JP4415833B2 - 静電荷像現像用カラートナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用カラートナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば複写機、プリンタ、ファックスなどに好適に用いられる静電荷像現像用カラートナーの製造方法に関する。
近年、複写機、プリンタなどをカラー化する傾向が年々増加している。また同時に、高解像、高階調の高画像品質の要求から、トナーの小粒径化及び分布のシャープ化による均一性向上が求められている。このような状況下でトナーの製造方法においても、従来の粉砕法からいわゆる「ケミカルトナー」と呼ばれる乳化分散法や重合法などの湿式法による各種トナーの製造方法が注目されている。これらの中でも、乳化分散法は、トナーの小粒径化や球形化が容易であることに加え、重合法と比較してバインダ樹脂の種類の選択幅が広くなり、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの縮合系樹脂を主結着樹脂として利用できる点や、残留モノマーの低減が容易であって有害性VOC(揮発性有機化合物)の低減化に有利である点などの利点を有している。
乳化分散法を用いたトナーの製造方法としては、例えば、着色剤とアニオン型自己水分散性樹脂となるポリエステル樹脂とを有機溶剤中に分散させ、転相乳化することによりトナー粒子を得るトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、着色剤とポリエステル樹脂とを有機溶剤中に分散させ、転相乳化を行い、ついで合一工程を行うことにより粒度分布がシャープなトナーを高収率で得られるトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、カラートナーにおいては、上述した特性に加えて、着色力が高く、色調が鮮明で透過性に優れていることが求められているが、基本的には着色剤の分散具合が重要である。近年の小粒径化に伴い、着色剤の添加量も増加する傾向にあり、着色剤の分散についてはさらなる微分散が求められている。
ところが、上述した特許文献1及び特許文献2において提案されたトナーの製造方法では、着色剤と結着樹脂の一部とを湿式によるメディア分散により微分散した後、希釈樹脂、有機溶剤、その他の添加剤を混合し有機層を調整して水性溶媒中に粒子を形成させているが、着色剤の種類あるいは添加量により粒度分布が劣化してしまうという問題を有している。湿式によるメディア分散では、着色剤の微細化に関してはメディアによる着色剤が破砕されるため、例えば小粒径のメディアを使用することにより達成できるが、細かく破砕された着色剤は樹脂のぬれ性(樹脂の吸着量)が不足するため、凝集性が高く、水性媒体へ移行する際に凝集を生じやすく、粒子内の分散性あるいは水性媒体中での粒子形成性に悪影響を及ぼすと考えられている。
また、上述した特許文献1及び特許文献2には、湿式によるメディア分散の代わりにニーダやエクストルーダを使用した溶融混練法による着色剤の分散方法が提案されている。着色剤の湿式分散に比べて溶融混練法による着色剤の分散では、着色剤に対する樹脂のぬれ性が本質的に改善されるが、着色剤の分散状態が不十分となるため、カラートナーとしても着色力や透過性が劣るという問題がある。
また、従来の着色剤分散に用いられる混練機として二本ロールや三本ロールを用いた混練方法があるが、これらの混練機は回分操作であり、種々の混練条件、すなわち混練温度やロール回転数、クリアランス、回転比、パス回数などの条件を微妙に変化させると共に、必要に応じて溶剤を使用することで混練物の粘度を調整する必要があり、作業員がつききりで制御する必要がある。すなわち、混練物中の着色剤の分散状態を均一に制御するためには非常に熟練を要する製造技術が要求され、生産性や品質面、さらには安全性の面においても好適な製造方法といえない。
また、加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機を用いて、着色剤と結着樹脂の一部とを溶融混練するトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3から6参照)。このトナーの製造方法では、ニーダやエクストルーダを用いて溶融混練した場合と比較して、カラートナーとして使用するために十分な顔料分散性を確保できると共に、二本ロールや三本ロールと異なり、簡便な操作で生産性よく混練を行うことができる。
このトナーの製造方法は、ヘンシェルミキサのような高速攪拌型混合装置を用いて調整された、トナー中に含有されている着色剤の含有率以上の着色剤を含有した混合物を、オープンロール型連続混練機を用いて溶融混練後、希釈樹脂やその他の添加剤を希釈混合した後、ニーダやエクストルーダのような混練機を用いてカラートナー混練物を得ている。さらに、必要に応じて粗粉砕後、ジェットミルなどの微粉砕機、ついで各種分級機を用いてカラートナーを製造している。このトナーの製造方法は、粉砕法に関する製造方法にのみ言及しており、またこの製法における顔料分散性は原料混合工程と混練工程とによって決定される。しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載されている湿式法を用いたケミカルトナーの製造方法では、例えば、得られた溶融分散混練物がいったん有機溶剤に溶解または分散される。そして、有機溶剤に溶解または分散された溶融分散混練物は有機溶媒から水性媒体へと媒体が移行する過程を経て水性媒体中に微分散する懸濁粒子となる。その際、着色剤は、有機溶媒中に分散する状態から水性媒体中に分散する状態へと急激な変化が発生しても、安定した分散状態を保ち、溶融分散された初期の分散状態を維持していなければならない。しかしながら、特許文献3から6では、このようなケミカルトナーの製造方法における、着色剤の分散方法と粒子形成における課題に関してはなんら記載されていない。
特開平8−211655号公報 特開2003−122051号公報 特許第2993624号公報 特許第3010326号公報 特許第3366576号公報 特許第3366577号公報
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、水性媒体中において粒子を形成して得られる静電荷像現像用カラートナーの製造方法において、粒度分布がシャープなカラートナーを高収率で製造するための静電荷像現像用カラートナーの製造方法を提供することを目的とする。また、着色力が高く、色調が鮮明で、透過性に優れた静電荷像現像用カラートナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の静電荷像現像用カラートナーの製造方法は、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含有する混合物を、有機溶剤中に高速攪拌機を用いて溶解または分散させて着色剤含有樹脂液を製造する第一工程と、該着色剤含有樹脂液を水性媒体中に懸濁させて着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する第二工程と、を有する静電荷像現像用カラートナーの製造方法において、前記混合物が、前記結着樹脂と前記着色剤とを、加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機を用いて、溶融混練分散処理することにより得られる溶融混練分散物であり、前記第二工程が、前記着色剤含有樹脂液を塩基性化合物の存在下で前記水性媒体中に懸濁させて、前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する工程であり、前記第二工程の後に、前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液に分散安定剤を添加し、その後電解質を添加することにより、前記微粒子(A)の合一体(B)を製造し、次いで前記有機溶剤を除去する第三工程と、前記合一体(B)を前記水性媒体から分離し、乾燥する第四工程と、を順次行うものであり、前記着色剤含有樹脂液を水性媒体中に懸濁させて前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する工程を、高速攪拌機又は高速分散機を用いて、翼先端速度を10〜25m/sとして行うことを特徴とする。
この発明によれば、加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機を用いて混合物を溶融混練分散したものを用いて有機溶剤に溶解または分散させて着色剤含有樹脂液を製作し、これを水性溶媒中に懸濁させてから着色剤含有樹脂粒子を形成する。
本発明の静電荷像現像用カラートナーの製造方法によれば、水性媒体中で決定される粒度分布に関して、小粒径化に伴う着色剤の添加量の増加や着色剤の種類に依存することなく、高収率で、シャープな粒度分布を有するカラートナーを製造することができる。また、本発明によれば、着色剤が溶融分散された初期の分散状態を、有機溶剤に溶解または分散され、さらに有機溶媒から水性媒体へと媒体が移行する過程を経ても維持することができる。したがって、着色剤含有樹脂液を形成する工程や着色剤含有樹脂粒子を形成する工程を経ても、粒子内の顔料分散性に優れたカラートナーを製造することができる。
以下、本発明にかかる静電荷像現像用カラートナーの製造方法の一実施例を説明する。
本発明による静電荷像現像用カラートナーの製造方法は、以下の第1工程及び第二工程を備えている。
第一工程:原材料としてカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、着色剤を含む混合物とを、有機溶剤中に溶解または分散させて着色剤含有樹脂液を製造する。
