[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置及び定着装置の要部を示すものである。
この画像形成装置1は、例えば電子写真方式を利用したカラープリンタを構成するものである。このプリンタ1は、その本体2の内部に、トナー像Tを形成した後に用紙Pに転写するカラー作像ユニット10と、この作像ユニット10で転写された未定着トナー像Tを担持する用紙Pを通過させてそのトナー像Tの定着を行う定着装置20Aと、作像ユニット10に用紙Pを供給したりあるいは所定の部位に搬送する用紙搬送装置30などが適宜配分されて設置されることで構成されている。図1において符号3は、プリンタ全体の動作を総括的に制御するシステムコントローラである。
カラー作像ユニット10は、像担持体としての感光ドラム11と、この感光ドラム11の周囲に配置される帯電手段としての帯電ロール12、像露光手段としてのレーザ走査装置(ROS)13、現像手段としての現像装置14と、一次転写手段としての一次転写ロール15と、中間転写体としての中間転写ベルト16と、二次転写手段としての二次転写ロール17とを主に備えている。ちなみに、この作像ユニット10は、白黒画像を形成するタイプのものを例示しているが、好ましくはカラー画像を形成することができるタイプの作像ユニットを採用する。
感光ドラム11は、回転自在に支持される導電性ドラムの周面に有機感光材料等からなる感光層を形成したものであり、画像形成動作(プリント)時になると、図示しない駆動装置によって矢印方向に所定の速度で回転駆動する。そして、感光ドラム11の周面は作像機器12の帯電ロールによって一様に帯電された後、その帯電後の表面に対してレーザ走査装置13から画像情報に基づいて変調されたレーザビーム光が走査露光されることにより所定の色成分の静電潜像が順次形成される。レーザ走査装置13は、外部から適宜入力される画像情報を本体2内に設置される図示しない画像処理装置において所定の処理をした後に得られる色成分ごとの画像信号に基づいて動作する。
続いて、感光ドラム11上の静電潜像は、現像装置14から供給される所定の色の現像剤(トナー)によって現像されて単色の(未定着)トナー像とされる。この現像装置14としては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の現像剤(トナー)が専用に収容される4つの現像器を円筒状の回転フレームの周面に等間隔に搭載してなり、現像時にはその回転フレームを所定の角度ずつ回転させることにより現像対象となる色のトナーを収容する現像器を感光ドラム11と対向する現像領域まで順次移動させる、所謂ロータリ方式の現像装置が使用されている。これにより、このカラー作像ユニット10において上記4色のトナーからなる像を重ね合わせて構成されるフルカラー画像を形成する場合には、現像装置14の4つの現像器がそれぞれ現像領域に移動させられて各色のトナーによる現像が順次行われ、この結果、感光ドラム11には上記4色のトナーからなるトナー像が順次形成されることになる。
このようにして感光ドラム11上に形成されるトナー像は、感光ドラム11に接した状態で回転する中間転写ベルト16上に一次転写ロール15によって静電的に一次転写される。中間転写ベルト16は、トナー像を静電的に担持することができる無端状のベルトからなるものであり、複数の支持ロールに所定の張力でかけ回されて矢印方向に回転駆動するようになっている。フルカラー画像を形成する場合は、感光ドラム上の前記4色のトナー像は中間転写ベルト16上で重ね合わされる。この一次転写後の感光ドラム11の周面は、その周面に付着する残留トナー、紙粉等の不要物が図示しないクリーニング装置によって除去されることで清掃される。
その後、中間転写ベルト16に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト16と二次転写ロール17の間の二次転写位置にむけて所定のタイミングで供給される用紙P上に二次転写ロール17によって静電的に(一括して)二次転写される。二次転写ロール17は、中間転写ベルト16に対して接離自在に支持されており、二次転写を行なう時期だけ中間転写ベルト16に当接した状態となり、それ以外の時期は中間転写ベルト16から離間した状態になるように設定されている。二次転写後の中間転写ベルト20の外周面は、その周面に付着する残留トナー、紙粉等の不要物が図示しないクリーニング装置により除去されて清掃される。
用紙Pは、給紙カセット31内に収容されており、ピックアップロール、送出ロール及びリタードロールからなる送出装置32により給紙カセット31から1枚ずつ送り出された後、複数の搬送ロール対33やガイド部材を経てレジストロール対34まで搬送される。その後、用紙Pは、前記トナー像の転写タイミングを見計らってレジストロール対34により二次転写位置(中間転写ベルト16と二次転写ロール17の間)にむけて供給される。二次転写位置で未定着トナー像Tが転写された用紙Pは、その後、用紙搬送部材19に誘導されながら定着装置20Aにむけて搬送されて定着処理される。
定着装置20Aを通過することによってトナー像Tの定着が終了した用紙Pは、定着装置20Aから排出された後、排出ロール対35によりそのまま排出トレイ36上に排出される。これにより基本的なプリント動作が終了する。なお、このプリントにおいて上記4色のトナー像により画像形成を行った場合は、最終的にフルカラー画像が得られることになる。
次に、このプリンタ1における定着装置20Aについて説明する。
定着装置20Aは、図2等に示すように、その本体21の内部に、回転駆動するように設置される加熱ロール22と、この加熱ロール22に圧接させて未定着トナー像Tを担持する用紙Pを通過させる定着ニップ部Nを形成するように設置される加圧ロール23と、前記定着ニップ部Nを通過した後の用紙Pを加熱ロール22から剥離する剥離シート25とが主に設置されている。図2等において符号29Aは定着ニップ部Nの入口側の用紙導入ガイド板、29Bは定着ニップ部Nの出口側の用紙排出ガイド板である。
加熱ロール22は、アルミニウム、ステンレス等の金属によって比較的薄肉の円筒形状に形成された芯金と、この芯金の外周面に被覆形成されるテトラフロオロエチレン、PFA等の離型性材料からなる離型層で構成されており、そのロール内部(芯金の中空部)のほぼ中心位置に加熱源としての1本のハロゲンヒータ24が設置されている。また、加熱ロール22は、図示しない回転駆動装置の回転動力を受けて矢印方向Aに所定の速度で回転駆動する。
