JP2007115513A - 色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、透明基材11の一方の面11aの透明導電膜12上に金属酸化物ペースト31を塗布し、金属酸化物ペースト31の上方にステンレス板32を、透明基材11の下方にステンレス板33を、それぞれ配置し、ステンレス板32、33により金属酸化物ペースト31を加圧するとともに焼成し、透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体層13を形成することを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
一方、色素増感太陽電池は、スイスのグレツェルが開発したもので、増感色素を表面に担持した酸化チタンを用いることで、光電変換効率が高く、製造コストが安い等の利点を有することから、次世代の太陽電池として注目を浴びている。
(1)高い光電変換効率を得るためには、基板の表面を粗くする必要があるが、液晶表示装置(LCD)で用いられている透明導電性ガラス基板では、表面の粗さが不十分であり、透明導電性ガラス基板と酸化チタン層との密着性に問題があった。
(2)基板に透明樹脂フィルムを用いた場合、ペーストを焼成する際に高い温度で加熱することができず、安定した焼結状態の多孔質の酸化チタン層を得ることが難しいという問題点があった。多孔質の酸化チタン層の焼結性が低下すると、所望の光電変換効率が得られなくなり、色素増感太陽電池としての性能が低下することとなる。
すなわち、本発明の請求項1に係る色素増感太陽電池の製造方法は、増感色素を表面に担持してなる多孔質酸化物半導体層を備えた作用極と、この作用極の前記多孔質酸化物半導体層側に対向して配置された対極と、前記作用極と前記対極との間に封入された電解質とを備えてなる色素増感太陽電池の製造方法であって、透明基材上に前記作用極の電極を形成する工程と、前記電極上に多孔質酸化物半導体を含むペーストを塗布する工程と、このペーストを加圧下にて焼成し、前記電極上に前記多孔質酸化物半導体層を形成する工程と、を備えてなることを特徴とする。
以上により、増感色素を表面に担持した多孔質酸化物半導体層の密着性及び焼結性を向上させることができ、したがって、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
図において、1は色素増感型太陽電池であり、作用極2と、この作用極2に対向して配置された対極3と、作用極2と対極3との間の外周部に形成された封止部材4と、これら作用極2、対極3及び封止部材4、4により形成された領域内に封入された電解質5とにより概略構成されている。
透明基材11としては、可視光に対して透過性を有する樹脂(透明樹脂)、例えば、透明樹脂基板、透明樹脂フィルム、透明樹脂シート等、通常、太陽電池の透明基材として用いられるものであればいかなるものでも用いることができる。
また、透明基材11としては、用途上、できる限り光透過性に優れた基材が好ましく、光透過率が90%以上の透明基材がより好ましい。
これらの導電性金属酸化物の中でも、成膜が容易であり、かつ安価であるという観点から、ITO、FTOが好ましい。また、透明導電膜12は、ITOのみからなる単層のITO膜、あるいは、このITO膜上にFTOからなる膜を積層してなる積層膜が好ましい。
これにより、可視光領域における光の吸収量が少なく、導電率が高い透明導電膜12とすることができる。
基材21としては、通常、太陽電池の基材として用いられるものであればいかなるものでも用いることができ、特に、光透過性を有する必要がないことから、金属板、合成樹脂板、合成樹脂フィルム、合成樹脂シート等が用いられる。なお、透明基材11と同様のものであってもよい。
この電解質溶液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド誘導体、アミノ酸誘導体等が挙げられる。
この常温溶融性塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体等が挙げられる。
このイオン性液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンと、ヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン等からなる塩類を挙げることができる。
まず、図2(a)に示すように、透明樹脂からなる透明基材11の一方の面11a全域を覆うように透明導電膜12を形成する。この透明導電膜12を形成する方法としては、ITO、FTO等のターゲットを用いて成膜するスパッタリング法、ITO、FTO等の原料を含む塗布液を吹き付けて加熱しITO化、あるいはFTO化するスプレー熱分解法、ITO、FTO等の原料ガスを化学反応させて得られたITOあるいはFTOを堆積するCVD法等が好適に用いられる。
この金属酸化物ペースト31は、表面に増感色素が担持された金属酸化物微粒子と、有機溶媒と、バインダー成分等を混練して得られるペーストであり、金属酸化物微粒子としては、例えば、TiO2、SnO2、WO3、ZnO、Nb2O5等が好適に用いられる。また、上記の増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造等を配位子として含むルテニウム錯体、ポリフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体、エオシン、ローダミン、モロシアニン等の有機色素等が好適に用いられる。
この焼成条件は、例えば、大気雰囲気中、温度:150〜200℃、圧力:0.5〜3kg/cm2、最高保持温度における保持時間:0.5〜120分である。
次いで、図2(c)に示すように、この多孔質金属酸化物層35に色素を担持させ、多孔質酸化物半導体層13とする。
