランタン(La(OH)3)については、一部を前添加し、残部を後添加する。
次いで、得られた微粉砕スラリを恒温槽において100℃、16時間保持して乾燥した。乾燥後にバインダであるカンファを0.7wt%、成形助剤であるステアリン酸カルシウムを0.05wt%添加し、アトマイザとミキサを使用し、解砕、混合を行って成形用組成物を得た。次いで、この成形用組成物を7.5kOe(592.5kA/m)の磁場中で乾式成形した。成形圧力は1.0ton/cm2(98MPa)とした。得られた成形体を1230℃で1時間焼成し、直径26mm×高さ10mmの円柱状試料を得た。
表1及び図1に示すように、Laの一部をCe、Pr、Nd及びSmのいずれかの元素で置換することにより、残留磁束密度(Br)が向上する。ただし、表1及び図2に示すように、Laの一部をSmで置換した磁石は、保磁力(HcJ)が低下する。このように、Laの一部をCe、Pr及びNdのいずれかの元素で置換すると、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)ともに向上することができる。ただし、置換量mが大きくなると残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)ともに、置換しない場合よりも低くなるため、本発明では置換量mを0.90以下とする。
焼成後の主組成が以下の組成式となるように秤量し、実施例1と同様の条件で円柱状焼結体を作製した。ただし、酸化セリウム(CeO2)の添加時期を、仮焼前(表2に前添加と表示)及び仮焼後(表2に後添加と表示)とし、実施例1と同様に残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を測定した。その結果を表2に示す。
組成式:
Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−0.077(Co1−0.75Mn0.75)0.077)1.033O19
x=0.14、m=0.29
焼成後の主成分が以下の組成式となるように秤量し、酸化セリウム(CeO2)を前添加とした以外は実施例1と同様の条件で円柱状焼結体を作製し、実施例1と同様に残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を測定した。その結果を表3、図3及び図4に示す。
組成式:
Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−0.077(Co1−0.75Mn0.75)0.077)1.033O19
x=0.14、m=0〜0.86
焼成後の主成分が以下の組成式となるように秤量した以外は、実施例1と同様の条件で円柱状焼結体を作製し、実施例1と同様に保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)を測定した。その結果を表4、図5及び図6に示す。
組成式:
Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−0.077(Co1−0.75Mn0.75)0.077)1.033O19
x=0.08〜0.30、m=0.20〜0.75
焼成後の主成分が以下の組成式となるように秤量した以外は、実施例1と同様の条件で円柱状焼結体を作製し、実施例1と同様に保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)を測定した。その結果を表5、図7及び図8に示す。
組成式:
Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)1.033O19
x=0.08〜0.20、m=0.20〜0.50
y=0.02〜0.24、n=0〜0.92
組成式:
Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−y(Co1−0.75Mn0.75)y)1.033O19
x=0.14,0.28、m=0,0.29
y=0.02,0.08,0.16
Claims (3)
- Sr、La、Ce、Fe、Co及びMnを構成元素として含む六方晶構造を有するフェライトを主成分とし、
この主成分におけるSr、La、Ce、Fe、Co及びMnそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、
組成式:Sr1−x(La1−mCem)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)zで示されることを特徴とするフェライト磁性材料。
ただし、上記組成式において、
m、n、x、y及びzは、
0<m≦0.65、
0≦n≦0.90、
0.08≦x≦0.30、
0≦y≦0.25、
1.01≦z≦1.08である。 - Sr、La、R、Fe、Co及びMnを構成元素として含む六方晶構造を有するフェライトを主成分とし、
この主成分におけるSr、La、R、Fe、Co及びMnそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、
組成式:Sr1−x(La1−mRm)x(Fe12−y(Co1−nMnn)y)zで示されることを特徴とするフェライト磁性材料。
ただし、上記組成式において、
m、n、x、y及びzは、
0<m≦0.65、
0<n≦0.90、
0.08≦x≦0.30、
0≦y≦0.25、
1.01≦z≦1.08であり、
RはPr及びNdの少なくとも1種の元素である。 - 前記組成式において、
Ba及び/又はPbで、Srの30原子%以下が置換されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のフェライト磁性材料。
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