本発明におけるトナー母粒子は、(1)少なくともポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を水性媒体中に塩基性化合物の存在下で乳化させ微粒子を形成させる第1工程、次いで、(2)分散安定剤を添加し、更に電解質を順次添加することで微粒子を合一させ、微粒子の凝集体を製造する第2工程、(3)凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から微粒子の凝集体を分離・洗浄し、乾燥させる第3工程を経て製造される。
ポリエステル樹脂としては、多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合されることによって合成される。多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのごとき脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのごとき脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のごとき芳香族ジオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールは単独で用いることもでき、2種以上を併用して用いることもできる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整することができる。このような目的で用いるモノカルボン酸としては、例えば酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸などが挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを常法に従って縮合反応させることにより製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを、温度計、攪拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより目的とする反応物を得ることができる。
このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物;テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1質量%の範囲とするのが好ましい。
なお、このような縮重合反応において、特に分岐、または架橋ポリエステル樹脂を製造するためには、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸またはその無水物、及び/又は、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを必須の合成原料として用いればよい。
ヒートロール定着方式に用いるトナーとして、オフセット防止液を使用しないで良好な定着/オフセット温度幅を有するためには、上記ポリエステル樹脂が、定荷重押し出し形細管式レオメーター(以下、フローテスターという)による測定で以下の範囲となることが好ましい。すなわち、フローテスターによる流出開始温度(Tfb)が80℃〜120℃の範囲、T1/2温度が100℃〜160℃の範囲、流出終了温度(Tend)が110℃〜210℃の範囲である。このようなフローテスター値を有するポリエステル樹脂を用いることにより、良好なオイルレス定着性を有するようになる。また、ガラス転移温度(Tg)は40〜75℃であることが好ましい。
フローテスターによる流出開始温度Tfb、T1/2温度、流出終了温度Tendは、島津製作所製フローテスター(CFT−500)を用いて求められている。このフローテスターは、特開2003−122051の図1(a)に示されるようにノズル径Dが1.0mmΦでノズル長さ(深さ)Lが1.0mmのノズル1を有するシリンダー2に、樹脂3(重量1.5g)を充填し、ノズル1と反対の側から単位面積(cm2 )当たり10kgの荷重をかけ、その状態で毎分6℃の昇温速度で加熱したときの、荷重面4のストロークS(荷重面4の沈み値)を測定することによって得られる。すなわち、昇温した温度とストロークSとの関係を特開2003−122051の図1(b)に示すようにして求め、ノズル1からの樹脂3の流出が始まって急激にストロークSが大きくなり、カーブが立ち上がったときの温度をTfbとし、また、ノズル1からの樹脂3の流出がほぼ終了してカーブがねたときの温度をTendとする。そして、TfbのときのストロークSfbとTendのときのストロークSendとの中間値となるS1/2のときの温度をT1/2温度としている。この装置を用いた昇温法による測定は、試験時間の経過と共に一定の割合で昇温しながら試験することで、試料が固体域から遷移域、ゴム状弾性域を経て流動域に至るまでの過程を連続的に測定することができる。この装置により、流動域における各温度のせん断速度、粘度が簡便に測定できる。
流出開始温度Tfbは、ポリエステル樹脂のシャープメルト性、低温定着性の指標となるもので、あまり高温であると低温定着性が悪化し、コールドオフセットが発生しやすくなる。また、あまり低温であると保存安定性が低下し、ホットオフセットが発生しやすくなる。したがって、トナーの流出開始温度Tfbは90℃〜115℃であることがより好ましく、90〜110℃であることが特に好ましい。
また、1/2法によるトナーの溶融温度T1/2及び流出終了温度Tendは、耐ホットオフセット性の指標となるもので、いずれもがあまり高温すぎると溶液粘度が高くなるため粒子形成時の粒度分布が劣化する。また、いずれもが低温すぎるとオフセットが発生しやすくなり、実用性が低下する。そのため、1/2法による溶融温度T1/2は120℃〜160℃であることが必要であり、130〜160℃であることがより好ましく、流出終了温度Tendは130℃〜210℃が好ましく、130℃〜180℃がより好ましい。Tfb、T1/2、Tendを上記範囲内とすることで幅広い温度範囲で定着が可能となる。
また、前述したポリエステル樹脂としては、架橋ポリエステル樹脂を含有し、該結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が0.1〜20質量%の範囲、さらに好ましくは、0.2〜10質量%の範囲、さらに好ましくは0.2〜6質量%の範囲である。このように結着樹脂をテトラヒドロフラン不溶分が0.1〜20質量%のポリエステル樹脂とすることにより、良好な耐ホットオフセット性を確保することができ好ましい。0.1質量%よりも少ないと、耐ホットオフセット改善効果が不足するため好ましくない。20質量%よりも多いと溶液粘度が高くなりすぎ、定着開始温度が高くなり、定着性のバランスがくずれるため、好ましくない。また、シャープメルト性が損なわれるため、カラー画像における透明性、色再現性、光沢が劣るため好ましくない。
結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分は、樹脂1gを精秤し、テトラヒドロフラン40ml中に加えて完全に溶解し、桐山濾紙(No.3)を置いたロート(直径40mm)の上にラヂオライト(昭和化学社製#700)2gを均一に敷いて濾過し、ケーキをアルミシャーレ上にあけて、その後140℃で1時間乾燥し、乾燥重量を測定する。そして、最初の樹脂サンプル量で乾燥重量中の残存樹脂量を割った値を百分率で算出し、この値を結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分とする。
また、結着樹脂としては、高粘性の架橋ポリエステル樹脂と低粘性の分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂を含有しているのがより好ましい。すなわち、本発明のポリエステル樹脂においては、結着樹脂を1種類のポリエステル樹脂によって構成してもよいが、一般的に高分子量で高粘性となる架橋型のポリエステル樹脂(架橋ポリエステル樹脂)と、低分子量で低粘性となる分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂とをブレンドして用いることが樹脂の製造上も、また良好な定着開始温度及び耐ホットオフセット性を得るためにも実際的であり好ましい。ブレンドして用いる場合には、ブレンドした樹脂のフローテスター値が上記数値範囲に入ればよい。本発明では、架橋ポリエステル樹脂はテトラヒドロフランに不溶な成分を有する樹脂を示し、分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂は、上記ゲル分の測定でゲル分がなく、テトラヒドロフランに溶解する樹脂を示す。
本発明では、結着樹脂として溶融粘度の異なる複数のポリエステル樹脂を用いることができるが、たとえば、低粘性の分岐型あるいは直鎖型ポリエステル樹脂と高粘性の架橋ポリエステル樹脂との混合物を用いる場合、以下に示すような条件の分岐型あるいは直鎖状ポリエステル樹脂(A)と架橋型あるいは分岐型のポリエステル樹脂(B)との混合物とするのがより好ましい。この時、ブレンドした樹脂のフローテスター値は上記数値範囲内に入る様、樹脂(A)、樹脂(B)の溶融粘度及び配合量を適宜調節する。
すなわち、ポリエステル樹脂(A)としてフローテスターによるT1/2温度が80℃以上、120℃未満であり、ガラス転移温度Tgが40℃〜70℃の分岐型あるいは直鎖状ポリエステル樹脂、またポリエステル樹脂(B)として、フローテスターによるT1/2温度が120℃以上、210℃以下であり、ガラス転移温度Tgが50〜75℃の架橋型あるいは分岐型のポリエステル樹脂、さらに、これらポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との重量比率が、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、また、T1/2温度をそれぞれT1/2(A)、T1/2(B)としたとき、20℃<T1/2(B)−T1/2(A)<100℃の関係にあるものが好ましく用いられる。
