〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態によるコモンモードチョークコイル及びその製造方法について図1乃至図35を用いて説明する。まず、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1について図1乃至図3を用いて説明する。図1は、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1の内部構造を示す平面図である。図2は、図1のαの方向から見たコモンモードチョークコイル1の内部構造を示す正面図である。図2では、理解を容易にするため、実際には同一平面内に形成されていないコイル底部31とコイル上部35とを同一平面内に示している。また、図3は図1のβの方向から見たコモンモードチョークコイル1の内部構造を示す側面図である。図1及び図3では、隠れ線は破線で表している。
図1乃至図3に示すように、コモンモードチョークコイル1は、単結晶シリコンで形成されたシリコン基板51上に絶縁層60、第1ヘリカルコイル部11、第2ヘリカルコイル部12及び閉磁路141を薄膜形成技術で形成した全体として直方体状の外形を有している。
図1に示すように、閉磁路141は、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て細長い枠状の形状を有し、絶縁層60内に形成されている。閉磁路141は、直方体形状のコア41と、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コの字状に形成された磁性部材部42とを有している。
第1及び第2ヘリカルコイル部11、12は、それぞれヘリカル状(らせん状)にコア41に巻き回されて絶縁層60内に形成されている。第1及び第2ヘリカルコイル部11、12は、らせん軸がシリコン基板51の基板面に対してほぼ平行になるように形成されている。また、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12のらせん軸はほぼ一致している。
第1ヘリカルコイル部11は、例えば直方体状にそれぞれ形成されたコイル底部31、コイル側部33a、コイル上部35及びコイル側部33bにより構成される1巻きのコイルをn巻き(図1では2巻き)有している。同様に、第2ヘリカルコイル部12は、例えば直方状にそれぞれ形成されたコイル底部32、コイル側部34a、コイル上部36及びコイル側部34bにより構成される1巻きのコイルをn巻き有している。コイル底部31とコイル底部32とは、コア41の下層(シリコン基板51側)で交互に等間隔に配置され、コイル上部35とコイル上部36とはコア41の上層で交互に等間隔に配置されている。
以下本願では、2つのヘリカルコイル部のコイル上部同士及びコイル底部同士がそれぞれ交互に配置され、かつ各ヘリカルコイル部のらせん軸がほぼ一致するようにコアに巻き回された構造を2重らせん構造と呼ぶことにする。
第1ヘリカルコイル部11の1巻きと、当該1巻きのコイルに隣接する第2ヘリカルコイル部12の1巻きとの間隔aは、例えば10〜50μmに形成されている。第1及び第2ヘリカルコイル部11、12は、コイルの抵抗値を低くするため、例えば銅(Cu)で形成されている。図2に示すように、第1ヘリカルコイル部11の1巻きのコイルは、らせん軸方向に見て、矩形状に形成されている。シリコン基板51の基板面に平行な方向の第1ヘリカルコイル部11の内径fは、例えば5〜60μmに形成されており、基板面に垂直な方向の内径eは例えば5〜30μmに形成されている。同様に、第2ヘリカルコイル部12の1巻きのコイルは矩形状に形成されている。シリコン基板51の基板面に平行な方向の第2ヘリカルコイル部12の内径fは、例えば5〜60μmに形成されており、基板面に垂直な方向の内径eは例えば5〜30μmに形成されている。電流が流れる方向に直交する第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の断面は、ほぼ一定の大きさに形成されている。
図1及び図2に示すように、コイル底部31は、長辺の長さcが例えば20〜300μmで厚さdが例えば2〜10μmの複数の細長状に形成されている。コイル底部31は、下部絶縁層52上に等間隔に並列して配置されている。コイル底部31はシリコン基板51の短辺に対して所定の角度に傾いて並列して配置されている。
コイル底部31の長辺方向の一端部(図1及び図2の図中、左側の端部)上には第1ヘリカルコイル部11の内径eに等しい高さのコイル側部33aが形成され、他端部(図1及び図2の図中、右側の端部)上にはコイル側部33aとほぼ同じ高さのコイル側部33bが形成されている。
コイル側部33a、33b上には、例えばコイル底部31とほぼ同一形状(長辺の長さc=20〜300μm、厚さg=2〜10μm)の複数の細長状のコイル上部35が等間隔に並列して配置されている。図1に示すように、コイル上部35の一端部はコイル側部33aに電気的に接続され、他端部は当該コイル側部33a直下のコイル底部31とコイル底部32を挟んで隣接するコイル底部31の他端部上に形成されたコイル側部33bに電気的に接続されている。
コイル底部31の間にはコイル底部32がコイル底部31にほぼ並列して配置されている。コイル底部32は、コイル底部31と同一の材料、形状及び形成方法で同時に形成されている。コイル底部32の長辺方向の一端部(図1及び図2の図中、左側の端部)上にはコイル側部34aが形成され、他端部(図1及び図2の図中、右側の端部)上にはコイル側部34bが形成されている。コイル側部34a、34bは、コイル側部33a、33bと同一の材料、形状及び形成方法で同時に形成されている。コイル側部34aは、コイル側部33aと交互に一直線上に等間隔に配置され、コイル側部34bは、コイル側部33bと交互に一直線上に等間隔に配置されている。
コイル側部34a、34b上には、複数の細長状のコイル上部36が等間隔に並列して配置されている。コイル上部36はコイル上部35の間にコイル上部35とほぼ並列して配置されている。コイル上部36は、コイル上部35と同一の材料、形状及び形成方法で同時に形成されている。図1に示すように、コイル上部36の一端部はコイル側部34aと電気的に接続され、他端部は当該コイル側部34a直下のコイル底部32とコイル底部31を挟んで隣接するコイル底部32の他端部上に形成されたコイル側部34bと電気的に接続されている。また、図1に示すように、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コイル上部35はコイル底部32と所定の角度で交差し、コイル上部36はコイル底部31と所定の角度で交差している。
図1乃至図3に示すように、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の内周側には、全長bが例えば100〜300μmで厚さhが例えば5〜10μmの直方体状のコア41が貫通して配置されている。コア41は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12のらせん軸にほぼ一致して延伸して形成されている。また、コア41は、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コイル底部31、32及びコイル上部35、36と所定の角度をなして交差している。コア41は、例えばNiFe(パーマロイ)などの高透磁率を有する材料で形成されている。コア41が高透磁率を有する材料で形成されているため、コモンモードチョークコイル1のインダクタンス値が大きくなり、インピーダンス特性等の電気的特性の向上を図ることができる。
図1及び図2に示すように、コア41の両端部には、コア41と同一の厚さhを有し同一の材料で形成された磁性部材部42が接続されている。磁性部材部42は、コア41と協働して環状の閉磁路141を形成している。閉磁路141はコイル底部31の形成面にほぼ平行に形成されている。閉磁路141の外周側にはコイル側部33a、34aが配置され、内周側にはコイル側部33b、34bが配置されている。閉磁路141は高透磁率を有する材料で環状に形成されているので、磁束の漏洩を防止することができる。
図2に示すように、絶縁層60は、シリコン基板51上に絶縁層(下部絶縁層)52、絶縁層54、絶縁層56及び絶縁層58が順次積層されて形成されている。絶縁層52、54、56、58は、例えばアルミナ(Al2O3)でそれぞれ形成されている。絶縁層52上にはコイル底部31、32が形成されている。絶縁層54上にはコア41及び磁性部材部42が形成されている。絶縁層56上にはコイル上部35、36が形成されている。このように、コモンモードチョークコイル1は、コア41やコイル底部31等と各絶縁層52〜58とが積層された積層構造を有している。
図1に示すように、第1ヘリカルコイル部11の両端部は、直方体状の外部電極接続部61にそれぞれ電気的に接続されている。同様に、第2ヘリカルコイル部12の両端部は、外部電極接続部62にそれぞれ電気的に接続されている。外部電極接続部61、62の一部は、絶縁層60の一対の対向外表面にそれぞれ露出して形成されている。図示は省略するが外部電極接続部61、62の露出部を覆ってコモンモードチョークコイル1の側面には外部電極が形成されている。コモンモードチョークコイル1は当該外部電極を用いてプリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)に半田付けされて実装される。
以上説明したように、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12のらせん軸がシリコン基板51の基板面に対してほぼ平行に形成されているので、コイルの巻き数が増えても厚さはほとんど変わらない。さらに、閉磁路141はシリコン基板51の基板面に対してほぼ平行な平面内に形成されている。従って、コモンモードチョークコイル1は、コイルの巻き数が多くても、シリコン基板51の基板面に対してコイルのらせん軸が垂直に向くコモンモードチョークコイルと比較して低背化することができる。また、コモンモードチョークコイル1はヘリカルコイルを有しているので、コイルの巻き数が多くても、同一平面内にスパイラル状のコイルを有するコモンモードチョークコイルと比較して小型化できる。
また、コモンモードチョークコイル1は、従来のコモンモードチョークコイルと異なり、対向配置された2枚の磁性基板を有していないので、低背化を図ることができる。
次に、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1の製造方法について図4乃至図32を用いて説明する。コモンモードチョークコイル1はウエハ上に同時に多数形成されるが、図4乃至図32は、1個のコモンモードチョークコイル1の素子形成領域を示している。図4(a)乃至図32(a)は図4(b)乃至図32(b)のA−A線で切断した断面図であり、図4(b)乃至図32(b)は、コモンモードチョークコイル1の製造方法を示す平面図である。
まず、図4(a)及び図4(b)に示すように、単結晶シリコンで形成された板厚0.8mm程度のシリコン基板51上に、アルミナ(Al2O3)を例えばスパッタリング法により成膜して厚さ3μm程度の絶縁層(下部絶縁層)52を形成する。表面が十分に平滑な絶縁性基板を用いる場合には、絶縁層52の形成はしなくてもよい。また、絶縁層52の形成材料として有機絶縁物を用いてもよいが、アルミナは有機絶縁物に比べてより平坦な面を形成し易いので好適である。後程説明する各絶縁層は、絶縁層52と同様の方法で形成される。
次に、図5(a)に示すように絶縁層52上に、膜厚10nm程度のチタン(Ti)の電極膜71を例えばスパッタリング法により形成する。電極膜71は、後程説明するCuの電極膜72の密着性を向上させるためのバッファ膜として用いられる。バッファ膜の形成材料は、例えばクロム(Cr)などの他の金属材料でもよい。次に、図5(a)及び図5(b)に示すように、電極膜71上に膜厚100nm程度のCuの電極膜(第1電極膜)72を例えばスパッタリング法により形成する。電極膜72は、後程説明する導電層81、82のパターンめっき用の電極膜として用いられる。後程説明する各電極膜は、電極膜71、72と同様の方法で形成される。
次に、電極膜72上にレジストを例えばスピンコート法により塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第1レジスト層)151を形成する。後程説明する各レジスト層はレジスト層151と同様の方法で形成される。次に、図6(a)及び図6(b)に示すように、レジスト層151をパターニングして、電極膜72を露出させる開口61a、62a及び開口(第1開口)81a、82aをレジスト層151に形成する。開口61a、62aは素子形成領域の外周囲の長辺の内側近傍で各短辺に沿って並んで形成される。複数の細長状の開口81a、82aは、交互にほぼ等間隔に並列して形成される。開口81a、82aは素子形成領域の短辺に対して所定の角度で形成される。当該短辺側に配置される2つの開口482aの一端部は、開口62aに繋がれて形成される。
次に、図7(a)及び図7(b)に示すように、開口61a、81a内の電極膜72上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第1導電層)81を形成し、開口62a、82a内の電極膜72上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第1導電層)82を形成する。導電層81、82は例えばパターンめっき法により同時に形成され、下層の電極膜72に電気的にそれぞれ接続される。導電層81、82の形成材料にCuを用いるのは、最終的に形成される第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の抵抗値を低くするためである。また、後程説明する各Cuの導電層の形成及びパターニングには、導電層81、82と同様の方法が用いられる。次に、図8(a)及び図8(b)に示すように、レジスト層151をエッチングにより除去する。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ15〜20μmのレジスト層(第2レジスト層)153を形成する。次に、図9(a)及び図9(b)に示すように、レジスト層153をパターニングして、開口81a、82a内に形成された導電層81、82の両端部を露出させる複数の開口(第2開口)83a、84aと、開口61a、62a内に形成された導電層81、82を露出する開口63a、64aとをレジスト層153に形成する。図9(b)に示すように、複数の導電層81、82の一端部上にそれぞれ形成された複数の開口83a、84aは一直線上に交互に等間隔に配置され、他端部上にそれぞれ形成された複数の開口83a、84aは一直線上に交互に等間隔に配置される。次に、図10(a)及び図10(b)に示すように、開口63a、83a内の導電層81上に厚さ3μm程度のCuの導電層(第2導電層)83を形成し、開口64a、84a内の導電層82上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第2導電層)84を形成する。導電層83、84は、パターンめっき法により同時に形成される。これにより、導電層83は下層の導電層81と電気的に接続され、導電層84は下層の導電層82と電気的に接続される。
次に、図11(a)及び図11(b)に示すように、レジスト層153をエッチングにより除去する。次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、レジスト層153の除去により露出した電極膜72と、当該電極膜72の下層の電極膜71とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜71、72を除去する際に、導電層81〜84の表面も電極膜71、72の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、導電層81〜84は電極膜71、72に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。また、後程説明する各電極膜の除去は、電極膜71、72の除去と同様の方法が用いられる。以上の工程によって、電極膜71、72及び導電層81が積層された積層構造のコイル底部31が形成され、電極膜71、72及び導電層82が積層された積層構造のコイル底部32が形成される。コイル底部31、32はシリコン基板51上に交互に並列して形成される。
次に、図13(a)及び図13(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10〜13μmの絶縁層(第1絶縁層)54を形成する。次に、図14(a)及び図14(b)に示すように、CMP(化学的機械的研磨)法により、導電層83、84上部が露出するまで絶縁層54表面を研磨して平坦面(CMP面)54aを形成する。導電層83、84が露出したか否かの確認は目視により行う。
次に、図15(a)及び図15(b)に示すように絶縁層54の平坦面54a上に膜厚10nm程度のTiの電極膜91をスパッタリング法により形成し、電極膜91上に膜厚100nm程度のNiFe(パーマロイ)の電極膜(第1中間電極膜)92をスパッタリング法により形成する。電極膜91は電極膜71と同様に、電極膜92の密着性を良くするためのバッファ膜として形成される。また、電極膜92は、後程説明する磁性部材層101のパターンめっき用の電極膜として用いられる。