この加熱ロール22は、そのロール表面温度を測定する温度センサ26からの検知情報が定着部コントローラ27に送信され、その定着部コントローラ27が所定の制御プログラムに基づいてハロゲンヒータ24に通電する電源装置28の通電動作を制御(ON,OFF制御)することにより、所定の温度(定着温度、待機時温度など)に保たれるようにロール内周面22bから加熱される。定着部コントローラ27は、前記システムコントローラ3と接続されており(図1)、必要な制御及び情報交換が行われている。
加圧ロール23は、ステンレス、アルミニウム等の金属によって中実の円柱形状に形成された芯金と、この芯金の外周面に形成されるシリコーンゴム等からなる耐熱性弾性層と、この弾性層の表面に被覆されるテトラフロオロエチレン、PFA等の離型性材料からなる離型層で構成されている。この加圧ロール23は、図示しない加圧機構により回転駆動する加熱ロール22に所定の圧力で圧接されるように支持されており、これにより従動回転する。
剥離シート25は、図2や図3に示すように、ステンレスからなる長方形状のシート基材をその一方の長辺部側から図示しないホルダーで保持したものである。また、剥離シート25は、その全体がニップ部Nの出口よりも加熱ロール22の回転方向下流側に少し後退した位置において、その位置でシート基材の長手(長辺)方向が加熱ロール22の軸方向にそって対向する状態となるとともに、そのホルダーで保持されていない自由端である先端部25aが加熱ロール22の外周面22aから所定の間隙d(200〜500μm程度)をあけて近接した状態となるように設置されている(図4)。
そして、この定着装置20Aにおいては、図2〜図4に示すように、剥離シート25の先端部25aを加熱ロール22の外周面22aから離間した離間位置Rに変位させた状態に保つとともに、未定着トナー像Tを担持する用紙Pが少なくとも加熱ロール22と加圧ロール23の間のニップ部Nから排出され始めてから通過し終わる間はその先端部25aを加熱ロール22の外周面に近接した剥離位置Sに変位させた状態に保つ剥離シート変位装置4Aを設けている。
この例では、剥離シート変位装置4Aとして、剥離シート25の先端部25aを前記した離間位置R及び剥離位置Sの間で受動的に変位させるように動作する変位駆動部40Aと、用紙Pがニップ部Nに進入したときの加圧ロール23の位置変化を検出する位置変化検出部50Aを備え、この位置変化検出部50Aの検出結果に基づいて変位駆動部40Aが当該剥離シートの先端部25aを剥離位置Sに変位させる動作を実行するように構成したものを適用している。
変位駆動部40Aは、剥離シート25を一端部に取り付けてその剥離シートの先端部25aが離間位置R及び剥離位置Sの間で変位するように揺動する揺動フレーム41と、この揺動フレーム41の剥離シート25を取り付けた端部とは反対側の端部に支持軸42aを介して回動自在に連結してその揺動フレーム41を所定の方向(B,C)に揺動させるように作動する駆動アーム42とで構成されている。
このうち揺動フレーム41は、たとえば装置本体21の一部として構成される支持フレーム43に支持軸42aを介して矢印方向B,Cに対し揺動自在に支持されている。また、この変位駆動部40Aにおける駆動アーム42は、後述する位置変化検出部50Aの一部を構成するリンクアームとして併用されるものであり、後記するように位置変化検出部50Aの動作に連動して作動する(具体的には矢印方向D,Eに変位する)ようになっている。
一方、位置変化検出部50Aは、その一端部がたとえば装置本体21の一部として構成される支持フレーム51に支持軸51aを介して揺動自在に取り付けられ、その一端部とは異なる部位で加圧ロール23の軸23aを支持するとともにその軸23aの位置変化(定着ニップ部Nにおける用紙Pの有無によって生じる位置変化)に伴って揺動する揺動検知フレーム52で構成されている。
この揺動検知フレーム52は、加圧ロールの軸23aを加熱ロール22のある側とは反対側から支持する状態に配置され、ニップ部Nにおける用紙Pの有無によって加圧ロール23(の軸23a)が加熱ロール22と接近及び離間する方向に変位する状態に連動して矢印G,H方向に揺動するように取り付けられている。また、揺動検知フレーム52は、その他端部が前記した変位駆動部40Aにおける駆動アーム42と支持軸52aを介して回動自在に連結されている。
また、この揺動検知フレーム52は、専用のものを用意する他に、加圧ロール23を加熱ロール22に所定の圧力で圧接させている図示しない加圧機構の揺動フレームで構成してもよい。この揺動検知フレーム52を加圧ロール23側に設置するのは、加圧ロール23がそもそも上記した加圧機構による加圧力を受けて加熱ロール22に圧接された状態になるように変位可能に支持されているためである。このため、加熱ロール22が変位可能に支持されている場合には、揺動検知フレーム52は、その加熱ロール22の軸等を支持するように設け、その軸の位置変化を検出するように構成することも可能である。
従って、この剥離シート変位装置4Aは、変位駆動部40A(の駆動アーム42)と位置変化検出部50A(揺動検知フレーム52)とがリンク機構により機械的に接続された構成になっている。
また、この剥離シート変位装置4Aは、定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入する前及びそのニップ部Nを通過して完全に排出された後の時期(非通紙時)には、剥離シート25の先端部25aが加熱ロール22の外周面から所定の距離t(1〜2mm程度)だけ離間した離間位置Sに変位した状態に保たれ(図2及び図4)、その定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入して通過している時期(通紙時)には、後述するようにその用紙Pが定着ニップ部Nに介在することで加圧ロール23の位置が変化することを利用して、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rに変位した状態に保たれるように設定されている(図3)。
さらに、この剥離シート変位装置4Aでは、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rに変位する際に、剥離シート25aが図示しないストッパにより剥離位置で確実に停止されるようにしている。また、この剥離シート変位装置4Aでは、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rと離間位置Sの間(離間距離:t−d)で変位する変位量を基準にして、変位駆動部40Aや位置変化検出部50Aの揺動検知フレーム52の寸法形状や変位量が適宜設定される。
