JP4356223B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられ、さらにはトナージェット式方式のプリンター等にも用いられる、静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真式の複写機、プリンター、ファックスなどにおいては、印刷画像品質のさらなる向上、あるいはマシンのコストダウン、小型化、省電力化、省資源化などのために、トナーに対して次のようなニーズが高まっている。
(1)印刷画像の解像性や階調性の向上、トナー層の薄層化、廃トナー量の削減、ページ当たりトナー消費量の低減などのための、トナーの小粒径化や球形化
(2)消費電力低減のための定着温度の低温度化
(3)マシンの簡素化などのためのオイルレス定着化
(4)フルカラー画像における色相・透明性・光沢の向上
(5)人間の健康に悪影響を与える懸念のある定着時のVOC(揮発性有機化合物)低減
等である。
【0003】
古くから行われている粉砕法による粉体トナーにおいても、基本的には小粒径化は可能であるが、小粒径化に伴い、▲1▼トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の離型剤の比率が増大するために帯電制御が難しくなる、▲2▼トナー粒子が不定形のために粉体流動性が悪化する、▲3▼製造に要するエネルギーコストが高騰する、などの問題が生じ、粉砕法による不定形トナーでは上記のようなニーズを十分に満足することは、実際上困難である。
【0004】
このような背景から、従来では重合法や乳化分散法による球形トナーの開発が活発に行われている。重合法によるトナーに関しては、各種方法が知られている、それらの中でも、モノマー、重合開始剤、着色剤および帯電制御剤等を均一に溶解、分散し、これを分散安定剤を含有する水性媒体中に攪拌しながら加えて、油滴を形成した後、昇温して重合反応を行ってトナー粒子を得る、懸濁重合法が広く行われている。重合法によれば、トナー粒子の小粒径化や球形化には問題ないものの、結着樹脂の主成分がラジカル重合可能なビニル重合体に限られていることから、カラートナーなどに好適なポリエステル樹脂やエポキシ樹脂によるトナー粒子を、懸濁重合法によって製造することはできない。また、重合法では、VOC(未反応モノマーなどからなる揮発性有機化合物)低減が難しいという問題もあり、その改善が望まれている。
【0005】
一方、乳化分散法によるトナーの製法は、特開平5−66600号公報や特開平8−211655号公報などに開示されているように、結着樹脂と着色剤等の混合物を水性媒体と混合して乳化させてトナー粒子を得るという方法であって、重合法と同様に、トナーの小粒径化や球形化に容易に対応できることに加え、重合法に比べ、▲1▼結着樹脂の種類の選択幅が広くなる、▲2▼VOC低減が容易である、▲3▼着色剤等の濃度を低濃度から高濃度まで任意に変化させることができる、などの利点を有している。
【0006】
定着温度が比較的低く、また定着時に鋭敏に溶融して画像表面が平滑になりやすいトナー用結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂よりもポリエステル樹脂が好ましく、特にカラートナーについては、可撓性に優れるポリエステル樹脂の方が好ましいのは周知である。
しかして、前述したように重合法では、ポリエステル樹脂を結着樹脂の主成分とするトナー粒子を製造することはできない。そこで、近年では、乳化分散法によってポリエステル樹脂を結着樹脂とする、球形〜略球形の小粒径トナーを製造することが注目されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の乳化分散法によるポリエステル樹脂トナーでは、比較的低分子量の直鎖状樹脂を結着樹脂としていることからオフセット現象が生じ易く、したがってこれを防止するため、シリコーンオイル等のオフセット防止液を定着用ヒートロールに塗布する必要があった。
【0008】
しかしながら、定着用ヒートロールにオフセット防止液を塗布することは、メンテナンスが煩雑になるなどの問題に加えて、印刷紙やOHPシートにシリコーンオイル等が移行する結果、印刷後の書き込みに支障が生じたり、オイルのベトつきが生じるなどといった不都合を招いてしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ヒートローラー定着方式として、オフセット防止液を使用しないで定着を可能とする、いわゆるオイルレス方式を可能にし、しかも優れた品質の現像画像が得られる球形〜略球形の、ポリエステル樹脂からなる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、結着樹脂に内包する離型剤について鋭意検討を重ねた結果、これの凝集を防止してその分散性を高めることにより、オフセットを良好に抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の静電荷像現像用トナーでは、酸性基含有ポリエステル樹脂(I)を結着樹脂とし、該結着樹脂、着色剤、離型剤及び有機溶剤を少なくとも含有してなる混合物を、塩基の存在下で水性媒体と混合して乳化することにより、少なくとも着色剤と離型剤とを該結着樹脂に内包した樹脂粒子を形成する製造方法によって得られる静電荷像現像用トナーにおいて、上記混合物中に含有される離型剤の形態が、分散剤の存在下で離型剤が有機溶剤中に溶解後析出され、かつ微分散せしめられて得られる離型剤の分散液であることを上記課題の解決手段とした。
【0012】
上記離型剤としては、炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、及び天然エステル系ワックス類からなる群の中から選ばれた離型剤であるのが好ましい。
【0013】
また、上記酸性基含有ポリエステル樹脂(I)が、
(A)定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が80℃以上、120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下である直鎖状ポリエステル樹脂、
(B)定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が120℃を越え、210℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下である架橋ポリエステル樹脂、
の混合物であり、
樹脂(A)と樹脂(B)との重量比率が、
(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
T1/2 温度をそれぞれT1/2 (A)、T1/2 (B)としたとき、
