JP2009243247A - 防水シート材 - Google Patents

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Abstract

【課題】面状発熱体等の防水を必要とする物体を包むように覆うだけで、面状発熱体の防水を行うことのできる防水シートおよび、その防水シートに用いることのできるシート材を得る。
【解決手段】撥水剤と、アクリル系樹脂とを含む合成樹脂層(a)11と、アクリル系樹脂を含浸させた基材層(b)12と、改質アスファルトコンパウンド層(c)13と、剥離層(d)14とが、(a)、(b)、(c)、(d)の順に積層されている防水シート材である。
【選択図】図1

Description

本発明は、面状発熱体等の防水を必要とする物体に防水性を付与するために、面状発熱体等を覆うための防水シートに用いることのできる防水シート材に関する。
多雪地域等における建物の屋根や道路の積雪を融雪するために、面状発熱体が用いられている。融雪によって多量の水が発生するため、面状発熱体には防水性が求められている。このような面状発熱体として、例えば、特許文献1には、炭素繊維および、炭素繊維を含む紙または不織布に電極を取りつけた面状発熱体と、該面状発熱体の両側面を被覆する防水層とでなることを特徴とする面状発熱防水体が開示されている。
また、特許文献2には、アスファルト路面等に埋設した場合に長期間に亘って安全かつ安定的に前記路面を加熱することが可能な埋設用面状発熱体が開示されている。この埋設用面状発熱体は、織布にカーボン粒子を含浸した発熱層を有する面状発熱体本体と、この本体の両面に配置された2枚の保護層と、前記本体および保護層を間に挟んでこれら本体および保護層を密封して外界から遮断する2枚の防水シートとを具備し、前記保護層は、ゴム化アスファルト層と金属膜とを有する積層物からなり、かつ前記ゴム化アスファルト層が前記本体側に位置するように配置され、前記防水シートは、不織布にゴム化アスファルトを含浸した複合材からなることを特徴とすることが開示されている。
また、特許文献3には、道路の氷雪を融かすため、面状発熱体の上下面に強靱繊維よりなるメッシュ入りシートを圧着し、その上下にまたプラスチック防水シートを接着し、更に上下面に金属板を接着剤を使用して貼着し、その外側を市販のタール系防水シートを上記金属板に接着して水が入らぬように被せ、舗装の表層材の下に埋める面状発熱体による道路の融雪構造が開示されている。
特開昭62−160683号公報 特開平7−312277号公報 特開平6−180004号公報
本発明は、面状発熱体等の防水を必要とする物体を包むように覆うだけで、面状発熱体の防水を行うことのできる防水シートおよび、その防水シートに用いることのできるシート材を得ることを目的とする。
従来の防水シート50を用いて面状発熱体40の防水を行う場合の、防水シート50の端部付近の断面模式図を図6に示す。本発明者らは、外部からの水の浸透100は、従来の基材層52に浸透して基材層52を通じて、面状発熱体40のある内部へと侵入してしまうという問題があることを明らかにした。そして、基材層の基材に、アクリル系樹脂を含浸させることにより上記問題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
本発明は、撥水剤と、アクリル系樹脂とを含む合成樹脂層(a)と、アクリル系樹脂を含浸させた基材層(b)と、改質アスファルトコンパウンド層(c)と、剥離層(d)とが、(a)、(b)、(c)、(d)の順に積層されている防水シート材である。
本発明の防水シート材の好ましい態様を以下に示す。本発明では、これらの態様を適宜組み合わせることができる。
(1)アクリル系樹脂が、アクリル系樹脂100質量%中に、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を90〜99.9質量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.1〜10質量%含む。
(2)撥水剤が、ワックス系撥水剤であり、合成樹脂層(a)に含まれるアクリル系樹脂100質量部に対して、撥水剤を0.2〜5質量部含む。
(3)撥水剤が、パラフィンである。
また、本発明は、上記防水シート材を用いる、物体に防水性を付与するための防水シートである。
また、本発明は、上記防水シート材によって、面状発熱体が密封・包装されてなる面状発熱防水体である。
また、本発明は、上記面状発熱防水体が、舗装部の下部に敷設されている構造体である。
