JP4032240B2 - トナー及び該トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電潜像を現像し、熱定着により画像を形成するために用いられるトナー、およびこのトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、静電画像形成用のトナーは、顔料あるいは染料などの着色成分および必要に応じて電荷制御剤などを含む結着樹脂からなる微粒子をトナー母粒子とし、このトナー母粒子の外部(表面)に、流動性の付与あるいは帯電性の制御などを目的として、外添剤を添加する方法で製造されている。外添剤としては、正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、シリカ以外の無機微粒子(酸化チタンなど)、脂肪酸金属塩などが使用されている。
【0003】
一般に、静電画像形成用のトナーは、負に帯電されている。このようなトナーは、負帯電性のトナー母粒子を調製し、この負帯電性トナー母粒子に正帯電シリカ微粒子などの外添剤を添加して、負帯電量を調節してトナーとする方法で調製される(例えば、特許文献1〜3参照)。あるいは、弱負帯電性〜正帯電性のトナー母粒子を用いる場合、これに負帯電性シリカ微粒子などの外添剤を添加して、負帯電量を調節してトナーとする方法がある(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0004】
負帯電性のトナー母粒子を用いてトナーを製造する方法として、負帯電性の結着樹脂からなるトナー母粒子に、正帯電性疎水性シリカ微粒子を外添する、正帯電性疎水性シリカ微粒子および負帯電性疎水性シリカ微粒子を外添する(いずれも、特許文献1および特許文献2参照)、あるいは正帯電性疎水性シリカ微粒子と低電気抵抗値の無機微粒子を外添する方法(特許文献3参照)が挙げられる。
【0005】
他方、弱負帯電性〜正帯電性のトナー母粒子からトナーを調製する場合も、外添方法が検討されている。例えば、正帯電性疎水性シリカ微粒子および負帯電性疎水性シリカ微粒子を同時に外添する方法(特許文献4参照)、あるいは疎水性シリカ微粒子あるいは疎水性チタニアを第1成分、第1成分よりも粒径の大きい疎水性シリカ微粒子あるいは疎水性チタニアを第2成分、無機微粒子を第3成分、および脂肪酸金属塩を第4成分として、これらの第1〜第4成分をトナー母粒子に同時に外添するか、第1成分を最後に外添する方法(特許文献5参照)が知られている。
【0006】
さらに、トナー母粒子に酸化チタン微粒子とシリカ微粒子とをこの順で外添してトナーを得る方法によって、外添剤の遊離が抑制されたトナーが得られることを記載する文献(特許文献6参照)もある。
【0007】
しかし、これらの特許文献1〜6に記載の方法で得られたトナーは、帯電制御あるいは流動性の制御を行う外添剤(正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子など)がトナー表面から離脱しやすく、トナーの流動性の低下あるいは帯電性低下などを引き起こし、それによって、転写効率の低下、画像濃度の低下などが起こる。
【0008】
また、電子写真用のトナーに、脂肪酸の金属塩(金属石鹸)を用いることは、上記特許文献1および5に記載されているが、これ以外にも特許文献7から12に記載されている。特許文献5では、感光体表面の固着予防とブラックスポット発生防止の観点から脂肪酸金属塩が添加され、その後、疎水性シリカあるいは疎水性チタニアが添加されている。しかし、外添剤である疎水性シリカあるいは疎水性チタニアが遊離し、長期間にわたる帯電の安定性が保たれないという問題がある。
【0009】
特許文献7は、脂肪酸金属塩の結着性について着目し、表面にアミノ基を有するシリカとともに脂肪酸金属塩を同時に添加し、1回の外添処理でトナーを得ている。この方法で得られたトナーは、疎水性のシリカの遊離率は若干改良されるものの、トナーの帯電量を安定に維持し得ることができないという問題点が残っている。特許文献8〜12にもトナーの調製に際して、脂肪酸金属塩が外添されること記載されている。しかし、いずれも文献も特許文献7と同様、脂肪酸金属塩は他の外添剤と同時に添加され、1回の外添処理でトナーを得ている。これらの特許文献7〜12に記載されたトナーも、トナーの帯電量を安定に維持し得ることができないという問題点が残っている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−267337号公報
【特許文献2】
特開2002−14487号公報
【特許文献3】
特開2002−214834号公報
【特許文献4】
特開平11−231571号公報
【特許文献5】
特開2001−100452号公報
【特許文献6】
特開2002−72544号公報
【特許文献7】
特許第2502353号公報
【特許文献8】
特公平8−33681号公報
【特許文献9】
特許第2759510号公報
【特許文献10】
特開平9−114129号公報
【特許文献11】
特開平11−323396号公報
【特許文献12】
特開2001−296688号公報
【特許文献13】
特開2002−202622号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子などの外添剤の離脱が少なく、長期間帯電性を維持でき、流動性、転写効率が高く画像濃度の低下することがないトナーを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリエステル樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーであって、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子が該外添剤として使用され、該外添剤が多段処理により添加され、酸化チタン微粒子が該多段処理の最初に該トナー母粒子に添加され、次に、負帯電性シリカ微粒子が該トナー母粒子に添加され、最後に、少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子が該トナー母粒子に添加され、正帯電性シリカ微粒子は長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加より前、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と同時に添加されて得られるトナーを提供する。
【0013】
好ましい実施態様においては、本発明のトナーは、前記トナー母粒子が負に帯電している。
【0014】
さらに好ましい実施態様においては、本発明のトナーは、前記トナー母粒子が−5〜−60μC/gの帯電量を有する。
【0015】
本発明は、更に、前記いずれかのトナーの製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に外添剤が添加されてなり、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子が該外添剤として使用され、該外添剤が多段処理により添加され、該多段処理の最終段階において、少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を含む外添剤が該トナー母粒子に添加されて得られる。最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を添加することにより得られるトナーは、長鎖脂肪酸またはその塩によって、添加された外添剤の遊離が制御され、トナーの帯電量が長期間安定に保持されるとともに、流動性にも優れている。さらに、長鎖脂肪酸またはその塩を、トナー製造の最終段階で添加処理し、長鎖脂肪酸またはその塩を最外郭に存在させることにより、現像器において、トナーと感光体、あるいはトナーと中媒ベルトとの間の付着力を低下させ、転写プロセスでの転写効率が向上するとともに、感光体および中媒ベルトがトナー表面の外添剤により研磨されることを防止することができる。
