本発明のトナーの製造方法で使用するトナー母粒子は、少なくとも着色剤を含む球形状樹脂粒子であり、球形状樹脂粒子はその形状係数(ML2/A)が1.05〜1.40であり、また、形状係数(PM2/A)が1.05〜1.30であり、また、フロー軟化点(Tf1/2)が100〜130℃である。
トナー母粒子の形状係数(ML2/A)、形状係数(PM2/A)は、分散剤とともに水に分散したトナー母粒子を、光学顕微鏡にて200倍に拡大した3μm以上のトナー像を500個無作為にサンプリングし、得られた画像情報をインターフェースを介して、ニコレ社製画像解析装置(Luzex AP)に導入して解析して、実粒子の最長長さ、実粒子の投影画像の周囲長、実粒子の投影面積をそれぞれ求め、下式により算出して得られる値としてそれぞれ定義される。
ML2/A=(π/4)(実粒子の最長長さ)2 /(実粒子の投影面積)
PM2/A=(実粒子の投影画像の周囲長)2 /(4π・実粒子の投影面積)
形状係数(ML2/A)はトナー母粒子の球形の度合いを示し、また、形状係数(PM2/A)はトナー母粒子の表面の凹凸の程度を示している。トナー母粒子の形状係数(ML2/A)が1.40を超えると共に形状係数(PM2/A)が1.30を超えると、球形から不定形に近づき、混合処理槽内での流動性が悪く、攪拌羽根の周速を低下させても収率が低下し、また、正帯電トナー量が増え、帯電量分布が拡がり、筋発生やトナーとして使用した際にカブリが増大するという問題がある。
また、トナー母粒子の形状係数(ML2/A)が1.05より小さいと共に形状係数(PM2/A)が1.05より小さいと、球形形状が真球に近づき、トナー母粒子への外添剤粒子の均一付着が困難であり、そのため攪拌羽根の周速を上げざるを得ず、羽根先端や槽壁への溶着が発生し、収率が低下し、また、遊離外添剤量や正帯電トナー量も増え、帯電量分布が拡がる傾向があり、カブリや筋が発生しやすくなる傾向がある。
球形状樹脂粒子はその形状係数(ML2/A)が1.05〜1.40、好ましくは1.05〜1.30であり、かつ、形状係数(PM2/A)が1.05〜1.30、好ましくは1.05〜1.20である。また、形状係数(ML2/A)の値としては、形状係数(PM2/A)の値より大とするとよい。
本発明で製造されるトナーは、トナー母粒子に外添剤粒子が付着されて負帯電性トナーとされるものであるが、そのトナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含み、必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を含有する。結着樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、アクリレート系樹脂あるいはメタアクリレート系樹脂(以下、(メタ)アクリレート系樹脂という)、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの樹脂の構成成分を含む共重合体などが用いられる。
このような結着樹脂には、樹脂自体として正帯電性または弱負帯電性に帯電するものがあり、例えばポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂が例示される。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば水素添加スチレン樹脂、スチレン−イソブチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン架橋ポリマー、スチレン−ブタジエン−塩素化パラフィン共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
また、スチレン−(メタ)アクリレート系樹脂共重合体としては、例えばアクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)、スチレン−ジエチルアミノ−エチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−ブチルアリレート−N−(エトキシメチル)アクリルアミド共重合体、スチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン−ジメチルアミノエチルメタアクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、スチレン−n−ブチルアリレート−エチルグリコールメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−アクリル酸共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブチルアクリレート−イソブチルマレイン酸ハーフエステル−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。これらの結着樹脂には、通常、負帯電制御剤が添加され、適切な負帯電量を有するトナー母粒子が作成される。
また、結着樹脂自体として負帯電性に帯電する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基、フェニル基、チオフェニル基、スルホン酸基などの置換基を有している樹脂が例示される。これらの置換基は、金属塩の形態であることが好ましい。金属塩としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、クロム、鉄、マンガン、コバルト等との金属塩であることが好ましい。あるいは、これらの置換基はアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン等の有機塩基との塩の形態でもよい。負帯電性樹脂としては、ポリエステル樹脂が最も好ましく用いられる。
ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸またはその誘導体との重縮合によって得られ、側鎖にカルボキシル基を有する。多価アルコールとしては、2価アルコール、3価アルコールあるいは4価以上のアルコールが用いられる。2価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。3価アルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。中でも、ネオペンチルグリコール、トチメチロールプロパン、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、およびビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が好ましく用いられ、また、これらの多価アルコールは、単独または混合して用いられる。
