JP2007119709A - 芳香族ポリマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下式(I)で表される芳香族化合物を、下式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体存在下に重縮合する芳香族ポリマーの製造方法。
〔式中、Arは芳香環を含む二官能性の有機基である。Xはハロゲン原子等である。Yは酸素原子等であり、nは0または1である。Mは−B(OQ1)2等を表す。(ここにQ1は水素原子または炭化水素基)
P(R1)3 (II)
(式中、R1は下式(III)で表される基等であるである。)
−C(R2)3 (III)
(式中、R2は水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、3つのR2は同じでも異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって環を形成してもよく、2つ以上のR2が水素原子であることはない。)
【選択図】なし
Description
その製造方法としては芳香族化合物の重縮合による製造方法が知られている。
Chem.Rev.102,1359(2002)
本発明の目的は、高分子量かつ分子量分布の狭い芳香族ポリマーの製造方法を提供することである。
〔式中、Arは芳香環を含む二官能性の有機基である。Xはハロゲン原子、ニトロ基または−SO3Qで示される基(ここにQは置換されていてもよい炭化水素基を表す)である。Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基またはエチニレン基であり、nは0または1である。Mは、水素原子、−B(OQ1)2、−Si(Q2)3、−Sn(Q3)3またはZ1(Z2)mを表す。(ここにQ1は水素原子または炭化水素基であり、2つのQ1は同じであっても異なってもよく、環を形成してもよく、Q2は炭化水素基であり、3つのQ2は同じであっても異なってもよく、Q3は炭化水素基であり、3つのQ3は同じであっても異なってもよい。Z1は金属原子または金属イオンであり、Z2はカウンターアニオンであり、mは0以上の整数である。)
P(R1)3 (II)
(式中、R1は下式(III)で表される基または下式(IV)で表される基であり、3つのR1は同じでも異なっていてもよいが、3つのR1のうち少なくとも一つは下式(III)で表される基である。)
−C(R2)3 (III)
(式中、R2は水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、3つのR2は同じでも異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって環を形成してもよく、2つ以上のR2が水素原子であることはない。)
(式中、R3〜R7はそれぞれ独立に水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素カルボニル基、置換されてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノカルボニル基または置換されてもよい炭化水素スルホニル基であり、R3またはR4のうち少なくとも1つは水素原子ではなく、R3とR5、R5とR7、R4とR6、およびR6とR7がそれぞれ一緒になって環を形成してもよい。)
上記Arの芳香環を含む有機基の基本骨格の構成原子としては、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子のみからなる基本骨格が好ましく、水素原子、炭素原子、酸素原子のみからなる基本骨格がより好ましく、水素原子、炭素原子のみからなる基本骨格がさらに好ましい。
−SO3Qで示される基(ここにQは置換されていてもよい炭化水素基を表す)が好ましい。
ここでいうハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
−SO3Qで示される基のQにおける置換されていてもよい炭化水素基としては、前記の炭化水素基があげられ、置換基としては例えばフッ素原子があげられる。
−SO3Qで示される基の具体例としては、メタンスルフォネート基、ベンゼンスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基があげられる。
ここに置換イミノ基は、―N(Q’)― (Q’は置換基を表す)で示される基であり、Q’としては、炭化水素基があげられる。炭化水素基の具体例としては前記のものがあげられる。
また置換エテニレン基は、―C(Q'’)=C(Q''')―(Q'’およびQ'''はそれぞれ独立に水素原子または置換基をあらわすが、Q'’およびQ'''の少なくとも1つは置換基である。)で示される基である。ここにQ'’およびQ'''における置換基としては、炭化水素基があげられる。炭化水素基の具体例としては前記のものがあげられる。
上記一般式(I)におけるMとしては、ホウ素原子、ケイ素原子、スズ原子、金属原子を含む原子団であることが好ましく、ホウ素原子、スズ原子、マグネシウム原子、亜鉛原子を含む原子団であることがより好ましく、ホウ素原子を含む原子団であることが特に好ましい。