【0017】
本明細書において、負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子などのトナー母粒子に外部から添加する材料を外部添加剤あるいは外添剤といい、トナー母粒子の外部(表面)にこれらの外部添加剤(外添剤)を添加することを外添という。
【0018】
まず、本発明に用いられる材料である、(i)トナー母粒子並びにトナー母粒子を構成する材料(結着樹脂および着色剤、並びに離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などのいわゆる内添剤)、(ii)負帯電性シリカ微粒子、(iii)正帯電性シリカ微粒子、(iv)酸化チタン微粒子、(v)長鎖脂肪酸またはその塩、その他、必要に応じて添加される(vi)無機微粒子について説明し、ついで、本発明のトナーについて説明する。
【0019】
(I)本発明に用いられる材料
(i)トナー母粒子
トナー母粒子は、結着樹脂としてポリエステル樹脂および着色剤を含み、必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を含有する。トナー母粒子は、好適には負に帯電されている。トナー母粒子を適切な範囲の負の帯電量を有するように帯電させるため、結着樹脂自体を負帯電性樹脂であるポリエステル樹脂とする。以下にトナー母粒子を構成する材料、およびトナー母粒子の製造方法について、順次説明する。
【0020】
(i−1) トナー母粒子を構成する材料
(結着樹脂)
上記トナー母粒子を負に帯電させる方法を考慮すると、結着樹脂としてはポリエステル樹脂が用いられる。
【0021】
結着樹脂には、通常、負帯電制御剤が添加され、適切な負帯電量を有するトナー母粒子が作成される。
【0022】
ポリエステル樹脂は、トナー母粒子の調製にあたり、比較的好適に使用されている。
【0023】
一般的に用いられるポリエステル樹脂としては、側鎖にカルボキシル基、フェニル基、チオフェニル基、スルホン酸基などの置換基を有している樹脂が好ましい。これらの置換基は、金属塩の形態であることが好ましい。金属塩としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、クロム、鉄、マンガン、コバルト等との金属塩であることが好ましい。あるいは、これらの置換基は、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン等の有機塩基との塩の形態でもよい。
【0024】
このようなポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸またはその誘導体との重縮合によって得られ、側鎖にカルボキシル基を有している。
【0025】
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしては、2価のアルコール、3価のアルコールあるいは4価以上のアルコールが用いられる。
【0026】
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0027】
3価のアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
【0028】
4価以上のアルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0029】
これらの多価アルコールは、単独または混合して用いられる。この中でも、ネオペンチルグリコール、トチメチロールプロパン、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、およびビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が好ましく用いられる。
【0030】
上記ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸としては、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0031】
2価のカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。2価のカルボン酸の誘導体としては、これらの低級アルキルエステルまたは酸無水物が用いられる。低級アルキルエステルとしては、炭素数1〜12のアルキルエステルが好ましく用いられ、メチルエステル、エチルエステルが好ましく用いられる。
【0032】
これらの中でも、芳香族環を有する2価のカルボン酸であるフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、それらの低級アルキルエステル、またはそれらの無水物が好ましく用いられる。
【0033】
3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサトリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの誘導体として、これらのカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等が挙げられる。
【0034】
ポリエステル樹脂の製造方法には特に制限はなく、多価カルボン酸と多価アルコールとを、当業者が通常用いる方法により重縮合させることにより、製造される。重縮合に際し、多価カルボン酸と多価アルコールとの反応量は、カルボキシル基と水酸基のモル比(OH/COOH)が0.8〜1.4の間であることが好ましい。また、得られるポリエステル樹脂の酸価を1〜100になるように調整することが好ましい。より好ましくは1〜30である。酸価が1より小さいと電荷制御剤、剥離剤、着色剤等の内添剤の結着樹脂に対する分散性が低下する。酸価が100を超えると、トナーの耐湿性が低下する。なお、酸価は、常法にて、KOHにて測定される。
【0035】
上記ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いる場合に、特に高いレベルの耐オフセット性、および透明性(定着画像の平滑性)を得たい場合、ポリエステル樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂をイソシアネートと反応させて得られる。反応は、当業者が通常行う方法で行われる。反応に際し、ポリエステル樹脂の水酸基1モル当量あたり、イソシアネートが0.3〜0.99モル当量となるよう混合して行うことが好ましい。より好ましくは0.5〜0.95モル当量である。イソシアネートのモル比が0.3未満であると耐オフセット性が低下するおそれがある。0.99より大きくなると粘度上昇が著しく攪拌が困難になる場合がある。
【0037】
イソシアネートとしては、特に制限はないが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が好ましく用いられる。
【0038】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の質量平均分子量は特に制限はないが、通常2,000〜30,000であることが好ましく、4,000〜25,000がより好ましく、6,000〜20,000であることがさらに好ましい。分子量が2,000よりも小さいと混練時の粘度が低くなり、着色剤の分散が十分に行うことができなくなるおそれがある。そのため、得られたトナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。分子量が30,000より大きいと粘度が高くなり過ぎて、着色剤の分散を十分に行うことができず、トナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。なお、ポリエステル樹脂は、上記範囲内にある分子量を有する樹脂が複数混合されていてもよい。