多価カルボン酸としては2価カルボン酸、3価以上のカルボン酸、およびそれらの誘導体が挙げられる。2価カルボン酸としてはマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。2価カルボン酸の誘導体としてはこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物が用いられる。低級アルキルエステルとしては炭素数1〜12のアルキルエステル、好ましくはメチルエステル、エチルエステルが好ましく用いられる。中でも、芳香族環を有する2価カルボン酸であるフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、それらの低級アルキルエステル、またはそれらの無水物が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸としては1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサトリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられ、また、その低級アルキルエステルまたは酸無水物等が挙げられる。
ポリエステル樹脂の製造方法には特に制限はなく、多価カルボン酸と多価アルコールとを、当業者が通常用いる方法により重縮合させることにより製造される。重縮合に際し、多価カルボン酸と多価アルコールとの反応量は、カルボキシル基と水酸基のモル比(OH/COOH)が0.8〜1.4の間であることが好ましい。また、得られるポリエステル樹脂の酸価を1〜100mgKOH/gになるように調整することが好ましい。より好ましくは1〜30である。酸価が1mgKOH/gより小さいと電荷制御剤、剥離剤、着色剤等の内添剤の結着樹脂に対する分散性が低下する。酸価が100mgKOH/gを超えると、トナーの耐湿性が低下する。
特に高いレベルの耐オフセット性、および透明性(定着画像の平滑性)を得たい場合には、ポリエステル樹脂としてウレタン変性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ウレタン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂とイソシアネートとの反応により得られ、ポリエステル樹脂の水酸基1モル当量あたり、イソシアネートが0.3〜0.99モル当量、好ましくは0.5〜0.95モル当量の混合比で反応させるとよい。イソシアネートのモル比が0.3未満であると耐オフセット性が低下するおそれがある。0.99より大きくなると粘度上昇が著しく攪拌が困難になる場合がある。イソシアネートとしては、特に制限はないが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が好ましく用いられる。
着色剤としては、以下に示すような、有機顔料、無機顔料、および染料が使用できる。有機および無機顔料のうち、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などが用いられる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどが用いられる。
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどが用いられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが用いられる。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが用いられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどが用いられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが用いられる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが用いられる。
また、染料としては、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料などが用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどが例示される。
本発明が、透光性カラートナーである場合、着色剤としては、以下に示す種々の顔料、染料が用いられる。
黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などが用いられる。
赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などが用いられる。
青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などが用いられる。
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部使用することが望ましい。20質量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1質量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
離型剤としては、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはそのエステル、長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド等が使用される。上記離型剤のうち、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックスおよび金属石鹸が好ましく用いられる。
パラフィン系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(日本石油(株)製あるいは日本精蝋(株)製)、マイクロワックス(日本石油(株)製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋(株)製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋(株)製)、PE−130(ヘキスト製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学(株)製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust3715 (ヘキスト製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、およびビスコールTS−200(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスが例示される。
脂肪酸金属塩(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等が好ましく用いられる。
これらの離型剤は、単独であるいは組合せて使用することができる。離型剤としては、低軟化点(融点)の化合物が好ましく、軟化点が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものが好ましく使用される。なお、軟化点はセイコーインスツルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値で表される。
また、分散剤として、金属石鹸、ポリエチレングリコール等を添加してもよい。