次に、電極膜92上にレジストを塗布して厚さ8〜13μmのレジスト層(第1中間レジスト層)155を形成する。次に、図16(a)及び図16(b)に示すように、レジスト層155をパターニングして、電極膜92を露出させる開口(第1中間開口)101aをレジスト層155に形成する。開口101aは素子形成領域をその法線方向(シリコン基板51の基板面の法線方向)に見て、長方形の枠状に形成され、長方形状に開口された開口41aと、コの字状に開口された開口42aとを有している。開口101aは、図16(b)において、左側の導電層83、84が外周側に配置され、右側の導電層83、84が内周側に配置されるように形成される。また、開口41aは素子形成領域をその法線方向に見て、コイル底部31、32の両端部上の導電層83、84の間でコイル底部31、32と所定の角度で交差して配置される。
次に、図17(a)及び図17(b)に示すように、開口101a内の電極膜92上に厚さ5〜10μmのNiFeの磁性部材層(第1磁性部材層)101を例えばパターンめっき法により形成する。なお、磁性部材層101の形成材料は、NiFe以外の高透磁率を有する材料でもよい。次に、図18(a)及び図18(b)に示すように、レジスト層155をエッチングにより除去する。次に、図19(a)及び図19(b)に示すように、レジスト層155の除去により露出した電極膜92と、当該電極膜92の下層の電極膜91とをドライエッチングにより除去する。電極膜91、92を除去する際に、磁性部材層101の表面も電極膜91、92の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層101は電極膜91、92に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。以上の工程により、電極膜91、92及び磁性部材層101が積層された積層構造のコア41が開口41aに形成され、コア41と同一の積層構造を有し、コア41と協働して閉磁路141を形成する磁性部材部42が開口42aに形成される。
次に、図20(a)及び図20(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜73をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜73上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2中間電極膜)74をスパッタリング法により形成する。電極膜73、74は下層の導電層83、84と電気的に接続される。
次に、電極膜74上にレジストを塗布して厚さ15〜20μmのレジスト層(第2中間レジスト層)157を形成する。次に、図21(a)及び図21(b)に示すように、レジスト層157をパターニングして、開口83a、84a内に形成された導電層83、84上の電極膜74を露出させる開口(第2中間開口)85a、86aと、開口63a、64a内に形成された導電層83、84上の電極膜74を露出させる開口65a、66aとをレジスト層157に形成する。
次に、図22(a)及び図22(b)に示すように、開口65a、85a内の電極膜74上に厚さ7〜15μmのCuの導電層(第1中間導電層)85を形成し、開口66a、86a内の電極膜74上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第1中間導電層)86を形成する。導電層85、86はパターンめっき法により形成され、下層の電極膜74に電気的にそれぞれ接続される。次に、図23(a)及び図23(b)に示すように、レジスト層157をエッチングにより除去する。次に、図24(a)及び図24(b)に示すように、レジスト層157の除去により露出した電極膜74と、当該電極膜74の下層の電極膜73とをドライエッチングにより除去する。以上の工程によって、導電層83、電極膜73、74及び導電層85が積層された積層構造のコイル側部33a、33bと、導電層84、電極膜73、74及び導電層86が積層された積層構造のコイル側部34a、34bとが形成される。図24(b)において、コイル側部33a、34aは、左側に一直線上に交互に等間隔に配置され、コイル側部33b、34bは、右側に一直線上に交互に等間隔に配置される。
次に、図25(a)及び図25(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ7〜15μmの絶縁層(第2絶縁層)56を形成する。次に、図26(a)及び図26(b)に示すように、CMP法により、導電層85、86が露出するまで絶縁層56を研磨して平坦面56aを形成する。その際、コア41及び磁性部材部42が露出するまで絶縁層56を研磨しないようにする。
次に、図27(a)及び図27(b)に示すように、絶縁層56の平坦面56a上に厚さ10nm程度のTiの電極膜75をスパッタリング法により形成し、電極膜75上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2電極膜)76をスパッタリング法により形成する。電極膜75、76は、電極膜73、74及び導電層85を介して導電層83と電気的に接続され、電極膜73、74及び導電層86を介して導電層84と電気的に接続される。
次に、電極膜76上にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第3レジスト層)159を形成する。次に、図28(a)及び図28(b)に示すように、レジスト層159をパターニングして、電極膜76を細長状に露出する複数の開口(第3開口)87a、88aと、開口65a、66a内に形成された導電層85、86上の電極膜76を露出する開口67a、68aとを形成する。これにより、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部33a上の電極膜76が一端部に露出し、当該コイル側部33a直下のコイル底部31とコイル底部32を挟んで隣接するコイル底部31上のコイル側部33b上の電極膜76が他端部に露出する開口87aと、コイル側部34a上の電極膜76が一端部に露出し、当該コイル側部34a直下のコイル底部32とコイル底部31を挟んで隣接するコイル底部32上のコイル側部34b上の電極膜76が他端部に露出する開口88aとがほぼ等間隔に交互に並列して形成される。また、開口87aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル底部32に交差してコア41を挟んで対向して形成される。一方、開口88aは同方向に見て、コイル底部31に交差してコア41を挟んで対向して形成される。また、素子形成領域の短辺側に配置される開口87aの一端部は開口67aとそれぞれ接続して形成される。
次に、図29(a)及び図29(b)に示すように、開口67a、87a内の電極膜76上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第3導電層)87を形成し、開口68a、88a内の電極膜76上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第3導電層)88を形成する。導電層87、88は、パターンめっき法により同時に形成され、下層の電極膜76に電気的にそれぞれ接続される。次に、図30(a)及び図30(b)に示すように、レジスト層159を除去する。次に、図31(a)及び図31(b)に示すようにレジスト層159の除去により露出した電極膜76と、当該電極膜76の下層の電極膜75とを除去する。これにより、電極膜75、76及び導電層87が積層された積層構造のコイル上部35が形成され、電極膜75、76及び導電層88が積層された積層構造のコイル上部36が形成される。
以上の工程によって、コイル底部31、コイル側部33a、コイル上部35及びコイル側部33bで構成される1巻きのコイルをn巻き有する第1ヘリカルコイル部11が形成され、同時にコイル底部32、コイル側部34a、コイル上部36、及びコイル側部34bで構成される1巻きのコイルをn巻き有する第2ヘリカルコイル部12が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部11、12は2重らせん構造に形成される。また、導電層81、83、85、87の積層構造の外部電極接続部61が開口61a、63a、65a、67aに同時に形成され、導電層82、84、86、88の積層構造の外部電極接続部62が開口62a、64a、66a、68aに同時に形成される。
コイル上部35、36は交互に並列して配置される。また、コイル上部35は、素子形成領域をその法線方向に見て、コア41を挟んでコイル底部32と交差し、コイル上部36はコア41を挟んでコイル底部31と交差して配置される。
次に、図32(a)及び図32(b)に示すように、コイル上部35、36の保護膜として、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10μm程度の絶縁層58を形成する。絶縁層58の形成材料として、アルミナ以外の絶縁性材料を用いてもよい。以上の工程により、絶縁層52、54、56、58が積層された積層構造の絶縁層60が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部11、12及び閉磁路141は絶縁層60に内包される。
次に、シリコン基板51を裏面から削り所望の板厚に揃える、または完全に除去する。次に、所定の切断線に沿ってウエハを切断し、ウエハ上に形成された複数のコモンモードチョークコイル1を素子形成領域毎にチップ状に分離する。外部電極接続部61、62の一部は、絶縁層60の外表面に露出する。次に、図示は省略するが、外部電極接続部61、62に電気的に接続される外部電極を形成する。次に、角部の面取りを行い、コモンモードチョークコイル1が完成する。
以上説明したように、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1の製造方法によれば、基板面に対してほぼ平行ならせん軸を有する第1及び第2ヘリカルコイル部11、12と、閉磁路141を形成するコア41及び磁性部材部42とは、薄膜形成技術を用いて一連の製造工程で形成できる。従って、製造工程数が減少し、コモンモードチョークコイル1の低コスト化を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、閉磁路141は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12、外部電極接続部61、62及び絶縁層60を形成する薄膜形成工程で同時に形成できるので、絶縁層上に形成された接着層を用いて磁性基板を接着して接合する基板接合工程が不要である。従って、従来のコモンモードチョークコイルと比較して、コモンモードチョークコイル1の製造工程を簡略化できる。これにより、製造コストを低減できるので、コモンモードチョークコイル1の低コスト化を図ることができる。
本実施の形態の変形例によるコモンモードチョークコイルについて図33乃至図35を用いて説明する。変形例1〜8によるコモンモードチョークコイル1’〜8は、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1と同様の製造方法によって形成され、全体として直方体形状の外形を有している。また、コモンモードチョークコイル1’〜8は、シリコン基板51の基板面(素子形成面)にほぼ平行ならせん軸を備えた第1及び第2ヘリカルコイル部を有している。さらに、第1及び第2ヘリカルコイル部の内周側には閉磁路の一部を形成するコアが貫通して配置されている。閉磁路は素子形成面に平行な面内に形成されている。以下の説明において、第1の実施の形態と同一の機能、作用を奏する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
まず、本実施の形態の変形例1によるコモンモードチョークコイル1’について図33(a)を用いて説明する。図33(a)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル1’の内部構造を示す平面図である。図33(a)に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル1’は、コイルの巻数や外部電極接続部63、64の形状等が異なることを除いて、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同一の構成を有している。
コモンモードチョークコイル1’の外周囲の両短辺側には、一対の外部電極接続部63及び外部電極接続部64がそれぞれ並んで形成されている。図1に示すコモンモードチョークコイル1の外部電極接続部61、62は当該コイル1の外周囲の長辺に沿って長手方向が延伸する直方体形状に形成されている。これに対し本変形例のコモンモードチョークコイル1’の外部電極接続部63、64は、当該コイル1’の外周囲の短辺に沿って長手方向が延伸する直方体形状に形成されている。第1ヘリカルコイル部11の両端部は一対の外部電極接続部63に電気的にそれぞれ接続され、第2ヘリカルコイル部12の両端部は一対の外部電極接続部64に電気的にそれぞれ接続されている。後程説明するコモンモードチョークコイル2〜5も同様に、第1ヘリカルコイル部の両端部には外部電極接続部63が電気的にそれぞれ接続され、第2ヘリカルコイル部の両端部には外部電極接続部64が電気的にそれぞれ接続されている。
表1は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12のコイルピッチp、電流の流れる方向に直交する断面のコイルの幅、コイルの巻数n、コイル内径f及びコア41の幅wを異ならせたコモンモードチョークコイル1の4種類の構成パターンを例示している。表1において、「14×2」は第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の巻数がそれぞれ14であることを示す。
次に、本実施の形態の変形例2によるコモンモードチョークコイル2について図33(b)を用いて説明する。図33(b)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル2の内部構造を示す平面図である。図33(b)に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル2は、矩形状の環状に形成された閉磁路143の中空部を挟さんでその長手方向に延伸して閉磁路143の一構成要素になる2つのコア43a、43bと、コア43a、43bにそれぞれ巻き回された第1及び第2ヘリカルコイル部13、14とを備えている点に特徴を有している。閉磁路143は、中空部の中心を通り素子形成面の長手方向に平行に延伸する仮想直線に対して対称になっている。コア43aには第1ヘリカルコイル部13が巻き回され、コア43bには第2ヘリカルコイル部14が巻き回されている。第1及び第2ヘリカルコイル部13、14は、第1ヘリカルコイル部11と同様にらせん構造を有している。表2は、コモンモードチョークコイル2の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例3によるコモンモードチョークコイル3について図33(c)を用いて説明する。図33(c)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル3の内部構造を示す平面図である。図33(c)に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル3は、第1及び第2ヘリカルコイル部15、16がコア41に分離してそれぞれ巻き回されている点に特徴を有している。図33(c)において、第1ヘリカルコイル部15は上側に配置され、第2ヘリカルコイル部16は下側に配置されている。
コモンモードチョークコイル3は、上記コモンモードチョークコイル1、1’、2と比較して、コイル上部35、36及びコイル底部31、32がコア41の延伸方向に交差する角度を90度に近づけることができる。このため、コア41は第1及び第2ヘリカルコイル部15、16から発生する磁界により効率よく磁化されるので、コモンモードチョークコイル3の電気的特性の向上を図ることができる。表3は、コモンモードチョークコイル3の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例4によるコモンモードチョークコイル4について図33(d)を用いて説明する。図33(d)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル4の内部構造を示す平面図である。図33(d)に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル4は、2重らせん構造の第1及び第2ヘリカルコイル部17、18を備え、第1ヘリカルコイル部17の1巻きのコイルを構成するコイル底部31a、コイル側部(不図示)、コイル上部35a及びコイル側部(不図示)のうち、コイル上部35a及び2つのコイル側部を含む第1仮想平面IP1がコア41に直交し、第2ヘリカルコイル部18の1巻きのコイルを構成するコイル底部32a、コイル側部(不図示)、コイル上部36a及びコイル側部(不図示)のうち、コイル上部36a及び2つのコイル側部を含む第2仮想平面IP2がコア41に直交している点に特徴を有している。また、第1仮想平面IP1と、第2仮想平面IP2とは交差していない。
