JP2020152901A - 耐光性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

耐光性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐光性と耐湿熱性とを兼ね備える、ポリエステル樹脂を含む耐光性熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明の耐光性熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A1)5〜100質量%及び該ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)0〜95質量%からなる熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収剤(B)と、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)と、を含有し、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.1〜1.5質量部であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の含有量が、0.1〜1.5質量部である。【選択図】なし

Description

本発明は、耐光性熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリエステル樹脂は、軽量で機械的強度に優れたプラスチック材料として知られ、耐熱性、耐薬品性、電気特性などの特長を生かし、家電、電子・電気、車両、建材などの分野において、各種用途に展開されている。
浴室、キッチン周りや自動車内は、高温、高湿、光線(自然光や人工照明)に繰り返しさらされる、過酷な環境である。一般にポリエステル樹脂は、光により劣化が進行し、変色(色相の変化)を来すこと、高温、高湿度下ではエステル結合が加水分解を起こすことにより、重合度が低下し、強度などの物性値が低下することなどが知られている。そこで、これらの問題を解決するため、ポリエステル樹脂に紫外線吸収剤(UV吸収剤)や光安定剤を配合し、耐光性や耐湿熱性を改善する試みが提案されている。
ところで、光安定剤の中でも、ヒンダードアミン系光安定剤は、一般にアルカリ成分であるため、ポリエステル樹脂の加水分解を促進させ、強度を低下させうることも知られている。このため、従来、ヒンダードアミン系光安定剤は、ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂の光安定剤として積極的に選択されることはまずなかった。
例えば、特許文献1には、特定のポリカーボネート樹脂と、特定のポリエステル樹脂と、特定のSP値を有するUV吸収剤とを含み、ヒンダードアミン系光安定剤を実質的に含まない熱可塑性樹脂組成物が開示され、当該熱可塑性樹脂組成物は、UV曝露による衝撃強度の低下の抑制と、色変化の抑制とを両立しうると記載されている(特許文献1の請求項1、段落0009、0080など)。しかし、このような熱可塑性樹脂組成物でも、高温、高湿度下で、繰り返し光に曝露する過酷な環境においては、強度低下や変色の抑制を十分に満足できるレベルに達成できているとは言い難い。
特許第6394230号公報
本発明の目的は、耐光性と耐湿熱性とを兼ね備える、ポリエステル樹脂を含む耐光性熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、驚くべきことに、ポリエステル樹脂の加水分解促進作用を有するヒンダードアミン系光安定剤の中でも、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤については、紫外線吸収剤とともに、特定量配合すると、耐光性と耐湿熱性のバランスに優れる耐光性熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、
ポリエステル樹脂(A1)5〜100質量%及び該ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)0〜95質量%からなる熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収剤(B)と、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.1〜1.5質量部であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の含有量が、0.1〜1.5質量部である、耐光性熱可塑性樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称する場合がある)を提供する。
前記樹脂組成物において、前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)としては、N−R型及びN−CH3型のいずれも好ましい。
前記樹脂組成物において、前記ポリエステル樹脂(A1)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートから構成される群より選択される少なくとも1種であってもよい。
前記樹脂組成物において、前記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)が、スチレン系樹脂であることが好ましい。
本発明によれば、耐光性と耐湿熱性を兼ね備えた、ポリエステル樹脂を含む耐光性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A1)と、該ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)と、紫外線吸収剤(B)と、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)と、を少なくとも含む。本発明の樹脂組成物は、前記成分以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。また、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分及び他の成分は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
ポリエステル樹脂(A1)
ポリエステル樹脂(A1)としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。中でも、芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。前記ポリエステル樹脂(A1)は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記芳香族ポリエステル樹脂は、例えば、芳香族ジカルボン酸成分[例えば、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC8-14芳香族ジカルボン酸、これらのエステル(例えば、ジメチルテレフタレートなどのC1-3アルキルエステルなど)など]を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分[脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの炭素数2〜12程度の飽和脂肪族グリコールなど)、脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)など]との重縮合反応によって得ることができる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、ジオール成分は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。また、前記ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸に加えて、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸などのC2-14飽和脂肪族ジカルボン酸など)、脂環式ジカルボン酸などを併用してもよい。