また、帯電制御剤は、トナー母粒子の帯電性を制御するために、必要に応じて用いられる。結着樹脂自体の負帯電性の度合いが低い場合、あるいは結着樹脂自体が正に帯電している場合には、負帯電制御剤を用いてトナー母粒子全体が所望のレベルの負帯電性を有するようにする。
負帯電制御剤としては、サリチル酸誘導体の金属塩あるいは金属錯体、ベンジル酸誘導体の金属塩、フェニルボレイト4級アンモニウム塩などが挙げられる。サリチル酸誘導体あるいはベンジル酸誘導体の金属塩としては、これらの亜鉛塩、ニッケル塩、銅塩、クロム塩などが好ましく用いられる。市販の負帯電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ製)、クロモーゲンシュバルツETOO(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましく用いられる。これらの負帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。負帯電制御剤は、好ましくは、トナー母粒子の帯電量が−5〜−60μC/gとなるように結着樹脂に配合される。従って、用いる結着樹脂の種類により、結着樹脂に対する添加量が決定されるが、一般的には、結着樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲で配合される。
正帯電性制御剤は、トナー母粒子の負帯電量の調整のため、必要に応じて負帯電性樹脂に内添される。正帯電制御剤としては、市販の正帯電制御剤が用いられる。例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3:Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I.NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト製)が挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましく用いられる。上記の他に、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料なども正帯電制御剤として用いられる。これらの正帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
磁性剤として、例えば、Fe、Co、Ni等の金属粉、またはこれらとCr、Mn、Zn等の金属合金粉、Fe3 O4 、Fe2 O3 、Cr2 O3 、各種フェライト等の複合金属酸化物、マンガンと酸を含む合金等の熱処理によって強磁性を示す合金等を添加してもよく、これらは、予めカップリング剤等で処理したものを用いてもよい。
トナー母粒子としては、粉砕法、重合法および溶解懸濁法により得られるトナー母粒子のいずれでもよい。粉砕法トナーとしては、(1) 結着樹脂、着色剤、および離型剤等の添加剤を所定量、例えば、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))などの混合機に投入し、均一に混合する。(2) 次いで、得られた混合物を二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)に投入して均一に溶融混練する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。(3) 得られた溶融混練物を、粉砕手段を用いて微粉砕し、所望の平均粒子径のトナー母粒子を得る。粉砕は、例えば、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))あるいはIDS−2(日本ニューマチック工業(株))を使用するジェットエアーによる衝突粉砕の他に機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等により行われるとよい。(4) 微粉砕後、風力又はローター回転を用いて、得られたトナー母粒子の粒度を調整する。例えば、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))又はDSX−2(日本ニューマチック工業(株))又はエルボージェット(日鉄鉱業(株))等を使用するとシャープな粒径分布となる。(5) 粉砕法トナーの球形化処理は、粉砕工程で、比較的丸い球状で粉砕可能な装置、例えば機械式粉砕機として知られるターボミル(川崎重工業製)を使用するか、また、粒度調整したトナーを熱風球形化装置(日本ニューマチック工業製)により処理し、その形状係数(ML2/A)、形状係数(PM2/A)を上述した範囲内に調整する。
次に、重合法トナーは、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等により得られる。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色顔料、離型剤、必要により更に、染料、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤(水溶性高分子、難水溶性無機物質)を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒、重合させ、所望の粒子サイズを有する着色トナー母粒子を形成するものである。
また、乳化重合法においては、単量体と離型剤、必要により更に重合開始剤、乳化剤(界面活性剤)などを水中に分散させて重合を行い、次いで凝集過程で着色剤、荷電制御剤と凝集剤(電解質)等を添加することによって所望の粒子サイズを有する着色トナー母粒子を形成することができる。
重合性単量体成分としては、公知のビニル系モノマーが使用可能であり、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、無水マレイン酸、無水フタル酸、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルナフタレン等が挙げられる。なお、フッ素含有モノマーとしては例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロピレンなどはフッ素原子が負荷電制御に有効であるので使用が可能である。
乳化剤(界面活性剤)としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル等がある。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等がある。
凝集剤(電解質)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄等が挙げられる。
また、溶解懸濁法トナーとしては、結着樹脂と着色剤、離型剤等の内添剤を有機溶媒に溶解した後、水性溶媒中に分散剤・乳化剤と共に分散させ、造粒し、分離・乾燥することによりトナー母粒子を作製するとよい。