第二工程:この着色剤含有樹脂液を、塩基性化合物の存在下で水と混合させることにより、着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する。なお、着色剤含有微粒子(A)は、
(1)着色剤とポリエステル樹脂が溶解または分散した有機溶剤の微粒子、
(2)着色剤の微粒子に水性媒体中に溶解したポリエステル樹脂が付着した状態の乳化型の微粒子、
または、
(3)着色剤の微粒子に有機溶剤により膨潤したポリエステル樹脂のミクロエマルジョンが付着した乳化型の微粒子
の形態のいずれかの微粒子、またはそれらの形態の混合微粒子であっても良い。
後記の合一法によりトナーを製造する場合は、上記(2)または(3)の状態である着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造することが好ましい。
まず、第一工程について詳しく説明する。第一工程では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、着色剤を含む混合物とを投入して溶解または分散させることで、着色剤含有樹脂液を調整する。ここで、混合物は、結着樹脂と着色剤とを加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機を用いた溶融混練によって微分散された溶融分散混練物である。なお、必要に応じて、離型剤や他の添加剤を混合物と共に用いることができるが、いずれにおいてもトナー粒径以下に微分散または溶解される必要がある。
溶融分散混練物は、以下のようにして形成される。
まず、ポリエステル樹脂と着色剤と必要に応じて添加された離型剤などを含む混練物を、図1に示すオープンロール型連続混練機1を用いて、使用する樹脂の軟化点以上かつ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。
ここで、オープンロール型連続混練機1は、円筒形状を有する一対のロール状回転軸であるフロントロール11及びリアロール12と、フロント及びリアロール11、12の一端に設けられて原料を供給する原料供給部13と、フロント及びリアロール11、12の他端に設けられて溶融分散混練物を排出する混練物排出部14とを備えている。
フロント及びリアロール11、12は、それぞれその表面に螺旋形状を有する複数の溝が形成され、互いに内側方向に回転するように構成されている。そして、フロント及びリアロール11、12が回転することによってスクリュー効果が発生し、前記の螺旋形状を有する複数の溝が原料を原料供給部13から混練物排出部14に向かって押し出す。その結果、原料供給部13から供給された原料は圧縮、剪断しながら溶融、混練されて混練物排出部14側の他端に移送される。
また、フロント及びリアロール11、12の内部は中空状となっており、この中空部に温水や蒸気などの熱媒体や、冷却水などの冷媒を供給することによってフロント及びリアロール11、12の表面温度を適宜に制御することができるように構成されている。なお、フロント及びリアロール11、12の内部に形成されている中空部は、フロント及びリアロール11、12それぞれのほぼ中央に設けられた図示しない仕切りによって、この仕切りを境界として原料供給部13側の一端側と混練物排出部14側の他端側とで異なる熱媒体または冷媒を供給することができるように構成されている。
そして、本発明において、フロントロール11の回転数は、リアロール12の回転数よりも多くなるように制御されており、また、フロントロール11の表面温度は、原料供給部13側の一端の温度で例えば110℃となっており、他端に向かうにしたがって漸次低下して混練物排出部14側の他端で例えば88℃となるように調整されている。これは、供給された原料が圧縮及び剪断されて発熱することによる粘度低下を抑制して効率的な圧縮及び剪断が行われるようにするためである。また、このようにすることで、供給された原料をフロントロール11に付着させた状態で混練物排出部14側の他端に移送することができる。
原料供給部13は、例えばスクリューフィーダなどによって原料が定量的に供給されるように構成されている。
また、混練物排出部14は、フロントロール11に付着している溶融分散混練物を回収するペレタライザを備えており、フロントロール11に押しつけることによって混練チップを形成する。
このように構成されたオープンロール型連続混練機1において、原料供給部13に供給された造粒物は、フロント及びリアロール11、12の表面温度によって加熱されると同時に、フロント及びリアロール11、12の間の間隙部で急激な圧縮力及び剪断力が与えられ、発熱しながら溶融し、フロント及びリアロール11、12の間で繰り返し圧縮剪断を受けて混練されながら、溶融分散混練物となる。そして、混練物排出部14で混練チップとして排出される。なお、フロントロール11の回転数(F)とリアロール12の回転数(R)とはF>Rであることが好ましく、回転比(R/F)は0.6〜0.9であることが好ましい。このような条件であると、フロントロール11に混練物が巻き付き、リアロール12には混練物は巻き付かず、原料の移送及び混練物排出部14における回収が容易である。
なお、オープンロール型連続混練機1を用いて溶融分散混練物を製造する場合、トナーを製造するための結着樹脂の一部を用いて、製造後のトナー中に含有する着色剤の含有比率より高い濃度で溶融分散混練物を製造し、その後、着色剤を含有しない樹脂と該溶融分散混練物を混合してトナーを製造する、いわゆるマスターバッチ方式の製造方法を用いることが好ましい。さらに、結着樹脂として、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂を併用する場合においては、直鎖型ポリエステル樹脂の少なくとも一部に、製造後のトナー中に含有される着色剤の含有比率よりも高い含有比率で、着色剤をあらかじめ溶融混練分散処理することが好ましい。架橋型樹脂をマスターバッチ用の樹脂として用いると、オープンロール型連続混練機1において着色剤と混練する際に、架橋部分の切断などにより分子量の低下が起こり、目的とする熱特性が得られにくくなる。直鎖型樹脂をマスターバッチ用の樹脂として用いた場合には、そのようなことが起こりにくく、好ましい。
このようにして形成された溶融分散混練物のチップをデスパなどの高速攪拌機により有機溶剤中に溶解または分散して、着色剤含有樹脂液を調製する(第一工程)。この場合、離型剤のような添加剤などはあらかじめ別々に予備分散を行ってマスター混練チップを調整した後に混合しても良い。第一工程においては、デスパ(アサダ鉄工株式会社)、ホモミクサ(特殊機化工業株式会社)などの高速攪拌機が使用できる。この時の翼先端速度は4〜30m/sであることが好ましく、10〜25m/sであることが特に好ましい。上記高速攪拌機を用いることで、結着樹脂の有機溶剤への溶解を効率よく行えると共に、該溶融分散混練物に含まれる着色剤の結着樹脂溶液中での均一微分散を達成できる。すなわち、あらかじめ微分散された着色剤の状態を高速攪拌することで、結着樹脂溶液中においても保持することができる。翼先端速度が4m/sより低いと、結着樹脂溶液中での着色剤の微分散が不十分となり好ましくない。一方、30m/sより高いと、専断による発熱が大きくなり、溶剤の揮発と相まって均一攪拌が困難となるため好ましくない。
溶融分散混練物のチップをデスパなどの高速攪拌機により有機溶剤中に溶解または分散する際に使用することができる有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのような炭化水素類や、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、などが用いられる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、ポリエステル樹脂を溶解または分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後の工程で脱溶剤しやすいために低沸点のものが好ましい。ここで、ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤としては、溶解、分散性に優れている、メチルエチルケトン、酢酸エチルを用いている。特にメチルエチルケトンを用いることがもっとも好ましい。
次に、第二工程について説明する。上記で得られた着色剤含有樹脂液を、水性媒体、好ましくは塩基性化合物である塩基性中和剤の存在下で水と混合して懸濁または溶解し、着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する。ここで、塩基性化合物の塩基によってポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和した着色剤含有樹脂液に水を徐々に添加することが好ましい。水を滴下終了した後の水と有機溶剤の比率は50:50〜80:20が好ましく60:40〜80:20がより好ましい。
本発明で用いるポリエステルは、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂で有る為カルボキシル基を中和することにより水中で容易に分散する(以下、自己水分散性という)、または水溶性となる樹脂である。また、自己水分散性または水溶性のポリエステル樹脂の酸価は、1〜30KOHmg/gが好ましく、3〜20KOHmg/gであることがより好ましい。
これは、ポリエステル樹脂の酸価が1未満であると、ポリエステル樹脂と有機溶剤とが水と均一に溶解もしくは混合した水溶液の製造、またはポリエステル樹脂と有機溶剤との微粒子が水中に懸濁した懸濁液の製造がスムーズに行われず、粗大粒子が発生するので好ましくない。