20℃<T1/2 (B)−T1/2 (A)≦120℃
の関係にあるのが好ましい。
【0014】
また、上記分散剤が、ポリエステル樹脂(II)であるのが好ましく、さらにこのポリエステル樹脂(II)が、酸性基含有直鎖状ポリエステル樹脂であるのが好ましい。
【0015】
また、下記式で定義される平均円形度が、0.97以上の球形〜略球形であるのが好ましい。
平均円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(粒子投影像の周長)
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーの結着樹脂として用いられる酸性基含有ポリエステル樹脂は、本発明において第1のポリエステル樹脂、すなわち本明細書中においてポリエステル樹脂(I)として記され、後述する分散剤として好適に用いられる第2のポリエステル樹脂(II)と区別されるものである。この酸性基含有ポリエステル樹脂(I)は、例えば多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合されることによって合成される。
【0017】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
【0018】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのごとき脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのごとき脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のごとき芳香族ジオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることもでき、2種以上を併用して用いることもできる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
【0019】
ここで、得られるポリエステル樹脂(I)が酸性基としてカルボキシル基を含有するようにするためには、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合反応を、カルボキシル基が残存するようにして行わせればよい。また、ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入して酸性基を含有させる方法としては、水酸基を有する線状又は分岐ポリエステル樹脂に、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸のごとき酸無水基含有化合物を付加する方法が挙げられる。また、水酸基を有するポリエステル樹脂、好ましくは線状ポリエステル樹脂に、無水ピリメリット酸のごときテトラカルボン酸二無水物を反応させ、カルボキシル基を導入すると同時に鎖伸長させる方法も採用可能である。さらに、ポリエステル樹脂に、カルボキシル基を含有した重合性単量体類をグラウト重合する方法によっても、カルボキシル基を導入することが可能である。
【0020】
なお、本発明における酸性基含有ポリエステル樹脂(I)において、その酸性基としては、上記カルボキシル基以外にリン酸基やスルホン酸基としてもよい。このような酸性基を有することによってポリエステル樹脂(I)は、中和することによって親水性を増し、乳化剤または分散安定剤を用いなくても水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)中に分散する、いわゆる自己水分散性樹脂となる。
【0021】
また、このようにして得られたポリエステル樹脂(I)に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂(I)の酸価を調整することもできる。
このような目的で用いるモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸などが挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
【0022】
ポリエステル樹脂(I)は、上記した多価アルコールと多価カルボン酸とを常法に従って縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを、温度計、攪拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物を得ることができる。
【0023】
このようなポリエステル樹脂(I)の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物;テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して、0.01〜1重量%の範囲とするのが好ましい。
【0024】
なお、このような縮重合反応において、特に架橋ポリエステル樹脂を製造するためには、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸またはその無水物、及び/又は、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを必須の合成原料として用いればよい。
【0025】
また、このようにして得られるポリエステル樹脂(I)としては、もちろん1種類のポリエステル樹脂によって構成してもよいが、以下に示すような条件による、直鎖状ポリエステル樹脂(A)と架橋ポリエステル樹脂(B)との混合物とするのがより好ましい。
すなわち、直鎖状ポリエステル樹脂(A)として、定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が80℃以上、120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下のもの、また架橋ポリエステル樹脂(B)として、定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が120℃を越え、210℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下のもの、
さらに、これら直鎖状ポリエステル樹脂(A)と架橋ポリエステル樹脂(B)との重量比率が、
(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
また、T1/2 温度をそれぞれT1/2 (A)、T1/2 (B)としたとき、
20℃<T1/2 (B)−T1/2 (A)≦120℃
の関係にあるものが用いられる。
【0026】