フローテスターによる各温度特性を考えると、樹脂(A)の1/2法による溶融温度T1/2(A)はシャープメルト性、低温定着性を付与するための指標となるもので、T1/2(A)が80〜115℃の範囲であることがより好ましく、90〜110℃の範囲であることが特に好ましい。
これらの性能により規定される樹脂(A)は軟化温度が低く、ヒートロールによる定着プロセスにおいて、ヒートロールの低温化やプロセス速度の高速化により与えられる熱エネルギーが減少した場合でも、十分に溶融し、耐コールドオフセット及び低温定着性に優れた性能を発揮する。
樹脂(B)の1/2法による溶融温度T1/2(B)及び流出終了温度Tend(B)が共に低すぎる場合には、ホットオフセットが発生しやすくなり、また、高すぎる場合には粒子形成時の粒度分布が悪化して生産性が低下するため、T1/2(B)は125℃〜210℃であることがより好ましく、130℃〜200℃であることが特に好ましい。
これらの性能により規定される樹脂(B)は、ゴム弾性傾向が強く、かつ高い溶融粘度を持つため、定着プロセスにおける加熱溶融時でも溶融したトナー層の内部凝集力が維持され、ホットオフセットが発生しにくく、かつ定着後もその強靱さから優れた耐摩擦性を発揮する。
樹脂(A)と樹脂(B)をバランス良く配合することで、広い温度領域における耐オフセット性能と低温定着性能を十分に満足するトナーが提供できる。樹脂(A)と樹脂(B)の重量比率(A)/(B)が小さすぎる場合には定着性に影響を及ぼし、また、大きすぎる場合には耐オフセット性に影響を及ぼすため20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることが更に好ましい。
また、樹脂(A)と樹脂(B)との1/2法による溶融温度をそれぞれT1/2(A)、T1/2(B)としたときに、低温定着性と耐オフセット性の両立の観点から、また、樹脂間の粘度の差からくる問題を生じることなく均一に混合しやすくためには、T1/2(B)−T1/2(A)の範囲は20℃を越え、90℃以下であることがより好ましく、20を越え80℃以下であることが特に好ましい。
ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用いて、セカンドラン法で毎分10℃の昇温速度で測定して得られる値である。ポリエステル樹脂(A)のTgが40℃未満、あるいはポリエステル樹脂(B)のTgが50℃未満であると、得られるトナーが貯蔵中または現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすくなり好ましくない。一方、ポリエステル樹脂(A)のTgが70℃を越えると、あるいはポリエステル樹脂(B)のTgが75℃を越えると、トナーの定着温度が高くなり好ましくない。このように、結着樹脂となるポリエステル樹脂として、上記の関係にあるポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を用いることにより、得られるトナーはより良好な定着性を有するようになり好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量が3万以上、好ましくは37,000以上、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が12以上、好ましくは15以上、分子量60万以上の成分の面積比率が全体の0.3%以上、好ましくは0.5%以上、分子量1万以下の成分の面積比率が20〜80%、好ましくは30〜70%、の条件を満たすことが良好な定着性を得るうえで好ましい。複数の樹脂をブレンドする場合には、最終的な樹脂混合物のGPC測定結果が上記数値範囲内に入ればよい。
本発明におけるポリエステル樹脂において、分子量60万以上の高分子量成分は耐ホットオフセット性を確保する機能を有している。一方、分子量が1万以下の低分子量成分は樹脂の溶融粘度を下げ、シャープメルト性を発現させ定着開始温度を低下するために効果的であり、分子量1万以下の樹脂成分を含有することが好ましい。オイルレス定着方式における低温定着、耐ホットオフセット性、透明性等の良好な熱特性を得るには、結着樹脂がこのようにブロードな分子量分布を有することが好ましい。
結着樹脂のTHF可溶分の分子量は、THF可溶物を0.2μmのフィルターで濾過した後、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム「TSKgelSuperHM−M」(15cm)を3本使用し、THF溶媒(流速0.6ml/min、温度40℃)で測定し、単分散ポリスチレン標準試料で作成した分子量校正曲線を使用することにより分子量を算出したものである。
ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するのに必要なKOHのmg数)は、上記のような分子量分布を得やすいこと、乳化分散による微粒子の造粒性を確保しやすいこと、得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化したときの帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいことなどから、1〜20mgKOH/gの範囲が好ましい。なお、ポリエステル樹脂の酸価は、前述したように多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加える以外にも、原料の多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは、多塩基酸成分として無水トリメリット酸を使用することにより、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものを形成することができる。
次に、トナー母粒子には、離型剤を含有させることができる。離型剤としてはポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類の群の中から選ばれた離型剤が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックス等の天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類が好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、WEP-5(日本油脂社製)が好適に用いられる。離型剤の含有量は、1質量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40質量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40質量%の範囲内が好ましい。
また、電荷制御剤を含有させることができる。負帯電性電荷制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基および/またはスルホニル基を含有する樹脂等が挙げられる。電荷制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。
また、着色剤としては、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられるが、特に顔料が好適に用いられる。黒色顔料としては、例えばカーボンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。また、下記の有彩色顔料を黒色となるように配合したものを使用することもできる。
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンファーストイエロー5G、バルカンファーストイエローR、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー、その他イソインドリノンイエロー、クロモフタルイエロー、ノボパームイエローH2G、縮合アゾイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー等が挙げられる。
赤色顔料としては、例えば赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、パーマネントレッドBL、パーマネントレッドF5RK、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、パーマネントカーミンFBB、ベリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、アンスアンスロンオレンジ、ピランスロンオレンジ、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド等が挙げられる。
青色顔料としては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ファナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーRS、インダスレンブルーBC、インジコ等が挙げられる。
これら着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部当たり1〜50質量部の範囲が好ましく、2〜15質量部の範囲が特に好ましい。
次に、トナー母粒子の製造方法を説明する。
第1工程では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を投入して、樹脂を溶解分散することにより(必要に応じ加熱して)ポリエステル樹脂と有機溶剤とを含む混合物を調整する。この場合、トナー用原料として各種着色剤、離型剤または電荷制御剤、あるいはその他の添加物から選択される1種以上をポリエステル樹脂と共に用いることができる。本発明においては、着色剤をポリエステル樹脂と共に有機溶剤中に分散させることが好ましく、更に離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤も同様に溶解あるいは分散させるのが特に好ましい。