本発明によって、面状発熱体等の防水を必要とする物体を包むように覆うだけで、面状発熱体の防水を完全にすることのできる防水シートおよびその防水シートに用いることのできるシート材を得ることができる。
本発明は、面状発熱体等の防水を必要とする物体に防水性を付与するために、面状発熱体等を覆うための防水シートに用いることのできる防水シート材に関する。図1に示すように、本発明の防水シート材10は、撥水剤と、アクリル系樹脂とを含む合成樹脂層(a)11と、アクリル系樹脂を含浸させた基材層(b)12と、改質アスファルトコンパウンド層(c)13と、剥離層(d)14とが、(a)、(b)、(c)、(d)の順に積層されている。本発明の防水シート材10は、基材層(b)12にアクリル系樹脂を含浸させることに特徴がある。そのため、図2に示すように、例えば、面状発熱体40の防水を、本発明の防水シート材10を用いて行う場合、2枚の防水シート20が重なり合った部分の下側に位置する防水シート20の基材層(b)12を通して水が浸透することを防止することができる。
図3に、本発明の防水シート材10を用いた面状発熱防水体45の一例の上面模式図を、図4に、図3に示す面状発熱防水体45の中央付近の短辺方向の断面模式図を示す。図3および4において、防水シート20の長辺方向の端の部分(「長辺方向の端部」という)が、長さd1で重なっている様子を示す。本発明の防水シート20の長辺方向の端部の防水を確実に行うためには、図2に長辺方向の端部付近の模式的断面図を示すように、一方の改質アスファルトコンパウンド層(c)13を他方の合成樹脂層(a)11に接着させるだけでよい。
また、図3に示す面状発熱防水体45の左端および右端には、幅d1で示される、面状発熱体40がない部分(「短辺方向の端部」という)が存在する。図5に、この短辺方向の端部の断面模式図を示す。図5に示すように、短辺方向の端部では、防水シート20の改質アスファルトコンパウンド層(c)13が互いに向き合うこととなる。そのため、本発明の防水シート20の短辺方向の端部の防水を確実に行うためには、向き合う二つの改質アスファルトコンパウンド層(c)13を互いに接着させるだけでよい。
以上述べたように、本発明の防水シート20を用いると、防水を必要とする物体を包むように覆い、長辺方向の端部および短辺方向の端部を接着するだけで、面状発熱体40等の防水を必要とする物体に防水性を付与し、これらの物体の防水を完全に行うことができる。
<基材層(b)>
本発明の防水シート材10では、基材層(b)12の材料(基材)にアクリル系樹脂を含浸させたものを基材層(b)12として用いる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルなど、アクリル基を有する高分子化合物を含む樹脂を用いることができる。
アクリル系樹脂として、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を所定の割合で含む樹脂を用いることが、防水を確実に行うために好ましい。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体は、接着剤としての機能を有する。また、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体は、増粘材としての機能を有する。そのため、これらの共重合体を所定の割合とすることにより、基材層(b)12の基材への含浸性に優れ、また基材層(b)の内部の空隙部に充填されて硬化することにより防水性に優れた基材層(b)12を得ることができる。具体的には、アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂全体を100質量%として、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を90〜99.9質量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.1〜10質量%含むことが好ましく、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を95〜99.5質量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.5〜2質量%含むことがより好ましい。
