JP2007114474A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性媒体中でポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する微粒子を形成し、該微粒子を合一させる静電荷像現像用トナーの製造方法において、1バッチ当たりの収量の向上、有機溶剤の除去工程における発泡の解消及び有機溶剤の除去効率の向上を実現する。
【解決手段】ポリエステル樹脂と着色剤とを、有機溶剤中に溶解あるいは分散させて、固形分含有量が60〜75%の着色樹脂溶液を製造する工程A、塩基性化合物(I)の存在下で該着色樹脂溶液と水性媒体とを混合することにより乳化懸濁液を製造し、更に塩基性化合物(II)を添加する工程B、分散安定剤及び電解質を添加して該着色樹脂溶液の微粒子を形成し、更に該微粒子を合一させる工程C、固形分含有量が20〜30%となるように水性媒体を追加し、引き続き有機溶剤を除去する工程D、該合一した粒子を分離し、洗浄する工程E、乾燥する工程Fを行う静電荷像現像用トナーの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
近年、使用環境の変化に伴い、複写機、プリンター等のカラー化率は年々増加傾向にある。同時に、高解像・高階調の高画像品質の要求から、トナーの小粒径化及び分布のシャープ化による均一性向上が必須となってきている。このような状況下トナーの製造方法においても、従来の粉砕法から、いわゆる「ケミカルトナー」と呼ばれる乳化分散法や重合法等の湿式法による各種トナーの製造方法が注目されている。中でも、乳化分散法は、トナーの小粒径化や球形化が容易であることに加え、重合法と比較して、バインダー樹脂の種類の選択幅が広くなり、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の縮合系樹脂を主結着樹脂として使用できる。そのため、樹脂本来の広い領域での耐オフセット性、低温定着性、ガラス転移温度の保持による良好な耐熱保存性、等の利点を活かすことが可能である。
乳化分散法を用いたトナーの製造方法に関する従来の技術としては、例えば、着色剤とアニオン型自己水分散性樹脂とからなるポリエステル樹脂を有機溶剤中に分散・溶解させ、その後、塩基にてアニオン性基を中和した後、水性媒体中に転相乳化することによりトナー粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。更に、着色剤とポリエステル樹脂を有機溶剤中に分散・溶解させ、その後、塩基によりアニオン性基を中和した後、水性媒体中に乳化を行い、次いで合一工程を行うことにより粒度分布がシャープなトナーを高収率で製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、乳化分散法における後者の製法では、工程中に多量の有機溶剤と水を添加するため、最終的な脱溶剤前の固形分含有量が低下し、1バッチ当たりの収量が少なく、生産性の面で非効率なプロセスとなっていた。また、有機溶剤の除去工程において、固形分含有量が低く、固形分に対する水の比率が高いため、発泡等が生じやすく、有機溶剤の除去効率が低いとの問題も有していた。
特開平8−211655号公報 特開2003−122051号公報
1バッチ当たりの収量の向上、有機溶剤の除去工程における発泡の解消及び有機溶剤の除去効率の向上を実現するには、(1)樹脂を溶解又は分散する疎水性有機溶剤量の削減、(2)油層から水層への乳化の際に使用する水の量の削減、(3)電解質濃度を上げることで、電解質水溶液の添加量の削減、(4)合一停止水の削減、等の方策を併せることで、1バッチ当たりの収量を改善できると推測される。しかしながら、これらの方策を実際に実施すると、脱溶剤時の発泡の問題は解決できるものの、有機層(油層)の粘度が上昇するため、特に乳化時に水性媒体との混合が不均一になり、未乳化の粗大粒子が系中に残存するという問題が生じる。特に、固形分含有量の高い樹脂溶液を乳化する際は、塩基性化合物の添加による乳化時の増粘は、極めて塩基性化合物の添加量依存性が高くなる。条件によっては、ワイゼンベルク現象(攪拌翼に巻き付く現象)を伴うこともあり、この場合は、せん断をかけることができなくなり、未乳化物の増加に直結する。また、使用する塩基性化合物の量は、ポリエステル樹脂含有のカルボキシル基に対し1〜3当量の範囲が好ましいが、該塩基性化合物の量は、乳化のみならず、合一工程における合一均一性とも関連するため、容易に削減することができない。このように1バッチ当たりの収量の向上、有機溶剤の除去工程における発泡の解消及び有機溶剤の除去効率の向上を実現するため、単純に上記の(1)〜(4)を実施すると、乳化時の増粘によって未乳化物が発生する問題が新たに起こり、更に改善が必要であった。
したがって、本発明の目的は、前記特許文献2で開示された技術、即ち、少なくともポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を水性媒体中に乳化させ、次いで、分散安定剤を添加し、更に電解質を順次添加することでポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する混合物の微粒子を形成し、該微粒子を合一させる合一工程を行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法において、1バッチ当たりの収量の向上、有機溶剤の除去工程における発泡の解消及び有機溶剤の除去効率の向上を実現し、且つ乳化時の増粘による未乳化物の発生を極力防止する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、1バッチ当たりの収量を改善する目的で、使用する疎水性有機溶剤量や添加する水量の削減を実施するに当たり、使用する塩基性化合物を下記工程Bの乳化又は縣濁時の前後において分割添加することで、乳化時の塩基量を調整するこが可能であり、その結果、増粘による未乳化物の発生がないスムーズな乳化と均一な合一が可能であり、生産性と品質の整合性を両立したプロセスが可能であることを見出した。また、下記有機溶剤の除去工程Dにおいて、固形分含有量が高くなり、固形分に対する水性媒体の比率が低くなったため、発泡が減少し、効率的な疎水性有機溶剤の除去が可能であることも同時に見出した。
すなわち、本発明は、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と着色剤とを、疎水性有機溶剤中に溶解あるいは分散させて、固形分含有量が60〜75%の着色樹脂溶液を製造する工程A、
次いで、塩基性化合物(I)の存在下で該着色樹脂溶液と水性媒体とを混合することにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液が乳化又は懸濁した乳化懸濁液を製造し、その後、更に塩基性化合物(II)を添加する工程B、
該乳化縣濁液中に、分散安定剤の存在下で、電解質を添加することで該着色樹脂溶液の微粒子を形成し、更に該微粒子を合一させることにより合一粒子を製造する工程C、
該乳化縣濁液中に、固形分含有量が20〜30%となるように水性媒体を追加することで合一を停止させ、引き続き疎水性有機溶剤を除去する工程D、
該合一粒子を該水性媒体中から分離し、洗浄する工程E、
次いで該合一粒子を乾燥する工程F
を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、着色樹脂溶液中の疎水性有機溶剤量や添加する水の量を削減して1バッチ当たりの収量を改善する際に、乳化又は縣濁前後に所定量の塩基性化合物を分割添加することで、塩基性化合物による乳化時の増粘による未乳化物の発生を抑えることができる。それにより、生産性と品質確保の両立が可能な、静電荷像現像用トナーを製造することができる。また、溶液中の固形分含有量が高く、固形分に対する水の比率が低くなるため、脱溶剤工程における疎水性有機溶剤の除去を効率的に行うことができる。
以下、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。本発明の製造方法は、大別すると以下の3工程を備えている。
