JP5171473B2 - 建築用遮熱性透湿防水シート - Google Patents
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Description
しかし、アスファルトフェルトは重量が大きく、運ぶ際にバランスを崩しやすいなど作業安全性の点で問題があった。また硬さもありカッター等で切りにくいため、施工性が悪いという問題もあった。
そのため、従来の防水性を有し、より軽量でかつ施工性に優れた建築用防水シートの開発が求められてきた。
例えば、屋根用防水シートとして従来使用されてきたアスファルトフェルトは、透湿性に欠けるため屋内の水蒸気を外部に放散できず、水蒸気が屋内にこもり、そのため屋根裏板に腐食を生じたりすることがあった。
そこで、防水性を保ちながらなおかつ透湿性を有するような素材の開発についても、これまで進められてきた。
そのため、建築用防水シートには、防水性のほかに、こうした釘穴や亀裂などを自ら塞いで水分の浸入を食い止める機能、すなわち止水性が要求されている。
そのため、施工の簡便性や品質の均一性を保つという点で、遮熱性を有する建築用シートの開発も進められている。
このシートは、シート表面のアルミ単体またはアルミ蒸着フィルムからなる層(遮熱層)によって遮熱性を有するとともに、該遮熱層にミクロな穴を設けることで水蒸気を外部に排出することができる。
しかし、アルミ単体またはアルミ蒸着フィルムからなるシート表面は、摩擦抵抗が少ないために滑りやすく、また可視光を反射し作業中に視界が遮られるおそれがある。そのため、特にシートの上に乗って作業をする必要のある屋根用防水シートにおいては、作業時の安全性が低下し非常に危険である。
また、アルミからなる層は外力によって剥離しやすく、耐久性に劣るという問題もある。
なお、本明細書においては、建築用防水シート自体や、それを構成する透湿防水フィルム、不織布等の各面について、建築用防水シートを通常使用する状態で水平面上に置いた際に上方を向く面を「上面」、下方を向く面を「下面」と称す。
本発明の建築用遮熱性透湿防水シート1は、透湿防水フィルム2と、その上面に接着された不織布3と、透湿防水フィルム2の下面に接着された不織布4との三重構造を基本骨格とし、さらに不織布3の上面に樹脂層5が形成され、また、透湿防水フィルム2と不織布4との間に膨潤層7が介在されてなる。
ここで、本発明における遮熱性は、実施工想定試験においてシート上面側に設置した瓦の表面温度とシート下面側の表面温度との温度差によって判断し、具体的には、瓦表面温度が65℃のとき(一般的に夏期における瓦表面温度を想定)、シート下面側の表面温度が45℃以下(20℃以上の温度差)である場合に、遮熱性ありと判断する。
また、遮熱性を発揮する上で、本発明の建築用遮熱性透湿防水シートは、70%以上の赤外線反射率を保持していることが好ましい。赤外線反射率が70%未満であると、目的とする遮熱性が十分に得られないおそれがある。
すなわち、防水性としては、耐水圧が30kPa以上であることが好ましい。
また、防滑性としては、不織布3の上面に形成する樹脂層5が防滑性をも有していることにより得られ、防滑面に対する静摩擦係数測定による滑り角度が40°以上であることが好ましい。
また、透湿性としては、透湿防水フィルムに依存されるが、少なくとも1500g/m2・24hr以上の透湿度を有していることが好ましい。
このとき、微多孔質ポリエチレンフィルムが有する孔径は、0.5〜5.0μmであることが好ましい。孔径が0.5μm未満であると、透湿性が十分に得られないおそれがあり、5.0μmよりも大きいと、透湿性は高くなるが水も通しやすくなり、防水性が十分に得られないおそれがある。
また、素材としては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系の合成繊維が好ましく、これらを単独または複数で用いることができる。また、合成繊維とともに、セルロース系、タンパク質系や、その他の半合成繊維、再生繊維などを混合してもよい。
なかでも、成形性、寸法安定性、強度、耐久性等の点で、ポリエステル系および/またはポリプロピレン系の合成繊維からなる不織布が好ましい。
熱発泡性樹脂のなかでは、加工性の点でアクリル系の熱発泡性樹脂が特に好ましい。
遮熱性を有する粉末としては、アルミニウム、亜鉛等の金属系粉末と、酸化チタン、酸化亜鉛等のセラミックス系粉末が挙げられるが、本発明においては、特にセラミックス系粉末が好ましく用いられる。
セラミックス系粉末は、樹脂と混合した場合に遮熱効果を発揮することが困難となる金属系粉末とは異なり、樹脂と混合させても遮熱性を保持することができる。また、セラミックス系粉末を用いた遮熱層は、金属系粉末を用いた遮熱層のような照り返しがなく、作業安全性においても優れている。
