JP4032237B2 - トナーおよび該トナーを用いる画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電潜像を現像し、熱定着により画像を形成するために用いられるトナー、およびこのトナーを用いる画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、静電画像形成用のトナーは、顔料あるいは染料などの着色成分および必要に応じて電荷制御剤などを含む結着樹脂からなる微粒子をトナー母粒子とし、このトナー母粒子の外部(表面)に、流動性の付与あるいは帯電性の制御などを目的として、外添剤を添加する方法で製造されている。外添剤としては、正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、シリカ以外の無機微粒子(酸化チタンなど)、脂肪酸金属塩などが使用されている。
【0003】
例えば、トナー母粒子に正帯電性疎水性シリカ微粒子を外添したトナー、正帯電性疎水性シリカ微粒子および負帯電性疎水性シリカ微粒子を外添したトナー、正帯電性疎水性シリカ微粒子と低電気抵抗値の無機微粒子(例えば、酸化チタンなどの金属酸化物無機粒子)を外添したトナー(いずれも、特許文献1および特許文献2参照)、あるいは大きさの異なる2種類の正帯電性の物質(例えばシリカ)と無機微粒子とを外添したトナー(特許文献3参照)などが知られている。なお、この特許文献1〜3では、負帯電性の結着樹脂が使用されている。
【0004】
また、トナー母粒子に正帯電性疎水性シリカ微粒子および負帯電性疎水性シリカ微粒子を外添したトナー(特許文献4参照)、あるいは疎水性シリカ微粒子あるいは疎水性チタニアを第1成分、第1成分よりも粒径の大きい疎水性シリカ微粒子あるいは疎水性チタニアを第2成分、無機微粒子を第3成分、および脂肪酸金属塩を第4成分として、これらの第1〜第4成分をトナー母粒子に同時に外添するか、第1成分を最後に外添する方法によって得られる、帯電立ち上がり性に優れたトナー(特許文献5参照)が知られている。
【0005】
さらに、トナー母粒子に酸化チタン微粒子とシリカ微粒子とをこの順で外添してトナーを得る方法によって、外添剤の遊離が抑制されたトナーが得られることを記載する文献(特許文献6参照)もある。
【0006】
しかし、これらの特許文献1〜6に記載の方法で得られたトナーは、帯電制御あるいは流動性の制御を行う外添剤(正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子など)がトナー表面から離脱しやすく、トナーの流動性の低下あるいは帯電性低下などを引き起こし、それによって、転写効率の低下、画像濃度の低下などが起こる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−267337号公報
【特許文献2】
特開2002−14487号公報
【特許文献3】
特開2002−214834号公報
【特許文献4】
特開平11−231571号公報
【特許文献5】
特開2001−100452号公報
【特許文献6】
特開2002−72544号公報
【特許文献7】
特開2002−202622号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、正帯電性シリカ微粒子、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子などの外添剤の離脱が少なく、長期間帯電性を維持でき、流動性、転写効率が高く画像濃度の低下することがないトナーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に負帯電性シリカ微粒子を外添する工程;および、(2)酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に外添する工程;をこの順で行って得られるトナーを提供する。
【0010】
好ましい実施態様においては、前記負帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径が4〜120nmであり、前記正帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径が10〜50nmである。
【0011】
別の好ましい実施態様においては、前記酸化チタン微粒子と前記正帯電性シリカ微粒子とが、質量比で1:3〜3:1となるように外添されている。
【0012】
好ましい実施態様においては、前記酸化チタン微粒子は、ルチル−アナターゼ型酸化チタンの微粒子である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、トナー母粒子に、まず負帯電性シリカ微粒子を添加し、ついで、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に添加して得られる。本明細書において、負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子などのトナー母粒子に外部から添加する材料を外部添加剤あるいは外添剤といい、トナー母粒子の外部(表面)にこれらの外部添加剤(外添剤)を付着させることを外添という。
【0016】
まず、本発明に用いられる材料である、(i)トナー母粒子並びにトナー母粒子を構成する材料(結着樹脂および着色剤、並びに離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などのいわゆる内添剤)、(ii)負帯電性シリカ微粒子、(iii)正帯電性シリカ微粒子、(iv)酸化チタン微粒子、(v)長鎖脂肪酸またはその塩、およびその他、必要に応じて添加される(vi)無機微粒子について説明し、ついで、本発明のトナーについて説明する。
【0017】
(I)本発明に用いられる材料