次に、このような剥離シート変位装置4Aを設けた定着装置20Aの動作について説明する。
はじめに、通常の定着動作について説明する。その定着時になると、定着温度に加熱されて矢印方向Aに回転する加熱ロール22と加圧ロール23の間の定着ニップ部Nに対し、作像ユニット10側で未定着トナー像Tが転写された用紙Pが入口側の用紙導入ガイド板29Aに案内されながら導入される(図1、図2)。そして、この定着ニップ部Nを通過するときに加熱加圧されるため、未定着トナー像Tが用紙Pに融着されて定着される。
この定着終了後に定着ニップ部Nから排出される用紙Pは、図2等に示すように、自力又は剥離シート26の剥離作用により加熱ロール22から剥離された後、出口側の用紙排出ガイド板29Bに誘導されて定着装置本体21の外部に排出される。これにより、定着処理が終了する。
そして、この定着動作が実行される時期において、図2に示すように未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入する前の時点では、加圧ロール23も特にその位置が変化することがないため、剥離シート変位装置4Aも特に作動することなく初期設定通りに剥離シート25の先端部25aを離間位置Sに変位させた状態に保つことになる。これにより、剥離シート25の先端部25aは、加熱ロール22の外周面から剥離位置Rの離間距離dよりも多く(差分(t−d)だけ多く)離間した状態に保たれる(図4)。
その後、未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入した時点(進入して通過中の時期も含む)では、図3に示すように、定着ニップ部Nに用紙Pが介在することにより、加圧ロール23がその加圧機構の付勢力に抗して加熱ロール22から離れる方向(点線矢印方向J:この例では下方側)に少しだけ変位する。
これにより、その加圧ロール23の軸23aの位置が矢印方向Jに少し変化するため、この軸23aを支持する位置変化検出部50Aの揺動検知フレーム52が支持軸51aを支点として矢印方向Hに揺動する。そして、これをきっかけにして、揺動検知フレーム52に連結されている変位駆動部40Aの駆動アーム42が矢印方向Eに変位し、さらには駆動アーム43に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Cに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Cに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに達した時点で(前記した図示しないストッパにより)停止する。このようにして剥離シート25は、その剥離作用を発揮できる状態になる。
従って、定着ニップ部Nに進入した未定着トナー像Tを担持する用紙Pは、その先端部Paがニップ部Nから排出される際には、剥離シートの先端部25aが剥離位置Rに変位しているため、その剥離シート25の剥離作用を受けて加熱ロール22から確実に剥離されるようになる。
また、定着が終了して未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nから完全に排出されると、定着ニップ部Nにある厚みをもつ用紙Pが介在しなくなるため、加圧ロール23が加熱ロール22に圧接する方向(点線矢印方向K:この例では上方側)に戻るように変位する。
これにより、その加圧ロール23の軸23aの位置が矢印方向Kに少し変化するため、この軸23aを支持する位置変化検出部50Aの揺動検知フレーム52が支持軸51aを支点として矢印方向Gに揺動する。そして、これをきっかけとして、揺動検知フレーム52に連結されている変位駆動部40Aの駆動アーム42が矢印方向Dに変位し、さらには駆動アーム42に連結されている揺動アーム41が支持軸42aを支点として矢印方向Bに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Bに揺動し、その先端部25aが離間位置Sに達した時点でその揺動を停止する。このようにして剥離シート25は、加熱ロール22の外周面から離れた状態に保たれることになる(図2)。
続いて、この定着装置20A(実際にはプリンタ1本体)の電源投入時に行なわれる加熱ロール22のウォームアップ動作について説明する。
電源が投入されると、定着部コントローラ27の制御動作によって電源装置28から加熱ロール22のハロゲンヒータ24に対して例えばウォームアップ時用の電力が通電される。この際、加熱ロール22は回転を停止した状態にあり、また、加圧ロール23は回転を停止して加熱ロール22に圧接された状態にある。
このハロゲンヒータ24への通電により、ハロゲンヒータ24が強く発熱して強力な輻射熱をロール内周面の全域にむけて放射するため、加熱ロール22はその内周面側から急激に加熱されることになる。これにより、加熱ロール22は比較的短時間で所定の温度(定着温度)を少し超える温度(閾値温度)まで加熱される。このときのロール温度は温度センサ26によって検出されている。そして、この閾値温度まで加熱された時点でウォームアップが終了する。このウォームアップ終了後は、加熱ロール22は定着温度に保たれるように制御されて、定着動作が可能な状態になる。
そして、このウォームアップ時には、加熱ロール22が急激に加熱されることで少し熱膨張して変形する。
しかし、この定着装置20Aでは、剥離シート変位装置4Aにより、定着ニップ部Nに用紙Pが介在していない時期(非通紙時)には、前述したように剥離シートの先端部25aが剥離位置Rよりも加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位しているため(図2)、熱変形した加熱ロール22と剥離シートの先端部25aが異常に接近したりあるいは完全に接触する現象が発生することがない。
この結果、ウォームアップ時に、加熱ロール22の外周面と剥離シート25の先端部25aとの異常接近又は完全接触という現象の発生が防止されるため、その異常接近又は完全接触の発生した場合における加熱ロール22から剥離シート25へのトナー等の転移付着やその剥離シート25から定着時の用紙Pへのトナー等の転移付着の発生も防止されるようになり、しかも、剥離シート25の完全接触による加熱ロール22の周面損傷の発生も防止されるようになる。
また、この定着装置20Aのウォームアップ時の効果により、プリンタ1にとっても、加熱ロール22のウォームアップ終了後の最初のプリント動作を今まで通りのタイミングで開始することが可能になる。また、そのウォームアップ後のプリント動作において定着装置20Aの剥離シート25から定着対象の用紙Pへのトナー等の転移付着の発生等もない良好で安定したプリント動作を行なうことができる。