上記一般式(III)において、R2は水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、3つのR2は同じでも異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって環を形成してもよく、2つの以上のR2が水素原子であることはない。(即ちR2が一緒になって環を形成していない場合、少なくとも2つのR2は置換されてもよい炭化水素基である。)
上記一般式(IV)において、R3〜R7はそれぞれ独立に水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素カルボニル基、置換されてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノカルボニル基、置換されてもよい炭化水素スルホニル基、好ましくは水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、R3またはR4のうち少なくとも1つは水素原子ではなく、R3とR5、R5とR7、R4とR6、およびR6とR7がそれぞれ一緒になって環を形成してもよい。
またR3〜R7の置換されてもよい炭化水素オキシ基における炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノ基における炭化水素二置換アミノ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基における炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素カルボニル基における炭化水素カルボニル基、置換されてもよい炭化水素オキシカルボニル基における炭化水素オキシカルボニル基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノカルボニル基における炭化水素二置換アミノカルボニル基または置換されてもよい炭化水素スルホニル基における炭化水素スルホニル基とは、上記一般式(I)のArの芳香環を含む二官能性有機基の置換基におけるそれらと同じ定義であり、好ましい例および具体例も同じである。これらに置換してよい置換基としては、前記の置換されてもよい炭化水素基における置換してよい置換基と同じ定義であり、好ましい例および具体例も同じである。
上記一般式(IV)のR3〜R7としては、水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素二置換アミノ基が好ましく、水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基がより好ましく、水素原子、置換されてもよい炭化水素基がさらに好ましい。
このホスフィン化合物を含むパラジウム錯体は、単離せずに、重縮合に用いてもよいし、単離して用いてもよい。
(式中、Araは芳香環を含む単官能性の有機基である。Xaはハロゲン原子または−SO3Qaで示される基(ここにQaは置換されていてもよい炭化水素基を表す)である。)
炭化水素カルボニル基は、Q6-C(=O)−(Q6は炭化水素基を表す。)で表される基であり、炭化水素オキシカルボニル基はQ7-OC(=O)−(Q7は炭化水素基を表す。)で表される基であり、炭化水素スルホニル基は、Q8-SO2−(Q8は炭化水素基を表す。)で表される基である。
これらに含まれる炭化水素基の具体例および好ましい例は上記一般式(I)のArの芳香環を含む二官能性有機基の置換基における炭化水素基におけるそれらと同じである。
−SO3Qaで示される基のQaにおける置換されていてもよい炭化水素基としては、前記の炭化水素基があげられ、置換基としては例えばフッ素原子があげられる。
−SO3Qaで示される基の具体例としては、メタンスルフォネート基、ベンゼンスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基があげられる。
式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体に含まれるパラジウム原子に対する、式(V)で表される芳香族化合物の使用量としては、反応性の観点から、1モル倍以上であることが好ましい。また、式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と式(V)で表される芳香族化合物を反応させた後に、得られたパラジウム錯体化合物を単離する場合には、2モル倍以上であることが好ましく、10モル倍以上であることがより好ましく、30モル倍以上であることがさらに好ましい。そのモル比の上限は特に限定されないが、単離操作の利便性の観点から、200モル倍以下であることが好ましく、100モル倍以下であることがより好ましい。
式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と式(V)で表される芳香族化合物を反応させた後に、得られたパラジウム錯体化合物を単離した後に、上記一般式(I)で表される芳香族化合物に接触させて重縮合に用いることが、得られた芳香族ポリマーの、構造を制御する点、および分子量分布を狭くする点でより好ましい。
(式中、R1、Ara、Xaは、前記のそれらと同じ定義である。)