ここで、定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度は、本発明では島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて求められている。このフローテスタは、図1(a)に示すようにノズル径Dが1.0mmΦでノズル長さ(深さ)Lが1.0mmのノズル1を有するシリンダー2に、樹脂3を充填し、ノズル1と反対の側から単位面積(1cm2 )当たり10kgの荷重をかけ、その状態で毎分6℃の昇温速度で加熱したときの、荷重面4のストロークS(荷重面4の沈み値)を測定することによって得られる。すなわち、昇温した温度とストロークSとの関係を図1(b)に示すようにして求め、ノズル1からの樹脂3の流出が始まって急激にストロークSが大きくなり、カーブが立ち上がったときの温度をTfbとし、また、ノズル1からの樹脂3の流出がほぼ終了してカーブがねたときの温度をTend とする。そして、TfbのときのストロークSfbとTend のときのストロークSend との中間値となるS1/2 のときの温度を、T1/2 温度としている。
また、ガラス転移温度Tgは、本発明においては島津製作所製示差走査熱量計DSC−50を用いて、セカンドラン法で毎分10℃の昇温速度で測定し、得られる値である。
【0027】
直鎖状ポリエステル樹脂(A)、架橋ポリエステル樹脂(B)として、いずれもそのガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下であるのが好ましいのは、ガラス転移温度Tgが40℃未満であると、得られるトナーが貯蔵中または現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすくなる傾向にあり、一方、ガラス転移温度が75℃を越えると、トナーの定着温度が高くなる傾向にあるからである。
なお、直鎖状ポリエステル樹脂(A)は架橋剤成分を含まないテトラヒドロフランに可溶な樹脂を示し、架橋ポリエステル樹脂(B)はテトラヒドロフランに不溶な成分を有する樹脂を示す。
【0028】
このように、結着樹脂となるポリエステル樹脂として、上記の関係にある直鎖状ポリエステル樹脂(A)および架橋ポリエステル樹脂(B)を用いることにより、得られるトナーはより良好な定着性を有するようになり、好ましい。また、一般的に低分子量で低粘性となる直鎖状ポリエステル樹脂(A)と、高分子量で高粘性となる架橋型のポリエステル樹脂(架橋ポリエステル樹脂)(B)とをブレンドして用いることが、樹脂の製造上も実際的であり好ましい。
【0029】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、離型剤として、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類の群の中から選ばれたワックスが好適に用いられる。
【0030】
用いるワックスの融点については、特に限定されないものの、耐オフセット性の観点から150℃以下であるのが好ましく、また、低温定着性や保存性の観点から、50〜120℃の範囲にあるのがより好ましい。このようなワックスは、トナーの製造にあっては、後述するように分散液に調製されて用いられる。また、ワックスは、トナー粒子中に分散しているのが好ましく、平均3μm以下、好ましくは平均1μm以下程度の粒径で分散しているのが好ましい。ワックスの含有量は、トナーに対して1〜40重量%の範囲が好ましい。1重量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40重量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるからである。
【0031】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる着色剤としては、特に制限されることなく公知慣用のものが用いられるが、各種の顔料がより好適に用いられる。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。また、下記の有彩色顔料を黒色となるように配合したものを使用することもできる。
【0032】
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンファーストイエロー5G、バルカンファーストイエローR、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー、その他イソインドリノンイエロー、クロモフタルイエロー、ノボパームイエローH2G、縮合アゾイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー等が挙げられる。
【0033】
赤色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、パーマネントレッドBL、パーマネントレッドF5RK、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、パーマネントカーミンFBB、ベリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、アンスアンスロンオレンジ、ピランスロンオレンジ、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド等が挙げられる。
【0034】
青色顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ファナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーRS、インダスレンブルーBC、インジコ等が挙げられる。
【0035】
これら着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部当たり1〜50重量部の範囲が好ましく、3〜15重量部の範囲が特に好ましい。
【0036】
ところで、トナーを小粒径化するとともに、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常ワックスや帯電制御剤など)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(重量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化してしまい、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わることにより、適性な帯電性が得られにくくなるのである。
【0037】
本発明のトナーは、少なくとも着色剤とワックスとが結着樹脂に内包されているものであり、このように内包された構造となることにより、良好な印刷画像が得られる。トナー粒子表面に着色剤やワックスが露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0038】
