JP2007127928A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Hiroyuki Mariko
浩之 鞠子
Hitoshi Takayanagi
均 高柳
Kenichi Hirabayashi
憲一 平林
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Abstract

【課題】水性媒体中において粒子を形成して得られる静電荷像現像用トナーの製造方法において、粒度分布がシャープなトナーを高収率で製造するための静電荷像現像用トナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含有する混合物を、有機溶剤中に溶解または分散させて着色剤含有樹脂液を製造する工程と、該着色剤含有樹脂液を水性媒体中に懸濁または溶解させて着色剤含有樹脂粒子液を製造する工程と、を有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、乳化した溶液を加温しワックスの長径の長さを短くする工程を経て粒子を製造する製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば複写機、プリンタ、ファックスなどに好適に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
近年、複写機、プリンタなどをカラー化する傾向が年々増加している。また同時に、高解像、高階調の高画像品質の要求から、トナーの小粒径化及び分布のシャープ化による均一性向上が求められている。このような状況下でトナーの製造方法においても、従来の粉砕法からいわゆる「ケミカルトナー」と呼ばれる乳化分散法や重合法などの湿式法による各種トナーの製造方法が注目されている。これらの中でも、乳化分散法は、トナーの小粒径化や球形化が容易であることに加え、重合法と比較してバインダー樹脂の種類の選択幅が広くなり、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの縮合系樹脂を主結着樹脂として利用できる点や、残留モノマーの低減が容易であって有害性VOC(揮発性有機化合物)の低減化に有利である点などの利点を有している。
乳化分散法を用いたトナーの製造方法としては、例えば、着色剤とアニオン型自己水分散性樹脂となるポリエステル樹脂とを有機溶剤中に分散させ、転相乳化することによりトナー粒子を得るトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、着色剤とポリエステル樹脂とを有機溶剤中に分散させ、転相乳化を行い、ついで合一工程を行うことにより粒度分布がシャープなトナーを高収率で得られるトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特に特許文献2において提案されたトナーの製造方法では、着色剤、樹脂、離型剤(ワックス)、有機溶剤、及びその他の添加剤を混合し有機層を調整して水性溶媒中に粒子を形成させ、その後析出・合一工程をへてトナー粒子を作成しているが、分散した各原料の状態、特に転相乳化後の各原料分散状態により粒度分布が劣化してしまうという問題を有している。転相乳化後の各原料の内、樹脂は有機溶剤に溶解している状態、顔料はマスター化等の前処理により細かく分散している状態であるが、離型剤(ワックス)はマスター化及びメディア分散を行ってもその他の原料と比較し大きな分散径にある。特に、当該技術では、その実施例において、カルナバワックスをポリエステル樹脂と共に加圧ニーダーで混練し、その後、ボールミルを用いて、その混練物をメチルエチルケトン中で練ることによりカルナバワックスを微分散させている。この工程を詳細に調べると、ボールミルによる微分散処理後のカルナバワックスの形状は球形のものは少なく、棒状、糸状又は薄片状であったり、薩摩芋型形状又は瓢箪型形状といった、長径の長さと幅方向又は厚み方向の長さ、言い換えると長径と短径を有する形状のものが多く存在しているのが観察された。しかも、その長径方向の長さの平均値は1〜3μmの範囲であり、特に、長いものでは5μm程度のものが確認できた。当該技術では、着色剤、樹脂、離型剤及びその他の添加剤を水性溶媒中で粒子化し、合一工程を経てトナー粒子を製造することにより粒度分布がシャープなトナーを高収率で製造することを目的としているが、更にこれを改良しようと試みると、長径の大きな離型剤粒子の存在が支障となり、改良が困難なものとなっていた。
また、離型剤を予め有機溶媒中に溶解し、析出させた後、或いは予め有機溶媒中に懸濁させた後、メディアにて粉砕及び/又は分散させることにより、内部に離型剤の球形微粒子が分散したトナーを水性媒体中で製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。当該技術は、トナーの耐オフセット性、帯電性、流動性、定着性、サイクル安定性にすぐれ、かつ良好な発色性、OHP透明性を有し、良好な画質が得ることを目的としている。また、トナー粒子表面へ離型剤の露出がほとんどなくなり、トナーの流動性が向上し、かつ帯電性が良好となり、更にトナーの形状制御が可能で、球状の粒子が容易にでき、転写性、クリーニング性のよいトナーが得られるとしている。しかしながら、離型剤を予め有機溶媒中に溶解し、析出させる工程、或いは予め有機溶媒中に懸濁させる工程を独立した別の工程で行い、その後メディアを用いた分散機にて処理する必要があり、製造工程が複雑且つ煩雑にならざるを得ない。また、離型剤によってはそれを溶解するための適当な有機溶媒が無く、当該技術を用いることが困難な場合があり、また、有機溶媒中に懸濁させたのみでは、離型剤が球形になりにくい場合があった。更に、メディア分散工程において、前段階で球形になった離型剤が変形し、球形化した効果が減じることもあった。
特開平8−211655号公報 特開2003−122051号公報 特開平11−24308号公報