本発明の上記一般式(I)で表される芳香族化合物の重縮合において、上記一般式(V)で表される芳香族化合物を共存させる場合、または上記一般式(II)で表されるホスフィン化合物含むパラジウム錯体と上記一般式(V)で表される芳香族化合物を予め反応させて用いる場合、生成する芳香族ポリマーは下記一般式(VII)で表される構造となりうる。上記一般式(V)で表される芳香族化合物より重合が開始され、上記一般式(I)で表される芳香族化合物が連鎖的に重縮合して生成すると推定している。そのために、分子量分布のより狭い芳香族ポリマーを得ることが可能となる。上記一般式(V)で表される芳香族化合物のAraに官能基を持たせると、開始末端構造に官能基をもつ芳香族ポリマーが得られる。また上記一般式(V)で表される芳香族化合物を複数の開始点をもつ化合物に替えると、複数に分岐した芳香族ポリマーが得られる。
(式中、Ara、Ar、Xは、前記のそれらと同じ定義であり、iは繰り返し構造Arの数平均重合度である。)
上記一般式(VII)で表される芳香族ポリマーは、重合副反応や後処理反応により、Xが水素原子に置換されることがある。また該重合終了後に、下記一般式(VIII)の芳香族化合物を添加することにより、下記一般式(IX)で表される芳香族ポリマーを得ることができる。
(式中、Mb、Yb、nbは上記のM、Y、nと同じ定義であり、Arbは上記のAraと同じ定義である。)
(式中、Ara、Ar、Arb、iは前記のそれらと同じ定義である。)
50 ml ナスフラスコをアルゴン置換し、フェニルボロン酸ピナコールエステル(2) 0.200 g (0.980 mmol)、1,4-ジブロモベンゼン(1)0.236 g (1.00 mmol)、アントラセン 0.049 g (0.275 mmol)、乾燥 THF 15.3 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 9.8 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。200 ml 三つ口フラスコも同様にアルゴン置換し、Pd2(ジベンゾイルアセトン)3 4.5 mg (0.00491 mmol, 0.5 mol%)、乾燥 THF 4.3 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液約 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。そこへ窒素気流下で 2.25 mg/ml に調節した トリ−t−ブチルホスフィン のTHF 溶液 1.1 ml (0.0122 mmol, 1.2 mol%) をシリンジで加えた。更に三つ口フラスコの方へ原料の混合液をカヌーラで加え 60 ℃ で 3 時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーを用いて検量線から転化率と収率を求めた。フェニルボロン酸ピナコールエステルの転化率は96%であり、4−ブロモジフェニル(3)と4,4’−ターフェニル(4)の総収率は73%であり、3/4の生成モル比は4/96であった。
ホスフィン化合物をトリ−t−ブチルホスフィンから1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンに替えた以外は実施例1と同様に反応を行った。フェニルボロン酸ピナコールエステルの転化率は98%であり、3と4の総収率は85%であり、3/4の生成モル比は40/60であった。
実施例1の実験では、もしパラジウムとの反応性が1よりも3が十分に大きい場合には、パラジウム脱離からでも主として4が生成する可能性がある。この可能性を同時に見極められるよう、下記スキーム2に示す実験を行った。
50 ml ナスフラスコをアルゴン置換し、t−ブチルフェニルボロン酸ピナコールエステル(5)0.264 g (1.02 mmol)、1,4-ジブロモベンゼン(1)0.236 g (1.00 mmol)、4-ブロモビフェニル(3)0.235 g (1.01 mmol)、オクチルベンゼン 0.061 g (0.359 mmol)、乾燥 THF 15.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 10.0 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml ナスフラスコも同様にアルゴン置換し、Pd2(ジベンゾイルアセトン)3 4.6 mg (0.00503 mmol, 0.5 mol%)、乾燥 THF 5.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液約 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。そこへ窒素気流下で 2.30 mg/ml に調節した トリ−t−ブチルホスフィン のTHF 溶液 1.05 ml (0.0119 mmol, 1.2 mol%) をシリンジで加えた。更に100 ml ナスフラスコの方へ原料の混合液をカヌーラで加え 60 ℃ で 3 時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーを用いて検量線から転化率と収率を求めた。
5の転化率は100%であり、5に対して4−ブロモ−4’−t−ブチル−p−ターフェニル(6)、4,4’ ’−ジ−t−ブチル−p−ターフェニル(7)、4−t−ブチル−p−ターフェニル(8)の総収率は99%であった。8/(6+7)の生成モル比は51/49であり、1と4の反応性はほぼ同じことからパラジウムは分子内移動しているといえる。本条件下では6/7の生成モル比がパラジウムの分子内移動の割合を表し、6/7の生成モル比は2/98であった。
