JP4048942B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられ、さらにはトナージェット方式のプリンター等にも用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機、プリンター、ファックスなどにおいては、印刷画像品質のさらなる向上、あるいはマシンのコストダウン、小型化、省電力化、省資源化などのために、トナーに対して次のようなニーズが高まっている。
(1)トナーの小粒径化による印刷画像の解像性や階調性の向上、トナー層の薄層化、廃トナー量の削減、ページ当たりのトナー消費量の低減
(2)定着温度の低温度化による消費電力の低減
(3)オイルレス定着化によるマシンの簡素化
(4)フルカラー画像における色相・透明性・光沢の向上
(5)トナーの定着時における有害性VOC(揮発性有機化合物)の低減
等である。
【0003】
古くから行われている粉砕法による粉体トナーにおいても、基本的には小粒径化は可能であるが、小粒径化に伴い、▲1▼トナー粒子表面に露出する有機顔料やワックス等の離型剤の比率が増大するために帯電制御が難しくなる、▲2▼トナー粒子が不定形のために粉体流動性が悪化する、▲3▼製造に要するエネルギーコストが高騰する、などの問題が生じ、粉砕法によるトナーでは上記のようなニーズを十分に満足することは、実際上困難である。
【0004】
一方、トナー組成物として、多くはカーボンブラックの如き黒色有機顔料をバインダー樹脂中に分散させたものが使用されているが、最近では、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料又はその他の有彩色の顔料をバインダー中に分散させたカラートナーの使用量が増加してきている。
【0005】
このようなカラートナーには、印刷後の画像が鮮やかな発色性を有すること、多色印刷を行った際の色重ねに於いて優れた透明性を発揮して色濁りの生じない鮮明な色再現性を有すること、あるいは、オフセット印刷と同等の解像性及び階調性を有する印刷を可能とする印刷画像特性が求められている。
【0006】
このような背景から、従来から重合法や乳化分散法によるトナー(以下、ケミカルトナーという)の開発が活発に行われてきた。特に、乳化分散法は、トナーの小粒径化や球形化に容易に対応できることに加え、重合法と比較して、▲1▼バインダー樹脂の種類の選択幅が広くなる、▲2▼残留モノマー低減が容易である、▲3▼有機顔料等の濃度を低濃度から高濃度まで任意に変化させることができる、などの利点を有しており、カラートナーの製造においても有利である。
【0007】
このような製造方法の例としては、特開平10−020552号公報、特開平11−007156号公報等(以下、A特許群という)がある。これらの技術は、ポリエステル樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させ、それを水中に乳化分散した後、得られた微粒子を凝集させ、さらに加温して融着させることにより会合体を形成し、トナー粒子とする製造方法である。
【0008】
また、特開平10−147649号公報、特開平10−319639号公報等(以下、B特許群という)においては、バインダー樹脂を乳化分散した後、前記A特許群とは異なる製造方法により微粒子の凝集体を形成させ、トナー粒子を製造する方法を提案している。すなわち、前記A特許群で記載されている製造方法は、バインダー樹脂等を水性媒体中に乳化分散した後に、得られた粒子を凝集させる工程を行い、次いで凝集した粒子を加熱して融着させる工程を行うといった2段階の製造工程でトナー粒子を製造する方法であるのに対して、前記B特許群で提案されているトナーの製造方法は、乳化分散により微粒子を製造した後に、該微粒子を凝集させる工程と凝集した微粒子同志を融着させる工程を同時に行うことによりトナー粒子の製造を行う方法である。また、前記A特許群、及びB特許群による製造方法においては、バインダー樹脂の酸基を中和せず、あるいはバインダー樹脂の酸価を中和できる程度の塩基を用いてトナーの製造を行っている。このような製造方法によれば、簡便に、かつ短時間で球形のトナー粒子を得ることができる。
【0009】
しかしながら、これらの公報に記載されている技術では、ケミカルトナーで期待される、小粒径化及び残留モノマー低減については実現可能であるが、真球に近い球形度、及びシャープな粒度分布を有するトナーを得るための技術については十分満足のできるものではなかった。特に、有機顔料を用いたカラートナーの製造においては、その傾向が顕著であり、真球以外の異形のトナー粒子が発生しやすく、粒度分布もブロードであった。したがって、そのようなカラートナーを用いて印刷した画像は解像性、階調性共に満足できるものではなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−020552号公報(実施例)
【特許文献2】
特開平11−007156号公報(第14段落、第23段落)
【特許文献3】
特開平10−147649号公報(第24段落、第25段落、実施例)
【特許文献4】
特開平10−319639号公報(第62段落、実施例)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、異形粒子の発生を極力抑え、真球に近く、粒度分布がシャープなケミカルトナーを製造する新規な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、乳化ロスが無く、高収率で前記特性を有するケミカルトナーを製造する新規な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決しうる静電荷像現像用トナーの製造方法を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、カルボキシル基を有するバインダー樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて着色樹脂溶液を製造し、次いで、該カルボキシル基の全量に対して1〜3当量の塩基性化合物を使用して該着色樹脂溶液を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液の微粒子を形成させ、その後、分散安定剤及び電解質を順次添加することで該微粒子の合一体を形成させ、更に、該合一体中の有機溶剤を除去した後、該合一体を該水性媒体から分離し、乾燥することによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、カルボキシル基を有するバインダー樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて着色樹脂溶液を製造し、次いで、該カルボキシル基の全量に対して1〜3当量の塩基性化合物を使用して該着色樹脂溶液を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液の微粒子を形成させ、次いで、該微粒子中の有機溶剤を除去した後、電解質を添加することで該微粒子の凝集体を形成させ、その後、該凝集体を融着させることにより会合体を形成させ、更に、該会合体を該水性媒体から分離し、乾燥することによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0014】