第1工程:ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを、疎水性有機溶剤中に溶解、あるいは分散させて固形分含有量が60〜75%の着色樹脂溶液を製造する工程A、次いで、塩基性化合物(I)を添加した後、該着色樹脂溶液に水を添加することで、水性媒体中に乳化又は懸濁させて該着色樹脂溶液が乳化又は懸濁した乳化懸濁液とし、その後、該乳化懸濁液中にさらに塩基性化合物(II)を添加する工程Bを行う。
第2工程:該乳化懸濁液に、分散安定剤の存在下、電解質を添加することで、該着色樹脂溶液の微粒子を形成し、更に該微粒子を合一させることにより合一粒子を生成させる工程Cを行い、次いで該乳化縣濁液中に固形分含有量が20〜30%となるように水を添加することで、合一を停止させ、引き続き、減圧下で有機溶剤を除去する工程Dを行う。
第3工程:脱溶剤後の前記合一粒子を水性媒体中から分離・洗浄し(工程E)、乾燥させ(工程F)、トナーを製造する。
なお、着色樹脂溶液の微粒子は、
(1)着色剤とポリエステル樹脂が溶解または分散した疎水性有機溶剤の微粒子、
(2)着色剤の微粒子に水性媒体中に溶解したポリエステル樹脂が付着した状態の乳化型の微粒子、
または、
(3)着色剤の微粒子に疎水性有機溶剤により膨潤したポリエステル樹脂のミクロエマルジョンが付着した乳化型の微粒子
の形態のいずれかの微粒子、またはそれらの形態の混合微粒子であっても良い。
合一法によりトナーを製造する場合は、上記(2)または(3)の状態である着色剤含有樹脂粒子の懸濁液を製造することが好ましい。
まず、第1工程について詳しく説明する。第1工程では、まず疎水性有機溶剤中にポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、着色剤とを投入して、溶解または分散させることで、着色樹脂溶液を調整する(工程A)。必要に応じて、離型剤や他の添加剤を混合物と共に用いることができるが、いずれにおいてもトナー粒径以下に微分散または溶解される必要がある。工程Aで調整する着色樹脂溶液の固形分含有量は、60%〜75%の範囲である。1バッチ当たりの収量を改善するためには、工程Aにおける疎水性有機溶剤の量をできるだけ低く調整する必要がある。また、ここで使用される疎水性有機溶剤量は、工程Bでの乳化又は縣濁に使用される水の量と相関があり、疎水性有機溶剤量が多いと、該水の必要量も増加するため、疎水性有機溶剤量をできるだけ低く調整することは重要となる。固形分含有量が、60%よりも低いと、疎水性有機溶剤量の削減効果のみならず、乳化、あるいは縣濁に用いる水の量も削減できないため好ましくない。また、75%よりも固形分が高いと、着色樹脂溶液の粘度が高くなり、攪拌混合が不均一となるため好ましくない。
結着樹脂と着色剤は、高速攪拌機により疎水性有機溶剤中に溶解または分散することが好ましい。この場合、着色剤は、あらかじめ予備分散を行ってマスター混練チップを調整し、トナー粒径以下に微分散したものを用いても良い。離型剤のような添加剤などもあらかじめマスター混練チップを調整した後に混合しても良い。あるいは、メディアを用いて湿式分散によりトナー粒径以下に微分散したマスター溶液を用いても良い。第1工程においては、DESPA(アサダ鉄工株式会社)、ホモミクサ(特殊機化工業株式会社)などの高速攪拌機が使用できる。この時の翼先端速度は4〜30m/sであることが好ましく、10〜25m/sであることが特に好ましい。上記高速攪拌機を用いることで、結着樹脂の疎水性有機溶剤への溶解を効率よく行えると共に、着色剤の結着樹脂溶液中での均一微分散を達成できる。すなわち、あらかじめ微分散された着色剤の状態を高速攪拌することで、結着樹脂溶液中においても保持することができる。翼先端速度が4m/sより低いと、結着樹脂溶液中での着色剤の微分散が不十分となり好ましくない。一方、30m/sより高いと、専断による発熱が大きくなり、溶剤の揮発と相まって均一攪拌が困難となるため好ましくない。また、溶解、または分散する場合の温度は、20〜60℃の範囲が好ましく、30〜50℃の範囲が特に好ましい。
疎水性有機溶剤としては、25℃における水に対する溶解度が、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜25質量%であることが特に好ましい。また、常圧における沸点は、水の沸点よりも低いことが好ましい。このような疎水性有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンのようなケトン類や、酢酸エチル、酢酸イソプロピルのようなエステル類、などが用いられる。これらの疎水性有機溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、疎水性有機溶剤は、ポリエステル樹脂を溶解または分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後の工程で脱溶剤しやすいために低沸点のものが好ましい。ここで、ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤としては、溶解、分散性に優れている、メチルエチルケトン、酢酸エチルを用いている。特にメチルエチルケトンを用いることがもっとも好ましい。
次いで、塩基性化合物(I)を添加した後で、該着色樹脂溶液に水を添加することで水性媒体中に乳化又は懸濁させて乳化懸濁液とし、その後、該乳化懸濁液中にさらに塩基性化合物(II)を添加する(工程B)。ここで、塩基性化合物の塩基によってポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和した着色樹脂溶液に水を徐々に添加することが好ましい。カルボキシル基が中和されることで、該官能基部分の親水性が向上し、水との親和性が向上する。滴下した水は該官能基部分に水和され、攪拌効果と合わさって溶解あるいは微細に分散される。一方、結着樹脂は水性媒体を介在して酸―塩基相互作用が強まり、水の添加に伴って粘度が上昇する。一定量の水を添加すると粘度が低下していく点があり、いわゆる転相点と称する。この直前まで、粘度が上昇し、粘度のピークとなる。粘度上昇は、塩基性化合物の添加量と相関があり、添加量が増加するほど、粘度上昇も大きくなる。また、固形分含有量が高いほど、顕著な増加が見られる。場合によってはワイゼンベルク現象が生じ、攪拌翼に巻き付くことで、均一な攪拌に問題を生じる。一方、塩基性化合物の量は、本製法においては、工程Bの乳化あるいは縣濁工程のみならず、後述する第二工程の工程Cにおける合一粒子生成時の均一性、速度にも影響を及ぼし、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対して、塩基性化合物の全量(I+II)として1〜3当量の範囲が好ましい。また、1〜2当量の範囲が更に好ましい。このようにポリエステル樹脂のカルボキシル基を100%中和するために要する量よりも過剰に添加することにより、工程Cにおいて異形の粒子が生成するのを防止することができ、また、粒度分布をシャープにすることができる。しかしながら、塩基性化合物の全量を工程Bの乳化又は縣濁前で添加すると、乳化又は縣濁時に粘度上昇が生じ、攪拌の不均一化により未乳化の異物が発生し、最終的に得られるトナー中に混在し、現像特性に悪影響を及ぼすことになる。工程Bにおける塩基性化合物(I)の量は、0.6〜0.8当量が好ましい。0.6当量よりも少ないと、乳化あるいは縣濁時に着色剤、あるいは離型剤等の添加剤の分散が不均一になったり、未乳化物が発生するため好ましくない。一方、0.8当量よりも多いと粘度上昇による影響が見られるため好ましくない。工程B終了後の疎水性有機溶剤/疎水性有機溶剤+水の比率は20〜35%の範囲が好ましく23〜30%の範囲がより好ましい。上述したように、転相点までの水の量は、工程Aにおける疎水性有機溶剤量が少ないほど、減少する、また、塩基性化合物の量が多いほど増加する。1バッチ当たりの生産性を上げるためには、工程Aにおける疎水性有機溶剤量を減らすことが好ましい。また、塩基性化合物の量を減らすことが好ましい。転相点では縣濁液の粘度が高いこともあり、着色樹脂溶液が完全に水性媒体中に微分散していない場合もあるため、更に水を添加することが好ましい。水の量は、転相点までに添加した水の量+転相点までに使用した水の量×1/2〜4/5の範囲が好ましい。