一方、ポリエステル樹脂の酸価が30より大きいと、各種環境下における帯電量が安定しないため好ましくない。酸価が1〜30KOHmg/gであるポリエステル樹脂は、カルボキシル基が塩基性化合物により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加し、分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散または溶解することができる。
中和用の塩基性化合物としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が用いられる。特に、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基が好ましい。ポリエステル樹脂を水中または水が主成分で有機溶剤を含む媒体(水性媒体)中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤などの分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となってしまう。これにより、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになることから好ましくない。また、ゲル分を含有するような架橋型ポリエステル樹脂の場合には、さらに不均一な粒度分布となり、実用上限界がある。したがって、本発明では、自己水分散性または水溶性であるポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基を、塩基性化合物により中和する。
ポリエステル樹脂のカルボキシル基を塩基性化合物の塩基で中和する方法としては、例えば、(1)カルボキシル基を有するポリエステル樹脂、有機顔料、離型剤及び有機溶剤を含有する混合物を製造した後、塩基で中和する方法や、(2)水または水性媒体中にあらかじめ塩基性中和剤を混合しておき、第二工程を行う際に前記混合物に含まれるポリエステル樹脂の酸性基を中和する方法などが挙げられる。
ここで、塩基性化合物の使用量は、ポリエステル樹脂の全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量が好ましく、また、1〜2倍に相当する量であることがより好ましい。このようにポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和するために要する量よりも過剰に添加することにより、異形の粒子が生成するのを防止することができ、トナーの均一性を向上させ、また、合一工程における粒度分布をシャープにすることができる。
第二工程においては、デスパ(アサダ鉄工株式会社)、ホモミクサ(特殊機化工業株式会社)あるいはスラッシャ(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、などの高速攪拌機、あるいは高速分散機が使用できる。この時の翼先端速度は4〜30m/sであることが好ましく、10〜25m/sであることが特に好ましい。上記高速攪拌機、あるいは高速分散機を用いることで、着色剤含有樹脂液の水性媒体中への縣濁液を効率よく得られると共に、該着色剤含有樹脂液に含まれる着色剤の水性媒体中における均一微分散を達成できる。すなわち、あらかじめ第一工程で微分散された着色剤の状態を高速攪拌することで水性媒体中においても保持することができる。翼先端速度が4m/sより低いと、水性媒体中での着色剤の微分散が不十分となり好ましくない。一方、30m/sより高いと、飛散が激しくなり不溶解物が混在する傾向が見られるため好ましくない。また、その時の温度は、特に制限はないが、温度が高いと、転相水量が多くなるため好ましくない。また、低温だとポリエステル樹脂及び有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、第二工程の温度範囲としては10℃〜50℃であることが好ましく、20℃〜45℃であることが特に好ましい。
本発明においては、第二工程の後に、以下の第三工程から第四工程を行うことが好ましい。以下に第三工程について詳しく説明する。第三工程では、上記懸濁液あるいは上記水溶液から微粒子の合一体を製造し、この合一体中の有機溶剤を除去する。合一法では、実質的に第一〜第三工程で粒径、粒度分布が決定される。
合一法では、着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を水で希釈して溶剤量を調整し、その後、分散安定剤を添加する。そして、分散安定剤の存在下で電解質の水溶液を滴下することで合一を進めて合一体を得る。着色剤含有微粒子(A)の懸濁液に電解質を添加することで、微粒子が塩析または不安定化され、さらに複数の微粒子が一体化することによって合一が進行し、合一体を得ることができる。なお、電解質を添加することにより、着色剤含有微粒子(A)同士が合一するばかりでなく、水性媒体中に溶解しているポリエステル樹脂が塩析または不安定化することによりポリエステル樹脂の微粒子が析出し、着色剤含有微粒子(A)の表面または既に合一した着色剤含有微粒子(A)の合一体に付着して、或いは、水性媒体中に溶解しているポリエステル樹脂が塩析または不安定化することにより、直接、着色剤含有微粒子(A)の表面または既に合一した着色剤含有微粒子(A)の合一体に付着することにより、合一が進行し、合一体を得る。
第二工程で得られた着色剤含有微粒子(A)の懸濁液は、着色剤含有微粒子(A)の近傍に存在するポリエステル樹脂のカルボン酸塩による水和作用により水性媒体中で安定して分散している。第三工程では、微粒子が分散している水性媒体中にその水和状態を破壊あるいは減少させる電解質を添加することで、粒子を析出あるいは不安定化させる。ここで用いられる電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウムなどの有機、無機の水溶性の塩なども電解質として有効に用いることができる。これらの電解質は、単独でも、2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウムのような1価のカチオンの硫酸塩、炭酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。ここで得られる合一体は溶剤によって膨潤しており、かつ電解質を添加することによって粒子の水和状態が不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌により粒子同士を衝突させて合一を進行させることが好ましい。高剪断条件下で合一工程を行うと、合一が行われた粒子の分裂と合一が同時に行われるため好ましくない。分裂が起きずに合一のみが進行するような低シェア条件下で合一工程をコントロールすることが好ましい。
ところで、電解質などの添加だけでは、系内の合一体の分散が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生することがある。このように電解質の添加により生成した合一体が不均一な合一を繰り返すことによって目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質を添加する前に、ヒドロキシアパタイトなどの無機分散安定剤やイオン性あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加する必要がある。第三工程において用いられる分散安定剤は、後から添加する電解質の存在下においても分散安定性を保持できる特性が必要である。そのような特性を有する分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど、あるいは各種プルロニック系などのノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型、アルキルスルホン酸塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤などがある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があるので好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。上述した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明の製造方法では、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となる。これにより、シャープな粒度分布が得られると共に、収率の向上が達成される。
また、均一な合一を進める上では、合一時の攪拌条件が重要であり、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼などが用いられている。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼を用いることが好ましい。均一な合一体を生成させるための攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアでの攪拌がより好ましい。特に、0.2〜6m/sとすることが好ましい。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、微粒子が残存するため好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり粗大粒子が発生する傾向となるので好ましくない。上述した条件であれば、微粒子同士の衝突のみにより合一が進行し、合一体が再び解離、分散することがない。特に、合一法では微小粒子から優先的に合一が進行するため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。
