JP2007105669A - シアン汚染系の不溶化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 シアン汚染系の酸性化によるシアン化水素ガスの発生がなく、簡単な手段により安全に、かつ高効率でシアンを不溶化して無害化することができるシアン汚染汚染系の不溶化処理方法を提案する。
【解決の手段】 シアンで汚染された土壌や廃棄物または地下帯水層等のシアン汚染系に、鉄粉を添加し、必要によりpH調整剤を添加してpH7〜11でシアンと反応させ、シアンを不溶化して無害化するシアン汚染汚染系の不溶化処理方法。
【選択図】なし
【解決の手段】 シアンで汚染された土壌や廃棄物または地下帯水層等のシアン汚染系に、鉄粉を添加し、必要によりpH調整剤を添加してpH7〜11でシアンと反応させ、シアンを不溶化して無害化するシアン汚染汚染系の不溶化処理方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、シアンで汚染された土壌や廃棄物または地下帯水層等のシアン汚染系を処理してシアンを不溶化するシアン汚染汚染系の不溶化処理方法、特にシアン汚染系に鉄粉を添加してシアンを不溶化するシアン汚染汚染系の不溶化処理方法に関するものである。
シアンで汚染された土壌や廃棄物または地下帯水層等のシアン汚染系では、汚染系からシアンが流出して害を及ぼすので、これを防止するための処理方法として、シアンを不溶化する不溶化処理方法がある。このような不溶化処理方法として、汚染系に鉄塩を加えてシアンを不溶性の塩として不溶化する方法があるが、薬剤を添加した際に部分的に酸性化し、シアン化水素が発生するおそれがある。
特許文献1(特開2001−121132号公報)では、シアン化合物および可溶性重金属を含む土壌または産業廃棄物にポリ塩化アルミニウム、硫酸鉄(II)および水を添加し、さらにカルシウム化合物を添加することによって適切な範囲のpHに調整処理する方法が提案されている。この方法は、シアン化合物とともに可溶性重金属を不溶化するために、ポリ塩化アルミニウムとともに硫酸鉄(II)を添加し、さらにカルシウム化合物を添加して不溶化に適切な範囲のpHに調整処理する方法である。適切な範囲のpHとしては、不溶化対象成分の種類と不溶化目標値の設定により異なるが、一例としてpHは5.5以上9以下の例が挙げられている。
特許文献2(特開2001−225053号公報)には、主として重金属で汚染された土壌が対象であるが、汚染土壌に粘性土、陽イオン交換体及びカルシウム化合物を混合して土壌を改質する際、汚染土壌に、二価又は三価の鉄塩及び又はアルミニウム塩を混合して土壌を改質する方法が提案されている。
このような従来の鉄塩を加える不溶化処理方法でシアン汚染系を処理すると、鉄塩の水溶液が酸性であるため、部分的に有毒なシアン化水素のガスが発生するおそれがある。アルカリ剤を鉄塩と併用した場合でも、鉄塩の水溶液が汚染系と接触する部分は一時的にpHが低下し、酸性を示すためシアン化水素のガスが発生するおそれがある。混合を十分に行いながら,鉄塩を添加することによりガスの発生を抑制することもできるが、鉄塩の添加量が多い場合にはシアン化水素の生成を防止はできない。
特許文献3(特開2000−157961号公報)には、別の処理方法として、油性物質、シアン化合物、水銀等加熱により揮散し易い物質と共に、ヒ素または六価クロームと、鉛、カドミウム、ニッケル等酸性状態で溶出し易い金属により複合汚染された土壌を、300−600℃で加熱処理した後、これに鉄粉を添加するか、または複合汚染土壌に鉄粉を添加した後、300−600℃で加熱処理する方法が提案されている。この方法では、シアン化合物は揮散し易い物質として、加熱により除去され、鉄粉は他の汚染物質の処理に利用される。またこの方法では、加熱処理を行うため、土壌や地下帯水層等の広域のシアン汚染系の処理方法としては不向きである。
特開2001−121132号公報
特開2001−225053号公報
特開2000−157961号公報
本発明の課題は、シアン汚染系の酸性化によるシアン化水素ガスの発生がなく、簡単な手段により安全に、かつ高効率でシアンを不溶化して無害化することができるシアン汚染汚染系の不溶化処理方法を提案することである。