(i)トナー母粒子
トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含み、必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を含有する。
【0018】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、トナーとして一般的に用いられる樹脂が用いられる。このような結着樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、アクリレート系樹脂あるいはメタアクリレート系樹脂(以下、(メタ)アクリレート系樹脂という)、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの樹脂の構成成分を含む共重合体などが用いられる。
【0019】
中でも、ポリスチレン系樹脂およびスチレン−(メタ)アクリレート系樹脂共重合体が好ましく用いられる。
【0020】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、水素添加スチレン樹脂、スチレン−イソブチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン架橋ポリマー、スチレン−ブタジエン−塩素化パラフィン共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0021】
スチレン−(メタ)アクリレート系樹脂共重合体としては、例えば、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)、スチレン−ジエチルアミノ−エチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−ブチルアリレート−N−(エトキシメチル)アクリルアミド共重合体、スチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン−ジメチルアミノエチルメタアクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、スチレン−n−ブチルアリレート−エチルグリコールメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−アクリル酸共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブチルアクリレート−イソブチルマレイン酸ハーフエステル−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。
【0022】
画像形成におけるトナーの定着を熱定着法により行う場合、結着樹脂のフロー軟化点(Tm)は低いことが好ましい。Tmは、例えば、85〜140℃であることが好ましく、90〜120℃がより好ましく、100〜110℃であることがさらに好ましい。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。なお、フロー軟化点(Tm)は、結着樹脂1.0gをペレット状に加圧成形してサンプルとし、(株)島津製作所製「フローテスターCFT−500D」を用いて、下記条件にて測定する。昇温速度 5℃/分;シリンダー圧力2.0MPa;ダイ穴径1.0mm;ダイ穴長1.0mm;Tm算出法1/2法。さらに、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、結着樹脂10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。測定温度0〜200℃;昇温速度10℃/分:2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
【0023】
圧力定着法によりトナーの定着が行われる場合、結着樹脂としてはワックス状の樹脂が好ましく用いられる。ポリエチレン樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ワックスなどが例示される。
【0024】
結着樹脂は、乳化重合、分散重合、懸濁重合などの重合法、混錬・粉砕・分級工程を含む粉砕法などの方法によって、製造される。最終的に得られるトナー粒子の均一性あるいは流動性などを考慮すると、結着樹脂は重合法で得られる樹脂が好ましい。
【0025】
また、上記樹脂は単独で用いてもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。上記樹脂は例示であり、これらに限定されないことはいうまでもない。
【0026】
(着色剤)
着色剤としては、以下に示すような、有機顔料、無機顔料、および染料が使用できる。有機および無機顔料のうち、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などが用いられる。
【0027】
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどが用いられる。
【0028】
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどが用いられる。
【0029】
赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
【0030】
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが用いられる。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが用いられる。
【0031】
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどが用いられる。