合一体を形成する場合には、系中のMEK量を調整することが好ましい。そのため、必要に応じて系中の懸濁液または水溶液を水でさらに希釈することが好ましい。その後、分散安定剤、及び電解質を順次添加して合一を行う。電解質を添加する前の系中に含まれる溶剤量は、12〜45質量%が好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。溶剤量が12質量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなるので好ましくない。また、溶剤量が45質量%よりも多いと不均一な合一による凝集物発生が多くなり、また、分散安定剤の添加量が多くなるので好ましくない。
また、使用する分散安定剤の量は、例えば固形分含有量に対し、0.1〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%であることがより好ましく、0.3〜1.5質量%であることが特に好ましい。これは、0.1質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られないためである。また、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるためである。
また、使用する電解質の量は、固形分含有量に対し、0.5〜15質量%が好ましく、1〜12質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。これは、電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないためである。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるためである。
また、合一時の温度は、10〜50℃が好ましく、20〜40℃であることがより好ましく、20〜35℃であることが特に好ましい。これは、温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるためである。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるためである。本発明の製造方法では、例えば、20〜40℃といった低温の条件で、合一による合一体の生成が可能である。
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤などがトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤などがトナー粒子に内包されたトナー構造とすることが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常離型剤など)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤などの含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤や離型剤などの比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
上記の製造方法により製造されるトナー粒子は、着色剤や離型剤などがポリエステル樹脂に内包されていることが特徴である。トナー粒子表面に着色剤や離型剤などが露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウムなどで染色し、TEMで観察することで、着色剤や離型剤などが粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
第三工程で得られる合一体の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。なお、この平均円形度は、最終的に得られたトナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、画像解析装置(ルーゼックスAP 株式会社ニレコ製)などで計算することで求められるが、シスメックス(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られるため、本明細書ではこの装置で測定した値を平均円形度としている。
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.96以上であることが好まく、0.97以上であることがより好ましい。これは、平均円形度を0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。特に、粒径が小さくなるにつれ、球形と不定形では、粉体流動性、転写効率、トナー消費量の面での差は大きくなる。
次に、合一工程において得られた合一体を含む水性媒体から有機溶剤を除去する。合一工程で得られた合一体は有機溶剤を内包し、膨潤しているため高温条件下では凝集しやすい。そのため、脱溶剤を低温条件下で、速やかに行うためには減圧下で行うことが好ましい。
次に、第四工程について詳しく説明する。第四工程では、第三工程で得られた合一体を水性媒体から分離し、乾燥する。水性媒体からの分離は、遠心分離機、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルターなどの公知慣用の手段で行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。ここで、第三工程において分散安定剤を用いている場合、より十分に洗浄することが好ましい。
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法や、凍結乾燥させる方法などが挙げられる。また、スプレードライヤーなどを用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法を用いることもできる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が効率的であるので好ましい。
トナーの粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型(アパーチャーチューブ径:100μm)による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下が好ましく、1.20以下であることがより好ましい。これは、1.25以下であると良好な画像が得られやすくなるためである。また、GSD(幾何標準偏差)は1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。
トナーの体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μmとなる範囲が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現されるからである。
本発明で使用するポリエステル樹脂は、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物であることが好ましく、以下の原料の中から選択される化合物を反応させることによって得られる。
架橋型ポリエステルは、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価の脂肪族多価アルコールと、架橋剤として多価化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。特に、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価の脂肪族多価アルコールと、架橋剤として多価エポキシ化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。
また、直鎖型ポリエステル樹脂は、2価の多塩基酸類と、2価のアルコールとを反応させることによって製造する。特に、2価の多塩基酸類と、2価の脂肪族アルコールとを反応させることによって製造することが好ましい。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とを製造する際に使用する酸成分としては、以下の2価の塩基酸類を使用することができる。例えば、2価の塩基酸化合物としては、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸またはその誘導体またはそのエステル化物が挙げられる。
また、2価の脂肪族アルコール成分としては、以下のアルコール類を使用することができる。2価の脂肪族アルコールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオールなどのジオールが挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とにおいて、脂肪族アルコールを用いることにより、ワックス類との相溶性が良好となり、耐オフセット性が改良され、好ましい。また、ポリエステル主鎖を軟質化することにより低温での定着性が改善される。