本発明は、次のシアン汚染汚染系の不溶化処理方法である。
(1) シアンで汚染された汚染系に鉄粉を添加し、pH7〜11でシアンと反応させて、シアンを不溶化することを特徴とするシアン汚染汚染系の不溶化処理方法。
(2) 鉄粉を粉末状またはスラリー状で添加する上記(1)記載の方法。
(3)鉄粉添加時にpH調整剤として、重炭酸塩または炭酸塩を添加してpH調整する上記(1)または(2)記載の方法。
(4) pH調整剤を粉末状または液体状で添加する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) pH調整剤を、鉄粉添加前に単独で添加し、または鉄粉の粉末と混合して添加し、または鉄粉のスラリーに溶解して添加する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(1) シアンで汚染された汚染系に鉄粉を添加し、pH7〜11でシアンと反応させて、シアンを不溶化することを特徴とするシアン汚染汚染系の不溶化処理方法。
(2) 鉄粉を粉末状またはスラリー状で添加する上記(1)記載の方法。
(3)鉄粉添加時にpH調整剤として、重炭酸塩または炭酸塩を添加してpH調整する上記(1)または(2)記載の方法。
(4) pH調整剤を粉末状または液体状で添加する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) pH調整剤を、鉄粉添加前に単独で添加し、または鉄粉の粉末と混合して添加し、または鉄粉のスラリーに溶解して添加する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
本発明において、処理の対象となるシアン汚染系は、シアンで汚染された土壌や廃棄物または地下帯水層等の汚染系である。土壌には、土地として堆積した状態のものも、あるいは土地から分離した状態のものも含まれる。廃棄物としては、固形廃棄物が処理に適しているが、このほかにも泥状、スラリー状、液状等の廃棄物が含まれる。地下帯水層には、地下水層、ならびにこれに連なる岩盤、地層等を含まれる。
本発明において不溶化処理の対象となるシアンとしては、遊離シアン、シアン化水素の金属塩、金属シアノ錯体等がある。シアン化水素の金属塩としては、NaCN、KCN、Ba(CN)2等があり、金属シアノ錯体としては、Na3[Cu(I)(CN)4]、Na2[Zn(II)(CN)4]、Na2[Cd(II)(CN)4]、Na3[Fe(III)(CN)6]、Na4[Fe(II)(CN)6]等がある。これらは、土壌や廃棄物または地下帯水層等の汚染系に、一部または全部が溶解した状態で含まれる。これらのシアンは、水に溶解した状態では遊離シアンまたはシアノ錯イオンとして存在するが、水に溶解しない不溶性のシアンから一部または全部が溶解または遊離して、上記のシアン化合物が汚染系に含まれる場合も本発明の処理対象となる。
本発明で用いられる鉄粉は、金属鉄の粉末であるが、一部酸化物、水酸化物等の不純物が含まれていてもよい。本発明で用いられる鉄粉としては、粒径0.005mm〜0.100mmの微細鉄粉が好ましい。このような鉄粉としては、一般に入手可能な鉄粉がそのまま使用できるが、その例として、還元粉、噴霧粉、砂鉄、鉄の精練工程や金属加工工程で得られる飛散屑、バグフィルターダスト等の副産物などが挙げられる。これらの鉄粉は、入手した状態でそのまま使用できるが、篩分、洗浄等の処理を行ってもよい。
本発明では、シアンで汚染された汚染系に鉄粉を添加してシアンと反応させ、シアンを不溶化するが、このとき鉄粉を粉末状またはスラリー状で添加するのが好ましい。分離された土壌や廃棄物に鉄粉を添加する場合などでは、粉末状で添加できるが、他の場合あるいは粉末状で添加できる場合でも、スラリー状で添加することができる。鉄粉の添加量は、汚染系に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%とすることができる。スラリー状で添加する場合のスラリー中の鉄粉の濃度は0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%とすることができる。