【0032】
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが用いられる。
【0033】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが用いられる。
【0034】
また、染料としては、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料などが用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどが例示される。
【0035】
本発明が、透光性カラートナーである場合、着色剤としては、以下に示す種々の顔料、染料が用いられる。
【0036】
黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などが用いられる。
【0037】
赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などが用いられる。
【0038】
青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などが用いられる。
【0039】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部使用することが望ましい。20質量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1質量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0040】
(離型剤)
離型剤としては、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはそのエステル、長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド等が使用される。上記離型剤のうち、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックスおよび金属石鹸が好ましく用いられる。
【0041】
パラフィン系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(日本石油(株)製あるいは日本精蝋(株)製)、マイクロワックス(日本石油(株)製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋(株)製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋(株)製)、PE−130(ヘキスト製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学(株)製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0042】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust 3715 (ヘキスト製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、およびビスコールTS−200(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスが例示される。
【0043】
これらの離型剤は、単独であるいは組合せて使用することができる。離型剤としては、低軟化点(融点)の化合物が好ましく、軟化点が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものが、好ましく使用される。なお、軟化点は、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値で表される。
【0044】
脂肪酸金属塩(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0045】
(分散剤)
分散剤としては、金属石鹸、ポリエチレングリコール等が用いられる。
【0046】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されない。有機帯電制御剤あるいは無機帯電制御剤が用いられる。正帯電制御剤としては、市販の正帯電制御剤が用いられる。例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3:Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト製)が挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましく用いられる。上記の他に、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料なども正帯電制御剤として用いられる。これらの正帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
【0047】
負帯電制御剤としては、市販の負帯電制御剤が用いられる。例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ製)、クロモーゲンシュバルツETOO(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましく用いられる。これらの負帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
【0048】
(磁性剤)