【0039】
ポリエステル樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0040】
画像形成におけるトナーの定着を熱定着法により行う場合、ポリエステル樹脂のフロー軟化点(Tm)は低いことが好ましい。Tmは、例えば、85〜140℃であることが好ましく、90〜120℃がより好ましく、100〜110℃であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。なお、フロー軟化点(Tm)は、ポリエステル樹脂1.0gをペレット状に加圧成形してサンプルとし、(株)島津製作所製「フローテスターCFT−500D」を用いて、下記条件にて測定する。昇温速度 5℃/分;シリンダー圧力2.0MPa;ダイ穴径1.0mm;ダイ穴長1.0mm;Tm算出法1/2法。さらに、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ポリエステル樹脂10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。測定温度0〜200℃;昇温速度10℃/分:2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
【0041】
上記ポリエステル樹脂は、乳化重合、分散重合、懸濁重合などの重合法、混錬・粉砕・分級工程を含む粉砕法などの方法によって、製造される。最終的に得られるトナー粒子の均一性あるいは流動性などを考慮すると、ポリエステル樹脂は重合法で得られる樹脂が好ましい。
【0042】
また、上記ポリエステル樹脂は単独で用いてもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。上記ポリエステル樹脂は例示であり、これらに限定されないことはいうまでもない。
【0043】
(着色剤)
着色剤としては、以下に示すような、有機顔料、無機顔料、および染料が使用できる。有機および無機顔料のうち、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などが用いられる。
【0044】
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどが用いられる。
【0045】
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどが用いられる。
【0046】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
【0047】
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが用いられる。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが用いられる。
【0048】
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどが用いられる。
【0049】
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが用いられる。
【0050】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが用いられる。
【0051】
また、染料としては、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料などが用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどが例示される。
【0052】
本発明が、透光性カラートナーである場合、着色剤としては、以下に示す種々の顔料、染料が用いられる。
【0053】
黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などが用いられる。
【0054】
赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などが用いられる。
【0055】
青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などが用いられる。
【0056】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、ポリエステル樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部使用することが望ましい。20質量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1質量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0057】
(離型剤)
離型剤としては、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはそのエステル、長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド等が使用される。上記離型剤のうち、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックスおよび金属石鹸が好ましく用いられる。
【0058】
パラフィン系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(日本石油(株)製あるいは日本精蝋(株)製)、マイクロワックス(日本石油(株)製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋(株)製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋(株)製)、PE−130(ヘキスト製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学(株)製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0059】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust 3715 (ヘキスト製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、およびビスコールTS−200(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスが例示される。
【0060】
脂肪酸金属塩(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0061】
これらの離型剤は、単独であるいは組合せて使用することができる。離型剤としては、低軟化点(融点)の化合物が好ましく、軟化点が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものが、好ましく使用される。なお、軟化点は、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値で表される。
【0062】
(分散剤)
分散剤としては、金属石鹸、ポリエチレングリコール等が用いられる。
【0063】
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナー母粒子の帯電性を制御するために、必要に応じて、用いられる。ポリエステル樹脂自体の負帯電性の度合いが低い場合、負帯電制御剤を用いて、トナー母粒子全体が所望のレベルの負帯電性を有するようにする。