有機溶剤中にポリエステル樹脂、及び、必要に応じて着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を、溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用するポリエステル樹脂を軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。この時、着色剤等はマスターバッチとして溶融混練してもよい。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機により有機溶剤中に溶解、ないし分散して調製する。あるいは、ポリエステル樹脂と着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を有機溶剤と混合し、これをボールミル等により湿式混練する。この場合、着色剤や離型剤等はあらかじめ別々に予備分散を行ってから混合しても良い。
上記のより具体的な手段としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等のメディアを用いた混合・分散機中に、予め有機溶媒にポリエステル樹脂を溶解した樹脂溶液、及び着色剤や離型剤を加え、攪拌・分散させることによりマスターバッチとし、更に希釈用のポリエステル樹脂、追加の有機溶剤を混合することにより有機溶媒中に着色剤や離型剤等が微分散した樹脂溶液を製造する方法がある。このとき、着色剤や離型剤等を未処理のまま直接ボールミル等の混合・分散機に投入するよりも、あらかじめ、低粘度のポリエステル樹脂と着色剤、あるいは離型剤等を加圧ニーダー、加熱2本ロールで混練・分散してマスターバッチとしたものを用いるのが好ましい。以上のような製法によれば、ポリエステル樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため、溶融混練により分散するの方法よりも好ましい。
ポリエステル樹脂と必要に応じて添加する着色剤や離型剤等とを溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としてはメチルエチルケトンが最も好ましい。
次に、ポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物を水性媒体中に乳化する方法としては、ポリエステル樹脂と必要に応じて添加される着色剤等と有機溶剤からなる上記の方法で調整された混合物を、塩基性中和剤の存在下に、水性媒体と混合して乳化するのが好ましい。この工程においては、ポリエステル樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。転相乳化においては、有機溶剤と添加した水の合計量に対する水の比率が30〜70%となるように水を添加する。より好ましくは35〜65%であり、特に40〜60%であることが好ましい。使用する水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
ポリエステル樹脂は、酸性基含有ポリエステル樹脂であることが好ましく、該酸性基を中和することにより自己水分散性となるポリエステル樹脂であることが好ましい。自己水分散型ポリエステル樹脂の酸価は1〜20mgKOH/gであることが好ましい。自己水分散性を有する樹脂は、酸性基が塩基性中和剤により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加して水性媒体中に分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散することができる(アニオン型自己水分散型ポリエステル樹脂)。酸性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基が挙げられるが、中でもカルボキシル基がトナーの帯電特性の面から好ましい。また、中和用の塩基性物質としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのごとき無機塩基が好ましい。ポリエステル樹脂を水性媒体中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤等の分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となる。その結果、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになるため好ましくない。したがって、自己水分散性樹脂を用い、樹脂が有する酸性基を塩基性化合物により中和することが好ましい。
ポリエステル樹脂の酸性基(カルボキシル基)を塩基で中和する方法としては、例えば、(1)酸性基を有するポリエステル樹脂、着色剤、ワックスおよび有機溶剤を含有する混合物を製造した後、塩基で中和する方法、あるいは(2)水性媒体中に予め塩基性中和剤を混合しておき、転相乳化する際に前記混合物に含まれるポリエステル樹脂の酸性基を中和する方法が挙げられる。また、転相乳化の方法としては、(A)前記混合物を水性媒体中に加えて乳化する方法、あるいは(B)前記混合物中に水性媒体を添加する方法が挙げられる。前記の(1)と(B)を組み合わせた方法を採ることにより、粒度分布がシャープとなり好ましい。
転相乳化においては、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェア乳化分散機機や連続式乳化分散機等が使用できる。しかし、このような高シェアがかかる分散機を用いるよりも、例えば、特開平9−114135号公報記載の攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用することが好ましい。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼がさらに好ましい。水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)においては、攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましい。0.2〜8m/s未満の低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が均一に起こらず、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、低温すぎるとポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃が好ましい。さらに好ましくは20〜30℃の範囲である。
自己水分散性樹脂を用いて、低シェア下において転相乳化を行うことにより、微粉や粗大粒子の発生を抑えることができ、その結果、次の合一工程において均一な粒度分布の微粒子の凝集体を製造することが容易になる。また、更に、自己水分散性のないポリエステル樹脂を用いた場合や、高シェア下において転相乳化を行った場合には、粗大粒子の発生や樹脂の低分子量成分が微粉を発生させ、トナー粒子の粒度分布を広くし、さらには、低分子量成分を含む粒子が、その後の工程で行われる篩い分け等で除去されてしまい、トナーの低温定着性を悪化させてしまうといった不都合を引き起こすが、自己水分散性樹脂を用いたり、低シェア下において転相乳化を行うことによりそのような不都合が発生しない。
第1工程で製造する微粒子の50%体積平均粒径は、1μmを越えて6μm以下、より好ましくは1μmを越えて4μmの範囲である。1μm以下であると着色剤や、離型剤を用いた場合、ポリエステル樹脂により十分カプセル化されないため、帯電特性、現像特性に悪影響を及ぼし好ましくない。また、粒径が大きいと、得られるトナーの粒径が限定されるため、目的とするトナーの粒径よりも小粒径にする必要があるが、6μmよりも大きいと粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、第1工程で製造する微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が2%以下、より好ましくは1%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が10%以下、より好ましくは6%以下である。
次に、第2工程では、第1工程で得られた微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる。第2工程では、溶剤量、温度、分散安定剤及び電解質の種類あるいは添加量、攪拌条件等を適宜制御することで、所望の凝集体を得ることができる。乳化重合により微粒子を製造し、その後、微粒子を凝集させた後、温度を上げて融着させることで会合体を製造する方法は良く知られている。本発明における製造方法は、上記のような凝集・融着の2段からなる工程を経て製造される会合体と異なり、凝集と同時に融着工程を含む1段の工程で凝集体を得る製造方法(合一による製造方法)であり、加温せずに、短時間で球形あるいは略球形の粒子を得ることができるという特徴を有している。
第2工程では、第1工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整する。その後、分散安定剤を添加し、分散安定剤の存在下に電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る。第1工程までで得られる自己水分散性樹脂から形成された微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。第2工程では、微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させる。
電解質としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も有効に用いることができる。合一させるために添加するこれらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。第1工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質の添加により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。