磁性剤としては、例えば、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn等の金属粉、Fe3O4、Fe2O3、Cr2O3、フェライト等の金属酸化物、マンガンと酸を含む合金等の熱処理によって強磁性を示す合金等が挙げられる。これらは、予めカップリング剤等で処理したものを用いてもよい。
【0049】
(トナー母粒子の製造)
トナー母粒子は上記、結着樹脂に、着色剤、並びに必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を添加して、製造される。例えば、混練・粉砕・分級工程を含む粉砕法により、トナー母粒子を作成する方法を説明する。まず、結着樹脂、着色剤、および離型剤等の添加剤を所定量、例えば、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))などの混合機に投入し、均一に混合する。結着樹脂、着色剤、および離型剤等の添加剤の混合割合は、トナーの色、帯電性などを考慮して、適宜決定される。
【0050】
上記混合物は、ついで、二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)に投入されて、均一に溶融混練される。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。得られた溶融混練物を、粉砕手段を用いて、微粉砕し、所望の平均粒子径のトナー母粒子が得られる。粉砕は、例えば、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))あるいはIDS−2(日本ニューマチック工業(株))を使用するジェットエアーによる衝突粉砕の他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等により行われる。
【0051】
次に、例えば、風力又はローター回転を用いて、得られたトナー母粒子の粒度が調整される。例えば、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))又はDSX−2(日本ニューマチック工業(株))又はエルボージェット(日鉄鉱業(株))等を使用すると、シャープな粒径分布となる。
【0052】
トナー母粒子は、また、トナー母粒子を構成する樹脂並びに着色剤などの内添剤を有機溶媒に溶解し、水性溶媒にて、分級剤・乳化剤と共に分散・造粒し、分離・乾燥する方法で作製してもよい。
【0053】
(ii)負帯電性シリカ微粒子
本発明に用いられる負帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。負帯電性シリカ微粒子として、一般に、平均粒子径が4〜120nm、好ましくは5〜50nm、さらに好ましくは平均粒子径が6〜40nmの負帯電性シリカ微粒子が用いられる。負帯電性シリカ微粒子の平均粒子径が小さい程、得られるトナーの流動性が高くなる。4nmより小さいとトナー母粒子に埋没してしまう虞がある。120nmを超えると、流動性が極端に悪くなる虞がある。なお、本明細書において、負帯電性シリカ、正帯電性シリカ、トナー母粒子、トナー粒子などの微粒子について平均粒子径というときは、特に断らない限り、体積平均粒子径を意味する。
【0054】
負帯電性シリカ微粒子は疎水化処理されていることが好ましい。負帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの流動性および帯電性がさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化は、アミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物;あるいはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルを用いて、例えば、湿式法、乾式法など当業者が通常使用する方法により行われる。
【0055】
疎水性負帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のRX200、同RX50、キャボット(株)製のTG811F、同TG810G、同TG308Fなどが用いられる。
【0056】
(iii)正帯電性シリカ微粒子
本発明に用いられる正帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。正帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径は、流動性などを考慮して、10〜50nmであることが好ましく、15〜40nmであることがさらに好ましい。
【0057】
正帯電性シリカ微粒子は、疎水化処理されていることが好ましい。正帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの流動性および帯電性がさらに向上する。正帯電性シリカ微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法により行われる。
【0058】
疎水性正帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のNA50H、キャボット(株)製のTG820Fなどが用いられる。
【0059】
(iv)酸化チタン(チタニア)微粒子
本発明で用いられる酸化チタン微粒子には、特に制限はない。比較的電気抵抗率の小さい酸化チタンの微粒子が好ましく用いられる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ルチル−アナターゼ型などの結晶形を取り得る。いずれの結晶系の酸化チタンを用いてもよいが、ルチル−アナターゼ型の酸化チタンが、電荷の調整をしやすい点、印字枚数が増えても、酸化チタン粒子がトナー母粒子内に埋没し難いなどの点で好ましく用いられる。
【0060】
