JP2000210546A - ロジン系化合物の水性エマルジョンの製造方法 - Google Patents

ロジン系化合物の水性エマルジョンの製造方法

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JP2000210546A
JP2000210546A JP11012658A JP1265899A JP2000210546A JP 2000210546 A JP2000210546 A JP 2000210546A JP 11012658 A JP11012658 A JP 11012658A JP 1265899 A JP1265899 A JP 1265899A JP 2000210546 A JP2000210546 A JP 2000210546A
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emulsifier
emulsion
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aqueous emulsion
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Yorishige Matsuba
頼重 松葉
Satoru Iwasa
哲 岩佐
Yoshiharu Hashiguchi
芳春 橋口
Keiichi Ogawa
啓一 小川
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Harima Chemical Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転型乳化機とは別種の高圧吐出型乳化機を
用いて、迅速且つ容易にロジン系化合物を水性エマルジ
ョン化する。 【解決手段】 乳化剤水溶液を高圧吐出型乳化機10の
第一供給路2から高圧でオリフィス4に供給し、溶融状
のロジン系化合物を第二供給路3から高速流噴出部5に
供給し、オリフィス4から噴出させた乳化剤水溶液の高
速流をロジン系化合物に高速流噴出部5内で、ロジン系
化合物の軟化点を基準として−30℃〜+15℃の範囲
内の混合温度で衝突させ、これらの混合物を吸収セル6
を多段状に嵌挿した吸収セル部8内に導き入れてエマル
ジョン排出部9から排出する。乳化セル部8の長さを可
変調整できるため、1パスで微細で均一なエマルジョン
が得られる。乳化剤水溶液の圧送路とは別のラインで溶
融状のロジン系化合物を乳化セル1に供給するため、乳
化機10のシール部の熱劣化がない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水に溶解しないロ
ジン系化合物を溶剤希釈などの手段を用いずに直接的に
乳化して水性エマルジョンを得る製造方法に関して、迅
速且つ容易に微細で安定なエマルジョンを製造できると
ともに、高圧吐出型乳化機のシール部の熱劣化などを円
滑に防止できるものを提供する。
【0002】
【発明の背景】ロジン系化合物の水性エマルジョンは、
揮散性の有機溶剤を全く含まない水分散製品として、製
紙用サイズ剤、粘・接着剤用の粘着付与剤樹脂、或は塗
料やインキ用の改質剤などに広く利用されている。従
来、上記ロジン系化合物の水性エマルジョンを製造する
方法としては、溶剤系高圧乳化法、転相乳化法、或は無
溶剤系高温高圧乳化法などがある。
【0003】(1)溶剤系高圧乳化法 この方法は、ロジン系化合物をトルエン等の揮発性有機
溶剤に溶解し、乳化剤及び水を予備混合し、粗い粒子の
水性エマルジョンに調製した後、ホモジナイザー等の高
圧吐出型乳化機で乳化して、有機溶剤を留去するもので
ある。この方法では、予備混合室においてロジン系化合
物が室温でも溶液状態にあって低粘度であるため、微細
な水性エマルジョンが容易に得られるとともに、吐出型
乳化機の高圧プランジャーポンプのシール材(パッキン
やOリングなど)の劣化がないという利点がある。しか
しながら、乳化処理後に溶剤の留去工程が必要なため、
生産性が低いうえ、有機溶剤の使用は労働安全、衛生上
及び環境上の点で夫々問題がある。
【0004】(2)転相乳化方法 この方法は、加熱溶融したロジン系化合物に撹拌状態で
水と乳化剤を添加しながら油中水型エマルジョンを得
て、これを水中油型エマルジョンに転相し、水性エマル
ジョンを製造するものである。この方法の最大の利点は
大きな剪断力を必要としないことにあるが、一方で、微
細で安定な水性エマルジョンを得るには多量の乳化剤を
必要とするため、製品が泡立つ(即ち、製品を使用する
ときの発泡性)という問題がある。また、ロジン系化合
物の溶融温度で劣化するものは乳化剤に使用できず、乳
化剤の種類は大幅な制限を受ける。
【0005】(3)無溶剤系高温高圧乳化法 この方法は、加熱溶融したロジン系化合物と乳化剤及び
水を予備混合し、粗い粒子の水性エマルジョンを調製し
た後、その混合物をホモジナイザー等の高圧吐出型乳化
機で乳化して、微細な粒子の水性エマルジョンを得るも
のである。この方法では、上記(1)のような有機溶剤の
留去工程を必要としないが、予備混合室が高温、高粘度
であるため、高圧吐出型乳化機のうちの高圧プランジャ
ーポンプのシール材の劣化が激しく、長時間の連続運転
が困難である。また、予備混合時の高温のため、上記
(2)に示すように、乳化剤の種類も制限を受ける。
【0006】
【従来の技術】そこで、上記熱劣化の弊害を解消するよ
うに工夫した無溶剤系の高温高圧乳化法の改良技術とし
て、特開平10−226981号公報には、乳化剤水溶
液と加熱溶融したロジン系化合物を高剪断型の回転式乳
化機を用いて高剪断下で混合し、固形分濃度が60〜9
0重量%、全固形分中での乳化剤固形分の含有率が0.