【0064】
負帯電制御剤としては、サリチル酸誘導体の金属塩あるいは金属錯体、ベンジル酸誘導体の金属塩、フェニルボレイト4級アンモニウム塩などが挙げられる。サリチル酸誘導体あるいはベンジル酸誘導体の金属塩としては、これらの亜鉛塩、ニッケル塩、銅塩、クロム塩などが好ましく用いられる。
【0065】
市販の負帯電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ製)、クロモーゲンシュバルツETOO(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましく用いられる。これらの負帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
【0066】
負帯電制御剤は、好ましくは、トナー母粒子の帯電量が−5〜−60μC/gとなるようにポリエステル樹脂に配合される。従って、用いるポリエステル樹脂により、ポリエステル樹脂に対する添加量が決定されるが、一般的には、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で配合される。
【0067】
正帯電性制御剤は、トナー母粒子の負帯電量の調整のため、必要に応じて、ポリエステル樹脂に内添される。正帯電制御剤としては、市販の正帯電制御剤が用いられる。例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3:Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト製)が挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましく用いられる。上記の他に、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料なども正帯電制御剤として用いられる。これらの正帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
【0068】
(磁性剤)
磁性剤としては、例えば、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn等の金属粉、Fe3O4、Fe2O3、Cr2O3、フェライト等の金属酸化物、マンガンと酸を含む合金等の熱処理によって強磁性を示す合金等が挙げられる。これらは、予めカップリング剤等で処理したものを用いてもよい。
【0069】
(i−2) トナー母粒子の製造
トナー母粒子は上記ポリエステル樹脂に、上記着色剤、並びに必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を添加して、製造される。例えば、混練・粉砕・分級工程を含む粉砕法により、トナー母粒子を作成する方法を説明する。まず、ポリエステル樹脂、着色剤、および離型剤等の添加剤を所定量、例えば、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))などの混合機に投入し、均一に混合する。ポリエステル樹脂、着色剤、帯電制御剤、および離型剤等の添加剤の混合割合は、トナーの色、帯電性などを考慮して、適宜決定される。例えば、ポリエステル樹脂の負帯電性が不充分である場合にはさらに負帯電制御剤を添加する、あるいはポリエステル樹脂の帯電性を考慮して内添剤を添加する。特に、後述のように、トナー母粒子を−5〜−60μC/gの帯電量となるように調整することが好ましい。
【0070】
上記混合物は、ついで、二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)に投入されて、均一に溶融混練される。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。得られた溶融混練物を、粉砕手段を用いて、微粉砕し、所望の平均粒子径のトナー母粒子が得られる。粉砕は、例えば、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))あるいはIDS−2(日本ニューマチック工業(株))を使用するジェットエアーによる衝突粉砕の他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等により行われる。
【0071】
次に、例えば、風力又はローター回転を用いて、得られたトナー母粒子の粒度が調整される。例えば、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))又はDSX−2(日本ニューマチック工業(株))又はエルボージェット(日鉄鉱業(株))等を使用すると、シャープな粒径分布となる。
【0072】
トナー母粒子は、また、トナー母粒子を構成するポリエステル樹脂並びに着色剤などの内添剤を有機溶媒に溶解し、水性溶媒にて、分級剤・乳化剤と共に分散・造粒し、分離・乾燥する方法で作製してもよい。
【0073】
トナー母粒子の帯電量は、−5〜−60μC/gであることが好ましい。帯電量がこの範囲より小さいと、現像器からのトナー漏れが激しくなり、また−60μC/gより大きいと、十分な画像濃度を得るためには過剰な現像バイアスを付与することが必要となるなどの問題が生じる。
【0074】
トナー母粒子の帯電量は、例えば、以下のように測定される。気温25℃、45%RHの環境下、20mlのポリエチレン容器中で、トナー母粒子0.03gとフェライトキャリア0.97gとを混合し、100rpmで15分攪拌してトナー母粒子を帯電させる。その後、この混合物を0.3g採取して、0.3kg/cm2の圧力の窒素ガスをトナー母粒子とキャリアとの混合物に吹き付けることにより、トナー母粒子とフェライトキャリアとを分離する。ついで、トナー1個毎の帯電量(Q/m)を測定して、トナー母粒子の帯電量を測定する。帯電量の測定には、例えば、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーが用いられる。
【0075】
(ii)負帯電性シリカ微粒子
本発明に用いられる負帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。負帯電性シリカ微粒子として、一般に、平均粒子径が4〜120nm、好ましくは5〜50nm、さらに好ましくは平均粒子径が6〜40nmの負帯電性シリカ微粒子が用いられる。負帯電性シリカ微粒子の平均粒子径が小さい程、得られるトナーの流動性が高くなる。4nmより小さいとトナー母粒子に埋没してしまう虞がある。120nmを超えると、流動性が極端に悪くなる虞がある。なお、本明細書において、負帯電性シリカ、正帯電性シリカ、トナー母粒子、トナー粒子などの微粒子について平均粒子径というときは、特に断らない限り、体積平均粒子径を意味する。
【0076】
負帯電性シリカ微粒子としては、粒子径が均一な負帯電性シリカ微粒子を単独で用いてもよいが、平均粒子径が異なる2以上の負帯電性シリカ微粒子を併用することが好ましい。一般には、平均粒子径の小さい負帯電性シリカ微粒子(小粒子径のシリカ)が用いられているが、これと平均粒子径の大きい負帯電性シリカ微粒子(大粒子径のシリカ)とを併用することにより、小粒子径のシリカのみを用いる場合に比べて、帯電量の絶対値を大きくすることができるとともに、大粒子径のシリカが抵抗となり、小粒子径のシリカがトナー母粒子内に埋没されることが妨げられるため、長期の帯電の安定に優れるようになる。さらに、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となる。好ましくは、小粒子径のシリカとして平均粒子径が5〜20nm、好ましくは6〜15nmの負帯電性シリカ微粒子と大粒子径のシリカとして平均粒子径が20〜50nm、好ましくは20〜40nmの負帯電性シリカ微粒子とを用いることが好ましい。また、大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの平均粒子径の差は、10nm以上あることが好ましく、20nm以上あることがさらに好ましい。