したがって、本発明は、メディアを充填した分散機を用いて有機溶剤中に離型剤を分散させる工程を経て、水性媒体中でトナー粒子を製造する静電荷像現像用トナーの製造方法において、粒度分布がシャープなトナーを高収率で製造するための静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明は、メディアを充填した分散機を用いて有機溶剤中に離型剤を分散させることにより、該離型剤が長径と短径を有する不定形の微粒子として微分散した分散液aを製造する第1A工程、
該第1A工程とは別工程にて、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と着色剤とが有機溶剤中に溶解及び微分散した樹脂溶液bを製造する第1B工程、
該分散液aと該樹脂溶液bとを混合することにより樹脂溶液cを製造し、
更に、分散安定剤及び塩基性化合物の存在下で、該樹脂溶液cを水性媒体中に乳化させることにより該樹脂溶液cの乳化液を製造する第2工程、
該乳化液の液温を昇温することにより、該離型剤の微粒子の長径の寸法を加熱前の寸法よりも短くする第3工程、
該乳化液の液温を降温し、該乳化液中に電解質を添加することで該離型剤の微粒子と該ポリエステル樹脂と該着色剤と該有機溶剤とからなる微粒子を形成させる第4工程、
該微粒子中の有機溶剤を除去後、該微粒子を該水性媒体から分離し乾燥する第5工程
を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
上記第1A工程では、メディアを充填した分散機により離型剤が長径と短径を有する不定形の微粒子として微分散した分散液aが製造される。そして、第3工程において乳化液の液温を昇温することにより、離型剤が軟化して縮み、収縮する。その結果、離型剤の外形が小さくなり、特に、短径よりも長径の寸法が加熱前の寸法よりも短くなる。そうすることにより離型剤が球形に近くなり、第4工程において生成する微粒子の粒度分布がシャープになる。それと同時に粗大粒子が減少して収率もより高くなるものと推定している。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、水性媒体中で決定される粒度分布に関して、高収率で、シャープな粒度分布を有するトナーを製造することができる。特に、小粒径トナーを製造する場合に、本発明のトナーの製造方法は効果的である。また、前記特許文献2に記載されているような、離型剤を予め有機溶媒中に溶解し、析出させる工程、或いは予め有機溶媒中に懸濁させる工程を独立した別の工程で行う必要が無く、上記第3工程を一連の工程の中で行うことができ、複雑且つ煩雑な工程を行う必要がない。また、離型剤を溶解するための適当な有機溶媒が無い場合でも、本発明の方法であればメディア分散後の離型剤の寸法を短くすることが可能であり、メディア分散工程において、長大な形状の離型剤粒子ができた場合でも粗大トナーの生成を極力抑えることができる。
以下、本発明にかかる静電荷像現像用トナーの製造方法の実施形態を説明する。
本発明による静電荷像現像用トナーの製造方法は、以下の工程を備えている。
第1A工程:メディアを充填した分散機を用いて有機溶剤中に離型剤を分散させることにより、該離型剤が長径と短径を有する不定形の微粒子として微分散した分散液aを製造する
第1B工程:該分散液a製造の工程とは別工程にて、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と着色剤とが有機溶剤中に溶解及び微分散した樹脂溶液bを製造する。
第2工程:該分散液aと該樹脂溶液bとを混合することにより樹脂溶液cを製造し、
更に、該樹脂溶液cを分散安定剤、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に乳化させることにより該樹脂溶液cの乳化液を製造する。
第3工程:該乳化液の液温を昇温することにより、該離型剤の微粒子の長径の寸法を加熱前の寸法よりも短くする。
第4工程:該乳化液の液温を降温し、該乳化液中に電解質を添加することで該離型剤の微粒子と該ポリエステル樹脂と該着色剤と該有機溶剤とからなる微粒子を形成させる。
第5工程:該微粒子中の有機溶剤を除去後、該微粒子を該水性媒体から分離し乾燥する。
各工程について詳しく説明する。
第1A工程は、離型剤をメディア分散する工程で、機器としては通常のボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等のメディアを用いた分散機等が使用可能であるが、ビーズミルを用いることが好ましい。この工程では、離型剤及び有機溶剤をビーズミル等に投入、循環させ離型剤の微分散化を行うが、トナーのバインダー樹脂として使用するポリエステル樹脂等を離型剤の分散を促進するために加えても良い。この工程において、離型剤は長径と短径を有する不定形の微粒子として微分散するが、微粒子の長径の平均寸法(長径)を0.5〜1.5μmとするのが好ましい。また、有機溶剤に対する離型剤の比率は、10〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。更に、ポリエステル樹脂等を添加して分散を行う場合は、有機溶剤に対する離型剤と樹脂の合計質量の比率は、20〜60質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。なお、樹脂に対する離型剤の比率は、10〜50質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。尚、分散したワックスの粒径は走査型電子顕微鏡を用い測定することが出来る。本明細書では、イオンスパッタ装置(HITACHI E101)にて金蒸着した後、電子顕微鏡(HITACHI S-510 Scanning Electron Microscope)を用い測定を行い、30個のワックスの平均値にて粒径測定を行った。
離型剤はポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックス類の中から選択した離型剤が用いられる。中でも軟化点が50〜80℃にある、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類、フィーシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス類が好適に用いられる。中でも、DSC測定における吸熱ピークが85℃以下のワックスが望ましい。