第1及び第2ヘリカルコイル部17、18のらせん軸は、コア41の延伸方向とほぼ一致している。コイル上部35aがコア41と直交しているのに対して、コイル底部31aはコア41と所定の角度で交差し、隣接するコイル上部35a同士をコイル側部を介して電気的に接続している。同様にコイル底部32aは、コア41と所定の角度で交差し、隣接するコイル上部36a同士をコイル側部を介して電気的に接続している。本変形例では、第1及び第2ヘリカルコイル部17、18は2つのコイル側部及びコイル上部がコアに直交する仮想平面に含まれているが、2つのコイル側部及びコイル底部が当該仮想平面に含まれるように、形成されていてもよい。
コモンモードチョークコイル4は、第1及び第2仮想平面IP1、IP2がコア41にそれぞれ直交しているため、上記変形例3のコモンモードチョークコイル3よりも効率よくコア41が磁化されて、さらに電気的特性の向上を図ることができる。また、第1及び第2ヘリカルコイル部17、18が分離せずに2重らせん構造を形成しているので、コモンモードチョークコイル4はコモンモードノイズ信号を十分に除去することができる。表4は、コモンモードチョークコイル4の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例5によるコモンモードチョークコイルについて図34(a)及び図35を用いて説明する。図34(a)は、本変形例のコモンモードチョークコイル5の内部構造を示す平面図である。図35は、第1及び第2ヘリカルコイル部19、20の一部をコモンモードチョークコイル5から取り出した状態の斜視図である。図34(a)及び図35に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル5は、第1ヘリカルコイル部19の1巻きのコイルを構成するコイル底部131、コイル側部133a、コイル上部135及びコイル側部133bのうちのコイル底部131、コイル側部133b及びコイル上部135を含む第1仮想平面IP1がコア41に直交し、第2ヘリカルコイル部20の1巻きのコイルを構成するコイル底部132、コイル側部134a、コイル上部136及びコイル側部134bのうちのコイル底部132、コイル側部134a及びコイル上部136を含む第2仮想平面IP2がコア41と直交している点に特徴を有している。また、第1仮想平面IP1と、第2仮想平面IP2とは交差していない。
図34(a)に示すように、第1及び第2ヘリカルコイル部19、20は、素子形成面をその法線方向に見て、櫛歯状に形成されて互いに噛み合うように配置されている。第1ヘリカルコイル部19は、図34(a)の図中左側に配置され、第2ヘリカルコイル部20は図中右側に配置されている。
図35に示すように、第1ヘリカルコイル部19は、直方体状のコイル底部131、コイル側部133a、コイル上部135及びコイル側部133bにより構成される1巻きのコイルをn巻き有している。コイル底部131は、コイル側部133a、133bをその延伸方向に見てL字状の形状を有し、第1ヘリカルコイル部19のらせん軸に直交する長辺部131aと、らせん軸に沿う短辺部131bとを有している。同様にコイル上部135は、コイル側部133a、133bをその延伸方向に見て、L字状の形状を有し、第1ヘリカルコイル部19のらせん軸に直交する長辺部135aと、らせん軸に沿う短辺部135bとを有している。
コイル底部131の長辺部131aとコイル上部135の長辺部135aとは、コイル側部133a、133bをその延伸方向に見て、重なって配置されている。コイル底部131とコイル上部135とは当該重なり部に対して鏡面対称になっている。短辺部131bが接続されていないコイル底部131の長辺部131aの端部と、短辺部135bが接続されていないコイル上部135の長辺部135aの端部との間には、コイル側部133bが両長辺部131a、135aにほぼ直交して形成されている。コイル側部133bにより、同一の第1仮想平面IP1内に形成されたコイル底部131とコイル上部135とは電気的に接続されている。長辺部131aが接続されていないコイル底部131の短辺部131bの端部と、長辺部135aが接続されていないコイル上部135の短辺部135bの端部との間には、コイル側部133aが両短辺部131b、135bにほぼ直交して形成されている。コイル側部133aにより、隣接する第1仮想平面IP1の一方に形成されたコイル底部131と、他方に形成されたコイル上部135とは電気的に接続されている。
第1ヘリカルコイル部19と同様に、第2ヘリカルコイル部20は、直方体状のコイル底部132、コイル側部134a、コイル上部136及びコイル側部134bにより構成される1巻きのコイルをn巻き有している。コイル底部132は、コイル側部134a、134bをその延伸方向に見て、L字状の形状を有し、第2ヘリカルコイル部20のらせん軸に直交する長辺部132aと、らせん軸に沿う短辺部132bとを有している。同様にコイル上部136は、コイル側部134a、134bをその延伸方向に見て、L字状の形状を有し、第2ヘリカルコイル部20のらせん軸に直交する長辺部136aと、らせん軸に沿う短辺部136bとを有している。
コイル底部132の長辺部132aとコイル上部136の長辺部136aとは、コイル側部134a、134bをその延伸方向に見て、重なって配置されている。コイル底部132とコイル上部136とは当該重なり部に対して鏡面対称になっている。短辺部132bが接続されていないコイル底部132の長辺部132aの端部と、短辺部136bが接続されていないコイル上部136の長辺部136aの端部との間には、コイル側部134aが両長辺部132a、136aにほぼ直交して形成されている。コイル側部134aにより、同一の第2仮想平面IP2内に形成されたコイル底部132とコイル上部136とは電気的に接続されている。長辺部132aが接続されていないコイル底部132の短辺部132bの端部と、長辺部136aが接続されていないコイル上部136の短辺部136bの端部との間には、コイル側部134bが両短辺部132b、136bにほぼ直交して形成されている。コイル側部134aにより、隣接する第2仮想平面IP2の一方に形成されたコイル底部132と、他方に形成されたコイル上部136とは電気的に接続されている。
上記変形例4のコモンモードチョークコイル4は、コイル上部35a、36aがコア41に直交しコイル底部31a、32aがコア41に斜めに交差している。これに対し、本変形例5のコモンモードチョークコイル5は、第1ヘリカルコイル部19の1巻きのコイルを構成するコイル底部131(長辺部131a)、コイル側部133b、コイル上部135(長辺部135a)及びコイル側部133aのうちの第1仮想平面IP1に含まれていないコイル側部133aは、第1仮想平面IP1に交差せずに形成され、第2ヘリカルコイル部20の1巻きのコイルを構成するコイル底部132(長辺部132a)、コイル側部134a、コイル上部136(長辺部136a)及びコイル側部134bのうちの第2仮想平面IP2に含まれていないコイル側部134bは、第1仮想平面IP1に交差せずに形成されている。このように、第1及び第2ヘリカルコイル部19、20を構成する各コイル部131〜135、132〜136は、短辺部131b、12bを除いてコア41の延伸方向にほぼ直交して配置されている。このため、コモンモードチョークコイル5は、上記変形例4のコモンモードチョークコイル4よりも効率よくコア41が磁化されるので、さらに電気的特性の向上を図ることができる。また、第1及び第2ヘリカルコイル部19、20が分離せずに2重らせん構造を形成しているので、コモンモードチョークコイル5はコモンモードノイズ信号を十分に除去することができる。
従来の巻き線型のコモンモードチョークコイルのコイル部を本変形例の第1及び第2ヘリカルコイル部19、20の構造に形成することは不可能である。第1及び第2ヘリカルコイル部19、20の構造は、本実施の形態及び後程説明する第2乃至第5の実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法によって初めて実現することができる。表5は、コモンモードチョークコイル5の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例6によるコモンモードチョークコイル6について図34(b)を用いて説明する。図34(b)は本変形例によるコモンモードチョークコイル6の内部構造を示す平面図である。上記変形例1’のコモンモードチョークコイル1は外周囲の両短辺側に形成された外部電極接続部63、64を備えているのに対し、本変形例のコモンモードチョークコイル6は、図34(b)に示すように、外周囲の両長辺側に形成された一対の外部電極接続部65、66を備えている点に特徴を有している。第1ヘリカルコイル部21の両端部は、リード線163a、163bを介して外部電極接続部65にそれぞれ電気的に接続されている。同様に第2ヘリカルコイル部22の両端部は、リード線164a、164bを介して外部電極接続部66にそれぞれ電気的に接続されている。リード線163a、164bは閉磁路143の上層に形成され、リード線163b、164aは閉磁路143の下層に形成されている。後程説明するコモンモードチョークコイル7、8の第1ヘリカルコイル部の両端部は外部電極接続部65に電気的に接続され、第2ヘリカルコイル部の両端部は外部電極接続部66に電気的に接続されている。
第1及び第2ヘリカルコイル部21、22は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12と同様に2重らせん構造を有している。また、第1及び第2ヘリカルコイル部21、22の内周側には、矩形状の環状の閉磁路の一構成要素になる直方体形状のコア43aが貫通して配置されている。
本変形例のコモンモードチョークコイル6では、外部電極接続部65、66が当該コイル6の外周囲の長辺側に露出して形成されているので外部電極の電極幅を大きくすることができる。これにより、コモンモードチョークコイル6のPCBへの実装強度を向上させることができる。表6は、コモンモードチョークコイル6の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例7によるコモンモードチョークコイル7について図34(c)を用いて説明する。図34(c)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル7の内部構造を示す平面図である。上記変形例2のコモンモードチョークコイル2は外周囲の両短辺側に形成された外部電極接続部63、64を備えている。これに対して本変形例のコモンモードチョークコイル7は、図34(c)に示すように、当該コイル7の外周囲の両長辺側に形成された外部電極接続部65、66と、当該外周囲の短辺に沿って延伸して閉磁路145の一構成要素になるコア45a、45bにそれぞれ巻き回された第1及び第2ヘリカルコイル部23、24とを備えている点に特徴を有している。閉磁路145はH状の中空部を備えた薄板直方体形状に形成されている。閉磁路145は、その中空部の中心を通り、素子形成面の短辺側にほぼ平行に延伸する仮想直線に対して対称になっている。コア45aには第1ヘリカルコイル部23が巻き回され、コア45bには第2ヘリカルコイル部24が巻き回されている。本変形例では、閉磁路145の中空部はH状に形成されているが、長方形状に形成されていてもよい。本変形例のコモンモードチョークコイル7は、上記変形例5のコモンモードチョークコイル6と同様の効果を得ることができる。表7は、コモンモードチョークコイル7の2種類の構成パターンを例示している。
次に、本実施の形態の変形例8によるコモンモードチョークコイル8について図34(d)を用いて説明する。図34(d)は、本変形例によるコモンモードチョークコイル8の内部構造を示す平面図である。図34(d)に示すように、本変形例のコモンモードチョークコイル8は、枠状の磁性部材部48と、磁性部材部48の内周側のほぼ中央で長手方向に延伸して張り渡されたコア47とを備えた閉磁路147と、コア47に巻き回された2重らせん構造の第1及び第2ヘリカルコイル部25、26とを備えた点に特徴を有している。第1ヘリカルコイル部25の両端部は、リード線165a、165bを介して外部電極接続部65にそれぞれ電気的に接続されている。同様に第2ヘリカルコイル部26の両端部は、リード線166a、166bを介して外部電極接続部66にそれぞれ電気的に接続されている。リード線165a、166bは閉磁路147の上層に形成され、リード線165b、166aは閉磁路147の下層に形成されている。本変形例のコモンモードチョークコイル8は、上記変形例6及び7のコモンモードチョークコイル6、7と同様の効果が得られる。表8は、コモンモードチョークコイル8の2種類の構成パターンを例示している。
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態によるコモンモードチョークコイル及びその製造方法について図36乃至図57を用いて説明する。本実施の形態によるコモンモードチョークコイル201はその製造方法に特徴を有している。当該製造方法により完成したコモンモードチョークコイル201の構成は、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同様であるため説明は省略する。なお、第1の実施の形態と同一の機能、作用を奏する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態によるコモンモードチョークコイル201の製造方法について図36乃至図57を用いて説明する。図36乃至図57は、1個のコモンモードチョークコイル1の素子形成領域を示している。図36(a)乃至図57(a)は、図36(b)乃至図57(b)のA−A線で切断した断面図であり、図36(b)乃至図57(b)は、コモンモードチョークコイル1の製造方法を示す平面図である。
まず、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同様の製造方法により、シリコン基板51上に絶縁層(下部絶縁層)52と、Cuの導電層(第1導電層)81、82を形成する(図4乃至図8参照)。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ20〜30μmのレジスト層(第2レジスト層)353を形成する。次に、図36(a)及び図36(b)に示すように、レジスト層353をパターニングして、細長状に形成された複数の導電層81、82の両端部をそれぞれ露出させる開口(第2開口)283a、284aと、素子形成領域の外周囲の長辺の内側近傍で各短辺に沿って並んで形成された導電層81、82を露出する開口263a、264aとをレジスト層353に形成する。図36(b)に示すように、複数の導電層81、82の一端部上にそれぞれ形成された複数の開口283a、284aは一直線上に交互に等間隔に配置され、他端部上にそれぞれ形成された複数の開口283a、284aは一直線上に交互に等間隔に配置される。次に、図37(a)及び図37(b)に示すように、開口263a、283a内の導電層81上に厚さ10〜18μm程度のCuの導電層(第2導電層)283を形成し、開口264a、284a内の導電層82上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第2導電層)284を形成する。導電層283、284は例えばパターンめっき法により同時に形成される。これにより、導電層283は下層の導電層81と電気的に接続され、導電層284は下層の導電層82と電気的に接続される。
次に、図38(a)及び図38(b)に示すように、レジスト層353をエッチングにより除去する。次に、図39(a)及び図39(b)に示すように、レジスト層353の除去により露出した電極膜72と、当該電極膜72の下層の電極膜71とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜71、72を除去する際に、導電層81、82、283、284の表面も電極膜71、72の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、導電層81、82、283、284は電極膜71、72に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。また、後程説明する各電極膜の除去は、電極膜71、72の除去と同様の方法が用いられる。以上の工程によって、電極膜71、72及び導電層81が積層された積層構造のコイル底部31が形成され、電極膜71、72及び導電層82が積層された積層構造のコイル底部32が形成される。コイル底部31、32はシリコン基板51上に交互に並列して形成される。同時に、導電層283で形成されたコイル側部233a、233bがコイル底部31両端部にそれぞれ配置され、導電層284で形成されたコイル側部234a、234bがコイル底部32両端部にそれぞれ配置される。図39(b)において、コイル側部233a、234aは、図中左側に一直線上に交互に等間隔に配置され、コイル側部233b、234bは、図中右側に一直線上に交互に等間隔に配置される。