5〜20重量%である高濃度混合物を得る高濃度混合物
生成工程と、当該高濃度混合物生成工程を経て得られた
高濃度混合物に希釈水を混合して全固形分を60重量%
未満に濃度調整した水性エマルジョンを得る水性エマル
ジョン生成工程とより成るロジン系化合物の水性エマル
ジョンの製造方法が開示されている。上記高剪断型回転
式乳化機にあっては、例えば、撹拌翼(ロータ)の外周部
に近接させた固定環(ステータ)の中でロータの高速回転
を行ってキャビテーションや圧力波などの衝撃力を発生
させ、ロータとステータの狭い間隙に供給された流体に
強力な剪断力を付与するように構成される。
【0007】当該従来技術において、ロジン系化合物と
乳化剤と少量の水が混合され均質化される高濃度混合物
生成工程では、少なくとも安定な水中油型エマルジョン
は生成されていないが、高剪断下での混合であることか
ら均一な混合物を得るには必ずしも高温を必要としない
ため、熱劣化し易かったり、或は通常の水性媒体ではロ
ジン系化合物と組み合わせて使用できない乳化剤も使用
できるという利点がある。そして、水性エマルジョン生
成工程において、上記高濃度混合物は希釈水と混合され
て60重量%未満に希釈されることにより、初めて微細
で安定な水中油型の水性エマルジョンが生成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術では、ロジン系化合物の高濃度混合物を生成する
工程と、これを水で希釈して水中油型の水性エマルジョ
ンを生成する工程の二つの工程が必要であって、処理が
煩雑で生産性は必ずしも高くはない。また、ロジン系化
合物の種類が様々に変化すると、実施例に見るように、
その種類に合わせてロータの回転数やロータの最外リン
グの周速などを適正に変化させる必要があり、製造操作
が容易でない。
【0009】上記従来技術は高剪断型の回転式乳化機を
利用することを前提として、高速回転に基づく剪断力や
遠心力によってロジン系化合物を水性エマルジョン化す
る点に特徴があるが、本発明は、当該回転式の乳化機と
は種類、構造共に異なる別種の乳化機を利用して、迅速
且つ容易にロジン系化合物の水性エマルジョンを製造す
ることを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先ず、上
記回転式の乳化機とは異なる高圧吐出方式の乳化機を利
用して、ロジン系化合物の水性エマルジョン化を図っ
た。しかしながら、一般に、高圧ホモジナイザー(高圧
吐出型乳化機)では、ホモジナイザー弁の隙間が圧力変
動に反応して変化し、キャビテーション、剪断力などの
比率が常に変化しているため、さらには、その均質化プ
ロセスが非常に短時間に終わってしまい、均質化プロセ
スによって新しい粒子ができるのと同じ時間で乳化剤分
子が粒子の周囲を取り囲めないため、均一で微細なエマ
ルジョンを生成させようとすると、処理液を複数回ホモ
ジナイザーに通過させる必要があり、処理が煩雑にな
る。
【0011】そこで、本発明者らは、ホモジナイザー弁
の通過による乳化プロセスではなく、オリフィスの出口
領域での衝突とこれに続く吸収セル領域内の通過によっ
て乳化プロセスを実施できる新方式の高圧吐出型乳化機
を用いて、ロジン系化合物を水性エマルジョン化するこ
とを着想した。即ち、加熱溶融したロジン系化合物と乳
化剤水溶液を予備混合することなく当該高圧吐出型乳化
機の乳化セルに別々に供給し、乳化セル内のオリフィス
から噴出させた乳化剤水溶液の高速流をロジン系化合物
に衝突させるとともに、引き続いてその混合物を細長い
空洞状の吸収セル部に導き入れると、乳化剤の選択の幅
を広げながら1パスでロジン系化合物の水性エマルジョ
ンが迅速、且つ容易に得られることを見い出し、本発明
を完成した。
【0012】即ち、本発明1は、乳化セル1と乳化セル
1への流体供給手段17・19により高圧吐出型乳化機
10を構成し、上記乳化セル1に第一供給路2、第二供
給路3、オリフィス4、細長い空洞7を具備した吸収セ
ル6を着脱可能に多段状に組み合わせた吸収セル部8及
びエマルジョン排出部9を設け、第一供給路2の出口を
オリフィス4に連通し、オリフィス4の出口側の高速流
噴出部5を吸収セル部8の入口8aに臨ませ、第二供給
路3の出口を高速流噴出部5に連通し、吸収セル部8の
出口をエマルジョン排出部9に連通して、乳化剤水溶液
を第一供給路2から高圧でオリフィス4に供給し、加熱
溶融したロジン系化合物を第二供給路3から高速流噴出
部5に供給して、オリフィス4の出口から噴出させた乳
化剤水溶液の高速流をロジン系化合物に高速流噴出部5
内で、ロジン系化合物の軟化点を基準として−30℃〜
+15℃の範囲内の混合温度で衝突させるとともに、こ
れらの混合物を吸収セル部8内に導き入れた後にエマル
ジョン排出部9から排出して、乳化剤水溶液とロジン系
化合物を予備混合することなく別々に乳化セル1内に供
給し、高速流噴出部5内での両成分の衝突と吸収セル部
8内の通過によって水性エマルジョンを生成することを
特徴とするロジン系化合物の水性エマルジョンの製造方
法である。
【0013】本発明2は、上記本発明1において、乳化
剤水溶液を乳化セル1内に2000〜4000kgf/
cm2の高圧で供給することを特徴とするものである。
【0014】本発明3は、上記本発明1又は2におい
て、加熱溶融したロジン系化合物を乳化セル1内に20
kgf/cm2以下の圧力で供給することを特徴とする
ものである。
【0015】本発明4は、上記本発明1〜3のいずれか