第1A工程に使用する有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのような炭化水素類や、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、などを用いることができる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、ポリエステル樹脂を溶解または分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後の工程で脱溶剤しやすいために低沸点のものが好ましい。ここで、ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤としては、溶解、分散性に優れている、メチルエチルケトン、酢酸エチルを用いている。特にメチルエチルケトンを用いることが最も好ましい。
第1B工程は、ポリエステル樹脂、着色剤及び有機溶剤の混合を行う工程。混合は、デスパ(浅田鉄鉱(株)製分散攪拌機)等の分散機を用い、混合・微分散化を行う。有機溶剤は上記の有機溶剤を使用することができるが、第1工程Aで使用する溶剤と同じものであることが好ましい。
本発明で用いるポリエステルは、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂で有る為カルボキシル基を中和することにより水中で容易に分散する(以下、自己水分散性という)、または水溶性となる樹脂である。又、自己水分散性または水溶性のポリエステル樹脂の酸価は、1〜30KOHmg/gが好ましく、3〜20KOHmg/gであることがより好ましい。これは、ポリエステル樹脂の酸価が1未満であると、ポリエステル樹脂と有機溶剤とが水と均一に溶解もしくは混合した水溶液の製造、またはポリエステル樹脂と有機溶剤との微粒子が水中に懸濁した懸濁液の製造がスムーズに行われず、粗大粒子が発生するので好ましくない。一方、ポリエステル樹脂の酸価が30より大きいと、各種環境下における帯電量が安定しないため好ましくない。酸価が1〜30KOHmg/gであるポリエステル樹脂は、カルボキシル基が塩基性化合物により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加し、分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散または溶解することができる。
本発明で使用するポリエステル樹脂は、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物であることが好ましく、以下の原料の中から選択される化合物を反応させることによって得られる。
架橋型ポリエステルは、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価のアルコールと、架橋剤として多価化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。特に、2価の多塩基酸またはその誘導体と、2価の脂肪族多価アルコールと、架橋剤として多価エポキシ化合物とを反応させることによって製造することが好ましい。
また、直鎖型ポリエステル樹脂は、2価の多塩基酸類と、2価のアルコールとを反応させることによって製造する。特に、2価の多塩基酸類と、2価の脂肪族アルコールとを反応させることによって製造することが好ましい。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とを製造する際に使用する酸成分としては、以下の2価の塩基酸類を使用することができる。例えば、2価の塩基酸化合物としては、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸またはその誘導体またはそのエステル化物が挙げられる。
また、2価の脂肪族アルコール成分としては、以下のアルコール類を使用することができる。2価の脂肪族アルコールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオールなどのジオールが挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とにおいて、脂肪族アルコールを用いることにより、ワックス類との相溶性が良好となり、耐オフセット性が改良され、好ましい。また、ポリエステル主鎖を軟質化することにより低温での定着性が改善される。
架橋型のポリエステル樹脂を製造する際には、さらに架橋剤として多価エポキシ化合物を使用する。そのような化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物などが挙げられる。上記の化合物の中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルがより好適に用いられる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050などが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロン830、エピクロン520などが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の例として大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−660,N−665,N−667,N−670,N−673,N−680,N−690,N−695などが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の例としては大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−740,N−770,N−775,N−865などが挙げられる。エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体としてはグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体が挙げられる。