工程Bでは、得られた乳化懸濁液に塩基性化合物(II)を攪拌下に添加する。添加する量は、0.2〜2.4当量の範囲が好ましい。0.2当量よりも少ないと、次工程における合一時の均一性が低下し、顔料の凝集や、離型剤の露出が見られるため好ましくない。一方、2.4当量よりも多いと、次工程における合一時に凝集体等の粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するポリエステル樹脂であれば、カルボキシル基を中和することにより水中で容易に分散するか(以下、自己水分散性という)、または水溶性となる。又、自己水分散性または水溶性のポリエステル樹脂の酸価は、1〜30KOHmg/gが好ましく、3〜20KOHmg/gであることがより好ましい。
これは、ポリエステル樹脂の酸価が1未満であると、ポリエステル樹脂と疎水性有機溶剤とが水中に乳化又は懸濁した乳化懸濁液の製造がスムーズに行われず、粗大粒子が発生するので好ましくない。
一方、ポリエステル樹脂の酸価が30より大きいと、各種環境下における帯電量が安定しないため好ましくない。酸価が1〜30KOHmg/gであるポリエステル樹脂は、カルボキシル基が塩基性化合物により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加し、分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散または溶解することができる。
中和用の塩基性化合物としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が用いられる。特に、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基が好ましい。ポリエステル樹脂を水中または水が主成分で有機溶剤を含む媒体(水性媒体)中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤などの分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となってしまう。これにより、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになることから好ましくない。また、ゲル分を含有するような架橋型ポリエステル樹脂の場合には、さらに不均一な粒度分布となり、実用上限界がある。したがって、本発明では、自己水分散性または水溶性であるポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基を、塩基性化合物により中和する。
上記の方法で製造した乳化懸濁液では、着色樹脂溶液は水性媒体中に乳化又は懸濁した状態で存在する。その状態は、有機溶剤の種類と使用量、ポリエステル樹脂の酸価、塩基性化合物の使用量、撹拌条件等で異なるが、着色樹脂溶液の粒子が光学顕微鏡を使用しても確認できない程度に微小な油滴として乳化又は懸濁していることが好ましい。このような状態であれば、乳化懸濁液の安定性、後の工程における合一の安定性、合一粒子の粒度分布等が良好になり、好ましい。
次に、第2工程について説明する。分散安定剤の存在下、電解質を添加することにより、合一体である合一粒子を製造する(工程C)。合一法では、着色樹脂溶液の乳化懸濁液に分散安定剤を添加する。そして、分散安定剤の存在下で電解質の水溶液を滴下することで着色樹脂溶液の微粒子を形成し、更に該微粒子を合一させることにより合一粒子を製造する。乳化懸濁液に電解質を添加することで、乳化又は懸濁している着色樹脂溶液の微小な油滴が塩析または不安定化され、着色樹脂溶液の微粒子として析出する。そして、複数の着色樹脂溶液の微粒子が一体化することによって合一が進行し、合一粒子を得ることができる。なお、電解質を添加することにより、着色樹脂溶液の微粒子同士が合一するばかりでなく、水性媒体中に溶解しているポリエステル樹脂が塩析または不安定化することによりポリエステル樹脂の微粒子が析出し、着色樹脂溶液の微粒子の表面または既に合一した合一粒子に付着して、或いは、水性媒体中に溶解しているポリエステル樹脂が塩析または不安定化することにより、直接、着色樹脂溶液の微粒子の表面または既に合一した合一粒子に付着することにより、合一が進行し、合一粒子を得る。
工程Bで得られた光学顕微鏡を使用しても確認できない程度に微小な油滴として乳化懸濁液中に乳化又は懸濁している微小な油滴は、ポリエステル樹脂のカルボン酸塩等による水和作用により水性媒体中で安定して分散している。工程Cでは、微小な油滴が分散している水性媒体中にその水和状態を破壊あるいは減少させる電解質を添加することで、光学顕微鏡により確認できる程度の微粒子として析出させる。そして、更に、ここで用いられる電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウムなどの有機、無機の水溶性の塩なども電解質として有効に用いることができる。これらの電解質は、単独でも、2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウムのような1価のカチオンの硫酸塩、炭酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。ここで得られる合一粒子は溶剤によって膨潤しており、かつ電解質を添加することによって粒子の水和状態が不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌により粒子同士を衝突させて合一を進行させることが好ましい。高剪断条件下で合一工程を行うと、合一が行われた粒子の分裂と合一が同時に行われるため好ましくない。分裂が起きずに合一のみが進行するような低シェア条件下で合一工程をコントロールすることが好ましい。
ところで、電解質などの添加だけでは、系内の合一粒子の分散が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生することがある。このように電解質の添加により生成した合一粒子が不均一な合一を繰り返すことによって目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質を添加する前に、ヒドロキシアパタイトなどの無機分散安定剤やイオン性あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加する必要がある。添加時期は、電解質を添加する前であれば、第1工程の工程Aあるいは工程Bであってもかまわない。工程Cにおいて分散安定剤が機能するためには、後から添加する電解質の存在下においても分散安定性を保持できる特性が必要である。そのような特性を有する分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど、あるいは各種プルロニック系などのノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型、アルキルスルホン酸塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤などがある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があるので好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。上述した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。すなわち、本発明の製造方法では、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となる。これにより、シャープな粒度分布が得られると共に、収率の向上が達成される。
