JP2006227211A - トナー製造方法、トナー及びトナー製造装置 - Google Patents

トナー製造方法、トナー及びトナー製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 トナーバインダとして高粘度樹脂や高融点樹脂を使用する場合においても、効率良く且つ簡単な操作により低コストでトナー形状を不定形から球形まで任意の形状に制御することが可能なトナー製造方法、トナー及びトナー製造装置を提供する。
【解決手段】 トナー製造方法は、少なくとも樹脂及び着色剤を有機溶剤に撹拌混合し、樹脂及び着色剤が溶解または/及び分散した油相を作製する工程と、前記油相に分散安定剤及び水を添加し、撹拌混合により油相をトナー粒子径よりも十分小さい液滴にした液滴分散液を作製する工程と、前記液滴分散液を加熱撹拌し有機溶剤を除去し、液滴が固形化された着色剤含有樹脂微粒子分散液とする工程と、前記着色剤含有樹脂微粒子分散液を略トナー粒子径に凝集させた凝集樹脂微粒子分散液を生成する工程と、前記凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスを吹き込む工程とを含む。
【選択図】 図2

Description

本発明は、電子写真法、静電記録、静電印刷等の技術分野において用いられるトナーの製造方法、その製造方法により製造されるトナー及びそのトナーの製造装置に関し、特に、トナーバインダとして高粘度樹脂や高融点樹脂を使用する場合においても、効率良く且つ簡単な操作により低コストでトナー形状を不定形から球形まで任意の形状に制御することが可能なトナー製造方法、トナー及びトナー製造装置に関するものである。
従来より、トナー製造方法の1つとして、乳化凝集法が知られている。かかる乳化凝集法は、溶液中で極めて小さな樹脂微粒子を凝集させながら所望サイズのトナー粒子を製造する方法(ビルトアップ製法)であり、トナーの粒子径をシャープにできる点で優れている。また、乳化凝集法は、界面張力を利用して凝集樹脂微粒子における樹脂粘度を制御することにより、不定形から球形まで連続的にトナー粒子の形状を制御可能な点においても優れている(特許文献1)。
ここに、トナーバインダとして使用される樹脂の粘度を制御する方法としては、熱を利用する方法と溶剤を使用する方法とが存在する。
特開平8−179553号公報
しかしながら、加熱による熱を利用して樹脂の粘度を制御する方法では、樹脂微粒子を凝集化してトナー粒子を球形化する際に、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で加熱する必要がある。従って、溶融粘度が高い樹脂を使用する場合には、非常に高い温度で加熱する必要があることとなり、かかる場合、水の沸点以上においては加圧設備等の特殊な設備が必要となる。これにより、トナーの製造コストが上昇してしまう。
また、溶剤を使用して樹脂の粘度を制御する方法では、希釈溶剤を加える必要があることから大きな反応釜が必要となり、これよりトナーの製造効率が低下してしまう。また、加える溶剤の希釈が不十分な場合には、樹脂微粒子相互に合一凝集してしまい、結局、トナー粒子の形状を制御できなくなってしまう。
本発明は前記従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、トナーバインダとして高粘度樹脂や高融点樹脂を使用する場合においても、効率良く且つ簡単な操作により低コストでトナー形状を不定形から球形まで任意の形状に制御することが可能なトナー製造方法、トナー及びトナー製造装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため請求項1に係るトナー製造方法は、連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液に、揮発性溶剤ガスを吹き込み、凝集樹脂微粒子の形状制御をする工程と、形状制御された凝集樹脂粒子から揮発性溶剤を除去する工程を含むことを特徴とする。