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係るプリンタの一部(定着装置)を示すものである。
このプリンタにおける定着装置20Bは、前記した剥離シート変位装置4Aに代えて異なる構成の剥離シート変位装置4Bを適用して変更した以外は実施の形態1のプリンタ1における定着装置20Aと同じ構成からなるものである。このため、図5等においては実施の形態1に係るプリンタ1や定着装置20Aと共通する部分に対して同じ符号を付しており、また、以下においてはその共通する構成部分についての説明を必要なときを除いて省略している(これ以降の実施の形態においても同様とする)。
定着装置20Bにおける剥離シート変位装置4Bは、剥離シート25の先端部25aを離間位置R及び剥離位置Sの間で能動的に変位させるように動作する変位駆動部40Bと、用紙Pが定着ニップ部Nに進入したときの加圧ロール23の温度変化を検出する温度変化検出部60を備えたものであって、この温度変化検出部60の検出結果に基づいて変位駆動部40Bが剥離シート25の先端部25aを剥離位置Rに変位させる動作を実行するように構成したものである。
変位駆動部40Bは、実施の形態1における変位駆動部40Aと同様の揺動フレーム41(その支持フレーム43を含む)と、この揺動フレーム41の剥離シート25を取り付けた端部とは反対側の端部に支持軸42aを介して回動自在に連結してその揺動フレーム41を所定の方向(B,C)に揺動させるように作動するソレノイド装置44の駆動アーム45とで構成されている。ソレノイド装置44は、駆動アーム45が揺動フレーム41を矢印方向B,Cに揺動させるよう駆動アーム45を矢印方向M,Lに進退移動(突出する方向の動作及び引っ込む方向の動作)させるように取り付けられている。また、ソレノイド装置44は、定着部コントローラ27と接続されており、後述する温度センサ(61)の検出情報に基づく定着部コントローラ27からの制御信号により動作(駆動アーム45の進退動作)するようになっている。
温度変化検出部60は、加圧ロール23の定着ニップ部Nの出口側近傍の表面温度を検出することができるように配置される温度センサ61で構成されている。この温度センサ61は、定着部コントローラ27と接続されており、その検出結果(電気信号)を入力するようになっている。
この剥離シート変位装置4Bでは、定着部コントローラ27において、温度センサ61から入力される検出結果(温度に換算した結果)を予め設定される閾値と対比し、その検出結果の温度が定着動作中に閾値を下回った温度になったときに、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作用の制御信号を送信する制御動作が実行されるように構成されている。一方、その検出温度が閾値以上の温度にあるときには、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作用の制御信号を送信するように構成されている。このときの閾値は、例えば、温度センサ26で検出している加熱ロール22の表面温度よりも40℃程度低い温度に設定される。
このように剥離シート変位装置4Bは、変位駆動部40Bと温度変化検出部60とが別個独立した構成になっており、その温度変化検出部60から得られる検出情報に基づいて変位駆動部40Bの動作が制御される構成になっている。
また、この剥離シート変位装置4Bは、定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入する前及びそのニップ部Nを通過して完全に排出された後の時期(非通紙時)には、通常、加圧ロール23の表面温度は通紙時に比べて大きな温度変化(温度低下)はないため、剥離シート25の先端部25aが離間位置Sに変位した状態に保たれるように設定されている(図4及び図5)。
さらに、この剥離シート変位装置4Bでは、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rと離間位置Sを基準にして、変位駆動部40Bの揺動フレーム41の揺動量や、その駆動アーム45の移動量などが適宜設定される。
次に、このような剥離シート変位装置4Bを設けた定着装置20Bの動作について説明する。
まず、この定着装置20Bによる未定着トナー像Tの用紙Pへの定着動作は、実施の形態1における定着装置20Aの場合と同様に行なわれる。
続いて、その定着動作が実行される時期等における剥離シート変位装置4Bの動作について説明する。
はじめに、図5に示すように未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入する前の時点では、加圧ロール23の表面温度が大幅に低下するように変化することが特にないため、剥離シート変位装置4Bも特に作動することなく初期設定通りに剥離シート25の先端部25aを離間位置Sに変位させた状態に保つことになる。これにより、剥離シート25の先端部25aは、加熱ロール22の外周面から剥離位置Rの離間距離dよりも多く(差分(t−d)だけ多く)離間した状態に保たれる(図4、図5)。
その後、未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入した時点(進入して通過中の時期も含む)では、図6に示すように、定着ニップ部Nに用紙Pが介在することにより、加圧ロール23の熱が用紙P側に多量に奪われる(吸収される)ため、そのロール表面の温度が急激に低下する。
このとき、その加圧ロール23の表面温度を検出する温度センサ61の検出結果(温度)が前記した閾値を下回る温度であると判断された時点で、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作を行う。これにより、駆動アーム45に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Cに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Cに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに達した時点で停止する(図6)。このようにして剥離シート25は、その剥離作用を発揮できる状態になる。
従って、定着ニップ部Nに進入した未定着トナー像Tを担持する用紙Pは、その先端部Paがニップ部Nから排出される際には、剥離シートの先端部25aが剥離位置Rに変位しているため、その剥離シート25の剥離作用を受けて加熱ロール22から確実に剥離されるようになる。