代表的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンアリレート樹脂、例えば、ポリアルキレンアリレート[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2-4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)など);ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)など]、アルキレンアリレートを構成ユニットとして含む共重合体(コポリエステル)(前記ポリアルキレンアリレートに対応するアルキレンアリレート単位を含むコポリエステル、例えば、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなどのC2-4アルキレンテレフタレート単位を含むコポリエステルなど)などのポリアルキレンアリレート樹脂が例示できる。前記芳香族ポリエステル樹脂は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる
前記ポリエステル樹脂(A1)は、中でも、汎用性が高い観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートから構成される群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートから構成される群より選択される少なくとも1種である。特に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート、及び/又は、ポリエチレンテレフタレートである。
前記ポリエステル樹脂(A1)は、異なるポリエステル樹脂同士を混合することにより、所望の物性に改良することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを混合(いわゆるアロイ化)することにより、耐熱性や寸法安定性の向上を図ることができる。また、前記アロイ化により、ポリエチレンテレフタレートの結晶化を促進し、成形性が向上することにより、射出成形に適した物性に改良することができる。なお、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの割合(質量比)は、特に制限されず、例えば10/90〜90/10、好ましくは15/85〜85/15、より好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは25/75〜75/25、特に好ましくは30/70〜70/30程度の範囲から選択できる。
前記ポリエステル樹脂(A1)は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させることにより製造することができる。
前記ポリエステル樹脂(A1)の数平均分子量は、例えば、5,000〜100,000である。前記数平均分子量は、より好ましくは、7,000〜80,000、さらに好ましくは9,000〜60,000、特に好ましくは、10,000〜50,000である。数平均分子量が5,000以上の場合には、機械的強度が大きくなる傾向がある。一方、数平均分子量が100,000以下の場合には、溶融加工やアロイ化が容易となる傾向がある。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めることができる。
前記ポリエステル樹脂のメルトマスフローレイト(MFR;melt mass−flow rate)は、例えば、0.1〜200g/minである。前記メルトマスフローレイトは、用途によって適宜調整することができる。例えば、パイプ、シートなどの一般押出成形には、0.1〜1g/min程度、ブロー成形には、0.8〜6g/min程度、射出成形には、4〜60g/min程度、溶融紡糸には、40〜200g/min程度を目安に調整するとよい。上記範囲のメルトマスフローレイトを有する前記ポリエステル樹脂(A1)は、前記ポリエステル樹脂(A1)を単独で、又は二種以上をブレンドして調整することによって得ることができる。なお前記メルトマスフローレイトは、JIS K 7210(又はISO 1133)に従い測定した時の値である。
ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)
ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)(以下、「熱可塑性樹脂(A2)」と称する場合がある)としては、例えば、スチレン系樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ビニル系樹脂;ポリアセタール樹脂;芳香族及び脂肪族ポリケトン樹脂;熱可塑性澱粉樹脂;MS樹脂;芳香族ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂(A2)としては、中でも、前述のポリエステル樹脂(A1)とのアロイ化による耐衝撃性向上の観点から、スチレン系樹脂が好ましい。
前記スチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレンの単独重合体である汎用ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体;二種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体;スチレン−ジエン系共重合体;スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体、スチレン−シアン化ビニル化合物共重合体等のスチレン系単量体と他の単量体との共重合体;ポリスチレンと合成ゴム(例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等)の混合物、合成ゴムにスチレンをグラフト重合させたポリスチレン等の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン系単量体を含む重合体(例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体)の連続相中にゴム状重合体を分散させ、該ゴム状弾性体に前記共重合体をグラフト重合させたグラフト共重合体;スチレン系エラストマー等が挙げられる。前記スチレン系樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