次に、図40(a)及び図40(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ17〜28μmの絶縁層(第1絶縁層)254を形成する。次に、図41(a)及び図41(b)に示すように、CMP(化学的機械的研磨)法により、コイル側部233a、233b、234a、234b上部が露出するまで絶縁層254表面を研磨して平坦面(CMP面)254aを形成する。コイル側部233a、233b、234a、234bが露出したか否かの確認は目視により行う。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ3μm程度のレジスト層(第1介在レジスト層)352を形成する。次に、図42(a)及び図42(b)に示すように、レジスト層352をパターニングして、絶縁層254を露出させる開口(第1介在開口)382aをレジスト層352に形成する。開口382aは、素子形成領域をその法線方向に見て、長方形状に開口された開口361aと、コの字状に開口された開口362aとからなる長方形の枠状に形成される。開口382aは、コイル側部233a、234aが外周側に配置され、コイル側部233b、234bが内周側に配置されるように形成される。開口361aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部233a、234aとコイル側部233b、234bとの間でコイル底部31、32と所定の角度で交差して配置される。
次に、図43(a)及び図43(b)に示すように、開口382aに露出した絶縁層254を反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングして、開口382aとほぼ同じ形状に開口されて深さ8〜13μmの溝部382を絶縁層254に形成する。その際、溝部382の底部にコイル底部31、32が露出せず、溝部382の側部にコイル側部233a、233b、234a、234bが露出しないようにする。次に、図44(a)及び図44(b)に示すように、レジスト層352をエッチングにより除去する。
次に、図45(a)及び図45(b)に示すように、全面に膜厚10nm程度のTiの電極膜291をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜291上に膜厚100nm程度のNiFeの電極膜(第1介在電極膜)292をスパッタリング法により形成する。溝部382の側部には、溝部382底部に形成される電極膜291、292よりも薄い膜厚の電極膜291、292が形成される。電極膜291は、電極膜292と絶縁層254との密着性を向上させるバッファ膜として形成される。また、電極膜292は、後程説明する磁性部材層301のパターンめっき用の電極膜として用いられる。
次に、電極膜292上にレジストを塗布して厚さ3μm程度のレジスト層354を形成する。次に、図46(a)及び図46(b)に示すように、レジスト層354をパターニングして、溝部382とほぼ同じ形状に開口されて溝部382内の電極膜292を露出させる開口301aをレジスト層354に形成する。開口301aは溝部361上を開口する開口241aと、溝部362上を開口する開口242aとからなる長方形の枠状に形成される。
次に、図47(a)及び図47(b)に示すように、溝部382内の電極膜292上に厚さ5〜10μmのNiFeの磁性部材層(第1磁性部材層)301を例えばパターンめっき法により形成する。なお、磁性部材層301の形成材料は、NiFe以外の高透磁率を有する材料でもよい。次に、図48(a)及び図48(b)に示すように、レジスト層354をエッチングにより除去する。
次に、図49(a)及び図49(b)に示すように、レジスト層354の除去により露出した電極膜292と、当該電極膜292の下層の電極膜291とをドライエッチングにより除去する。電極膜291、292を除去する際に、磁性部材層301の表面も電極膜291、292の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層301は電極膜291、292に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。以上の工程により、磁性部材層301で構成されたコア241が溝部361に形成され、コア241と同一の構成を有し、コア241と協働して閉磁路341を形成する磁性部材部242が溝部362に形成される。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ5μm程度のレジスト層を形成する。次に、図50(a)及び図50(b)に示すように、当該レジスト層をパターニングして、閉磁路341と、閉磁路341周囲の電極膜291、292とが覆われる枠状のレジスト層367を形成する。レジスト層367は、電極膜291、292及び閉磁路341と、後程説明するコイル上部235、236とを絶縁させる有機絶縁膜として用いられる。次に、図51(a)及び図51(b)に示すように、絶縁性を高めるためにレジスト層367を加熱して硬化する(キュア)。
次に、図52(a)及び図52(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜275をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜275上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2電極膜)276をスパッタリング法により形成する。電極膜275、276は、コイル側部233a、233b、234a、234bと電気的に接続され、レジスト層367によって電極膜291、292及び閉磁路341と絶縁される。
次に、電極膜276上にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第3レジスト層)359を形成する。次に、図53(a)及び図53(b)に示すように、レジスト層359をパターニングして、電極膜276を細長状に露出する複数の開口(第3開口)287a、288aと、開口263a、264a内に形成された導電層283、284上の電極膜276を露出する開口267a、268aとを形成する。これにより、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部233a上の電極膜276が一端部に露出し、当該コイル側部233a直下のコイル底部31とコイル底部32を挟んで隣接するコイル底部31上に配置されたコイル側部233b上の電極膜276が他端部に露出する開口287aと、コイル側部234a上の電極膜276が一端部に露出し、当該コイル側部234a直下のコイル底部32とコイル底部31を挟んで隣接するコイル底部32上に配置されたコイル側部234b上の電極膜276が他端部に露出する開口288aとがほぼ等間隔に交互に並列して形成される。また、開口287aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コア241を挟んでコイル底部32に交差して対向して形成される。一方、開口288aは同方向に見て、コア241を挟んでコイル底部31に交差して対向して形成される。また、素子形成領域の両短辺側に配置される開口287aの一端部は開口267aに繋げられた状態にそれぞれ形成される。
次に、図54(a)及び図54(b)に示すように、開口267a、287a内の電極膜276上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第3導電層)287を形成し、開口268a、288a内の電極膜276上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第3導電層)288を形成する。導電層287、288はパターンめっき法により同時に形成され、電極膜276に電気的にそれぞれ接続される。次に、図55(a)及び図55(b)に示すように、レジスト層359を除去する。次に、図56(a)及び図56(b)に示すようにレジスト層359の除去により露出した電極膜276と、当該電極膜276の下層の電極膜275とを除去する。これにより、電極膜275、276及び導電層287が積層された積層構造のコイル上部235が形成され、電極膜275、276及び導電層288が積層された積層構造のコイル上部236が形成される。
以上の工程によって、コイル底部31、コイル側部233a、コイル上部235及びコイル側部233bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第1ヘリカルコイル部211が形成され、同時にコイル底部32、コイル側部234a、コイル上部236、及びコイル側部234bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第2ヘリカルコイル部212が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部211、212は2重らせん構造に形成される。また、導電層81、283、287の積層構造の外部電極接続部261が開口61a、263a、267aに同時に形成され、導電層82、284、288の積層構造の外部電極接続部262が開口62a、264a、268aに同時に形成される。
コイル上部235、236は交互に並列して配置される。また、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル上部235はコア241を挟んでコイル底部32と交差し、コイル上部236はコア241を挟んでコイル底部31と交差する。
次に、図57(a)及び図57(b)に示すように、コイル上部235、236の保護膜として、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10μm程度の絶縁層258を形成する。絶縁層258の形成材料として、アルミナ以外の絶縁性材料を用いてもよい。以上の工程により、絶縁層52、254、258が積層された積層構造の絶縁層60が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部211、212及び閉磁路341は絶縁層60に内包される。
次に、シリコン基板51を裏面から削り所望の板厚に揃える、または完全に除去する。次に、所定の切断線に沿ってウエハを切断し、ウエハ上に形成された複数のコモンモードチョークコイル201を素子形成領域毎にチップ状に分離する。外部電極接続部261の一部は絶縁層260の外表面に露出される。次に、図示は省略するが、切断面に露出した外部電極接続部261、262に電気的にそれぞれ接続される外部電極を当該切断面に形成する。次に、必要に応じて角部の面取りを行い、コモンモードチョークコイル201が完成する。
以上説明したように、本実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法によれば、コイル側部を構成する導電層283、284は1回のパターンめっき工程で形成されるので、当該導電層を2回のパターンめっき工程で形成する上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法に比べて製造工程数を削減できる。これにより、コモンモードチョークコイルの製造コストの低減を図ることができる。
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態によるコモンモードチョークコイル及びその製造方法について図58乃至図104を用いて説明する。まず、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401について図58乃至図60を用いて説明する。図58は、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401の内部構造を示す平面図である。図59は、図58のαの方向から見たコモンモードチョークコイル401の内部構造を示す正面図である。図59では、理解を容易にするため、実際には同一平面内に形成されていないコイル底部431とコイル上部435とを同一平面内に示している。また、図60は図59のβの方向から見たコモンモードチョークコイル401の内部構造を示す側面図である。図58及び図60では、隠れ線は破線で表している。
本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401は、上記第1の実施の形態によるコモンモードチョークコイル1に対して、閉磁路541がコイル底部431、432の形成面に対してほぼ直交して形成されている点に特徴を有している。
図58乃至図60に示すように、コモンモードチョークコイル401は、単結晶シリコンで形成されたシリコン基板51上に絶縁層460、第1ヘリカルコイル部411、第2ヘリカルコイル部412及び閉磁路541を薄膜形成技術で形成した全体として直方体状の外形を有している。
図60に示すように、閉磁路541は、コモンモードチョークコイル401をその側面から見て、細長い枠状の形状を有し、絶縁層460内に形成されている。閉磁路541は、閉磁路541の底部となる直方体形状のコア441と、コア441の両端部上に形成された閉磁路側部513と、閉磁路側部513に両端部が接続された閉磁路上部515とを有している。
第1及び第2ヘリカルコイル部411、412は、それぞれヘリカル状(らせん状)にコア441に巻き回されて絶縁層460内に形成されている。第1及び第2ヘリカルコイル部411、412は、らせん軸がシリコン基板51の基板面に対してほぼ平行になるように形成されている。また、第1及び第2ヘリカルコイル部411、412のらせん軸はほぼ一致している。
第1ヘリカルコイル部411は、例えば直方体状にそれぞれ形成されたコイル底部431、コイル側部433a、コイル上部435及びコイル側部433bにより構成される1巻きのコイルをn巻き(図58では2巻き)有している。同様に、第2ヘリカルコイル部412は、例えば直方状にそれぞれ形成されたコイル底部432、コイル側部434a、コイル上部436及びコイル側部434bにより構成される1巻きのコイルをn巻き(図58では2巻き)有している。コイル底部431とコイル底部432とは、コア441の下層(シリコン基板51側)で交互に等間隔に配置され、コイル上部435とコイル上部436とは、コア441と閉磁路上部515との間で交互に等間隔に配置されている。
第1ヘリカルコイル部411の1巻きと、当該1巻きのコイルに隣接する第2ヘリカルコイル部412の1巻きとの間隔aは、例えば10〜50μmに形成されている。第1及び第2ヘリカルコイル部411、412は、コイルの抵抗値を低くするため、例えばCuで形成されている。図59に示すように、第1ヘリカルコイル部411の1巻きのコイルは、らせん軸方向に見て、矩形状に形成されている。シリコン基板51の基板面に垂直な方向の第1ヘリカルコイル部411の内径eは例えば5〜30μmに形成されている。同様に、第2ヘリカルコイル部412の1巻きのコイルは矩形状に形成されている。シリコン基板51の基板面に垂直な方向の第2ヘリカルコイル部412の内径eは例えば5〜30μmに形成されている。電流が流れる方向に直交する第1及び第2ヘリカルコイル部411、412の断面は、ほぼ一定の大きさに形成されている。
図58及び図59に示すように、コイル底部431は、長辺の長さcが例えば20〜300μmで厚さdが例えば2〜10μmの複数の細長状に形成されている。コイル底部431は、下部絶縁層52上に等間隔に並列して配置されている。コイル底部431はシリコン基板51の短辺に対して所定の角度に傾いて並列して配置されている。
コイル底部431の長手方向の一端部(図58及び図59の図中、左側の端部)上には第1ヘリカルコイル部411の内径eに等しい高さのコイル側部433aが形成され、他端部(図58及び図59の図中、右側の端部)上にはコイル側部433aとほぼ同じ高さのコイル側部433bが形成されている。
コイル側部433a、433b上には、例えばコイル底部431とほぼ同一形状(長辺の長さc=20〜300μm、厚さg=2〜10μm)の複数の細長状のコイル上部435が等間隔に並列して配置されている。図58に示すように、コイル上部435の一端部はコイル側部433aに電気的に接続され、他端部は当該コイル側部433a直下のコイル底部431とコイル底部432を挟んで隣接するコイル底部431の他端部上に形成されたコイル側部433bに電気的に接続されている。
コイル底部431の間には、コイル底部432がコイル底部431にほぼ並列して配置されている。コイル底部432は、コイル底部431と同一材料で同一形状に同一形成方法で同時に形成されている。コイル底部432の長手方向の一端部(図58及び図59の図中、左側の端部)上にはコイル側部434aが形成され、他端部(図58及び図59の図中、右側の端部)上にはコイル側部434bが形成されている。コイル側部434a、434bは、コイル側部433a、433bと同一材料で同一形状に同一形成方法で同時に形成されている。コイル側部434aは、コイル側部433aと交互に一直線上にほぼ等間隔に配置され、コイル側部434bは、コイル側部433bと交互に一直線上にほぼ等間隔に配置されている。
コイル側部434a、434b上には、複数の細長状のコイル上部436が等間隔に並列して配置されている。コイル上部436はコイル上部435の間にコイル上部435とほぼ並列して配置されている。コイル上部436は、コイル上部435と同一材料で同一形状に同一形成方法で同時に形成されている。図58に示すように、コイル上部436の一端部はコイル側部434aと電気的に接続され、他端部は当該コイル側部434a直下のコイル底部432とコイル底部431を挟んで隣接するコイル底部432の他端部上に形成されたコイル側部434bと電気的に接続されている。また、図58に示すように、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コイル上部435はコイル底部432と所定の角度で交差し、コイル上部436はコイル底部431と所定の角度で交差して配置されている。