セラミックス系粉末のなかでは、高い遮熱性を有する点や、加工性、廉価性、安全性の点で、酸化チタン粉末が特に好ましい。
なお、本発明における酸化チタン粉末の粒径は、ふるい分け試験によって測定する。
使用する分散剤としては、ポリカルボン酸系のものが好ましく用いられる。
このとき、樹脂層は、前記透湿防水フィルムの透湿性を妨げないで、かつ遮熱性および防滑性を発揮することができる限り、不織布3の上面全体に形成してもよいし、格子状やドット状等に形成してもよい。また、端に重ね代を設けるようにして樹脂層を形成してもよい。
また、撥水剤を付与することで樹脂層に汚れがつきにくくなり、建築用遮熱性透湿防水シート表面の防汚性を向上させることができる。
なお、撥水剤の付与は、樹脂層5を形成させた不織布3と、透湿防水フィルム2と、膨潤層7を形成させた不織布4とを積層させた後に、樹脂層5に付与することが好ましい。
ちなみに、1回の降雨で浸入する水の量はわずかであっても、長期間にわたって水の浸入が繰り返されると、結果的に屋根裏板を腐食させることとなる。
特に、膨潤層7の上面には透湿防水フィルムがあり水を通さないために、膨潤層7中の膨潤剤が不用意に上面からの水によって膨潤することはなく、釘まわりの間隙から浸入してきた水を吸収して釘まわりの膨潤剤のみが迅速に膨潤する。
このように、本発明の建築用遮熱性透湿防水シートは、膨潤層が水を吸収して膨潤し、空間(例えば釘穴や亀裂等)を充填して塞ぐことで止水を確実にする。
すなわち、本発明の建築用遮熱性透湿防水シートは、透湿防水フィルムの下に膨潤層を設けたことにより、釘穴等からの水の浸入を阻止し、上記実験においても水の裏抜けを生じさせない。
すなわち、不織布4の上面に膨潤層7を形成した後、膨潤層7を介して透湿防水フィルム2に接着させることで、透湿防水フィルム2と不織布4との間に膨潤層7を介在させることができる。
つまり、膨潤層全体が雨水を吸収して膨潤しきってしまうため、すなわち水分吸収力が飽和状態となってしまうため、新たに釘まわりの間隙や亀裂を伝わって浸入してくる水分の吸収に寄与することができない。
高吸水性ポリマーとしては、具体的には、橋かけポリアクリル酸塩、橋かけポリビニルアルコール、澱粉−ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩、イソブチレン−マレイン酸塩等や、これらの組み合わせが採用可能である。
このとき、アクリル系樹脂と高吸水性ポリマーとの配合の割合は、固形重量比率でアクリル系樹脂が1に対して高吸水性ポリマーが2〜6であることが好ましい。
なかでも、グラビアロール法は、全面への付与や、格子状等に付与することが可能であり、透湿性が損なわれないように不織布4の素材に応じた加工ができることから、より好ましく採用される。
このように不織布4は、屋根裏板や壁材に対して建築用遮熱性透湿防水シート自体がゲル化した膨潤層の影響により滑るのを防止する効果も有している。
具体的には、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、あるいはアスファルト類等の防滑剤等が挙げられる。
前記防滑剤は、前記透湿防水フィルムの透湿性を妨げないで、なおかつ防滑性を発揮することができる限り、不織布4の下面全体に形成してもよいし、格子状やドット状等に形成してもよい。
なお、本発明にかかる建築用遮熱性透湿防水シートは、建築用資材としての使用に十分耐えうる強度(引張強度、引裂強度、つづり針強度等)を有していることは言うまでもない。
また、本発明の建築用遮熱性透湿防水シートの諸特性は、下記の方法によって測定した。
分光光度計(株式会社島津製作所製、UVPC−3100)を用いて、試験布の上面側の表面における、波長領域2500〜3000nmに対する赤外線反射率を求めた。
なお、上記赤外線反射率は、2500〜3000nmの波長領域において、2nm毎の赤外線反射率を測定し、その各測定結果の平均(単純平均)によって求めた。
木製の型枠に、型枠を挟むようにして、一方に30cm×30cmにカットした試験布を配置し、もう一方に瓦を配置した。このとき、試験片の上面側が瓦と向かい合うようにして配置した。
次いで、35℃に設定した恒温室中において、瓦の表面にハロゲンランプを照射して瓦の表面温度を65℃にした状態(夏場を想定)で1時間放置し、1時間後の試験布の下面側の表面温度を放射温度計(株式会社キーエンス製、IT2−80)にて測定した。
JIS A 6111に準じて測定した。
JIS A 6111に準じて測定した。
静摩擦係数測定機(新東科学株式会社製、トライボギアTYPE:10)を用いて、下記測定方法により試験布の滑り角度を測定した。
まず、試験布を、試験布の上面側が外側になるよう100gの平面圧子に取り付けた。