また、上述したエポキシ化合物は2種以上併用して用いることもでき、さらに、樹脂の変性剤として、以下に記載するモノエポキシ化合物を併せて用いることもできる。同時に使用することができるモノエポキシ化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルなどが挙げられる。
これらのモノエポキシ化合物を併用することにより定着性、高温での耐オフセット性が向上する。これらの中でも、特にアルキルグリシジルエステルがより好適に用いられる。具体的な例としてはネオデカン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェルジャパン製が挙げられる。
架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂とは、上述した原料成分を用いて、例えば触媒の存在下で脱水縮合反応あるいはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸などを適宜使用することができる。
本発明で使用する架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との使用比率は、(架橋型ポリエステル樹脂の質量)/(直鎖型ポリエステル樹脂の質量)=5/95〜60/40が好ましく、10/90〜40/60であることがより好ましく、15/85〜30/70であることが特に好ましい。架橋型ポリエステル樹脂の比率が5質量%よりも少ないと、耐ホットオフセット性が低下するので好ましくない。また、合一速度が低下し、ワックスや着色剤などの分散性が低下するので好ましくない。また、60質量%よりも多いと、溶融粘度(T1/2温度)が上昇し、低温定着性が低下するので好ましくない。
架橋型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60〜85℃であることが好ましく、60〜75℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が60℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が85℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
直鎖型ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜70℃であることが好ましく、55〜65℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。また、ガラス転移温度(Tg)が70℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
また、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、160℃以上となっていることが好ましく、中でも、160℃〜220℃であることが好ましい。ここで、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点としては、170℃〜200℃であることがより好ましく、170℃〜190℃であることが特に好ましい。これは、軟化点が160℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、220℃を越える場合は、定着性が悪化しやすくなるためである。
また、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上となっていることが好ましく、中でも、90℃〜130℃であることが好ましい。ここで、直鎖型ポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃〜120℃であることがより好ましく、95℃〜110℃であることが特に好ましい。これは、架橋型ポリエステル樹脂と同様に、軟化点が90℃未満の場合は、ガラス転移温度が低下してしまい、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、130℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
また、架橋型ポリエステル樹脂と直鎖型ポリエステル樹脂との混合物の軟化点は、100℃〜150℃となっていることが好ましい。ここで、混合物の軟化点は、110℃〜140℃であることがより好ましく、110℃〜135℃であることが特に好ましい。これは、上述と同様に、軟化点が100℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすくなるので保存時や印字の際にトラブルになりやすく、150℃を越える場合には定着性が悪化しやすくなるためである。
ポリエステル樹脂及びトナーの軟化点は、定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスタでの測定条件は、ピストン断面積1cm、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gの条件で行った。
本発明で用いる着色剤については、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。例えば、本発明のトナーに使用できる黒の着色剤としては製造方法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、あるいは、C.I.Pigment Black 11などの鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12などの鉄−チタン複合酸化物系顔料が挙げられる。
