JP2007120300A - モルタル下地シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 建築物のモルタル壁において、下地とモルタル材との間に配設されるモルタル下地シートAであって、該モルタル下地シートAは、透湿防水層1と、該透湿防水層1をアルカリ溶液から保護するためのアルカリ防御層2とを備え、アルカリ防御層2がポリプロピレン不織布より形成されているモルタル下地シート。
【効果】 本発明のモルタル下地シートは、透湿防水性フィルム等からなる透湿防水層と、アルカリの苛酷な条件下でも侵され難い布帛等からなるアルカリ防御層とを備えるため、上記課題を解決できる。また、アルカリ防御層に中和機能や撥水機能、アルカリ耐性強化機能を有する薬剤の塗布等を行うことにより、モルタル下地シートのアルカリ耐性を更に強化することが可能となる。
【選択図】 図1
Description
そして、防水シートの外側から金網やメタルラス等の補強材を打ちつけ、更にその外側からモルタル材が塗布される。
結露した水は、防水シート内側の貫や木摺板等の木材に浸透して次第に腐食させるため、木材の耐久性が大きく損なわれ、更には建物自体の耐久性をも低下させてしまう。
また、上記のような結露した水を下方に流下させ、壁面の下端から排水し得る構造としたシート(外壁用構造物)も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
そのため、下塗りモルタルが建築物等の壁面に塗布されてから乾燥するまで、通常1週間程度養生させるが、その間、モルタル下地シートは、このモルタル材の強アルカリ性の水分に曝されることになる。
上記のように室内の湿気の結露対策で改良されてきたモルタル下地シートも、こうした強アルカリ水溶液に対する耐性が必ずしも十分でなく、それによって容易に侵されてしまい、実際の使用に耐えないものも多い。
モルタル材を塗布する際には十分な水分を与える状態にしておき、塗布が終わったら生成してきた強アルカリ水溶液でコーティング層を積極的に溶解させ、保水性を有する吸・保水シートで吸水し、乾燥を速やかに進めようとするものである。
吸・保水シートの材質としては、紙等が例示されているが、通常、紙は強アルカリ水溶液で容易に劣化してしまう。
しかし、モルタル材中のセメントに由来する強アルカリ水溶液により、モルタル下地シートが脆弱化されてしまうという問題には、必ずしも十分には対応しきれていない。
すなわち、本発明の目的は、透湿性と防水性を両備し、且つアルカリ耐性を有するモルタル下地シートを提供することである。
更に、アルカリ防御層に、中和機能や撥水機能、アルカリ耐性強化機能を有する薬剤の塗布等を行うことにより、モルタル下地シートのアルカリ耐性をより強化することが可能となる。
尚、本明細書においては、モルタル下地シートや後述する透湿防水層1、アルカリ防御層2等の各層の表裏に関しては、モルタル材に向く面を「表面」、建築物等の下地(貫、木摺板等)に向く面を「裏面」等という。
また、「モルタル」には、セメント成分を含有するコンクリート等も含まれる。
モルタル下地シートAは複層よりなるもので、少なくとも透湿防水層1と、該透湿防水層1の表面に設けられたアルカリ防御層2とを備える。
後述するように、補強材として透湿防水層1の裏面に布帛層3を備えたり、透湿防水層1と布帛層3の間に膨潤層を介在させることも可能である。
モルタル下地シート全体では、透湿度が1000g/m2・24hr以上であり、耐水圧は10kPa以上であることが好ましい。
そのため、透湿防水層1は、少なくとも透湿度が1000g/m2・24hr以上、耐水圧が3kPa以上を有するものが好ましく使用される。
例えば、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂から製膜される透湿防水性フィルムや、それらを高温で結合させたシート体等より形成される。
中でも、ポリエチレン多孔質フィルムは、アルカリ耐性を有し、加工し易く、しかも透湿性に優れるため、好ましく用いられる。
こうした不織布も、上記透湿度と耐水圧が達成されるものであれば、本発明のモルタル下地シートの透湿防水層として使用することが可能である。
具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等が挙げられる。
従って、可撓性も要求され、しかも透湿防水層1(ひいてはモルタル下地シートA)の透湿性を損なわないようにするために、不織布、織物、編物等の布帛より形成するか、透湿性を有するフィルム状に形成することが好ましい。