本発明の静電荷像現像用トナーは、カルボキシル基等の酸性基を含有するポリエステル樹脂からなる結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、有機溶剤とを少なくとも含有する混合物を、塩基の存在下で水性媒体と混合して乳化することにより、少なくとも着色剤と離型剤とを結着樹脂に内包した樹脂粒子を形成し、次いで、該樹脂粒子を液媒体から分離し乾燥する製造方法により、製造されて得られる。また、この製造方法において、上記混合物中に含有される離型剤の形態は、分散剤の存在下で離型剤が有機溶剤中に溶解後析出され、かつ微分散せしめられて得られる離型剤の分散液とされる。
【0039】
すなわち、本発明のトナーは、例えば、特開平8−211655号公報や特開平10−319639号公報に開示されているような、塩基性中和剤を用いて含有酸基を中和し結着樹脂を自己水分散性樹脂に変化させることにより、乳化剤や分散安定剤などを使用しないで造粒する方法、あるいは特開平1−158042号公報に開示されているような、乳化剤や分散安定剤を使用して造粒する方法により、製造される。
【0040】
カルボキシル基等の酸性基を含有するポリエステル樹脂は、酸性基を中和することにより自己水分散性となる。自己水分散性を有する樹脂は、酸性基がアニオン型となることにより親水性を増し、乳化剤または分散安定剤を用いることなく、水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)中に分散する。
【0041】
酸性基(カルボキシル基)を中和するために用いる塩基としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。
【0042】
結着樹脂と着色剤とワックス(離型剤)とを溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0043】
ここで、結着樹脂と着色剤とワックス(離型剤)とを前記有機溶剤に溶解あるいは分散させて混合物を形成するに先立ち、この混合物中に含有されるワックス(離型剤)の形態を、以下のようにして調製する。
分散剤の存在下で離型剤を有機溶剤中に溶解しその後これを析出させ、かつ析出した離型剤を微分散せしめることにより、離型剤の分散液を得る。析出した離型剤を微分散せしめるにあたっては、例えばメディアによる粉砕及び/又は分散を行うのが、微分散により得られる離型剤をより小径にするとともに、その凝集を防止することができ、好ましい。
【0044】
ここで、用いられる分散剤としては、前述した第2のポリエステル樹脂(II)が好適に用いられる。このポリエステル樹脂(II)としては、前記ポリエステル樹脂(I)に使用可能なものとして挙げたものがそのまま使用可能であり、特に、酸性基含有直鎖状ポリエステル樹脂であるか、あるいはこれを含有するものであるのが好ましい。また、このポリエステル樹脂(II)としては、結着樹脂として用いたポリエステル樹脂(I)と異なるものでもよいものの、これと同一のものを用いるのが、特にカラー用トナーの場合に結着樹脂との相溶性が良いなど、品質管理上や生産管理上の点で好ましい。なお、分散剤としては、上記ポリエステル樹脂(II)に代えて、乳化剤や高分子分散剤等を用いることも可能である。
【0045】
また、この分散剤としては、用いる種類によっても異なるものの、離型剤/分散剤の重量比が、20/80〜80/20重量%程度とするのが好ましい。分散剤が20重量%未満であると、前述した離型剤の凝集防止効果が十分に得られなくなるおそれがあり、一方、80重量%を越えても、後述するように離型剤表面に付着する分散剤の量はほとんど増えず、したがって前述した離型剤の凝集防止効果の向上があまり期待できないからである。
【0046】
分散剤の存在下で離型剤を溶解させその後これを析出させるための有機溶剤としては、前記の、結着樹脂と着色剤とワックス(離型剤)とを溶解あるいは分散させるための有機溶剤として挙げたものが、そのまま使用可能である。この有機溶剤の量については、特に限定されることはないものの、離型剤と分散剤の固形分含有量が10〜60重量%程度とされる。溶剤量が40重量%未満であると均一な分散液が得られず、一方、90重量%を越えると離型剤の分散密度が低下し、前述したように結着樹脂や着色剤とともにこの分散液を有機溶剤に添加した際、溶剤量が過多となって生産性が低下してしまうからである。
なお、この有機溶剤としても、結着樹脂等を溶解あるいは分散させるための有機溶剤と異なるものでもよいものの、これと同一のものを用いるのが、品質管理上や生産管理上の点で好ましい。
【0047】
分散剤の存在下で離型剤を有機溶剤中に溶解し、その後これを析出させる方法としては、まず、有機溶剤に離型剤と分散剤とを添加し、攪拌及び/又は加熱処理を行うことによって離型剤と分散剤とを有機溶剤中に溶解させ、その後、この溶液を冷却することにより、離型剤と分散剤とを析出させるといった方法が採られる。
【0048】
また、析出した離型剤を微分散せしめる方法としては、前述したようにメディアにより粉砕及び/又は分散を行う方法が好適に採用されるが、これ以外にも、攪拌機により攪拌する方法などが採用可能である。
離型剤および分散剤を粉砕及び/又は分散せしめるための、メディアを用いる方法として具体的には、アイガーモーターミル、SCミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、コボールミル、DCミル、ファインミルなどの、いわゆる媒体ミルや媒体攪拌ミルによる方法が挙げられる。
【0049】
微分散によって離型剤粒子をより小さく、またより均一な粒子にするためには、例えばメディアによって離型剤および分散剤を粉砕及び/又は分散せしめる場合、粉砕及び/又は分散領域での分散温度を50℃以下とするのが好ましく、30〜40℃とするのがより好ましい。分散液温度が50℃を越えると、微粒子化した離型剤が再凝集しやすくなり、分散剤を付着した離型剤が所望の均一な微粒子になりにくくなるからである。
このような温度に調整するためには、粉砕及び/又は分散領域において、分散処理による発熱を効果的に冷却する必要がある。したがって、粉砕及び/又は分散を行うにあたっては、分散液を効果的に冷却できる機構をもつ装置、例えばアイガーモーターミル、SCミル、サンドミル、アトライター、コボールミル、DCPミル、ファインミルなどを用いるのが好ましい。
【0050】
また、このような分散液の作製に用いられるメディアの形状としては、円柱状や球状などを採用することができるものの、粉砕および分散の効率、分散装置への適応を考慮すると、球状が好ましい。球状メディアのサイズとしては、各分散装置によって最適値が異なるが、例えば、ボールミルでは直径を1〜50mmとするのが好ましいものの、分散剤を付着する離型剤の形状を効果的に均一に微粒子化するためには、直径を1〜10mmとするのが好ましい。