酸化チタン微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径あるいは長軸の大きさが10〜30nmの大きさであることが好ましい。ルチル−アナターゼ型の酸化チタンの場合、長軸が20nm程度の酸化チタン微粒子であることが好ましい。
【0061】
酸化チタンの微粒子の表面が疎水性であることが、安定な帯電性を維持し、流動性を向上させる上で好ましい。酸化チタン微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法で行われる。
【0062】
疎水性酸化チタン微粒子としては、チタン工業(株)製のSTT−30Sなどが用いられる。
【0063】
(v)長鎖脂肪酸またはその塩
本発明に用いられる長鎖脂肪酸またはその塩に特に制限はない。長鎖脂肪酸としては、好ましくは炭素数10〜30、より好ましくは炭素数12〜28の長鎖脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸としては、長鎖飽和脂肪酸あるいは長鎖不飽和脂肪酸が用いられるが、好ましくは長鎖飽和脂肪酸である。長鎖脂肪酸は分岐を有していてもよい。直鎖飽和脂肪酸、例えばステアリン酸が好ましく用いられる。
【0064】
前記長鎖脂肪酸は、塩の形態で用いることが好ましく、金属塩(いわゆる金属石鹸)の形態であることがさらに好ましい。長鎖脂肪酸の金属塩としては特に制限はないが、例えば、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の微粒子が好ましく用いられる。長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0065】
(vi)無機微粒子
酸化チタン微粒子以外の無機微粒子も、帯電性の制御、流動性の向上を目的として外添され得る。例えば、無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化インジウム等の金属酸化物の微粒子;窒化珪素等窒化物の微粒子;炭化珪素等の炭化物の微粒子;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩の微粒子;並びにこれらの複合物等の無機微粒子が挙げられる。電気抵抗率が109Ωcm以下の、比較的電気抵抗率の小さい金属酸化物の微粒子が好ましく用いられる。
【0066】
添加する無機微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径が10〜30nmの大きさであることが好ましい。これらの無機微粒子は、帯電特性の安定化を目的として、その表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理は、上記負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子の疎水化方法のいずれかと同じ方法が採用される。
【0067】
(II)本発明のトナーおよびその製造方法
本発明のトナーは、(1)結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に負帯電性シリカ微粒子を外添する工程;および(2)酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に外添する工程;をこの順で行って得られる。
【0068】
以下、本発明のトナーの製造方法について、さらに詳しく説明する。工程(1)では、結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に負帯電性シリカ微粒子が外添される。この工程(1)においては、粒子径が均一な負帯電性シリカ微粒子を単独で用いてもよいが、平均粒子径が異なる2以上の負帯電性シリカ微粒子を併用することが好ましい。一般には、平均粒子径の小さい負帯電性シリカ微粒子(小粒子径のシリカ)が用いられているが、これと平均粒子径の大きい負帯電性シリカ微粒子(大粒子径のシリカ)とを併用することにより、小粒子径のシリカのみを用いる場合に比べて、帯電量の絶対値を大きくすることができるとともに、大粒子径のシリカが抵抗となり、小粒子径のシリカがトナー母粒子内に埋没されることが妨げられるため、長期の帯電の安定に優れるようになる。さらに、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となる。好ましくは、小粒子径のシリカとして平均粒子径が5〜20nm、好ましくは6〜15nmの負帯電性シリカ微粒子と大粒子径のシリカとして平均粒子径が20〜50nm、好ましくは20〜40nmの負帯電性シリカ微粒子とを用いることが好ましい。また、大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの平均粒子径の差は、10nm以上あることが好ましく、20nm以上あることがさらに好ましい。
【0069】
大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの添加比が質量比で1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1であることが、トナーに流動性を付与し、かつ帯電の長期安定性を得る上で好ましい。
【0070】
大粒子径シリカと小粒子径シリカとは、同時に混合して外添してもよく、いずれかを先に外添し、次いで、他方を外添してもよい。
【0071】
次に、工程(1)で得られた、負帯電性シリカが外添されたトナー母粒子に、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に外添する(工程(2))。酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子は、表面が疎水化処理されていることが、トナーの外部環境変化に対する帯電性の変化を小さくし、かつトナーの流動性を良好にするために、好ましい。