基材層(b)12の基材への含浸性の点から、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体は、水性エマルションの状態のものを用いることが好ましい。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体の水性エマルションは、例えば、水性エマルションを100重量%として、共重合体40〜60重量%および水60〜40重量%の組成のもの、具体的には共重合体49重量%および水51重量%の組成のものを用いることができる。また、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体の水性エマルションは、水性エマルションを100重量%として、共重合体20〜40重量%および水80〜60重量%の組成のもの、具体的には共重合体28重量%および水72重量%の組成のものを用いることができる。
基材層(b)12は、織布、編み布および不織布からなる群より選ばれる少なくとも一つである基材を含む。織布、編み布および不織布の材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルなどの樹脂ならびにガラスなどの無機物を用いることができる。好ましい基材の材料は、吸水性および機械的強度などの点から、低吸水性のナイロン11やナイロン12、ポリエステルやガラスなどの合成樹脂や無機物からなる繊維である。また、機械的強度の点から、基材は、不織布であることが好ましい。吸水性および機械的強度などを総合的に判断すると、基材は、ポリエステル不織布であることがより好ましい。
基材層(b)12に用いる織布、編み布および不織布の目付は、特に限定されるものではないが、織布、編み布および不織布の目付は、好ましくは30〜200g/mの範囲、特に好ましくは30〜180g/mの範囲のものが可撓性を有し、施工作業性に優れるため好ましい。
上述の基材の表面に、上述のアクリル系樹脂を含む水性エマルションを塗布あるいは浸漬し、乾燥させることにより、アクリル系樹脂を基材に含浸させた基材層(b)12を得ることができる。基材層(b)12は、アクリル系樹脂を含むため、端部において基材層(b)12が露出した場合にも、基材層(b)12からの水の浸透を防止することができ、防水性に優れた基材層(b)12を得ることができる。
基材に含浸するための水性エマルションには、アクリル系樹脂以外に、顔料等の添加物成分を含むことができる。
<合成樹脂層(a)>
上述の基材層(b)12の片方の面に、撥水剤およびアクリル系樹脂を用いて合成樹脂層(a)11を形成することにより、本発明の防水シート材10の表面に撥水性を付与し、防水をより確実にすることができる。
撥水剤としては、任意の撥水剤を用いることができるが、アクリル系樹脂と組合わせることにより防水性および撥水性を高めることができる点から、ワックス系撥水剤を用いることが好ましい。また塗布操作の容易性を高められることから、ワックス系撥水剤としては固形パラフィンを好ましく用いることができ、特に固形パラフィンとエタノールアミンとのエマルションを好適に用いることができる。
撥水剤と組合せて用いるアクリル系樹脂としては、上述の基材層(b)12を形成する場合と同様のアクリル酸アルキル・スチレン共重合体およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を所定の割合で含む樹脂を用いることが、基材層(b)12に含浸しているアクリル系樹脂と良好な親和性・一体化性が得られ、防水を確実に行うために好ましい。
合成樹脂層(a)11の形成には、撥水剤(例えば、固形パラフィンとエタノールアミンとのエマルション)およびアクリル系樹脂の水性エマルションを所定の割合となるように混合した合成樹脂層形成用エマルションを用いる。合成樹脂層形成用エマルション中の水を除く組成は、水性エマルションのうち水を除いたものを100重量%として、好ましくはアクリル系樹脂80〜99重量%および撥水剤0.1〜5重量%含むこと、さらに好ましくはアクリル系樹脂85〜95重量%および撥水剤0.5〜3重量%含むこと、特に好ましくはアクリル系樹脂90〜93重量%および撥水剤1〜2重量%含むことが、防水シート材10表面の防水を確実にする点から好ましい。なお、水性エマルションは、アクリル系樹脂および撥水剤以外の成分として、顔料等の無機材料等の添加物成分を含むことができる。
上述の所定のエマルションを、基材層(b)12の片方の面に塗布し、乾燥させることによって、合成樹脂層(a)11を形成することができる。所定のエマルションの塗布および乾燥は、複数回繰り返すことにより、より強固な合成樹脂層(a)11を得ることができる。防水シート20の製造コストを考慮すると、塗布および乾燥を2回繰り返すことが好ましい。
<改質アスファルトコンパウンド層(c)>