また、青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63などが挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,15,16,60が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 17,74,93,97,110,155及び180が挙げられ、より好ましくはC.I.Pigment Yellow 74,93,97,180が挙げられ、特に、C.I.Pigment Yellow 93,97,180が好ましい。
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247などが挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,53:1,57:1,122及び209が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122及び209が挙げられる。
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜18質量%であることがさらに好ましく、2〜15質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
第2工程では、第1A工程で作成した分散液と第1B工程で作成した分散液をデスパ等を用い混合・均一分散を行った後、分散安定剤、塩基化合物及び純水を投入、水性媒体中への乳化を行う。ここで分散安定剤(乳化剤)としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど、あるいは各種プルロニック系などのノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型、アルキルスルホン酸塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤などがある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があるので好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。上述した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。また、使用する分散安定剤の量は、例えば固形分含有量に対し、0.1〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%であることがより好ましく、0.3〜1.5質量%であることが特に好ましい。これは、0.1質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られないためである。また、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるためである。
塩基性化合物としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が用いられる。特に、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基が好ましい。ポリエステル樹脂を水中または水が主成分で有機溶剤を含む媒体(水性媒体)中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤などの分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となってしまう。これにより、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになることから好ましくない。また、ゲル分を含有するような架橋型ポリエステル樹脂の場合には、さらに不均一な粒度分布となり、実用上限界がある。したがって、本発明では、自己水分散性または水溶性であるポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基を、塩基性化合物により中和する。
混合においては、デスパ(浅田鉄工株式会社)、ホモミクサ(特殊機化工業株式会社)あるいはスラッシャ(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、などの高速攪拌機、あるいは高速分散機が使用できる。この時の翼先端速度は4〜30m/sであることが好ましく、10〜25m/sであることが特に好ましい。上記高速攪拌機、あるいは高速分散機を用いることで、着色剤含有樹脂液の水性媒体中への縣濁液を効率よく得られると共に、該着色剤含有樹脂液に含まれる着色剤の水性媒体中における均一微分散を達成できる。微分散された着色剤の状態を高速攪拌することで水性媒体中においても保持することができる。翼先端速度が4m/sより低いと、水性媒体中での着色剤の微分散が不十分となり好ましくない。一方、30m/sより高いと、飛散が激しくなり不溶解物が混在する傾向が見られるため好ましくない。また、その時の温度は、特に制限はないが、温度が高いと、転相水量が多くなるため好ましくない。また、低温だとポリエステル樹脂及び有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。本工程においては、10℃〜50℃であることが好ましく、20℃〜45℃であることが特に好ましい。
第3工程では、第2工程で作成した乳化液を撹拌しながら昇温する。このことにより、乳化液中に分散している離型剤を除々に軟化し、長径の寸法が加熱前の寸法より短くなっていく。所定の粒径(0.5μm〜1.5μm)になるまで、昇温・撹拌を継続する。
昇温する温度は、使用する離型剤の種類及び使用している有機溶剤の沸点により異なる。第3工程の昇温到達温度は、有機溶剤の沸点以下であることが好ましい。したがって、本工程は50℃〜80℃で行う事が好ましい。且つ前記第2工程における前記乳化液の液温よりも20℃以上高いことが好ましい。
第4工程では、離型剤が所定の粒径になった乳化液の温度を下げる。温度が下がった乳化液に電解質を添加し、撹拌回転数を調整して、該離型剤の微粒子と該ポリエステル樹脂と該着色剤と該有機溶剤とからなる微粒子を形成させる。第4工程における乳化液の液温は、10℃〜50℃であり、且つ前記第3工程における前記乳化液の液温よりも10℃以上低くすることが好ましい。