図58乃至図60に示すように、第1及び第2ヘリカルコイル部411、412の内周側には、例えば全長bが100〜300μmで幅wが例えば10〜200μmであり、厚さhが例えば5〜10μmの直方体状のコア441が貫通して配置されている。コア441は、第1及び第2ヘリカルコイル部411、412のらせん軸にほぼ一致して延伸して形成されている。また、コア441は、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コイル底部431、432及びコイル上部435、436と所定の角度をなして交差して配置されている。コア441は、例えばNiFeなどの高透磁率を有する材料で形成されている。コア441が高透磁率を有する材料で形成されているため、コモンモードチョークコイル401のインダクタンス値が大きくなり、インピーダンス特性等の電気的特性の向上を図ることができる。
図58及び図60に示すように、2つの閉磁路側部513は、直方体状にそれぞれ形成されて第1及び第2ヘリカルコイル部411、412の外側に対向配置されている。コア441とほぼ同一の形状に形成された閉磁路上部515は、2つの閉磁路側部513に張り渡されてコア441に対向して配置されている。
閉磁路側部513及び閉磁路上部515は、コア441と同一の形成材料で形成され、コア441と協働して環状の閉磁路541を形成している。閉磁路541はコイル底部431の形成面にほぼ直交して形成されている。閉磁路541の両側部には、シリコン基板51の基板面をその法線方向に見て、コイル側部433a、433b、434a、434bが配置されている。閉磁路541は高透磁率を有する材料で環状に形成されているので、磁束の漏洩を防止することができる。
図59に示すように、絶縁層460は、シリコン基板51上に絶縁層(下部絶縁層)52、絶縁層454、絶縁層456、絶縁層458及び絶縁層459が順次積層されて形成されている。絶縁層452、454、456、458、459は、例えばアルミナ(Al2O3)でそれぞれ形成されている。絶縁層52上にはコイル底部431、432が形成されている。絶縁層454上にはコア441が形成されている。絶縁層456上にはコイル上部435、436が形成されている。絶縁層458上には、閉磁路上部515が形成されている。このように、コモンモードチョークコイル401は、コア441やコイル底部431等と各絶縁層452〜459とが積層された積層構造を有している。
図58に示すように、第1ヘリカルコイル部411の両端部は、直方体形状の外部電極接続部461にそれぞれ電気的に接続されている。同様に、第2ヘリカルコイル部412の両端部は、直方体形状の外部電極接続部462にそれぞれ電気的に接続されている。外部電極接続部461、462の一部は、絶縁層460の対向する一対の側面にそれぞれ露出して形成されている。図示は省略するが外部電極接続部461、62の露出部を覆ってコモンモードチョークコイル401の側面には外部電極が形成されている。コモンモードチョークコイル401は当該外部電極を用いてPCBに半田付けされて実装される。
以上説明したように、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401は、第1の実施の形態によるコモンモードチョークコイル1と同様に、第1及び第2ヘリカルコイル部411、412のらせん軸がシリコン基板51の基板面に対してほぼ平行に形成されているので、コイルの巻き数が増えても厚さはほとんど変わらない。従って、コモンモードチョークコイル401は、コイルの巻き数が多くても、シリコン基板51の基板面に対してコイルのらせん軸が垂直に向くコモンモードチョークコイルと比較して低背化することができる。また、コモンモードチョークコイル401はヘリカルコイルを有しているので、コイルの巻き数が多くても、同一平面内にスパイラル状のコイルを有するコモンモードチョークコイルと比較して小型化できる。さらに、閉磁路541はシリコン基板51の基板面に対してほぼ直交する平面内に形成されているので、コモンモードチョークコイル401はコモンモードチョークコイル1より実装面積を小さくすることができる。
次に、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401の製造方法について図61乃至図104を用いて説明する。コモンモードチョークコイル401はウエハ上に同時に多数形成されるが、図61乃至図104は、1個のコモンモードチョークコイル401の素子形成領域を示している。図61(a)乃至図104(a)は、図61(b)乃至図104(b)のA−A線で切断した断面図であり、図61(b)乃至図89(b)は、コモンモードチョークコイル401の製造方法を示す平面図である。図104(c)は、図104(b)のB−B線で切断した断面図である。
まず、図61(a)及び図61(b)に示すように、単結晶シリコンで形成された板厚0.8mm程度のシリコン基板51上に、アルミナ(Al2O3)を例えばスパッタリング法により成膜して厚さ3μm程度の絶縁層(下部絶縁層)52を形成する。表面が十分に平滑な絶縁性基板を用いる場合には、絶縁層52の形成はしなくてもよい。また、絶縁層52の形成材料として有機絶縁物を用いてもよいが、アルミナは有機絶縁物に比べてより平坦な面を形成し易いので好適である。後程説明する各絶縁層は、絶縁層52と同様の方法で形成される。
次に、図62(a)に示すように絶縁層52上に、膜厚10nm程度のチタン(Ti)の電極膜71を例えばスパッタリング法により形成する。電極膜71は、後程説明するCuの電極膜72の密着性を向上させるためのバッファ膜として用いられる。バッファ膜の形成材料は、例えばクロム(Cr)などの他の金属材料でもよい。次に、図62(a)及び図62(b)に示すように、電極膜71上に膜厚100nm程度のCuの電極膜(第1電極膜)72を例えばスパッタリング法により形成する。電極膜72は、後程説明する導電層481、482のパターンめっき用の電極膜として用いられる。後程説明する各電極膜は、電極膜71、72と同様の方法で形成される。
次に、電極膜72上にレジストを例えばスピンコート法により塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第1レジスト層)551を形成する。後程説明する各レジスト層はレジスト層551と同様の方法で形成される。次に、図63(a)及び図63(b)に示すように、レジスト層551をパターニングして、電極膜72を露出させる開口461a、462a及び開口(第1開口)481a、482aをレジスト層551に形成する。開口461a、462aは素子形成領域の外周囲の長辺の内側近傍で各短辺に沿って並んで形成される。複数の細長状の開口481a、482aは、交互にほぼ等間隔に並列して形成される。開口481a、482aは素子形成領域の短辺に対して所定の角度で形成される。当該短辺側に配置される2つの開口482aの一端部は、開口462aに繋がれて形成される。
次に、図64(a)及び図64(b)に示すように、開口461a、481a内の電極膜72上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第1導電層)481を形成し、開口462a、482a内の電極膜72上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第1導電層)482を形成する。導電層481、482は例えばパターンめっき法により同時に形成され、下層の電極膜72に電気的にそれぞれ接続される。導電層481、482の形成材料にCuを用いるのは、最終的に形成される第1及び第2ヘリカルコイル部411、412の抵抗値を低くするためである。また、後程説明する各Cuの導電層の形成及びパターニングには、導電層481、482と同様の方法が用いられる。次に、図65(a)及び図65(b)に示すように、レジスト層551をエッチングにより除去する。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ15〜20μmのレジスト層(第2レジスト層)553を形成する。次に、図66(a)及び図66(b)に示すように、レジスト層553をパターニングして、開口481a、482a内に形成された導電層481、482の両端部を露出させる複数の開口(第2開口)483a、484aと、開口461a、462a内に形成された導電層481、482を露出する開口463a、464aとをレジスト層553に形成する。図66(b)に示すように、複数の導電層481、482の一端部上にそれぞれ形成された複数の開口483a、484aは一直線上に交互に等間隔に配置され、他端部上にそれぞれ形成された複数の開口483a、484aは一直線上に交互に等間隔に配置される。次に、図67(a)及び図67(b)に示すように、開口463a、483a内の導電層481上に厚さ3μm程度のCuの導電層(第2導電層)483を形成し、開口464a、484a内の導電層482上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第2導電層)484を形成する。導電層483、484は、パターンめっき法により同時に形成される。これにより、導電層483は下層の導電層481と電気的に接続され、導電層484は下層の導電層482と電気的に接続される。
次に、図68(a)及び図68(b)に示すように、レジスト層553をエッチングにより除去する。次に、図69(a)及び図69(b)に示すように、レジスト層553の除去により露出した電極膜72と、当該電極膜72の下層の電極膜71とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜71、72を除去する際に、導電層481〜484の表面も電極膜71、72の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、導電層481〜484は電極膜71、72に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。また、後程説明する各電極膜の除去は、電極膜71、72の除去と同様の方法が用いられる。以上の工程によって、電極膜71、72及び導電層481が積層された積層構造のコイル底部431が形成され、電極膜71、72及び導電層482が積層された積層構造のコイル底部432が形成される。コイル底部431、432はシリコン基板51上に交互に並列して形成される。
次に、図70(a)及び図70(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10〜13μmの絶縁層(第1絶縁層)454を形成する。次に、図71(a)及び図71(b)に示すように、CMP(化学的機械的研磨)法により、導電層483、484上部が露出するまで絶縁層454表面を研磨して平坦面(CMP面)454aを形成する。導電層483、484が露出したか否かの確認は目視により行う。
次に、図72(a)及び図72(b)に示すように絶縁層454の平坦面454a上に膜厚10nm程度のTiの電極膜491をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜491上に膜厚100nm程度のNiFeの電極膜(第1中間電極膜)492をスパッタリング法により形成する。電極膜491は電極膜71と同様に、電極膜492の密着性を良くするためのバッファ膜として形成される。また、電極膜492は、後程説明する磁性部材層501のパターンめっき用の電極膜として用いられる。
次に、電極膜492上にレジストを塗布して厚さ8〜13μmのレジスト層(第1中間レジスト層)555を形成する。次に、図73(a)及び図73(b)に示すように、レジスト層555をパターニングして、電極膜492を露出させる開口(第1中間開口)441aをレジスト層555に形成する。開口441aは素子形成領域をその法線方向に見て長方形状に形成され、コイル底部431、432の両端部上の導電層483、484の間にコイル底部431、432と所定の角度で交差して配置される。
次に、図74(a)及び図74(b)に示すように、開口441a内の電極膜492上に厚さ5〜10μmのNiFeの磁性部材層(第1磁性部材層)501を例えばパターンめっき法により形成する。なお、磁性部材層501の形成材料は、NiFe以外の高透磁率を有する材料でもよい。次に、図75(a)及び図75(b)に示すように、レジスト層555をエッチングにより除去する。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第3中間レジスト層)563を形成する。次に、図76(a)及び図76(b)に示すように、レジスト層563をパターニングして、磁性部材層501の両端部を露出させる開口(第3中間開口)503aをレジスト層563に形成する。開口503aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル底部431、432の外側で長方形状に形成される。次に、図77(a)及び図77(b)に示すように、開口503a内の磁性部材層501上に厚さ3μm程度のNiFeの磁性部材層(第2磁性部材層)503をパターンめっき法により形成する。
次に、図78(a)及び図78(b)に示すように、レジスト層563をエッチングにより除去する。次に、図79(a)及び図79(b)に示すように、レジスト層563の除去により露出した電極膜492と、当該電極膜492の下層の電極膜491とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜491、492を除去する際に、磁性部材層501、503の表面も電極膜491、492の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層501、503は電極膜491、492に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。以上の工程により、電極膜491、492及び磁性部材層501が積層された積層構造のコア441が形成される。
次に、図80(a)及び図80(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜473をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜473上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2中間電極膜)474をスパッタリング法により形成する。電極膜473、474は下層の導電層483、484と電気的に接続される。
次に、電極膜474上にレジストを塗布して厚さ15〜23μmのレジスト層(第2中間レジスト層)557を形成する。次に、図81(a)及び図81(b)に示すように、レジスト層557をパターニングして、開口483a、484a内に形成された導電層483、484上の電極膜474を露出させる開口(第2中間開口)485a、486aと、開口463a、464a内に形成された導電層483、484上の電極膜474を露出させる開口465a、466aとをレジスト層557に形成する。
次に、図82(a)及び図82(b)に示すように、開口465a、485a内の電極膜474上に厚さ10〜18μmのCuの導電層(第1中間導電層)485を形成し、開口466a、486a内の電極膜474上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第1中間導電層)486を形成する。導電層485、486はパターンめっき法により形成され、下層の電極膜474に電気的にそれぞれ接続される。次に、図83(a)及び図83(b)に示すように、レジスト層557をエッチングにより除去する。次に、図84(a)及び図84(b)に示すように、レジスト層557の除去により露出した電極膜474と、当該電極膜474の下層の電極膜473とをドライエッチングにより除去する。以上の工程によって、導電層483、電極膜473、474及び導電層485が積層された積層構造のコイル側部433a、433bと、導電層484、電極膜473、474及び導電層486が積層された積層構造のコイル側部434a、434bとが形成される。図84(b)において、コイル側部433a、434aは、左側に一直線上に交互に等間隔に配置され、コイル側部433b、434bは、右側に一直線上に交互に等間隔に配置される。
次に、図85(a)及び図85(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10〜18μmの絶縁層(第2絶縁層)456を形成する。次に、図86(a)及び図86(b)に示すように、CMP法により、磁性部材層503が露出するまで絶縁層456を研磨して平坦面456aを形成する。その際、コイル側部433a、433b、434a、434b及び開口465a、466a内に形成された導電層485、486も研磨され、表面が平坦面456aに露出する。
次に、図87(a)及び図87(b)に示すように、絶縁層456の平坦面456a上に厚さ10nm程度のTiの電極膜475をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜475上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2電極膜)476をスパッタリング法により形成する。電極膜475、476は、電極膜473、474及び導電層485を介して導電層483と電気的に接続され、電極膜473、474及び導電層486を介して導電層484と電気的に接続される。
