JP2007091984A - 耐溶剤性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】スチレン系グラフト共重合体の耐溶剤性、及び耐変色性(特に光線及び水分が作用する環境下での耐変色性)を改善する。
【解決手段】(A)シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物がゴム状重合体にグラフトしたグラフト共重合体と、(B)ポリエステル系樹脂と、(C)紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系など)(c1)及び/又はヒンダードアミン系光安定剤(c2)とで樹脂組成物を構成する。この組成物は、アルキレングリコールモノエーテル及び/又はジアルキレングリコールモノエーテルに対して耐性を有する。共重合体(A)と樹脂(B)との割合(重量比)は、30/70〜90/10程度であり、共重合体(A)及び樹脂(B)の総量100重量部に対して、(c1)成分の割合は0.01〜10重量部、(c2)成分の割合は0.01〜10重量部程度である。このような組成物は、特に、浴室内で使用される用途に適している。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の溶剤に対する耐溶剤性が改善された樹脂組成物、特に、耐溶剤性とともに耐変色性(例えば、光線及び水分が作用する環境下での耐変色性)に優れる樹脂組成物、及びこのような樹脂組成物で形成された成形品(例えば、浴室内で使用される成形品)に関する。
浴室(ユニットバスのトイレ、洗面所なども含む)では、もともとその性格上、種々の薬品、例えば、浴室又は身体等の洗浄又は清浄用途に使用される洗浄又は清浄剤(防カビ剤、漂白剤、メイク落とし用化粧品なども含む)、入浴剤などに接触する可能性が高い。そのため、このような用途では、従来から、アクリロニトリル含量が高いアクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン(ABS)樹脂、ゴム成分の一部にアクリルゴムを用いたABS樹脂などの耐薬品性ABS樹脂などが使用されている。しかし、洗浄又は清浄剤などの性能は日々改善されており、目的とする汚れだけを取り除くにとどまらず、浴室内のプラスチック製品(バスユニット、トイレユニット、洗面ユニットなど)の劣化を進行させる虞があり、従来の耐薬品性ABS樹脂では耐薬品性が不十分である場合がある。
一方、浴室内は、日中の自然光の他、夜間も照明機器により光線に曝されているとともに、高温及び高湿度の環境が頻繁に形成される。このような環境下では、ABS樹脂などのスチレン系樹脂は、単に紫外線に暴露される場合よりも顕著な色相変色を生じる。しかし、上記の耐薬品性ABS樹脂では、このような特殊な光環境下での耐性も不十分である。
特許第3633064号公報(特許文献1)には、ジエン系ゴムに芳香族ビニル化合物及び/又はα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物45〜85重量%、シアン化ビニル化合物15〜55重量%及びその他の共重合可能なビニル系単量体0〜40重量%とからなる単量体混合物をグラフト共重合し、そのグラフト率が15〜100%であるグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル化合物及び/又はα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物45〜75重量%、シアン化ビニル化合物25〜55重量%、その他の共重合可能なビニル系単量体0〜40重量%とからなる単量体混合物を共重合した共重合体(B)、及びエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素からなる共重合体(C)、芳香族ポリエステル系重合体(D)よりなる群から選ばれた1種以上の重合体10〜50重量部、からなり、共重合体(B)中のシアン化ビニル化合物の3連シーケンスの割合が共重合体(B)中10重量%以下である耐薬品性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかし、このような耐薬品性樹脂組成物でも、浴室内などの光線及び水分が作用する環境下で用いると、変色する虞がある。
なお、特開平9−137016号公報(特許文献2)には、フェノール系酸化防止剤を含有したポリスチレンに、(A)硫黄系化合物、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(C)ヒンダードアミン系光安定剤を添加したポリスチレン系樹脂組成物が開示されている。上記特許文献2には、前記樹脂組成物が暗所黄変の原因となるフェノール系化合物、及び黄変を促進するヒンダードアミン系光安定剤の存在下でも黄変を抑制できることが記載されている。しかし、このような樹脂組成物では、耐溶剤性が低く、浴室内などの特殊な条件下では変色を十分に抑制できない。
特許第3633064号公報(請求項1) 特開平9−137016号公報(請求項1及び段落番号[0009])
従って、本発明の目的は、特定の溶剤に対して耐溶剤性に優れる樹脂組成物及びその成形品、並びに前記樹脂組成物を用いて耐溶剤性を改善する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い耐溶剤性を有するとともに、浴室内などの光線及び水分の双方が作用する環境下でも耐変色性に優れる樹脂組成物及びその成形品、並びに前記樹脂組成物を用いて耐溶剤性及び耐変色性を改善する方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ABS樹脂などのゴム含有グラフト共重合体が、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテルに接触すると、著しく劣化すること、前記グラフト共重合体と、ポリエステル系樹脂と、特定の耐光成分とを組み合わせると、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテルに対する耐溶剤性(特に、このような耐溶剤性とともに、耐変色性)を改善できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤に対して耐性を有する樹脂組成物であって、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物がゴム状重合体にグラフトしたグラフト共重合体(A)と、ポリエステル系樹脂(B)と、紫外線吸収剤(c1)及びヒンダードアミン系光安定剤(c2)から選択された少なくとも一種の耐光成分(C)とで構成されている。このような樹脂組成物は、光線及び水分が作用する環境下で使用されるのに適している。前記樹脂組成物は、エチレングリコールモノC1-4アルキルエーテル及びジエチレングリコールモノC1-4アルキルエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤、もしくはこの溶剤を含む清浄剤又は洗浄剤に対して耐性を有していてもよい。