架橋型のポリエステル樹脂を製造する際には、さらに架橋剤として多価エポキシ化合物を使用する。そのような化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物などが挙げられる。上記の化合物の中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルがより好適に用いられる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050などが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン830、エピクロン520などが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−660,N−665,N−667,N−670,N−673,N−680,N−690,N−695などが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の例としては大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−740,N−770,N−775,N−865などが挙げられる。エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体としてはグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体が挙げられる。
また、上述したエポキシ化合物は2種以上併用して用いることもでき、さらに、樹脂の変性剤として、以下に記載するモノエポキシ化合物を併せて用いることもできる。同時に使用することができるモノエポキシ化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルなどが挙げられる。
これらのモノエポキシ化合物を併用することにより定着性、高温での耐オフセット性が向上する。これらの中でも、特にアルキルグリシジルエステルがより好適に用いられる。具体的な例としてはネオデカン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェルジャパン製が挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とは、上述した原料成分を用いて、例えば触媒の存在下で脱水縮合反応あるいはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸などを適宜使用することができる。
本発明で使用する架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との使用比率は、(架橋型ポリエステル樹脂の質量)/(直鎖型ポリエステル樹脂の質量)=5/95〜60/40が好ましく、10/90〜40/60であることがより好ましく、15/85〜30/70であることが特に好ましい。架橋型ポリエステル樹脂の比率が5質量%よりも少ないと、耐ホットオフセット性が低下するので好ましくない。また、合一速度が低下し、ワックスや着色剤などの分散性が低下するので好ましくない。また、60質量%よりも多いと、溶融粘度(T1/2温度)が上昇し、低温定着性が低下するので好ましくない。
架橋型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60〜85℃であることが好ましく、60〜75℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が60℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が85℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
直鎖型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜70℃であることが好ましく、55〜65℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が70℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
また、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、160℃以上となっていることが好ましく、中でも、160℃〜220℃であることが好ましい。ここで、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、170℃〜200℃であることがより好ましく、170℃〜190℃であることが特に好ましい。これは、軟化点が160℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、220℃を越える場合は、定着性が悪化しやすくなるためである。
また、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上となっていることが好ましく、中でも、90℃〜130℃であることが好ましい。ここで、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃〜120℃であることがより好ましく、95℃〜110℃であることが特に好ましい。これは、架橋型ポリエステル樹脂と同様に、軟化点が90℃未満の場合は、ガラス転移温度が低下してしまい、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、130℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
また、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物の軟化点は、100℃〜150℃となっていることが好ましい。ここで、混合物の軟化点は、110℃〜140℃であることがより好ましく、110℃〜135℃であることが特に好ましい。これは、上述と同様に、軟化点が100℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、150℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
ポリエステル樹脂の軟化点は、定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスタでの測定条件は、ピストン断面積1cm 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gの条件で行った。
本発明の製造方法では、離型剤を用いることができる。その場合に離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックス類の中から選択した離型剤が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類が好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、WEP−5(日本油脂社製)が好適に用いられる。離型剤の含有量は、1質量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40質量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40質量%の範囲内が好ましい。
また、帯電制御剤を用いることができる。正帯電性帯電制御剤としては、特に限定はなく、トナー用として公知慣用のニグロシン化合物、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物などが使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性帯電制御剤としてニグロシン染料と併用できる。また、用途によっては、アゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負帯電制御剤を少量併用することも可能である。負帯電性帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックスなどの重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/またはスルホニル基を含有する樹脂などが挙げられる。
帯電制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。
着色剤については、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。例えば、本発明のトナーに使用できる黒の着色剤としては製造方法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、あるいは、C.I.Pigment Black 11などの鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12などの鉄−チタン複合酸化物系顔料が挙げられる。
また、青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63などが挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,15,16,60が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 17,74,93,97,110,155及び180が挙げられ、より好ましくはC.I.Pigment Yellow 74,93,97,180が挙げられ、特に、C.I.Pigment Yellow 93,97,180が好ましい。
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,53:1,57:1,122及び209が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122及び209が挙げられる。