次に、電極膜476上にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第3レジスト層)559を形成する。次に、図88(a)及び図88(b)に示すように、レジスト層559をパターニングして、電極膜476を細長状に露出する複数の開口(第3開口)487a、488aと、開口465a、466a内に形成された導電層485、486上の電極膜476を露出する開口467a、468aとを形成する。これにより、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部433a上の電極膜476が一端部に露出し、当該コイル側部433a直下のコイル底部431とコイル底部432を挟んで隣接するコイル底部431上のコイル側部433b上の電極膜476が他端部に露出する開口487aと、コイル側部434a上の電極膜476が一端部に露出し、当該コイル側部434a直下のコイル底部432とコイル底部431を挟んで隣接するコイル底部432上のコイル側部434b上の電極膜476が他端部に露出する開口488aとがほぼ等間隔に交互に並列して形成される。また、開口487aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コア441を挟んでコイル底部432に交差して対向して形成される。一方、開口488aは同方向に見て、コア441を挟んでコイル底部431に交差して対向して形成される。また、素子形成領域の短辺側に配置される開口487aの一端部は開口467aに繋げられて形成される。
次に、図89(a)及び図89(b)に示すように、開口467a、487a内の電極膜476上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第3導電層)487を形成し、開口468a、488a内の電極膜476上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第3導電層)88を形成する。導電層487、488は、パターンめっき法により同時に形成され、下層の電極膜476に電気的にそれぞれ接続される。次に、図90(a)及び図90(b)に示すように、レジスト層559を除去する。次に、図91(a)及び図91(b)に示すようにレジスト層559の除去により露出した電極膜476と、当該電極膜476の下層の電極膜475とを除去する。これにより、電極膜475、476及び導電層487が積層された積層構造のコイル上部435が形成され、電極膜475、476及び導電層488が積層された積層構造のコイル上部436が形成される。
以上の工程によって、コイル底部431、コイル側部433a、コイル上部435及びコイル側部433bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第1ヘリカルコイル部411が形成され、同時にコイル底部432、コイル側部434a、コイル上部436、及びコイル側部434bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第2ヘリカルコイル部412が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部411、412は2重らせん構造に形成される。また、導電層481、483、485、487の積層構造の外部電極接続部461が開口461a、463a、465a、467aに同時に形成され、導電層482、484、486、488の積層構造の外部電極接続部462が開口462a、464a、466a、468aに同時に形成される。
コイル上部435、436は交互に並列して配置される。また、コイル上部435は、素子形成領域をその法線方向に見て、コア441を挟んでコイル底部432と交差し、コイル上部436はコア441を挟んでコイル底部431と交差して配置される。
次に、図92(a)及び図92(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜495をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜495上に厚さ100nm程度のNiFeの電極膜(第3電極膜)496をスパッタリング法により形成する。
次に、電極膜496上にレジストを塗布して厚さ13〜16μmのレジスト層(第4レジスト層)565を形成する。次に、図93(a)及び図93(b)に示すように、レジスト層565をパターニングして、磁性部材層503上の電極膜496を露出させる開口(第4開口)505aをレジスト層565に形成する。次に、図94(a)及び図94(b)に示すように、開口505a内の電極膜496上に厚さ10〜13μm程度のNiFeの磁性部材層(第3磁性部材層)505をパターンめっき法により形成する。
次に、図95(a)及び図95(b)に示すように、レジスト層565をエッチングにより除去する。次に、図96(a)及び図96(b)に示すように、レジスト層565の除去により露出した電極膜496と、当該電極膜496の下層の電極膜495とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜495、496を除去する際に、磁性部材層505の表面も電極膜495、496の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層505は電極膜495、496に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。これにより、磁性部材層503、電極膜495、496及び磁性部材層505が積層された積層構造の閉磁路側部513が形成される。
次に、図97(a)及び図97(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ13〜16μmの絶縁層(第3絶縁層)458を形成する。次に、図98(a)及び図98(b)に示すように、CMP法により、閉磁路側部513が露出するまで絶縁層458を研磨して平坦面458aを形成する。
次に、図99(a)及び図99(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜497をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜497上に厚さ100nm程度のNiFeの電極膜(第4電極膜)498をスパッタリング法により形成する。
次に、電極膜498上にレジストを塗布して厚さ8〜13μmのレジスト層(第5レジスト層)567を形成する。次に、図100(a)及び図100(b)に示すように、レジスト層567をパターニングして、開口(第5開口)507aをレジスト層567に形成する。開口507aは、素子形成領域をその法線方向に見て、閉磁路側部513上の電極膜498が両端部に露出するようにコア441とほぼ同じ大きに形成される。次に、図101(a)及び図101(b)に示すように、開口507a内の電極膜498上に厚さ5〜10μmのNiFeの磁性部材層(第4磁性部材層)507をパターンめっき法により形成する。
次に、図102(a)及び図102(b)に示すように、レジスト層567をエッチングにより除去する。次に、図103(a)及び図103(b)に示すように、レジスト層567の除去により露出した電極膜498と、当該電極膜498の下層の電極膜497とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜497、498を除去する際に、磁性部材層507の表面も電極膜497、498の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層507は電極膜497、498に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。これにより、電極膜477、478及び磁性部材層507が積層された積層構造の閉磁路上部515が形成される。閉磁路上部515は、コイル上部435、436を介してコア441と対向して形成される。
以上の工程によって、コア441、閉磁路上部515及び2つの閉磁路側部513で構成された閉磁路541が形成される。閉磁路541は、素子形成領域にほぼ直交して形成される。
次に、図104(a)乃至図104(c)に示すように、保護膜として全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10μm程度の絶縁層459を形成する。図104(a)は、図104(b)のA−A線で切断した断面図であり、図104(c)は、図104(b)のB−B線で切断した断面図である。絶縁層459の形成材料として、アルミナ以外の絶縁性材料を用いてもよい。以上の工程により、絶縁層52、454、456、458、459が積層された積層構造の絶縁層460が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部411、412及び閉磁路541は絶縁層460に内包される。
次に、シリコン基板51を裏面から削り所望の板厚に揃える、または完全に除去する。次に、所定の切断線に沿ってウエハを切断し、ウエハ上に形成された複数のコモンモードチョークコイル401を素子形成領域毎にチップ状に分離する。外部電極接続部461、462の一部は絶縁層460の外表面に露出される。次に、図示は省略するが、切断面に露出した外部電極接続部461、462に電気的にそれぞれ接続される外部電極を当該切断面に形成する。次に、必要に応じて角部の面取りを行い、コモンモードチョークコイル401が完成する。
以上説明したように、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル401の製造方法によれば、第1の実施の形態によるコモンモードチョークコイル1の製造方法と同様に、基板面に対してほぼ平行ならせん軸を有する第1及び第2ヘリカルコイル部411、412及び閉磁路541を薄膜形成技術を用いて一連の製造工程で形成することができる。従って、対向配置された磁性基板を閉磁路の一部とする従来の薄膜型コモンモードチョークコイルに比べて、本実施の形態のコモンモードチョークコイル401は磁性基板の接着工程が不要となるので、製造工程数が削減されて製造コストの低コスト化を図ることができる。
〔第4の実施の形態〕
本発明の第4の実施の形態によるコモンモードチョークコイルについて図105乃至図136を用いて説明する。本実施の形態によるコモンモードチョークコイル601は製造方法に特徴を有している。当該製造方法により完成したコモンモードチョークコイル601の構成は、上記第3の実施の形態のコモンモードチョークコイル401と同様であるため説明は省略する。なお、第3の実施の形態と同一の機能、作用を奏する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態によるコモンモードチョークコイル601の製造方法について図105乃至図136を用いて説明する。図105乃至図136は、1個のコモンモードチョークコイル601の素子形成領域を示している。図105(a)乃至図136(a)は、図105(b)乃至図136(b)のA−A線で切断した断面図であり、図105(b)乃至図136(b)は、コモンモードチョークコイル601の製造方法を示す平面図である。
まず、上記第3の実施の形態のコモンモードチョークコイル401と同様の製造方法により、シリコン基板51上に絶縁層(下部絶縁層)52と、Cuの導電層(第1導電層)481、482を形成する(図61乃至図65参照)。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ20〜30μmのレジスト層(第2レジスト層)753を形成する。次に、図105(a)及び図105(b)に示すように、レジスト層753をパターニングして、細長状に形成された複数の導電層481、482の両端部をそれぞれ露出させる開口(第2開口)683a、684aと、素子形成領域の外周囲の長辺の内側近傍で各短辺に沿って並んで形成された導電層481、482を露出する開口663a、664aとをレジスト層753に形成する。図105(b)に示すように、複数の導電層481、482の一端部上にそれぞれ形成された複数の開口683a、684aは一直線上に交互に等間隔に配置され、他端部上にそれぞれ形成された複数の開口683a、684aは一直線上に交互に等間隔に配置される。次に、図106(a)及び図106(b)に示すように、開口663a、683a内の導電層481上に厚さ10〜18μm程度のCuの導電層(第2導電層)683を形成し、開口664a、684a内の導電層482上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第2導電層)684を形成する。導電層683、684は例えばパターンめっき法により同時に形成される。これにより、導電層683は下層の導電層481と電気的に接続され、導電層684は下層の導電層482と電気的に接続される。
次に、図107(a)及び図107(b)に示すように、レジスト層753をエッチングにより除去する。次に、図108(a)及び図108(b)に示すように、レジスト層753の除去により露出した電極膜72と、当該電極膜72の下層の電極膜71とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜71、72を除去する際に、導電層481、482、683、684の表面も電極膜71、72の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、導電層481、482、683、684は電極膜71、72の膜厚に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。また、後程説明する各電極膜の除去は、電極膜71、72の除去と同様の方法が用いられる。以上の工程によって、電極膜71、72及び導電層481が積層された積層構造のコイル底部431が形成され、電極膜71、72及び導電層482が積層された積層構造のコイル底部432が形成される。コイル底部431、432はシリコン基板51上に交互に並列して形成される。同時に、導電層683で形成されたコイル側部633a、633bがコイル底部431両端部にそれぞれ配置され、導電層684で形成されたコイル側部634a、634bがコイル底部432両端部にそれぞれ配置される。図108(b)において、コイル側部633a、634aは、図中左側に一直線上に交互に等間隔に配置され、コイル側部633b、634bは、図中右側に一直線上に交互に等間隔に配置される。
次に、図109(a)及び図109(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ17〜28μmの絶縁層(第1絶縁層)654を形成する。次に、図110(a)及び図110(b)に示すように、CMP(化学的機械的研磨)法により、コイル側部633a、633b、634a、634b上部が露出するまで絶縁層654表面を研磨して平坦面(CMP面)654aを形成する。コイル側部633a、633b、634a、634bが露出したか否かの確認は目視により行う。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ3μm程度のレジスト層(第1介在レジスト層)752を形成する。次に、図111(a)及び図111(b)に示すように、レジスト層752をパターニングして、絶縁層654を露出させる開口(第1介在開口)761aをレジスト層752に形成する。開口761aは、素子形成領域をその法線方向に見て、長方形状に形成され、コイル側部633a、634aとコイル側部633b、634bとの間にコイル底部431、432と所定の角度で交差して配置される。
次に、図112(a)及び図112(b)に示すように、開口761aに露出した絶縁層654を反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングして、開口761aとほぼ同じ形状に開口されて深さ8〜13μmの溝部761を絶縁層654に形成する。その際、溝部761の底部にコイル底部431、432が露出せず、溝部761の側部にコイル側部633a、633b、634a、634bが露出しないようにする。次に、図113(a)及び図113(b)に示すように、レジスト層752をエッチングにより除去する。
次に、図114(a)及び図114(b)に示すように、全面に膜厚10nm程度のTiの電極膜691をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜691上に膜厚100nm程度のNiFeの電極膜(第1介在電極膜)692をスパッタリング法により形成する。溝部761の側部には、溝部761底部に形成される電極膜691、692よりも薄い膜厚の電極膜691、692が形成される。電極膜691は、電極膜692と絶縁層654との密着性を向上させるバッファ膜として形成される。また、電極膜692は、後程説明する磁性部材層701のパターンめっき用の電極膜として用いられる。
次に、図115(a)及び図115(b)に示すように、電極膜692上に厚さ7〜10μmのNiFeの磁性部材層(第1磁性部材層)701を例えばパターンめっき法により形成する。なお、磁性部材層701の形成材料は、NiFe以外の高透磁率を有する材料でもよい。