前記樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)は、平均粒子径0.01〜10μm程度のゴム状重合体に対して、(i)シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物、又は(ii)シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物及び他の共重合性単量体がグラフトしたグラフト共重合体であり、前記ゴム状重合体100重量部に対して、前記シアン化ビニル化合物の割合は5〜1000重要部(例えば、10〜800重量部)程度であり、前記芳香族ビニル化合物の割合は10〜2000重量部(例えば、50〜1600重量部)程度であり、前記他の共重合性単量体の割合は0〜120重量部程度であってもよい。前記ポリエステル系樹脂(B)は、ポリC2-4アルキレンテレフタレート、又はC2-4アルキレンテレフタレートを構成ユニットとして含む共重合体であってもよい。前記グラフト共重合体(A)は、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体及びアクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体から選択された少なくとも一種であり、ポリエステル系樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートから選択された少なくとも一種であってもよい。前記紫外線吸収剤(c1)は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤で構成してもよい。
前記樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)とポリエステル系樹脂(B)との割合(重量比)は、30/70〜90/10程度であり、グラフト共重合体(A)及びポリエステル系樹脂(B)の総量100重量部に対して、紫外線吸収剤(c1)の割合は0.01〜10重量部程度であり、ヒンダードアミン系光安定剤(c2)の割合は0.01〜10重量部程度であってもよい。前記樹脂組成物は、前記紫外線吸収剤(c1)としてのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤(c2)との双方を含有してもよい。このような組成物では、紫外線吸収剤(c1)とヒンダードアミン系光安定剤(c2)との割合(重量比)は、10/90〜90/10程度であってもよい。
本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形品も含まれる。このような成形品は、例えば、浴室内で使用されるのに適している。
本発明には、さらに、前記樹脂組成物を用いて、アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤に対する耐性を改善する方法も含まれる。前記樹脂組成物を用いると、さらに、光線及び水分の作用する環境下での樹脂組成物の耐変色性も改善することができる。
本発明では、ABS樹脂などの特定のグラフト共重合体と、ポリエステル系樹脂と、特定の耐光成分とを組み合わせるので、特定の溶剤(モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテル)に接触しても、劣化によりクラックなどが発生するのを防いで、前記溶剤に対する耐溶剤性を大幅に改善できる。さらに、耐溶剤性を改善できるとともに、浴室内などの光線及び水分の双方が作用するような過酷な環境下でも、樹脂組成物(又は成形品)の変色(黄変)を抑制して、耐変色性を改善できる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物がゴム状重合体(又はゴム成分)にグラフトしたグラフト共重合体(A)と、ポリエステル系樹脂(B)と、紫外線吸収剤(c1)及びヒンダードアミン系光安定剤(c2)から選択された少なくとも一種の耐光成分(C)とで構成されている。
(A)グラフト共重合体
前記グラフト共重合体(A)において、前記シアン化ビニル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。シアン化ビニル化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。シアン化ビニル化合物としては、通常、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリルを使用する場合が多い。
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、ハロゲン置換スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなど)、α位にアルキル基が置換したα−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)などが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記芳香族ビニル化合物のうち、通常、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン(特にスチレン)などのスチレン系単量体を使用する場合が多い。
ゴム状重合体又はゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム(ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合ゴムなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、エチレン−α−オレフィン系共重合体[エチレン−プロピレンゴム(EPR)など]、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体[エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエン共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)などが挙げられる。なお、これらのゴム状重合体において、共重合体はランダム又はブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体等が含まれる。これらのゴム状重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、ポリブタジエン(ブタジエンゴム)、イソプレンゴムなどのジエン系ゴム、アクリルゴムなどである。