【0051】
なお、分散剤の存在下で離型剤を有機溶剤中に溶解し、その後これを析出させる工程と、析出した離型剤を微分散せしめる工程とは、原理的には析出→微分散の順になされるが、見掛け上はこれらを同時に行うことも可能である。すなわち、分散剤の存在下で離型剤を有機溶剤中に溶解した後、攪拌機等により微分散をなす処理を行いつつ、該有機溶剤を冷却して離型剤を析出させるといった手法を採用してもよい。
【0052】
このようにして分散液を調製すると、分散剤の存在下で離型剤を有機溶剤中に溶解しその後析出させていることから、この析出工程で離型剤が小径化し、該離型剤がせん断力を受け易くなる。したがって、さらに微分散処理を行うことにより、分散液中の離型剤は0.05〜3μm程度の十分に小径の微粒子となる。また、離型剤の析出・微分散を分散剤の存在下で行っていることにより、この分散液においては、離型剤表面に分散剤の微粒子が付着してこれらが一体化したものとなる。そして、付着した分散剤の一部が有機溶剤に溶解するとともに、この付着した分散剤の立体障害効果により、離型剤は分散液中にて凝集することなく均一に分散した状態となる。
【0053】
このようにして調製された離型剤の分散液を、結着樹脂と着色剤とに混合し、さらにこれらを有機溶剤に仕込んで溶解あるいは分散させて混合物を作製したら、塩基の存在下で水性媒体と混合して乳化し、少なくとも着色剤と離型剤とを結着樹脂(ポリエステル樹脂(I))に内包した樹脂粒子を形成する。
【0054】
ポリエステル樹脂(I)の酸性基を塩基で中和する方法としては、(1)中和された酸性基を有する結着樹脂、着色剤、ワックスおよび有機溶剤を含有する混合物を調製する方法、あるいは(2)酸性基を有する結着樹脂、着色剤、ワックスおよび有機溶剤を含有する混合物を調製した後、塩基で中和する方法、が挙げられる。
【0055】
ポリエステル樹脂(I)の酸性基を塩基で中和した後、乳化する方法としては、(3)該混合物を水性媒体中に加えて乳化する方法、あるいは(4)該混合物中に水性媒体を添加する方法、が挙げられる。上記(2)と(4)との組み合わせによれば、粒度分布が良好となるので好ましい。
【0056】
その他、水性媒体中に塩基性中和剤を混合しておく方法もあるが、粒度分布の面から、上記組み合わせによる中和、乳化方法が好ましい。
乳化の際に、必要であれば、本発明の効果を損なわない限りにおいて、乳化剤及び/又は分散安定剤を併用することもできる。
【0057】
分散安定剤としては、無機の分散安定剤、有機の分散安定剤が使用可能であり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリデン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのごとき水溶性高分子が用いられる。
乳化剤としては、例えば、ポリオキエチレンアルキルフェノールエーテルのごときノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのごときアニオン系界面活性剤;カチオン系界面活性剤、などが用いられる。
【0058】
これら分散安定剤または乳化剤を使用する場合、単独で用いることも、2種以上を併用して用いることもできる。また、乳化剤と分散安定剤とを併用してもよいが、分散安定剤を主体にして乳化剤を併用するのが一般的である。分散安定剤や乳化剤を用いる場合、その水性媒体中における濃度は、0.5〜3.0重量%の範囲が好ましい。
【0059】
結着樹脂に着色剤やワックス等が分散した混練物の有機溶媒溶液の製法としては、(1)有機溶媒に結着樹脂を溶解し、それに着色剤やワックスを加え、デスパ(分散攪拌機)、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等の一般的な混合機・分散機を使用して分散させる方法。あるいは、(2)別途着色剤やワックスを、上記の一般的な混合機・分散機を使用して分散させた後、結着樹脂の有機溶剤溶液と混合する方法、などが挙げられる。このような湿式による分散によれば、高分子成分(ゲル分を含む)の切断を抑えることができ、好ましい。
【0060】
上記混合物の有機溶媒溶液と水性媒体とを混合し、乳化分散させる装置としては、例えば、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、特開平9−114135号公報に開示されている攪拌装置、スラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサーのごとき乳化分散機などが挙げられる。しかしながら、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用して、該攪拌翼の周速が0.2〜5m/sの低シェアーで攪拌しながら水を滴下する方法が好ましい。このような低シェア下における乳化分散を行うことにより、微粉の発生を抑えることができ、より好ましい均一な粒度分布を実現することができる。またポリエステル樹脂の低分子量成分が微粉に集中して、微粉以外の部分の分子量分布のバランスを崩すことが無く、トナーの低温定着性を悪化させることがない。
【0061】
乳化により得られた球形〜略球形の着色樹脂粒子の分散液については、蒸留等の手段により、まず、有機溶媒を除去することが好ましい。次いで、水性分散液を濾過等の手段で固液分離し、粒子を乾燥させることにより、トナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて得た着色樹脂粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0062】
また、このような乳化により得られた球形〜略球形の着色樹脂粒子の分散液については、有機溶剤を除去した後に、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸で、該粒子表面の中和された酸性基親水性基を元の官能基に戻す逆中和処理を行い、該粒子そのものの親水性をより低下させてから、水を除去して濾別乾燥するのが好ましい。
【0063】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0064】