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜18質量%であることがさらに好ましく、2〜15質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
乾燥させたトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。疎水性シリカ、酸化チタンなどの無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性などの物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカなどが好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイルなどで処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、二成分静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形など、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂などが使用できる。
これらの中でも、特にシリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度などに優れ、より好適に使用できる。また、トナー粒子とキャリアとからなる現像剤の帯電特性は、シリコンなどのコート剤のコート量の調整、帯電制御剤の添加、カーボンに代表される導電物質の添加などにより調整できる。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであり、場合により、コート剤中に帯電制御剤、カーボンなどを添加して帯電特性を調整することが好ましい。
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置などに使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置などを用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量などを調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンタなどにも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルムなどの転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例では、特に表示がない限り、「部」は質量部、「水」は脱イオン水の意味である。最初にトナーを調整するに当たって用いたバインダ樹脂の合成例を以下に示す。
<架橋型ポリエステル樹脂>
(樹脂合成例1)
テレフタル酸 252質量部
イソフタル酸 63質量部
プロピレングリコール 122質量部
ネオペンチルグリコール 21質量部
エチレングリコール 12質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
エピクロン830 9.4質量部
カージュラE 9.0質量部
ここで、エピクロン830は、大日本インキ化学工業株式会社製のビスフェノールF型エポキシ樹脂であって、エポキシ当量が170(g/eq)となっている。また、カージュラEは、シェルジャパン製のアルキルグリシジルエステルであって、エポキシ当量が250(g/eq)となっている。
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が160℃に達した時に反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価12.1、DSC測定法によるガラス転移温度74℃、フローテスタによる軟化点(T1/2)が180℃であった。
<直鎖型ポリエステル樹脂>
(樹脂合成例2)
テレフタル酸 189質量部
イソフタル酸 126質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 62質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が104℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価11.2、DSC測定法によるガラス転移温度56℃、フローテスタによる軟化点(T1/2)が106℃であった。
Figure 0004415833
なお、表1において、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、PGはプロピレングリコールを、NPGはネオペンチルグリコールを、EGはエチレングリコールをそれぞれ示している。
(離型剤マスター分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス1号」(加藤洋行輸入品)50部と直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)50部とメチルエチルケトン150部とをデスパーで予備混合した後、スターミルLMZ−10(アシザワファインテック社製)で微細化を行い、固形分含有量40質量%の離型剤微分散液W―1を調製した。
(着色剤マスターの調製例1)
着色顔料と直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)とを有機溶剤(メチルエチルケトン)中に添加し、デスパにてプレ分散を行った後、スターミルLMZ−10(アシザワファインテック社製)で湿式分散を行い、各着色剤のマスター溶液M−1/M−2/M−3を調製した。ここで、各着色剤マスター溶液の配合、分散条件、最終的に得られたマスター溶液の固形含有量を、表2に示す。
また、得られたマスター溶液を合成例2の樹脂及びメチルエチルケトンで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無の観察結果を、同様に表2に示す。なお、表2において、○は粗大粒子がなく、均一に微分散しているもの、△は1〜3μmの粗大粒子が若干残存しているもの、×は5μm以上の粗大粒子が多数残存しているものを示している。
Figure 0004415833
(着色剤マスターの調製例2)
顔料2000部、直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)3000部をST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサ(三井鉱山製)へ投入し、1700rpmで2分間撹拌し混練機投入原料を得た。
次に、表3に示す条件でPCM−30((株)池貝製)にて混練を行い、マスターチップP−1/P−2/P−3を得た。
Figure 0004415833
また、得られた着色剤マスターチップを合成例2の樹脂及びメチルエチルケトンで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無の観察結果を、表4に示す。なお、表4において、○は粗大粒子がなく、均一に微分散しているもの、△は1〜3μmの粗大粒子が若干残存しているもの、×は5μm以上の粗大粒子が多数残存しているものを示している。
Figure 0004415833
(着色剤マスターの調製例3)
顔料2000部、直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)3000部及び所定量の水をST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサ(三井鉱山製)へ投入し、698rpmで2分間撹拌し混練機投入原料を得た。
次に、表5に示す条件でオープンロール型連続混練機1にて混練を行い、マスターチップK−1/K−2/K−3を得た。なお、表5において、混練ゾーン温度設定とは、上段がリアロール12の中空部に流通する水、下段がフロントロール11の中空部に流通する水の温度(実測値)を示しており、矢印は水の流通方向を示している。また、混練ゾーン温度設定の欄において、左側が原料供給部13側、右側が混練物排出部14側となっている。つまり、リアロール12の中空部の水は、原料供給部13側から混練物排出部14側に向かって流通している。
Figure 0004415833
また、得られた着色剤マスターチップを合成例2の樹脂及びメチルエチルケトンで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無の観察結果を、表6に示す。なお、表6において、○は粗大粒子がなく、均一に微分散しているもの、△は1〜3μmの粗大粒子が若干残存しているもの、×は5μm以上の粗大粒子が多数残存しているものを示している。
Figure 0004415833
ここで、表2、表4、表6において使用した着色剤は、以下のとおりである。
シアン:大日本インキ化学工業社製シアン顔料「Ket−111」(Pigment Blue 15:3)
イエロー:チバスペシャリティケミカルズ社製イエロー顔料「Cromophtal Yellow 3G」(Pigment Yellow 93)
マゼンタ:クラリアントジャパン社製マゼンタ顔料「Permanent Rubin F6B」(Pigment Red 184)
(ミルベースの調製)
上述した離型剤分散液、着色剤マスター溶液、あるいは着色剤マスターチップ、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンを、固形分含有量が55%、温度条件が30〜40℃の範囲でデスパの3600rpmにより3時間の間混合し、溶解、分散を行った。得られた混合物は、固形分含有量を55%に再調整してミルベースとした。ここで、作製したミルベースの配合を表7に示す。なお、表7において、MEKはメチルエチルケトンを示している。