また、請求項2に係るトナー製造方法は、少なくとも樹脂及び着色剤を有機溶剤に撹拌混合し、樹脂及び着色剤が溶解または/及び分散した油相を作製する工程と、前記油相に分散安定剤及び水を添加し、撹拌混合により油相をトナー粒子径よりも十分小さい液滴にした液滴分散液を作製する工程と、前記液滴分散液を加熱撹拌し有機溶剤を除去し、液滴が固形化された着色剤含有樹脂微粒子分散液とする工程と、前記着色剤含有樹脂微粒子分散液を略トナー粒子径に凝集させた凝集樹脂微粒子分散液を生成する工程と、前記凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスを吹き込む工程とを含むことを特徴とする。
ここに、前記トナー製造方法では、請求項3に記載されているように、前記揮発性溶剤は、水に一部またはすべて可溶であることが望ましく、また、請求項4に記載されているように、前記揮発性溶剤ガスは、前記凝集樹脂微粒子分散液に対して循環して吹き込まれることが望ましい。
また、請求項5に記載されているように、前記揮発性溶剤ガスは、微細な気泡状態で吹き込まれることが望ましく、また、請求項6に記載されているように、前記樹脂は樹脂末端に酸基を有し、塩基性化合物との反応によりイオン化し自己分散型樹脂となる樹脂であり、前記凝集樹脂微粒子の分散安定剤として水溶液が塩基性である化合物が添加されることが望ましい。
更に、請求項7に係るトナーは、連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液に、揮発性溶剤ガスを吹き込み、凝集樹脂微粒子の形状制御をするとともに、形状制御された凝集樹脂粒子から揮発性溶剤を除去することにより製造される点に特徴を有する。
また、請求項8に係るトナー製造装置は、連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液が生成される第1容器と、揮発性溶剤を収容するとともに揮発性溶剤ガスを生成する第2容器と、前記第1容器と第2容器とを連結する第1連結管と、前記第1連結管に配設され、前記第2容器内の揮発性溶剤ガスを前記第1容器内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込むポンプとを備えたことを特徴とする。
ここに、前記トナー製造装置においては、請求項9に記載されているように、前記第1容器と第2容器とを連結する第2連結管と、前記第2連結管に配設された循環装置とを備え、前記第1容器内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込まれた揮発性溶剤ガスは、前記循環装置及び第2連結管を介して第2容器に循環されることが望ましい。
本発明に係るトナー製造方法及びトナー製造装置によれば、トナーバインダとして高粘度樹脂や高融点樹脂を使用する場合においても、効率良く且つ簡単な操作により低コストでトナー形状を不定形から球形まで任意の形状に制御することが可能となり、かかるトナー製造方法及びトナー製造装置により製造されたトナーは、各種の用途に使用することができる。
以下、本発明に係るトナー製造方法及びトナーの実施形態について詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るトナー製造方法の概略につき説明する。かかるトナー製造方法は、基本的に、連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液に、揮発性溶剤ガスを吹き込み、凝集樹脂微粒子の形状制御をする工程と、形状制御された凝集樹脂粒子から揮発性溶剤を除去する工程を含む。
ここに、連続相は、水又は水溶液である。樹脂微粒子を凝集させるには、樹脂微粒子を分散安定させた状態で凝集剤を添加する。凝集剤の添加方法は、樹脂微粒子分散液(スラリー)を撹拌して分散しながらでも良いし、そうでなくても良い。均一な系を作製するためにはスラリーを撹拌しながら凝集剤を添加することが好ましい。また、凝集剤の添加量は種類によって様々であり、樹脂微粒子分散系を勘案して最適量を決定する。
凝集剤を添加し、撹拌するだけで各微粒子が所望するトナー粒子径まで凝集成長することもあるが、加熱することで凝集剤の使用量を少量に抑えることができる場合がある。また、この他に加熱操作は低分子量樹脂の粘度低下を発生させるため、凝集物の一部が融着状態になり、後の分散安定操作で再び微粒子に解体してしまうことを防ぐ効果もある。その際、加熱温度は樹脂のガラス転移点の10℃以上が好ましい。尚、凝集工程での系の撹拌は強すぎても弱すぎても良くない。撹拌条件が強すぎる場合、凝集体同士の衝突や、凝集体のせん断破壊が生じてしまい、弱すぎる場合、系全体が流動しないため凝集粒子径にバラツキが生じる。