鉄粉を添加したシアン汚染系は、pH7〜11、好ましくはpH8〜10で処理して鉄粉とシアンを反応させ、シアンを不溶化する。シアン汚染系に鉄粉を添加した状態で上記pH範囲になる場合は、別にpH調整しなくてもよいが、鉄粉を添加した状態で上記pH範囲から外れる場合、あるいは上記pH範囲になる場合でもさらに適正なpHに調整する場合には、pH調整剤を添加して上記pHに調整することができる。上記シアン汚染系のpHは、汚染系に鉄粉およびpH調整剤を添加したときのpHであるが、溶出試験など汚染系と接触した水のpHとして測定することができる。
pH調整剤としては、鉄粉を添加したシアン汚染系のpHに応じて、一般的な酸、アルカリを用いることができるが、重炭酸塩または炭酸塩を添加するのが好ましい。重炭酸塩または炭酸塩としては、重炭酸ナトリウムを単独で用いる場合や、炭酸ナトリウムを単独で用いる場合、またはこれらを混合して用い任意のpHに調製する場合などがあり、さらにそれらのカリウム塩も使用できる。pH調整剤を粉末状または液体状で添加することができる。pH調整剤を液体状で添加する場合におけるpH調整剤の濃度は0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%とすることができる。
pH調整剤はシアン汚染系に対し、鉄粉添加前に単独で添加し、または鉄粉の粉末と混合して添加し、または鉄粉のスラリーに溶解して添加することができ、これらを組み合わせて添加することもできる。いずれの場合も、鉄粉およびpH調整剤の添加後の汚染系pHが上記pH範囲になるようにpH調整剤の添加量を決める。pH調整剤添加量は、汚染系のpHを測定して決定することもできるが、予め実験して決定することもできる。
鉄粉およびpH調整剤は、汚染系の土壌や廃棄物等に均一に混合されるように添加することが望ましい。この場合、攪拌により均一に混合されるが、分離した土壌や廃棄物等の場合は、鉄粉およびpH調整剤とともに混合攪拌装置に導入して攪拌し、混合することができる。混合攪拌した土壌や廃棄物等は、処理装置に堆積し、あるいは汚染系に戻して、シアンの不溶化反応を進行させる。分離されない土壌としての堆積した状態の土地、あるいは地下水層、ならびにこれに連なる岩盤、地層等の地下帯水層などの汚染系の場合には、鉄粉およびpH調整剤をスラリー状として注入し、浸透により、あるいは強制攪拌により混合してシアンを不溶化することができる。
鉄粉を汚染系に添加した場合、シアンの不溶化は主に鉄微粒子表面より溶出した鉄(Fe2+,Fe3+)とシアンの反応により不溶化されるものと推測される。このとき汚染系はアルカリ性に保たれ、汚染系の局部的な酸性化によるシアン化水素ガスの発生はなく、効率よくシアンが不溶化し、シアンの溶出もなくなる。シアンの不溶化反応は、鉄粉およびpH調整剤の添加混合後、0.1〜1時間で起こり、0.2〜0.5時間で実質的にシアンを不溶化することができるが、その間、ならびにその後も静置または攪拌状態を維持して反応を進行させるかことができる。
鉄粉の添加により不溶性塩を生成する汚染系におけるシアン不溶化の代表的な反応式を以下に示す。
12CN−+2Fe3+ + 3Fe2+→ Fe(II)3[Fe(III)(CN)6]2・・・・・(1)
3[Fe(II)(CN)6]4− + 4Fe3+→ Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3・・・・・(2)
2[Fe(III)(CN)6]3− + 3Fe2+→ Fe(II)3[Fe(III)(CN)6]2・・・・・(3)
12CN−+2Fe3+ + 3Fe2+→ Fe(II)3[Fe(III)(CN)6]2・・・・・(1)
3[Fe(II)(CN)6]4− + 4Fe3+→ Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3・・・・・(2)
2[Fe(III)(CN)6]3− + 3Fe2+→ Fe(II)3[Fe(III)(CN)6]2・・・・・(3)