において、吸収セル1の空洞7の内径を0.5〜3mm
に設定することを特徴とするものである。
【0016】本発明5は、上記本発明1〜4のいずれか
において、吸収セル部8の長さを5〜300mmに設定
することを特徴とするものである。
【0017】本発明6は、上記本発明1〜5のいずれか
において、水性エマルジョンの固形分濃度が60%以下
であり、平均粒子径が0.6μm以下であることを特徴
とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】上記ロジン系化合物は、ガムロジ
ン、ウッドロジン、トール油ロジンなどのロジン類を初
め、当該ロジン類を安定変性化したロジン誘導体を含む
広義の概念であり、これらの化合物を単用又は併用でき
る。上記ロジン誘導体としては、水素化ロジン、不均化
ロジン、重合ロジン、或は、グリセリン、ペンタエリス
リトール等の多価アルコール、ヒドロキノン、ピロガロ
ール、ビスフェノールA等のフェノール類、エポキシ化
合物などと上記ロジン類をエステル化反応させたエステ
ル化ロジン、或は、α,β−不飽和カルボン酸系化合物
と上記ロジン類を反応させた不飽和カルボン酸強化ロジ
ンなどが挙げられる。上記α,β−不飽和カルボン酸系
化合物はα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物な
どであり、具体的には、フマル酸、(無水)マレイン酸、
イタコン酸、(無水)シトラコン酸、アクリル酸、メタク
リル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸を含めて(メ
タ)アクリル酸と表示する。)なとが挙げられる。
【0019】上記乳化剤は、アニオン系、カチオン系、
ノニオン系又は両性界面活性剤などを初め、上記ロジン
系化合物を乳化分散する作用を具備するものであれば任
意のものを単用又は併用できる。上記界面活性剤として
は高分子系のものが好ましく、具体的には、スチレンと
(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体を部分ケン化又
は完全ケン化したアニオン系乳化剤、或は、アニオン性
或はカチオン性単量体と(メタ)アクリル酸系化合物との
共重合体及びアクリルアミド系共重合体などが挙げられ
る。
【0020】図2に示すように、上記高圧吐出型乳化機
10は、オリフィス4の出口と吸収セル部8の入口を高
速流噴出部5を介して臨ませた乳化セル1と、高圧ポン
プ17や計量ポンプ19などの流体供給手段とを備えた
ものをいう。上記オリフィス4に流体を強制的に通過さ
せると、キャビテーションによる力と剪断力が負荷され
るとともに、オリフィス4を出た一方の処理液(即ち、
乳化剤水溶液)の高速流は別ラインから供給された他方
の処理液(即ち、溶融状のロジン系化合物)と互いに衝突
して、さらに剪断力と衝撃力が加わりながら、上記高速
流の運動エネルギーを吸収する吸収セル部8に導かれ
る。
【0021】上記乳化剤水溶液は、図2に示すように、
高圧ポンプ17などにより第一供給路2から高圧で乳化
セル1のオリフィス4に供給される。本発明2に示すよ
うに、乳化剤水溶液の供給圧力は2000〜4000k
gf/cm2であり、好ましくは2500〜3500k
gf/cm2である。2000kgf/cm2より低いと
ロジン系化合物の乳化が困難になり、一方、高圧ポンプ
17の能力やエネルギーの省力化の見地から4000k
gf/cm2を越えるのは実用的でない。上記高圧ポン
プとしては、3連式高圧プランジャーポンプ、増圧イン
テンシファイヤーポンプなどが挙げられる。
【0022】図2に示すように、加熱溶融した上記ロジ
ン系化合物は計量ポンプ19などにより第二供給路3か
ら乳化セル1の高速流噴出部5に供給される。本発明3
に示すように、ロジン系化合物の供給圧力は20kgf
/cm2以下であり、好ましくは1〜10kgf/cm2
である。但し、乳化剤水溶液の高速流により高速流噴出
部5が減圧されるため、ロジン系化合物の粘度が低い場
合には、大気圧(0kgf/cm2)以下の圧力で供給す
ることも可能である。従って、逆に、20kgf/cm
2を越えて供給するのは、エネルギーの省力化の見地か
ら実用的ではない。上記計量ポンプとしては、ギヤポン
プ、ダイヤフラムポンプ、ベーンポンプ、蠕動ポンプな
どが挙げられる。
【0023】図3〜図5に示すように、上記吸収セル部
8は、細長い空洞7を具備した吸収セル6を着脱可能に
多段状に組み合わせて構成される。当該空洞7は底のな
い貫通状の細孔、或は有底の空洞などを包含する概念で
あり、吸収セル部8は前者の細孔状の吸収セル6を単数
又は複数個組み合わせ場合には筒状(図3及び図5参
照)、また、前者の細孔状の吸収セル6を単数又は複数
個組み合わせて、その末端部分に有底の吸収セル6を組
み合わせると吸収セル部8はコップ状(図6参照)を呈す
る。筒状の吸収セル部8にあっては、図3に示すよう
に、吸収セル部8の出口がエマルジョン排出部9にな
り、乳化セル1のオリフィス4から噴出した乳化剤水溶
液の高速流はロジン系化合物と高速流噴出部5で衝突し
てから吸収セル部8に案内され、吸収セル部8の出口か
ら乳化セル1外に排出される。一方、コップ状の吸収セ
ル部8にあっては、図6に示すように、衝突した乳化剤
水溶液とロジン系化合物の両流体は一旦吸収セル部8に
案内され、コップの底部を反射面37として反転し、コ
ップの開口部8aを経てエマルジョン排出部9に至るの