Figure 0004415833
<合一法による母トナーの製造例>
(実施例1)
攪拌翼としてデスパ翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB−1を545.5部(固形分300部)仕込み、ついで1規定アンモニア水48部を加えて、デスパにより3600rpmにて十分に攪拌した後、温度を23℃に調製した。ついで、攪拌速度を7000rpmに変更して370部の脱イオン水を5g/minで滴下して乳化分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は14.7m/sであった。また、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。そして、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.8%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)195部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が5.7μmになるまで攪拌を継続した。ここで、粒径が5.7μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、固形分含有量に対する添加した電解質量は2.5%であった。その後、減圧下、真空度が4kPaとなるまでメチルエチルケトンを留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と洗浄を繰り返した後、得られたウェットケーキを凍結乾燥機にて乾燥を行い、母トナー粒子を得た。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、98%であった。
(比較例1)
実施例1におけるミルベースMB−1をMB−4とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
その後、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の母トナー粒子を得た。脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、94%であった。
(実施例2)
攪拌翼としてデスパ翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB−2を545.5部(固形分300部)仕込み、ついで1規定アンモニア水76.0部を加えて、デスパにより3600rpmにて十分に攪拌した後、温度を23℃に調製した。ついで、攪拌速度を7000rpmに変更して370部の脱イオン水を5g/minで滴下して乳化分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は14.7m/sであった。また、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。次に、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.8%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)177部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が4μmになるまで攪拌を継続した。引き続き、硫酸アンモニウムの濃度を4.0%に変更した硫酸アンモニウム水溶液(二段目の電解質)を5g/minで20部滴下し、その後攪拌を継続して粒径が7.8μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は2.3%であった。その後、減圧下、真空度が4kPaとなるまでメチルエチルケトンを留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と洗浄を繰り返した後、得られたウェットケーキを凍結乾燥機にて乾燥を行い、母トナー粒子を得た。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、97%であった。
(比較例2)
実施例2におけるミルベースMB−2をMB−5とする以外は実施例2と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)177部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が4μmになるまで攪拌を継続した。引き続き、硫酸アンモニウムの濃度を6.0%に変更した硫酸アンモニウム水溶液(二段目の電解質)を5g/minで30部滴下し、その後攪拌を継続して粒径が7.8μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は2.7%であった。その後、実施例2と同様に、メチルエチルケトンを除去し、固液分離、洗浄、乾燥を行い、母トナー粒子を得た。収率は93%であった。
(実施例3)
攪拌翼としてデスパ翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB−3を545.5部(固形分300部)仕込み、ついで1規定アンモニア水77.0部を加えて、デスパにより3600rpmにて十分に攪拌した後、温度を23℃に調製した。ついで、攪拌速度を7000rpmに変更して370部の脱イオン水を5g/minで滴下して乳化分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は14.7m/sであった。また、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。次に、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)189部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が4μmになるまで攪拌を継続した。引き続き、硫酸アンモニウムの濃度を4.0%に変更した硫酸アンモニウム水溶液(二段目の電解質)を5g/minで30部滴下し、その後攪拌を継続して粒径が7.8μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は2.6%であった。その後、減圧下、真空度が4kPaとなるまでメチルエチルケトンを留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と洗浄を繰り返した後、得られたウェットケーキを凍結乾燥機にて乾燥を行い、母トナー粒子を得た。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、97%であった。
(比較例3)
実施例3におけるミルベースMB−3をMB−6とする以外は実施例3と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)229部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が4μmになるまで攪拌を継続した。引き続き、硫酸アンモニウムの濃度を5.0%に変更した硫酸アンモニウム水溶液(二段目の電解質)を5g/minで30部滴下し、その後攪拌を継続して粒径が7.8μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は3.2%であった。その後、実施例3と同様に、メチルエチルケトンを除去し、固液分離、洗浄、乾燥を行い、母トナー粒子を得た。収率は91%であった。
(比較例4)
実施例1におけるミルベースMB−1をMB−7とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
その後、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の母トナー粒子を得た。脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、94%であった。
(比較例5)
実施例2におけるミルベースMB−2をMB−8とする以外は実施例2と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
(比較例6)
実施例3におけるミルベースMB−3をMB−9とする以外は実施例3と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。乳化分散体を作製時の攪拌翼の周速は実施例1と同様に、14.7m/sであった。さらに、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
(実施例4)
上述した離型剤分散液W−1、着色剤マスターチップK−3、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンを、固形分含有量が55%、温度条件が30〜40℃の範囲でマックスブレンド翼の360rpmにより3時間の間混合し、溶解、分散を行った。得られた混合物は、固形分含有量を55%に再調整してミルベースとした(配合組成はMB−6と同じであり、攪拌条件のみデスパーの高速攪拌からマックスブレンド翼を用いた攪拌に変更した)。攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに得られたミルベースを545.5部(固形分300部)仕込み、ついで1規定アンモニア水77.0部を加えて、マックスブレンド翼により250rpmにて十分に攪拌した後、温度を23℃に調製した。ついで、同攪拌条件下に370部の脱イオン水を5g/minで滴下して乳化分散体を作製した。また、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。次に、脱イオン水200部を加えて溶剤量を調整した。