ここで使用する電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウムなどの有機、無機の水溶性の塩なども電解質として有効に用いることができる。これらの電解質は、単独でも、2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウムのような1価のカチオンの硫酸塩、炭酸塩が均一な粒子成長を進める上で好ましい。
また、使用する電解質の量は、固形分含有量に対し、0.5〜15質量%が好ましく、1〜12質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。これは、電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、粒子成長が十分に進行しないためである。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、粒子成長が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるためである。
また、均一な粒子成長を進める上では、粒子成長の攪拌条件が重要であり、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼などが用いられている。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼を用いることが好ましい。均一な合一体を生成させるための攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアでの攪拌がより好ましい。特に、0.2〜6m/sとすることが好ましい。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、微粒子が残存するため好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり粗大粒子が発生する傾向となるので好ましくない。上述した条件であれば、微粒子同士の衝突のみにより粒子成長(合一)が進行し、合一体が再び解離、分散することがない。特に、合一法では微小粒子から優先的に合一が進行するため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。
第5工程では、トナー粒径まで成長した微粒子中の有機溶剤の除去、洗浄、乾燥を行いトナー化する。第5工程において得られた粒子(合一体)を含む水性媒体から有機溶剤を除去する。粒子(合一体)は有機溶剤を内包し、膨潤しているため高温条件下では凝集しやすい。そのため、脱溶剤を低温条件下で、速やかに行うためには減圧下で行うことが好ましい。
次に、粒子を水性媒体から分離し、乾燥する。水性媒体からの分離は、遠心分離機、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルターなどの公知慣用の手段で行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。分散安定剤を用いている場合、より十分に洗浄することが好ましい。
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法や、凍結乾燥させる方法などが挙げられる。また、スプレードライヤーなどを用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法を用いることもできる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が効率的であるので好ましい。
乾燥させたトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。疎水性シリカ、酸化チタンなどの無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性などの物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカなどが好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイルなどで処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、二成分静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置などに使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置などを用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量などを調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンタなどにも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルムなどの転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例では、特に表示がない限り、「部」は質量部、「水」は脱イオン水の意味である。最初にトナーを調整するに当たって用いたバインダー樹脂の合成例を以下に示す。
<架橋型ポリエステル樹脂>
(樹脂合成例1)
テレフタル酸 252質量部
イソフタル酸 63質量部
プロピレングリコール 122質量部
ネオペンチルグリコール 21質量部
エチレングリコール 12質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
エピクロン830 9.4質量部
カージュラE 9.0質量部
ここで、エピクロン830は、大日本インキ化学工業株式会社製のビスフェノールF型エポキシ樹脂であって、エポキシ当量が170(g/eq)となっている。また、カージュラEは、シェルジャパン製のアルキルグリシジルエステルであって、エポキシ当量が250(g/eq)となっている。