また、定着が終了して未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nから完全に排出されると、定着ニップ部Nに用紙Pが介在しなくなるため、加圧ロール23の表面温度が再び上昇し始めるようになる。
このとき、その加圧ロール23の表面温度を検出する温度センサ61の検出結果(温度)が前記した閾値以上の温度になったと判断された時点で、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作を行う。これにより、駆動アーム45に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Bに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Bに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに変位して停止する。このようにして剥離シート25は、加熱ロール22の外周面から離れた状態に保たれることになる(図5)。
続いて、加熱ロール22のウォームアップ動作についてであるが、電源が投入されると、定着部コントローラ27Bの制御動作によって電源装置28からハロゲンヒータ24に例えばウォームアップ時用の電力が通電されることで、実施の形態1の場合と同様に加熱ロール22のウォームアップが行われる。そして、このウォームアップ時には、加熱ロール22が急激に加熱されることで熱膨張して変形するおそれが高い。
しかし、この定着装置20Bでは、剥離シート変位装置4Bにより、定着ニップ部Nに用紙Pが介在していない時期(非通紙時)には、前述したように剥離シートの先端部25aが剥離位置Rよりも加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位しているため(図5)、熱変形した加熱ロール22と剥離シートの先端部25aが異常に接近したりあるいは完全に接触する現象が発生することがない。この結果、この定着装置20Bによっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。また、この定着装置20Bを用いるプリンタ1にとっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係るプリンタの一部(定着装置)を示すものである。
このプリンタにおける定着装置20Cは、前記した剥離シート変位装置4A,4Bに代えて異なる構成の剥離シート変位装置4Cを適用して変更した以外は実施の形態1、2のプリンタ1における定着装置20A、20Bと同じ構成からなるものである。
定着装置20Cにおける剥離シート変位装置4Cは、剥離シート25の先端部25aを離間位置R及び剥離位置Sの間で能動的に変位させるように動作する変位駆動部40Bと、用紙Pがニップ部Nに進入したときの加圧ロール23の位置変化を検出する位置変化検出部50Bを備え、この位置変化検出部50Bの検出結果に基づいて変位駆動部40Bが当該剥離シートの先端部25aを剥離位置Sに変位させる動作を実行するように構成したものである。変位駆動部40Bは、前述した実施の形態2におけるソレノイド駆動方式の変位駆動部40Bと同じものを使用している。
位置変化検出部50Bは、実施の形態1における位置変化検出部50Aにおけるその一端部がたとえば支持フレーム55に支持軸55aを介して矢印方向G,Hに揺動自在に取り付けられ、その一端部とは異なる部位で加圧ロール23の軸23aを支持する揺動加圧フレーム56と、この揺動加圧フレーム56の他端部に装着されてそのフレーム56を矢印方向kに所定の圧力(定着ニップ部Nで必要とされる加圧力)で付勢する加圧用スプリング57と、この加圧用スプリング57の位置変化(定着ニップ部Nにおける用紙Pの有無によって揺動加圧フレーム56を介して生じる位置変化)を検出する圧力変動検出センサ58で構成されている。揺動加圧フレーム56及び加圧用スプリング57は、通常、加圧ロール23に圧力を付与するための加圧機構を構成するものを利用することができる。圧力変動検出センサ58は、例えば圧接素子等を使用して構成される。この圧力変動検出センサ58は、定着部コントローラ27と接続されており、その検出結果(電気信号)を入力するようになっている。
この剥離シート変位装置4Cでは、定着部コントローラ27において、圧力変動検出センサ58から入力される検出結果(圧力変動の大きさに換算した結果)を予め設定される閾値と対比し、その検出結果の圧力変動の大きさが閾値を上回った大きさになったときに、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作用の制御信号を送信する制御動作が実行されるように構成されている。一方、その検出した圧力変動の大きさが閾値以下の変動大きさにあるときには、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作用の制御信号を送信するように構成されている。
このように剥離シート変位装置4Cは、変位駆動部40Bと圧力変動検出センサ58とが別個独立した構成になっており、その圧力変動検出センサ58から得られる検出情報に基づいて変位駆動部40Bの動作が制御される構成になっている。
また、この剥離シート変位装置4Cは、定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入する前及びそのニップ部Nを通過して完全に排出された後の時期(非通紙時)には、通常、加圧ロール23の位置は加圧力に抗して大幅に変化することがないため、剥離シート25の先端部25aが離間位置Sに変位した状態に保たれるように設定されている(図4及び図7)。さらに、この剥離シート変位装置4Cでは、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rと離間位置Sを基準にして、変位駆動部40Bの揺動フレーム41の揺動量や、その駆動アーム45の移動量などが適宜設定される。
次に、このような剥離シート変位装置4Cを設けた定着装置20Cの動作について説明する。
まず、この定着装置20Cによる未定着トナー像Tの用紙Pへの定着動作は、実施の形態1における定着装置20Aの場合などと同様に行なわれる。
続いて、その定着動作が実行される時期等における剥離シート変位装置4Cの動作について説明する。