離型剤の含有量としては、粉砕トナーにおいては粉砕性の観点から結着樹脂100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部であり、また、重合トナーにおいては、5〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。粉砕トナーにおいては、結着樹脂自体を低溶融性のものとしてもよく、例えば本出願人が先に出願した特願2003−293707、特願2003−293708、特願2003−293709に記載の結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂が例示される。
球形度の調節法としては、乳化重合法においては2次粒子の凝集過程で温度と時間を制御することで適宜調整することができる。また、懸濁重合法では真球状のトナー母粒子が得られるが、トナー母粒子のTg温度以上で加熱変形させることで球形度を適宜調整することができる。また、溶解懸濁法ではトナー母粒子のTg温度以上で加熱変形させることで球形度を適宜調整することができる。
結着樹脂の質量平均分子量は2,000〜30,000、好ましくは4,000〜25,000、更に好ましくは6,000〜20,000である。分子量が2,000よりも小さいとフロー軟化点(Tf1/2)が低くなりすぎ、耐久性が低下し、また、粉砕法トナーにあっては混練時の粘度が低くなり、着色剤の分散が十分に行うことができなくなる虞れがあり、得られたトナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。分子量が30,000より大きいと、フロー軟化点(Tf1/2)が高くなりすぎ、低温定着可能なトナーとはできず、また、粉砕法トナーにあっては粘度が高くなり過ぎて着色剤の分散を十分に行うことができず、トナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。また、粉砕性が低下する虞がある。なお、上記範囲内の分子量を有する樹脂を複数混合して結着樹脂としてもよい。また、結着樹脂の分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
本発明のトナー母粒子は、画像形成に際して低温で熱圧定着するに適したトナーとするために、トナー母粒子のフロー軟化点(Tf1/2)は100〜130℃、好ましくは100〜120℃とされる。また、トナー母粒子のガラス転移温度(Tg)は50〜100℃、好ましくは60〜90℃である。なお、外添剤粒子を付着して得られるトナーにおけるフロー軟化点(Tf1/2)は100〜130℃、好ましくは100〜120℃のものとされ、定着工程における熱圧条件(140〜200℃、線圧0.04〜0.1kgf/mm)において定着可能な、所謂「低温定着可能なトナー」とするものである。
フロー軟化点(Tf1/2)は、結着樹脂1.0gをペレット状に加圧成形してサンプルとし、(株)島津製作所製「フローテスターCFT−500D」を用いて、下記条件にて測定する。昇温速度 5℃/分;シリンダー圧力2.0MPa;ダイ穴径1.0mm;ダイ穴長1.0mm;Tm算出法1/2法。さらに、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、結着樹脂10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。測定温度0〜200℃;昇温速度10℃/分:2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
また、トナー母粒子の体積平均粒子径は、粉砕法トナー、重合法トナー共に9μm以下、好ましくは3.0μm〜8μmである。9μmよりも大きなトナー粒子では、1200dpi以上の高解像度で潜像を形成しても、その解像度の再現性が小粒子径のトナーに比べて低下し、また3.0μm以下になると、トナーによる隠蔽性が低下するとともに、流動性を高めるために外添剤の使用量が増大し、その結果、定着性能が低下する傾向があるので好ましくない。なお、本発明における上述したトナー母粒子やトナー粒子の平均粒径は、粒子像分析装置(シスメックス製 FPIA2100)で測定した値である。
また、外添剤粒子を付着したトナー粒子の平均帯電量は−5〜−30μC/gであることが好ましい。帯電量がこの範囲より小さいと現像器からのトナー漏れが激しくなり、また、帯電量がこの範囲より大きいと、十分な画像濃度を得るためには過剰な現像バイアスを付与することが必要となる等の問題が生じる。帯電量は以下のように測定される。気温25℃、45%RHの環境下、LP−9000C(セイコーエプソン(株)製)の現像器にトナーを入れ、現像器を空回しした後、現像ローラの表面に0.3kg/cm2 の圧力の窒素ガスを吹き付け、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーを用いて、トナー1個毎の帯電量(Q)および質量mを測定して、トナーの帯電量(Q/m)を測定する。
次に、本発明におけるトナー母粒子と外添剤粒子との混合処理工程について説明する。トナー母粒子と外添剤粒子との混合処理に際しては、図1、図2に示す球形混合処理槽が使用される。図1は中央断面図、図2は混合羽根の一例の平面図である。図中、1は処理槽、2は水平円板状の槽底、3は駆動軸、4はドーナツ状円板、5は攪拌羽根、6はエアシール孔、7は投入用部材、8はフランジ、9はジャケット、11は攪拌羽根5が取り付けられた円板である。
図1に示すように、球形混合処理槽1は、水平円板状の槽底2と、槽底2の中心を垂直に貫く駆動軸3に断面円錐形状の円板11が取付けられ、また、円板11の円周端部上には、タービン羽根5が複数枚それぞれ垂直に取付けられている。なお、図2ではエアシール孔6の図示は省略する。攪拌羽根5としては、タービン羽根とすると羽根による剪断作用が少なく、分散性を小さくした状態で混合を進めることができ、外添剤粒子を二次粒子状態でトナー母粒子に付着させることができる。また、攪拌羽根5にはその上部に補強を目的とするドーナツ状円板4が取付けられている。
容器1内部には投入用部材7が配置され、投入用部材7から被処理物は槽内に投入される。投入された被処理物は、攪拌羽根5による遠心力により処理槽1内壁に沿って上向きに放出される。攪拌羽根5によって放出される被処理物は投入用部材7の外壁面で受け止められ、落下する。落下した被処理物はドーナツ状円板4の中心孔と駆動軸3との間から攪拌羽根5に再供給され、以上を繰り返すことで分散混合が進む。
また、処理槽1は水平状の槽底2を有する球形とされ、上下に2分割されるように中央部にフランジ8が備えられ、また、球形部全体はジャケット9が設けられて2重構造とされ、熱媒体が流されて被処理物を加熱または冷却可能とされる。処理槽1の上部には、上述したように、被処理物の投入孔を兼ねた投入用部材7が、また、下部には外添処理済みの被処理物の排出口(図示せず)が適宜設けられている。
駆動軸3には上述のごとく槽底側近傍に攪拌羽根5が外部動力により回転可能に取り付けられ、その先端は、図1、図2に示すようにドーナツ状円板4の外周と槽壁との間に位置するように配置されている。また、攪拌羽根5の下側のエッジは、図1に示すように処理槽1の球面状の内壁に沿った弧状とされ、回転することにより被処理物を矢印のごとく処理槽内面の曲面に沿って処理槽頂部に向けて放出可能な形状とされている。シールエア孔6は、高温となる駆動軸部分に被処理物が溶着することを防止するためのエアー供給孔であり、また、供給されたエアーは投入用部材7から排出される。