カルボキシル基を有するバインダー樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて、これを水性媒体中に乳化させ、分散安定剤及び電解質を順次添加させて合一体あるいは会合体を製造する場合、通常は、従来技術が示している通り、バインダー樹脂が有するカルボキシル基の一部あるいは大部分を中和することにより樹脂と水との親和性のバランスを調整する方法を用いる。しかしながら、本発明者らが検討したところでは、有機顔料を使用した場合、バインダー樹脂が有するカルボキシル基の一部あるいは大部分を中和するだけでは安定した製造を行うことができず、異形粒子の発生や粒度分布のブロード化が起きてしまう。これを改良するため、バインダー樹脂が有するカルボキシル基を中和するために必要な量以上の、あるいは必要量を超えて塩基性化合物を使用すると前記課題が解決できることを見出し本発明を完成させた。
【0015】
なお、本発明では、乳化分散により製造した有機溶剤を含有する微粒子の凝集と合体を1工程で行うトナーの製造方法を「合一」による製造方法と言い、当該方法により形成された粒子を「合一体」と言う。また、乳化分散により製造した微粒子中の有機溶剤を除去した後に、微粒子を凝集させ、その後、加熱により凝集体を融着させて微粒子を合体させる製造方法を「会合」による製造方法と言い、当該方法により形成された粒子を「会合体」と言う。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の製造方法は以下の工程からなる。
第一工程:カルボキシル基を有するバインダー樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて着色樹脂溶液を製造し、次いで、該カルボキシル基の全量に対して1〜3当量の塩基性化合物を使用して該着色樹脂溶液を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液の微粒子を形成させる工程、
第二工程:前記微粒子を合一させ合一体を製造し、合一体中に含有される有機溶剤を脱溶剤する工程、あるいは前記微粒子中の有機溶剤を除去し、その後微粒子を会合させ会合体を製造する工程
第三工程:脱溶剤後の前記合一体あるいは前記会合体を水性媒体から分離し、乾燥させ、トナーを製造する工程、
の上記3工程からなる。
【0017】
第一工程では、(A)塩基性化合物の存在下で該着色樹脂溶液を水性媒体中に加えて乳化する方法、あるいは(B)塩基性化合物の存在下で該着色樹脂溶液中に水性媒体を添加する方法、により該水性媒体中に該着色樹脂溶液の微粒子を形成させることができる。本発明においては、(B)の方法により着色樹脂溶液の微粒子を形成させることが好ましい。(B)の方法を用いると着色樹脂溶液の微粒子の粒度分布がシャープとなる。
【0018】
以下、(B)の方法を例にして本発明の製造方法を説明する。(B)の方法では、有機溶剤中にバインダー樹脂と有機顔料を投入して溶解あるいは分散することにより、バインダー樹脂と有機顔料と有機溶剤を含む着色樹脂溶液を調整する。この場合、必要に応じて離型剤または帯電制御剤、あるいはその他の添加物をバインダー樹脂等と共に用いることができる。
【0019】
有機溶剤中にバインダー樹脂と有機顔料、及び必要に応じて添加する、離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤を溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。
【0020】
▲1▼上記のバインダー樹脂、有機顔料、離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用する樹脂の軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。この時、有機顔料等はマスターバッチとして溶融混練してもよい。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機により有機溶剤中に溶解、ないし分散して調製する。
あるいは、
▲2▼バインダー樹脂と有機顔料、離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤を有機溶剤と混合し、これをボールミル等により湿式混練する。この場合、有機顔料や離型剤等はあらかじめ別々に予備分散を行ってから混合しても良い。
【0021】
上記▲2▼の、より具体的な手段としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等のメディアを用いた混合・分散機中に、予め有機溶媒にバインダー樹脂を溶解した樹脂溶液、及び有機顔料や離型剤を加え、攪拌・分散させることによりマスターバッチとし、更に希釈用のバインダー樹脂、追加の有機溶剤を混合することにより有機溶媒中に有機顔料や離型剤等が微分散した樹脂溶液を製造する方法がある。このとき、有機顔料や離型剤等を未処理のまま直接ボールミル等の混合・分散機に投入するよりも、あらかじめ、低粘度のバインダー樹脂と有機顔料、あるいは離型剤等を加圧ニーダー、加熱2本ロールで混練・分散してマスターバッチとしたものを用いるのが好ましい。以上のような▲2▼の製法によれば、バインダー樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため、溶融混練により分散する▲1▼の方法よりも好ましい。
【0022】
バインダー樹脂と必要に応じて添加する有機顔料や離型剤等とを溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、バインダー樹脂を溶解あるいは分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0023】
次に、バインダー樹脂および有機溶剤を含む混合物を水性媒体中に乳化する。この場合、上記の方法で調整された着色樹脂溶液を、塩基性中和剤の存在下で水性媒体と混合して乳化する。この工程においては、バインダー樹脂と有機顔料等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0024】
転相乳化においては、有機溶剤と添加した水の合計量に対する水の比率が30〜70%となるように水を添加する。より好ましくは35〜65%であり、特に40〜60%であることが好ましい。使用する水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
【0025】