しかし、電解質等の添加だけでは、系内の微粒子の分散安定性が不安定になっているため、合一が不均一となり粗大粒子や凝集物が発生する。電解質や酸性物質により生成した微粒子の凝集体が、再合一を繰り返して、目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加する必要がある。使用する分散安定剤は、後から添加する電解質の存在下においても分散安定性を保持できる特性が必要である。そのような特性を有する分散安定剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となり、その結果、シャープな粒度分布が得られ、それに伴い、収率の向上が達成される。
また、均一な合一を進める上では、合一時の攪拌条件が重要である。例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、コーンケープ翼、ヘリカル翼、ダブルヘリカル翼、半月翼等から適宜選択して使用される。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼が好ましい。溶剤により膨潤した微粒子同士が攪拌による衝突により合一して凝集する。そのため、ホモミキサーのようなステーターとローターからなる高剪断装置や、タービン翼のような局所的に高剪断がかかり、全体を均一に攪拌する能力の弱い攪拌翼では合一が不均一となり、粗大粒子の発生につながりやすい。そのため、攪拌条件としては、周速が0.2〜10m/sであることが好ましく、0.2〜8m/s未満がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。周速が10m/sよりも早いと、不均一な合一が発生して粗大粒子が発生しやすくなるので好ましくない。また、0.2m/sよりも遅いと、攪拌シェアが不足するため、やはり不均一な合一が発生し粗大粒子が発生する傾向となるため好ましくない。微粒子同士の衝突のみにより合一が進行し、合一した凝集体が再び解離・分散することはない。そのため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。
第2工程においては、第1工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を必要に応じて水でさらに希釈することが好ましい。その後、分散安定剤、及び電解質を順次添加して合一を行う。あるいは、分散安定剤及び/又は電解質の水溶液を添加することで分散液中の溶剤量を調整し、所定粒径の粒子を得る手順を採ることが好ましい。電解質を添加した後の系中に含まれる溶剤量としては、5〜25質量%の範囲内であることが好ましい。また、5〜20質量%の範囲内がより好ましく、特に、5〜18質量%の範囲内が好ましい。溶剤量が5質量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなり好ましくない。また、溶剤量が25質量%よりも多いと不均一な合一による凝集物発生が多くなり、また、分散安定剤の添加量が多くなるため好ましくない。
溶剤量を調整することで合一後のトナー粒子の形状をコントロールすることができる。溶剤量が13〜25質量%の範囲では溶剤による微粒子の膨潤度が大きいため、合一により球形〜略球形の粒子を容易に得ることができる。一方、溶剤量を5〜13質量%の範囲にすると溶剤による微粒子の膨潤度が小さいため、異形〜略球形のトナー粒子が容易に得られる。
使用する分散安定剤の量は、例えば微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜3.0質量%の範囲内が好ましい。0.5〜2.5質量%の範囲内がより好ましく、1.0〜2.5質量%の範囲内が特に好ましい。0.5質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られない。一方、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるため好ましくない。
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜15質量%の範囲内であることが好ましい。1〜12質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるため好ましくない。
また、合一時の温度は10〜50℃の範囲内が好ましい。より好ましくは20〜40℃の範囲内であり、20〜35℃であることが特に好ましい。温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるため好ましくない。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。20〜40℃の低温の条件で、合一による会合体の生成が可能である。
第1工程、及び第2工程では、種々の実施形態をとることが可能である。中でも、好ましい実施形態としては、以下の(1)〜(4)がある。(1)ポリエステル樹脂と着色剤、必要に応じて離型剤、電荷制御剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第1工程により微粒子を製造し、第2工程(合一工程)を行う方法、(2)ポリエステル樹脂と着色剤、必要に応じて離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第1工程により微粒子を製造し、電荷制御剤の分散液を混合して、第2工程(合一工程)を行う方法、(3)ポリエステル樹脂からなる微粒子を上記の第1工程により製造し、着色剤の分散液、及び、必要に応じて離型剤、電荷制御剤の各分散液の1種以上をそれぞれ別々に用意し、それらを混合した後に第2工程(合一工程)を行う方法、(4)ポリエステル樹脂と離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第1工程により微粒子を製造し、着色剤の分散液、必要に応じて電荷制御剤の分散液を混合して、第2工程(合一工程)を行う方法である。
ここで用いる着色剤分散液、電荷制御剤分散液、離型剤分散液等の各種分散液は、下記のようにして得ることができる。たとえば、それぞれの物質をポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等で代表されるノニオン系の界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩等で代表されるアニオン系の界面活性剤、あるいは4級アンモニュウム塩で代表されるカチオン系の界面活性剤等と水中に添加して、メディアによる機械的粉砕法により調製できる。あるいは、界面活性剤の代わりに、自己水分散性のポリエステル樹脂を用いて、塩基性中和剤の存在下に同様の分散手段で分散液を調製できる。また、ここで使用する着色剤、離型剤、電荷制御剤は、あらかじめポリエステル樹脂と溶融混練したものを用いてもよい。この場合、樹脂が吸着することで、各種材料が粒子表面に露出する程度が緩和され、帯電特性、現像特性において好ましい特性を与える。
摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー母粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー母粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー母粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー母粒子の表面積が増大し、トナー母粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果、トナー母粒子表面の組成が大きく変化し、トナー母粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
トナー母粒子は、着色剤やワックス等が結着樹脂に内包されているのが望ましく、このように内包された構造となることにより、良好な印刷画像が得られる。積極的に着色剤や離型剤の内包を行うためには、前記の(1)あるいは(2)の方法が好ましい。トナー母粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー母粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。また、電荷制御剤をトナー粒子表面に局在化させて、その機能を発現させるためには(2)の方法が好ましい。
第二工程で得られる微粒子の凝集体の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。なお、この平均円形度は、微粒子の凝集体を乾燥して得られたトナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することなどによっても求められるが、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られる。
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。球形から不定形に近づくと、外添処理に際して後述する混合処理槽内での流動性が悪く、攪拌羽根の周速を低下させても収率が低下し、また、正帯電トナー量が増え、帯電量分布が拡がるという問題がある。また、球形形状が真球に近づくと、トナー母粒子への外添剤粒子の均一付着が困難であり、そのため攪拌羽根の周速を上げざるを得ず、羽根先端や槽壁への溶着が発生し、収率が低下し、また、遊離外添剤量や正帯電トナー量も増え、帯電量分布が拡がる傾向がある。
