JP7125045B2 - 屋根用透湿防水シート - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の屋根に設ける屋根用透湿防水シートに関する。
例えば、住宅等の屋根は、棟木から軒桁に架け渡された垂木上に野地板を配列し、この野地板の上に、例えば瓦やスレートなどの屋根材を設けている。そして、この屋根材と野地板との間には、屋根の防水のために、下葺き材(ルーフィング)として防水シートが形成されている。
従来、屋根用の防水シートとしては、アスファルト系のシートやアルミニウムなどの金属薄膜シートが用いられていた(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、これらの防水シートは、防水性は十分なものの、屋内の湿気を外部に放出する透湿性が全く無く、家屋の屋根裏に湿気がこもりやすいという課題があった。また、アルミニウムシートは、材料コストが高く、屋根の施工コストが高くなるという課題があった。
一方、例えば、特許文献2には、防水性に加えて透湿性を有する建築用防水シートが開示されている。この建築用防水シートは、透湿防水フィルムの一面および他面に布帛を設け、更に一方の布帛の表面に防滑層を形成している。こうした防滑層は、屋根施工時の作業員の作業性を高める。
特開2010-184451号公報 特開2002-316373号公報
しかしながら、特許文献2に記載されたような建築用防水シートは、布帛の上に防滑層を独立して形成しているため、製造コストが高い。また、防滑層が脱落しやすいなど、防滑性を維持することが難しいという課題もあった。
本発明は、高い強度および耐久性を持ち、かつ低コストで製造が可能な、防水性、透湿性、および防滑性を備えた屋根用透湿防水シートを提供することを目的とする。
本発明の屋根用透湿防水シートは、以下の構成を有する。
不織布からなるベース層と、複数の細孔が形成された多孔性フィルム層と、無機材料粒子が分散された不織布からなる表層と、が順に形成され、前記多孔性フィルム層は、2層の多孔性フィルムと、前記2層の多孔性フィルムの間に配されたラミネート層と、からなり、前記ラミネート層は、線状に間欠的に形成されていることを特徴とする。
また、不織布からなるベース層と、複数の細孔が形成された多孔性フィルム層と、無機材料粒子が分散された不織布からなり、一面側が外部に向けて露出する表層と、が順に形成され、前記不織布に対する無機材料粒子の配合量は、5重量%以上、35重量%以下の範囲であることを特徴とする。
また、本発明では、前記無機材料粒子は、平均粒径が0.5μm以上、20μm以下の範囲であることが好ましい。
また、本発明では、前記無機材料粒子は、炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素のうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明によれば、高い強度および耐久性を持ち、かつ低コストで製造が可能な、防水性、透湿性、および防滑性を備えた屋根用透湿防水シートを提供することができる。
屋根用透湿防水シートを備えた家屋の屋根構造を示す一部破断斜視図である。 本発明の一実施形態の屋根用透湿防水シートの層構成を示す断面図である。 屋根用透湿防水シートの表層のSEM写真である。 屋根用透湿防水シートの表層のSEM写真である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の屋根用透湿防水シートについて説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、屋根用透湿防水シートを備えた家屋の屋根構造を示す一部破断斜視図である。
例えば、一般的な住宅の屋根1は、棟木2から軒桁3に向かって、所定の間隔で架け渡された複数の垂木4と、この垂木4を覆うように傾斜して固定される野地板5と、を備えている。そして、この野地板5に重ねて屋根材6が設けられている。屋根材6としては、例えば、瓦、スレート、金属板などが用いられる。こうした野地板5と屋根材6との間には、本発明の屋根用透湿防水シート10が敷設される。
図2は、本発明の一実施形態の屋根用透湿防水シートの層構成を示す断面図である。