例えば、アセトニトリルとt−ブタノールを容積比で1:1とした溶媒に対して極微量のN719色素粉末を加えて色素担持用の色素溶液36とし、この色素溶液36をシャーレ状の容器内に貯留する。次いで、この色素溶液36に別途電気炉にて120〜150℃程度に加熱処理した多孔質金属酸化物層35を浸漬し、暗所にて一昼夜(およそ20時間)放置する。その後、多孔質金属酸化物層35を色素溶液36から取り出し、アセトニトリルとt−ブタノールからなる混合溶液を用いて洗浄し、乾燥する。
したがって、透明基材11の一方の面11aに透明導電膜12、多孔質酸化物半導体層13が順次形成された作用極2を容易に作製することができる。
その後、これら作用極2、対極3及び封止部材4、4により形成された領域内に、対極3に形成された注入口から電解質溶液を注入する。これにより、作用極2、対極3及び封止部材4、4により形成された領域内に電解質5が形成される。
以上により、色素増感型太陽電池1を作製することができる。
したがって、増感色素を表面に担持した多孔質酸化物半導体層13の特性を向上させることができ、その結果、色素増感太陽電池1の光電変換効率を向上させることができる。
また、下方のステンレス板33の温度を上方のステンレス板32より低い温度とし、さらに、下方のステンレス板33の温度を透明基材11を構成する透明樹脂の軟化温度以下としたので、透明基材11に熱的ダメージを与える虞がなくなり、したがって、金属酸化物ペースト31に対して長時間に亘って加圧・加熱することができ、金属酸化物ペースト31の焼結性をさらに向上させることができる。
(実施例1)
透明基材11としてポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用い、この透明基材11にITOからなる透明導電膜12を形成し、ITO−PEN透明導電性フィルムを作製した。次いで、金属酸化物ペースト31として酸化チタン微粒子ペーストを用い、このITO−PEN透明導電性フィルム上に酸化チタン微粒子ペーストを塗布した。
このとき、ITO−PEN透明導電性フィルムと酸化チタン微粒子ペーストとの間の温度を測定したところ、約180℃に保たれていた。
これにより、酸化チタン微粒子ペーストは、膜厚約15μmの酸化チタン微粒子多孔膜になった。
一方、ガラス基板上にFTO(フッ素添加酸化スズ)を成膜し、さらに、このFTO膜上にスパッタリング法により白金を成膜し、対極とした。
その後、これら作用極及び対極を封止部材により封止し、さらに、メトキシアセトニトリルを溶媒とした揮発性の電解質溶液を注入し、実施例1の色素増感型太陽電池を作製した。
実施例1と同様にしてITO−PEN透明導電性フィルムを作製し、このITO−PEN透明導電性フィルム上に酸化チタン微粒子ペーストを塗布した。
次いで、ITO−PEN透明導電性フィルムの下にステンレス板を配置し、酸化チタン微粒子ペーストに約180℃に加熱したステンレス板を押圧し、圧力2kg/cm2にて1時間焼結を行った。
このとき、ITO−PEN透明導電性フィルムと酸化チタン微粒子ペーストとの間の温度を測定したところ、約180℃に保たれていた。
これにより、酸化チタン微粒子ペーストは、膜厚約15μmの酸化チタン微粒子多孔膜になった。
また、実施例1と同様にして、対極及び電解質溶液を作製し、これらを用いて実施例2の色素増感型太陽電池を作製した。
実施例1と同様にしてITO−PEN透明導電性フィルムを作製し、このITO−PEN透明導電性フィルム上に酸化チタン微粒子ペーストを塗布した。
次いで、このITO−PEN透明導電性フィルムを炉内温度が約180℃のオーブンにて1時間加熱し、酸化チタン微粒子ペーストを焼成した。これにより、酸化チタン微粒子多孔膜が得られた。
また、実施例1と同様にして、対極及び電解質溶液を作製し、これらを用いて比較例の色素増感型太陽電池を作製した。
表1に実施例1、2及び比較例の色素増感型太陽電池の発電特性を示す。表1中の数値は、3個の試料の平均値である。
さらに、酸化チタン微粒子ペーストを加熱・加圧する際に、ITO−PEN透明導電性フィルムを冷却すれば、ITO−PEN透明導電性フィルムには熱による変形や劣化が生じないことが確認された。しかも、このITO−PEN透明導電性フィルムと酸化チタン微粒子多孔膜との密着性が向上しており、酸化チタン微粒子の焼結性がさらに向上していることが分かった。したがって、光電変換効率が格段に向上していることが分かった。
Claims (4)
- 増感色素を表面に担持してなる多孔質酸化物半導体層を備えた作用極と、この作用極の前記多孔質酸化物半導体層側に対向して配置された対極と、前記作用極と前記対極との間に封入された電解質とを備えてなる色素増感太陽電池の製造方法であって、
透明基材上に前記作用極の電極を形成する工程と、
前記電極上に多孔質酸化物半導体を含むペーストを塗布する工程と、
このペーストを加圧下にて焼成し、前記電極上に前記多孔質酸化物半導体層を形成する工程と、
を備えてなることを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。 - 前記加圧は、前記ペーストが塗布された透明基材の厚み方向の両側に配置された一対の板状体を近接する方向に可動することにより行うことを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池の製造方法。
- 前記焼成は、前記ペースト側の板状体の温度を前記透明基材側の板状体の温度より高くした状態で行うことを特徴とする請求項2記載の色素増感太陽電池の製造方法。
- 前記透明基材を透明樹脂基板、透明樹脂フィルム、透明樹脂シートのいずれか1種とし、前記透明基材側の板状体の温度を前記透明樹脂の軟化温度以下としたことを特徴とする請求項3記載の色素増感太陽電池の製造方法。
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