はじめに、図7に示すように未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入する前の時点では、加圧ロール23の位置が大幅に下方に下がるように変化することが特にないため、剥離シート変位装置4Cも特に作動することなく初期設定通りに剥離シート25の先端部25aを離間位置Sに変位させた状態に保つことになる。これにより、剥離シート25の先端部25aは、加熱ロール22の外周面から剥離位置Rの離間距離dよりも多く(差分(t−d)だけ多く)離間した状態に保たれる(図4、図7)。
その後、未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nに進入した時点(進入して通過中の時期も含む)では、図8に示すように、定着ニップ部Nに用紙Pが介在することにより、加圧ロール23がその加圧機構の付勢力(加圧用スプリング57による加圧力)に抗して加熱ロール22から離れる方向(点線矢印方向J:この例では下方側)に少しだけ変位する。
これにより、その加圧ロール23の軸23aの位置が矢印方向Jに少し変化するため、この軸23aを支持する位置変化検出部50Bの揺動加圧フレーム56が支持軸55aを支点として矢印方向Hに揺動する。そして、この揺動加圧フレーム56の下方への揺動により加圧用スプリング57が縮む状態になるため、そのときの圧力変化が圧力変動検出センサ58で検出され、その検出結果(圧力変化の大きさ)が前記した閾値を上回る大きさであると判断された時点で、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作を行う。これにより、駆動アーム45に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Cに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Cに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに達した時点で停止する(図8)。このようにして剥離シート25は、その剥離作用を発揮できる状態になる。
従って、定着ニップ部Nに進入した未定着トナー像Tを担持する用紙Pは、その先端部Paがニップ部Nから排出される際には、剥離シートの先端部25aが剥離位置Rに変位しているため、その剥離シート25の剥離作用を受けて加熱ロール22から確実に剥離されるようになる。
また、定着が終了して未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nから完全に排出されると、定着ニップ部Nに用紙Pが介在しなくなるため、加圧ロール23が元の位置に戻るようになる。
このとき、その加圧ロール23の位置変化による圧力変動の大きさを検出する圧力変動検出センサ58の検出結果(圧力変化の大きさ)が前記した閾値以下の大きさになったと判断された時点で、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作を行う。これにより、駆動アーム45に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Bに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Bに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに変位して停止する。このようにして剥離シート25は、加熱ロール22の外周面から離れた状態に保たれることになる(図7)。
続いて、加熱ロール22のウォームアップ動作についてであるが、この定着装置20Cでは、剥離シート変位装置4Cにより、定着ニップ部Nに用紙Pが介在していない時期(非通紙時)には、前述したように剥離シートの先端部25aが剥離位置Rよりも加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位している(図7)。このため、熱変形した加熱ロール22と剥離シートの先端部25aが異常に接近したりあるいは完全に接触する現象が発生することがない。この結果、この定着装置20Bによっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。また、この定着装置20Bを用いるプリンタ1にとっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の形態4に係るプリンタの一部(二次転写部と定着装置)を示すものである。
このプリンタにおける定着装置20Dは、前記した剥離シート変位装置4Aに代えて異なる構成の剥離シート変位装置4Dを適用して変更した以外は実施の形態1のプリンタ1における定着装置20Aと同じ構成からなるものである。
定着装置20Dにおける剥離シート変位装置4Dは、剥離シート25の先端部25aを前記した離間位置R及び剥離位置Sの間で受動的に変位させるように動作する変位駆動部40Aと、用紙Pが定着ニップ部Nに進入する前の搬送通過位置を検出する搬送通過位置検出部70Aを備え、この搬送通過位置検出部70Aの検出結果に基づいて変位駆動部40Aが当該剥離シートの先端部25aを剥離位置Sに変位させる動作を実行するように構成されている。変位駆動部40Aは、前述した実施の形態1における機械形式の変位駆動部40Aと同じものを使用している。図9等における符号18は、中間転写ベルト16を二次転写位置で支持するバックアップロールである。
搬送通過位置検出部70Aは、プリンタ本体2の作像ユニット10における二次転写ロール17の接離動作を用紙Pの二次転写位置の通過時期及び非通過時期とみなして定着ニップ部Nに進入する前の用紙Pの搬送通過位置を検出するものである。この例では、搬送通過位置検出部70Aとして、例えば、定着装置20Dと二次転写部の間に設置する支持フレーム71に支持軸71aを介して揺動自在に取り付けられ、その二次転写部側の一端部に二次転写ロール17の軸17aを回動自在に連結させる一方で、その反対側(定着装置側)の端部に前記変位駆動部40Aの駆動フレーム42を支持軸72aで回動自在に連結させた揺動検知アーム72で構成されるものを適用した。
この揺動検知アーム72は、二次転写ロール17の二次転写時における矢印方向Q1,Q2の接離動作に連動して、駆動フレーム42と連結する端部側が支持軸71aを支点として矢印方向G,Hに揺動するように取り付けられている。
従って、この剥離シート変位装置4Dは、変位駆動部40A(の駆動アーム42)と搬送通過位置検出部70A(揺動検知アーム72)とがリンク機構により機械的に接続された構成になっている。