次いで、試験布を取り付けた平面圧子を上昇板に設置した。このとき、試験布の上面側と上昇板とが接するように設置した。
測定前の上昇板は水平状態にあり、測定開始と同時に傾斜していき、平面圧子が滑り始めた瞬間に平面圧子に取り付けられたセンサーが反応して上昇板が停止する。
この平面圧子が滑り始めたときの傾斜角度を読み取ることにより、滑り角度を測定した。
JIS A 5430 5.6、および建築研究所法に準じて測定した。
まず、合板に試験布を載せてタッカーもしくはスクリング釘を打ち込み、その上に内径4cm、高さ200mmのアクリル製円筒を立てて試験布と接触しているふち部分をシーリングした。
次いで、円筒の中に水を150mmの高さまで入れ、24時間放置した後の、減水高さを測定した。
JIS L 1092に準じて撥水性を測定した。
[引張強度]
JIS A 6111に準じて測定した。
JIS A 6111に準じて測定した。
JIS A 6111に準じて測定した。
酸化チタン粉末(テイカ株式会社製、JR−1000、粒径1μm(誤差0.1μm以下))を、ポリカルボン酸ナトリウム塩分散剤(サンノプコ株式会社製、ノプコスパース44−C)および水と混合し、さらにアクリル系の発泡性樹脂(日華化学株式会社製、ネオステッカー−NSCL−03)と混合して、樹脂液Aを作製した。
<樹脂液Aの調液条件>
酸化チタン粉末(テイカ株式会社製、JR−1000) 10重量%
ポリカルボン酸ナトリウム塩分散剤(サンノプコ株式会社製、ノプコスパース44−C)
0.1重量%
アクリル系発泡性樹脂(日華化学株式会社製、ネオステッカー−NSCL−03)
87重量%
水 2.9重量%
実施例1のシートに対する各評価結果を表1に示す。
実施例1のシートにおいて、樹脂層表面に、下記処方からなる撥水剤を乾燥重量で3g/m2となるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の方法により、実施例2の建築用遮熱性透湿防水シートを得た。
<撥水剤処方>
撥水剤(日華化学株式会社製、NKガードNDN7E) 9重量%
撥水剤(日華化学株式会社製、TH−44) 3重量%
架橋剤(日華化学株式会社製、NKガード) 1重量%
水 残量
実施例2のシートに対する各評価結果を表1に示す。
アクリル系発泡性樹脂(日華化学株式会社製、ネオステッカーNSBK−01)のみを、目付90g/m2のポリエステルスパンボンド不織布(東レ株式会社製、アクスターG2055−1S)からなる不織布3の上面に、グラビアロールにて乾燥重量で8g/m2となるよう塗布し、乾燥させて樹脂層を形成した以外は、全て実施例1と同様の方法により、比較例1のシートを得た。
比較例1のシートに対する各評価結果を表1に示す。
従来の屋根用防水シートであるアスファルトルーフィング(JIS A 6005に規定のアスファルトルーフィング940)を使用した。
比較例2のシートに対する各評価結果を表1に示す。
実施例1および2で得られたシートは、軽量で、高い赤外線反射率を有するとともに、実施工想定試験においても優れた遮熱性を示した。さらに、透湿性、防水性、防滑性、止水性に対しても優れていた。
止水性に関しては、上記実験では、実施例1においてタッカーで1.2mm、スクリング釘で8mmの減水が見られたが、試験布の下面、特にタッカーまたは釘を打ち込んだ部分のまわりを確認したところ、ともに水の裏抜けは生じていないことが確認できた。また、実施例2についても同様に水の裏抜けは生じていないことが確認できた。
さらに、実施例1および2のシートは、建築用資材としての使用に十分耐えうる強度(引張強度、引裂強度、つづり針強度)を有するものであった。
また、実施例2は高い撥水性も有しており、よって防汚性についても優れたものであった。
また、比較例2についても目的とする遮熱性は得られず、透湿性にも劣るものであった。
2 透湿防水フィルム
3 不織布
4 不織布
5 樹脂層
6 遮熱性を有する粉末
7 膨潤層
Claims (4)
- 透湿防水フィルムの上面に不織布が配置され、その上にさらに遮熱性を有する粉末を含有した発泡性樹脂からなる樹脂層が配置されており、かつ透湿防水フィルムの下面には膨潤層が配置され、その下にさらに不織布が配置されてなる建築用遮熱性透湿防水シート。
- 前記遮熱性を有する粉末がセラミックス系粉末である請求項1に記載の建築用遮熱性透湿防水シート。
- 前記セラミックス系粉末が酸化チタンからなり、かつ粒径が0.5〜5μmである請求項2に記載の建築用遮熱性透湿防水シート。
- 前記樹脂層表面にさらに撥水剤を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の建築用遮熱性透湿防水シート。
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