前記グラフト共重合体(A)は、通常、ゴム状重合体(又はゴム成分)の存在下に、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)に従い、グラフト共重合させることにより得ることができる。このグラフト共重合において、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物とともに、必要により、他の共重合性単量体を併用してもよい。すなわち、前記グラフト共重合体(A)は、ゴム状重合体に、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物及び他の共重合性単量体とがグラフトした共重合体であってもよい。前記他の共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルなど)、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルなど)、オレフィン(エチレン、プロピレンなどのアルケンなど)などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
シアン化ビニル化合物の割合は、ゴム状重合体100重量部に対して、例えば、5〜1000重量部、好ましくは10〜800重量部、さらに好ましくは50〜200重量部(例えば、100〜200重量部)程度である。芳香族ビニル化合物の割合は、ゴム状重合体100重量部に対して、例えば、10〜2000重量部(例えば、30〜1800重量部)、好ましくは50〜1600重量部、さらに好ましくは150〜1100重量部(例えば、300〜600重量部)程度である。前記他の共重合性単量体の割合は、ゴム状重合体100重量部に対して、例えば、0〜120重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜80重量部程度の範囲から適宜選択できる。
グラフト共重合体(A)では、通常、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物と必要により他の共重合性単量体との共重合体で構成されたマトリックス中に、ゴム状重合体(ゴム成分)が粒子状に分散している。このようなゴム状重合体の分散相の平均粒子径(重量平均粒子径)は、0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.2〜3μm程度の範囲から選択できる。なお、ゴム状重合体の分散相の形態は、特に限定されず、サラミ構造、コア/シェル構造、オニオン構造などであってもよい。また、グラフト共重合体(A)におけるゴム状重合体のグラフト率は、10〜150%、好ましくは20〜120%程度であってもよい。
前記グラフト共重合体の具体例としては、ゴム状重合体に、アクリロニトリル(A)とスチレン系単量体(S)とがグラフト重合した重合体、例えば、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体(ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、メタクリル酸メチル変性ABS樹脂(MABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−エチレンプロピレンゴム共重合体(AES樹脂)などの他、これらの共重合体の水素添加物などが挙げられる。グラフト共重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。グラフト共重合体(A)のうち、特に、ABS樹脂、ASA樹脂などが好ましい。なお、ABS樹脂、ASA樹脂などの3元系共重合体は、構成モノマーの2元系共重合体(例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)など)との混合物であってもよい。
なお、グラフト共重合体における構成モノマーの割合(例えば、前記ゴム状重合体に対するシアン化ビニル化合物の割合、前記ゴム状重合体に対する芳香族ビニル化合物の割合など)は、各モノマーを上記割合となるように用いることにより調整してもよく、構成モノマーの割合が互いに相違する複数のグラフト共重合体を適宜混合することにより上記範囲の割合に調整してもよい。また、グラフト共重合体が、前記3元系共重合体と2元系共重合体との混合物である場合、3元系共重合体と2元系共重合体との割合を適宜調整することにより、グラフト共重合体における構成モノマーの割合(例えば、前記ゴム状重合体に対するシアン化ビニル化合物の割合、前記ゴム状重合体に対する芳香族ビニル化合物の割合など)を上記範囲に調整してもよい。なお、3元系共重合体と2元系共重合体との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、10/90〜90/10、好ましくは15/85〜75/25、さらに好ましくは20/80〜70/30程度の範囲から選択できる。前記2元系共重合体と混合して用いる3元系共重合体において、ゴム状重合体100重量部に対するシアン化ビニル系化合物の割合は、例えば、5〜500重量部、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは15〜100重量部(例えば、15〜60重量部)程度であってもよく、芳香族ビニル化合物の割合は、例えば、10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、さらに好ましくは40〜150重量部程度であってもよい。
(B)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、通常、芳香族ポリエステル系樹脂を使用する場合が多い。