屋根用透湿防水シート10は、例えば野地板(図1参照)に接するベース層11と、このベース層11に重ねて形成される多孔性フィルム層12と、この多孔性フィルム層12に重ねて形成される表層13と、から構成されている。
ベース層11は、長繊維不織布、例えばスパンボンド不織布(SB)から構成されている。スパンボンド不織布としては、オレフィン系樹脂を溶融して紡糸にしたものを捕集し、シート化したものが挙げられる。スパンボンド不織布に用いる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ナイロン、およびこれらの複合樹脂が挙げられる。
ベース層11を構成するスパンボンド不織布の物性としては、例えば、目付量が20g/m以上、250g/m以下である。好ましくは50g/m以上、200g/m以下である。本実施形態では、ベース層11として、目付量が80g/mのポリプロピレン繊維製のスパンボンド不織布を用いた。
このベース層11は、上層から水分の防水、および屋根用透湿防水シート10の強度と剛性を保つ役割を果たす。
多孔性フィルム層12は、2層の多孔性フィルム12a,12bを線状のラミネート層12cによって互いに接合したものから構成されている。多孔性フィルム12a,12bは、水蒸気が透過可能な多数の細孔が形成された多孔性の樹脂フィルムである。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルなどが挙げられる。
多孔性フィルム12a,12bの物性としては、例えば、目付量が1g/m以上、50g/m以下、好ましくは10g/m以上、30g/m以下である。また、厚みは5μm以上、100μm以下、好ましくは10μm以上、50μm以下である。また、透湿度が3000g/(m・24h)以上、12000g/(m・24h)以下である。本実施形態では、多孔性フィルム12a,12bとして、目付量が22g/m、厚みが30μm、透湿度が10000g/(m・24h)のポリエチレン製の多孔性フィルムを用いた。
この多孔性フィルム12a,12bは、上層から水分の防水、および透湿性を保つ役割を果たす。
ラミネート層12cは、透湿性を保つために、線状(ストライプ状)に間欠的に形成されている。ラミネート層12cは接着性の樹脂シートからなり、樹脂シートの材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルなどが挙げられる。
ラミネート層12cの物性としては、例えば、目付量が30g/m以上、100g/m以下、好ましくは40g/m以上、90g/m以下である。本実施形態では、ラミネート層12cとして、目付量が65g/mのポリエチレン製の樹脂シートを用いた。塗布巾は0.5mm以上、3mm以下であり、塗布間隔(隙間)は0.1mm以上、1mm以下であり、好ましくは0.2mm以上、0.7mm以下である。
このラミネート層12cは、多孔性フィルム12aと多孔性フィルム12bとをラミネート接合する役割を果たす。
表層13は、無機材料粒子が分散された長繊維不織布、例えばスパンボンド不織布(SB)から構成されている。スパンボンド不織布としては、オレフィン系樹脂を溶融して紡糸にしたものを捕集し、シート化したものが挙げられる。スパンボンド不織布に用いる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ナイロン、およびこれらの複合樹脂が挙げられる。
表層13を構成するスパンボンド不織布の物性としては、例えば、目付量が20g/m以上、200g/m以下である。好ましくは30g/m以上、150g/m以下である。
表層13を構成するスパンボンド不織布に分散される無機材料粒子は、スパンボンド不織布に対する配合量が5重量%以上、35重量%以下である。好ましくは8重量%以上、30重量%以下である。また、無機材料粒子の平均粒径は、0.5μm以上、30μm以下である。好ましくは1μm以上、15μm以下である。無機材料粒子の平均粒径は、表層13を構成するスパンボンド不織布の厚みに対して5~60%の範囲であり、好ましくは10~50%の範囲である。表層13を構成する無機材料粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素、およびこれらの混合物が挙げられる。