【0072】
本発明のトナーの製造に用いられる負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子などの添加量は、トナー母粒子の粒子径分布あるいは流動性などにより、または外添剤の粒子径分布、所望の帯電量などにより、変動し得る。負帯電性シリカ微粒子の場合、例えば、上記小粒子径のシリカであれば、トナー母粒子100質量部に対して0.5〜2.0質量部、好ましくは0.7〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカの場合、0.2〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカと小粒子径シリカとを併用する場合、上記混合比率を考慮しつつ、トナー母粒子100質量部に対して合計量で0.5〜3質量部、好ましくは0.7〜2.5質量部添加される。
【0073】
正帯電性シリカ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加される。
【0074】
酸化チタン微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。
【0075】
酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とは、質量比で1:3〜3:1の範囲で外添されることが、トナーの電気抵抗の極端な低下を引き起こすことなく電荷の調整が行える点で、好ましい。
【0076】
長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部添加される。
【0077】
なお、必要に応じて、電荷調整、流動性改善等を目的として上記(vi)の無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子の添加は、負帯電性シリカ微粒子の外添(工程(1))の後であれば、工程(2)の前あるいは後に行ってもよい。
【0078】
トナー母粒子への上記負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩の外添は、ヘンシェルミキサー、パーペンマイヤー等の高速流動混合機、メカノケミカル法を用いる混合機等の、当業者が通常用いる機械あるいは方法を用いて行われる。本発明のトナーは、例えば、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子とをヘンシェルミキサーに投入し、所定の攪拌速度で所定時間攪拌し、次いで、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩を投入して、さらに所定の攪拌速度で所定時間攪拌することによって、得られる。それぞれの工程における攪拌速度および時間は、独立に設定し得るが、同一条件であってもよい。
【0079】
本発明のトナーの製造方法によれば、上記工程(1)において、負帯電性シリカ微粒子をまず単独で添加することにより、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が正帯電性シリカ微粒子により妨害されず、さらに、負帯電性シリカ微粒子の仕事関数とトナー母粒子の仕事関数との差異が大きいため、負帯電性シリカ微粒子を強くトナー母粒子に付着させることができる。これによって、負帯電性シリカ微粒子の脱離が防止され、帯電性の変化が小さくなり、帯電性が長期的に安定化するという効果が得られる。
【0080】
上記工程(2)において、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩を同時に添加することにより、正帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子による表面電荷の調整を、電気抵抗を極端に低下させることなく行うことが可能となる。酸化チタンは低電気抵抗性であるため、酸化チタン微粒子が表面に存在すると過度に電荷が逃げる可能性が高い。他方、正帯電性シリカ微粒子は、正帯電しており、かつ電気抵抗値も高い。そこで、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とを同時に外添することにより、トナーの電気抵抗率を極端に低下させることなく、表面電荷が調整され、均一化されると考えられる。さらに、トナー中に正帯電性シリカ粒子が適切な割合で遊離して存在することとなり、トナーの流動性が良好となるとともに、遊離している正帯電性シリカ粒子がキャリアの働きをして、帯電性がより均一となる。
【0081】
上記効果に加えて、長鎖脂肪酸またはその塩(特に金属石鹸)が結着剤として作用し、電荷調整剤である正帯電性シリカ微粒子および酸化チタンのトナー表面からの離脱を抑制することができるという効果が得られる。さらに、トナーの凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などとして作用していることも考えられる。
【0082】
これに対して、従来のトナー、例えば、上記特許文献1〜4に記載のトナーは、正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に外添して得られたものである。正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に添加することにより、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が小さくなり、負帯電性シリカ微粒子の離脱が起こりやすくなっていると考えられる。
【0083】