芳香族ポリエステル系樹脂は、例えば、芳香族ジカルボン酸成分[例えば、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC8-14芳香族ジカルボン酸、これらのエステル(例えば、ジメチルテレフタレートなどのC1-3アルキルエステルなど)など]を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分[脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの炭素数2〜12程度の飽和脂肪族グリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)など]との重縮合反応によって得ることができる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、ジオール成分は、それぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、前記ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸に加えて、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸などのC2-14飽和脂肪族ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸などを併用してもよい。
代表的な芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンアリレート系樹脂、例えば、ポリアルキレンアリレート[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2-4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)など]、アルキレンアリレートを構成ユニットとして含む共重合体(コポリエステル)(前記ポリアルキレンアリレートに対応するアルキレンアリレート単位を含むコポリエステル、例えば、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなどのC2-4アルキレンテレフタレート単位を含むコポリエステルなど)などのポリアルキレンアリレート系樹脂が例示できる。ポリエステル系樹脂は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。なお、前記コポリエステルは、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよい。コポリエステルにおける共重合成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2-6アルキレングリコール、ポリC2-4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。また、コポリエステルには、共重合成分として、少量の3官能以上のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、分岐鎖構造を導入してもよい。
ポリエステル系樹脂のうち、特に、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートから選択された少なくとも一種などが好ましい。
(C)耐光成分
(c1)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤(c1)としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾオキサジン系[2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)など]、サリチル酸フェニルエステル系(t−ブチルフェニルサリチル酸エステル、オクチルフェニルサリチル酸エステルなど)などの紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系紫外線吸収剤(特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)を用いる場合が多い。紫外線吸収剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシ−アルキル−アリール基を有するベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジt−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシ−C1-10アルキル−C6-10アリール基を有するベンゾトリアゾール(又はクロロベンゾトリアゾール)など]、ヒドロキシ−アルコキシ−アリール基を有するベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシ−C1-10アルコキシ−C6-10アリール基を有するベンゾトリアゾールなど]、ヒドロキシ−アラルキル−アリール基を有するベンゾトリアゾール化合物[2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシ−直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル−C6-10アリール基を有するベンゾトリアゾールなど]などが挙げられる。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のうち、ヒドロキシ−アルキル−アリール基を有するベンゾトリアゾール化合物が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から、TINUVIN(登録商標)P,PFL,234,326,326F,327,328,329,329FLなどとして入手可能である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシベンゾフェノン化合物、例えば、ヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノン化合物(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのヒドロキシ−C1-10アルコキシ−ベンゾフェノンなど)、ジヒドロキシベンゾフェノン化合物(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)、ヒドロキシ−ヒドロキシアラルキル−ベンゾフェノン(例えば、2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシベンジルベンゾフェノンなどのヒドロキシ−ヒドロキシC6-10アリールC1-4アルキル−ベンゾフェノンなど)などが挙げられる。