前記スチレン系樹脂としては、耐衝撃性を良好に向上させる観点から、中でも、スチレン−シアン化ビニル化合物共重合体等のスチレン系単量体とシアン化ビニル化合物との共重合体、ゴム状重合体に前記共重合体をグラフト重合させたグラフト共重合体が好ましい。前記スチレン系単量体とシアン化ビニル化合物との共重合体は、スチレン−アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。すなわち、前記グラフト共重合体は、スチレン−アクリロニトリル−ゴム状重合体の共重合体であることが特に好ましい。
前記スチレン系単量体としては、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、ハロゲン置換スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなど)、α位にアルキル基が置換したα−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)などが挙げられる。前記スチレン系単量体は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記シアン化ビニル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリルが好ましい。前記シアン化ビニル化合物は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記グラフト共重合体における前記ゴム状重合体としては、例えば、ジエン系ゴム(ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合ゴムなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、エチレン−α−オレフィン系共重合体[エチレン−プロピレンゴム(EPR)など]、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体[エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエン共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)などが挙げられる。なお、これらのゴム状重合体において、共重合体はランダム又はブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体などが含まれる。中でも、好ましいゴム成分は、ポリブタジエン(ブタジエンゴム)、イソプレンゴムなどのジエン系ゴム、アクリルゴムなどである。前記ゴム状重合体は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記スチレン系単量体とシアン化ビニル化合物との共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体は、ゴム状重合体の存在下に、シアン化ビニル化合物及びスチレン系単量体を含む単量体組成物を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)に従い、グラフト共重合させることにより得ることができる。このグラフト共重合において、シアン化ビニル化合物及びスチレン系単量体とともに、必要により、他の共重合性単量体を併用してもよい。すなわち、前記グラフト共重合体は、ゴム状重合体に、シアン化ビニル化合物、スチレン系単量体及び他の共重合性単量体とがグラフトした共重合体であってもよい。前記他の共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルなど)、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルなど)、オレフィン(エチレン、プロピレンなどのアルケンなど)などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記グラフト共重合体中の前記シアン化ビニル化合物の割合は、ゴム状重合体100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部、好ましくは10〜800質量部、さらに好ましくは50〜200質量部(例えば、100〜200質量部)程度である。前記グラフト共重合体中の前記スチレン系単量体の割合は、ゴム状重合体100質量部に対して、例えば、10〜2000質量部(例えば、30〜1800質量部)、好ましくは50〜1600質量部、さらに好ましくは150〜1100質量部(例えば、300〜600質量部)程度である。前記グラフト共重合体中の前記他の共重合性単量体の割合は、ゴム状重合体100質量部に対して、例えば、0〜120質量部、好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは5〜80質量部程度の範囲から適宜選択できる。
前記グラフト共重合体中の前記ゴム状重合体の割合(質量%)は、前記グラフト共重合体100質量%に対して、例えば、10〜80質量%であり、30〜60質量%が好ましい。
前記グラフト共重合体では、通常、前記シアン化ビニル化合物と前記スチレン系単量体と必要により他の共重合性単量体との共重合体で構成されたマトリックス中に、前記ゴム状重合体(ゴム成分)が粒子状に分散している。このようなゴム状重合体の分散相の平均粒子径(質量平均粒子径)は、0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.2〜3μm程度の範囲から選択できる。なお、ゴム状重合体の分散相の形態は、特に限定されず、サラミ構造、コア/シェル構造、オニオン構造などであってもよい。また、グラフト共重合体におけるゴム状重合体のグラフト率は、10〜150質量%、好ましくは20〜120%質量程度であってもよい。
前記グラフト共重合体の具体例としては、ゴム状重合体に、アクリロニトリル(A)とスチレン系単量体(S)とがグラフト重合した重合体、例えば、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体(ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、メタクリル酸メチル変性ABS樹脂(MABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−エチレンプロピレンゴム共重合体(AES樹脂)などの他、これらの共重合体の水素添加物などが挙げられる。前記グラフト共重合体は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記スチレン系樹脂としては、ポリエステル樹脂とのアロイ化により、耐衝撃性が一層向上する観点から、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体などの3元系共重合体が好ましい。なお、これらの3元系共重合体は、構成モノマーの2元系共重合体(例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)など)との混合物であってもよい。すなわち、前記スチレン系樹脂は、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体、及びアクリロニトリル−スチレン共重合体から構成される群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、前記グラフト共重合体における構成モノマーの割合(例えば、前記ゴム状重合体に対する前記シアン化ビニル化合物の割合、前記ゴム状重合体に対する前記スチレン系単量体の割合など)は、各モノマーを前記割合となるように用いることにより調整してもよく、構成モノマーの割合が互いに相違する複数のグラフト共重合体を適宜混合することにより前記範囲の割合に調整してもよい。なお、3元系共重合体と2元系共重合体との割合(質量比)は、特に制限されない。前記2元系共重合体と混合して用いる3元系共重合体において、前記ゴム状重合体100質量部に対する前記シアン化ビニル系化合物の割合は、例えば、5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。また、前記スチレン系単量体の割合は、例えば、5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