改質アスファルトコンパウンド層(c)13の材料である改質アスファルトとしては、好ましくはアスファルト100重量部に対し、ポリマー10〜40重量部、および無機充填材0〜100重量部を含むもの、特に好ましくはアスファルト100重量部に対し、ポリマー20〜45重量部、および無機充填材0〜70重量部を含むものを用いることが好ましい。
改質アスファルトは、アスファルトおよびポリマーを含むもの、アスファルト、ポリマーおよび無機充填材の3成分を含むものなどを120〜200℃で3〜30時間加熱混合して調製した成分の均質性が高い改質アスファルトを用いることが、防水・防湿性、伸縮性などに優れているために好ましい。
改質アスファルトには、以上述べた成分のほかに、プロセスオイル、ワセリン、セレシン、石油樹脂など、一般に合成樹脂やゴムの配合で用いられる撥水剤、顔料、増粘剤、耐光剤、耐候剤などの無機や有機の配合剤を添加してもよい。
改質アスファルトに含まれるアスファルトとしては、天然アスファルトやアスファルタイトなど天然に産するもの、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、カットバックアスファルト等の石油アスファルト、またはこれらのアスファルトの混合物等が好ましい。
改質アスファルトに含まれるポリマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、天然ゴムと合成ゴムとの混合物、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸誘導体との共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、スチレンとブタジエンとの重合体(例えば、SBSなど、SBRなど)等を使用することができる。特にSBS、SBRおよびBRなどのゴム系が好適である。
改質アスファルトに含まれる無機充填材としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、クレー、カーボンブラック、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、シリカ等の粒子状無機充填材、石綿およびガラス繊維などの繊維状無機充填材を用いることができる。
改質アスファルトコンパウンド層(c)13に用いる改質アスファルトは、針入度が、好ましくは50dmm〜300dmmの範囲、さらに好ましくは70dmm〜280dmmの範囲、より好ましくは85dmm〜260dmmの範囲、特に好ましくは100dmm〜240dmmの範囲が柔軟性に優れるために好ましい。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定することができる。
改質アスファルトコンパウンド層(c)13に用いる改質アスファルトの軟化点は、好ましくは50〜120℃の範囲、さらに好ましくは60〜115℃の範囲、より好ましくは65〜110℃の範囲、特に好ましくは70〜105℃の範囲であることが、良好な柔軟性を有するために好ましい。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定することができる。
改質アスファルトコンパウンド層(c)13に用いる改質アスファルトの160℃の粘度は、好ましくは30000〜120000mPa・secの範囲、さらに好ましくは好ましくは32000〜115000mPa・secの範囲、より好ましくは34000〜110000mPa・secの範囲、特に好ましくは好ましくは35000〜100000mPa・secの範囲であることが、基材層(b)12との接着性に優れることから好ましい。
<改質アスファルトコンパウンド層(c)の接着>
本発明では、合成樹脂層(a)11を形成した面とは反対側の基材層(b)12の面に、上記組成の改質アスファルトを接着することにより、改質アスファルトコンパウンド層(c)13を形成する。このような構造とすることにより、本発明の防水シート20による防水を確実にすることができる。
改質アスファルトコンパウンド層(c)13の形成は、例えば、張り合わせロールを用いることによって行うことができる。すなわち、片面に合成樹脂層(a)11を有する基材層(b)12表面と、剥離層(d)14となる剥離紙との間に、上述の改質アスファルトを流し込み、張り合わせロールを用いて一体化することにより、本発明の防水シート材10を得ることができる。また、このようにして得られた防水シート材10を、チルドロールを用いて冷却することによって、改質アスファルトの接着を確実にすることができる。
<剥離層(d)>