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収剤のうち、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノン化合物などが好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシ−アルコキシ−アリール基を有するジフェニルトリアジン化合物[2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの6位にヒドロキシ−C1-16アルコキシ−C6-10アリール基を有する2,4−ジフェニル−1,3,5−トリアジン;2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの6位にヒドロキシ−C6-10アリールC1-4アルコキシ−C6-10アリール基を有する2,4−ジフェニル−1,3,5−トリアジンなど]、ヒドロキシ−アルコキシアルコキシ−アリール基を有するジフェニルトリアジン化合物[2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどの6位にヒドロキシ−C1-10アルコキシC1-10アルコキシ−C6-10アリール基を有する2,4−ジフェニル−1,3,5−トリアジンなど]などが挙げられる。
(c2)ヒンダードアミン系光安定剤
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格(通常、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格)を有する化合物、例えば、カルボン酸(脂肪族モノ又はポリカルボン酸、芳香族モノ又はポリカルボン酸など)の2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルエステル(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルエステルなど)、4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン[例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−C1-10アルコキシ−2,2,6,6−ピペリジン;4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−C6-10アリールオキシ−2,2,6,6−ピペリジン;4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど4−C6-10アリールC1-4アルキル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど]、ビス(2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルオキシ)アルカン[例えば、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなどのビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)C2-6アルカンなど]などの他、前記2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を有する高分子型光安定剤も例示できる。ヒンダードアミン系光安定剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
モノカルボン酸の2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルエステルとしては、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−脂肪族飽和又は不飽和C2-20アシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−C7-15芳香族アシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、ポリカルボン酸の2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルエステル(ジカルボン酸ジエステル、トリカルボン酸ジ又はトリエステルなど)としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのC2-20脂肪族ジカルボン酸のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレートなどのC8-16芳香族ジカルボン酸のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステルなどが挙げられる。
このようなヒンダードアミン系光安定剤のうち、低分子量型の光安定剤は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から、TINUVIN(登録商標)144,765,770DFなどとして入手可能である。また、高分子量型の光安定剤は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から、CHIMASSORB(登録商標)119FL,2020FDL,944FDL、TINUVIN(登録商標)622LD,622FB,111FDL,783FDL,791FBなどとして入手可能である。
本発明の樹脂組成物は、前記紫外線吸収剤(c1)及びヒンダードアミン系光安定剤(c2)のうち、少なくともいずれか一方を含有すればよいが、これらの成分の双方(特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤との双方)を含むのが好ましい。
(各成分の割合)
前記樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)とポリエステル系樹脂(B)との割合(重量比)は、例えば、30/70〜90/10、好ましくは35/65〜80/20、さらに好ましくは40/60〜75/25程度である。
また、紫外線吸収剤(c1)の割合は、グラフト共重合体(A)及びポリエステル系樹脂(B)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0.05〜7重量部、さらに好ましくは0.1〜6重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度である。