このように、本発明のトナーは、従来の同時混合法で得られたトナーに比べ、均一な帯電性を有し、負帯電性および/または正帯電性シリカ微粒子あるいは酸化チタン微粒子の遊離を抑制することによって、均一な帯電性が長期に亘って安定して維持され、優れた流動性が長時間維持されるという優れた効果を有している。
【0084】
本発明のトナーは、どのようなタイプの画像形成装置にも用いられる。1成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよく、2成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよい。また、接触現像方式の画像形成装置であってもよく、非接触式方式の画像形成装置であってもよい。本発明のトナーを用いることができる一成分系の接触式画像形成装置は、例えば、特許文献7に詳細に説明されている。本発明の画像形成装置は、感光体で代表される静電潜像が形成される潜像担持体と、この潜像担持体上の静電潜像を現像するためにトナーを潜像担持体に搬送する、現像ロールで代表されるトナー担持体、およびこのトナー担持体により潜像担持体へ搬送されるトナー量を規制するトナー規制部材を有する現像器とを少なくとも備えている。本発明のトナーはトナー収容部に収容されており、トナー収容部から現像ロール(トナー担持体)に搬送され、現像ロール(トナー担持体)を介して感光体(潜像担持体)に供給され、転写されて画像を形成する。トナー規制部材は、現像ロール(トナー担持体)から感光体(潜像担持体)に過剰な供給がされないように、トナー供給量を調整する。
【0085】
【実施例】
以下、本発明を、実施例をもとに説明する。
【0086】
(トナー母粒子の調製)
まず、スチレン−アクリル系の結着樹脂100質量部に、赤色顔料C.I.120553.5質量部、およびサリチル酸クロム錯体1.0質量部を、それぞれヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一に混合した。この混合物を二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)を用いて溶融混練し、冷却後、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))を用いて、ジェットエアーにより、粉砕した。次に、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))を使用して、体積平均粒径8.5μmのトナー母粒子を調製した。
【0087】
(外添剤)
本実施例で、トナー母粒子に外添する外添剤を、表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(外添処理)
本発明の実施例においては、各工程における外添処理は、トナー母粒子100質量部に対して、外添剤を所定量添加し、ヘンシェルミキサーFM20B(三井鉱山(株)製)を用いて、Z0S0型の攪拌羽根を用い、回転数2000rpmで、3分間攪拌して行った。例えば、まず、工程(1)では負帯電性シリカ微粒子をこの条件下、ヘンシェルミキサーによる攪拌処理を行い、次いで、工程(1)で得られた負帯電性シリカ微粒子が外添されたトナー母粒子に、トナー母粒子100質量部に対して酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩を、それぞれ所定量加えて、工程(1)と同じ条件で、ヘンシェルミキサーによる攪拌処理を行った。
【0090】
(実施例1:トナーAの製造)
上記得られたトナー母粒子100質量部に、RX200を1.0質量部添加することにより、外添処理を行った(工程(1))。工程(1)で得られた負帯電性シリカ微粒子が外添されたトナー母粒子に、STT−30S(疎水性酸化チタン)を1.0質量部、NA50Hを0.5質量部、およびステアリン酸マグネシウムの粉末を0.1質量部、同時に添加して外添処理を行うことにより(工程(2))、トナーAを得た。表2にこの工程を示す。
【0091】
(実施例2:トナーBの製造)
実施例1の工程(1)において、RX200を1.0質量部添加する代わりに、RX200(小粒径のシリカ)を0.5質量部およびRX50(大粒径のシリカ)を0.5質量部添加した以外は、実施例1と同様に処理して、トナーBを得た。表2にこの工程を示す。
【0092】
(比較例1:トナーCの製造)
トナー母粒子100質量部に対して、RX200を0.5質量部およびRX50を0.5質量部、STT−30Sを1.0質量部、NA50Hを0.5質量部、およびステアリン酸マグネシウムの粉末を0.1質量部、同時に添加して、外添処理を行うことにより、比較例1のトナーCを得た。表2にこの工程を示す。
【0093】
(比較例2:トナーDの製造)
実施例1の第2工程において、正帯電性シリカ微粒子を用いなかったこと以外は実施例1と同様に処理して、比較例2のトナーDを得た。表2にこの工程を示す。
【0094】
【表2】
【0095】
(実施例3)
上記の方法(表2)で得られたトナーA〜Dを評価した。評価項目および評価方法は、以下の通りである。
【0096】
1.外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率
外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率は、PT1000パーティクルアナライザー(横河電気(株)製)を用いて遊離率を測定した。この外添剤の遊離率の測定方法の詳細は、特許文献7(特開2002−202622号公報)に記載されている。簡単に述べると、この原理は、トナー粒子をプラズマ中に導入して、トナー粒子を励起・発光させ、その強さと時間を測定することにより、遊離率を求めるものである。例えば、SiO2の遊離率は、SiO2が外添されたトナー粒子をプラズマ中に導入し、トナー粒子中のSiO2の発光強度を測定する。その発光強度から、SiO2が外添されたトナー粒子を真球粒子と仮定して真球粒子の粒径(等価粒径)を求める。遊離したSiO2も、トナー粒子の場合と同様に、その発光強度からSiO2の等価粒径が求められる。ただし、遊離したSiO2の発光強度は小さいので、等価粒径は小さくなる。従って、等価粒径を比較することにより、トナー粒子と遊離している外添剤とが区別される。従って、外添剤SiO2の全検出個数を求め、等価粒径の小さい個体を遊離外添剤粒子数とすると、以下の式(X)により求められる。