次に、図116(a)及び図116(b)に示すように、CMP法により、絶縁層654上部が露出するまで磁性部材層701、電極膜692及び電極膜691を研磨する。これにより、溝部761の外側に形成された電極膜691、692及び磁性部材層701は除去される。以上の工程により、磁性部材層701で構成されたコア641が溝部761に形成される。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ5μm程度のレジスト層を形成する。次に、図117(a)及び図117(b)に示すように、当該レジスト層をパターニングして、直方体形状を有し、コア641の両短辺端部及びその周りの電極膜291、292が露出されるレジスト層767をコア641及び電極膜291、292上に形成する。レジスト層767は、電極膜691、692及びコア641と、後程説明するコイル上部635、636とを絶縁させる有機絶縁膜として用いられる。次に、図118(a)及び図118(b)に示すように、絶縁性を高めるためにレジスト層767を加熱して硬化する(キュア)。
次に、図119(a)及び図119(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜693をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜693上に厚さ100nm程度のNiFeの電極膜(第2介在電極膜)694をスパッタリング法により形成する。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第2介在レジスト層)763を形成する。次に、図120(a)及び図120(b)に示すように、レジスト層763をパターニングして、コア641の両端部上の電極膜694を露出させる開口(第2介在開口)703aをレジスト層763に形成する。開口703aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル底部431、432の外側で長方形状に形成される。次に、図121(a)及び図121(b)に示すように、開口703a内の電極膜694上に厚さ10〜15μmのNiFeの磁性部材層(第2磁性部材層)703をパターンめっき法により形成する。
次に、図122(a)及び図122(b)に示すように、レジスト層763をエッチングにより除去する。次に、図123(a)及び図123(b)に示すように、レジスト層763の除去により露出した電極膜694と、当該電極膜694の下層の電極膜693とをドライエッチング(ミリング)により除去する。以上の工程により、電極膜693、694及び磁性部材層703が積層された積層構造の閉磁路側部713が形成される。
次に、図124(a)及び図124(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜675をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜675上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2電極膜)676をスパッタリング法により形成する。電極膜675、676は、コイル側部633a、633b、634a、634bと電気的に接続され、レジスト層767によって電極膜691、692及びコア641と絶縁される。
次に、電極膜676上にレジストを塗布して厚さ10〜15μmのレジスト層(第3レジスト層)759を形成する。次に、図125(a)及び図125(b)に示すように、レジスト層759をパターニングして、電極膜676を細長状に露出する複数の開口(第3開口)687a、688aと、開口663a、664a内に形成された導電層683、684上の電極膜676を露出する開口667a、668aとを形成する。これにより、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部633a上の電極膜676が一端部に露出し、当該コイル側部633a直下のコイル底部431とコイル底部432を挟んで隣接するコイル底部431上に配置されたコイル側部633b上の電極膜676が他端部に露出する開口687aと、コイル側部634a上の電極膜676が一端部に露出し、当該コイル側部634a直下のコイル底部432とコイル底部431を挟んで隣接するコイル底部432上に配置されたコイル側部634b上の電極膜676が他端部に露出する開口688aとがほぼ等間隔に交互に並列して形成される。また、開口687aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コア641を挟んでコイル底部432に交差して対向して形成される。一方、開口688aは同方向に見て、コア641を挟んでコイル底部431に交差して対向して形成される。また、素子形成領域の両短辺側に配置される開口687aの一端部は開口667aに繋げられた状態にそれぞれ形成される。
次に、図126(a)及び図126(b)に示すように、開口667a、687a内の電極膜676上に厚さ7〜10μmのCuの導電層(第3導電層)687を形成し、開口668a、688a内の電極膜676上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第3導電層)688を形成する。導電層687、688はパターンめっき法により同時に形成され、電極膜676に電気的にそれぞれ接続される。次に、図127(a)及び図127(b)に示すように、レジスト層759を除去する。次に、図128(a)及び図128(b)に示すようにレジスト層759の除去により露出した電極膜676と、当該電極膜676の下層の電極膜675とを除去する。これにより、電極膜675、676及び導電層687が積層された積層構造のコイル上部635が形成され、電極膜675、676及び導電層688が積層された積層構造のコイル上部636が形成される。
以上の工程によって、コイル底部431、コイル側部633a、コイル上部635及びコイル側部633bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第1ヘリカルコイル部611が形成され、同時にコイル底部432、コイル側部634a、コイル上部636、及びコイル側部634bで構成される1巻きのコイルを2巻き有する第2ヘリカルコイル部612が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部611、612は2重らせん構造に形成される。また、導電層481、683、687の積層構造の外部電極接続部661が開口461a、663a、667aに同時に形成され、導電層482、684、688の積層構造の外部電極接続部662が開口462a、664a、668aに同時に形成される。
コイル上部635、636は交互に並列して配置される。また、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル上部635はコア641を挟んでコイル底部432と交差し、コイル上部636はコア641を挟んでコイル底部431と交差して配置される。
次に、図129(a)及び図129(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10〜15μmの絶縁層(第2絶縁層)658を形成する。次に、図130(a)及び図130(b)に示すように、CMP法により、閉磁路側部713が露出するまで絶縁層658を研磨して平坦面658aを形成する。
次に、図131(a)及び図131(b)に示すように、全面に厚さ10nm程度のTiの電極膜697をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜697上に厚さ100nm程度のNiFeの電極膜(第3電極膜)698をスパッタリング法により形成する。
次に、電極膜698上にレジストを塗布して厚さ7〜12μmのレジスト層(第4レジスト層)767を形成する。次に、図132(a)及び図132(b)に示すように、レジスト層767をパターニングして、開口(第4開口)707aをレジスト層767に形成する。開口707aは、素子形成領域をその法線方向に見て、閉磁路側部713上の電極膜698が両端部に露出するようにコア641とほぼ同じ大きさに形成される。次に、図133(a)及び図133(b)に示すように、開口707a内の電極膜698上に厚さ5〜10μmのNiFeの磁性部材層(第3磁性部材層)707をパターンめっき法により形成する。
次に、図134(a)及び図134(b)に示すように、レジスト層767をエッチングにより除去する。次に、図135(a)及び図135(b)に示すように、レジスト層767の除去により露出した電極膜698と、当該電極膜698の下層の電極膜697とをドライエッチング(ミリング)により除去する。電極膜697、698を除去する際に、磁性部材層707の表面も電極膜697、698の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層707の膜厚は電極膜697、698の膜厚に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。これにより、電極膜697、698及び磁性部材層707が積層された積層構造の閉磁路上部715が形成される。閉磁路上部715は、コイル上部635、636を介してコア641と対向して形成される。
以上の工程によって、コア641、閉磁路上部715及び2つの閉磁路側部713で構成された閉磁路741が形成される。閉磁路741は、素子形成領域にほぼ直交して形成される。
次に、図136(a)乃至図136(c)に示すように、保護膜として全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ10μm程度の絶縁層659を形成する。図136(a)は、図136(b)のA−A線で切断した断面図であり、図136(c)は、図136(b)のB−B線で切断した断面図である。絶縁層659の形成材料として、アルミナ以外の絶縁性材料を用いてもよい。以上の工程により、絶縁層52、654、658、659が積層された積層構造の絶縁層660が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部611、612及び閉磁路741は絶縁層660に内包される。
次に、シリコン基板51を裏面から削り所望の板厚に揃える、または完全に除去する。次に、所定の切断線に沿ってウエハを切断し、ウエハ上に形成された複数のコモンモードチョークコイル601を素子形成領域毎にチップ状に分離する。外部電極接続部661の一部は、絶縁層660の外表面に露出される。次に、図示は省略するが、切断面に露出した外部電極接続部661、662に電気的にそれぞれ接続される外部電極を当該切断面に形成する。次に、必要に応じて角部の面取りを行い、コモンモードチョークコイル601が完成する。
以上説明したように、本実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法によれば、コイル側部を構成する導電層683、684は1回のパターンめっき工程で形成されるので、当該導電層を2回のパターンめっき工程で形成する上記第3の実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法に比べて製造工程数を削減できる。これにより、コモンモードチョークコイルの製造コストの低減を図ることができる。
ここで、第1乃至第4の実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法及び従来の薄膜型コモンモードチョークコイルの製造方法について図137を用いて説明する。図137は、第1乃至第4の実施の形態及び従来のコモンモードチョークコイルの薄膜製造工程数を示している。図137は、図中の最左欄に薄膜製造工程の名称を示し、その隣から順に第1乃至第4の実施の形態及び従来のコモンモードチョークコイルの各製造工程の工程数を示している。また、図中の最下欄には、各コモンモードチョークコイルの薄膜製造工程数の合計が示されている。従来のコイルとして図137には、薄膜形成技術で形成された絶縁層及びスパイラル形状のコイル導体が対向配置された一対の磁性基板間に挟まれて、全体として直方体状の外形形状に形成された表面実装型のコモンモードチョークコイルの薄膜製造工程数が例示されている。
図137に示すように、コイル底部の形成面にほぼ平行に形成された閉磁路を有するコモンモードチョークコイル(第1及び第2の実施の形態)では、1回のコア部めっき工程で当該閉磁路が形成される。これに対し、コイル底部の形成面にほぼ直交する閉磁路を有するコモンモードチョークコイル(第3及び第4の実施の形態)では、3回のコア部めっき工程により当該閉磁路が形成される。このため、第1及び第2の実施の形態によるコイルの製造方法は、第3及び第4の実施の形態によるコイルの製造方法に比べてコア部めっき工程及びこれに関連するフォトプロセス工程が少なくなる。従って、第1及び第2の実施の形態によるコイルの製造方法によれば、第3及び第4の実施の形態によるコイルの製造方法の約2/3の総薄膜製造工程数でコモンモードチョークコイルが完成する。
第2の実施の形態(第4の実施の形態)のコモンモードチョークコイルの製造方法では、1回の導体めっき工程でコイル側部が形成される。これに対し、第1の実施の形態(第3の実施の形態)のコモンモードチョークコイルの製造方法では、2回の導体めっき工程でコイル側部が形成される。このため、第2の実施の形態(第4の実施の形態)のコイルの製造方法は、第1の実施の形態(第3の実施の形態)のコイルの製造方法に比べて導体めっき工程及びこれに関連するフォトプロセス工程が少なくなるので、総薄膜製造工程数の削減を図ることができる。しかし、第2の実施の形態(第4の実施の形態)のコイルの製造方法は、コイル側部を形成した後にコア形成用の溝部を形成しなければならないので、高度な薄膜形成技術が必要になる。このため、第1の実施の形態(第3の実施の形態)のコイルの製造方法は、コモンモードチョークコイルの製造のし易さという点において第2の実施の形態(第4の実施の形態)のコイルの製造方法より有効である。
第1の実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法は、従来のコモンモードチョークコイルの製造方法と薄膜製造工程数がほぼ同じである。第3及び第4の実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法は、従来のコモンモードチョークコイルの製造方法より薄膜製造工程数が増加している。ところが、従来のコモンモードチョークコイルは、図137に示す薄膜製造工程の他に、コイル導体が内包された絶縁層上に磁性基板を接着する接着工程が必要になる。このため、第1、第3及び第4の実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法は、従来のコモンモードチョークコイルの製造方法より全製造工程数の削減を図ることができる。
〔第5の実施の形態〕
本発明の第5の実施の形態によるコモンモードチョークコイル及びその製造方法について図138乃至図161を用いて説明する。上記第1乃至第4の実施の形態によるコモンモードチョークコイルでは、第1及び第2ヘリカルコイル部のコイルピッチが狭くなるとアルミナの絶縁層だけでは、第1及び第2ヘリカルコイル部同士が十分に絶縁されない可能性がある。そこで、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル801は、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の絶縁を十分に確保するために、両コイル部11、12の間隙に絶縁用レジスト層(有機絶縁物)771、773を備えている点に特徴を有している(図161参照)。絶縁用レジスト層771、773は絶縁性を高めるために加熱して固化されている(キュア)。
コモンモードチョークコイル801の構成は、絶縁用レジスト層771、773を有している点を除いて、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同様であるため詳細な説明は省略する。絶縁用レジスト層771、773の形成場所については、本実施の形態によるコモンモードチョークコイルの製造方法において説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一の機能、作用を奏する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態によるコモンモードチョークコイル801の製造方法について図138乃至図161を用いて説明する。コモンモードチョークコイル801はウエハ上に同時に多数形成されるが、図138乃至図161は、1個のコモンモードチョークコイル801の素子形成領域を示している。図138(a)乃至図161(a)は、図138(b)乃至図161(b)のA−A線で切断した断面図であり、図138(b)乃至図161(b)は、コモンモードチョークコイル801の製造方法を示す平面図である。
まず、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同様の製造方法により、シリコン基板51上に絶縁層(下部絶縁層)52、コイル底部31、32及び導電層(第2絶縁層)83、84を形成する(図4乃至図12参照)。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ15μm程度の絶縁用レジスト層771(有機絶縁物)を形成する。その際、導電層83、84表面が露出するようにする。次に、図138(a)及び図138(b)に示すように、絶縁用レジスト層771をパターニングして、素子形成領域の外周囲近傍の絶縁層52を露出させる。これにより、絶縁用レジスト層771はウエハ上の素子形成領域毎に島状に形成される。