第3工程は、第2工程で得られた微粒子の凝集体の分散液は、引き続き脱溶剤を行い、スラリー中から有機溶剤を除去する工程である。次いで、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離を行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー母粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー母粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー母粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー母粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー母粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
トナー母粒子の粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下であることが好ましく、より好ましくは1.20以下である。1.25以下であると良好な画像を得られやすく好ましい。また、GSDは1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。
トナー母粒子としては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μm程度が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され、好ましい。
以下に、ポリエステル樹脂の製造例と各物性、およびトナー母粒子の製造例を示す。なお、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。
(ポリエステル樹脂合成例)
2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)、脂肪族トリオールとしてトリメチロールプロパン(TMP)を、下記表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3質量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を表1に示す。
表中、>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万;分子量1万以下の成分の面積比率
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA−PO;ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキ シフェニル)プロパン
BPA−EO;ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシ フェニル)プロパン
EG;エチレングリコール
TMP;トリメチロールプロパン
FT値;フローテスター値
表1において「T1/2温度」は、前述したように島津製作所製フローテスタ(CFT−500)を用いて、ノズル径1.0mmΦ×1.0mm、単位面積(cm2 )当たりの荷重10kg、毎分6℃の昇温速度で測定した値である。また、ガラス転移温度である「Tg」(℃)は、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した値である。
(離型剤分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス1号」(加藤洋行輸入品)50部とポリエステル樹脂(表1中、R1)50部とを加圧ニーダーで混練後、該混練物とメチルエチルケトン185部とをボールミルに仕込み、6時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、離型剤の微分散液(W1)を得た。
(着色剤マスターチップの調製、及び着色剤分散液の調製例)
下記の表2の配合にてカーボンブラックとカラー顔料を樹脂と50/50の重量比率で混練し着色剤マスターチップP1、P2を作製した。カーボンブラックと樹脂は加圧ニーダーを用いて混練した。また、カラー顔料と樹脂は二本ロールで混練した。得られた混練物P2は固形分含有量が40質量%となるようにメチルエチルケトンとともにボールミル中に仕込み、36時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、P2の着色剤分散液とした。
表2に示した着色剤は以下の通りである。
カーボン:「ELFTEX−8」(キャボット社製)
シアン顔料:ファーストゲンブルーTGR(大日本インキ化学工業社製)
(湿式混練ミルベースの調製)
上記離型剤分散液、着色剤分散液、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を55%に調整してミルベース(MB1〜MB3)を作製した。作製したミルベースの配合を表3に示す。
表3で使用したブレンド樹脂の特性を表4に示した。樹脂のブレンドは200メッシュを通過した樹脂粒子を上記重量比でブレンドして各物性値を測定した。
表中、>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万;分子量1万以下の成分の面積比率
(トナー母粒子1の製造)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を545.5部、1規定アンモニア水23.8部を加えて、スリーワンモーターにより350rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は1.19m/sであった。次に、脱イオン水333部を加えて溶剤量を調整した。
次いで、ノニオン型乳化剤であるエパン450(第一工業製薬社製)の4.1部を水に希釈して添加した後、温度を30℃に、また回転数を250rpmに調整し、3%の硫酸アンモニュウムの水溶液410部を滴下して、分散液中の溶剤量を15.5質量%とした。その後、同条件で5分間攪拌を続け合一操作を終了した。この時の攪拌翼の周速は0.85m/sであった。得られたスラリーは、遠心分離機で固液分離、洗浄を行い、その後、真空乾燥機で乾燥を行い、トナー母粒子1を得た。得られたトナー母粒子の特性を表5〜7に示す。また、トナー母粒子1の仕事関数は5.47eVであった。
(トナー母粒子2の製造)
トナー母粒子1の製造における5分間の合一操作を70分間とすると共に、ミルベースMB1をMB2とする以外は、トナー母粒子1の製造と同様にしてトナー母粒子2を得た。得られたトナー母粒子の特性を表5〜7に示す。また、トナー母粒子2の仕事関数は5.33eVであった。
(トナー母粒子3の製造)
トナー母粒子1の製造における5分間の合一操作を70分間とすると共に、ミルベースMB1をMB3とする以外は、トナー母粒子1の製造と同様にしてトナー母粒子3を得た。得られたトナー母粒子の特性を表5〜7に示す。また、トナー母粒子3の仕事関数は5.39eVであった。
表6の粒径・粒度分布は、コールターベックマン社のコールターマルチサイザーIIの100ミクロンアパーチャーチューブを用いて測定した。Dv50は50%体積平均径であり、Dv50/Dn50は体積、及び個数の50%平均径の比である。また、GSDは、84%体積平均径を16%体積平均径で割った値の平方根である。
円形度分布は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP―1000を用いて測定した。
また、収率は、得られたトナー母粒子の分散液を脱溶剤した後、530メッシュのふるいに通し、下記式
収率(%)={(仕込んだミルベースの固形分量)−(ふるい上残さの固形分量)}×100/(仕込んだミルベースの固形分量)
で求めた値で、90−100%のものを○とした。
また、仕事関数(Φ)は、その物質から電子を取り出すために必要なエネルギーとして知られており、仕事関数が小さいほど電子を出しやすく、大きい程電子を出しにくい。そのため、負帯電性のトナー母粒子にトナー母粒子の仕事関数より小さい仕事関数の負帯電性酸化シリコン粒子を外添すると、トナー母粒子をより負帯電化させると考えられる。
仕事関数は下記の測定方法により測定されるものであり、その物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化され、種々の物質間の接触による帯電性を評価しうるものである。仕事関数は、表面分析装置(理研計器(株)製AC−2、低エネルギー電子計数方式)を使用して測定される。本発明にあっては、該装置において、重水素ランプを使用し、金属メッキを施した現像ローラは照射光量10nWで、それ以外の測定では照射光量500nWに設定し、分光器により単色光を選択し、スポットサイズ4mm角とし、エネルギー走査範囲3.4〜6.2eV、測定時間10sec/1ポイントでサンプルに照射する。そして、サンプル表面から放出される光電子を検知し、仕事関数計ソフトを使用して演算処理され得られるもので、仕事関数に関しては、繰り返し精度(標準偏差)0.02eVで測定されるものである。なお、データ再現性を確保するための測定環境としては、使用温湿度25℃、55%RHの条件下で、24時間放置品を測定サンプルとする。
トナー専用測定セルは、図1(a)(b)に示すように、直径13mm、高さ5mmのステンレス製円盤の中央に直径10mmで深さ1mmのトナー収容用凹部を有する形状を有する。サンプルトナーは、セルの凹部内にトナーを秤量サジを使用して突き固めないで入れた後、ナイフエッジを使用して表面を均して平らにした状態で測定に供する。トナーを充填した測定セルをサンプル台の規定位置上に固定した後、照射光量500nWに設定し、スポットサイズ4mm角とし、エネルギー走査範囲4.2〜6.2eVの条件で測定される。
また、感光体や現像ローラ等の形状が円筒形状の画像形成装置部材をサンプルとする場合には、円筒形状の画像形成装置部材を1〜1.5cmの幅で切断し、ついで、稜線に沿って横方向に切断して図2(a)に示す形状の測定用試料片を得た後、サンプル台の規定位置上に、図2(b)に示すように、測定光が照射される方向に対して照射面が平滑になるように固定する。これにより、放出される光電子が検知器(光電子倍像管)により効率よく検知される。