実際、夏場の直射日光やヒートアイランド現象等によってモルタル壁の温度が相当高温になる場合が生じ得るからである。
尚、試験条件の168時間は、先述した下塗りモルタルの通常の養生期間である1週間と符合する。
従って、上記の処理条件は、実際の塗布状態と比較して非常に苛酷な条件を設定しているが、本発明では、こうした苛酷な条件下においても、好ましくは処理後の重量減少率が20%以下であり、且つ引張強度が20N/5cm以上であることを要求する。
また、処理後の引張強度が20N/5cmより小さいと、モルタル材が乾燥により縮む際にアルカリ防御層が引っ張られ、タッカー止めや釘止めした部分から裂け目が生じたり破れたりする可能性が生じる。
例えば、アルカリ防御層2を不織布、織物、編物等の布帛より形成する場合は、アルカリ耐性があるポリオレフィン系のホットメルト系接着剤をドット状に塗布し熱圧着して接着することができる。
接着剤を使わずに熱融着する方法等も当然採用できる。
そのため、例えば、ポリプロピレン不織布等のアルカリ防御層2に対して、透湿防水層1を構成するポリエチレン樹脂等をコーティングするように塗布して、モルタル下地シートAを形成することも可能である。
以上のようにして形成されるモルタル下地シートAは、主に強度の点から、少なくとも厚さが0.2mm以上であることが好ましい。
因みに、モルタル下地シート全体としては、作業性等を考慮すれば100g/m2以上の目付であることが好ましい。
中でも、フッ素系の撥水処理は、取り扱い易く、加工し易い点で好ましく用いられる(撥水機能)。
また、上記中和、撥水、耐性強化の各機能が複合的に発揮されるように、それらを組み合わせて採用することも適宜行なわれる。
補強層3は、アルカリ防御層2と同様に透湿防水層1を外部からの衝撃から保護するために可撓性を有し、しかも透湿防水層1の透湿性を損なわないように、布帛が好ましく使用される。
中でも、熱による収縮が少なく、且つ価格的にも低コストであるポリエステル系不織布が好ましく用いられる。
透湿防水層1と補強層3の積層は、先述した透湿防水層1とアルカリ防御層2の積層方法と同様の方法で行なえばよい。
上記のように透湿防水層1と補強層3を積層する前に、例えば、補強層3の表面(透湿防水層1に貼り付けられる面)に、高吸水性ポリマーをバインダーでドット状に或いは格子状に固着させ、補強層3と透湿防水層1で挟み込むようにして積層するのである。
こうして、水分の更なる浸入をより確実に食い止めることが可能となる。
中でも、グラビアロール法は、モルタル下地シート全体の透湿性を損なわないように、ドット状や格子状等に付与することが可能であり好ましく採用される。
例えば、アルカリ防御層を構成する布帛の繊維として無機物であるガラス繊維等を用いることも当然可能である。
膨潤層を構成する高吸水性ポリマーを、補強層ではなく透湿防水層に付与した後、補強層の布帛を積層することも当然可能である。
尚、本発明は、必ずしもその実施例に限定されるものではない。
また、実施例に述べる品質評価は、次の方法によった。
実施例、比較例で得られたモルタル下地シート全体の透湿度を、JIS L 1099 A−1法に準じて測定した。
2)耐水圧(単位はkPa)
実施例、比較例で得られたモルタル下地シート全体の耐水圧を、JIS L 1092 6.1 B法に準じて測定した。
JIS A 6013 6.5.2を参考に温度50±2℃の水酸化カルシウムの飽和水溶液(pH12〜13)に168時間浸漬し、その後水洗して約4時間静置した後のアルカリ防御層を構成する素材の重量減少率が20%以下であり、かつ引張強度が20N/5cm以上であるものを合格(○)、これを満たさないものを不合格(×)とした。
アルカリ防御層を構成する素材のアルカリ処理する前と後の重量を、JIS L 1030に準じて測定し、重量減少率を算出した。
5)引張強度(単位はN)
アルカリ防御層を構成する素材の引張強度を、JIS L 1096に準じて測定した。
実施例、比較例で得られたモルタル下地シートを実際にモルタル壁に敷設し、その上にメタルラス(補強材)を打ちつけ、更にその外側からモルタル材が塗布してモルタル壁を完成させ、一定期間後のモルタル下地シートの状態を目視にて観察した。
透湿防水層としてポリエチレン多孔質フィルムPH35(株式会社トクヤマ製、透湿度6500g/m2・24hr、耐水圧9kPa)を用い、補強層としてポリエステル不織布20507FLV(ユニチカ株式会社製)を用い、不織布の表面にホットメルト系接着剤SC−29(三井武田ケミカル株式会社製)を塗布量5g/m2にてドット状に塗布した後、フィルムを貼り合わせた。