本発明で使用するバインダー樹脂は、カルボキシル基含有バインダー樹脂であり、該カルボキシル基を中和することにより自己水分散性となるバインダー樹脂(以下自己水分散性樹脂と表現する)である。本発明で使用する自己水分散性のバインダー樹脂の酸価は3〜30であることが好ましく、5〜20であることがより好ましい。自己水分散性を有する樹脂は、カルボキシル基が塩基性化合物により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加して水性媒体中に分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散することができる。また、中和用の塩基性化合物としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が好ましい。バインダー樹脂を水性媒体中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤等の分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となる。その結果、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになるため好ましくない。したがって、本発明では自己水分散性樹脂を用い、該樹脂が有するカルボキシル基を塩基性化合物により中和する。
【0026】
バインダー樹脂のカルボキシル基を塩基で中和する方法としては、例えば、(1)カルボキシル基を有するバインダー樹脂、有機顔料、ワックスおよび有機溶剤を含有する混合物を製造した後、塩基で中和する方法、あるいは(2)水性媒体中に予め塩基性中和剤を混合しておき、転相乳化する際に前記混合物に含まれるバインダー樹脂の酸性基を中和する方法、が挙げられる。
【0027】
塩基性化合物の使用量は、バインダー樹脂のカルボキシル基の全量に対して1乃至3当量を用いる。また、1当量を越えて2当量以下であることがより好ましい。このようにバインダー樹脂のカルボキシル基を中和するために要する量よりも過剰に添加することにより、有機顔料を使用したケミカルトナーの製造においても、異形の粒子が生成するのを防止することができ、トナーの真球性を向上させ、また、粒度分布をシャープにすることができる。
バインダー樹脂のカルボキシル基の全量に対して1当量よりも使用する塩基性化合物の量が少ない場合は、特に異形の粒子が生成するため好ましくない。また、3当量よりも多くなると、微粒子が合一しやすくなり、粗大粒子の発生が増加するため好ましくない。
【0028】
転相乳化においては、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェア乳化分散機機や連続式乳化分散機等が使用できる。
【0029】
しかしながら、上記の高シェアがかかる分散機を用いるよりも、例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用することが好ましい。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼がさらに好ましい。水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)における該攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が均一に起こらず、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、低温すぎるとバインダー樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃が好ましい。さらに好ましくは20〜30℃の範囲である。
【0030】
第一工程で製造する着色樹脂溶液の微粒子の50%体積平均粒径は、1μmを越えて6μm以下、より好ましくは1μmを越えて4μmの範囲である。1μm以下であると有機顔料や、離型剤を用いた場合、バインダー樹脂により十分カプセル化されないため、帯電特性、現像特性に悪影響を及ぼし好ましくない。また、粒径が大きいと、得られるトナーの粒径が限定されるため、目的とするトナーの粒径よりも小粒径にする必要があるが、6μmよりも大きいと粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、第一工程で製造する着色樹脂溶液の微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が2%以下、より好ましくは1%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が10%以下、より好ましくは6%以下である。
【0031】
第二工程では、第一工程で得られた着色樹脂溶液の微粒子を合一あるいは会合させることにより該微粒子の合一体あるいは会合体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる。合一法による製造方法、会合法による製造方法を順次説明する。
【0032】
合一法では、第一工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整する。その後、分散安定剤を添加し、分散安定剤の存在下に電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る。
【0033】
第一工程で得られた微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。第二工程では、微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させる。本発明で用いることのできる電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も電解質として有効に用いることができる。これらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。本発明の製法では、第一工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質の添加により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。
【0034】
ところで、電解質等の添加だけでは、系内の微粒子の分散安定性が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生する。電解質や酸性物質により生成した微粒子の凝集体が、再合一を繰り返して、目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加する必要がある。使用する分散安定剤は、後から添加する電解質の存在下においても分散安定性を保持できる特性が必要である。そのような特性を有する分散安定剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明の製造方法では、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となり、その結果、シャープな粒度分布が得られ、それに伴い、収率の向上が達成される。