また、樹脂微粒子が凝集して所望のトナー粒子径に成長した凝集体は分散安定剤で必要以上の凝集成長が起きないように制御する必要がある。分散安定剤の添加量は種類によって様々であり、樹脂微粒子分散系を勘案して最適量を決定する。添加方法は攪拌しながらでも良く、そうでなくても良い。ただ、速やかに凝集成長を止めるためには攪拌しながらの方が良い。分散安定操作は分散安定剤の添加のみでも良いし、その他の工程を有しても良い。例えば、攪拌速度や攪拌方法を変えたり、系に超音波を印加することなどである。
更に、凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤を吹き込むに際して、揮発性溶剤を揮発させる方法としては、室温(25℃)、常圧下で揮発性溶剤内部に空気を送り、気相部から取り出す方法が効果的である。また、沸点の高い揮発性溶剤を用いる場合や、多量の揮発ガスを発生させる操作として過熱することが効果的な場合もある。ただし、揮発ガスが凝集樹脂微粒子分散液に吹き込まれる前に液化しないよう温度制御する必要がある。また、樹脂と揮発性溶剤の親和性が高い場合、加熱と揮発性溶剤ガスの併用となるため樹脂粘度が比較的急速に低下し、球体以外の形状制御が困難になることがある。
また、凝集樹脂微粒子分散液に送られた揮発性溶剤ガスを水、または凝集樹脂微粒子に吸収させるためには、細かい気泡状態で長い時間分散液中に留まることが好ましい。揮発性溶剤ガスの微細化手段として、分散液に浸されたガス送配管の複数部分から揮発性溶剤ガスが出るように湾曲や穴開けを行ったり、ガス吐出口付近に多孔質素材を配置したり、超音波を印加するなどが挙げられる。
また、揮発性溶剤ガスの気泡を凝集樹脂微粒子分散液に長時間滞留させる手法として、撹拌翼や邪魔板(バッフル)の数、移動速度、形状、配置位置などを適切に調整することが挙げられる。揮発性溶剤ガスの送風手段はファンまたは、ポンプ、または加圧ボンベ、減圧ボンベなどを用いて、揮発性溶剤の容器内部に加圧、または減圧を生じさせて凝集樹脂微粒子分散液の容器に送り込む方法が挙げられる。更に、常温常圧で効率よく揮発性溶剤ガスを搬送させるために凝集樹脂微粒子分散液の容器から排出される揮発性溶剤ガスを再度揮発性溶剤の容器に送り込む循環型が良い。また、揮発性溶剤ガスの濃度調整のために空気流入コックを取り付けることも可能である。揮発性溶剤ガス以外は空気の他に、水に不溶かつトナーと反応しない窒素ガスのような不活性ガスを用いることもできる。
前記のように、凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスが吹き込まれてその分散液を通過すると、揮発性溶剤は、相溶性の高い凝集樹脂微粒子に取り込まれる。これにより、凝集樹脂微粒子の粘度が緩やかに低下し、凝集樹脂微粒子の形状が除除に球形になっていく。
また、揮発性溶剤として水への溶解性が高い溶剤を使用すると、その揮発性溶剤ガスは、直接凝集樹脂微粒子の粘度を低下させる他、水に溶解した揮発性溶剤も凝集樹脂微粒子に吸収されて間接的に凝集樹脂微粒子の粘度を低下させることから、凝集樹脂微粒子の形状を効率的に制御することができる。
更に、揮発性溶剤ガスを凝集樹脂微粒子分散液に吹き込んで通過させる際、可能な限り表面積の大きな状態(ガスの気泡が小さな状態)で吹き込むと、凝集樹脂微粒子との接触効率や水への吸収効率が高くなり、これにより反応時間を短縮することができる。また、揮発性溶剤ガスが凝集樹脂微粒子分散液中を長い時間滞留するような条件で撹拌した場合にも同様の効果が得られる。
尚、前記のように、揮発性溶剤ガスを介して形状が制御された凝集樹脂微粒子から揮発性溶剤を除去するには、凝集樹脂微粒子分散液の表面に空気や不活性ガスを送り込み、更に、加熱しつつ撹拌すれば良い。また、系を減圧し、揮発性溶剤の沸点を下げることも有効である。
続いて、前記トナー製造方法につき、具体的に説明する。
先ず、樹脂及び着色剤を有機溶剤に撹拌混合し、樹脂及び着色剤が溶解または/及び分散させることにより油相が作製される。
かかる工程は、トナー材料溶解液(油相)に所定量の着色剤を加えた後、撹拌して着色剤を分散させる初期の着色剤分散工程である。