【0097】
【数1】
【0098】
また、トナー粒子に付着したSiO2は、トナー粒子と同期して同時に発光するが、トナー粒子に付着していないSiO2は、トナー粒子とは同時に発光せず、時間がずれて発光する(非同期)ことを利用して、SiO2がトナー粒子に付着しているか、遊離しているかを区別する。この測定値をもとに、遊離率は以下の式(Y)により求められる。
【0099】
【数2】
【0100】
本実施例においては、同期−非同期発光を検出して測定する方法を採用し、式(Y)により遊離率を求めた。なお、酸化チタン微粒子の遊離率を測定する場合は、プラズマ中で酸化チタン微粒子を発光させて、同様に測定すればよい。また、トナー母粒子の体積平均粒子径も、例えば、トナー母粒子に含まれる着色剤をプラズマ中で発光させ、等価粒径を求めることにより、求められる。
【0101】
2.帯電量および帯電の均一性
トナーの帯電量は、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーを用いて以下の様にして測定した。実施例1〜2および比較例1〜2で調製したトナーとキャリアとを混合し、攪拌してトナーを帯電させた。その後、窒素ガスを、トナーとキャリアとの混合物に吹き付けることにより、トナーとキャリアとを分離した。ついで、トナー1個毎の帯電量(Q/m)を測定して、トナーの帯電量の分布を求めた。トナーの帯電量の均一性は、トナー1個の帯電量(Q/m)の個数分布において、最大頻度の帯電量(Q1/m1)と測定したトナーの総帯電量を測定カウント(個数)で除した値(Q2/m2)との差、すなわち、(Q1/m1)−(Q2/m2)の絶対値が小さい程、帯電量の分布はシャープ(均一)であり、(Q1/m1)−(Q2/m2)の絶対値が大きい程、帯電量の分布はブロード(不均一)であると判断する。
【0102】
なお、キャリアとしては、日立金属(株)製KBN100フェライトキャリアを用いた。
【0103】
3.トナーの電気抵抗率
三協パイオティクス(株)製のハイブリッド型電気抵抗率テスタ(DRT−1型)を用い、JISB9915に従って、測定を行った。
【0104】
上記評価結果を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表3の結果から、負帯電性シリカ微粒子を外添し、ついで、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカおよび長鎖脂肪酸またはその塩を同時に外添して得られる本発明のトナーAおよびB(実施例1および2)は、上記外添剤の全てを同時に添加した場合(比較例1:トナーC)に比べて、帯電の均一性に優れていること、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子の遊離率も低いこと、および電気抵抗率も小さいことがわかる。これは、まず、負帯電性シリカ微粒子をトナー母粒子に外添することにより、仕事関数の関係で負帯電性シリカ微粒子がトナー母粒子に強固に付着することにより、シリカ微粒子の遊離率が低下したことによると考えられる。
【0107】
また、正帯電性シリカ微粒子を添加しなかった場合(比較例2:トナーD)と比較すると、トナーDの電荷は強く負に帯電しており電荷が調整されておらず、低濃度の画像が形成される。これに対して、正帯電性シリカ微粒子、酸化チタンおよび長鎖脂肪酸またはその塩を同時に添加した本発明のトナーAおよびBは、トナーの電気抵抗値を極端に低下させることなく、トナーの電荷を調整することができることがわかる。さらに、長鎖脂肪酸またはその塩の結着効果により、シリカ微粒子および酸化チタンの遊離率も低下していることがわかる。
【0108】
【発明の効果】
トナー母粒子に、まず、負帯電性シリカ微粒子を外添し、次に、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に外添することにより得られるトナーは、トナーの電気抵抗値を極端に低下させることなくトナーの電荷を調整できるため、帯電性が均一となり、さらに、長鎖脂肪酸またはその塩の結着効果も加わって、シリカ微粒子あるいは酸化チタン微粒子の遊離を抑制し得る。その結果、長期に安定な帯電性を維持し得、流動性にも優れている。
Claims (4)
- (1)結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子に負帯電性シリカ微粒子を外添する工程;および、
(2)酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に外添する工程;をこの順で行って得られる、トナー。 - 前記負帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径が4〜120nmであり、前記正帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径が10〜50nmである、請求項1に記載のトナー。
- 前記酸化チタン微粒子と前記正帯電性シリカ微粒子とが、質量比で1:3〜3:1となるように外添される、請求項1または2に記載のトナー。
- 前記酸化チタン微粒子が、ルチル−アナターゼ型酸化チタンの微粒子である、請求項1から3のいずれかの項に記載のトナー。
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