また、均一な合一を進める上では、合一時の攪拌条件が重要であり、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼などが用いられている。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような低回転であっても均一混合性に優れた大型翼を用いることが好ましい。均一な合一体を生成させるための攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアでの攪拌がより好ましい。特に、0.2〜6m/sとすることが好ましい。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、微粒子が残存するため好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり粗大粒子が発生する傾向となるので好ましくない。上述した条件であれば、微粒子同士の衝突のみにより合一が進行し、合一体が再び解離、分散することがない。特に、合一法では微小粒子から優先的に合一が進行するため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。すなわち、第1工程ではデスパー等の高速攪拌機により工程A及び工程Bを行うことが好ましく、第二工程ではマックスブレンド翼等の低速で均一混合可能な大型翼が好適となるため、第1工程で得られた着色剤含有樹脂粒子の縣濁液を、大型翼付属の別の容器に移送して第二工程を実施することが好ましい。
また、使用する分散安定剤の量は、例えば固形分含有量に対し、0.1〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%であることがより好ましく、0.3〜1.5質量%であることが特に好ましい。これは、0.1質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られないためである。また、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるためである。
また、使用する電解質の量は、固形分含有量に対し、0.5〜15質量%が好ましく、1〜12質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが特に好ましい。これは、電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないためである。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるためである。また、電解質濃度が高いと、特に合一初期の塩析による溶解したポリエステル樹脂の析出時に凝集物が発生しやすいため好ましくない。一方、電解質濃度が低いと、塩析や合一させるために多量の電解質が必要となるため好ましくない。1バッチあたりの収量を改善するためには、電解質濃度を2段に分割することが好ましい。この場合、乳化縣濁液中の全粒子の体積平均粒子径が、最終目標とするトナーの平均粒子径の40%〜60%となった時点で電解質を追加添加することが好ましい。トナーの体積平均粒子径は1〜13μmであることが好ましいが、例えば、体積平均粒子径が5〜7.5μmのトナーを製造する場合、合一初期における微粒子の粒径が3μmまで成長する段階では、電解質濃度として2〜4%の範囲が好ましい。また、粒径が3μmを超えてさらに成長させる場合には4%を越えて6%の範囲の濃度が好ましい。粒径が3μm以下と小さい場合には、系中の粒子濃度が高い(比表面積が大きいため)ため、滴下した電解質近傍での凝集が発生しやすいためと考えられる。成長段階に応じて、電解質濃度を変更し分割添加することで、凝集物の発生を防止でき、かつ、固形分含有量に対する電解質水溶液の添加量を削減することができる。
また、電解質を添加する際は、電解質を均一にすばやく系内に混合するため、攪拌速度を上げることが好ましい。電解質水溶液の滴下による凝集物の発生を抑えることができるため、好ましい。また、合一時の温度は、10〜50℃が好ましく、20〜40℃であることがより好ましく、20〜35℃であることが特に好ましい。これは、温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるためである。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるためである。本発明の製造方法では、例えば、20〜40℃といった低温の条件で、合一による合一粒子の生成が可能である。
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤などがトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤などがトナー粒子に内包されたトナー構造とすることが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常離型剤など)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤などの含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤や離型剤などの比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
上記の製造方法により製造されるトナー粒子は、着色剤や離型剤などがポリエステル樹脂に内包されていることが特徴である。トナー粒子表面に着色剤や離型剤などが露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウムなどで染色し、TEMで観察することで、着色剤や離型剤などが粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
工程Cで得られる合一粒子の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。なお、この平均円形度は、最終的に得られたトナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、画像解析装置(ルーゼックスAP 株式会社ニレコ製)などで計算することで求められるが、シスメックス(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られるため、本明細書ではこの装置で測定した値を平均円形度としている。
トナー粒子の形状は、少なくとの1個以上の球面を有し、更には複数個の球面から構成されることが好ましく、平均円形度としては0.95以上であることが好まく、0.96以上であることがより好ましい。特に、0.97以上であることがもっとも好ましい。これは、平均円形度を0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。特に、粒径が小さくなるにつれ、球形と不定形では、粉体流動性、転写効率、トナー消費量の面での差は大きくなる。次に、目標粒径まで成長した合一粒子は、合一粒子を含む水性媒体中に、水を添加して合一を停止させた後、該合一粒子を含む水性媒体中から使用した疎水性有機溶剤を除去する(工程D)。
合一は着色樹脂溶液の微粒子(a)が疎水性有機溶剤により膨潤し、専断力により衝突することで粒子同士が融着することで粒子が成長していく。そのため、水を添加し、粒子内から疎水性有機溶剤を抽出することで膨潤が抑えられ粒子が堅くなる。その結果、合一が停止すると推定する。また、水を添加して合一を停止させるタイミングとしては、時間に対する粒子成長曲線から目標粒径に到達する時間を推定し水を添加する。工程Cでは、攪拌時間と共に合一粒子は初期のサブミクロン粒子から目標とされる1〜13ミクロンの目標粒径まで成長する。すなわち、粒子成長は、一定条件下ではほぼ一定の成長速度を保持するため、時間と粒径からプロットされた粒子成長曲線を作成することで表すことができる。その結果、その曲線より目標粒径の到達時間を推定することができるわけである。本製法では、粒径に依存せず、粒径制御を確度高く行うことができるため好ましい。