である。当該エマルジョン排出部9に至る経路38は乳
化セル1内に吸収セル部8とは別の通路として形成され
る。
【0024】本発明4に示すように、上記吸収セル6の
空洞7の内径は0.5〜3mmであり、好ましくは1〜
2mmである。内径が細過ぎると、吸収セル6の内圧が
高まってロジン系化合物と乳化剤水溶液の混合物の供給
圧力が過剰に増すので好ましくない。逆に内径が太くな
り過ぎると、吸収セル内でのロジン系化合物と乳化剤水
溶液の混合物が受ける剪断力が小さくなって、円滑に微
粒化できなくなるという弊害がある。また、本発明5に
示すように、上記吸収セル6を多段状に組み合わせた吸
収セル部8の全体の長さは5〜300mmであり、好ま
しくは50〜200mmである。吸収セル6の組み合わ
せ個数で可変調整できる吸収セル部8の長さは乳化剤の
吸着速度にも関係し、短過ぎると乳化が不充分となり、
逆に、長過ぎても乳化性に悪影響はないが、生産空間の
有効利用の見地から実用性が低い。この吸収セル部8の
形態を具体的に示すと、例えば、図5に示すように、上
記乳化セル1を構成するカップリングの一つに設けた挿
通口に複数個の吸収セル6を多段状に嵌挿可能に構成す
ると、吸収セル6を嵌挿したカップリングの組み合わせ
個数の増減によって吸収セル部8の長さは可変調整可能
になる。また、外径が一定であり、内径だけが異なる複
数種類の吸収セル6を用意すると、カップリングに嵌挿
するべき吸収セル6の種類を変えるだけで、吸収セル部
8の空洞7の内径を可変調整できる。
【0025】本発明1に示すように、乳化セル1のオリ
フィス4を出た後の乳化剤水溶液の高速流とロジン系化
合物の衝突は、ロジン系化合物の軟化点を基準として−
30℃〜+15℃の範囲内の混合温度で行われる。この
衝突温度条件は、例えば、軟化点が100℃のロジン系
化合物を水性エマルジョン化する場合には、70℃〜1
15℃の混合温度範囲内でロジン系化合物と乳化剤水溶
液を衝突させることを意味する。当該混合温度は水性エ
マルジョンを円滑に生成させる点できわめて重要な要素
であり、ロジン系化合物の軟化点を基準として−30℃
より低い温度条件で衝突させると乳化性に悪影響があ
り、逆に、+15℃を越えて衝突させるとロジン系化合
物や乳化剤の熱劣化を招く恐れがある。尚、複数種類の
ロジン系化合物を混合して使用する場合には、混合した
ロジン系化合物そのものの軟化点を基準とするのが良
い。生成するロジン系化合物の水性エマルジョンの性状
としては、本発明6に示すように、固形分濃度が60%
以下、平均粒子径が0.6μm以下であるものが好まし
い。但し、エマルジョンの安定性には平均粒子径と粒子
径分布の二つの要素が大きく寄与し、固形分濃度の寄与
は小さい。
【0026】また、本発明のロジン系化合物の水性エマ
ルジョンは、水性エマルジョンタイプのサイズ剤、同タ
イプのタッキファイヤー(粘着付与剤樹脂)、並びに当該
タッキファイヤーを含有する粘・接着剤、又は、塗料、
インキ或はトナー用の改質剤などを初め、様々な用途に
使用できる。
【0027】
【作用】本発明の乳化プロセスは、前述したように、ホ
モジナイザー弁の通過によるものではなく、オリフィス
4の出口領域での衝突とこれに続く吸収セル6の領域内
の通過によって達成される。図4の原理図に示すよう
に、先ず、乳化剤水溶液はオリフィス4に流入すると、
その入口部での流速の急激な加速、オリフィス4内での
オリフィス壁面とオリフィス中心部との速度差、或はオ
リフィス4の出口部での極度の乱流などにより剪断力が
発生するとともに、微細な気泡の発生と破裂によってキ
ャビテーションが発生する。このため、乳化剤水溶液は
オリフィス4から出たあと高速流(ジェット流)となって
別ラインから供給された加熱溶融状のロジン系化合物と
衝突し、ジェット流の運動エネルギーを吸収する吸収セ
ル部8へと引き続いて案内されながら、二つの流体は剪
断力、キャビテーションによる衝撃力などを受けて、油
相と乳化剤は極めて微細な、そして非常に狭い分布をも
つ粒子に効率良く分散されていき、エマルジョン排出部
9を経て安定な水性乳化物が得られる。
【0028】
【発明の効果】(1)本発明の製造方法では、後述の実施
例1〜5と比較例1の試験結果に見るように、乳化セル
の高速流噴出部内における乳化剤水溶液と溶融状のロジ
ン系化合物との両成分の衝突と、これに続く吸収セル部
内の通過により、溶剤系高圧乳化法と同等か、或はそれ
以上の乳化性を達成でき、水性エマルジョンの微細化及
び均一化を円滑に図れる。また、後述の試験例に示すよ
うに、吸収セルの嵌挿個数の増減により吸収セル部の長
さを可変調整でき、乳化剤の吸着速度に合わせて処理時
間を変えることができるため、1パスでエマルジョンを
微細化及び均一化でき、乳化剤の選択の幅を広げながら
安定な水性エマルジョンを迅速且つ容易に得ることがで
きる(後述の実施例1、3、4の試験結果を参照)。とり
わけ、本発明では、後述の実施例1〜5の試験結果に示
すように、ロジン系化合物の軟化点を基準にした適正な
混合温度範囲内で、乳化剤水溶液とロジン系化合物を衝
突させるため、優れた乳化性を達成することができる。
そして、乳化性に対するこの混合温度条件の重要性は、
当該温度範囲から低温側、或は高温側に外れた比較例4
〜5の試験結果との対比から充分に明らかである。
【0029】(2)後述の実施例1〜5と比較例2の試験
結果の対比に見るように、本発明の高圧吐出型乳化機の
うち、高圧ポンプには低温、低粘度の乳化剤水溶液のみ