【0077】
大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの添加比が質量比で1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1であることが、トナーに流動性を付与し、かつ帯電の長期安定性を得る上で好ましい。
【0078】
大粒子径シリカと小粒子径シリカとを用いる場合に、後述の製造時において、これらを同時に混合して添加してもよく、いずれかを先に添加し、次いで、他方を添加してもよい。
【0079】
負帯電性シリカ微粒子の添加量は、トナー母粒子の粒子径分布あるいは流動性などにより、または外添剤の粒子径分布、所望の帯電量などにより、変動し得る。例えば、上記小粒子径のシリカであれば、トナー母粒子100質量部に対して0.5〜2.0質量部、好ましくは0.7〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカの場合、0.2〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカと小粒子径シリカとを併用する場合、上記混合比率を考慮しつつ、トナー母粒子100質量部に対して合計量で0.5〜3.0質量部、好ましくは0.7〜2.5質量部添加される。
【0080】
負帯電性シリカ微粒子は疎水化処理されていることが好ましい。負帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの流動性および帯電性がさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化は、アミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物;あるいはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルを用いて、例えば、湿式法、乾式法など当業者が通常使用する方法により行われる。
【0081】
疎水性負帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のRX200、同RX50、キャボット(株)製のTG811F、同TG810G、同TG308Fなどが用いられる。
【0082】
(iii)正帯電性シリカ微粒子
本発明に用いられる正帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。正帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径は、流動性などを考慮して、10〜50nmであることが好ましく、15〜40nmであることがさらに好ましい。
【0083】
正帯電性シリカ微粒子は、後述の製造時において、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加される。
【0084】
正帯電性シリカ微粒子は、疎水化処理されていることが好ましい。正帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために、好ましい。正帯電性シリカ微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法により行われる。
【0085】
疎水性正帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のNA50H、キャボット(株)製のTG820Fなどが用いられる。
【0086】
(iv)酸化チタン(チタニア)微粒子
本発明で用いられる酸化チタン微粒子には、特に制限はない。比較的電気抵抗率の小さい酸化チタンの微粒子が好ましく用いられる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ルチル−アナターゼ型などの結晶形を取り得る。いずれの結晶系の酸化チタンを用いてもよいが、ルチル−アナターゼ型の酸化チタンが、電荷の調整をしやすい点、印字枚数が増えても、酸化チタン粒子がトナー母粒子内に埋没し難いなどの点で好ましく用いられる。
【0087】
酸化チタン微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径あるいは長軸の大きさが10〜30nmの大きさであることが好ましい。ルチル−アナターゼ型の酸化チタンの場合、長軸が10〜30nm程度の酸化チタン微粒子であることが好ましい。
【0088】
酸化チタン微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。なお、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とは、質量比で1:3〜3:1の範囲で添加されることが、トナーの電気抵抗の極端な低下を引き起こすことなく電荷の調整が行える点で、好ましい。
【0089】
酸化チタンの微粒子の表面が疎水性であることが、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために、好ましい。酸化チタン微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法で行われる。
【0090】
疎水性酸化チタン微粒子としては、チタン工業(株)製のSTT−30Sなどが用いられる。
【0091】
(v)長鎖脂肪酸またはその塩
本発明に用いられる長鎖脂肪酸またはその塩に特に制限はない。長鎖脂肪酸としては、好ましくは炭素数10〜30、より好ましくは炭素数12〜28、さらに好ましくは炭素数12〜18の長鎖脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸としては、長鎖飽和脂肪酸あるいは長鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。好ましくは長鎖飽和脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸は分岐を有していてもよいが、直鎖飽和脂肪酸、例えばステアリン酸が好ましく用いられる。
【0092】
前記長鎖脂肪酸は、塩の形態で用いることが好ましく、金属塩(いわゆる金属石鹸)の形態であることがさらに好ましい。長鎖脂肪酸の金属塩としては特に制限はないが、例えば、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらの微粒子が好ましく用いられる。長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0093】
長鎖脂肪酸またはその塩、特に長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)は、体積平均粒子径もしくは長軸の径が0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。平均粒子径または長軸の径がこの範囲を外れると、結着剤、滑剤、流動補助剤としての効果、あるいはトナー凝集防止効果が十分に発揮できない傾向にある。
【0094】
上記長鎖脂肪酸またはその塩、特に金属石鹸は、耐熱性および潤滑性の観点から、融点が100〜150℃程度のものが好ましい。融点が100℃より低いとトナーの耐熱性が低下し、高温環境で保管した場合にトナーが凝集するおそれがある。150℃より高いと潤滑作用が低減するおそれがある。
【0095】