ついで、攪拌速度を3600rpmに変更して、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を水30部に希釈して添加した。その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液(一段目の電解質)189部を、5g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し、粒径が4μmになるまで攪拌を継続した。引き続き、硫酸アンモニウムの濃度を4.0%に変更した硫酸アンモニウム水溶液(二段目の電解質)を5g/minで30部滴下し、その後攪拌を継続して粒径が7.8μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。このときの攪拌翼の周速は0.34m/sであった。また、電解質の固形分に対する添加量は2.6%であった。その後、減圧下、真空度が4kPaとなるまでメチルエチルケトンを留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と洗浄を繰り返した後、得られたウェットケーキを凍結乾燥機にて乾燥を行い、母トナー粒子を得た。得られた母トナー粒子のDv50は7.2μm、Dv/Dn=1.11、平均円形度0.958であったが、母トナー粒子を分散剤の存在下に、再スラリー化して光学顕微鏡の400倍で観察したところ、粒子内に着色剤が存在していない透明な部分の存在が観察された。トナー粒子中における着色剤の分散がやや不均一であった。
また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、97%であった。
このようにして得られた実施例1〜4及び比較例1〜6の母トナー粒子に対して以下の特性評価を行った。
<トナー性状の評価方法>
(1)粒径、粒度分布測定
乾燥後の母トナーを、界面活性剤を含む水の中に懸濁させることにより試料を作製する。ついでコールターカウンターマルチサイザーTAIIを用いて該母トナーの粒径、粒度分布を測定した。この測定結果を表8に示す。
(2)平均円形度の測定
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、フロー式粒子像分析装置FPIP−1000(東亜医用電子社製)により求める。フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
まず、乾燥後の母トナーの少量を界面活性剤を含む水の中に懸濁させることにより試料を作製する。ついで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、さらに、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを介して光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。さらに、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
上記装置を用いて以下の条件のもとで測定を行った。この測定結果を表8に示す。
(a)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品株式会社製)0.1gを添加し、さらに試料である母トナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(b)測定条件
測定温度 25℃
測定湿度 60%
測定トナー粒子数 5000±2000個
(3)粗大粒子の混在
粗大粒子については、脱溶剤終了後のスラリーを透過型の光学顕微鏡の200倍で観察した。この観察結果を表8に示す。なお、表8において、×は30μm以上の粗大粒子が視野内に多数観察されるものを、△は30μm以上の粗大粒子が視野を変えることで1〜2個観察されるものを、○は視野を変えても30μm以上の粗大粒子が観察されないものを示している。
(4)耐熱保存性の測定
耐熱保存性は、実施例、比較例で得られた各母トナーに対し、疎水性シリカを、母トナー100質量部に対し、1.0質量部をヘンシェルミキサで外添した後、トナー粒子10質量部を100ccの硝子製容器に入れ、密閉した後、55℃の環境下に12時間静置した後、取り出して凝集性の有無を判断した。この判断結果を表9に示す。なお、表9において、×は堅い凝集体のある物を、△は指でほぐれる程度の凝集体がある物を、○は凝集体のない物を示している。
(5)定着特性の測定
オフセット幅、及び定着開始温度については、あらかじめ実施例及び比較例のトナー母粒子100質量部に対し、疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサで外添し、ついでシリコン樹脂被覆フェライトキャリアを混合することで現像剤を調整した。ついで市販複写機改造機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作製し、印刷紙を90mm/sのスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロールに通して定着を行った。
オフセット幅については、オフセットを発生しない上限値と下限値との温度範囲によって示している。また、定着開始温度は、定着後の画像に粘着テープを貼り、剥離後のID(画像濃度)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生が見られないときのヒートロールの表面温度を示している。この評価結果を表9に示す。
(6)溶融粘度の測定
トナー溶融粘度「T1/2温度」は、乾燥後得られた母トナーを前述したように島津製作所製フローテスタ(CFT−500)を用いて、ノズル径1.0mmΦ×1.0mm、単位面積(cm)当たりの荷重0.98MPa、毎分6℃の昇温速度で測定した。この測定結果を表9に示す。
(7)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、示差走査熱量計(DSC−50、島津製作所製)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した。この測定結果を表9に示す。
Figure 0004415833
Figure 0004415833
表8より、実施例1及び比較例1と、実施例2及び比較例2と、実施例3及び比較例3とをそれぞれ比較すると、いずれも実施例の着色剤含有樹脂粒子の粒度分布がシャープに改善されていることがわかる。また、実施例の各サンプルを光学顕微鏡で観察したところ、いずれも粒子内の顔料は均一に分散されていた。
また、表9より、実施例のサンプルに比べ比較例のサンプルは、いずれも溶融粘度が高くなっていることがわかる。これは、着色剤の分散が不十分で、樹脂と十分にぬれていないためと考えられる。その結果、定着開始温度、オフセット幅も劣化していることがわかる。
本発明の一実施形態におけるオープンロール型連続混練機を示す概略平面図である。
符号の説明
1 オープンロール型連続混練機

Claims (3)

  1. カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含有する混合物を、有機溶剤中に高速攪拌機を用いて溶解または分散させて着色剤含有樹脂液を製造する第一工程と、該着色剤含有樹脂液を水性媒体中に懸濁させて着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する第二工程と、を有する静電荷像現像用カラートナーの製造方法において、
    前記混合物が、前記結着樹脂と前記着色剤とを、加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機を用いて、溶融混練分散処理することにより得られる溶融混練分散物であり、
    前記第二工程が、前記着色剤含有樹脂液を塩基性化合物の存在下で前記水性媒体中に懸濁させて、前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する工程であり、前記第二工程の後に、
    前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液に分散安定剤を添加し、その後電解質を添加することにより、前記微粒子(A)の合一体(B)を製造し、次いで前記有機溶剤を除去する第三工程と、
    前記合一体(B)を前記水性媒体から分離し、乾燥する第四工程と、
    を順次行うものであり、
    前記着色剤含有樹脂液を水性媒体中に懸濁させて前記着色剤含有微粒子(A)の懸濁液を製造する工程を、高速攪拌機又は高速分散機を用いて、翼先端速度を10〜25m/sとして行うことを特徴とする静電荷像現像用カラートナーの製造方法。
  2. 前記結着樹脂が架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とを含有する請求項1に記載の静電荷像現像用カラートナーの製造方法。
  3. 前記直鎖型ポリエステル樹脂の少なくとも一部に、製造後のトナー中に含有される着色剤の含有比率よりも高い含有比率で、前記着色剤をあらかじめ溶融混練分散処理する請求項2記載の静電荷像現像用カラートナーの製造方法。
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