を供給し、加熱溶融した高温、高粘度のロジン系化合物
は別ラインからギヤポンプ等の定量ポンプで乳化セルの
高速流噴出部に供給するため、高圧プランジャーポンプ
などの高圧ポンプのシール部が劣化する弊害はなく、機
械安定性に優れる。
【0030】
【実施例】以下、ロジン系化合物の水性エマルジョンの
製造装置を図面に基づいて説明するとともに、当該製造
装置を用いたロジン系化合物の水性エマルジョンの製造
実施例、並びに当該水性エマルジョンの試験例を順次述
べる。図2はロジン系化合物の水性エマルジョンの製造
装置の概略系統図、図3は乳化セルの縦断面図、図4は
乳化セルの高速流噴出部周辺の概略拡大断面視による乳
化プロセスの原理図、図5は乳化セルのうちの吸収セル
部の概略分解斜視図である。尚、本発明は下記の実施例
並びに試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術
的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論であ
る。
【0031】上記ロジン系化合物の水性エマルジョンの
製造装置は、図2に示すように、乳化剤水溶液の供給路
2と加熱溶融したロジン系化合物の供給路3と高圧吐出
型乳化機10とエマルジョン回収路11から構成され
る。乳化剤供給タンク12と水供給タンク13は合流し
て乳化剤水溶液の供給タンク14に連通され、乳化剤水
溶液供給タンク14は開閉弁15を介して高圧吐出型乳
化機10の高圧プランジャーポンプ17に乳化剤水溶液
の供給路2により連通される。一方、ロジン系化合物の
供給タンク18は開閉弁21を介して高圧吐出型乳化機
10のギヤポンプ19にロジン系化合物の供給路3によ
り連通される。図2〜図3に示すように、上記高圧吐出
型乳化機10はオリフィス4とこれに続く高速流噴出部
5と吸収セル部8とを具備した乳化セル1、前記高圧プ
ランジャーポンプ17、及び前記ギヤポンプ19から構
成され、高圧プランジャーポンプ17の吐出路22は熱
交換式の加熱器16を介して乳化セル1のオリフィス4
に連通され、ギヤポンプ19の吐出路23は同じく熱交
換式の加熱器20を介して乳化セル1の高速流噴出部5
に連通される。また、乳化機10の吸収セル部8の流通
下手側にはエマルジョン排出部9が開口し、当該エマル
ジョン排出部9は熱交換型の冷却器29、背圧調整弁2
8を介して前記エマルジョン回収路11によりロジン系
化合物の水性エマルジョン回収タンク30に連通され
る。尚、高圧プランジャーポンプ17の吐出路22には
圧力計31と温度計32が臨み、圧力計31は当該プラ
ンジャーポンプ17に、温度計32は前記加熱器16に
各々フィードバック制御可能に連動される。また、ギヤ
ポンプ19の吐出路23には温度計34と圧力計35が
臨み、温度計34は前記加熱器20にフィードバック制
御可能に連動される。
【0032】図3に示すように、上記高圧吐出型乳化機
10はオリフィス4に至る流体通路を開口したカップリ
ング24と、高速流噴出部5を組み込んだカップリング
25と、吸収セル部8が臨むカップリング26と、エマ
ルジョン排出部9を設けたカップリング27を着脱自在
に螺合して構成される。図4の原理図に示すように、上
記オリフィス4と吸収セル部8の入口8aは高速流噴出
部5を介して臨み、図5の分解斜視図に示すように、吸
収セル部8はカップリング26の嵌挿口26aに円筒状
の吸収セル6の複数個をパッキン33を介して多段状に
着脱可能に嵌挿して構成される。図3〜図5に示すよう
に、上記吸収セル6には細長い空洞7(細孔)が貫通し、
吸収セル6を複数個組み合わせることで、各種乳化剤の
吸着速度に合わせてこの細孔の長さを可変調整できる。
従って、図3に示すように、吸収セル6を多く装填した
い場合には、高速流噴出部5を設けたカップリング25
に加えてカップリング26にも吸収セル6を装填すると
良く、また、上記カップリング26を乳化セル1から取
り外し、前記カップリング25に装填した吸収セル6だ
けで吸収セル部8を構成すると、吸収セル6の装填数を
減らすことができる。
【0033】上記ロジン系化合物の水性エマルジョンの
製造装置にあっては、乳化剤水溶液とロジン系化合物は
予備混合されることなく別々に乳化機10の乳化セル1
内に供給されるのであり、具体的には、乳化剤水溶液は
その供給路2から高圧プランジャーポンプ17の高圧で
乳化セル1のオリフィス4に供給され、また、加熱器2
0で加熱溶融されたロジン系化合物はその供給路3から
乳化セル1の高速流噴出部5に供給される。上記オリフ
ィス4の出口から噴出した乳化剤水溶液の高速流はロジ
ン系化合物に高速流噴出部5内で衝突するとともに、こ
れらの混合物は吸収セル6内に導き入れられた後にエマ
ルジョン排出部9から排出され、エマルジョン回収路1
1を経てロジン系化合物の水性エマルジョンは回収タン
ク30に回収される。即ち、乳化剤水溶液とロジン系化
合物の両成分は高速流噴出部5内での衝突と、吸収セル
部8内の通過によって効率良く乳化されるのであるが、
上記衝突に際しては、ロジン系化合物の軟化点を基準に
して−30℃〜+15℃の混合温度範囲内で処理するこ
とが必要である。乳化剤水溶液の圧送温度や供給量、或
はロジン系化合物の送給温度や供給量などを適正に調整
してこの混合温度範囲を実現することは、前述したよう
に、良好な乳化性を確保し、且つ、ロジン系化合物や乳
化剤の劣化を防止するために重要な条件となっている。
【0034】一方、図6は水性エマルジョンの製造装置