この表面分析においては、単色光の励起エネルギーを低い方から高い方にスキャンするとあるエネルギー値(eV)から光量子放出が始まり、このエネルギー値を仕事関数(eV)という。図3に、トナーについて得られるチャートの1例を示す。図3は励起エネルギー(eV)を横軸とし、規格化光量子収率(単位光量子当りの光電子収率のn乗)を縦軸とするものであり、一定の傾き(Y/eV)が得られる。図3の場合、仕事関数はその屈曲点(A)における励起エネルギー値(eV)で示される。
本発明におけるトナー母粒子の仕事関数は、5.3〜5.7eVとするとよい。
次に、外添剤について説明する。
本発明において、外添剤を規定する個数平均一次粒子径は、外添剤をイソプロピルアルコールに分散させた液滴を測定試料台に滴下し、乾燥後、その試料台上の微粒子を10万倍の走査型電子顕微鏡撮影像の任意の粒子500個について、日立テクノロジー(株)製「S−4800」を使用してその粒径を実測して求められるものである。
(1) 疎水性シリカ微粒子としては、負帯電性の個数平均一次粒子径が7〜60nm、好ましくは10〜50nmの疎水性シリカ微粒子であり、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化(乾式法)により得られるものが例示される。(1)のシリカ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.5〜2.0質量部、好ましくは0.7〜1.5質量部添加される。
負帯電性シリカ微粒子の個数平均一次粒子径が小さい程、得られるトナーの流動性が高くなるが、7nmより小さいと、シリカ微粒子がトナー母粒子に埋没してしまう虞がある。また、個数平均一次粒子径が60nmを超えると、流動性が悪くなる虞がある。
この負帯電性シリカ微粒子としては、日本アエロジル(株)製の「RX50」(個数平均一次粒子径32nm、5.16eV)、同「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)などが例示される。
(2) 個数平均一次粒子径が100〜600nm、好ましくは100〜300nmの負帯電性疎水性の球形シリカ微粒子は、所謂「大粒径」のシリカ微粒子である。球形シリカ微粒子は、単分散、すなわち、凝集体含め平均粒径に対する標準偏差がD50*0.22以下であり、また、形状としてはWadellの球形度が0.6以上、好ましくは0.8以上である。また、このような単分散球形シリカ微粒子は、湿式法であるゾルゲル法により得られ、比重が1.3〜2.1のものである。(2)の大粒子径シリカは、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部添加される。
平均粒径が100nmより小さいと、小粒径のシリカ微粒子のトナー母粒子表面への埋没を防止して流動性や帯電安定性を維持することができなくなったり、また、スペーサ効果が得られず、また、600nmより大きいと、トナー母粒子に付着しにくくなると共にトナー母粒子表面から脱離しやすくなる。
(2)の疎水性の負帯電性シリカ微粒子としては(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)、「シーホスターKE−P30」(個数平均一次粒子径280nm、仕事関数5.02eV)等が例示される。
(2)の大粒子径のシリカ:(1)の小粒子径のシリカの添加比(質量比)は、1:3〜3:1、好ましくは1:2.8〜2.8:1とするとよく、トナーに流動性を付与し、かつ帯電の長期安定性を得る上で好ましい。大粒子径シリカと小粒子径シリカとは、負帯電性一成分トナーの製造に際してトナー母粒子に同時に添加して混合するとよい。大粒子径シリカと小粒子径シリカは、両者の混合比率を考慮しつつトナー母粒子100質量部に対して合計量で1.0〜2.5質量部、好ましくは1.5〜2.3質量部添加される。
(1)と(2)のシリカ微粒子は疎水化処理されていることが好ましい。シリカ微粒子の表面を疎水性にすることによりトナーの流動性および帯電性がさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化は、その帯電性に応じてアミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物;あるいはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルから選ばれる疎水化剤を用いて、例えば湿式法、乾式法など当業者が通常使用する方法により行われる。
(1)と(2)の疎水性シリカ粒子の仕事関数としては、5.0〜5.3eVの範囲であるが、特に、大粒径の(2)の疎水性シリカ粒子の仕事関数は、トナー母粒子の仕事関数より、少なくとも0.05ev以上小さいものとするとよく、仕事関数差による電荷移動により大粒径のシリカ粒子をトナー母粒子に固着させることができる。
次に、(3) 個数平均一次粒子径が10〜40nmの疎水性酸化チタン微粒子は比較的電気抵抗率が小さく、ルチル型、アナターゼ型、ルチル−アナターゼ型などの種々の結晶形を取り得るが、特に、ルチル−アナターゼ型酸化チタンは紡錘形状であり、電荷の調整をしやすい点、印字枚数が増えても、酸化チタン粒子がトナー母粒子内に埋没し難いなどの点で好ましく用いられる。酸化チタン微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。
酸化チタンの微粒子の表面は疎水性であることが、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために好ましい。酸化チタン微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法で行われる。疎水性でルチル−アナターゼ型の酸化チタン微粒子としては、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)などが例示される。
疎水性酸化チタン粒子の仕事関数としては5.5〜5.7eVの範囲であり、トナー母粒子にまず疎水性シリカ粒子を外添処理した後、後段処理として添加されるとよい。
仕事関数がトナー母粒子と略同一であるとトナー母粒子へ直接付着しにくくなる反面、仕事関数の小さい疎水性シリカ粒子表面を介してトナー母粒子へ接触電位差により付着させることができるので、過帯電した疎水性シリカ粒子からの電荷移動を容易とでき、疎水性シリカ粒子における過帯電性をより効果的に防止できるので好ましい。
次に、(4) 個数平均一次粒子径が100〜600nm、好ましくは100〜300nmのα型アルミナ微粒子は、工業的にはボーキサイト原料を水酸化ナトリウムで処理して得られる水酸化アルミニウムを大気中で焼成してα型アルミナとする、所謂バイヤー法により製造して得られるものであるが、α型アルミナ微粒子は、その形状が不定形であり、トナー母粒子に外添されると、規制部材の使用において埋没した外添剤を堀り起こす効果をもたらし、安定した流動性、帯電特性を付与できるものである。個数平均一次粒子径が大きすぎると、トナー母粒子への付着性も低下するので好ましくない。
α型アルミナ微粒子としては、住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)、同「AKP30」(個数平均一次粒子径410nm、仕事関数4.80eV)等が例示される。
α型アルミナ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、0.05〜1.3質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部とするとよい。0.05質量部より少ないとスペーサとしての機能を果たさず、また、1.3質量部より多いと、大粒径のアルミナ微粒子の遊離量が多くなるので好ましくない。
α型アルミナ粒子における仕事関数としては、4.9〜5.2eVであり、トナー母粒子の仕事関数(5.3〜5.7eV)より、少なくとも0.05eV小さくすることにより、負帯電トナー母粒子をより負帯電化でき、外添されたアルミナ微粒子との付着性を強めることができる。
次に、金属石鹸粒子について説明する。
金属石鹸粒子は、大粒径のシリカ微粒子やα型アルミナ微粒子等の外添粒子の遊離率を低下させると共に、カブリの発生を防止することができ、また、潤滑剤としての機能からアルミナ粒子等による研磨作用から感光体(OPC)を保護することができ、長寿命化を図ることができる。金属石けん粒子としては、高級脂肪酸の亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミウムから選ばれる金属塩であり、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸モノアルミニウム、ステアリン酸トリアルミニウム等が例示される。金属石けん粒子の個数平均一次粒子径は0.1〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.3μmである。また、金属石けん粒子の仕事関数としては、5.3〜5.8eVの範囲である。
金属石けん粒子の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.05〜0.5質量部、好ましくは0.1〜0.3質量部である。0.05質量部より少ないと滑剤としての機能およびバインダーとしての機能が不十分であり、また、0.5質量部より多いと逆にカブリが増大する傾向にある。また、金属石けん粒子の添加量は、外添剤100質量部に対して2〜10質量部の添加割合とするとよい。2質量部よりも少ない場合には滑剤やバインダーとしての効果がなく、逆に10質量部を超えると流動性の低下やカブリの増大につながるので好ましくない。
また、非接触現像を行う場合で、長期に亘り連続印字を行うと、トナーの負帯電量が高くなりすぎ、その結果、現像トナー量の低下をもたらし、印字画像濃度の低下をもたらす結果となるが、後段処理において、正帯電性シリカ微粒子が混合処理されることにより、過帯電が抑制され、画像濃度の低下を防止することができる。