形成されたトナー粒子の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微細粒子を除去するための分級が必要な場合には、乾燥終了後に、トナー用等に市販されている一般的な気流式分級機を用いて公知慣用の方法で行うことができる。また、トナー粒子が溶媒中に分散している段階で、粒径による沈降性の違いを利用して、トナー粒子の水スラリーを遠心分離機を用いて分級する方法で行ってもよい。また、粗大粒子の除去については、トナー粒子の水スラリーを、フィルターや湿式振動篩いなどで濾過することにより、行うことができる。なお、本発明のトナーの粒度分布については、コールターマルチサイザーによる測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.35以下、より好ましくは1.25以下が良好な画像を得られやすく好ましい。
【0065】
このようにして得られる本発明の静電荷像現像用トナーとしては、下記式、
平均円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が、0.97以上であるのが好ましく、0.98以上であるのがより好ましい。
このような球形〜略球形を有することによって本発明の静電荷像現像用トナーは、小粒径化しても良好な粉体流動性を確保することができ、また良好な転写効率を確保することもでき、これにより優れた画像品質を形成し得るものとなる。なお、この平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することなどによっても求められるが、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られるため、本発明ではこの装置で測定した。
【0066】
また、この静電荷像現像用トナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μm程度が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0067】
乾燥させた粉体トナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加し、流動性や帯電性等の特性を改良するのが好ましい。このような外添剤の例としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、ビニル系(共)重合体などが挙げられる。これらの外添剤を用いる場合の添加量は、トナー粒子に対して0.05〜5重量%の範囲が好ましい。
【0068】
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤あるいはキャリアーと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアーの種類に特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアーが用いられる。
【0069】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方法である、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明のトナーは、定着性やカラー特性に優れることに加え、球形であることから、不定形トナーに比べて、トナージェット方式におけるトナー飛翔の制御が容易になる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は重量部、水は脱イオン水の意である。
【0071】
(ポリエステル樹脂合成例)
多価カルボン酸として無水トリメリット酸(TMA)、2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2,4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2,4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)を、表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3重量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28-517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。
合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を、表1、表2に示す。なお、表1、表2中のゲル分とは、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を示している。また、表1は直鎖状のポリエステル樹脂、表2は架橋ポリエステル樹脂について示している。
【0072】
【表1】
Figure 0004356223
【0073】
【表2】
Figure 0004356223
【0074】
表1、表2において「T1/2 温度」は、前述したように島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて、ノズル径1.0mmΦ×1.0mm、単位面積(cm2 )当たりの荷重10kg、毎分6℃の昇温速度で測定した値である。また、ガラス転移温度である「Tg」は、島津製作所製示差走査熱量計DSC−50を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した値である。
【0075】
(離型剤及び離型剤分散体の調製例1)
離型剤と本発明において分散剤となるポリエステル樹脂(II)とをフラスコに仕込み、窒素気流下にて180℃に昇温し、同温度で1時間攪拌を行った。離型剤と樹脂(分散剤)とが均一に溶解、もしくは分散することを確認した後、冷却し、温度が60℃以下になったところでメチルエチルケトンを固形分含有量が35%となるように添加した。そして、攪拌下にて固形分が完全に溶解するまで再度昇温した。このようにして有機溶剤(メチルエチルケトン)に離型剤と樹脂(分散剤)とを溶解させたら、得られた溶液を以下に示すA法およびB法によってそれぞれ冷却し、離型剤および樹脂を析出させ、かつこれを微分散した。
・A法:冷却して離型剤および樹脂を析出させた後、固形分含有量35%のスラリー溶液を430部ボールミルに仕込み、18時間攪拌することで微分散処理を行い、離型剤の分散液を得た。
・B法:上記の溶液を、ホモミキサーによって3000〜6000RPMで攪拌しつつ、温度を徐々に下げ、50℃で1時間保持した。その後、攪拌を続けたままで室温まで冷却し、これにより離型剤および樹脂を析出させつつこれらの微分散を行い、離型剤の分散液を得た。
【0076】
(離型剤及び離型剤分散体の調製例2)
フラスコに、離型剤、本発明において分散剤となるポリエステル樹脂(II)、およびメチルエチルケトンを、固形分含有量が35%となるようにして加え、攪拌下にて固形分が完全に溶解もしくは均一分散するまで昇温した。このようにして有機溶剤(メチルエチルケトン)に離型剤と樹脂(分散剤)とを溶解もしくは均一分散させたら、得られた溶液もしくは分散液を以下に示すC法によって冷却し、離型剤および樹脂を析出させ、かつこれを微分散した。