また、この剥離シート変位装置4Dは、二次転写ロール17が(バックアップロール18で支持されている)中間転写ベルト16から離間した状態にあってかつ定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入する前及びそのニップ部Nを通過して完全に排出された後の時期(非通紙時)には、剥離シート25の先端部25aが加熱ロール22の外周面から所定の距離tだけ離間した離間位置Sに変位した状態に保たれ(図9及び図4)、一方、二次転写ロール17が中間転写ベルト16に当接した状態にあってかつその定着ニップ部Nに定着対象の用紙Pが進入して通過している時期(通紙時)時期には、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rに変位した状態に保たれるように設定されている(図10)。
次に、このような剥離シート変位装置4Dを設けた定着装置20Dの動作について説明する。
まず、この定着装置20Dによる未定着トナー像Tの用紙Pへの定着動作は、実施の形態1における定着装置20Aの場合などと同様に行なわれる。
続いて、その定着動作が実行される時期等における剥離シート変位装置4Dの動作について説明する。
はじめに、図9に示すように、二次転写ロール17が中間転写ベルト16から離間した状態にある時期には、二次転写ロール17が矢印方向Q1側に移動しているため、搬送通過位置検出部70Aにおける揺動検出アーム72は支持軸71aを中心にして矢印方向Gに揺動した状態にある。これにより、その揺動検出アーム72に連結している変位駆動部40Aにおける駆動アーム42が矢印方向Dに変位するため、揺動アーム41が支持軸43aを中心にして矢印方向Bに揺動した状態となる結果、その揺動アーム41に取り付けられた剥離シート25の先端部25aが加熱ロール22から離間した離間位置Sに変位した状態におかれる(図9)。
つまり、用紙Pが二次転写位置に供給される前であり、しかも定着ニップ部Nに進入する前の時点では、二次転写ロール17も変位しないため、剥離シート変位装置4Dも特に作動することなく初期設定通りに剥離シート25の先端部25aを離間位置Sに変位させた状態に保つことになる。
その後、二次転写時期が到来して二次転写ロール17が中間転写ベルト16に当接した状態にある時期には、二次転写ロール17が矢印方向Q2側に移動しているため、搬送通過位置検出部70Aにおける揺動検出アーム72は支持軸71aを中心にして矢印方向Hに揺動する。
これにより、変位駆動部40Aにおける駆動アーム42が矢印方向Eに変位するため、揺動アーム41が支持軸43aを中心にして矢印方向Cに揺動した状態になる結果、その揺動アーム41に取り付けられた剥離シート25の先端部25aが加熱ロール22に近接した剥離位置Rに変位した状態におかれる(図10)。このようにして剥離シート25は、その剥離作用を発揮できる状態になる。そして、この際、二次転写位置には用紙Pが供給されてトナー像の二次転写が行なわれ、その未定着トナー像を担持する用紙Pが定着装置20Dの定着ニップ部Nにむけて搬送されて導入される。
従って、定着ニップ部Nに進入した未定着トナー像Tを担持する用紙Pは、その先端部Paがニップ部Nから排出される際には、剥離シートの先端部25aが剥離位置Rに変位しているため、その剥離シート25の剥離作用を受けて加熱ロール22から確実に剥離されるようになる。なお、二次転写ロール17は、少なくとも定着対象の用紙Pが定着装置の定着ニップ部Nを通過し終わるまでは中間転写ベルト16に当接した状態にある。
また、定着が終了して未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nから完全に排出された後に、二次転写ロール17が矢印方向Q1に移動して中間転写ベルト16から離間した状態になると、搬送通過位置検出部70Aにおける揺動検出アーム72は支持軸71aを中心にして矢印方向Gに揺動した状態になる。
これにより、その揺動検出アーム72に連結している変位駆動部40Aにおける駆動アーム42が矢印方向Dに変位するため、揺動アーム41が支持軸43aを中心にして矢印方向Bに揺動した状態となる結果、その揺動アーム41に取り付けられた剥離シート25の先端部25aが加熱ロール22から離間した離間位置Sに変位する。このようにして剥離シート25は、加熱ロール22の外周面から離れた状態に保たれることになる(図9)。
続いて、加熱ロール22のウォームアップ動作についてであるが、この定着装置20Dでは、かかるウォームアップ時には剥離シート変位装置4Dにより、二次転写ロール17が離間位置にあるため、前述したように剥離シートの先端部25aも加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位した状態に保たれている(図9)。このため、その熱変形した加熱ロール22と剥離シートの先端部25aが異常に接近したりあるいは完全に接触する現象が発生することがない。この結果、この定着装置20Bによっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。また、この定着装置20Bを用いるプリンタ1にとっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。
[実施の形態5]
図11は、本発明の実施の形態5に係るプリンタの一部(二次転写部と定着装置)を示すものである。
このプリンタにおける定着装置20Eは、前記した剥離シート変位装置4Dに代えて異なる構成の剥離シート変位装置4Eを適用して変更した以外は実施の形態4のプリンタ1における定着装置20Dと同じ構成からなるものである。
定着装置20Eにおける剥離シート変位装置4Eは、剥離シート25の先端部25aを離間位置R及び剥離位置Sの間で能動的に変位させるように動作する変位駆動部40Bと、用紙Pが定着ニップ部Nに進入する前の搬送通過位置を検出する搬送通過位置検出部70Bを備え、この搬送通過位置検出部70Bの検出結果に基づいて変位駆動部40Bが当該剥離シートの先端部25aを剥離位置Sに変位させる動作を実行するように構成されている。変位駆動部40Bは、前述した実施の形態2におけるソレノイド駆動方式の変位駆動部40Bと同じものを使用している。
搬送通過位置検出部70Bは、定着装置20Eに到達する前の所定位置における用紙Pの通過を検出して用紙Pの搬送通過位置を検出するものである。この例では、搬送通過位置検出部70Bとして、例えば、二次転写部から定着装置20Eにむけて搬送される用紙P(の先端部Pa)の通過する検出する用紙通過検出センサ75で構成されるものを適用した。この用紙通過検出センサ75は、定着部コントローラ27と接続されており、その検出結果(電気信号)を入力するようになっている。