50 ml ナスフラスコをアルゴン置換し、t−ブチルフェニルボロン酸ピナコールエステル (5)0.261 g (1.00 mmol)、1,4-ジブロモベンゼン(1)0.238 g (1.01 mmol)、4-ブロモビフェニル(3)0.234 g (1.00 mmol)、オクチルベンゼン 0.266 g (1.56 mmol)、乾燥 THF 15.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 10.0 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml ナスフラスコも同様にアルゴン置換し、Pd2(ジベンゾイルアセトン)3 4.6 mg (0.00503 mmol, 0.5 mol%)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル 4.9 mg (0.0118 mmol, 1.2 mol%)、乾燥 THF 5.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液約 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml ナスフラスコの方へ原料の混合液をカヌーラで加え 60 ℃ で 3 時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーを用いて検量線から転化率と収率を求めた。
5の転化率は73%であり、5に対して6、7、8の総収率は99%であり、8/(6+7)の生成モル比は47/53であった。本条件下でパラジウムの分子内移動の割合を表す6/7の生成モル比は2/98であった。
50 ml ナスフラスコをアルゴン置換し、t−ブチルフェニルボロン酸ピナコールエステル(5) 0.260 g (1.00 mmol)、1,4-ジブロモベンゼン(1)0.239 g (1.01 mmol)、4-ブロモビフェニル(3)0.234 g (1.00 mmol)、オクチルベンゼン 0.127 g (0.743 mmol)、乾燥 THF 15.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 10.0 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml ナスフラスコも同様にアルゴン置換し、Pd2(ジベンゾイルアセトン)3 4.6 mg (0.00503 mmol, 0.5 mol%)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジ−i−プロポキシ−1,1’−ビフェニル 5.6 mg (0.0120 mmol, 1.2 mol%)、乾燥 THF 5.0 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液約 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml ナスフラスコの方へ原料の混合液をカヌーラで加え 60 ℃ で 3 時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーを用いて検量線から転化率と収率を求めた。
5の転化率は61%であり、5に対して6、7、8の総収率は85%であり、8/(6+7)の生成モル比は46/54であった。本条件下でパラジウムの分子内移動の割合を表す6/7の生成モル比は1/99であった。
(i) P(tBu)3Pd(Ph)Brの合成:公知の方法に従い、不活性ガス雰囲気下、ビス(トリ-t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)とブロモベンゼンを反応させることにより、P(tBu3)Pd(Ph)Brを合成した(参考文献:J. Am. Chem. Soc. 126, 1184 (2004))。
(ii) 4-ブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンボロン酸の合成:公知の合成法に従い、1,4-ジブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンから、4-ブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンボロン酸を合成した(参考文献:Macromol. Chem. Phys. 195, 1933 (1994))。4-ブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンボロン酸は重合に用いる前に、クロロホルム−ヘキサンより再結晶して用いた。
(iii) 4-ブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンボロン酸の重合:不活性ガス雰囲気下、50mL二口ナスフラスコに、4-ブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンボロン酸 172mg(0.5mmol)、テトラヒドロフラン 15mL、オクチルベンゼン(内部標準物質、100μL)を仕込み、溶解した後に、2M Na2CO3aq. 10mLを仕込んだ。15〜20℃にて攪拌下、ダイヤフラムポンプを用いて、脱気、不活性ガス置換した。別途、アルゴングローブボックスにて、PtBu3Pd(Ph)Br 11.6mg(0.025mmol、5mol%)をテトラヒドロフラン5mLに溶解した黄色溶液を不活性ガス雰囲気下で、上記モノマー溶液中へ一括仕込みし、室温にて30min保温した。室温にて無色透明の水層を分液した後、油層中へ2規定塩酸 5mLを加え攪拌することにより、芳香族ポリマーを析出させた。析出した芳香族ポリマーをろ取、メタノール、水で洗浄、減圧乾燥することで白色の粉末として芳香族ポリマーを得た。収量90mg、収率82%。