次に、図139(a)及び図139(b)に示すように、絶縁性を高めるために絶縁用レジスト層771を加熱して固化する(キュア)。隣接するコイル底部31、32同士は、その間隙に形成された絶縁用レジスト層771によって絶縁され、同様に隣接する導電層83、84同士は、その間隙に形成された絶縁用レジスト層771によって絶縁される。
次に、図140(a)及び図140(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ17μm程度の絶縁層(第1絶縁層)54を形成する。次に、図141(a)及び図141(b)に示すように、CMP(化学的機械的研磨)法により、導電層83、84上部が露出するまで絶縁層54表面を研磨して平坦面(CMP面)54aを形成する。導電層83、84が露出したか否かの確認は目視により行う。
次に、図142(a)及び図142(b)に示すように絶縁層54の平坦面54a上に膜厚5nm程度のTiの電極膜91をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜91上に膜厚50nm程度のNiFe(パーマロイ)の電極膜(第1中間電極膜)92をスパッタリング法により形成する。電極膜91は電極膜71と同様に、電極膜92の密着性を良くするためのバッファ膜として形成される。また、電極膜92は、後程説明する磁性部材層101のパターンめっき用の電極膜として用いられる。
次に、電極膜92上にレジストを塗布して厚さ15μm程度のレジスト層(第1中間レジスト層)155を形成する。次に、図143(a)及び図143(b)に示すように、レジスト層155をパターニングして、電極膜92を露出させる開口(第1中間開口)101aをレジスト層155に形成する。開口101aは素子形成領域をその法線方向に見て、長方形の枠状に形成され、長方形状に開口された開口41aと、コの字状に開口された開口42aとを有している。開口101aは、図143(b)において、左側の導電層83、84が外周側に配置され、右側の導電層83、84が内周側に配置されるように形成される。また、開口41aは素子形成領域をその法線方向に見て、コイル底部31、32の両端部上の導電層83、84の間でコイル底部31、32と所定の角度で交差して配置される。
次に、図144(a)及び図144(b)に示すように、開口101a内の電極膜92上に厚さ10μm程度のNiFeの磁性部材層(第1磁性部材層)101を例えばパターンめっき法により形成する。なお、磁性部材層101の形成材料は、NiFe以外の高透磁率を有する材料でもよい。次に、図145(a)及び図145(b)に示すように、レジスト層155をエッチングにより除去する。次に、図146(a)及び図146(b)に示すように、レジスト層155の除去により露出した電極膜92と、当該電極膜92の下層の電極膜91とをドライエッチングにより除去する。電極膜91、92を除去する際に、磁性部材層101の表面も電極膜91、92の膜厚と同程度の厚さ分だけエッチングされる。しかし、磁性部材層101は電極膜91、92に比べて十分に厚く形成されているので、当該ドライエッチングにより完全に除去されることはない。以上の工程により、電極膜91、92及び磁性部材層101が積層された積層構造のコア41が開口41aに形成され、コア41と同一の積層構造を有し、コア41と協働して閉磁路141を形成する磁性部材部42が開口42aに形成される。
次に、図147(a)及び図147(b)に示すように、全面に厚さ5nm程度のTiの電極膜73をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜73上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2中間電極膜)74をスパッタリング法により形成する。電極膜73、74は下層の導電層83、84と電気的に接続される。
次に、電極膜74上にレジストを塗布して厚さ20μm程度のレジスト層(第2中間レジスト層)157を形成する。次に、図148(a)及び図148(b)に示すように、レジスト層157をパターニングして、開口83a、84a内に形成された導電層83、84上の電極膜74を露出させる開口(第2中間開口)85a、86aと、開口63a、64a内に形成された導電層83、84上の電極膜74を露出させる開口65a、66aとをレジスト層157に形成する。
次に、図149(a)及び図149(b)に示すように、開口65a、85a内の電極膜74上に厚さ17μm程度のCuの導電層(第1中間導電層)85を形成し、開口66a、86a内の電極膜74上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第1中間導電層)86を形成する。導電層85、86はパターンめっき法により形成され、下層の電極膜74に電気的にそれぞれ接続される。次に、図150(a)及び図150(b)に示すように、レジスト層157をエッチングにより除去する。次に、図151(a)及び図151(b)に示すように、レジスト層157の除去により露出した電極膜74と、当該電極膜74の下層の電極膜73とをドライエッチングにより除去する。以上の工程によって、導電層83、電極膜73、74及び導電層85が積層された積層構造のコイル側部33a、33bと、導電層84、電極膜73、74及び導電層86が積層された積層構造のコイル側部34a、34bとが形成される。図151(b)において、コイル側部33a、34aは、左側に一直線上に交互に等間隔に配置され、コイル側部33b、34bは、右側に一直線上に交互に等間隔に配置される。
次に、全面にレジストを塗布して厚さ15μm程度のレジスト層(有機絶縁物)773を形成する。その際、コイル側部33a、33b、34a、34b表面が露出するようにする。次に、図152(a)及び図152(b)に示すように、絶縁用レジスト層773をパターニングして、素子形成領域の外周囲近傍の絶縁層54を露出させる。これにより、絶縁用レジスト層773はウエハ上の素子形成領域毎に島状に形成される。
次に、図153(a)及び図153(b)に示すように、絶縁性を高めるために絶縁用レジスト層773を加熱して固化する(キュア)。隣接するコイル側部33a、34a同士は間隙に形成された絶縁用レジスト層773によって絶縁され、同様に隣接するコイル側部33b、34b同士は間隙に形成された絶縁用レジスト層773によって絶縁される。
次に、図154(a)及び図154(b)に示すように、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ17μm程度の絶縁層(第2絶縁層)56を形成する。次に、図155(a)及び図155(b)に示すように、CMP法により、導電層85、86が露出するまで絶縁層56を研磨して平坦面56aを形成する。その際、コア41及び磁性部材部42が露出するまで絶縁層56を研磨しないようにする。
次に、図156(a)及び図156(b)に示すように、絶縁層56の平坦面56a上に厚さ5nm程度のTiの電極膜75をスパッタリング法により形成し、次いで電極膜75上に厚さ100nm程度のCuの電極膜(第2電極膜)76をスパッタリング法により形成する。電極膜75、76は、電極膜73、74及び導電層85を介して導電層83と電気的に接続され、電極膜73、74及び導電層86を介して導電層84と電気的に接続される。
次に、電極膜76上にレジストを塗布して厚さ15μm程度のレジスト層(第3レジスト層)159を形成する。次に、図157(a)及び図157(b)に示すように、レジスト層159をパターニングして、電極膜76を細長状に露出する複数の開口(第3開口)87a、88aと、開口65a、66a内に形成された導電層85、86上の電極膜76を露出する開口67a、68aとを形成する。これにより、素子形成領域をその法線方向に見て、コイル側部33a上の電極膜76が一端部に露出し、当該コイル側部33a直下のコイル底部31とコイル底部32を挟んで隣接するコイル底部31上のコイル側部33b上の電極膜76が他端部に露出する開口87aと、コイル側部34a上の電極膜76が一端部に露出し、当該コイル側部34a直下のコイル底部32とコイル底部31を挟んで隣接するコイル底部32上のコイル側部34b上の電極膜76が他端部に露出する開口88aとがほぼ等間隔に交互に並列して形成される。また、開口87aは、素子形成領域をその法線方向に見て、コア41を挟んでコイル底部32に交差して対向して形成される。一方、開口88aは同方向に見て、コア41を挟んでコイル底部31に交差して対向して形成される。また、素子形成領域の短辺側に配置される開口87aの一端部は開口67aとそれぞれ接続して形成される。
次に、図158(a)及び図158(b)に示すように、開口67a、87a内の電極膜76上に厚さ10μm程度のCuの導電層(第3導電層)87を形成し、開口68a、88a内の電極膜76上に同一形成材料で同一厚さの導電層(第3導電層)88を形成する。導電層87、88は、パターンめっき法により同時に形成され、下層の電極膜76に電気的にそれぞれ接続される。次に、図159(a)及び図159(b)に示すように、レジスト層159を除去する。次に、図160(a)及び図160(b)に示すようにレジスト層159の除去により露出した電極膜76と、当該電極膜76の下層の電極膜75とを除去する。これにより、電極膜75、76及び導電層87が積層された積層構造のコイル上部35が形成され、電極膜75、76及び導電層88が積層された積層構造のコイル上部36が形成される。
以上の工程によって、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同様の構造を有し、各コイル部の間隙に絶縁用レジスト層771、773が備えられた第1及び第2ヘリカルコイル部11、12が形成される。これにより、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12同士の絶縁性が向上される。
次に、図161(a)及び図161(b)に示すように、コイル上部35、36の保護膜として、全面にアルミナをスパッタリング法により成膜して厚さ15μm程度の絶縁層58を形成する。絶縁層58の形成材料として、アルミナ以外の絶縁性材料を用いてもよい。以上の工程により、絶縁層52、54、56、58が積層された積層構造の絶縁層60が形成される。第1及び第2ヘリカルコイル部11、12、絶縁用レジスト層771、773及び閉磁路141は絶縁層60に内包される。
次に、シリコン基板51を裏面から削り所望の板厚に揃える、または完全に除去する。次に、所定の切断線に沿ってウエハを切断し、ウエハ上に形成された複数のコモンモードチョークコイル801を素子形成領域毎にチップ状に分離する。外部電極接続部61、62の一部は、絶縁層60の外表面に露出する。次に、図示は省略するが、外部電極接続部61、62に電気的に接続される外部電極を形成する。次に、必要に応じて角部の面取りを行い、コモンモードチョークコイル801が完成する。
以上説明したように、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル及びその製造方法によれば、コモンモードチョークコイル801は、加熱して固化されて絶縁性が向上した絶縁用レジスト層771、773を第1及び第2ヘリカルコイル部11、12の間隙に有している。従って、第1及び第2ヘリカルコイル部11、12のコイルピッチを狭くしても、両コイル部11、12同士の絶縁性が十分に確保されるので、コモンモードチョークコイル801の小型化が可能になる。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記第1乃至第5の実施の形態では、コア及び磁性部材部で構成された閉磁路を有するコモンモードチョークコイルを例に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、コモンモードチョークコイルはコアのみを有していてもよい。または、コモンモードチョークコイルはコア及び磁性部材部で構成された閉磁路を有していなくてもよい。
ところで、第1及び第2ヘリカルコイル部を内包する絶縁層の形成材料であるアルミナは非磁性材料である。このため、コモンモードチョークコイルの高性能化を図るためには、少なくとも透磁率が1以上の絶縁性材料で当該絶縁層を形成することが望ましい。これにより、コアを有するコモンモードチョークコイルでは、当該コアと絶縁層とで閉磁路が構成され、コアを有していないコモンモードチョークコイルでは、第1及び第2ヘリカルコイル部内周側の絶縁層と外周側の絶縁層とで閉磁路が構成される。当該閉磁路を有するコモンモードチョークコイルは、上記第1乃至第5の実施の形態のコモンモードチョークコイルに比べて電気的特性が若干劣るものの、コアや磁性部材部を形成する工程が不要になるため製造工程数が減少し、コモンモードチョークコイルの製造コストの低コスト化を図ることができる。
上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法において、導電層(第2導電層)83、84が絶縁層54に露出する平坦面54aを形成した後の閉磁路及びそれに関連する形成工程(図15乃至図26参照)を省略し、電極膜75及び電極膜(第2電極膜)76の形成工程以降の各工程(図27乃至図32)を絶縁層56に形成された平坦面56aに代えて平坦面54a上に行うことにより、閉磁路を有していないコモンモードチョークコイルを製造することができる。また、上記第1の実施の形態において、開口42aを形成せずに開口41aのみを形成して磁性部材層101を形成することにより(図16及び図17参照)、コアのみを有するコモンモードチョークコイルを製造することができる。
上記第2の実施の形態のコモンモードチョークコイルの製造方法において、導電層(第2導電層)283、284が絶縁層254に露出する平坦面254aを形成した後の閉磁路及びそれに関連する形成工程(図42乃至図51参照)を省略し、電極膜275及び電極膜(第2電極膜)276の形成工程以降の各工程を平坦面254a上に行うことにより、閉磁路を有していないコモンモードチョークコイルを製造することができる。また、上記第2の実施の形態において、開口362a及び溝部362を形成せずに開口361a及び溝部361aのみを形成して磁性部材層301を形成することにより(図42乃至図47参照)、コアのみを有するコモンモードチョークコイルを製造することができる。
上記第1乃至第5の実施の形態では、基板としてシリコン基板51が用いられるが、本発明はこれに限られない。例えば、シリコン以外の絶縁性基板又は磁性基板であっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
上記第1乃至第5の実施の形態では、スパッタリング法により電極膜が形成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、蒸着法等の薄膜形成技術を用いて電極膜を形成しても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
上記第1の実施の形態の変形例1乃至8におけるコモンモードチョークコイルの第1及び第2ヘリカルコイルの巻数やコアに対する巻き回し位置、及び外部電極接続部63、64の形状や形成場所等は、上記第2乃至第5の実施の形態によるコモンモードチョークコイルにも適用できる。
上記第2の実施の形態では、電極膜292上にレジスト層354を形成し、レジスト層354をパターニングして溝部382内の電極膜292を露出させる開口301aをレジスト層354に形成し、溝部382内の電極膜292上に磁性部材層301をパターンめっき法により形成したコモンモードチョークコイル201を例に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、上記第2の実施の形態において、電極膜292上の全面に磁性部材層301をパターンめっき法により形成し、CMP法により溝部382以外に形成された磁性部材層301を除去してもよい。このようにして形成されたコモンモードチョークコイルは、上記第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
上記第4の実施の形態では、電極膜692上の全面に磁性部材層701をパターンめっき法により形成するコモンモードチョークコイル601を例に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、上記第4の実施の形態において、電極膜692上にレジスト層を形成し、当該レジスト層をパターニングして溝部761を露出させる開口をレジスト層に形成し、溝部761内の電極膜692上のみに磁性部材層701を形成してもよい。このようにして形成されたコモンモードチョークコイルは、上記第4の実施の形態と同様の効果が得られる。
上記第5の実施の形態では、上記第1の実施の形態のコモンモードチョークコイル1と同じ構造のコモンモードチョークコイル801を例に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、第2乃至第4の実施の形態のコモンモードチョークコイル201、401、601と同じ構造のコモンモードチョークコイルの第1及び第2のヘリカルコイル部同士の間隙に絶縁用レジスト層を形成しても、上記第5の実施の形態と同様の効果が得られる。