前記熱可塑性樹脂(A2)の製造方法は、特に制限されず、公知乃至慣用の製造方法によって製造することができる。例えば、前記熱可塑性樹脂(A2)として、前記スチレン系樹脂を用いる場合、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法又はこれらの組み合わせの方法によりスチレン系樹脂を得ることができる。
紫外線吸収剤(B)
紫外線吸収剤(B)としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾオキサジン系、サリチル酸フェニルエステル系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤などが挙げられる。前記紫外線吸収剤(B)としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、及びトリアジン系の紫外線吸収剤から構成される群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、中でも、後述のヒンダードアミン系光安定剤(C)との相乗効果により一層良好な耐光性及び耐湿熱性を付与する観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことがより好ましい。前記紫外線吸収剤(B)は、それぞれ、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、中でも、ヒドロキシ−アルキル−アリール基を有するベンゾトリアゾール化合物が好ましい。このようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2´−ヒドロキシ―5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ―5´−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ―3´−tert−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ―3´,5´−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ―3´,5´−ジ・tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、市販品を利用することができる。市販品としては、例えば、商品名「TINUVIN−P」、商品名「TINUVIN−PS」、商品名「TINUVIN−326」(以上、BASF製)、商品名「アデカスタブLA−32」、商品名「アデカスタブLA−36」(以上、ADEKA株式会社製)、商品名「JF−79」(城北化学工業株式会社製)などを挙げることができる。
N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)
N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)とは、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格(通常、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格)を、分子中に1以上有する化合物において、前記ピペリジン骨格の窒素原子に結合した水素原子がメチル基(CH3)で置換されたものがN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤であり、前記水素原子がメチル基以外の有機基(例えば、アルコキシ基)で置換されたものがN−R型ヒンダードアミン系光安定剤である。前記N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、それぞれ単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。さらに、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤とN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤を組み合わせて使用することもできる。
N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、N−H型(前記ピペリジン骨格の窒素原子に結合した水素原子が結合したままで有機基と置換されていないもの)と比較して、アルカリ性が低い。このため、前記ポリエステル樹脂(A1)に配合しても、加水分解促進作用の発現が抑えられ、重合度の低下や変色(色相の変化)が抑えられるものと推測される。また、前述の紫外線吸収剤(B)との相乗効果により、本発明の樹脂組成物の耐光性、耐湿熱性のバランスを好適なものに整えるものと推測される。
前記2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を有する化合物の例としては、例えば、カルボン酸(脂肪族モノ又はポリカルボン酸、芳香族モノ又はポリカルボン酸など)の2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルエステル(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルエステルなど)、4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン[例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−C1-10アルコキシ−2,2,6,6−ピペリジン;4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの4−C6-10アリールオキシ−2,2,6,6−ピペリジン;4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど4−C6-10アリールC1-4アルキル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど]、ビス(2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジルオキシ)アルカン[例えば、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなどのビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)C2-6アルカンなど]などの他、前記2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を有する高分子型光安定剤も例示できる。