ここに、樹脂は、有機溶剤に溶解する成分を少なくとも含む必要があるが、すべて有機溶剤に溶解する樹脂であれば、その形状、大きさは制限されない。また、有機溶剤に一部溶解しない樹脂でも約3μm以下の樹脂微粒子スラリーを作製できる材料であれば特に限定されるものではない。例えば、乳化重合法や転相乳化法はサブミクロンの微粒子を得るのに効果的な手法であり、この手法によれば、例えば、ポリエステル樹脂やスチレンアクリル樹脂などをトナーの樹脂材料にすることができる。
また、その他の手法として、気相中、または水相中において樹脂塊にせん断力を加えて破砕する手法もあり、この手法では破砕可能な様々な樹脂を用いることができる。
例えば、アルコール成分とカルボン酸とを縮重合させたポリエステル樹脂、スチレンモノマーとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとを共重合させたポリスチレンアクリル樹脂、その他各種アクリル酸モノマーを重合したポリアクリル酸樹脂、各種メタクリル酸モノマーを時融合したポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が用いられる。これらの樹脂は単独で又は混合して使用することができる。
尚、前記樹脂としては、樹脂末端に酸性の官能基を有し、塩基性化合物との反応によりイオン化して自己分散型となる樹脂が好適であり、例えば、樹脂末端にカルボキシル基、スルホン基等解離した時にアニオン性を示す極性基を有する樹脂が良い。前掲の樹脂では、ポリエステル樹脂、ポリスチレンアクリル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合樹脂が好適である。
また、塩基性化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンのような有機第三級アミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基類が使用可能である。
更に、着色剤としては、カーボンブラック、マグネタイト、黒色酸化チタン等の無機顔料、樹脂変性アジン化合物等の有機顔料、その他油溶性染料等も使用できる。また、有機溶剤は、樹脂を溶解させて、水に対して不溶性若しくは難溶性を有する溶剤であれば使用することができる。具体的には、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ベンゼン、キシレン等を使用することができる。
尚、前記油相には、予めトナーに必要とされるワックス等を添加しておいてもよい。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等、これらに極性基を付与した変性ワックス等を使用することができる。
続いて、前記のように生成された油相に、分散安定剤及び水を添加し、撹拌混合により油相をトナー粒子径よりも十分小さい液滴にした液滴分散液が作製される。
ここに、分散安定剤としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンのような水溶解性樹脂、アニオン性、カチオン性、非イオン性の各種界面活性剤、燐酸カルシウム、炭酸カルシウムのような体積平均粒子径1μm以下の水不溶性の無機微粉末、その他、樹脂末端に酸性の官能基を有し、塩基性化合物との反応によりイオン化して自己分散型となる樹脂の場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのように水溶液が塩基性を示す化合物等を使用することができる。
また、前記のように液滴分散液が作成された後、かかる液滴分散液を加熱撹拌し有機溶剤を除去し、液滴が固形化された着色剤含有樹脂微粒子分散液とされる。
次に、前記着色剤含有樹脂微粒子分散液を略トナー粒子径に凝集させた凝集樹脂微粒子分散液を生成する。
このとき、着色剤含有樹脂微粒子を凝集させるにつき、凝集剤が添加される。ここに、乳化凝集トナーを作製する場合、樹脂微粒子をはじめ、微粒子化されたトナー材料を凝集させる必要がある。一般に、スラリーに分散されている材料微粒子の分散安定作用に影響を与えている添加剤(分散安定剤)や固形物表面の極性と反対極性の水溶性物質、もしくは固形微粒子であれば、分散安定状態を不安定な状態に壊し、微粒子を凝集させることができる。ただし、凝集速度は凝集剤の種類や添加量、また、凝集工程時の系の加熱温度や攪拌状態によって変化するため適時最適な条件設定が必要である。