本実施形態では、表層13として、目付量が80g/mのポリプロピレン繊維製のスパンボンド不織布に、粒径が7μmの炭酸カルシウムを20重量%分散配合させた無機材料粒子分散スパンボンド不織布を用いた。
この表層13は、スパンボンド不織布が、上層から水分の防水、および透湿性を保つ役割を果たす。また、スパンボンド不織布に分散させた無機材料粒子が防滑性を保つ役割を果たす。
無機材料粒子は、防滑性を保つために、表層13を構成するスパンボンド不織布の繊維表面付近に少なくとも配置されていることが好ましい。また、この無機材料粒子は、スパンボンド不織布に分散配合させることによって、表層13から脱落しにくくなり、防滑性を長く維持することができる。
以上のような構成の本発明の屋根用透湿防水シート10によれば、例えば、住宅の屋根1において屋根材6から雨水が浸入しても、表層13、多孔性フィルム層12、およびベース層11の防水性によって、野地板5まで水分が浸透することを確実に防止することができる。一方、表層13、多孔性フィルム層12、およびベース層11のそれぞれの透湿性によって、家屋の屋根裏空間から生じた湿気(水蒸気)を屋根材6側に透湿させることができる。これにより、屋根裏空間の湿気こもりを防止することができる。
そして、本発明の屋根用透湿防水シート10では、表層13として無機材料粒子を分散させた不織布を用いたので、この無機材料粒子によって防滑性を確保することができる。これにより、例えば屋根1の施工時に作業者が屋根用透湿防水シート10上を歩行しつつ屋根材6を設置する際に、傾斜した面であっても安定して作業を行うことができる。また、こうした防滑性を発揮するための無機材料粒子は、不織布に分散配合されているので表層13から脱落しにくくなり、例えば、複数の作業者が屋根用透湿防水シート10上を反復して歩行しても、防滑性を長く維持することができる。
また、本発明の屋根用透湿防水シート10は、樹脂シート、不織布、および無機材料粒子(炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素など)など、安価で大量に生産されている材料を用いて構成しているので、低コストに製造が可能であり、大面積の屋根であっても、低コストに防水透湿施工を行うことができる。
なお、上述した実施形態では、屋根用透湿防水シート10をベース層11と、多孔性フィルム層12と、表層13とから構成した例を示したが、これ以外にも、例えば、ベース層11と多孔性フィルム層12との間や、多孔性フィルム層12と表層13との間に、任意の機能層を配した構成であっても良い。
また、上述した実施形態では、屋根用透湿防水シートを一般的な日本家屋の屋根に適用した例を示したが、本発明の日本家屋の屋根だけに適用できるものでは無く、建築物一般の屋根に幅広く適用可能である。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本発明の屋根用透湿防水シートの効果を検証した検証結果を説明する。
[止水性(防水性)の検証例]
防水透湿ルーフィング(屋根用透湿防水シート)に関する止水性試験「JIS A 6111 2016 透湿防水シート 7.9 くぎ穴止水性」を行った。
「試料」
(試料A)
表層:炭酸カルシウムを分散させたポリプロピレン不織布を用いた。目付量80g/mとして、平均粒径7μmの炭酸カルシウムをポリプロピレン樹脂に対し20重量%配合した。
多孔性フィルム層:2層の多孔性フィルムをラミネート層で接合した積層体を用いた。多孔性フィルムとしては、多数の細孔が形成されたポリエチレン製のフィルムを用いた。ラミネート層としては、ポリプロピレン製の樹脂シートを用いた。透湿度1000g・(m・24hr)、目付量22g/m、厚み22μmのものを用いた。
ベース層:ポリプロピレン不織布(目付量80g/m)を用いた。
「試験条件」
試験片(下地材):MDF70mm×70mm×9mm厚
貫通材:丸釘(φ2.7mm×全長50mm)
注水用アクリル管:内径40mm
水柱高さ:35mm(標線高さ(試料表面より5mm)+30mm)
試験体の数:10個
試験環境温度:17~20℃
試験環境湿度:45~50%RH
以上の条件で、試料を載置した試験片(下地材)に向けて、貫通材である丸釘を全長の半分まで打ち込み、注水用アクリル管に着色した水を流し込んだ。そして、24時間経過後の水位を測定し、減水量を求めることによって、試料の止水性(防水性)を検証した。