金属石鹸としては、直接法で製造された金属石鹸と複分解法で製造された金属石鹸とが知られているが、不純分の少ない直接法で得られたものを粉砕して、上記平均粒子径になるように、粒度を調整して用いることが好ましい。
【0096】
長鎖脂肪酸またはその塩の添加量は、 長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部添加される。添加量が0.1質量%より少ないと、上記結着剤としての効果、凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などの効果を十分に発揮することができないおそれがある。また、添加量が1.0質量%より多いと流動性に劣り、帯電立ち上がり性が著しく悪化し、カブリなどのノイズが発生するおそれがある。
【0097】
(vi)無機微粒子
酸化チタン微粒子以外の無機微粒子も、帯電性の制御、流動性の向上を目的として外添され得る。例えば、無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化インジウム等の金属酸化物の微粒子;窒化珪素等窒化物の微粒子;炭化珪素等の炭化物の微粒子;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩の微粒子;並びにこれらの複合物等の無機微粒子が挙げられる。電気抵抗率が109Ωcm以下の、比較的電気抵抗率の小さい金属酸化物の微粒子が好ましく用いられる。
【0098】
添加する無機微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径が10〜30nmの大きさであることが好ましい。これらの無機微粒子は、帯電特性の安定化を目的として、その表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理は、上記負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子の疎水化方法のいずれかと同じ方法が採用される。
【0099】
(II)本発明のトナーおよびその製造方法
本発明のトナーは、トナー母粒子に外添剤が多段処理により添加されてなるトナーであって、多段処理の最終段階において、少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子が添加されて得られるトナーである。なお、「少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子が添加される」とは、長鎖脂肪酸またはその塩のみが単独で添加される場合のみならず、既に使用された外添剤以外の外添剤が長鎖脂肪酸またはその塩と同時に添加される場合を含むことを意味する。
【0100】
上記のように、本発明のトナーは、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加する多段処理によって得られることを特徴としている。長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加することにより、負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタンなどの外添剤の結着剤として作用し、これらの外添剤のトナー表面からの離脱を抑制すると考えられる。また、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加することによりトナーの滑剤としての効果がより一層発揮され、帯電の均一性が維持されると考えられる。さらに、繰り返し使用においても、帯電安定性が維持される。これは、滑剤として凝集を防止し、トナー同士の摩擦によって外添剤がトナー母粒子中へ埋没することを防止している結果と考えられる。また、現像器において、トナーと感光体との接触により、感光体表面へ長鎖脂肪酸またはその塩が移行し、感光体表面を潤滑にし、感光体がトナー表面の外添剤により研磨されることを防止することができると考えられる。
【0101】
さらに、本発明のトナーは、外添剤と長鎖脂肪酸またはその塩とが、1回の処理で外添されて得られた既存のトナー、あるいは、長鎖脂肪酸またはその塩の添加後に外添剤を添加して得られるトナーと比べて、多段処理を採用することによるさらなる効果が発揮される。
【0102】
トナー母粒子は、−5〜−60μC/gの帯電量を有することが好ましい。
【0103】
最初に酸化チタン微粒子が添加される。以下の多段処理: (a)酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖脂肪酸またはその塩;(b) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖脂肪酸またはその塩);が例示される。
【0104】
必要に応じて、電荷調整、流動性改善等を目的として上記(vi)の無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子の添加は、長鎖脂肪酸またはその塩の添加前か同時であれば、どの段階で加えてもよい。
【0105】
以上のように、本発明のトナーは、多段処理において、各外添剤の仕事関数およびトナー母粒子の仕事関数などによって、外添剤がトナー母粒子に強く付着される。そして、最後の段階で添加された長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、外添剤の遊離制御効果などの効果が、さらに強化される。さらに、帯電均一性、帯電の長期安定性などの効果が強化され、繰り返し使用においても、帯電安定性が維持される。その上、トナーの凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などが発揮され、トナーと感光体との接触により、感光体表面へ長鎖脂肪酸またはその塩が移行し、感光体表面を潤滑にし、感光体がトナー表面の外添剤により研磨されることを防止する効果がさらに発揮されると考えられる。
【0106】
これに対して、従来のトナー、例えば、上記特許文献1〜4に記載のトナーは、正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に外添して得られたものであるが、正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に添加することにより、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が小さくなり、負帯電性シリカ微粒子の離脱が起こりやすくなっていると考えられる。さらに、長鎖脂肪酸またはその塩を用いないことも、負帯電性および/または正帯電性シリカ微粒子あるいは酸化チタン微粒子の遊離を抑制することができない原因であると思われる。
【0107】
トナー母粒子への上記負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、長鎖脂肪酸またはその塩などの添加は、ヘンシェルミキサー、パーペンマイヤー等の高速流動混合機、メカノケミカル法を用いる混合機等の、当業者が通常用いる機械あるいは方法を用いて行われる。多段処理のそれぞれの工程における攪拌速度および時間は、独立に設定し得るが、同一条件であってもよい。
【0108】
本発明のトナーは、どのようなタイプの画像形成装置にも用いられる。1成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよく、2成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよい。また、接触現像方式の画像形成装置であってもよく、非接触式方式の画像形成装置であってもよい。本発明のトナーを用いることができる一成分系の接触式画像形成装置は、例えば、特許文献13に詳細に説明されている。
【0109】
【実施例】