【0035】
また、均一な合一を進める上では、合一時の攪拌条件が重要である。本発明で好ましく使用できる撹拌翼の種類及び撹拌条件は前記と同様である。上記の条件であれば、微粒子同士の衝突のみにより合一が進行し、合一体が再び解離・分散することはない。特に合一法では微小粒子から優先的に合一が進行するため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。
【0036】
合一体を製造する場合には、第一工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を水でさらに希釈することが好ましい。その後、分散安定剤、及び電解質を順次添加して合一を行う。あるいは、分散安定剤及び/又は電解質の水溶液を添加することで分散液中の溶剤量を調整し、所定粒径の粒子を得る手順を採ることが好ましい。電解質を添加する前の系中に含まれる溶剤量としては、15〜45質量%の範囲内であることが好ましい。また、20〜40質量%の範囲内がより好ましく、特に、25〜40質量%の範囲内が好ましい。溶剤量が15質量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなり好ましくない。また、溶剤量が45質量%よりも多いと不均一な合一による凝集物発生が多くなり、また、分散安定剤の添加量が多くなるため好ましくない。
【0037】
本発明においては溶剤量を調整することで合一後のトナー粒子の形状をコントロールすることができる。溶剤量が25〜45質量%の範囲では溶剤による微粒子の膨潤度が大きいため、合一により球形〜略球形の粒子を容易に得ることができる。一方、溶剤量を15〜25質量%の範囲にすると溶剤による微粒子の膨潤度が小さいため、異形〜略球形のトナー粒子が容易に得られる。
【0038】
使用する分散安定剤の量は、例えば微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜3.0質量%の範囲内が好ましい。0.5〜2.5質量%の範囲内がより好ましく、0.8〜2.5質量%の範囲内が特に好ましい。0.5質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られない。一方、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるため好ましくない。
【0039】
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜15質量%の範囲内であることが好ましい。1〜12質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるため好ましくない。
【0040】
また、合一時の温度は10〜50℃の範囲内が好ましい。より好ましくは20〜40℃の範囲内であり、20〜35℃であることが特に好ましい。温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるため好ましくない。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。本発明の製法では、たとえば、20〜40℃といった低温の条件で、合一による会合体の生成が可能である。
【0041】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、有機顔料等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち有機顔料等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する有機顔料やその他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、有機顔料等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する有機顔料やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0042】
本発明により製造されるトナー粒子は、有機顔料やワックス等がバインダー樹脂に内包されていることが特徴である。トナー粒子表面に有機顔料やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、有機顔料やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0043】
第二工程で得られる合一体の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。但し、本発明は、より球形度の高いトナーを製造するための方法を提案しているものであるので、そのような特徴を発揮するためには、本発明の製造方法はより球形度の高いトナーを製造するための方法として使用することが好ましい。なお、この平均円形度は、最終的に得られたトナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することなどによっても求められるが、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られるため、本発明ではこの装置で測定した値を平均円形度としている。
【0044】
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。
【0045】
フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
【0046】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0047】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0048】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0049】
着色樹脂溶液の微粒子を合一させた後は、脱溶剤を行う。脱溶剤の方法は、なんら限定されるものではなく、常圧、あるいは減圧下で行う。脱溶剤を低温条件下で、速やかに行うためには減圧下で行うことが好ましい。
【0050】
次に会合法を説明する。会合法では、先ず初めに第一工程で得られた着色樹脂溶液の微粒子中に含まれる有機溶剤を除去する。脱溶剤工程においては、完全に有機溶剤を除去する必要はなく、使用した有機溶剤の60〜98%を除去するのが好ましい。また、70〜95%を除去するのがより好ましく、特に、80〜95%を除去するのが好ましい。有機溶剤の一部を残留させることにより、次の工程で行われる微粒子の凝集・融着工程の操作が容易となり、所望の粒子形状の粒子を製造することができる。例えば、凝集した樹脂粒子の形状を留めないほどに融着を進行させた球形の会合体、あるいは凝集した微粒子の形状をほとんど崩さない程度の異形の会合体等である。