具体的な凝集剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、塩化アルミニウムなどのように水溶液が酸性を示す化合物、0.01〜1μmの酸化ケイ素や酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機酸化物微粒子、その他分散安定効果と逆極性のイオン性界面活性剤等が挙げられる。
また、前記のように凝集剤が添加された後に、分散安定剤が添加される。この分散安定剤は、樹脂微粒子のスラリーに含まれる固形分を所望の大きさに凝集させた後、それ以上の凝集成長を防止させたり、トナー形状制御(樹脂粘度低下)工程におけるトナー同士の融着凝集を防止するために添加される。これらの凝集を防ぎ、トナー粒子1つ1つの分散を安定させることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、前記したと同様に、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンのような水溶解性樹脂、アニオン性、カチオン性、非イオン性の各種界面活性剤、燐酸カルシウム、炭酸カルシウムのような体積平均粒子径1μm以下の水不溶性の無機微粉末、・その他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのように水溶液が塩基性を示す化合物等が挙げられる。
尚、前記のように樹脂として樹脂末端に酸性の官能基を有し、塩基性化合物との反応によりイオン化して自己分散型となる樹脂、例えば、樹脂末端にカルボキシル基、スルホン基等解離した時にアニオン性を示す極性基を有する樹脂が使用される場合には、前記した塩基性化合物であるトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンのような有機第三級アミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基類が使用される。
続いて、凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスを吹き込む。ここに、揮発性溶剤は、前記したように、凝集樹脂微粒子の形状を不定形から球形に制御するために作用され、その特性として、(1)揮発性を有し (2)トナーバインダとなる樹脂のすべて、または一部を溶解し (3)溶剤自体も一部又はすべてが水に溶解する特性を有している必要がある。例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、クロロホルムなどが挙げられる。また、これらの揮発溶剤ガスをトナー分散液に吸収させやすくするために、メタノール、エタノール、2-プロパノールのような水溶性溶剤のガスを適宜混合することも可能である。
揮発性溶剤ガスは、前記したように凝集樹脂微粒子分散液に対して循環して吹き込まれることが望ましく、また、微細な気泡状態で吹き込まれることが望ましい。これは、常温常圧で効率よく揮発性溶剤ガスを搬送させて凝集樹脂微粒子分散液に吹き込むためであり、また、凝集樹脂微粒子との接触効率や水への吸収効率が高くして反応時間を短縮するためである。
続いて、前記凝集樹脂微粒子からなるトナーを製造可能なトナー製造装置について図1に基づき説明する。図1はトナー製造装置を模式的に示す説明図である。
図1に示すトナー製造装置1は、第1セパラブルフラスコ2及び第2セパラブルフラスコ3を備えている。第1セパラブルフラスコ2は、水相又は水溶液からなる連続相に分散された樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液が生成される容器である。かかるセパラブルフラスコ2は、フラスコ本体2A及びフラスコ本体2Aに対して分離可能に形成された蓋体2Bとから構成されている。
第1セパラブルフラスコ2の下方には、ウォーターバスWBが設置されており、このウォーターバスWBにはヒータ4が配置されている。ウォーターバスWBは、ヒータ4により温調されつつ第1セパラブルフラスコ2を所定温度に保持するものである。
前記蓋体2Bの頂部には、モータ5が固設されており、かかるモータ5には、6枚羽根の撹拌インペラ6が連結されている。撹拌インペラ6は、モータ5を駆動することにより、前記ウォーターバスWBと協同して、第1セパラブルフラスコ2内にて生成された凝集樹脂微粒子分散液の加熱撹拌を行う。