前記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤における、R(メチル基を除く有機基)としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基などを挙げることができる。
前記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、例えば、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート;デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物;2−クロロ−4,6−ビス−(ジ−n−ブチルアミノ)−[1,3,5]トリアジンで末端封止した、2,4−ジクロロ−6−(n−ブチル−(2,2,6,6−テトラメチル−1−プロポキシピペリジン−4−イル)アミノ)−[1,3,5]トリアジンとN,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−1−プロポキシピペリジン−4−イル)ヘキサン−1,6−ジアミンとの重縮合物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
前記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤は、市販品を利用することができる。市販品としては、例えば、商品名「アデカスタブLA−81」(株式会社ADEKA製)、商品名、商品名「TINUVIN 123」(以上、BASF製)などを挙げることができる。
前記N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及びβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応生成物などが挙げられる。
前記N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤は、市販品を利用することができる。市販品としては、低分子量型としては、例えば、商品名「TINUVIN PA 144」、商品名「TINUVIN 765」(以上、BASF製)、商品名「アデカスタブLA−52」、商品名「アデカスタブLA−72」(以上、株式会社ADEKA製)を挙げることができる。また、高分子量型としては、商品名「アデカスタブLA−63P」(株式会社ADEKA製)などを挙げることができる。
(各成分の割合)
本発明の樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)5〜100質量%及び該ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)0〜95質量%からなる。前記構成とすることで、耐熱性、耐薬品性、電気特性などのポリエステル樹脂の特長を生かしつつ、耐光性と耐湿熱性に優れた樹脂組成物とすることができる。また、前記樹脂組成物(A2)を95質量%以下の割合で配合することで、例えば、耐衝撃性や、成形性などを向上させるなど、所望する特性に改良することができる。本発明の樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂(A)の構成は、耐光性と耐湿熱性のバランスに優れる観点から、ポリエステル樹脂(A1)10〜90質量%、及び熱可塑性樹脂(A2)10〜90質量%からなることが好ましく、ポリエステル樹脂(A1)20〜80質量%、熱可塑性樹脂(A2)20〜80質量%からなることがより好ましく、ポリエステル樹脂(A1)30〜70質量%、熱可塑性樹脂(A2)30〜70質量%からなることがさらに好ましい。
前記紫外線吸収剤(B)の割合は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜1.5質量部であり、好ましくは、0.15〜1.2質量部であり、より好ましくは、0.2〜1.0質量部である。紫外線吸収剤(B)の含有量が前記範囲内であると、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)との相乗効果により、優れた耐光性を発揮し、経時的な色相変化を抑制し、変色を抑えることができる。また、耐光性と耐湿熱性のバランスを優れたものとすることができる。
前記N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)の割合は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜1.5質量部であり、好ましくは、0.15〜1.2質量部であり、より好ましくは、0.2〜1.0質量部である。前記N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)の含有量が前記範囲内であると、前記紫外線吸収剤(B)との相乗効果により、優れた耐光性を発揮し、経時的な色相変化を抑制し、変色を抑えることができる。また、アルカリ性が弱く、ポリエステル樹脂(A1)の加水分解を促進する効果が抑制されるため、耐光性と耐湿熱性のバランスを優れたものとすることができる。
なお、前記紫外線吸収剤(B)と前記N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)の使用割合(質量比)は、例えば、1〜50:50〜1、好ましくは1〜10:10〜1、より好ましくは1〜5:5〜1である。
本発明の樹脂組成物は、必要により、慣用の添加剤、例えば、安定剤[熱安定剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤など)など]、紫外線散乱剤(酸化チタンなど)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、離型剤、金属石鹸類、加工助剤、着色剤(顔料、染料)、難燃剤・難燃助剤(含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモンなど)、可塑剤、補強剤や充填剤(タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等)などを含有してもよい。
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法、例えば、(i)混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で各成分を予備混合して溶融混練機(一軸又はベント式二軸押出機など)で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザーなど)でペレット化する方法、(ii)所望の成分のマスターバッチを調製し、必要により他の成分と混合して溶融混練機で溶融混練してペレット化する方法、(iii)各成分を溶融混練機に供給して溶融混練してペレット化する方法、(iv)所定の成分(例えば、紫外線吸収剤(B)など)を溶融混練機の途中部で添加して、残りの成分とともに混練する方法などにより調製できる。