ヒンダードアミン系光安定剤(c2)の割合は、グラフト共重合体(A)及びポリエステル系樹脂(B)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0.05〜7重量部、さらに好ましくは0.1〜6重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度である。
樹脂組成物が、紫外線吸収剤(c1)とヒンダードアミン系光安定剤(c2)との双方を含有する場合、両者の割合(重量比)は、例えば、(c1)/(c2)=10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、例えば、30/70〜70/30、好ましくは35/65〜65/35、さらに好ましくは40/60〜60/40程度である。また、樹脂組成物が、紫外線吸収剤(c1)とヒンダードアミン系光安定剤(c2)との双方を含有する場合、両成分の総量は、各成分の割合の範囲に応じて適宜選択できるが、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜6重量部程度の範囲から選択してもよい。
前記樹脂組成物は、必要により、慣用の添加剤、例えば、安定剤[熱安定剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤など)など]、紫外線散乱剤(酸化チタンなど)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、充填剤、離型剤、金属石鹸類、加工助剤、着色剤、他の樹脂成分(オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)など)、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性エラストマーなど)などを含有してもよい。
本発明の樹脂組成物は、特定の成分を組み合わせるので、成形性及び機械的特性(機械的強度など)などに優れるとともに、耐溶剤性を改善できる。樹脂組成物は、特に、アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤に対して耐性を有している。すなわち、前記樹脂組成物を用いることにより、上記溶剤に対する耐性を改善できる。
前記アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル;エチレングリコールモノフェニルエーテルなどのC2-4アルキレングリコールモノC6-10アリールエーテル;エチレングリコールモノベンジルエーテルなどのC2-4アルキレングリコールモノ(C6-10アリールC1-4アルキル)エーテルなどが挙げられる。前記ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル;ジエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのジC2-4アルキレングリコールモノC6-10アリールエーテル;ジエチレングリコールモノベンジルエーテルなどのジC2-4アルキレングリコールモノ(C6-10アリールC1-4アルキル)エーテルなどが挙げられる。
前記溶剤のうち、エチレングリコールモノエーテル(セロソルブ類)及び/又はジエチレングリコールエーテル、特に、エチレングリコールモノC1-4アルキルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノC1-4アルキルエーテルが好ましい。
このような溶剤は、プラスチック製品、ガラス製品、陶器、金属製品などの他、身体を洗浄又は清浄するための洗浄剤(又は清浄剤)に、洗浄又は清浄成分、もしくは溶媒などとして使用されている。従って、本発明の樹脂組成物は、上記溶剤のみならず、前記溶剤を含む清浄剤又は洗浄剤に対しても耐性を有している。このような洗浄又は清浄剤としては、具体的に、プラスチック製品用の洗浄剤(洗剤、カビ取り剤、漂白剤など)、プラスチック用清浄剤(水などによる濯ぎ又は除去処理を必要としない清浄剤、殺菌又は消毒剤など(例えば、液剤又はスプレー剤タイプの清浄剤などの他、液状タイプの清浄剤をシート基剤に含浸させたシート状清浄剤(拭取シート、トイレ掃除用拭取シートなども含む)など)、身体用の洗浄又は清浄剤[ハンドソープ、メイク落とし剤(クレンジング用オイル、乳液、ジェル、又はローションなどの各種クレンジング剤(ローションなどを基剤シートに含浸させたシート状クレンジング剤も含む);ネイルカラーリムーバー、マスカラリムーバーなど)など]などが挙げられる。
このような洗浄剤又は清浄剤は、例えば、浴室、洗面所、トイレなどで使用される場合が多い。これらの場所では、成形性や強度などの点から、ABS樹脂などのグラフト共重合体が多く使用されており、上記の洗浄又は清浄剤が製品に付着すると、クラックなどが生じたりして、製品が劣化する。しかし、本発明の樹脂組成物を用いると、上記のような溶剤、洗浄又は清浄剤が付着しても、樹脂組成物(又は成形品)の劣化を顕著に抑制できる。また、前記樹脂組成物は、アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルに対する耐性だけでなく、上記用途において通常使用される薬剤(石鹸成分;次亜塩素酸などの漂白成分;界面活性剤;水、アルコールなどの溶媒など)に対する耐性も備えている。
また、ABS樹脂などのスチレン系樹脂は、光線(紫外線、可視光線、赤外線(特に紫外線)など)の作用により変色(黄変)が生じ易く、このような変色は光線とともに水分が作用する環境下では顕著となる。なお、水分が作用する環境とは、湿潤環境を意味する。上記変色は、光線が作用するとともに(特に光線が作用した後)、高温多湿環境で特に顕著である。
本発明の樹脂組成物は、このような光線及び水分が作用する環境下であっても変色(又は黄変)を抑制でき、このような環境下(例えば、浴室内)での使用に適している。
樹脂組成物は、慣用の方法、例えば、(i)混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で各成分を予備混合して溶融混練機(一軸又はベント式二軸押出機など)で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザーなど)でペレット化する方法、(ii)所望の成分のマスターバッチを調製し、必要により他の成分と混合して溶融混練機で溶融混練してペレット化する方法、(iii)各成分を溶融混練機に供給して溶融混練してペレット化する方法、(iv)所定の成分(例えば、耐光成分など)を溶融混練機の途中部で添加して、残りの成分と共に混練する方法などにより調製できる。