また、攪拌速度を合一時の速度よりも上げることでも合一を停止できる。しかしながら、脱溶剤時の発泡が促進されるため、水を添加することで合一を停止させることが好ましい。合一を停止する際の水の量は、工程Aにおける疎水性有機溶剤量と関連し、より高固形分の状態で合一粒子を形成することで、本工程での停止水量を削減できる。これは、固形分に対する疎水性溶剤量が少ないほど、粒子内に取り込まれる疎水性有機溶剤量が少なくなるためで、より少量の水で膨潤を抑え、合一を停止できるからと考えられる。合一停止水を添加した段階での固形分含有量は、20〜30%が必要である。これは、(1)工程Aにおける疎水性有機溶剤量の削減、(2)工程Bにおける縣濁液を得るのに必要な水量の削減、(3)工程Cにおける電解質水溶液量の削減、と(4)工程Dにおける合一停止水の削減の総和により達成される。20%よりも固形分含有量が少ないと、1バッチ当たりの収量としては効率が悪く、生産性の面で好ましくない。30%よりも固形分含有量が高いと、生産性の面では効率的であるが、各工程での分散不良や、凝集物の発生、脱溶剤時の凝集が発生する可能性が高くなるため好ましくない。工程Cで得られた合一粒子は、水性媒体中と共に有機溶剤を内包し、膨潤しているため高温条件下では凝集しやすい。そのため、脱溶剤を低温条件下で、速やかに行うためには減圧下で行うことが好ましい。脱溶剤に当たっては消泡剤の添加が好ましい。消泡剤としてはシリコーン系のエマルジョン形態のものが好ましい。シリコーン系の消泡剤としては、BY22−517、SH5503、SM5572F、BY28−503(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、KM75、KM89、KM98、KS604、KS538(信越化学工業株式会社製)等がある。中でも、物性への影響が少なく、消泡効果の高いものとしてBY22−517が好ましい。
消泡剤量としては固形分に対し30〜100ppmが好ましい。しかしながら、消泡剤を添加しても固形分含有量が20%よりも少ない場合には、脱溶剤時、特に疎水性有機溶剤が90%以上留去された水性媒体においては発泡が生じやすく、脱溶剤の効率が低下するため好ましくない。収量が30%よりも高いと、釜内面への合一粒子の飛散、あるいは凝集体が付着しやすくなり収率を低下させるため好ましくない。固形分含有量が高い場合に発泡が抑制される理由は明確ではないが、発泡の程度は固形分含有量に依存する。
次に、第3工程について説明する。脱溶剤後の合一粒子を水性媒体から分離し、洗浄、脱水する(工程E)。水性媒体からの分離は、遠心分離機、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルターなどの公知慣用の手段で行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。ここで、工程Cにおいて分散安定剤を用いている場合、より十分に洗浄することが好ましい。
上記工程により得られた含水合一粒子は、引き続き乾燥して、粉体とする(工程F)。乾燥は、リボコーン型乾燥機(大河原製作所)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン)等の混合真空乾燥機で乾燥される。工程Aにおいて疎水性有機溶剤量を減少させることで、粒子内に内包される疎水性有機溶剤量も減少するため、工程Eにおける乾燥工程で、残存する疎水性有機溶剤の除去も効率的に行うことができる。
トナーの粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型(アパーチャーチューブ径:100μm)による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましい。これは、1.25以下であると良好な画像が得られやすくなるためである。また、GSD(幾何標準偏差)は1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。また、このようなシャープな粒度分布を有することで、工程Eにおける含水率が低減できると共に、乾燥効率を改善することができるため、好ましい。
トナーの体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μmとなる範囲が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現されるからである。
本発明で使用するポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物であることが好ましく、以下の原料の中から選択される化合物を反応させることによって得られる。
架橋型ポリエステルは、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価のアルコールと、架橋剤として多価化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。特に、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価の脂肪族多価アルコールと、架橋剤として多価エポキシ化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。
また、直鎖型ポリエステル樹脂は、2価の多塩基酸類と、2価のアルコールとを反応させることによって製造する。特に、2価の多塩基酸類と、2価の脂肪族アルコールとを反応させることによって製造することが好ましい。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とを製造する際に使用する酸成分としては、以下の2価の塩基酸類を使用することができる。例えば、2価の塩基酸化合物としては、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸またはその誘導体またはそのエステル化物が挙げられる。
また、2価の脂肪族アルコール成分としては、以下のアルコール類を使用することができる。2価の脂肪族アルコールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオールなどのジオールが挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とにおいて、脂肪族アルコールを用いることにより、ワックス類との相溶性が良好となり、耐オフセット性が改良され、好ましい。また、ポリエステル主鎖を軟質化することにより低温での定着性が改善される。
架橋型のポリエステル樹脂を製造する際には、さらに架橋剤として多価エポキシ化合物を使用する。そのような化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物などが挙げられる。上記の化合物の中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルがより好適に用いられる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050などが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン830、エピクロン520などが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−660,N−665,N−667,N−670,N−673,N−680,N−690,N−695などが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の例としては大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−740,N−770,N−775,N−865などが挙げられる。エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体としてはグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体が挙げられる。
また、上述したエポキシ化合物は2種以上併用して用いることもでき、さらに、樹脂の変性剤として、以下に記載するモノエポキシ化合物を併せて用いることもできる。同時に使用することができるモノエポキシ化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルなどが挙げられる。