剥離層(d)14となる剥離紙(剥離フィルム)の材料としては、改質アスファルトからの剥離が容易であるものであれば、どのようなものであっても用いることができ、剥離紙または剥離フィルムを使用できる。具体的には、剥離フィルムとしては、合成樹脂フィルムが用いられ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルム、ナイロン6などのポリアミドフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることが出来る。合成樹脂フィルムは、一軸延伸、二軸延伸などの延伸フィルム、または無延伸フィルムが好ましい。合成樹脂フィルムは、フィルムを2層以上に積層した積層フィルムを用いることが出来る。剥離層(d)14の合成樹脂フィルムとしては、特に低密度ポリエチレンが柔軟性に優れているため好ましい。
剥離層(d)14の合成樹脂フィルムの厚みは、製造時に支障がなく、施工時あるいは使用時に損傷を受けにくい適度な厚さであればよく、好ましくは3〜100μmの範囲、さらに好ましくは20〜80μmの範囲、特に好ましくは30〜70μmの範囲が好ましい。剥離層(d)14の合成樹脂フィルムは、改質アスファルトコンパウンド層(c)13のアスファルトをほとんど、またはまったく透過させない合成樹脂フィルムであることが、施工者の衣服や靴および面状発熱体などを汚さないために好ましい。
剥離層(d)14の剥離紙(剥離フィルム)の厚みは、製造時に支障がなく、施工時あるいは使用時に損傷を受けにくい適度な厚さであればよく、好ましくは50〜1000μmの範囲、さらに好ましくは70〜500μmの範囲、特に好ましくは100〜300μmの範囲が好ましい。剥離層(d)14は、改質アスファルトコンパウンド層のアスファルトをほとんど、またはまったく透過させない剥離紙が、施工者の衣服や靴および面状発熱体などを汚さないために好ましい。
なお、剥離層(d)14は、防水シート材10の保管や運搬の際に、予期せぬ場所への接着を防止するためのものであり、防水シート材10を防水シート20として用いるときには取り外される。
<防水シート>
上述のようにして得られた本発明の防水シート材10を、防水を行う対象物体の大きさに応じて所定の大きさに切断することによって、本発明の防水シート20を得ることができる。本発明の防水シート20により、面状発熱体等の防水を必要とする物体に優れた防水性を付与することができる。防水シート20の大きさは、防水を必要とする物体の大きさによって適宜選択することができる。本発明の防水シート20は、防水を必要とする物体を包むように覆うことにより防水を行う。このとき防水シート20の端部を改質アスファルトコンパウンド層(c)13によって接着する。そのため、例えば、周囲Xおよびある長さYを有する物体を、本発明の防水シート20を用いて防水する場合には、防水シート20の一辺を、その周囲Xより長辺方向の端部の長さd1の分だけ長くする必要があり、他辺を、その長さYより短辺方向の端部の長さd2の2倍だけ長くする必要がある。例えば、幅250mm、長さ4000mmおよび厚さ1cmの面状発熱体40の防水を行う場合の防水シート20の大きさは、端部を100mmとした場合に、幅600mmおよび長さ4200mmである。
本発明の防水シートは、JIS A 6013に準拠して測定した、防水シートの長手方向の引張強度が、好ましくは35N/cm以上、さらに好ましくは40N/cm以上、特に好ましくは45N/cm以上であり、防水シートの幅方向の引張強度が、好ましくは20N/cm以上、さらに好ましくは22N/cm以上、特に好ましくは24N/cm以上であることが耐久性の高い防水層を形成できることから好ましい。
本発明の防水シートは、JIS A 6013に準拠して測定した、防水シートの長手方向の引裂強度が、好ましくは3N以上、さらに好ましくは4N以上、特に好ましくは4.5N以上であり、防水シートの幅方向の引裂強度が、好ましくは5N以上、さらに好ましくは5.5N以上、特に好ましくは6N以上であることが高耐久な防水層を形成できることから好ましい。
本発明の防水シートは、JIS A 6013に準拠して測定した、防水シートの長手方向の伸び率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上であり、防水シートの幅方向の伸び率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは24%以上、特に好ましくは28%以上であることが下地変形に追従できる防水層を形成できることから好ましい。