【0051】
また、微粒子中に残存する有機溶剤の量が多いと、凝集・融着時に粗大粒子が発生しやすくなり、残存有機溶剤量が少ないと融着操作に時間を要したり、融着温度を高くしなければならず、やはり粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。残留した有機溶剤は会合後に完全に除去する。
【0052】
会合法では、第一工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し固形分含有量を調整する。その後、電解質の水溶液を滴下することで会合を進め、所定粒径の凝集体を得る。その際には、分散安定剤を添加して会合を行うことが好ましい。電解質の水溶液を滴下する前の固形分含有量としては、10〜30質量%の範囲が好ましい。10質量%よりも少ないと釜得量が大幅に低下するため、好ましくない。一方、30質量%よりも多いと均一な大きさの凝集体が生成困難になるため好ましくない。使用する電解質、分散安定剤は合一の際に使用するものと同じものを使用することができる。また、凝集粒子の融着はバインダー樹脂のガラス転移点以上に凝集体が分散している水性媒体全体を加熱して行う。融着は60〜100℃、より好ましくは70〜90℃で行う。
【0053】
会合法により製造される会合体は、前記合一体と同様に、有機顔料やワックス等がバインダー樹脂に内包されていることが特徴である。また、会合体の形状は、会合時の条件により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。球形度を向上させるためには、より高い温度で長時間の融着を行えばよい。
【0054】
第三工程では、第二工程において得られた合一体あるいは会合体を水性媒体から分離し、乾燥する。水性媒体からの分離は、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0055】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0056】
本発明の製法で得られるトナーの粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型(アパーチャーチューブ径:100μm)による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下であること好ましく、より好ましくは1.20以下である。1.25以下であると良好な画像を得られやすく好ましい。また、GSDは1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。
【0057】
本発明の製法で得られるトナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μmとなる範囲が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0058】
本発明で使用するバインダー樹脂としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、またはスチレンブタジエン樹脂のようなビニル系の共重合体樹脂、さらに、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等を挙げることができるが、これらの中でもビニル系の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、定着性、耐オフセット性、透明性等のバランスが良いことから、ポリエステル樹脂が特に好適に使用することができる。
【0059】
本発明で好適に使用するポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合されることによって合成される。
【0060】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
【0061】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのごとき脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのごとき脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のごとき芳香族ジオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることもでき、2種以上を併用して用いることもできる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
【0062】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整することができる。このような目的で用いるモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸などが挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
【0063】
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを常法に従って縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを、温度計、攪拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物を得ることができる。
【0064】
このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物;テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1質量%の範囲とするのが好ましい。
【0065】
なお、このような縮重合反応において、特に分岐、または架橋ポリエステル樹脂を製造するためには、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸またはその無水物、及び/又は、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを必須の合成原料として用いればよい。
【0066】
本発明に用いられるバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0067】
また、本発明に使用されるバインダー樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0068】
さらに、フルカラートナーとして、特に、色重ね時の色再現性や透明性を要求される場合には、樹脂の軟化点としては、90℃〜130℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜120℃の範囲である。