被処理物の均一処理性、供給されたエアーの排出性の観点から、投入用部材7の容器内部での長さは、容器内部のドーナツ状円板4からの高さの1/20以上、好ましくは1/3以上の長さとするとよいが、上限としては被処理物を静置した時の粉面に接触しない程度の長さとするとよい。また、投入用部材7は円筒形状以外でもシールエアーが抜ける構造であればよく、例えばスリットを有した構造でもよい。
また、水平状の槽底2の直径と処理槽1の直径との比は0.25〜0.80であり、ドーナツ状円板4の外径と水平状の槽底2の直径との比は0.50〜1.20であり、攪拌羽根5の直径と処理槽1の直径との比は0.50〜0.90とするとよい。また、ドーナツ状円板4の内径と外径との比は0.5〜0.95、好ましくは0.7〜0.8である。
また、球状混合処理槽への被処理物の仕込み量は、処理槽の容積に対する比で0.1〜0.9、好ましくは0.3〜0.5とするとよい。
球形混合処理槽は、図3に示すようなヘンシェルミキサーのごとく、被処理物の急激な立ち上がりをさせるのではなく、被処理物であるトナー母粒子と外添剤粒子とを曲面状の槽壁に沿って高速で流動させることができ、また、被処理物が流動する壁面距離が長く、トナー母粒子が転がりやすくなり、短時間での均一な外添処理を可能とする。さらに、混合処理槽の天井まで被処理物を移動させた後、槽底の攪拌羽根に供給され再処理されるので、重力に依存していた被処理物の上下動が、ヘンシェルミキサーのごとく円筒形状の混合処理槽に比して、よりダイナミックとなり、また、上羽根を設ける必要がないという利点を有する。また、外添剤粒子の凝集が強い場合には、槽内に凸部を設けて乱流を発生させて解砕させることができる。
本発明のトナーの製造方法は、トナー母粒子と複数の外添剤粒子とを球形混合処理槽を使用して混合処理する際に、複数の外添剤粒子を別々に、また、同一種のものであっても複数回に分けて混合処理する所謂「多段階混合処理」とする。本発明者は、球形混合処理槽を使用して多段処理するに際しての問題を検討した結果、トナー母粒子との仕事関数差が大きい外添剤粒子はトナー母粒子にも比較的容易に分散付着すること、また、トナー母粒子との仕事関数差が小さい外添剤粒子は付着しにくいものと考えられることから、2段目以降での外添処理において、第1段目でのトナー母粒子との仕事関数差の小さい外添剤粒子の外添処理と同様の周速度でトナー母粒子との仕事関数差の大きい外添剤粒子を使用するとトナー母粒子中への埋め込みや、余分な発熱が発生し、外添剤のムラや収率の低下、また、トナーとしての耐久性に劣るものとなること、また、2段目以降において、第1段目でのトナー母粒子との仕事関数差の大きな外添剤粒子の外添処理と同様の周速度でトナー母粒子との仕事関数差の小さい外添剤粒子を使用すると所定時間内では十分にトナー母粒子に付着されず、処理時間を長くしてもトナー収率が低下することを見いだした。
球形混合処理槽を使用してトナーを製造するには、混合処理時間が短いと混合処理が不充分となり、また、混合処理時間が長いと被処理物が槽壁や攪拌羽根等への溶着が発生し、収率が低下するので、各段階における処理時間としては、1〜5分の範囲内のものとする必要がある。なお、温度上昇を避けるためには各段階における処理を数回に分けて混合されてもよい。また、同様の観点から、球形混合処理槽における攪拌羽根の先端の周速度(π×羽根の最外径×回転数/時間)は、10m/s〜100m/sの範囲とされる。
本発明においては、まず、第1段階での外添処理として、1種または2種の外添剤粒子をトナー母粒子を装填した球形混合分散槽中に添加し、適宜の攪拌条件で混合分散させた後、後段において、第1段目で投入された外添剤粒子よりトナー母粒子との仕事関数差の小さい仕事関数を有する外添剤粒子を外添処理する場合には、トナー母粒子への充分な付着性を確保するために第1段目の周速度より高い周速度として混合処理する。また、後段において、第1段目に投入された外添剤粒子よりトナー母粒子との仕事関数差の大きい仕事関数差を有する外添剤粒子を外添処理する場合には、過剰な埋め込みを避けるために第1段目の周速度より低い周速度で混合処理するものである。
外添剤粒子のトナー母粒子への付着は、その形状や電気抵抗等の物性にもよるが、物理的な凹凸や水分、また静電気的により付着するものと考えられており、その中でも静電気的な力によるところが大きい。これは、所謂「鏡像力」であり、この力は接触による粒子同士の帯電量で決定され、仕事関数により示される。仕事関数(Φ)はその物質から電子を取り出すために必要なエネルギーとして知られ、仕事関数が小さいほど電子を放出しやすく、大きい程電子を出しにくく、受取りやすい。そのため、トナー母粒子の仕事関数(Φ1 )と外添剤粒子の仕事関数(Φ2 )の両者の差の絶対値(|Φ1 −Φ2 |)が大きい程、その静電気的付着性に優れるので、混合処理槽における周速度が低くてもトナー母粒子に対して均一に付着させることができる。
仕事関数(Φ)は表面分析装置(理研計器製 AC−2、低エネルギー電子計数方式)を使用して測定される。本発明にあっては、該装置において、重水素ランプを使用し、照射光量500nWに設定し、分光器により単色光を選択し、照射面積を4mm角とし、エネルギー走査範囲3.4〜6.2eV、測定時間10sec/1個所で試料に照射する。そして、試料表面から放出される光電子を検出して求めるものであり、繰り返し精度(標準偏差)0.02eVで測定されるものである。なお、データ再現性を確保するための測定環境としては、使用温湿度25℃、55%RHの条件下で、24時間放置品を測定試料とする。
また、トナー母粒子や外添粒子はトナー専用測定セルを用いて測定され、直径13mm、高さ5mmのステンレス製円盤の中央に直径10mmで深さ1mmの試料収容用凹部内に試料を秤量スプーンを使用して突き固めないで入れた後、ナイフエッジを使用して表面を平らにした状態で測定に供する。試料を充填した測定セルを試料台の規定位置上に固定した後に、照射光量500nWに設定し、照射面積4mm角とし、エネルギー走査範囲4.2〜6.2eVの条件で測定されるものである。
トナー母粒子の仕事関数としては、一般的には5.3〜5.8eVの範囲にあり、例えば後述するシアントナー母粒子は5.55eV、疎水性シリカ粒子の仕事関数は5.10、疎水性酸化チタン粒子の仕事関数は5.64と測定される。すなわち、シアントナー母粒子とシリカ粒子との仕事関数差は0.45eVであるのに対して、トナー母粒子と酸化チタン粒子との仕事関数差は0.09eVであり、シリカ粒子はトナー母粒子に静電気的に付着性に優れるが酸化チタン粒子は付着しにくい。そのため、第1段階でトナー母粒子に対してシリカ粒子を外添処理した後、後段において酸化チタン粒子を外添処理する場合には、第1段階でのシリカ粒子の外添処理時における球形混合処理槽における攪拌速度を後段においては速くして内壁での転動速度をあげ、トナー母粒子と酸化チタン粒子との接触回数を多くすることにより強固に付着させる必要がある。また、第1段目で複数の外添剤粒子を混合して同時に使用する場合には、後段において外添される外添剤粒子としては、第1段目での複数の外添剤粒子とトナー母粒子とのいずれの仕事関数差よりも大きいか、または小さい仕事関数差を有する外添剤粒子とするとよく、また、後段における攪拌速度としては上記の攪拌条件内において適宜設定するとよい。