これらのモノエポキシ化合物を併用することにより定着性、高温での耐オフセット性が向上する。これらの中でも、特にアルキルグリシジルエステルがより好適に用いられる。具体的な例としてはネオデカン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェルジャパン製が挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とは、上述した原料成分を用いて、例えば触媒の存在下で脱水縮合反応あるいはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸などを適宜使用することができる。
本発明で使用する架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との使用比率は、(架橋型ポリエステル樹脂の質量)/(直鎖型ポリエステル樹脂の質量)=5/95〜60/40が好ましく、10/90〜40/60であることがより好ましく、20/80〜40/60であることが特に好ましい。架橋型ポリエステル樹脂の比率が5質量%よりも少ないと、耐ホットオフセット性が低下するので好ましくない。また、合一速度が低下し、ワックスや着色剤などの分散性が低下するので好ましくない。また、60質量%よりも多いと、溶融粘度(T1/2温度)が上昇し、低温定着性が低下するので好ましくない。
架橋型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60〜85℃であることが好ましく、60〜75℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が55℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が85℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
直鎖型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜70℃であることが好ましく、50〜65℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が40℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が70℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
また、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、160℃以上となっていることが好ましく、中でも、160℃〜220℃であることが好ましい。ここで、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、170℃〜200℃であることがより好ましく、170℃〜190℃であることが特に好ましい。これは、軟化点が160℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、220℃を越える場合は、定着性が悪化しやすくなるためである。
また、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上となっていることが好ましく、中でも、90℃〜130℃であることが好ましい。ここで、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃〜120℃であることがより好ましく、90℃〜110℃であることが特に好ましい。これは、架橋型ポリエステル樹脂と同様に、軟化点が90℃未満の場合は、ガラス転移温度が低下してしまい、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、130℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
また、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物の軟化点は、100℃〜150℃となっていることが好ましい。ここで、混合物の軟化点は、110℃〜150℃であることがより好ましく、120℃〜140℃であることが特に好ましい。これは、上述と同様に、軟化点が100℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、150℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
ポリエステル樹脂の軟化点は、定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスタでの測定条件は、ピストン断面積1cm 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gの条件で行った。
本発明の製造方法では、離型剤を用いることができる。その場合に離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックス類の中から選択した離型剤が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類が好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、WEP−5(日本油脂社製)が好適に用いられる。離型剤の含有量は、1質量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40質量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40質量%の範囲内が好ましい。
また、帯電制御剤を用いることができる。正帯電性帯電制御剤としては、特に限定はなく、トナー用として公知慣用のニグロシン化合物、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物などが使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性帯電制御剤としてニグロシン染料と併用できる。また、用途によっては、アゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負帯電制御剤を少量併用することも可能である。負帯電性帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックスなどの重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/またはスルホニル基を含有する樹脂などが挙げられる。
帯電制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。
着色剤については、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。黒色系着色剤としては、カーボンブラック、C.I.Pigment Black 11などの鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12などの鉄−チタン複合酸化物系顔料が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
また、青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63などが挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,15,16,60が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 17,74,93,97,110,155及び180が挙げられ、より好ましくはC.I.Pigment Yellow 74,93,97,180が挙げられ、特に、C.I.Pigment Yellow 93,97,180が好ましい。
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,53:1,57:1,122及び209が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122及び209が挙げられる。
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜18質量%であることがさらに好ましく、2〜15質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