【0069】
本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0070】
本発明の製造方法では、離型剤を用いることができる。その場合に離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類の群の中から選ばれた離型剤が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックス等の天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類が好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、WEP-5(日本油脂社製)が好適に用いられる。離型剤の含有量は、1質量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40質量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40質量%の範囲内が好ましい。
【0071】
本発明の製造方法では、帯電制御剤を用いることができる。正帯電性帯電制御剤としては、特に限定はなく、トナー用として公知慣用のニグロシン染料、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物等が使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性帯電制御剤としての効果があり、本発明の正帯電性帯電制御剤として、単独で、あるいは前記正帯電性帯電制御剤と併用して用いることができる。また、用途によっては、これら正帯電性帯電制御剤にアゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負帯電制御剤を少量併用することも可能である。また、負帯電性帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基および/またはスルホニル基を含有する樹脂、等が挙げられる。
【0072】
帯電制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。
【0073】
本発明の製造方法に使用される有機顔料については、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。本発明のトナーに使用できる青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,15,16,60が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0074】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 17,74,93,97,110,155,および180が挙げられ、より好ましくはC.I.Pigment Yellow 74,93,97,180が挙げられ、特に、C.I.Pigment Yellow 93,97,180が好ましい。
【0075】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,53:1,57:1,122および209が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0076】
上記、好ましい顔料として挙げた顔料を本発明の製造方法で使用すると、より球形度が高く、シャープな粒度分布を有するトナーを製造することができる。
【0077】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0078】
乾燥させたトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性等の物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ等が好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイル等で処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
【0079】
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
【0080】
静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライト等が使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。
【0081】
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。
【0082】
これらの中でも、特にシリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。また、トナー粒子とキャリアからなる現像剤の帯電特性は、シリコン等のコート剤のコート量の調整、帯電制御剤の添加、カーボンに代表される導電物質の添加等により調整できる。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであり、場合により、コート在中に帯電制御剤、カーボン等を添加して帯電特性を調整することが好ましい。
【0083】
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置等に使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルム等の転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。
【0085】
(ポリエステル樹脂合成例)
多価カルボン酸として無水トリメリット酸(TMA)、2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)を表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3質量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28-517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を表1に示す
【0086】
【表1】
表1
Figure 0004048942
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
TMA;無水トリメリット酸
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA−PO;ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BPA−EO;ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