本発明における外添剤粒子について説明する。まず、疎水化処理された負帯電性または正帯電性シリカ微粒子が例示される。
負帯電性シリカ微粒子としては、平均粒子径が4〜120nm、好ましくは5〜70nm、さらに好ましくは平均粒子径が6〜60nmのものが用いられる。負帯電性シリカ微粒子の平均粒子径が小さい程、得られるトナーの流動性が高くなるが4nmより小さいとトナー母粒子に埋没してしまう虞がある。また、120nmを超えると流動性が極端に悪くなる虞がある。なお、本明細書において、負帯電性シリカ、正帯電性シリカ、トナー母粒子、トナー粒子などの微粒子について平均粒子径というときは、特に断らない限り、体積平均粒子径を意味する。
負帯電性シリカ微粒子としては、粒子径が均一な負帯電性シリカ微粒子を単独で用いてもよいが、平均粒子径が異なる2以上の負帯電性シリカ微粒子を併用することが好ましい。一般には、平均粒子径の小さい負帯電性シリカ微粒子(小粒子径のシリカ)が用いられているが、これと平均粒子径の大きい負帯電性シリカ微粒子(大粒子径のシリカ)とを併用することにより、小粒子径のシリカのみを用いる場合に比べて、帯電量の絶対値を大きくすることができると共に大粒子径のシリカが抵抗となり、小粒子径のシリカがトナー母粒子内に埋没されることが妨げられるため、長期の帯電の安定に優れるようになる。さらに、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となる。好ましくは、小粒子径のシリカとして平均粒子径が5〜20nm、好ましくは6〜15nmの負帯電性シリカ微粒子と大粒子径のシリカとして平均粒子径が20〜70nm、好ましくは20〜60nmの負帯電性シリカ微粒子とを併用することが好ましい。また、大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの平均粒子径の差は、10nm以上あることが好ましく、20nm以上あることがさらに好ましい。
大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの添加比が質量比で1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1であることが、トナーに流動性を付与し、かつ帯電の長期安定性を得る上で好ましい。大粒子径シリカと小粒子径シリカとを用いる場合には、トナー母粒子に同時に混合して添加してもよく、いずれかを先に添加し、次いで、他方を添加してもよい。
負帯電性シリカ微粒子の添加量は、トナー母粒子の粒子径分布あるいは流動性などにより、または外添剤の粒子径分布、所望の帯電量などにより変動し得る。例えば、上記小粒子径のシリカであれば、トナー母粒子100質量部に対して0.5〜2.0質量部、好ましくは0.7〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカの場合、0.2〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカと小粒子径シリカとを併用する場合、上記混合比率を考慮しつつ、トナー母粒子100質量部に対して合計量で0.5〜3.0質量部、好ましくは0.7〜2.5質量部添加される。
負帯電性シリカ微粒子は疎水化処理されていることが好ましい。負帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの流動性および帯電性がさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化は、アミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物;あるいはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルを用いて、例えば、湿式法、乾式法など当業者が通常使用する方法により行われる。疎水性負帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のRX200、同RX50、キャボット(株)製のTG811F、同TG810G、同TG308Fなどが例示される。
正帯電性シリカ微粒子としては、流動性などを考慮して、体積平均粒子径が10〜50nm、好ましくは15〜40nmである。正帯電性シリカ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加される。負帯電性樹脂を結着樹脂として使用し、負帯電性シリカ微粒子を帯電制御剤として使用しない場合、正帯電性シリカ微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。
正帯電性シリカ微粒子は、疎水化処理されていることが好ましい。正帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために好ましい。正帯電性シリカ微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法により行われる。疎水性正帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のNA50H、キャボット(株)製のTG820Fなどが例示される。
また、本発明における外添剤粒子としては、疎水処理されたシリカ微粒子の他に、比較的電気抵抗率の小さい酸化チタンの微粒子が添加される。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ルチル−アナターゼ型などの結晶形を取り得る。いずれの結晶系の酸化チタンを用いてもよいが、ルチル−アナターゼ型の酸化チタンが、電荷の調整をしやすい点、印字枚数が増えても、酸化チタン粒子がトナー母粒子内に埋没し難いなどの点で好ましく用いられる。酸化チタン微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径あるいは長軸の大きさが10〜200nmの大きさであることが好ましい。ルチル−アナターゼ型の酸化チタンの場合、長軸が10〜200nm程度の酸化チタン微粒子であることが好ましい。
酸化チタン微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。なお、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子を使用する場合には、質量比で1:3〜3:1の範囲で添加されることが、トナーの電気抵抗の極端な低下を引き起こすことなく電荷の調整が行える点で好ましい。
酸化チタンの微粒子の表面が疎水性であることが、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために好ましい。酸化チタン微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法で行われる。疎水性酸化チタン微粒子としては、チタン工業(株)製のSTT−30Sなどが例示される。