[樹脂成形品]
本発明の成形品は、前記樹脂組成物で形成されている。成形品は、特に制限されないが、高い耐変色性を有するため、光線及び水分が作用する環境下(特に、光線が作用し、かつ高温多湿環境下)、例えば、浴室内で使用される用途に適している。このような成形品としては、バスユニット(浴槽、カウンタートップ、浴室用タイル又はパネルなど)、バスユニットの周辺製品(タップ;シャワーヘッド;石鹸、シャンプー等を設置するためのトレー又は棚;風呂桶;椅子;手摺り;浴槽用フタ;タオルハンガー;排水口用のバスケット、エプロン、トラップ、及びカバーなど)、浴室内に設置された洗面ユニット(石鹸、シャンプー等を設置するためのトレー又は棚、タップ、シャワーヘッド、洗浄又は清浄剤などを設置するための棚など)、浴室内に設置されたトイレユニット[便座(温水シャワー式便座も含む)、便器のフタ、トイレットペーパー用ホルダー及びロール芯など]の他、アルキレングリコールモノエーテル及び/又はジアルキレングリコールモノエーテルを含む洗浄又は清浄剤などの容器などが挙げられる。
成形品の形状は、特に制限されず、用途に応じて、2次元又は3次元的形状であってもよい。
成形品は、前記樹脂組成物を慣用の方法、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形などにより成形することにより製造できる。
本発明の樹脂組成物及び成形品は、アルキレングリコールモノエーテル及び/又はジアルキレングリコールモノエーテルに対する耐性、並びに耐変色性(特に、光線及び水分が作用する環境下での耐変色性)に優れているため、このような性質が要求される用途、例えば、浴室内で使用されるプラスチック製品(例えば、バスユニット、浴室内に設置された洗面ユニット及びトイレユニット、及びこれらのユニットの周辺製品など)、アルキレングリコールモノエーテル及び/又はジアルキレングリコールモノエーテルを含む洗浄又は清浄剤などの容器などに有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜7
(1)試験片の作製
表1に示すABS樹脂と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)と、耐光成分とを、表1に示す割合で用いて、二軸押出機(東芝機械(株)製TEX30)によりシリンダー温度250℃で溶融混練し、ペレット状樹脂組成物を調製した。得られたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SH−100)により、シリンダー温度250℃及び金型温度60℃の条件で射出成形し、各試験用の試験片を作製した。なお、比較として、上記成分のうちいずかの成分を欠く例(比較例1〜5)及び市販の耐薬性ABS樹脂を用いた例(比較例6及び7)についても実施例と同様に試験片を作製した。
(2)耐変色性の評価
試験片(縦90mm×横50mm×厚み3mm)を、下記(a)の条件下で、光線に暴露し、さらに(b)の条件下で恒温槽内に静置した。色差計(日本電色(株)製,COLOR MEASURING SYSTEM Σ80型)を用いて、光線暴露前の試験片をブランク(照射0時間)として、条件(a)での光線暴露後、及び条件(b)での静置後の色差(ΔE)を測定した。
(a)耐光性試験
耐光試験機:サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターS80・H・B型(スガ試験機(株)製)
光源:サンシャインカーボンアーク
パネル温度:63±3℃
降雨周期:未降雨102分、次いで降雨18分の計120分を1サイクルとし、計50サイクル
照射時間:100時間
(b)暗所恒温恒湿試験
恒温槽内温度:80℃
恒温槽内湿度:75%RH
試験時間:20時間。
(3)耐薬品性の評価
成形品の耐薬品性を1/4楕円法に基づいて評価した。
すなわち、試験片[厚み0.03インチ(約0.75mm)×幅1インチ(約2.5cm)×長さ4インチ(約10cm)のプレスシート]を、この試験片の長軸が1/4楕円法で使用される1/4楕円治具の曲面に沿うように配置し、縦方向の両端部をステンレス鋼製で幅1インチ(約2.5cm)の治具2つでそれぞれ固定した。この固定した試験片の表面に薬剤を塗布し、24時間経過後に試験片表面に発生したクラックの臨界点(クラックの端点)から楕円中心までの長軸方向の長さx(インチ)を測定し、次式に基づいて臨界歪みεc(%)を算出した。
εc(%)={0.030(1−0.0364x2-3/2}×t×100
(式中、tは試験片の厚み(インチ)を示す。εc及びxは前記に同じ)
なお、上記1/4楕円治具は、長軸10インチ(約25cm)及び短軸3インチ(約7.5cm)の楕円体の1/4形状を有するとともに、下記の楕円方程式で表される曲面(幅1インチ(約2.5cm))を側部に有している。
(Y/1.5)2+(Z+5)2=1
実用に伴う成形品のクラック挙動と臨界歪みとの関係の目安は以下の通りである。εcの数値が大きい方が耐薬品性に優れていることを示す。なお、最終製品の種類(用途)によって、耐クラック性の要求レベルは異なる。
εcが1.0%以上:薬品の接触がクラック発生の主要因とならない
εcが0.5%以上1.0%未満:薬品の接触は、成形品クラック発生の主要因の1つとなる。応力集中の高い場合は、注意が必要である
εcが0.3%以上0.5%未満:成形品に静的又は動的歪みを生じる場合、クラック発生の危険性がある。実用試験により慎重を期する必要がある
εcが0.3%未満:成形品に成形した段階でクラックを生じる。
上記1/4楕円法の詳細については、例えば、「ABS樹脂」、(社)高分子機械材料委員会編、高分子学会発行(昭和45年8月31日初版)、112〜117頁及びSPE JOURNAL, TECHNICAL SECTION, 667-670頁(1962 JUNE) "Stress Cracking of Rigid Thermoplastics"などを参照できる。
また、上記試験で使用した薬剤は以下の通りである。
(s-1)カルビトール
(s-2)カルビトールを含有するメイク落とし剤((株)花王製、商品名「ビオレメイク落とししっかりクリアジェル」)
(s-3)(株)花王製、商品名「バスマジックリン」
(s-4)(株)花王製、商品名「マジックリン」
(s-5)ジョンソン(株)製、商品名「カビキラー」
(4)衝撃試験
JISK7111(又はISO179)に準拠して、シャルピー衝撃試験を行った(単位:kJ/m2)。
(5)なお、実施例及び比較例で用いた成分は下記の通りである。