EG;エチレングリコール
FT値;フローテスター値
【0087】
前述したように本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。また、ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定したオンセット値である。
【0088】
(離型剤微分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)30部とポリエステル樹脂(表1中R1)70部とを加圧ニーダーで混練後、該混練物とメチルエチルケトン185部とをボールミルに仕込み、6時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を35質量%に調整し、離型剤の微分散液(W1)を得た。
【0089】
(着色剤マスター溶液の調製例)
表2の配合にて着色顔料と樹脂(表1中R1)とを加熱二本ロールで溶融混練した後、得られた混練物に固形分含有量が30〜35質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。固形分含有量はメチルエチルケトンで30質量%に調整した。
【0090】
【表2】
表2
Figure 0004048942
(ミルベースの調製)
上記離型剤分散液、着色剤分散液、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンをデスパーで混合して、ミルベース(MB1〜MB7)を作製した。作製したミルベースの配合を表3に示す。
【0091】
【表3】
表3
Figure 0004048942
【0092】
表3で使用したブレンド樹脂の特性を表4に示した。樹脂のブレンドは200メッシュを通過した樹脂粒子を上記質量比(総樹脂量を100とするとR1/R2の質量比率は60/40となる)でブレンドして各物性値を測定した。
【0093】
【表4】
表4
Figure 0004048942
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
【0094】
なお、各合成例で得られた樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に入れ12時間放置した溶液を濾過して得られたTHF可溶性成分の分子量を測定した。分析には、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用い、標準ポリスチレンにより作成した検量線から分子量を算出した。
GPC装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC
カラム:東ソー(株)製 TSK Guardcolumn SuperH−H TSK−GEL SuperHM−M 3連結
濃度 :0.5質量%
流速 :1.0ml/min
【0095】
また、結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分は下記の方法により求めた。
樹脂1gを精秤した値を(X)とする。この樹脂をテトラヒドロフラン40ml中に溶解し、その後、桐山濾紙(No.3)上にラヂオライト(昭和化学社製 #700)2gを均一に充填したロート(直径40mm)を用いて濾過する。濾液をアルミシャーレ上にあけて、140℃で1時間乾燥し、濾液中に含まれていた樹脂の質量(Y)を測定する。下記式によりテトラヒドロフラン不溶分を計算する。
テトラヒドロフラン不溶分(%)={1−(Y)/(X)}×100
【0096】
酸価はJIS K6901に、TgはJIS K7121に準じ測定した。
【0097】
<合一によるシアントナーの製造>
(実施例1)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を500部、メチルエチルケトンを45.5部仕込み、固形分含有量を55%に調整した。次いで1規定アンモニア水41.7部樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量に対する当量比は1.1を加えて、スリーワンモーターにより210rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を25℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は0.71m/sであった。次に、脱イオン水285部を加えて(1規定アンモニア水と水の総量が593部となる量の脱イオン水量)溶剤量を調整した。
【0098】
なお、実施例1における樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量に対する塩基性化合物(アンモニア水)の当量比は以下の計算により求めた。
(1)樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量(A)
7.7(樹脂酸価)×300(ミルベース固形分)×0.92(固形分中の樹脂比率;表3中のMB1に使用されている樹脂R1とR2の樹脂比率の合計)/56100=0.0379mol
(2)1規定アンモニア水41.7部中の水酸基量(B)
1×41.7/1000=0.0417mol
(3)当量比(B)/(A)
0.0417/0.0379=1.1
【0099】
次いで、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製)の2.8部を水30部に希釈して添加した。その後、温度を25℃に、また回転数を158rpmに調整し、3.5%の硫酸アンモニュウムの水溶液を粒径が5.5μmに成長するまで滴下し、その後、同条件で粒径が7μmに成長するまで攪拌を続け合一操作を終了した。この時の硫酸アンモニュウムの添加量は300部であった。また、攪拌翼の周速は0.54m/sであった。
【0100】
<評価方法>
得られたスラリーは、減圧下有機溶剤を留去した後、コールターカウンターマルチサイザーTAIIにより粒径、粒度分布を測定した。また、得られたスラリーを透過型顕微鏡の400倍で観察し、異形粒子の混在状態を評価した。400倍で観察した視野の中に、異形粒子が数多く存在するものを×、視野を変えることで異形粒子が確認されるものを△、視野を変えてもほとんど異形粒子が確認されないものを○とした。平均円形度は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求めた。
【0101】
実施例1と同様の操作で、実施例2と3、及び比較例1〜3のサンプルを作製した。各実施例、比較例の造粒条件、及び評価結果を表5と6に示した。なお、表中の塩基性化合物の当量は、実施例1に記載した計算方法と同様にして求めた値である。
【0102】
【表5】
表5
Figure 0004048942