酸化チタン微粒子以外の無機微粒子も、帯電性の制御、流動性の向上を目的として外添され得る。例えば、無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化インジウム等の金属酸化物の微粒子、窒化珪素等窒化物の微粒子、炭化珪素等の炭化物の微粒子、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩の微粒子、並びにこれらの複合物等の無機微粒子が挙げられる。電気抵抗率が109 Ωcm以下の、比較的電気抵抗率の小さい金属酸化物の微粒子が好ましく用いられる。添加する無機微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径が10〜300nmの大きさであることが好ましい。これらの無機微粒子は、帯電特性の安定化を目的として、その表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理は、上記負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子の疎水化方法のいずれかと同じ方法が採用される。
また、本発明のトナーの製造方法においては、トナー母粒子と上述した無機外添剤粒子とが混合処理された後、その処理物と外添剤粒子として長鎖脂肪酸またはその塩とが混合処理されてもよい。長鎖脂肪酸としては、好ましくは炭素数10〜30、より好ましくは炭素数12〜28、さらに好ましくは炭素数12〜18の飽和、または不飽和脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸は分岐を有していてもよいが、直鎖飽和脂肪酸、例えばステアリン酸が好ましく用いられる。長鎖脂肪酸は、塩の形態で用いることが好ましく、金属塩(いわゆる金属石鹸)の形態であることがさらに好ましい。長鎖脂肪酸の金属塩としては特に制限はないが、例えばカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらの微粒子が好ましく用いられる。長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
粒子状の長鎖脂肪酸またはその塩、特に長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)粒子は、体積平均粒子径もしくは長軸の径が0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmである。平均粒子径または長軸の径がこの範囲を外れると、結着剤、滑剤、流動補助剤としての効果、あるいはトナー凝集防止効果が十分に発揮できない傾向にある。
長鎖脂肪酸またはその塩、特に金属石鹸は、耐熱性および潤滑性の観点から、融点が100〜160℃程度のものが好ましい。融点が100℃より低いとトナーの耐熱性が低下し、高温環境で保管した場合にトナーが凝集するおそれがある。160℃より高いと潤滑作用が低減するおそれがある。
長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部添加される。添加量が0.1質量部より少ないと、上記結着剤としての効果、凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などの効果を十分に発揮することができないおそれがある。また、添加量が1.0質量部より多いと流動性に劣り、帯電立ち上がり性が著しく悪化し、カブリなどのノイズが発生するおそれがある。
トナー母粒子に上述した種々の外添剤粒子を混合処理するに際しての混合順序について説明する。
(A) まず、多段処理に際して、トナー母粒子が正〜弱い負帯電性である場合、最初に添加される外添剤は、(1)負帯電性シリカ微粒子、(2)負帯電性シリカ微粒子および酸化チタン微粒子、あるいは(3)酸化チタン微粒子のいずれかであることが好ましい。以下、(1)〜(3)について説明する。
(1) 最初に負帯電性シリカ微粒子を単独で添加すると、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が正帯電性シリカ微粒子などに妨害されることがなく、負帯電性シリカ微粒子を強くトナー母粒子に付着させることができる。これによって、負帯電性シリカ微粒子の脱離が防止され、帯電性の変化が小さくなり、帯電性が長期的に安定化するという効果が得られる。なお、負帯電性シリカ微粒子として、小粒子径のシリカと大粒子径のシリカを併用することにより、帯電量の絶対値を大きくできること、長期の帯電安定性を得ることができること、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となるなどの点から好ましい。
負帯電性シリカ微粒子を最初に添加した場合、次に、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とが添加される。酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とを同時に加えてもよいが、酸化チタンを先に添加し、ついで、正帯電性シリカを添加する方がより好ましい。正帯電性シリカ微粒子は、正帯電しており、かつ電気抵抗値も高い。そこで、酸化チタン微粒子を添加しておき、次に正帯電性シリカ微粒子を添加することにより、正帯電性シリカ微粒子(所謂「マイクロキャリア」)を電荷調整剤として機能させることにより、帯電が早くなり、電荷が均一化される。
負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子の順で添加されたトナー母粒子に正帯電性シリカ微粒子を単独で加え、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を添加する4段処理、あるいは、上記正帯電性シリカ微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子とを同時に添加して最終段階とする3段処理がある。さらに、負帯電性シリカ微粒子に酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に添加する2段処理としてもよい。なかでも、正帯電性シリカ微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子とを同時に添加して3段処理することが、正帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子による表面電荷の調整を、電気抵抗を極端に低下させることなく行うことが最も効率よくできる点で好ましい。
最初に負帯電性シリカ微粒子を添加して、最後に少なくとも長鎖飽和脂肪酸またはその塩を添加するような多段処理としては、例えば、以下の(a)〜(f)の多段処理が例示される。
(a) 負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩
(b) 負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩)
(c) 負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩
(d) 負帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩) (e) 負帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩)
(f) 負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩 の各順である。
負帯電性トナー微粒子を最初に添加し、最後に長鎖脂肪酸またはその塩を添加する方法で得られるトナーは、負帯電性シリカ微粒子のトナー母粒子への強い付着などの効果に加えて、さらに長鎖脂肪酸またはその塩を添加することによる効果が発揮されるため、従来の1回で外添処理を行って得られたトナーに比べて、シリカ微粒子の遊離が制御され、均一な帯電性が長時間維持されるなどの優れた性質を有している。
(2) 最初に負帯電性シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を同時にトナー母粒子に添加してもよい。次いで長鎖脂肪酸またはその塩を添加することにより、無機外添剤粒子の遊離が抑制される。
このような多段処理としては、
(g) (負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩
(h) (負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩)
の各順である。
(3) 最初に酸化チタン微粒子を添加する場合には、次に負帯電性シリカ微粒子を添加することが好ましい。次に、必要に応じて、正帯電性シリカ微粒子を、長鎖脂肪酸またはその塩より前に、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩と同時に添加することにより、帯電量の急激な低下を防止しながら、帯電量を調整できる。この効果に加えて、上記長鎖脂肪酸またはその塩による効果が発揮される。
このような多段処理としては、
(i) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩
(j) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩)
(k) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩
の各順である。
(B) トナー母粒子が強い負帯電性である場合には、トナー母粒子は−5〜−60μC/gの帯電量を有することが好ましい。この負帯電性トナー母粒子の多段処理には、一般に負帯電性シリカ微粒子は用いないが、負帯電の程度が弱い場合、負帯電性シリカ微粒子を電荷調整のため添加する場合がある。外添剤は、一般的に得られるトナーの帯電量が−5〜−30μC/gとなるように添加される。
負帯電性トナー母粒子を用いる場合、(1) 最初に正帯電シリカ微粒子を添加する、(2)最初に正帯電性シリカ微粒子と他の外添剤とを添加する、(3)最初に酸化チタン微粒子を添加するなどの多段処理が挙げられる。
(1) 最初に正帯電シリカ微粒子を単独で加えるのが最も好ましい。この工程によれば、負帯電性トナー母粒子と正帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が妨げられることがなく、正帯電性シリカ微粒子が強くトナー母粒子に付着される。従って、正帯電性シリカ微粒子の脱離が防止され、帯電性の変化が小さくなり、帯電性が長期的に安定化するという効果が得られる。
正帯電性シリカ微粒子の添加後に、酸化チタン微粒子を単独で、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と共に添加する。予め、電気抵抗値の高い正帯電性のシリカ微粒子を外添しておくことにより、低電気抵抗性の酸化チタンが外添されたときの表面電荷が大きく低下することがなく(すなわち、正帯電性シリカ微粒子が電荷調整剤として機能し)、トナーの電気抵抗率の低下が抑制され、電荷が均一化される。これらの効果に加えて、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加する効果が発揮される。
このような多段処理としては、
(l) 正帯電性シリカ微粒子−長鎖脂肪酸またはその塩
(m) 正帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+長鎖脂肪酸またはその塩)
の各順が例示される。
この多段処理には、外添剤として負帯電性シリカ微粒子は含まれていない。負帯電性シリカ微粒子が外添剤として含まれないトナーは、良好な帯電特性、流動性を有している。また、このトナーを定着する際の温度を低くできる(定着器の温度を低く設定できる)とともに、定着後の画像の定着強度も良好となるという利点を有している。
(2) 最初に正帯電性シリカ微粒子と他の外添剤とを添加して得られるトナーにおいて、他の外添剤が負帯電性シリカ微粒子である場合、トナー母粒子が負に帯電していることを考慮して、最初に正帯電性シリカ微粒子と同時に添加することが帯電制御の点から好ましい。正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカを最初に添加する多段処理の例としては、
(n) (正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子)−酸化チタン−長鎖脂肪酸またはその塩)
(o) (正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン)−長鎖脂肪酸またはその塩
(p) (正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子)−長鎖脂肪酸またはその塩 の各順が例示される。なお、(p)において、酸化チタン微粒子が添加されていないが、帯電量が適切な範囲であれば、特に加えなくてもよいことによる。
(3) 最初に酸化チタン微粒子を添加してもよく、例えば以下の多段処理
(q) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖脂肪酸またはその塩
(r) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖脂肪酸またはその塩)
の各順が例示される。
上記(a)〜(r)の多段処理の順序は、いずれも例示であって、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、電荷調整、流動性改善等を目的として上記した酸化チタン以外の無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子の添加は、長鎖脂肪酸またはその塩の添加前か同時であれば、どの段階で加えてもよい。
本発明で製造されるトナーは、特開2002−202622に詳細に説明されている1成分系のトナーを用いる画像形成装置、また、2成分系のトナーを用いる画像形成装置のいずれにも適用でき、また、接触現像方式の画像形成装置や非接触式方式の画像形成装置のいずれにも適用できる。
1は処理槽、2は水平円板状の槽底、3は駆動軸、4はドーナツ状円板、5は攪拌羽根、6はエアシール孔、7はシールエアーを逃す筒状部材、8はフランジ、9はジャケット、11は攪拌羽根5が取り付けられた円板