正帯電性シリカ微粒子としては、個数平均一次粒子径としては20nm〜40nmである。正帯電性シリカ微粒子は、疎水化処理されていることが好ましく、外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために好ましい。正帯電性シリカ微粒子の疎水化は、アミノシランカップリン剤やアミノ変性シリコンオイル等を使用して行われる。正帯電性シリカ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加される。
疎水性正帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のNA50H、キャボット(株)製のTG820Fなどが例示される。正帯電性疎水性シリカ微粒子の仕事関数としては、5.2〜5.4eVである。
(3)疎水性酸化チタン微粒子、(4)α型アルミナ微粒子、(5)金属石鹸粒子は、トナー母粒子に(1)の負帯電性疎水性シリカ微粒子と(2)の負帯電性疎水性シリカ微粒子を添加した後、後段処理として添加されるとよい。
また、本発明の負帯電性一成分トナーおいては、上記した外添剤粒子以外にも、本発明における目的を阻害しない範囲で外添され得る。例えば、無機微粒子としては酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化インジウム等の金属酸化物の微粒子、窒化珪素等窒化物の微粒子、炭化珪素等の炭化物の微粒子、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩の微粒子、並びにこれらの複合物等の無機微粒子、また、樹脂微粒子等が挙げられる。
後段処理に際しては、2段目において疎水性酸化チタン微粒子とα型アルミナ微粒子を少なくとも追加混合するとよく、金属石鹸粒子、正帯電性シリカ微粒子はその添加目的からすると最後段で添加されるとよい。
次に、本発明におけるトナー母粒子と外添剤粒子との混合処理工程について説明する。トナー母粒子と外添剤粒子との混合処理に際しては、図4、図5に示す球形混合処理槽が使用される。図4は中央断面図、図5は混合羽根の一例の平面図である。図中、1は処理槽、2は水平円板状の槽底、3は駆動軸、4はドーナツ状円板、5は攪拌羽根、6はエアシール孔、7は筒状部材、8はフランジ、9はジャケット、11は攪拌羽根が取り付けられた円板である。
図に示すように、球形混合処理槽1は、水平円板状の槽底2と、槽底2の中心を垂直に貫く回転駆動軸3に断面円錐形状をもつ攪拌羽根11が取付けられ、また、外周端部上には攪拌翼5が複数枚それぞれ取付けられている。攪拌羽根11はタービン羽根であり、羽根による剪断作用が比較的少なく混合を進めることができる。また、攪拌翼5にはその上部に補強を目的とするドーナツ状円板4が取付けられている。
容器1の頂部には、回転駆動軸3の延長線上の混合処理槽頂部を貫く筒状部材7がその槽内先端部を上半球内に位置するように配置され、シールエア抜きを可能とする。混合処理層における上半球は、中央部のフランジ8から開閉可能とされ、上半球を開いて被処理物が投入される。投入された被処理物は、攪拌羽根11の回転による遠心力により処理槽1内壁面に沿って螺旋状(図示せず)で図4に示す矢印のごとく上向きに放出されて頂部に到り、運動エネルギーを低下させて落下する。落下した被処理物は円錐状上面を滑り落ち、攪拌翼5に再供給される。この工程を繰り返すことで分散混合が進む。処理槽1の下部には外添処理済みの被処理物の排出口(図示せず)が設けられる。また、球形混合処理槽は、水冷ジャケット9が設けられ、後述する水温の冷却水を後述する流量で通水することにより、内容物を冷却可能とされる。
回転駆動軸3には、シールエア孔6を介して攪拌羽根11が回転可能に取り付けられ、攪拌翼5の先端は、図4、図5に示すようにドーナツ状円板4の外周と槽内壁との間に位置するように配置されている。また、攪拌翼5の下側のエッジは、図4に示すように処理槽1の球面状の内壁に沿った弧状とされ、回転することにより被処理物を処理槽内面の曲面に沿って処理槽頂部に向けて螺旋状に放出可能な形状とされる。シールエア孔6は、高温となる回転駆動軸部分に被処理物が侵入することを防止するためのエアー供給孔であり、また、供給されたエアーは筒状部材7から排出される。
被処理物の均一処理性、供給されたエアーの排出性の観点から、投入用部材7の容器内部での長さは、容器内部のドーナツ状円板4からの高さの1/20以上、好ましくは1/3以上の長さとするとよいが、上限としては被処理物を静置した時の粉面に接触しない程度の長さとするとよい。また、筒状部材7は円筒形状以外でもシールエアーが抜ける構造であればよく、例えばスリットを有した構造でもよい。
また、水平状の槽底2の直径と処理槽1の直径との比は0.25〜0.80であり、ドーナツ状円板4の外径と水平状の槽底2の直径との比は0.50〜1.20であり、攪拌羽根5の直径と処理槽1の直径との比は0.50〜0.90とするとよい。また、ドーナツ状円板4の内径と外径との比は0.5〜0.95、好ましくは0.7〜0.8である。また、球状混合処理槽への被処理物の仕込み量は、処理槽の容積に対する比で0.1〜0.9、好ましくは0.3〜0.5とするとよい。
球形混合処理槽は、図6に示すようなヘンシェルミキサーのごとく、被処理物の急激な立ち上がりをさせるのではなく、被処理物であるトナー母粒子と外添剤粒子とを曲面状の槽壁に沿って高速で流動させることができ、また、被処理物が流動する壁面距離が長く、トナー母粒子が転がりやすくなり、短時間での均一な外添処理を可能とする。さらに、混合処理槽の天井まで被処理物を移動させた後、槽底の攪拌羽根に供給され再処理されるので、重力に依存していた被処理物の上下動が、ヘンシェルミキサーのごとく円筒形状の混合処理槽に比して、よりダイナミックとなり、また、上羽根を設ける必要がないという利点を有する。また、外添剤粒子の凝集が強い場合には、槽内に凸部を設けて乱流を発生させて解砕させることができる。
トナー母粒子と平均粒径の相違する複数の外添剤粒子を混合処理する際に、「多段階混合処理」とすることができるが、混合処理時間が短いと混合処理が不充分となり、また、混合処理時間が長いと被処理物が槽壁や攪拌羽根等への溶着が発生し、収率が低下するので、各段階における処理時間としては、0.5〜10分、好ましく1〜5分の範囲内のものとする必要がある。なお、温度上昇を避けるためには各段階における処理を数回に分けて混合されてもよい。また、同様の観点から、球形混合処理槽における攪拌羽根の先端の周速度(π×羽根の最外径×回転数/時間)は、10m/s〜100m/sの範囲とされる。
トナー母粒子への外添にあたっては、球形の混合処理槽にトナー母粒子を充填した後、一段目として、大粒径と小粒径のシリカ微粒子を投入し、外添処理した後、回転を止めた後、二段目として酸化チタン粒子とα型アルミナ微粒子を追加投入し、外添処理する。そして、回転を止めた後、三段目(最終段)として正帯電性シリカ粒子、金属石鹸粒子を追加投入し、外添処理するとよい。
本発明の負帯電性トナーの製造方法は、トナー母粒子に対して、一段目の外添処理として、シリカ微粒子を外添処理するが、シリカ微粒子はその仕事関数差からトナー母粒子との付着性に優れるものであり、円形度の高い球形状のトナー母粒子に良好に付着させることができる。また、2段目以降においては、大粒径のα型アルミナ微粒子をトナー母粒子との仕事関数差による電荷移動を利用して外添処理することができ、外添剤の付着性に優れる負帯電性トナーを製造することができる。これにより、帯電安定性に優れ、また、印字画像にムラが生じることのない負帯電性トナーとできる。
本発明で製造されるトナーは、特開2002−202622に詳細に説明されている1成分系のトナーを用いる画像形成装置、また、2成分系のトナーを用いる画像形成装置のいずれにも適用でき、また、接触現像方式の画像形成装置や非接触式方式の画像形成装置のいずれにも適用できるが、好ましくは一成分非磁性カラートナーであり、非接触式方式の現像方式を有する画像形成装置への適用に適した負帯電性トナーとできる。
以下、実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを図4に示す球形混合槽(三井鉱山(株)製、Q型20L、羽根形状タービン)に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50(平均粒子径32nm、5.16eV)15gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)9gとを添加した。
球形混合槽は、その内容積20リットル、筒状部材7の容器内部での長さは容器内部のドーナツ状円板4からの高さの1/11、また、槽底2の直径と処理槽1の直径との比は0.57、ドーナツ状円板4の外径と水平状の槽底2の直径との比は1.10、攪拌羽根(タービン羽根)5の直径と処理槽1の直径との比は0.75であり、また、ドーナツ状円板4の内径と外径との比は0.73である。この球形混合処理槽にシールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)6gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}9gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
次に、得られたトナーをカラープリンタ(セイコーエプソン(株)製「LP7000C」)の現像器に各トナーを220g充填し、5%原稿、A4で6,000枚の耐久印字を行った(25℃、50%RH)。
耐久印刷前後での帯電量(負帯電のQ/mの平均)、+トナー量(個数%)をEspartアナライザー(ホソカワミクロン(株)製)で測定した。また、耐久後100%べた印字後、画像の均一性を目視により判定し、ムラなし(○)、有り(×)で評価した。その結果を表8に示す。
また、図7に、耐久前の帯電量分布を(1)線で、耐久後の帯電量分布を(2)線で示す。