の他の実施例を示す。図2〜図5に示す前記実施例で
は、上記製造装置の吸収セル部8は円筒状の吸収セル6
を組み合わせて、乳化剤水溶液とロジン系化合物の両流
体を貫通状に通液させるものであるが、本実施例では、
吸収セル部8の奥端に嵌挿した吸収セル6を有底のコッ
プ状に形成し、吸収セル部8の入口から流入した上記両
流体が一旦吸収セル6の空洞7内を奥端側に向かって流
れ、コップ状の吸収セル6の底を形成する反射面37で
反転して、吸収セル6の空洞7の内壁側を伝って円筒状
の流れを形成しながら再び入口8aに達し、吸収セル部
8の外周側に空けた通液路38を経由して乳化セル1の
エマルジョン排出部9より排出される。本実施例では、
吸収セル部8内の奥端に向かう中心部の流れと入口8a
に向かう空洞7の内壁に沿う円筒状の反転流とがいわば
向流式で擦れ違うため、剪断力などが有効に作用して乳
化促進が効率良く図られるものと考えられる。
【0035】そこで、各種のロジン系化合物並びに乳化
剤の製造例を述べるととともに、図2〜図4に示す上記
製造装置に基づいて上記ロジン系化合物と乳化剤を用い
た水性エマルジョンの製造実施例を、冒述の溶剤系高圧
乳化法や無溶剤系高温高圧乳化法などとの比較において
順次説明する。尚、以下の製造例並びに実施例の
「部」、「%」は全て重量換算である。
【0036】《各種ロジン系化合物の製造例》 (1)フマル酸強化ロジンの製造例1 160℃で溶融状態にあるトール油ロジン874.4部
にパラトルエンスルホン酸0.6部、パラホルムアルデ
ヒド20部を加え、160℃で2時間撹拌したのち、フ
マル酸105部を加え、200℃に昇温して同温度で
1.5時間撹拌した。そして、酸価226、軟化点11
6℃であり、フマル酸が10.5%付加されたフマル酸
強化ロジンを得た。
【0037】(2)ロジンの多価アルコールエステルの製
造例2 上記(1)の製造例に準拠して、ガムロジン936.4部と
グリセリン63.6部を仕込んで5時間かけて270℃
まで昇温し、同温度で5時間エステル化反応を行って、
酸価56、軟化点90℃のロジンのグリセリンエステル
を得た。
【0038】(3)無水マレイン酸強化ロジンの製造例3 上記(1)の製造例に準拠して、165℃で溶融状態にあ
るガムロジン840部に無水マレイン酸160部を仕込
み、200℃に昇温して同温度で1.5時間撹拌した。
そして、ケン化価315、軟化点105℃であり、マレ
イン酸が16%付加された無水マレイン酸強化ロジンを
得た。
【0039】《乳化剤の製造例》 (1)スチレン−メタクリル酸系アニオン性高分子乳化剤
の製造例4 メタクリル酸78.8部、スチレン37.7部、α−メチ
ルスチレン25.0部、メタクリル酸メチル5.3部、過
硫酸アンモニウム3部、n−ドデシルメルカプタン6
部、水547部を撹拌混合し、95℃で4時間加熱し
た。次いで、75℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウ
ム68.8部を滴下し、30分間撹拌したあと室温まで
冷却して、固形分19%のスチレン−メタクリル酸系ア
ニオン性高分子乳化剤を得た。
【0040】(2)スチレン−メタクリル酸系アニオン性
高分子乳化剤の製造例5 メタクリル酸79.2部、スチレン21.7部、α−メチ
ルスチレン14.3部、n−ブチルメタクリレート17.
2部、スチレンスルホン酸ナトリウム14.3部、過硫
酸アンモニウム3部、n−ドデシルメルカプタン6部、
水547部を撹拌混合し、95℃で4時間加熱した。次
いで、75℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム6
8.8部を滴下し、30分間撹拌したあと室温まで冷却
して、固形分19%のスチレン−メタクリル酸系アニオ
ン性高分子乳化剤を得た。
【0041】《ロジン系化合物の水性エマルジョンの製
造実施例》 (1)実施例1 図2〜図4に示す上記水性エマルジョンの製造装置を用
いるとともに、乳化セル1のオリフィス径を0.1mm
に設定し、空洞7の内径が1.5mm、長さが10mm
である吸収セル6を8個直列に嵌挿して吸収セル部8を
形成した。次いで、上記製造例4のスチレン−メタクリ
ル酸系アニオン性高分子乳化剤34.4部と水65.8部
を撹拌混合し、これを80℃に加熱して、高圧吐出型乳
化機10の高圧プランジャーポンプ17により2500
kgf/cm2の高圧で乳化剤水溶液供給路2から乳化
セル1に圧送した。また、上記製造例1のフマル酸強化
ロジンを185℃に加熱溶融し、ギヤポンプ19により
上記供給路2とは異なる別ラインであるロジン系化合物
の供給路3から乳化セル1の高速流噴出部5に供給し
た。得られた水性エマルジョンは冷却器30で室温まで
冷却した。当該フマル酸強化ロジンと乳化剤水溶液の混
合温度は115℃であった。
【0042】(2)実施例2 上記実施例1に準拠しながら、乳化剤水溶液の温度のみ
を50℃に設定して乳化処理を行った。フマル酸強化ロ
ジンと乳化剤水溶液の混合温度は100℃であった。
【0043】(3)実施例3 上記実施例1に準拠しながら、吸収セル部8を構成する
吸収セル6の個数を8個から13個に増やして乳化処理
を行った。フマル酸強化ロジンと乳化剤水溶液の混合温
度は115℃であった。
【0044】(4)実施例4 上記実施例1に準拠しながら、吸収セル部8を構成する
吸収セル6の個数を8個から3個に減らして乳化処理を
行った。フマル酸強化ロジンと乳化剤水溶液の混合温度
は115℃であった。