該芳香族ポリマーの分子量につき、GPC(東ソー製:HLC-8220GPCシステム(RI検出器))により、TSKgel SuperHM-H(18cm)(東ソー製)3本を直列につなげたカラムを用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として、0.5mL/minの流速で流し、40℃で測定した。ポリスチレン換算の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnはそれぞれ、Mn=1.1×10^4、Mw=1.6×10^4、Mw/Mn=1.5であった。
1H-NMR(CHCl3-d)分析から、末端構造9の2,6−位の水素原子(δ7.66、2H)、繰り返し構造10のメチル基の水素原子(δ0.90、6H)、末端構造11のメチル基の水素原子(δ0.98、6H)が観測され、それらの面積比から計算した各構造のモル比は9:10:11=4.4:90.9:4.7となった。末端構造9と末端構造11がほぼ同量であることから、末端構造9から重合が開始され、繰り返し構造10が連鎖的に成長し、末端構造12の臭素原子が水素原子に置換されて末端構造11となったと推定される。
1,4-ジブロモ-2,5-ジブトキシベンゼンの重合:不活性ガス雰囲気下、200mL三口フラスコに1,4-ジブロモ-2,5-ジブトキシベンゼン 1.04g(2.73mmol)、2,2'-ビピリジル 1.03g(6.57mmol)、市販脱水テトラヒドロフラン 95mLを仕込み、攪拌溶解した後に、アルゴンガスをバブリングし脱気した。60℃に昇温した中へ、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0) 1.65g(6.01mmol)を仕込み、60℃で3時間保温した後に、室温まで冷却し、メタノール 81g/蒸留水 105g/25%アンモニア水 11gの混合溶液を攪拌した中へ滴下し、芳香族ポリマーを沈殿化させた。芳香族ポリマーをろ取し、メタノール/蒸留水の混合溶液で洗浄し、減圧乾燥することにより、粗芳香族ポリマーを得た。得られた粗芳香族ポリマーをトルエンに溶解し、不溶分をラジオライトでプレコートしたろ過器でろ別した後に、アルミナカラムに通液し、5%塩酸水溶液、4%アンモニア水で順次洗浄した後、濃縮し、メタノール中へ滴下して芳香族ポリマーを沈殿化した。芳香族ポリマーをろ取し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、芳香族ポリマーを得た。収量376mg、収率62%。
該芳香族ポリマーの分子量につき、実施例5と同様にして測定し、ポリスチレン換算の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnはそれぞれ、Mn=2.6×10^4、Mw=6.9×10^4、Mw/Mn=2.6であった。
50 ml ナスフラスコをアルゴン置換し、フェニルボロン酸ピナコールエステル(2) 0.205 g (1.004 mmol)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(13)0.549 g (1.00 mmol)、オクチルベンゼン 0.128 g (0.675 mmol)、乾燥 THF 15ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。100 ml 三つ口フラスコも同様にアルゴン置換し、Pd2(ジベンゾイルアセトン)3 4.6 mg (0.00503 mmol, 0.5 mol%)、乾燥 THF 5 ml と 2 M 炭酸ナトリウム水溶液 10 ml を加え、攪拌しながらダイヤフラムポンプを用いて脱気した後に窒素置換した。そこへ窒素気流下で 2.78 mg/ml に調節した トリ−t−ブチルホスフィン のTHF 溶液 0.87 ml (0.0120 mmol, 1.2 mol%) をシリンジで加えた。更に三つ口フラスコの方へ原料の混合液をカヌーラで加え 60 ℃ で 3 時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーを用いて検量線から転化率と収率を求めた。フェニルボロン酸ピナコールエステルの転化率は83%であり、2-ブロモ-7-フェニル-9,9-ジオクチルフルオレン(14)と2,7-ジフェニル-9,9-ジオクチルフルオレン(15)の総収率は93%であり、14/15の生成モル比は1/99であった。