(実施例2)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)30gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)15gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)12gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)10gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}8gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例3)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)13gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)14gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)12gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}9gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例4)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)28gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)13gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)6gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}8gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}2gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例5)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)38gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)17gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)12gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)9gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}9gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}2gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例6)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)17gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP30」(個数平均一次粒子径280nm、仕事関数5.02eV)15gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を60m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP30」(個数平均一次粒子径410nm、仕事関数4.80eV)12gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を60m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}7gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}2gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を60m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例7)
上記で製造したトナー母粒子1を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)15gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)9gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)6gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}9gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(実施例8)
上記で製造したトナー母粒子3を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)15gと(株)日本触媒製の「シーホスターKEP10」(個数平均一次粒子径140nm、仕事関数5.07eV)9gとを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を40m/sで混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)12gと住友化学工業社製「AKP50」(個数平均一次粒子径190nm、仕事関数4.81eV)6gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を40m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}9gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を40m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(比較例1)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを図6に示すヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、20L、YiA0)に装填した後、シリカ微粒子{クラリアント社製「H2018」(個数平均一次粒子径15nm、仕事関数5.10eV)15gとチタニア微粒子{テイカ社製「JMT150AO」(個数平均一次粒子径15nm、仕事関数5.60eV)15gとを添加し、羽根の周速を50m/sで混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
(比較例2)
芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの重縮合ポリエステルと該重縮合ポリエステルの多価金属化合物による一部架橋物の50:50(重量比)混合物(三洋化成工業(株)製)100質量部、シアン顔料のフタロシアニンブルーを5質量部、離型剤として融点が152℃、重量平均分子量Mwが4000のポリプロピレン5質量部、および荷電制御剤としてのサリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)4質量部をヘンシェルミキサーを用い、均一混合した後、内温150℃の二軸押出し機で混練した後、冷却した。次いで、冷却物を2mm角以下に粗粉砕し、次いでジェットミルで微粉砕し、ローター回転による分級装置により分級した後、融着防止剤として0.5質量%のシリカ微粒子(一次粒子径40nm)を添加し、熱風球形化装置サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業製 SFS−3型)を使用し、熱処理温度200℃に設定し、部分的に球形化処理を行った後、同様にして再度分級し、シアントナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子の平均粒径8.1μm、フロー軟化点(Tf1/2)108.8℃であった。
上記で製造したトナー母粒子を使用し、その3.0kgを図4に示す球形混合槽(三井鉱山(株)製、Q型20L、羽根形状タービン)に装填した後、実施例1と同様に外添処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
また、図7に、耐久前の帯電量分布を(3)線で、耐久後の帯電量分布を(4)線で示す。
(比較例3)
上記で製造したトナー母粒子2を使用し、その3.0kgを実施例1と同じ球形混合槽に装填した後、負帯電性シリカ微粒子{日本アエロジル社製「RX200」(個数平均一次粒子径12nm、仕事関数5.21eV)36gと同「RX50」(平均粒子径32nm、5.16eV)15gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、2段目外添処理として、チタン工業(株)製「STT−30S」(個数平均一次粒子径35nm、仕事関数5.64eV)10gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理した。
混合停止後、3段目外添処理として、正帯電シリカ粒子{日本アエロジル(株)製「NA50H」(個数平均一次粒子径40nm)}8gと、金属石鹸「ステアリン酸マグネシウム」粒子{「ニッサンエレクトール MM−2」(個数平均一次粒子径1.3μm、仕事関数5.32eV)}3gを添加し、シールエアー量1.0Nm3 /hとし、タービン羽根の周速を50m/sで、混合時間を2分間として混合処理し、トナーとした。
実施例1と同様に、耐久印刷前後での帯電量(Q/mの平均)、+トナー量(個数%)、画像の均一性を評価し、結果を同じく表8に示す。
表から、実施例1〜実施例8は、比較例3と比較し、耐久印刷前後の帯電量の差が小さく、また、ムラもなく画像の均一性に優れることがわかる。
また、比較例1は、小粒径のシリカ微粒子と小粒径の酸化チタン粒子をヘンシェルミキサーで外添処理するものであるが、耐久後の帯電量が低くなりすぎ、また、+トナー量が多く、漏れ、飛散が発生し、画像にムラが発生した。
また、比較例2は、粉砕法によるトナー母粒子とする場合であり、微粉が多く、また、帯電量分布も高めとなるが、耐久後の帯電量分布はブロードとなり、飛翔性が落ちる部分が発現し、ベタムラが生じるものとなった。