【0045】(5)実施例5 ロジン系化合物の種類を上記実施例1〜4のフマル酸強
化ロジンから、前記製造例2のロジンエステルと製造例
3の無水マレイン酸強化ロジンとガムロジンの混合物に
替えるとともに、ロジン系化合物の種類が変わったこと
に伴い、乳化剤の種類も製造例4の乳化剤から製造例5
のスチレン−メタクリル酸系アニオン性高分子乳化剤に
切り替えた。即ち、上記ロジンエステル40部と無水マ
レイン酸強化ロジン40部とガムロジン20部の混合物
を160℃で加熱溶融して高速流噴出部5に供給すると
ともに、上記製造例5の乳化剤26.7部と水73.3部
を撹拌混合して80℃でオリフィス4に圧送した。他の
条件は上記実施例1に準拠した。尚、ロジン系化合物の
混合物と乳化剤水溶液の混合温度は110℃であった。
【0046】(6)比較例1(溶剤系高圧乳化法) 製造例1のフマル酸強化ロジン100部をトルエン18
6部に溶解し、このトルエン溶液に製造例4のスチレン
−メタクリル酸系アニオン性高分子乳化剤7部と水10
4部を予備混合した。得られた予備混合物をゴーリンホ
モジナイザーに吐出圧270kgf/cm2で2回通し
て乳化したのち、減圧蒸留によりトルエンを留去した。
【0047】(7)比較例2(無溶剤系高温高圧乳化法) 製造例1のフマル酸強化ロジン100部と、製造例4の
スチレン−メタクリル酸系アニオン性高分子乳化剤3
6.8部と、水73.2部とをインラインミキサーにより
150℃で予備混合し、得られた予備混合物をゴーリン
ホモジナイザーに2回通して乳化した。乳化圧力は30
0kgf/cm2、乳化温度は180℃であった。
【0048】(8)比較例3 乳化剤水溶液の供給圧力のみ1000kgf/cm2
設定し、他の条件は実施例1に準拠して設定し、乳化処
理した。その結果、フマル酸強化ロジンを乳化すること
ができず、乳化セルより排出された処理液を冷却すると
固化してしまった。
【0049】(9)比較例4 乳化剤水溶液の供給温度のみ20℃に設定し、他の条件
は実施例1に準拠して設定し、乳化処理した。この場
合、フマル酸強化ロジンと乳化剤水溶液の混合温度は8
0℃であった。
【0050】(10)比較例5 フマル酸強化ロジンの溶融温度のみ220℃に設定し
て、他の条件は実施例1と準拠して設定し、乳化処理し
た。フマル酸強化ロジンと乳化剤水溶液の混合温度は1
35℃であった。その結果、上記比較例3と同様に、フ
マル酸強化ロジンを乳化することができず、乳化セルよ
り排出された処理液を冷却すると固化してしまった。
【0051】《ロジン系化合物の水性エマルジョンの性
状試験例》そこで、上記実施例1〜5及び比較例1、
2、4で得られた各ロジン系化合物の水性エマルジョン
に関して、乳化処理当初の固形分含有率、乳化剤使用
量、平均粒子径、粘度、遠心沈降析出樹脂の含有率の夫
々を測定した。但し、遠心沈降析出樹脂の含有率は、各
水性エマルジョンの試料44gを遠心分離器(H−10
3N2;国産遠心器社製)を用いて、4000rpm、
30分間の条件で遠心分離し、沈降部の重量を測定して
固形分に対する重量%で表した。また、上記比較例3と
5は乳化不能につき、当該試験は行わなかった。
【0052】図1はその試験結果を示す。実施例1〜5
の水性エマルジョンでは、固形分濃度は約50重量%以
下であり、平均粒子径は0.27〜0.33μm、遠心沈
降析出樹脂の含有率も0.8〜2.8重量%であり、微細
で均一なエマルジョンの生成が認められた。また、粘度
も低く、乳化剤の使用量も低い水準であった。即ち、ロ
ジン系化合物を複数種に変化させても、実施例1〜5に
あっては、比較例1(溶剤系高圧乳化法)と同等か、それ
以上の乳化性を示すことが判った。しかも、比較例1で
は2パスの乳化処理を要したが、実施例1〜5では1パ
スで微細、且つ安定な水性エマルジョンが得られた。ま
た、平均粒子径や遠心沈降析出樹脂の含有率に示すよう
に、実施例1〜5の水性エマルジョンは比較例2(無溶
剤系高温高圧乳化法)に比べても微細であり、粘度も低
かった。しかも、図1の測定数値は乳化処理当初のもの
であり、比較例2においては、乳化温度が180℃の高
温であるため、24時間を越えるとホモジナイザーのパ
ッキンの劣化を招き、処理液の供給に支障を来して乳化
不能になった。
【0053】製造例1に見るように、フマル酸強化ロジ
ンの軟化点は116℃であり、実施例1〜4では、乳化
セル内の乳化剤水溶液とロジン系化合物との衝突時の混
合温度は100〜115℃であり、当該軟化点を基準と
して−30℃〜+15℃の温度範囲内に設定した。特
に、実施例2の混合温度は100℃であってフマル酸強
化ロジンの軟化点より低いが、均一で微細な水性エマル
ジョンが得られたことに注目すべきである。また、実施
例1と3と4では、吸収セルの嵌挿個数を増減させて、
吸収セル部の長さを変化させたが、水性エマルジョンの
乳化性は同じような水準を示したことから、吸収セル部
はあまり長くする必要はないことが認められた。もっと
も、製造例4の乳化剤は吸着速度が速く、このために吸
収セル部の長さへの影響が明確にならなかったことも考
えられるので、この点も勘案すべきではある。
【0054】一方、比較例4ではフマル酸強化ロジンの
軟化点を基準にした適正な混合温度範囲から低温側に外
れた80℃で衝突させたため、フマル酸強化ロジンが固
化し、図1の平均粒子径や遠心沈降析出樹脂の含有率か
らも判るように、乳化性が悪くなった。逆に、比較例5
ではこの適正な混合温度範囲から高温側に外れた135
℃で衝突させたため、フマル酸強化ロジンと乳化剤の熱