得られたモルタル下地シートについて上記の評価方法で評価を行った。
その結果を表1に示す。
透湿防水層としてポリエチレン極細繊維不織布(シート体)「タイベック(登録商標)」1060B(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製、透湿度4500g/m2・24hr、耐水圧14kPa)を用い、補強層は用いずに、アルカリ防御層を実施例1と同様に貼り合わせてモルタル下地シートを得た。
得られたモルタル下地シートについて上記の評価方法で評価を行った。
その結果を表1に示す。
アルカリ防御層として実施例1のポリプロピレン不織布に代えて、補強層として用いたポリエステル不織布と同じ不織布を用いた以外は実施例1と同様にしてモルタル下地シートを得た。
得られたモルタル下地シートについて上記の評価方法で評価を行った。
その結果を表1に示す。
アスファルトフェルトを用いたモルタル下地シート「三星Pベストフェルト」(田島ルーフィング株式会社製、透湿度150g/m2・24hr、耐水圧15kPa)について上記の評価方法で評価を行った。
その結果を表1に示す。
実施例1及び実施例2では、透湿度、耐水圧はともにモルタル下地シートとして十分な値であり、アルカリ防御層のアルカリ処理試験の結果、及び一定期間後の施工試験評価はともに良好なものであった。
従って、実施例1及び実施例2は、モルタル下地シートとして十分にその機能を果たし得るものである。
また、タッカー針を打ち込んだ部分の周囲に亀裂や破れが観察された。
従って、比較例1はモルタル下地シートとしては使用に耐えない。
しかし、透湿度の値が低すぎ、この程度の透湿度では、従来のような室内の水蒸気が結露してしまうという問題点を必ずしも十分に解消できるものではないと考えられる。
1…透湿防水層
2…アルカリ防御層
3…布帛層
Claims (12)
- 建築物のモルタル壁において、下地とモルタル材との間に配設されるモルタル下地シートであって、
該モルタル下地シートが、透湿防水層と、該透湿防水層をアルカリ溶液から保護するためのアルカリ防御層とを備え、
前記アルカリ防御層がポリプロピレン不織布より形成されていることを特徴とするモルタル下地シート。 - 前記アルカリ防御層は、その素材について、JIS A 6013 6.5.2(2)アルカリ処理において水酸化カルシウムの飽和水溶液の温度を温度50±2℃に変更した処理において、処理後の重量減少率が20%以下であり、且つ引張強度が20N/5cm以上であるものを用いることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記アルカリ防御層に、酸性剤を塗布しておくことを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記アルカリ防御層に、撥水剤で撥水加工を施しておくことを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記透湿防水層は、少なくとも透湿度が1000g/m2・24hr以上、耐水圧が3kPa以上を有するものであることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記透湿防水層が、透湿防水性フィルムより形成されていることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記透湿防水層が、ポリエチレンフィルムより形成されていることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記モルタル下地シートは、透湿防水層の裏面に更に補強層が積層されていることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
- 前記補強層が、布帛より形成されていることを特徴とする請求項8記載のモルタル下地シート。
- 前記補強層が、ポリエステル不織布より形成されていることを特徴とする請求項8記載のモルタル下地シート。
- 前記透湿防水層と補強層の間に、更に膨潤層を形成しておくことを特徴とする請求項8記載のモルタル下地シート。
- 前記モルタル下地シートは、透湿防水層が透湿防水性フィルムより形成され、アルカリ防御層が布帛より形成され、且つ透湿防水層の裏面に更に布帛より形成された補強層が積層されていることを特徴とする請求項1記載のモルタル下地シート。
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