また、第2セパラブルフラスコ3は、揮発性溶剤が充填される容器であり、第1セパラブルフラスコ2と同様、フラスコ本体3A及びフラスコ本体3Aに対して分離可能に形成された蓋体3Bとから構成されている。
第1セパラブルフラスコ2の蓋体2Bと第2セパラブルフラスコ3の蓋体3Bとの間には、2つのフラスコ本体2Aと3Aとを連通する第1連結管7が配設されている。第1連結管7の一端(フラスコ本体3A側の端部)は、フラスコ本体3A内に充填された揮発性溶剤の表面(水面)から上方に離間した位置に配置されており、また、第1連結管7の他端(フラスコ本体2A側の端部)は、フラスコ本体2A内で生成されている凝集樹脂微粒子分散液の表面(水面)下に配置されている。
前記第1連結管7の途中には、ポンプ8が配設されており、かかるポンプ8は、第2セパラブルフラスコ3内の揮発性溶剤が揮発して生成されたガスを吸引するとともに、その揮発性溶剤ガスを第1セパラブルフラスコ2内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込む作用を行う。
第1セパラブルフラスコ2の蓋体Bと第2セパラブルフラスコ3の蓋体3Bとの間には、前記と同様、2つのフラスコ本体2Aと3Aとを連通する第2連結管9が配設されている。第2連結管9の一端(フラスコ本体2A側の端部)は、フラスコ本体2A内の凝集樹脂微粒子分散液の表面(水面)から上方に離間した位置に配置されており、また、第2連結管の他端(フラスコ本体3A側の端部)は、フラスコ本体3A内に充填された揮発性溶剤の表面(水面)下に配置されている。
前記第2連結管9の途中には、ポンプ等から構成される循環装置10が配設されており、かかる循環装置10は、前記のように第1セパラブルフラスコ2内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込まれ、かかる分散液に溶存できなくなった揮発性溶剤ガスをガスを吸引するとともに、その揮発性溶剤ガスを第2セパラブルフラスコ3内の揮発性溶剤内に循環させる作用を行う。
前記したトナー製造装置1では、第1セパラブルフラスコ2内で生成された凝集樹脂微粒子分散液が、モータ5の駆動により回転される撹拌インペラ6とヒータ4により温度制御が行われるウォーターバスWBとの協同により加熱撹拌される。また、ポンプ8を駆動することにより、第2セパラブルフラスコ3内の揮発性溶剤ガスが第1連結管7を介して第1セパラブルフラスコ2内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込まれる。
このように、凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスが吹き込まれてその分散液を通過すると、揮発性溶剤は、相溶性の高い凝集樹脂微粒子に取り込まれる。これにより、凝集樹脂微粒子の粘度が緩やかに低下し、凝集樹脂微粒子の形状が除除に球形になっていく。また、揮発性溶剤として水への溶解性が高い溶剤を使用すると、その揮発性溶剤ガスは、直接凝集樹脂微粒子の粘度を低下させる他、水に溶解した揮発性溶剤も凝集樹脂微粒子に吸収されて間接的に凝集樹脂微粒子の粘度を低下させることから、凝集樹脂微粒子の形状を効率的に制御することができる。
また、凝集樹脂分散液中に溶存できなくなった揮発性溶剤ガスは、循環装置10を駆動することにより、第1セパラブルフラスコ2から第2連結管9を介して吸引されるとともに、第2連結管9を介して第2セパラブルフラスコ3内に循環される。
次に、本実施形態に係るトナー製造方法の実施例について説明する。
[使用材料]
実施例では、以下の剤利用を使用してトナーの製造を行った。
樹脂:ポリエステル樹脂XPE2443(Mn4400、Mw81300、Mw/Mn=18.48、ゲル分17.4%、酸価2.0 KOHmg/g:三井化学製)
顔料:カーボンブラック#260(1次粒子径40nm、BET比表面積70m2/g、吸油量79ml/100g、pH8.0:三菱化学製)
荷電制御剤:N01(ニグロシンベース アジン化合物 オリエント化学製)
有機溶剤:メチルエチルケトン(鹿1級 関東化学製、以下MEKと略記する)
[スラリー作製]