・C法:冷却して離型剤および樹脂を析出させた後、固形分含有量35%のスラリー溶液を430部ボールミルに仕込み、18時間攪拌することで微分散処理を行い、離型剤の分散液を得た。
得られた離型剤分散体(W1〜W6)の性状等を表3に示す。また、比較のため、分散剤(ポリエステル樹脂(II))を用いない以外は、上記離型剤分散体(W1〜W6)と同様にして離型剤の分散体を調製し、得られた離型剤分散体(W7〜W11)の性状等を表3に併記する。
【0077】
【表3】
Figure 0004356223
【0078】
表3に示した離型剤は以下の通りである。
FT−100:「LUVAX−1211」(日本精蝋製フィッシャートロプシュワックス)
エステル:「WEP−5」(日本油脂製合成エステルワックス)
カルナバ:「カルナバワックス 1号」((株)加藤洋行輸入品)
ライス:「ライスワックス SS−1」(ボーソー油脂(株)製の水添、精製ライスワックス)
【0079】
(着色剤分散液の調製例)
着色剤、樹脂及び固形分含有量が35〜50%となるようにメチルエチルケトンをボールミルに仕込み、18〜36時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20重量%に調整し、着色剤分散液(P1、P2)を得た。得られた着色剤分散液の性状等を表4に示す。
【0080】
【表4】
Figure 0004356223
【0081】
表4に示した着色剤は以下の通りである。
カーボン:「ELFTEX−8」(キャボット社製)
シアン:ファーストゲンブルー TGR(大日本インキ化学工業社製)
【0082】
(ミルベースの調製)
上記着色剤分散液、樹脂、メチルエチルケトン(MEK)をデスパーで混合し、固形分含有量を55%に調整してミルベース(MB1〜MB6)を作製した。作製したミルベースの配合を表5に示しす。
【0083】
【表5】
Figure 0004356223
【0084】
(実施例1)表5に示したMB2を545.5部、表3に示したWを115部、メチルエチルケトンを57.5部、イソプロピルアルコールを29.0部、1規定のアンモニア水溶液を25.8部、円筒型容器に仕込み、よく攪拌した。続いて、水230部を加え、液温を30℃として、攪拌下に水を44部滴下し、転相乳化を行った。30分間攪拌を続けた後、回転を落とし、水の400部を添加した。ここで、粒子の水スラリーを光学顕微鏡で観察したところ、離型剤の凝集物は観察されず、流出している離型剤も見られなかった。また、コールターカウンターで粒度分布を測定したところ、Dv/Dnは1.32で、粗大粒子の発生は見られなかった。
【0085】
次いで、減圧蒸留で溶剤を除去し、濾過水洗を行った。続いて、得られたウエットケーキを水に再分散させ、分散液のPHが約4になるまで1規定塩酸水溶液を加えた後、濾過水洗を繰り返した。このようにして得られたウエットケーキを凍結乾燥した後、気流式分級機を用いて分級し、体積平均粒径が7.4μm、平均円形度が0.981のトナー粒子を得た。
【0086】
得られたトナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトームで切断し、さらにルテニウム酸四酸化物で染色した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、顔料とワックスが結着樹脂に内包され、かつ、粒子内にほぼ均一に分散しているのが観察された。
その後、ヘンシェルミキサーを用いて、得られたトナー粒子100部に疎水性シリカ1.5部と酸化チタン0.5部とを外添し、粉体トナー(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0087】
(実施例2)表5に示したMB2を545.5部、表3に示したWを115部、メチルエチルケトンを57.5部、イソプロピルアルコールを28.0部、1規定のアンモニア水溶液を26.5部、円筒型容器に仕込み、よく攪拌した。続いて、水230部を加え、液温を30℃として、攪拌下に水を44部滴下し、転相乳化を行った。30分間攪拌を続けた後、回転を落とし、水の400部を添加した。ここで、粒子の水スラリーを光学顕微鏡で観察したところ、離型剤の凝集物は観察されず、流出している離型剤も見られなかった。また、コールターカウンターで粒度分布を測定したところ、Dv/Dnは1.34で、粗大粒子の発生は見られなかった。
【0088】
次いで、減圧蒸留で溶剤を除去し、濾過水洗を行った。続いて、得られたウエットケーキを水に再分散させ、分散液のPHが約4になるまで1規定塩酸水溶液を加えた後、濾過水洗を繰り返した。このようにして得られたウエットケーキを凍結乾燥した後、気流式分級機を用いて分級し、体積平均粒径が5.2μm、平均円形度が0.984のトナー粒子を得た。
【0089】
得られたトナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトームで切断し、さらにルテニウム酸四酸化物で染色した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、顔料とワックスが結着樹脂に内包され、かつ、粒子内にほぼ均一に分散しているのが観察された。
その後、ヘンシェルミキサーを用いて、得られたトナー粒子100部に疎水性シリカ2部と酸化チタン1部とを外添し、粉体トナー(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0090】
(比較例1)
表5に示したMB2を545.5部、表3に示したW7を80.5部、メチルエチルケトンを57.5部、イソプロピルアルコールを29.0部、1規定のアンモニア水溶液を25.8部、円筒型容器に仕込み、よく攪拌した。続いて、水230部を加え、液温を30℃として、攪拌下に水を44部滴下し、転相乳化を行った。30分間攪拌を続けた後、回転を落とし、水の400部を添加した。
ここで、粒子の水スラリーを光学顕微鏡で観察したところ、離型剤の凝集物が多く観察され、また、コールターカウンターで粒度分布を測定したところ、Dv/Dnは1.52であり、微粒子および粗大粒子の発生が見られた。
【0091】
次いで、減圧蒸留で溶剤を除去し、濾過水洗を行った。続いて、得られたウエットケーキを水に再分散させ、分散液のPHが約4になるまで1規定塩酸水溶液を加えた後、濾過水洗を繰り返した。このようにして得られたウエットケーキを凍結乾燥した後、気流式分級機を用いて分級し、体積平均粒径が7.4μm、平均円形度が0.981のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトームで切断し、さらにルテニウム酸四酸化物で染色した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、顔料とワックスが結着樹脂に内包されているものの、離型剤は粒子毎に内包される量が不均一であり、粗大粒子に多くの離型剤が含有されているのが観察された。