この剥離シート変位装置4Eでは、定着部コントローラ27において、用紙通過検出センサ75から入力される検出結果(用紙先端部の通過を検出した結果)を得たときに、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作用の制御信号を送信する制御動作が実行されるように構成されている。一方、その用紙通過検出センサ75からの検出結果が入力されない状態にあるときには、ソレノイド装置44にその駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作用の制御信号を送信するように構成されている。このときの駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる時間は、定着対象の用紙Pが用紙通過検出センサ75に到達した後から定着ニップNを完全に通過し終わるまでに要する時間が少なくとも確保されるように設定される。
このように剥離シート変位装置4Eは、変位駆動部40Bと搬送通過位置検出部70Bとが別個独立した構成になっており、そのから得られる検出情報に基づいて変位駆動部40Bの動作が制御される構成になっている。
また、この剥離シート変位装置4Eは、定着対象の用紙Pが搬送通過位置検出部70Bに達する前であって、しかも定着ニップ部Nに進入する前及びそのニップ部Nを通過して完全に排出された後の時期(非通紙時)には、剥離シート25の先端部25aが離間位置Sに変位した状態に保たれるように設定されている(図4及び図11)。
さらに、この剥離シート変位装置4Eでは、剥離シート25の先端部25aが剥離位置Rと離間位置Sを基準にして、変位駆動部40Bの揺動フレーム41の揺動量や、その駆動アーム45の移動量などが適宜設定される。
次に、このような剥離シート変位装置4Eを設けた定着装置20Eの動作について説明する。
まず、この定着装置20Eによる未定着トナー像Tの用紙Pへの定着動作は、実施の形態4における定着装置20Dの場合などと同様に行なわれる。
続いて、その定着動作が実行される時期等における剥離シート変位装置4Eの動作について説明する。
はじめに、図11に示すように、二次転写後の未定着トナー像を担持する用紙Pが用紙通過検出センサ75を通過する前の時期には、用紙通過検出センサ75から検出信号が得られないため、剥離シート変位装置4Eも特に作動することなく前述した初期設定の通り、剥離シート25の先端部25aを加熱ロール22から離間した離間位置Sに変位させた状態に保つことになる。
その後、二次転写後の未定着トナー像を担持する用紙Pが用紙通過検出センサ75に到達してその通過が検出されると、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Mに突出させる動作を行う。
これにより、駆動アーム45に連結されている揺動アーム41が支持軸43aを支点として矢印方向Cに揺動する。この結果、剥離シート25は、揺動アーム41と共に矢印方向Cに揺動し、その先端部25aが剥離位置Rに達した時点で停止する(図12)。このようにして剥離シート25は、その剥離作用を発揮できる状態になる。そして、この際、用紙通過検出センサ75を通過した定着対象の用紙Pが定着装置20Eの定着ニップ部Nに導入される。
従って、定着ニップ部Nに進入した未定着トナー像Tを担持する用紙Pは、その先端部Paがニップ部Nから排出される際には、剥離シートの先端部25aが剥離位置Rに変位しているため、その剥離シート25の剥離作用を受けて加熱ロール22から確実に剥離されるようになる。
また、定着が終了して未定着トナー像Tを担持する用紙Pが定着ニップ部Nから完全に排出された後に、用紙通過検出センサ75の検出信号の入手時から所定時間が経過すると、定着部コントローラ27から送信される制御信号によりソレノイド装置44が駆動アーム45を矢印方向Lに引っ込める動作を行う。これにより、前述したように剥離シート25は、剥離シート変位装置4Eによって、加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位させられた状態に保たれることになる(図11)。
続いて、加熱ロール22のウォームアップ動作についてであるが、この定着装置20Eでは、かかるウォームアップ時には剥離シート変位装置4Eにより、用紙通過検出センサ75において用紙の通過が検知されることがないため、前述したように剥離シートの先端部25aも加熱ロール22の外周面から離れた離間位置Sに変位した状態に保たれている(図11)。このため、その熱変形した加熱ロール22と剥離シートの先端部25aが異常に接近したりあるいは完全に接触する現象が発生することがない。この結果、この定着装置20Bによっても、実施の形態1の場合と同様の作用効果が得られる。また、この定着装置20Bを用いるプリンタ1にとっても、実施の形態4(1)の場合と同様の作用効果が得られる。
[他の実施の形態]
実施の形態1,3においては、位置変化検出部40として加圧ロール23の位置変化を検出する構成のものを採用した場合について例示したが、その他にも、加熱ロール22の位置変化を検出できる場合には、詳述するまでもなくその加熱ロール22の位置変化を検出する構成の位置変化検出部を採用することも可能である。
また、実施の形態2では、温度変化検出部60として加熱ロール22の温度変化を検出する構成のものを採用した場合について例示したが、その他にも、加熱ロール22の温度変化を検出できる場合には、詳述するまでもなくその加熱ロール22の温度変化を検出する構成の温度変化検出部を採用することも可能である。
実施の形態5では、用紙Pの通過位置検出部70(通過位置検出センサ75)を二次転写位置と定着装置の間の用紙搬送路内に設置する構成の場合について例示したが、この他にも、たとえば、二次転写位置よりも手前側(用紙搬送方向上流側)の用紙搬送路内に通過位置検出部70を設置する構成を採用することも可能である。
1…プリンタ(画像形成装置)、4A,4B,4C,4D,4E…剥離シート変位装置、10…作像ユニット(作像装置)、20A,20B,20C,20D,20E…定着装置、22…加熱ロール、22a…外周面、22b…内周面、23…加圧ロール(加圧部材)、24…ハロゲンヒータ(加熱源)、25…剥離シート(剥離部材)、25a…先端部、40A,40B…変位駆動部、50A,50B…位置変化検出部、60…温度変化検出部、70A,70B…搬送通過位置検出部、T…未定着トナー像、P…用紙(シート状物)、N…ニップ部、S…離間位置、R…剥離位置。