蒸留水225g、1N水酸化ナトリウム水溶液1.7gを500mlビーカーで混合するとともに、MEK180gを追加し、更に、樹脂(XPE2443)45g、顔料2.25g、荷電制御剤2.25gを追加した。その後、ホモジナイザーDIAX900(Heidolph製)11000rpmで20分間撹拌し、60℃のウォーターバスにビーカーを漬け、混合液を加熱しながら90分間溶剤を揮発させた。このときの混合は6枚平羽根タービン撹拌翼(φ50×20mm)140rpmでおこない、ビーカーの口付近に吸引ダクトを設置して揮発溶剤を取り除きながら行った。このように作製されたスラリー(微粒子分散液)を攪拌しながら30℃以下まで自然冷却した。
また、30℃以下まで冷却されたスラリーの一部を用いて、スラリー中の固形分濃度と微粒子の粒子径を測定した。このとき、スラリーの固形分濃度測定は次のように行った。即ち、浅底のアルミパンにスラリー10gを正確に秤量し、150℃に加熱したホットプレート上で2時間加熱した。その後、室温まで冷却し、揮発した水分重量を正確に秤量した。残留した固形分を算出し、最初に仕込んだスラリー重量で除することによって固形分濃度を把握した。
なお、スラリーの固形分濃度が20wt%を超える場合は固形分濃度20wt%になるように蒸留水で希釈して凝集粒子作成に用いる。
また、スラリーに分散されている微粒子の粒子径はレーザー回折方式粒度分布計(LA500 HORIBA製)で適正範囲に濃度調整して測定した。
[粒子作製]
先ず、100mlビーカーでスラリー(固形分濃度20wt%)80g、0.2N 塩化アルミニウム水溶液 2gを入れ、ホモジナイザーDIAX900(Heidolph製)で8000rpmの条件下5分撹拌した。次いで、この液とSNデフォーマー777(サンノプコ製)2%水溶液80gとを混合させながら、200ml容量の第1セパラブルフラスコ2のフラスコ本体2Aに流し込んだ。更に、混合系に超音波(28kHz、650W)を3分間印加しながら、1片を固定した板(20mm×20mm)により120rpmの条件下で撹拌を行った。次いで、ヒータ4を介して50℃に温調されたウォーターバスWB内に第1セパラブルフラスコ2を浸し、モータ5を駆動して撹拌インペラ6(インペラー6枚羽根(φ50mm×20mm)により140rpmの条件下で上記混合系の撹拌を行った。更に、第1セパラブルフラスコ2をウォーターバスWBに浸けてから10分経過時に凝集抑制剤として0.2N水酸化ナトリウム水溶液 4gを加えた。そして、30分経過後に約10分の時間をかけて80℃に昇温するとともに、そのまま過熱撹拌を続け、粒子径が約10〜12μmになった時点で加熱を停止した。この後、ウォーターバスWBからセパラブルフラスコ2を取り出し、分散安定剤として0.2N水酸化ナトリウム水溶液2gを加え、超音波分散機で超音波(28kHz、650W)を3分印加した。
[形状制御]
20℃に温度調整されたウォーターバスWBに第1セパラブルフラスコ2を浸し、モータ5を駆動して撹拌インペラ6(インペラ6枚羽根、φ50×20mm)により140rpmの条件下で撹拌を行った。その後、第2セパラブルフラスコ3内にメチルエチルケトン120gを充填し、ポンプ8により送風循環機能を有する第1連結管7を介してトナー粒子分散液の入った第1セパラブルフラスコ2に接続した。このとき、トナー分散液の撹拌状態は前記した通り継続し、第1連結管7の第1セパラブルフラスコ2側の端部に形成されたφ2mmの穴10個から揮発溶剤ガスを分散液に送り込んだ。このとき、ポンプ8及び循環装置10を介して約1.5リットル/分の流量で送風を開始し、揮発溶剤ガスを循環させた。そして、適宜、サン
プルを採取しトナー粒子の変形状態を確認し、目的形状になった段階で揮発溶剤ガスの循環を停止した。
このとき、トナー粒子の形状が、揮発性溶剤ガスの循環時間に従って、どのように変化していくかにつき図2を参照して説明する。図2は揮発性溶剤ガスの循環時間に従ってトナー粒子の形状が変化していく状態を示す図である。
図2(A)は、揮発性溶剤ガスを循環させる前におけるトナー粒子の形状を示し、トナー粒子の形状から明らかなように、不定形の凝集樹脂微粒子がそのまま残存していることが分かる。尚、図2(A)の状態から95℃まで加熱を試みたところ、トナー粒子の形状に変化は見られなかった。
また、図2(B)は、揮発性溶剤ガスを約60分循環させた後におけるトナー粒子を示し、トナー粒子の形状は、不定形からかなり球形にまで変化したことが分かる。
更に、図2(C)は、揮発性溶剤ガスを約90分循環させた後におけるトナー粒子を示し、トナー粒子の形状は、殆ど球形の状態にまで変化したことが分かる。
このように、トナー粒子の形状は、揮発性溶剤ガスの循環時間に従って、略球形まで変化させることができるものである。