シアンの不溶化反応が終了した後は、分離した土壌や廃棄物等を処理装置に導入して処理した場合は汚染系に戻し、あるいは廃棄場所に廃棄することができる。分離されない土壌としての堆積した状態の土地、あるいは地下水層、ならびにこれに連なる岩盤、地層等の地下帯水層などの汚染系で処理した場合には、そのまま放置する。不溶化物は酸性雨等によりシアンが溶出する場合があるが、このような場合には再度処理を行うことができる。また溶出を防止するために、固化等の他の処理を組み合わせて行うこともできる。
本発明によれば、シアンで汚染された汚染系に鉄粉を添加し、pH7〜11でシアンと反応させてシアンを不溶化するようにしたので、シアン汚染系の酸性化によるシアン化水素ガスの発生がなく、簡単な手段により安全に、かつ高効率でシアンを不溶化して無害化することができるシアン汚染汚染系の不溶化処理方法が得られる。
以下,本発明の実施例について説明する。
[比較例1]:
密閉容器内にシアンで汚染された土壌(環境庁告示第46号(平成3年)によるシアンの溶出量:5mg/L、環境省告示第19号による遊離シアン含有量:70mg/kg土壌)を1kg入れた。次いで密閉容器内の土壌に、乾燥土壌重量に対して8wt%の硫酸第一鉄を10重量%水溶液として注入し、混合した。1時間静置した後に、密閉容器内の気相中のシアンガス濃度を検知管にて測定した。測定の結果、密閉容器内のシアンガス濃度は6ppmであった。
密閉容器内にシアンで汚染された土壌(環境庁告示第46号(平成3年)によるシアンの溶出量:5mg/L、環境省告示第19号による遊離シアン含有量:70mg/kg土壌)を1kg入れた。次いで密閉容器内の土壌に、乾燥土壌重量に対して8wt%の硫酸第一鉄を10重量%水溶液として注入し、混合した。1時間静置した後に、密閉容器内の気相中のシアンガス濃度を検知管にて測定した。測定の結果、密閉容器内のシアンガス濃度は6ppmであった。
[実施例1]:
比較例と同様に、土壌を密閉容器内に入れた。次いで、乾燥土壌重量に対して3重量%の微細鉄粉をスラリー状(固形分濃度25重量%)とし、さらに重炭酸ナトリウムをスラリー1L当たり100g溶解させ、土壌に注入して混合し、pH7.5とした。1時間静置した後に、密閉容器内の気相中のシアンガス濃度を検知管にて測定した。測定の結果、密閉容器内のシアンガスは検出されなかった。次いで、土壌を大気開放下に1晩静置して養生した。さらに風乾して環境庁告示第46号(平成3年)の溶出試験を行った。シアンの溶出量は0.1mg/L未満で、「不検出」と判定された。
比較例と同様に、土壌を密閉容器内に入れた。次いで、乾燥土壌重量に対して3重量%の微細鉄粉をスラリー状(固形分濃度25重量%)とし、さらに重炭酸ナトリウムをスラリー1L当たり100g溶解させ、土壌に注入して混合し、pH7.5とした。1時間静置した後に、密閉容器内の気相中のシアンガス濃度を検知管にて測定した。測定の結果、密閉容器内のシアンガスは検出されなかった。次いで、土壌を大気開放下に1晩静置して養生した。さらに風乾して環境庁告示第46号(平成3年)の溶出試験を行った。シアンの溶出量は0.1mg/L未満で、「不検出」と判定された。
Claims (5)
- シアンで汚染された汚染系に鉄粉を添加し、pH7〜11でシアンと反応させて、シアンを不溶化することを特徴とするシアン汚染汚染系の不溶化処理方法。
- 鉄粉を粉末状またはスラリー状で添加する請求項1記載の方法。
- 鉄粉添加時にpH調整剤として、重炭酸塩または炭酸塩を添加してpH調整する請求項1または2記載の方法。
- pH調整剤を粉末状または液体状で添加する請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- pH調整剤を、鉄粉添加前に単独で添加し、または鉄粉の粉末と混合して添加し、または鉄粉のスラリーに溶解して添加する請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
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