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が160℃に達した時に反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価12.1、DSC測定法によるガラス転移温度74℃、フローテスタによる軟化点(T1/2)が180℃であった。
<直鎖型ポリエステル樹脂>
(樹脂合成例2)
テレフタル酸 189質量部
イソフタル酸 126質量部
ネオペンチルグリコール 104質量部
エチレングリコール 62質量部
テトラブチルチタネート 2.5質量部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が104℃に達した時反応を終了した。
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価11.2、DSC測定法によるガラス転移温度56℃、フローテスタによる軟化点(T1/2)が106℃であった。
(離型剤マスター分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス1号」(加藤洋行輸入品)30部と直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)70部とメチルエチルケトン150部とをデスパー(浅田鉄工社製混合攪拌機)で予備混合した後、スターミルLMZ−10(アシザワファインテック社製;ビーズミル 1000rpm)で微細化を行い、固形分含有量40質量%の離型剤微分散液a―1を調製した。作製した離型剤微分散液a―1における離型剤の分散状態を確認するため光学顕微鏡写真を撮影した(図1)。長径の長さが2μm程度の屈曲した棒状の粒子や薩摩芋形状の粒子が多く観察された。
(着色剤マスターの調製例)
顔料2000部、直鎖型ポリエステル樹脂(樹脂合成例2)3000部及び所定量の水をST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサ(三井鉱山製)へ投入し、698rpmで2分間撹拌し混練機投入原料を得た。次に、表1に示す条件でオープンロール型連続混練機(ニーデックス混練機(三井鉱山製))にて混練を行い、マスターチップを得た。顔料としては、大日本インキ化学工業社製シアン顔料「KET BLUE−111」(Pigment Blue 15:3)を使用し着色剤マスターを作製した。
Figure 2007127928
上段;ニーデックスのリアロール中空部を流れる水の温度
下段左欄;原料供給部の混練ゾーン温度設定
下段右欄;フロントロールの中空部に流通する水の温度
<合一法による母トナーの製造例>
(実施例1)
上述した離型剤分散液124.0部、着色剤マスター36.0部、合成例1の樹脂106.8部、合成例2の樹脂107.2部、メチルエチルケトン87.56部をウォーターバス(ウォーターバス内水温は35℃コントロール)内にセットにされたフラスコに投入し混合を開始後、アニオン型乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬社製)2.2部を添加、温度条件が30〜40℃の範囲でデスパ回転数3600rpmにより2時間混合し、溶解、分散を行った。次に得られた混合物に、1規定アンモニア水40部を加えて、デスパにより3600rpmにて十分に攪拌した。ついで、攪拌速度を7000rpmに変更して373部の脱イオン水を20g/minの速度で滴下して乳化分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は14.7m/sであった。また、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が安定分散している状態が観察された。次に、1規定アンモニア水10部を加えて十分撹拌した。次に、ウォーターバス内温度を上昇させ、フラスコ内温度を60℃とし、7000rpmで1時間攪拌を行い、ワックス長径長が1.0μmであるのを電子顕微鏡にて確認した(図2)。
その後、攪拌翼をマックスブレンド翼に変更して、温度を25℃に、また回転数を400rpmに調整し、3.5%の硫酸ナトリウム水溶液(一段目の電解質)120部を、10g/minで滴下し、その後、回転数を158rpmに調整し粒子を成長させる。次に、撹拌回転数を400rpmに上げ、3.5%の硫酸ナトリウム水溶液(二段目の電解質)30部を添加、その後回転数を158rpmに調整し粒子を成長させる。この二段階目の動作を繰り返し粒径が7.5μmになるまで攪拌を継続した。ここで、粒径が7.5μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。また、固形分含有量に対する添加した電解質量は2.5%であった。その後、減圧下、真空度が4kPaとなるまでメチルエチルケトンを留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と洗浄を繰り返した後、得られたウェットケーキを凍結乾燥機にて乾燥を行い、母トナー粒子を得た。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、96%であった。
(実施例2)
実施例1における乳化後の昇温温度を78℃とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。離型剤微粒子の長径長は、実施例1同様短くなっている事が確認された。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、97%であった。離型剤粒径は0.9μmであった。
(実施例3)
実施例1における乳化後の昇温温度を53℃とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。離型剤微粒子の長径長は、実施例1同様短くなっている事が確認された。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、96%であった。離型剤粒径は1.4μmであった。
(実施例4)