劣化を招き、乳化性が悪くなった。比較例3では、前述
したように、乳化剤水溶液を1000kgf/cm2
低圧で供給したため、乳化不能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜5並びに比較例1、2、4の各ロジ
ン系化合物の水性エマルジョンの固形分、平均粒子径、
粘度、遠心沈降析出樹脂の含有率などの試験結果を示す
図表である。
【図2】ロジン系化合物の水性エマルジョンの製造装置
の概略系統図である。
【図3】乳化セルの縦断面図である。
【図4】乳化セルの高速流噴出部周辺の概略拡大断面視
による乳化プロセスの原理図である。
【図5】乳化セルのうちの吸収セル部の概略分解斜視図
である。
【図6】同吸収セル部の他の実施例を示す要部縦断面図
である。
【符号の説明】
1…乳化セル、2…乳化剤水溶液の供給路、3…ロジン
系化合物の供給路、4…オリフィス、5…高速流噴出
部、6…吸収セル、7…吸収セルの空洞、8…吸収セル
部、8a…吸収セル部の入口、9…エマルジョン排出
部、10…高圧吐出型乳化機、11…エマルジョン回収
路、17…高圧プランジャーポンプ、19…ギヤポン
プ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 橋口 芳春 兵庫県加古川市野口町水足671番地の4 ハリマ化成株式会社内 (72)発明者 小川 啓一 兵庫県加古川市野口町水足671番地の4 ハリマ化成株式会社内 Fターム(参考) 4G035 AB40 AC26 AC37 AC55 AE13 4G065 AA01 AA06 AB01X AB01Y AB02X AB05X AB05Y AB13X AB13Y AB14X AB14Y AB17Y AB22Y AB35X AB35Y BA03 BA07 BB01 BB06 CA02 DA06 DA07 EA01 EA03 EA05 FA01 FA02 GA01 4J038 BA231 MA08 MA10 MA14 4L033 AC15 CA01 CA18

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳化セル(1)と乳化セル(1)への流体供
    給手段(17)・(19)により高圧吐出型乳化機(10)を
    構成し、 上記乳化セル(1)に第一供給路(2)、第二供給路(3)、
    オリフィス(4)、細長い空洞(7)を具備した吸収セル
    (6)を着脱可能に多段状に組み合わせた吸収セル部(8)
    及びエマルジョン排出部(9)を設け、第一供給路(2)の
    出口をオリフィス(4)に連通し、オリフィス(4)の出口
    側の高速流噴出部(5)を吸収セル部(8)の入口(8a)に
    臨ませ、第二供給路(3)の出口を高速流噴出部(5)に連
    通し、吸収セル部(8)の出口をエマルジョン排出部(9)
    に連通して、 乳化剤水溶液を第一供給路(2)から高圧でオリフィス
    (4)に供給し、加熱溶融したロジン系化合物を第二供給
    路(3)から高速流噴出部(5)に供給して、オリフィス
    (4)の出口から噴出させた乳化剤水溶液の高速流をロジ
    ン系化合物に高速流噴出部(5)内で、ロジン系化合物の
    軟化点を基準として−30℃〜+15℃の範囲内の混合
    温度で衝突させるとともに、これらの混合物を吸収セル
    部(8)内に導き入れた後にエマルジョン排出部(9)から
    排出して、 乳化剤水溶液とロジン系化合物を予備混合することなく
    別々に乳化セル(1)内に供給し、高速流噴出部(5)内で
    の両成分の衝突と吸収セル部(8)内の通過によって水性
    エマルジョンを生成することを特徴とするロジン系化合
    物の水性エマルジョンの製造方法。
  2. 【請求項2】 乳化剤水溶液を乳化セル(1)内に200
    0〜4000kgf/cm2の高圧で供給することを特
    徴とする請求項1に記載のロジン系化合物の水性エマル
    ジョンの製造方法。
  3. 【請求項3】 加熱溶融したロジン系化合物を乳化セル
    (1)内に20kgf/cm2以下の圧力で供給すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のロジン系化合物の
    水性エマルジョンの製造方法。
  4. 【請求項4】 吸収セル(1)の空洞(7)の内径を0.5
    〜3mmに設定することを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載のロジン系化合物の水性エマルジョン
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 吸収セル部(8)の長さを5〜300mm
    に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    項に記載のロジン系化合物の水性エマルジョンの製造方
    法。
  6. 【請求項6】 水性エマルジョンの固形分濃度が60%
    以下であり、平均粒子径が0.6μm以下であることを
    特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のロジン
    系化合物の水性エマルジョンの製造方法。
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