防水シート20を、防水処理を行う対象の物体に接着する際は、剥離層(d)14を取り外し、改質アスファルトコンパウンド層(c)13を対象物体に接着することにより行う。このとき防水シート20の端部が重なるようにして接着する。防水を確実にするために、長辺方向の端部の長さd1および短辺方向の端部の長さd2は、共に2mm〜100mm、好ましくは4mm〜50mm、より好ましくは6mm〜30mmである。本発明の防水シート20の場合は、改質アスファルトの接着性能が極めて高いことから、端部を重ねて圧着するだけで、防水を完全に行うことができる。
<面状発熱防水体>
本発明の防水シート20を用いて面状発熱体40を密封・包装し、面状発熱体40に防水性を付与することによって、面状発熱防水体45を得ることができる。面状発熱体40としては、例えば、織布にカーボン粒子を担持した発熱層を有するものなど、どのようなものであっても用いることができる。本発明の防水シート材10を用いた防水シート20が防水性を付与することができるため、面状発熱体40自体が防水性を有する必要はない。ただし、面状発熱防水体45の防水性をより確実にするためには、面状発熱体40が、例えば耐熱性有機高分子シートなどにより発熱層を密封するような防水構造を有することが好ましい。
面状発熱体40の電力供給用の電線は、短辺方向の端部から取り出すことができる。短辺方向の端部は、図5に示すように、互いに向き合う二つの改質アスファルトコンパウンド層(c)13により接着されているため、その間から電線を取り出しても、防水性に影響はない。
面状発熱体40の機械的強度を高めるために、面状発熱体40を保護材で覆った上に、さらに本発明の防水シート材10を用いた防水シート20で覆うことが好ましい。
本発明の面状発熱防水体45を、舗装部の下部に敷設することによって、融雪等を行う構造体を得ることができる。なお、「舗装部」とは、道路、橋梁、屋根および屋上等の構造体の、アスファルトやコンクリート等で舗装された部分のことをいう。
以上述べたように、本発明によって、面状発熱体40等の防水を必要とする物体を包むように覆うだけで、面状発熱体40等の防水を完全にすることのできる防水シート20および、その防水シート20に用いることのできる防水シート材10を得ることができる。本発明の防水シート材10を用いると、基材層(b)12への水の浸透を防止することができ、基材層(b)12と改質アスファルトコンパウンド層(c)13とが強固に接着され、機械的強度と、耐候性とに優れる防水シート20を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。表1に、実施例で用いた試験体の作製条件および試験結果を示す。
<基材層(b)>
下記の基材およびアクリル系樹脂を用いて、実施例1および2ならびに比較例1および2の試験体を作製した。
・基材:ポリエステル不織布、目付量=50g/m
・アクリル系樹脂:アクリル酸アルキル・スチレン共重合体(以下「樹脂1」という)およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体(以下「樹脂2」という)を用いた。
実施例1および2の基材には、上記の樹脂1および樹脂2を、表1に示す重量比率で基材に含浸し、乾燥した。なお、含浸の際には、樹脂1の水性エマルション(共重合体49重量%および水51重量%、三光化学社製)および樹脂2の水性エマルション(共重合体28重量%および水72重量%、三光化学社製)を、共重合体が表1に示す重量比率となるように混合し、その混合した水性エマルションを基材にを含浸させた。樹脂1および樹脂2の水性エマルションの水の重量比は異なるので、これらの水性エマルションを用いての共重合体の重量比率(樹脂1/樹脂2)を98.9/1.1とするために、樹脂1の水性エマルション:樹脂2の水性エマルションを98.1:1.9の割合で混合した。
比較例1および2の基材には、アクリル系樹脂を含浸させなかった。
<合成樹脂層(a)>
上述のようにして得られた実施例1および2ならびに比較例1および2の基材層(b)の片面に、表1に示すように、下記の撥水剤と、アクリル系樹脂とを含むエマルションを塗布し、乾燥することにより、合成樹脂層(a)を形成した。
・撥水剤:固形パラフィン(三光化学社製)。
・アクリル系樹脂:アクリル酸アルキル・スチレン共重合体(樹脂1)およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体(樹脂2)。
・無機材料:砂、顔料。
撥水剤は、塗布の容易性のため、固形パラフィンとエタノールアミンとのエマルション(固形パラフィン40〜50重量%およびエタノールアミン1〜10重量%、三光化学社製)を用いた。また、樹脂1および樹脂2としては、基材層(b)に用いたのと同じ水性エマルションを用いた。これらの成分を、表1に示す重量比率となるように混合し、実施例1および2ならびに比較例2の基材層(b)の片面に所定の回数塗布および乾燥した。