以下、本発明を、実施例をもとに説明する。まず、本発明のトナーの評価方法について説明する。評価項目および評価方法は、以下の通りである。
【0110】
1.外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率
外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率は、PT1000パーティクルアナライザー(横河電気(株)製)を用いて遊離率を測定した。この外添剤の遊離率の測定方法の詳細は、特許文献13(特開2002−202622号公報)に記載されている。簡単に述べると、この原理は、トナー粒子をプラズマ中に導入して、トナー粒子を励起・発光させ、その強さと時間を測定することにより、遊離率を求めるものである。例えば、SiO2の遊離率は、SiO2が外添されたトナー粒子をプラズマ中に導入し、トナー粒子中のSiO2の発光強度を測定する。その発光強度から、SiO2が外添されたトナー粒子を真球粒子と仮定して真球粒子の粒径(等価粒径)を求める。遊離したSiO2も、トナー粒子の場合と同様に、その発光強度からSiO2の等価粒径が求められる。ただし、遊離したSiO2の発光強度は小さいので、等価粒径は小さくなる。従って、等価粒径を比較することにより、トナー粒子と遊離している外添剤とが区別される。従って、外添剤SiO2の全検出個数を求め、等価粒径の小さい個体を遊離外添剤粒子数とすると、以下の式(X)により求められる。
【0111】
【数1】
【0112】
また、トナー粒子に付着したSiO2は、トナー粒子と同期して同時に発光するが、トナー粒子に付着していないSiO2は、トナー粒子とは同時に発光せず、時間がずれて発光する(非同期)ことを利用して、SiO2がトナー粒子に付着しているか、遊離しているかを区別する。この測定値をもとに、遊離率は以下の式(Y)により求められる。
【0113】
【数2】
【0114】
本実施例においては、式(Y)で示される方法を採用した。なお、酸化チタン微粒子の遊離率を測定する場合は、プラズマ中で酸化チタン微粒子を発光させて、同様に測定すればよい。また、トナー母粒子の体積平均粒子径も、例えば、トナー母粒子に含まれる着色剤をプラズマ中で発光させ、等価粒径を求めることにより、求められる。
【0115】
2.帯電量および帯電の均一性
トナーの帯電量は、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーを用いて以下の様にして測定した。実施例および比較例で調製したトナーとキャリアとを混合し、攪拌してトナーを帯電させた。その後、窒素ガスを、トナーとキャリアとの混合物に吹き付けることにより、トナーとキャリアとを分離した。ついで、トナー1個毎の帯電量(Q/m)を測定して、トナーの帯電量の分布を求めた。トナーの帯電量の均一性は、トナー1個の帯電量(Q/m)の個数分布において、最大頻度の帯電量(Q1/m1)と測定したトナーの総帯電量を測定カウント(個数)で除した値(Q2/m2)との差、すなわち、(Q1/m1)−(Q2/m2)の絶対値が小さい程、帯電量の分布はシャープ(均一)であり、(Q1/m1)−(Q2/m2)の絶対値が大きい程、帯電量の分布はブロード(不均一)であると判断する。
【0116】
なお、キャリアとしては、日立金属(株)製KBN100フェライトキャリアを用いた。
【0117】
3.トナーの電気抵抗率
三協パイオティクス(株)製のハイブリッド型電気抵抗率テスタ(DRT−1型)を用い、JISB9915に従って、測定を行った。
【0118】
4.耐久試験
トナーを、コピー機(セイコーエプソン(株)製LP−9300機)に投入し、5%消費印字パターンで3000枚の印字を行い、印字前後のトナーについて、帯電量の分布、電気抵抗率、および外添剤の遊離率を測定した。
【0119】
(トナー母粒子の調製)
まず、スチレン−アクリル系樹脂またはポリエステル樹脂からなる結着樹脂100質量部に、赤色顔料C.I.120553.5質量部、およびサリチル酸クロム錯体1.0質量部を、それぞれヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一に混合した。この混合物を二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)を用いて溶融混練し、冷却後、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))を用いて、ジェットエアーにより、粉砕した。次に、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))を使用して、体積平均粒径8.5μmのトナー母粒子を調製した。
【0120】
(外添剤)
本実施例で、トナー母粒子に外添する外添剤を、表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
(参考例1〜13および比較例1〜7)
参考例1〜13および比較例1〜7のトナーは、スチレン−アクリル系樹脂を結着樹脂とするトナー母粒子100質量部に対して、表2に示す外添剤を表2に示す所定量、所定の順序で添加して得られたものである。外添処理は、ヘンシェルミキサーFM20B(三井鉱山(株)製)を用いて、Z0S0型の攪拌羽根を用い、回転数2000rpmで、3分間攪拌して行った。いずれの段階における外添処理も、同じ条件で行った。使用した外添剤、その量、添加順序を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
表2で得られたトナーを上記評価方法に従って、評価した。結果を表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表3の結果から、長鎖脂肪酸またはその塩を最終段階で添加して得られるトナーは、長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、構成される外添剤の遊離を有効に制御し得ることが明かである。また、電気抵抗率も適切な範囲である。そして、表3の(iii)欄に示されるように、参考例1〜13のトナーは、いずれの比較例と比べても、均一な帯電性を示すことが明かである。
【0127】
例えば、多段処理により得られ、かつ、長鎖脂肪酸またはその塩を最終段階で添加して得られるトナー(参考例1〜13)は、長鎖脂肪酸またはその塩を添加しない比較例1〜3、および比較例5〜6と比較しても、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子の遊離率、特に酸化チタン微粒子の遊離率が低下していることがわかる。さらに、1回の外添処理で、長鎖脂肪酸またはその塩を同時に添加する比較例4および7と比べてもシリカ微粒子および酸化チタン微粒子の遊離率が低下している。
【0128】
また、参考例1〜3の結果と比較例3の結果とを比較すると、正帯電性シリカ微粒子の添加後長鎖脂肪酸の金属塩(ステアリン酸マグネシウム)を添加する(参考例1)、あるいは正帯電性シリカ微粒子と同時に長鎖脂肪酸金属塩を添加する(参考例2〜3)ことにより、遊離しているシリカ微粒子および酸化チタン微粒子の量が低下している(換言すれば、シリカ微粒子がトナー母粒子に効率よく取りこまれている)ことがわかる。これによって、使用時における電荷の経時変化を小さくすることが可能となる。
【0129】
これらの中でも、特に参考例2および3のトナーは、帯電の均一性に優れ、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子の遊離率も低く、優れたトナーであることがわかる。このため、使用時においても帯電性が均一に保たれると考えられる。
【0130】
参考例2〜3、参考例8〜13および比較例3で得られたトナーの耐久試験を行った。結果を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