2-ブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン-7-ボロン酸ピナコールエステルの重合:不活性ガス雰囲気下、50mL二口ナスフラスコに、2-ブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン-7-ボロン酸ピナコールエステル149mg(0.25mmol)、テトラヒドロフラン 8mLを仕込み、溶解した後に、2M Na2CO3aq. 5mLを仕込んだ。15〜20℃にて攪拌下、ダイヤフラムポンプを用いて、脱気、不活性ガス置換した。別途、P(tBu3)Pd(Ph)Br 5.8mg(0.025mmol、5mol%)をテトラヒドロフラン2mLに溶解した黄色溶液を不活性ガス雰囲気下で、上記モノマー溶液中へ一括仕込みし、室温にて30min保温した。室温にて水層を分液した後、油層中へ2規定塩酸 5mL、メタノール20mlを加え攪拌した。析出した芳香族ポリマーをろ取、メタノール、水で洗浄、減圧乾燥することで黄色の粉末として芳香族ポリマーを得た。収量83mg、収率85%。
該芳香族ポリマーの分子量につき、実施例5と同様にして測定し、ポリスチレン換算の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnはそれぞれ、Mn=1.8×10^4、Mw=2.4×10^4、Mw/Mn=1.3であった。
なかでも、繰返し単位として、縮環性または渡環性芳香環の水素原子の結合した芳香環上の炭素原子2つから、それぞれ水素原子一つずつ取り除くことにより表される二官能性の有機基をモノマーとして用いた場合には、重縮合時の分子内移動の割合が高まり、更に分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が狭い(典型的には1.0以上、1.3以下)芳香族ポリマーを得ることができる。縮環性または渡環性芳香環としては、渡環性芳香環が好ましく、フルオレン環がより好ましい。
Claims (9)
- 下式(I)で表される芳香族化合物を、下式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体存在下に重縮合することを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法。
(式中、Arは芳香環を含む二官能性の有機基である。Xはハロゲン原子、ニトロ基または−SO3Qで示される基(ここにQは置換されていてもよい炭化水素基を表す)である。Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基またはエチニレン基であり、nは0または1である。Mは、水素原子、−B(OQ1)2、−Si(Q2)3、−Sn(Q3)3またはZ1(Z2)mを表す。(ここにQ1は水素原子または炭化水素基であり、2つのQ1は同じであっても異なってもよく、環を形成してもよく、Q2は炭化水素基であり、3つのQ2は同じであっても異なってもよく、Q3は炭化水素基であり、3つのQ3は同じであっても異なってもよい。Z1は金属原子または金属イオンであり、Z2はカウンターアニオンであり、mは0以上の整数である。)
P(R1)3 (II)
(式中、R1は下式(III)で表される基または下式(IV)で表される基であり、3つのR1は同じでも異なっていてもよいが、3つのR1のうち少なくとも一つは下式(III)で表される基である。)
−C(R2)3 (III)
(式中、R2は水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、3つのR2は同じでも異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって環を形成してもよく、2つ以上のR2が水素原子であることはない。)
(式中、R3〜R7はそれぞれ独立に水素原子、置換されてもよい炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基または炭化水素スルホニル基であり、R3またはR4のうち少なくとも1つは水素原子ではなく、R3とR5、R5とR7、R4とR6、およびR6とR7がそれぞれ一緒になって環を形成してもよい。)
- 式(IV)におけるR3〜R7がそれぞれ独立に水素原子または置換されてもよい炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- 前記式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物を予め反応させた後に、前記式(I)で表される芳香族化合物に接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造された芳香族ポリマー。
- 数平均分子量が10,000以上であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0以上1.5以下であることを特徴とする、請求項5に記載の芳香族ポリマー。
- 繰返し単位として、縮環性芳香環または渡環性芳香環の水素原子の結合した芳香環上の炭素原子2つから、それぞれ水素原子一つずつ取り除くことにより表される二官能性の有機基を含み、数平均分子量が10,000以上であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0以上1.3以下であることを特徴とする芳香族ポリマー。
- 二官能性の有機基が、渡環性芳香環の水素原子の結合した芳香環上の炭素原子2つから、それぞれ水素原子一つずつ取り除くことにより表される二官能性の有機基であることを特徴とする請求項7記載の芳香族ポリマー。
- 渡環性芳香環がフルオレン環であることを特徴とする請求項8記載の芳香族ポリマー。
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