乾燥させたトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。疎水性シリカ、酸化チタンなどの無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性などの物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイル、あるいはシランカップリング剤で処理された疎水性シリカなどが好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイルなどで処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、二成分静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形など、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂などが使用できる。
これらの中でも、特にシリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度などに優れ、より好適に使用できる。また、トナー粒子とキャリアとからなる現像剤の帯電特性は、シリコンなどのコート剤のコート量の調整、帯電制御剤の添加、カーボンに代表される導電物質の添加などにより調整できる。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであり、場合により、コート剤中に帯電制御剤、カーボンなどを添加して帯電特性を調整することが好ましい。
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、含有溶剤量が少なく、乾燥時の融着による粗大粒子がないため、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置などに使用して、高品質の画像を得ることができる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置などを用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量などを調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンタなどにも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルムなどの転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。最初にトナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。
<架橋型ポリエステル樹脂の合成例>
(樹脂合成例1)
テレフタル酸 221 質量部
イソフタル酸 95 質量部
ネオペンチルグリコール 104 質量部
エチレングリコール 62 質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
エピクロン830 7.0質量部
カージュラE 3.0質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、該軟化点が160℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価11.0、DSC測定法によるガラス転移温度64℃、フローテスターによる軟化点(T1/2)が175℃であった。以下R−1と略記する。
*エピクロン830:大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールF型エポキシ樹脂
エポキシ当量170(g/eq)
*カージュラE(シェルジャパン製アルキルグリシジルエステル)
エポキシ当量250(g/eq)
<直鎖型ポリエステル樹脂の合成例>
(樹脂合成例2)
テレフタル酸 315質量部
ネオペンチルグリコール 21質量部
エチレングリコール 12質量部
プロピレングリコール 122質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が100℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0、DSC測定法によるガラス転移温度57℃、フローテスターによる軟化点(T1/2)が102℃であった。以下、R−2と略記する。
(離型剤マスター分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)30部と直鎖型ポリエステル樹脂(R−2)70部とメチルエチルケトン150部とをデスパーで予備混合した後、スターミルLMZ-10(アシザワファインテック社製)で微細化を行い、固形分含有量40質量%の離型剤微分散液W―1を調製した。ワックスマスター溶液の組成は、R−2/ワックス/メチルエチルケトン=28/12/60である。
(着色剤マスターチップの調製例)
シアン顔料(大日本インキ化学工業(株)社製シアン顔料「Ket-111」)を2000質量部と直鎖型ポリエステル樹脂(R−2)を2000質量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、698rpmで2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物を、ニーデックスMOS140-800(オープンロール連続押し出し混練機)(三井鉱山(株)社製)を用いて、溶融混練し、マスターチップを作製した。同様に、マゼンタ顔料(クラリアントジャパン(株)社製マゼンタ顔料「パーマネントルビンF6B」)、イエロー顔料(クラリアントジャパン(株)社製イエロー顔料「トナーイエローHG」についてマスターチップを作製した。また、得られたマスターチップをR−2の樹脂及びMEKで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子がなく、均一に微分散していた。各顔料のマスターチップの組成は、Cyan:顔料/樹脂(R−2)=50/50、Magenta:顔料/樹脂(R−2)=50/50、Yellow:顔料/樹脂(R−2)=55/45であった。以下、CyanマスターチップをP-1C、MagentaマスターチップをP-2M、YellowマスターチップをP-3Yと略記する。
(ミルベースの調製例)
上記離型剤分散液、着色剤マスターチップ、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンを、固形分含有量が65%、温度条件が40〜45℃の範囲でデスパー(アサダ鉄工所(株)高速攪拌機、翼径9インチ)の777rpmにより2時間の間混合し、溶解・分散を行った。得られた混合物は、固形分含有量を65%に再調整してミルベースMB−3とした(工程A)。作製したミルベースの配合を表1に示す。
Figure 2007114474
( )内はR−2樹脂量
(実施例1)
攪拌翼として翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所製高速分散機)を有する円筒型の容器にミルベースMB−3を46.15部(固形分30部)を仕込み、次いで1規定アンモニア水4部(塩基性化合物I)を加えて、777回転にて十分に攪拌した後、温度を35℃に調製した。ついで、攪拌速度を1100回転に変更して34部の脱イオン水を1.0部/minで滴下して縣濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加して行くにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ、攪拌混合は均一であった。脱イオン水を26部添加した段階で粘度の急激な低下が観察された(転相点)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった(工程B)。顔料、ワックスの微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777回転に落とし、残りの1規定アンモニア水1部(塩基性化合物II)とアニオン性乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)0.22部を脱イオン水3.25部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。この時、系内の状態は均一であり、添加した事による粗大粒子の発生は見られなかった。