この検証の結果を表1に示す。
Figure 0007125045000001
表1に示す結果によれば、本発明の屋根用透湿防水シートを用いた試料A(10個)によれば、貫通材を打ち込んで24時間経過後も減水量は無く、優れた止水性(防水性)があることが確認された。
[防滑性の検証例]
防水透湿ルーフィング(屋根用透湿防水シート)に関する傾斜面での防滑性試験を行った。
「試料」
(実施例1):フクビ化学工業株式会社製「試作防滑不織布」(実施形態における表層を構成する、炭酸カルシウムを分散させたポリプロピレン不織布)。
(実施例2):フクビ化学工業株式会社製「実施例1の構成に、更に網状割繊維不織布を重ねたもの」。
(比較例1):フクビ化学工業株式会社製「遮熱ルーフエアテックス」。
(比較例2):実施例1の表層を目付量80g/mのポリプロピレン不織布(炭酸カルシウム無し)に変えた以外は同じ構成とした。
なお、実施例1、実施例2における試作防滑不織布は、炭酸カルシウムを分散させたポリプロピレン不織布である。
「試験条件」
(1)歩行感覚テスト
1.900角合板にそれぞれの試料であるルーフィングをタッカーで施工する。
2.ルーフィングを貼った合板を勾配をつけた枠組みに固定する。
3.試験者が革靴でルーフィングの上を歩いて評価する(乾燥状態)。
4.また、ルーフィングの一部に水を掛け、濡れた箇所の上を試験者が革靴で歩いて評価する(濡れ状態)。
(2)勾配を変化させ、滑りおちる高さを測定するテスト
革靴、足袋、およびスニーカーをそれぞれの試料であるルーフィング上に並べ、次第に勾配を強め、滑り始めた時の高さを測定する。
これら2つのテスト結果を表2、表3にそれぞれに示す。
Figure 0007125045000002
Figure 0007125045000003
表2、表3に示す結果によれば、本発明例である実施例1、2は、乾燥状亭、水濡れ状態のいずれにおいても、優れた防滑性を有することが確認された。また、耐久性試験として、実施例1の試料の表面を試験者が革靴で激しく擦ったが、破損等が見られなかった。これにより、本発明例である実施例1の優れた耐久性も確認された。
[表層の観察]
実施形態で示した構成の本発明の屋根用透湿防水シートにおける表層を、電子顕微鏡によって観察した。観察に用いた表層は、目付量80g/mのポリプロピレン不織布に、炭酸カルシウムを20重量%配合(分散)させたものである。図3、図4に、屋根用透湿防水シートの表層のSEM写真(倍率50倍、倍率100倍(図3)、250倍、500倍(図4))を示す。
この表層の観察結果によれば、表層に分散させた無機材料粒子である炭酸カルシウム粒子が、ポリプロピレン不織布の表面に突起として固着していることが確認された。こうしたポリプロピレン不織布の表面に突出した炭酸カルシウム粒子によって、優れた防滑性が発現しているものと考えられる。
10…屋根用透湿防水シート
11…ベース層
12…多孔性フィルム層
12a,12b…多孔性フィルム
12c…ラミネート層
13…表層

Claims (4)

  1. 不織布からなるベース層と、複数の細孔が形成された多孔性フィルム層と、無機材料粒子が分散された不織布からなる表層と、が順に形成され
    前記多孔性フィルム層は、2層の多孔性フィルムと、前記2層の多孔性フィルムの間に配されたラミネート層と、からなり、
    前記ラミネート層は、線状に間欠的に形成されていることを特徴とする屋根用透湿防水シート。
  2. 不織布からなるベース層と、複数の細孔が形成された多孔性フィルム層と、無機材料粒子が分散された不織布からなり、一面側が外部に向けて露出する表層と、が順に形成され、
    前記不織布に対する無機材料粒子の配合量は、5重量%以上、35重量%以下の範囲であることを特徴とする屋根用透湿防水シート。
  3. 前記無機材料粒子は、平均粒径が0.5μm以上、20μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根用透湿防水シート。
  4. 前記無機材料粒子は、炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の屋根用透湿防水シート。
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