実施例1におけるワックスマスターに使用するワックスをカルナバ1号粉にかわり合成エステルワックス(WEP−5 日本油脂製)とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察された。離型剤微粒子の長径長は、実施例1同様短くなっている事が確認された。また、脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、97%であった。離型剤粒径は0.8μmであった。
(比較例1)
実施例1における乳化後の昇温温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察されたが離型剤微粒子の長径長は、昇温前後変化は認められなかった。その後、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の母トナー粒子を得た。脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、93%であった。
(比較例2)
実施例1における乳化後の昇温温度を48℃とする以外は実施例1と同様にして乳化分散体を作製した。スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂は溶解しており、顔料と離型剤の微粒子が分散している状態が観察されたが離型剤微粒子の長径長は、昇温前後変化は認められなかった。その後、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の母トナー粒子を得た。脱溶剤後のスラリーを635メッシュのふるいを通して、ふるい上に残存した凝集物を140℃―40分間乾燥して、ロス分を算出し、仕込んだミルベースの固形分に対する収率を算出したところ、94%であった。
<トナー性状の評価方法>
(1)粒径、粒度分布測定
乾燥後の母トナーを、界面活性剤を含む水の中に懸濁させることにより試料を作製する。ついでコールターカウンターマルチサイザーIIを用いて該母トナーの粒径、粒度分布を測定した。
又、Dv/Dnは、体積平均径/個数平均径を示す。Dv/Dnの数値が、小さいほど粒度分布がシャープで有ることを示す。
(a)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品株式会社製)0.1gを添加し、さらに試料である母トナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)粗大粒子の混在
粗大粒子については、脱溶剤終了後のスラリーを透過型の光学顕微鏡の200倍で観察した。この観察結果を表8に示す。なお、表8において、×は30μm以上の粗大粒子が視野内に多数観察されるものを、△は30μm以上の粗大粒子が視野を変えることで1〜2個観察されるものを、○は視野を変えても30μm以上の粗大粒子が観察されないものを示している。
(3)耐熱保存性の測定
耐熱保存性は、実施例、比較例で得られた各母トナーに対し、疎水性シリカを、母トナー100質量部に対し、1.0質量部をヘンシェルミキサで外添した後、トナー粒子10質量部を100ccの硝子製容器に入れ、密閉した後、55℃の環境下に12時間静置した後、取り出して凝集性の有無を判断した。この判断結果を表9に示す。なお、表9において、×は堅い凝集体のある物を、△は指でほぐれる程度の凝集体がある物を、○は凝集体のない物を示している。
(5)溶融粘度の測定
トナー溶融粘度「T1/2温度」は、乾燥後得られた母トナーを前述したように島津製作所製フローテスタ(CFT−500)を用いて、ノズル径1.0mmΦ×1.0mm、単位面積(cm)当たりの荷重0.98MPa、毎分6℃の昇温速度で測定した。
(6)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、示差走査熱量計(DSC−50、島津製作所製)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した。
Figure 2007127928
離型剤微分散液a―1における離型剤の分散状態を確認するため電子顕微鏡写真である。(倍率8000倍)。 実施例1における離型剤の分散状態を確認するため電子顕微鏡写真である。(倍率8000倍)。

Claims (4)

  1. メディアを充填した分散機を用いて有機溶剤中に離型剤を分散させることにより、該離型剤が長径と短径を有する不定形の微粒子として微分散した分散液aを製造する第1A工程、
    該第1A工程とは別工程にて、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と着色剤とが有機溶剤中に溶解及び微分散した樹脂溶液bを製造する第1B工程、
    該分散液aと該樹脂溶液bとを混合することにより樹脂溶液cを製造し、
    更に、分散安定剤及び塩基性化合物の存在下で、該樹脂溶液cを水性媒体中に乳化させることにより該樹脂溶液cの乳化液を製造する第2工程、
    該乳化液の液温を昇温することにより、該離型剤の微粒子の長径の寸法を加熱前の寸法よりも短くする第3工程、
    該乳化液の液温を降温し、該乳化液中に電解質を添加することで該離型剤の微粒子と該ポリエステル樹脂と該着色剤と該有機溶剤とからなる微粒子を形成させる第4工程、
    該微粒子中の有機溶剤を除去後、該微粒子を該水性媒体から分離し乾燥する第5工程
    を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 前記第2工程における前記乳化液の液温が10℃〜50℃である請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記第3工程における前記乳化液の液温が50℃〜80℃であり、且つ前記第2工程における前記乳化液の液温よりも20℃以上高い請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記第4工程における前記乳化液の液温が10℃〜50℃であり、且つ前記第3工程における前記乳化液の液温よりも10℃以上低い請求項1乃至3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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