(A)ABS樹脂
(A-1):ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製,S2601)とAS樹脂(ダイセルポリマー(株)製,020SF)とを36/64(重量比)の割合で混合した混合物(各モノマー含量:アクリロニトリル21重量%、スチレン58重量%及びブタジエンゴム21重量%)
(A-2):ABS樹脂(テクノポリマー(株)製,DP611)とAS樹脂(ダイセルポリマー(株)製,010SF)とを66/34(重量比)の割合で混合した混合物(各モノマー含量:アクリロニトリル20重量%、スチレン54重量%及びブタジエンゴム26重量%)
(A-3):ABS樹脂(テクノポリマー(株)製,0T654)とAS樹脂(ダイセルポリマー(株)製,050SF)とを25/75(重量比)の割合で混合した混合物(各モノマー含量:アクリロニトリル21重量%、スチレン64重量%及びブタジエンゴム15重量%)
(A-4):旭化成(株)製、ABS樹脂、スタイラック IX210(一般耐薬品グレード)
(A-5):旭化成(株)製、ABS樹脂、スタイラック IX700(超高耐薬品グレード)
(B)PBT
(B-1):ポリプラスチックス(株)製、ジュラネックスTRE−DE2
(B-2):ポリプラスチックス(株)製、ジュラネックスTRE−DM2
(B-3):ポリプラスチックス(株)製、ジュラネックスTRE−D7B
(C)耐光成分
(c1):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株),TINUVIN327(2−(3’,5’−ジt−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)]
(c2)ヒンダードアミン系光安定剤[三共(株)製、サノールLS-770(HALS,ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケート))]
結果を表1に示す。
Figure 2007091984

Claims (13)

  1. アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤に対して耐性を有する樹脂組成物であって、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物がゴム状重合体にグラフトしたグラフト共重合体(A)と、ポリエステル系樹脂(B)と、紫外線吸収剤(c1)及びヒンダードアミン系光安定剤(c2)から選択された少なくとも一種の耐光成分(C)とで構成された樹脂組成物。
  2. 光線及び水分が作用する環境下で使用される請求項1記載の樹脂組成物。
  3. エチレングリコールモノC1-4アルキルエーテル及びジエチレングリコールモノC1-4アルキルエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤、もしくはこの溶剤を含む清浄剤又は洗浄剤に対して耐性を有する請求項1記載の樹脂組成物。
  4. グラフト共重合体(A)が、平均粒子径0.01〜10μmのゴム状重合体に対して、(i)シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物、又は(ii)シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物及び他の共重合性単量体がグラフトしたグラフト共重合体であり、前記ゴム状重合体100重量部に対して、前記シアン化ビニル化合物の割合が5〜1000重量部であり、前記芳香族ビニル化合物の割合が10〜2000重量部であり、前記他の共重合性単量体の割合が0〜120重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
  5. ポリエステル系樹脂(B)が、ポリC2-4アルキレンテレフタレート、又はC2-4アルキレンテレフタレートを構成ユニットとして含む共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
  6. グラフト共重合体(A)が、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体及びアクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体から選択された少なくとも一種であり、ポリエステル系樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートから選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
  7. 紫外線吸収剤(c1)がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
  8. グラフト共重合体(A)とポリエステル系樹脂(B)との割合(重量比)が、30/70〜90/10であり、グラフト共重合体(A)及びポリエステル系樹脂(B)の総量100重量部に対して、紫外線吸収剤(c1)の割合が0.01〜10重量部であり、ヒンダードアミン系光安定剤(c2)の割合が0.01〜10重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
  9. 紫外線吸収剤(c1)としてのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤(c2)との双方を含有し、紫外線吸収剤(c1)とヒンダードアミン系光安定剤(c2)との割合(重量比)が、10/90〜90/10である請求項1記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形品。
  11. 浴室内で使用される請求項10記載の成形品。
  12. シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物がゴム状重合体にグラフトしたグラフト共重合体(A)と、ポリエステル系樹脂(B)と、紫外線吸収剤(c1)及びヒンダードアミン系光安定剤(c2)から選択された少なくとも一種の耐光成分(C)とで構成された樹脂組成物を用いて、アルキレングリコールモノエーテル及びジアルキレングリコールモノエーテルから選択された少なくとも一種の溶剤に対する耐性を改善する方法。
  13. さらに、光線及び水分の作用する環境下での樹脂組成物の耐変色性を改善する請求項12記載の方法。
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