その後、ヘンシェルミキサーを用いて、得られたトナー粒子100部に疎水性シリカ1.5部と酸化チタン0.5部とを外添し、粉体トナー(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0092】
(その他の実施例および比較例)
その他の実施例、比較例については、基本的に実施例1と同様の方法で製造するものとし、添加する溶剤量、塩基量を適宜調整することにより、各粉体トナーを得た。
各実施例、比較例の粉体トナーの、使用MB(ミルベース)および使用離型剤、また平均円形度等の測定値、粗大粒子の有無、ガラス転移温度Tg、定着温度幅について、表6に示す。
【0093】
【表6】
Figure 0004356223
【0094】
なお、ガラス転移温度であるTgについては、上記表1、表2の場合と同様に、島津製作所製示差走査熱量計DSC−50を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した。また、定着温度幅については、以下に示す定着性試験によって定着温度を求め、その上限値と下限値との範囲によって示した。
【0095】
(定着性試験)
実施例および比較例の各粉体トナーを用い、市販の非磁性一成分現像方式プリンターを用いて画出しを行った。画出しした印刷紙を、それぞれ90mm/秒のスピードでリコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)に通し、定着を行った。定着後の画像にセロテープを貼り、剥離後のID(画像濃度)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生が見られないときのヒートロールの表面温度を「定着温度」とした。
【0096】
表6に示した結果より、本発明の実施例のものは、定着開始温度、耐ホットオフセット温度ともに良好であり、定着温度幅が広いことが確認された。
【0097】
(画出し試験)
また、各実施例の粉体トナーについて、市販の非磁性一成分現像方式プリンターを用いて画出しを行い、カブリ、解像性、階調性、転写効率についてそれぞれ評価したところ、いずれも良好であった。
さらに、各実施例の粉体トナーについて、シリコンコートフェライトキャリアー(粒径80μm)とトナー濃度が3重量%になるように混合し、二成分現像方式複写機で画出し試験を行ったところ、いずれも良好な画像が得られた。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の静電荷像用現像用トナーは、混合物中に含有される離型剤の形態を、分散剤の存在下で離型剤が有機溶剤中に溶解後析出され、かつ微分散せしめられて得られる離型剤の分散液としたものであるから、分散剤の存在によって分散液中での離型剤の分散が促進されるとともに再凝集が防止されていることにより、この分散液が混合物中に添加されても離型剤が凝集を起こさず容易に分散し、これにより該離型剤が形成される粒子内に均一に分散するようになる。したがって、このようにして得られた静電荷像用現像用トナーは、粗大粒子の発生が防止されたものとなり、これにより良好な定着開始温度と耐ホットオフセット温度を有するものとなる。また、球形かつ小粒径化がなされることにより、粉体流動性、転写効率、解像性、階調性に優れたものとなり、したがって、優れた品質の現像画像を提供し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フローテスタ値の求め方を説明するための図であり、(a)は測定装置の概要を示す側断面図、(b)は測定値から各フローテスタ値を求める方法を説明するためのグラフである。

Claims (6)

  1. 酸性基含有ポリエステル樹脂(I)を結着樹脂とし、該結着樹脂、着色剤、離型剤及び有機溶剤を少なくとも含有してなる混合物を、塩基の存在下で水性媒体と混合して乳化することにより、少なくとも着色剤と離型剤とを該結着樹脂に内包した樹脂粒子を形成する製造方法によって得られる静電荷像現像用トナーにおいて、上記混合物中に含有される離型剤の形態が、分散剤の存在下で離型剤が有機溶剤中に溶解後析出され、かつ微分散せしめられて得られる離型剤の分散液であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 離型剤が炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、及び天然エステル系ワックス類からなる群の中から選ばれる離型剤であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 酸性基含有ポリエステル樹脂(I)が、
    (A)定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が80℃以上、120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下である直鎖状ポリエステル樹脂、
    (B)定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2 温度が120℃を越え、210℃以下であり、ガラス転移温度Tgが40℃以上、75℃以下である架橋ポリエステル樹脂、
    の混合物であり、
    樹脂(A)と樹脂(B)との重量比率が、
    (A)/(B)=20/80〜80/20であり、
    T1/2 温度をそれぞれT1/2 (A)、T1/2 (B)としたとき、
    20℃<T1/2 (B)−T1/2 (A)≦120℃
    の関係にあることを特徴とする請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 分散剤が、ポリエステル樹脂(II)である請求項1、2又は3記載の静電荷像現像用トナー。
  5. ポリエステル樹脂(II)が酸性基含有直鎖状ポリエステル樹脂である請求項4記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 下記式、
    平均円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が0.97以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の静電荷像現像用トナー。
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