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85回転に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120回転に調整し、3.5%の硫酸ナトリウム水溶液(一段目の電解質)12部を、1Kg/minで滴下し、滴下終了後、回転数を47rpmに調整し、粒径が3.5μmになるまで攪拌を継続した。粒径が3.5μmになった時点で脱イオン水を5部添加し、引き続き、回転数を85回転に調整し、濃度を5.0%に変更した硫酸ナトリウム水溶液(二段目の電解質)を1Kg/minで4.0部滴下し、滴下終了後攪拌を47回転に変更して攪拌を継続した。電解質の滴下操作を更にもう一回、同様の条件で行い、粒径が7.9μmに成長するまで攪拌を継続した。このときの攪拌翼の周速は0.47m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は2.7%であった。(工程C)。その後、脱イオン水を10部添加して合一停止を行い、消泡剤BY22−517(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を0.068部添加後、回収量が30Kgとなるまで減圧下、メチルエチルケトン及び水を留去した(工程D)。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た(工程E)。該ウエットケーキの含水率は33%であった。その後、混合真空乾燥機により乾燥を行い、トナー母粒子とした(工程F)。基本的には同様の操作を行い、各実施例、比較例を実施した。各実施例、比較例の合成条件、評価結果を表2及び3に示した。なお、上記性状は下記評価装置にて測定を行った。
<粒子パラメーター測定>
1)粒径、粒度分布測定
乾燥後の母トナーを、界面活性剤を含む水の中に懸濁させることにより試料を作製する。次いで100μmのアパーチャーチューブを用いたコールターカウンターマルチサイザーTAIIにより該母トナーの粒径、粒度分布を測定した。粗大粒子については、12.7μm以上の粗大粒子体積割合が、0.5%未満を○、0.5%以上0.8%未満を△、0.8%以上を×とした。
2)平均円形度の測定
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求める。フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
まず、乾燥後の母トナーの少量を界面活性剤を含む水の中に懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製)0.1gを添加し、更に試料である母トナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
<含水率>
試料約0.5gを精秤し、140℃―40min加熱乾燥し、デシケーター中で冷却した後再度精秤し、加熱減分から含水率を算出した。
<脱溶剤時間指数>
実施例1における脱溶剤時間を基準に各実施例、比較例における所要時間を比率で示した。数値が高いほど脱溶剤時間がかかり、効率が悪いことを示す。脱溶剤の終点は、回収溶剤量が30部となった時点とした。
<縣濁液の状態観察>
縣濁液を400倍の光学顕微鏡で観察し、異物等の粗大粒子の有無を観察した。粗大粒子を含まないものを○、視野を変えることで粗大粒子が確認されるものを△、粗大粒子がどの視野においても確認されるものを×とした。
Figure 2007114474
注1)全水量には、塩基性化合物、分散安定剤水溶液量(固形分除く)を含める。また、この時の溶剤含有比率=全有機溶剤量/(全有機溶剤量+全水量)×100は27.5に設定。
注2)全水量には、塩基性化合物、分散剤水溶液量、電解質水溶液量を含める
注3)収量=ミルベース固形分含有量/(ミルベース固形分含有量+疎水性有機溶剤量+全水量)×100(%)
Figure 2007114474
注1)全水量には、塩基性化合物、分散安定剤水溶液量(固形分除く)を含める。また、この時の溶剤含有比率=全有機溶剤量/(全有機溶剤量+全水量)×100は27.5±0.2に設定した。
注2)全水量には、塩基性化合物、分散剤水溶液量、電解質水溶液量を含める
注3)収量=ミルベース固形分含有量/(ミルベース固形分含有量+疎水性有機溶剤量+全水量)×100(%)
注4)()内はカルボキシル基に対する当量
Figure 2007114474
表3の比較例1に対し、表2における各実施例は、工程Aの着色樹脂溶液(ミルベース)の固形分含有量を上げることにより、工程Bにおける全水量を大幅に削減できること、また、工程Bにおける塩基性化合物の量を適正範囲に調整することで、粘度上昇を抑え、転相点から滴下終了までの水量を十分確保できるため、未乳化物等の発生を防止することができる。また、工程Dにおける停止水量も大幅に削減できることから、疎水性有機溶剤量と全水量の削減により、収量を大幅に改善できることがわかる。また、得られた合一体は、適正な塩基性化合物(I+II)を添加できるため、粗大粒子のない、粒度分布のシャープな高品質の粒子を得ることができる。また、脱溶剤工程においても、溶剤量が少ない点と相まって、脱溶剤後半の発泡が見られず、効率的に溶剤と水を除去することができる。比較例2〜4において、塩基性化合物の添加方法、量が適正でない場合には工程B及び工程Cにおいて粗大粒子等の異物が発生し品質面に大きな影響を及ぼす。また、工程Aにおける固形分含有量が高すぎると、工程B、工程Cにおいて粗大粒子抑制が困難となるため、品質面の確保が難しくなることがわかる。


Claims (3)

  1. カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と着色剤とを、疎水性有機溶剤中に溶解あるいは分散させて、固形分含有量が60〜75%の着色樹脂溶液を製造する工程A、
    次いで、塩基性化合物(I)の存在下で該着色樹脂溶液と水性媒体とを混合することにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液が乳化又は懸濁した乳化懸濁液を製造し、その後、更に塩基性化合物(II)を添加する工程B、
    該乳化縣濁液中に、分散安定剤の存在下で、電解質を添加することで該着色樹脂溶液の微粒子を形成し、更に該微粒子を合一させることにより合一粒子を製造する工程C、
    該乳化縣濁液中に、固形分含有量が20〜30%となるように水性媒体を追加することで合一を停止させ、引き続き疎水性有機溶剤を除去する工程D、
    該合一粒子を該水性媒体中から分離し、洗浄する工程E、
    次いで該合一粒子を乾燥する工程F
    を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 前記塩基性化合物(I)の使用量が、前記ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の全量に対して0.6〜0.8当量であり、前記塩基性化合物(II)の添加量が、前記ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の全量に対して0.2〜2.1当量である請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記工程Cにおける該乳化縣濁液中の全粒子の体積平均粒子径が、最終目標とするトナーの平均粒子径の40%〜60%となった時点で電解質を追加添加する請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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