最後に、トナー分散液の入った第1セパラブルフラスコ2の蓋体2Bを取り外し、分散液表面に空気(または不活性ガス)を送風した。この後、分散液の系を60℃に加熱してメチルエチルケトンを揮発させながら1時間撹拌するとともに、1時間後に、トナー分散液を30℃以下に冷却し、濾過して乾燥させることによりトナー粒子を得た。
以上説明した通り本発明は、トナーバインダとして高粘度樹脂や高融点樹脂を使用する場合においても、効率良く且つ簡単な操作により低コストでトナー形状を不定形から球形まで任意の形状に制御することが可能なトナー製造方法、トナー及びトナー製造装置を提供することができる。
トナー製造装置を模式的に示す説明図である。 揮発性溶剤ガスの循環時間に従ってトナー粒子の形状が変化していく状態を示す図である。
符号の説明
1 トナー製造装置
2 第1セパラブルフラスコ
3 第2セパラブルフラスコ
4 ヒータ
5 モータ
6 撹拌インペラ
7 第1連結管
8 ポンプ
9 第2連結管
10 循環装置
WB ウォーターバス

Claims (9)

  1. 連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液に、揮発性溶剤ガスを吹き込み、凝集樹脂微粒子の形状制御をする工程と、
    形状制御された凝集樹脂粒子から揮発性溶剤を除去する工程を含むことを特徴とするトナー製造方法。
  2. 少なくとも樹脂及び着色剤を有機溶剤に撹拌混合し、樹脂及び着色剤が溶解または/及び分散した油相を作製する工程と、
    前記油相に分散安定剤及び水を添加し、撹拌混合により油相をトナー粒子径よりも十分小さい液滴にした液滴分散液を作製する工程と、
    前記液滴分散液を加熱撹拌し有機溶剤を除去し、液滴が固形化された着色剤含有樹脂微粒子分散液とする工程と、
    前記着色剤含有樹脂微粒子分散液を略トナー粒子径に凝集させた凝集樹脂微粒子分散液を生成する工程と、
    前記凝集樹脂微粒子分散液に揮発性溶剤ガスを吹き込む工程とを含むことを特徴とするトナー製造方法。
  3. 前記揮発性溶剤は、水に一部またはすべて可溶であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトナー製造方法。
  4. 前記揮発性溶剤ガスは、前記凝集樹脂微粒子分散液に対して循環して吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトナー製造方法。
  5. 前記揮発性溶剤ガスは、微細な気泡状態で吹き込まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のトナー製造方法。
  6. 前記樹脂は樹脂末端に酸基を有し、塩基性化合物との反応によりイオン化し自己分散型樹脂となる樹脂であり、前記凝集樹脂微粒子の分散安定剤として水溶液が塩基性である化合物が添加されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトナー製造方法。
  7. 連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液に、揮発性溶剤ガスを吹き込み、凝集樹脂微粒子の形状制御をするとともに、形状制御された凝集樹脂粒子から揮発性溶剤を除去することにより製造されるトナー。
  8. 連続相に分散された少なくとも樹脂微粒子を凝集させた凝集樹脂微粒子分散液が生成される第1容器と、
    揮発性溶剤を収容するとともに揮発性溶剤ガスを生成する第2容器と、
    前記第1容器と第2容器とを連結する第1連結管と、
    前記第1連結管に配設され、前記第2容器内の揮発性溶剤ガスを前記第1容器内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込むポンプとを備えたことを特徴とするトナー製造装置。
  9. 前記第1容器と第2容器とを連結する第2連結管と、
    前記第2連結管に配設された循環装置とを備え、
    前記第1容器内の凝集樹脂微粒子分散液に吹き込まれた揮発性溶剤ガスは、前記循環装置及び第2連結管を介して第2容器に循環されることを特徴とする請求項8に記載のトナー製造装置。
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