【0103】
【表6】
表6
Figure 0004048942
【0104】
<合一によるイエロートナーの製造>
(実施例4)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB2を500部、メチルエチルケトンを45.5部仕込み、固形分含有量を55%に調整した。次いで1規定アンモニア水55.6部(樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量に対する当量比は1.5)を加えて、スリーワンモーターにより210rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水200部を加え、さらに攪拌を行い、温度を25℃に調製した。ついで、同条件下で150部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は0.71m/sであった。次に、脱イオン水84部(1規定アンモニア水と水の総量が490部となる量の脱イオン水量)を加えて溶剤量を調整した。
【0105】
次いで、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製)の3.0部を水30部に希釈して添加した。その後、温度を25℃に、また回転数を158rpmに調整し、2.7%の硫酸アンモニュウムの水溶液を粒径が5.5μmに成長するまで滴下し、その後、同条件で粒径が7μmに成長するまで攪拌を続け合一操作を終了した。この時の硫酸アンモニュウムの添加量は270部であった。また、攪拌翼の周速は0.54m/sであった。
【0106】
実施例3と同様の操作で、実施例5〜8、及び比較例4〜6のサンプルを作製した。各実施例、比較例の造粒条件、及び評価結果を表7と8に示した。なお、表中の塩基性化合物の当量は、実施例1に記載した計算方法と同様にして求めた値である。
【0107】
【表7】
表7
Figure 0004048942
【0108】
【表8】
表8
Figure 0004048942
【0109】
<合一によるマゼンタトナーの製造>
(実施例9)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB7を500部、メチルエチルケトンを45.5部仕込み、固形分含有量を55%に調整した。次いで1規定アンモニア水74.1部(樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量に対する当量比は2.0)を加えて、スリーワンモーターにより210rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水200部を加え、さらに攪拌を行い、温度を25℃に調製した。ついで、同条件下で150部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は0.71m/sであった。次に、脱イオン水66部(1規定アンモニア水と水の総量が490部となる量の脱イオン水量)を加えて溶剤量を調整した。
【0110】
次いで、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製)の3.0部を水30部に希釈して添加した。その後、温度を25℃に、また回転数を158rpmに調整し、2.7%の硫酸アンモニュウムの水溶液を粒径が5.5μmに成長するまで滴下し、その後、同条件で粒径が7μmに成長するまで攪拌を続け合一操作を終了した。この時の硫酸アンモニュウムの添加量は252部であった。また、攪拌翼の周速は0.54m/sであった。
【0111】
実施例9と同様の操作で、実施例10〜13、及び比較例7〜9のサンプルを作製した。各実施例、比較例の造粒条件、及び評価結果を表9と10に示した。なお、表中の塩基性化合物の当量は、実施例1に記載した計算方法と同様にして求めた値である。
【0112】
【表9】
表9
Figure 0004048942
【0113】
【表10】
表10
Figure 0004048942
【0114】
<会合によるシアントナーの製造>
(実施例14)
攪拌装置を有する円筒型のセパラブルフラスコにミルベースMB1を500部、メチルエチルケトンを45.5部仕込み、固形分含有量を55%に調整した。次いで、1規定アンモニア水41.7部(樹脂R1及びR2が有するカルボキシル基の総量に対する当量比は1.1)を加えて十分に攪拌した後、脱イオン水160部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、150部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。次に、脱イオン水400部を加えて、脱溶剤を行い、最終的に固形分含有量を34%に調製した。
【0115】
得られた樹脂微粒子の分散体235部を脱イオン水で希釈して、固形分含有量を20%にし、さらに20%の硫酸アンモニュウム水溶液を60部加えてから65℃に昇温して30分間攪拌し、所定粒径となるまで凝集させた。その後ノニオン型乳化剤NL-250(第一工業製薬社製)0.6部を添加した後、70℃で6h攪拌して融着を行った。Dv50は7.2μmであった。評価結果を表11に示す。
【0116】
【表11】
表11
Figure 0004048942
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の製造方法によれば、異形粒子の発生を極力抑え、真球に近く、粒度分布がシャープなケミカルトナーを製造することができる。また、乳化ロスが無く、高収率で前記特性を有するケミカルトナーを製造することができる。

Claims (4)

  1. カルボキシル基を有するバインダー樹脂と有機顔料を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて着色樹脂溶液を製造し、次いで、該カルボキシル基の全量に対して1〜3当量の塩基性化合物を使用して該着色樹脂溶液を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該着色樹脂溶液の微粒子を形成させ、その後、分散安定剤及び電解質を順次添加することで該微粒子の合一体を形成させ、更に、該合一体中の有機溶剤を除去した後、該合一体を該水性媒体から分離し、乾燥することによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 該バインダー樹脂の酸価が3乃至30である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 該塩基性化合物の使用量が、該カルボキシル基の全量に対して1当量を越えて2当量以下である請求項1又は2のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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