表4から明らかなようにいずれの参考例においても、比較例3のトナーと比べて、耐久試験後においても、シリカ微粒子の遊離率および酸化チタン微粒子の遊離率は、比較例ほど大きくなっていない。また、帯電の均一性を示す表4の(iii)欄の値も比較例の増加ほど、増加していない。すなわち、帯電の均一性は、印字枚数が増加しても、比較例よりも良好に維持されていた。このように、多段処理を行い最後に長鎖脂肪酸またはその塩を添加する方法により得られるトナーにおいては、長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、トナー母粒子からの外添剤の遊離が防止される。その結果、印字枚数が増加した後でも、電気抵抗率の大幅な低下はなく、均一な帯電性を維持できることができることが示された。
【0133】
また、参考例2のトナーと参考例3で得られたトナーとを比較すると、共に、3000枚印字後の酸化チタン微粒子の遊離率も小さく、均一な帯電性が維持されているが、特に大きさの異なる負帯電性シリカa1とa2とを併用する参考例3で得られたトナーの方が、大きさの異なる負帯電性シリカ微粒子を併用しない参考例2よりも、遊離率の増加が少ないことがわかる。このことから、粒子径の異なる2種類の負帯電性シリカ微粒子を適切な質量比で用いることにより、印字枚数増加に伴うトナーの帯電量の変化、電気抵抗率、シリカ、酸化チタン微粒子の遊離を抑制することが可能となることが示された。
【0134】
(実施例1、2、参考例14〜18および比較例8〜10)
実施例1、2、参考例14〜18および比較例8〜10のトナーは、ポリエステル樹脂を結着樹脂とする負帯電性トナー母粒子100質量部に対して、表5に示す外添剤を表5に示す所定量、所定の順序で添加して得られたものである。外添処理は、ヘンシェルミキサーFM20B(三井鉱山(株)製)を用いて、Z0S0型の攪拌羽根を用い、回転数2000rpmで、3分間攪拌して行った。いずれの段階における外添処理も、同じ条件で行った。使用した外添剤、その量、添加順序を表5に示す。
【0135】
【表5】
【0136】
表5で得られたトナーを上記評価方法に従って、評価した。結果を表6に示す。
【0137】
【表6】
【0138】
表6の結果から、長鎖脂肪酸またはその塩を最終段階で添加して得られるトナーは、長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、構成される外添剤の遊離を有効に制御し得ることが明かである。また、電気抵抗率も適切な範囲である。そして、表6の(iii)欄に示されるように、実施例1、実施例2及び参考例14〜18のトナーは、いずれの比較例のトナーと比べても、均一な帯電性を示すことが明らかである。
【0139】
本発明のトナー(実施例1及び2)は、多段処理をしない比較例8〜9と比較しても、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子の遊離率、特に酸化チタン微粒子の遊離率が低下していることがわかる。また、1回の外添処理で、長鎖脂肪酸またはその塩を同時に添加する比較例8と参考例18とを比較すると、シリカ微粒子遊離率はあまり変わらなかったが、参考例18の電気抵抗率は適正な範囲にあり、帯電の均一性が優れていることがわかる。
【0140】
実施例1、2、参考例14〜18および比較例8で得られたトナーの耐久試験を行った。結果を表7に示す。
【0141】
【表7】
【0142】
表7から明らかなようにいずれの実施例においても、比較例8のトナーと比べて、耐久試験後においても、シリカ微粒子の遊離率および酸化チタン微粒子の遊離率は、比較例ほど大きくなっていない。また、帯電の均一性を示す表7の(iii)欄の値も比較例の増加ほど、増加していない。すなわち、帯電の均一性は、印字枚数が増加しても、比較例よりも良好に維持されていた。このように多段処理を行い、最後に長鎖脂肪酸またはその塩を添加する方法により得られるトナーにおいては、長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、トナー母粒子からの外添剤の遊離が防止される。その結果、印字枚数が増加した後でも、均一な帯電性を得ることができることが示された。
【0143】
【発明の効果】
本発明のトナーは、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加する多段処理によって得られる。長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加することにより、負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタンなどの外添剤の結着剤として作用し、これらの外添剤のトナー表面からの離脱を抑制すると考えられる。また、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加することによりトナーの滑剤としての効果がより一層発揮され、帯電の均一性が維持されると考えられる。さらに、繰り返し使用においても、帯電安定性が維持される。これは、滑剤として凝集を防止し、トナー同士の摩擦によって外添剤がトナー母粒子中へ埋没することを防止している結果と考えられる。また、現像器において、トナーと感光体との接触により、感光体表面へ長鎖脂肪酸またはその塩が移行し、感光体表面を潤滑にし、感光体がトナー表面の外添剤により研磨されることを防止することができると考えられる。
Claims (4)
- ポリエステル樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーであって、
負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子が該外添剤として使用され、
該外添剤が多段処理により添加され、酸化チタン微粒子が該多段処理の最初に該トナー母粒子に添加され、次に、負帯電性シリカ微粒子が該トナー母粒子に添加され、最後に、少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子が該トナー母粒子に添加され、正帯電性シリカ微粒子は長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加より前、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と同時に添加されて得られる、トナー。 - 前記トナー母粒子が負に帯電している、請求項1に記載されているトナー。
- 前記トナー母粒子が−5〜−60μC/gの帯電量を有する、請求項2に記載されているトナー。
- ポリエステル樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーの製造方法であって、
負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子が該外添剤として使用され、
該外添剤が多段処理により添加され、酸化チタン微粒子が該多段処理の最初に該トナー母粒子に添加され、次に、負帯電性シリカ微粒子が該トナー母粒子に添加され、最後に、少なくとも長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子が該トナー母粒子に添加され、正帯電性シリカ微粒子は長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加より前、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と同時に添加される、トナーの製造方法。
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