<機械的強度>
合成樹脂層(a)を形成した基材層の機械的強度(引張強度、伸び率および引裂強度)を測定した結果を表1に示す。この結果から、実施例1および2ならびに比較例1および2の試験体は、すべて十分な機械的強度を有するといえる。
<改質アスファルトコンパウンド層(c)および剥離層(d)>
改質アスファルトコンパウンド層(c)を形成するための改質アスファルトコンパウンドとして、合成ゴム改質タイプの針入度150dmmものを用いた。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定した。また、剥離層としては厚さ200μmの剥離紙(住化加工紙社製、SL72MR)を用いた。上述の基材層(b)の合成樹脂層(a)を形成した面とは反対側の表面と、剥離紙との間に、上述の改質アスファルトを流し込み、張り合わせロールを用いて一体化することにより、防水シート材を得た。
<漏水試験>
図7に、防水シート20の漏水試験の断面模式図を示す。二つの防水シート20は、一部(端部の長さ:d1)が10mm重なった状態で、防水試験紙61の上に配置した。二つの防水シート20の端部を含む表面に直径100mmの防水試験管62を配置した。このとき、防水試験管62の下部からの漏水が無いように密封材63にて密封した。次に、防水試験管62へ着色した防水試験水64を200mmの深さとなるように入れ、12時間放置後および6ヶ月間放置後、防水試験紙61の着色により漏水を評価した。
上記の漏水試験の結果、比較例1および2の場合には、防水試験紙61が着色した。すなわち、比較例1および2の場合には、漏水があったことが明らかである。これに対して、実施例1および2の場合には、防水試験紙61が着色せず、防水が完全であることが明らかとなった。
Figure 2009243247
本発明の防水シート材の模式的断面図である。 本発明の防水シート材を用いた面状発熱体防水体の、長辺方向の端部付近の模式的断面図である。 本発明の防水シート材を用いた面状発熱体防水体の一例の上面模式図である。 本発明の防水シート材を用いた面状発熱体防水体の一例の断面模式図である。 本発明の防水シート材を用いた面状発熱体防水体の一例の、短辺方向の端部付近の断面模式図である。 従来の防水シート材を用いた面状発熱体防水体の一例の、短辺方向の端部付近の断面模式図である。 防水シートの漏水試験の際の断面模式図である。
符号の説明
10 防水シート材
11 合成樹脂層(a)
12 基材層(b)
13 改質アスファルトコンパウンド層(c)
14 剥離層(d)
20 防水シート
40 面状発熱体
45 面状発熱防水体
50 防水シート(従来例)
52 基材層(従来例)
53 改質アスファルトコンパウンド層(従来例)
61 漏水試験紙
62 漏水試験管
63 密封材
64 漏水試験水
100 水の浸透
d1 長辺方向の端部の長さ
d2 短辺方向の端部の長さ

Claims (7)

  1. 撥水剤と、アクリル系樹脂とを含む合成樹脂層(a)と、
    アクリル系樹脂を含浸させた基材層(b)と、
    改質アスファルトコンパウンド層(c)と、
    剥離層(d)とが、
    (a)、(b)、(c)、(d)の順に積層されている防水シート材。
  2. アクリル系樹脂が、アクリル系樹脂100質量%中に、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を90〜99.9質量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.1〜10質量%含む、請求項1記載の防水シート材。
  3. 撥水剤が、ワックス系撥水剤であり、合成樹脂層(a)に含まれるアクリル系樹脂100質量部に対して、撥水剤を0.2〜5質量部含む、請求項1または2記載の防水シート材。
  4. 撥水剤が、パラフィンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の防水シート材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の防水シート材を用いる、物体に防水性を付与するための防水シート。
  6. 請求項5記載の防水シートによって、面状発熱体が密封・包装されてなる面状発熱防水体。
  7. 請求項6記載の面状発熱防水体が、舗装部の下部に敷設されている構造体。
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