また、本発明の樹脂組成物は、公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形などの任意の方法で成形することにより、各種成形品に加工し利用することができる。前記成形品としては例えば、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(B)とN−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)を特定量配合することにより、ポリエステル樹脂(A1)の加水分解が抑制され、物性(例えば、シャルピー衝撃強度で評価する「衝撃強さ」など)低下が抑制され、色相の変化も抑制される。このため、耐光性と耐湿熱性を兼ね備えた樹脂組成物が得られる。本発明の樹脂組成物は、成形される成形品の、後述の耐光性評価において測定される耐光性において、色差ΔEが5以下であれば、用途にもよるが、実用に十分耐えうると判断できる。また、前記成形品の、後述の耐湿熱性の評価において測定される、湿熱処理後におけるシャルピー衝撃強度保持率(%)(以下、「保持率(%)」と称する場合がある)が大きいほど(例えば50%以上)、耐湿熱性に優れると評価できる。そして、前述の各々の数値範囲を満たす場合、耐光性と耐湿熱性を兼ね備えると評価できる。
本発明の樹脂組成物により得られる前記成形品は、自動車部材、電気・電子部材、建築部材、家具用部材、各種容器、日用品、生活雑貨、及び衛生用品など各種用途に利用することができる。特に、本発明の樹脂組成物は、耐光性と耐湿熱性を兼ね備える成形品を得ることができるため、自動車の内装部品(ダッシュボード、インパネなど)、建築部材(屋根下地や床用下地及び壁面など)、浴室やトイレ、キッチン周り(バスユニット、ユニットバス、洗面ユニット、キッチン用品、シンク、キャビネットなど)など、光線及び水分や作用する環境下(特に、光線が作用し、かつ高温多湿環境下)で使用される用途に適している。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1〜9、比較例1〜7
(試験片の作製)
実施例は、表1に示す組成で、ポリエステル樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)、紫外線吸収剤(B)、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)を表1に示す配合割合(単位:質量部)で用いて、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEX30)によりシリンダー温度250℃で溶融混練し、ペレット状樹脂組成物を調製した。得られたペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製SH−100)により、シリンダー温度250℃及び金型温度60℃の条件で射出成形し、試験片を作製した。なお、比較例は、表1の組成とした以外は、実施例と同様に試験片を作製した。
(耐光性の評価)
試験片(縦90mm×横50mm×厚み3mm)を、下記の条件下で、光線に曝露した。色差計(コニカミノルタ株式会社製、SPECTROPHOTOMETER CM−3600d)を用いて、光線曝露前の試験片をブランク(照射0時間)として、光線曝露後の色差(ΔE)を測定した。なお色差ΔEが2以下の場合には、両者の色の差は目視できない程度であることが経験則上判明している。また色差ΔEが、5以下の場合であれば、用途にもよるが、実用に十分耐えうると判断できる。結果を表1に示す。
試験条件
耐光試験機:サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターS80・H・B型(スガ試験機株式会社製)
光源:サンシャインカーボンアーク
パネル温度:63±3℃
降雨周期:未降雨48分、次いで降雨12分の計60分を1サイクルとし、計500サイクル
照射時間:500時間
(耐湿熱性の評価)
ノッチあり試験片(縦10mm×横80mm×厚み3mm)を、下記の湿熱条件で処理した。湿熱処理前後の試験片について、JIS K 7111(又はISO179)に従い、シャルピー衝撃試験を実施した(単位:kJ/m2)。0時間(試験開始時)及び500時間湿熱処理後の各試験片について、各々衝撃値を測定し、下記式(1)から試験開始時のシャルピー衝撃強度に対する、湿熱処理後のシャルピー衝撃強度の保持率(%)を求めた。前記保持率(%)が大きいほど(例えば、50%以上)、湿熱処理後のシャルピー衝撃強度の低下が少ないことを示す。結果を表1に示す。
湿熱処理条件
恒温槽内温度:80℃
恒温槽内湿度:95%RH
試験時間: 500時間
シャルピー衝撃強度保持率(%)=(湿熱処理後の試験片のシャルピー衝撃強度/試験開始時の試験片の衝撃強度)×100 (1)
実施例及び比較例で用いた成分は下記のとおりである。
ポリエステル樹脂(A1)
PBT樹脂(1):ポリブチレンテレフタレート、メルトマスフローレイト:12g/10min、温度250℃、荷重2.16kg
PBT樹脂(2):ポリブチレンテレフタレート、メルトマスフローレイト:37g/10min、温度250℃、荷重2.16kg
熱可塑性樹脂(A2)
ABS樹脂:アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンゴム共重合体、商品名「DP611」(テクノポリマー株式会社製)
AS樹脂:アクリロニトリル−スチレン共重合体、商品名「010SF」(ダイセルポリマー株式会社製)
紫外線吸収剤(B)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:2−(2´−ヒドロキシ―3´−tert−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、商品名「JF−79」(城北化学工業株式会社製)
N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C1)
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、テトラメチルエステル、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応生成物、商品名「アデカスタブ LA−63P」(株式会社ADEKA製)
N−R型ヒンダードアミン系光安定剤(C2)
ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルペリジン−4−イル)カーボネート
商品名「アデカスタブ LA−81」(株式会社ADEKA製)
その他成分
N−H型ヒンダードアミン系光安定剤、商品名「TINUVIN 770DF」(BASF製)
Figure 2020152901
(結果の考察)
実施例
実施例1〜9は、耐光性と耐湿熱性のいずれも優れており、これらをバランスよく兼ね備えていることが示された。なお実施例1〜3、6〜9は熱可塑性樹脂(A2)として、スチレン系樹脂(ABS樹脂、AS樹脂)を配合した例である。一般に、ABS樹脂などのスチレン系樹脂は、光線(紫外線、可視光線、赤外線(特に紫外線)など)の作用により変色(黄変)が生じやすく、このような変色は光線とともに水分が作用する環境下では顕著となる。この点、実施例1〜3、6〜9では、色差(ΔE)は、2.0〜4.7と極めて低値に抑えられた。また、実施例4〜5は、熱可塑性樹脂(A)の構成が、ポリエステル樹脂(A1)のみからなる例である。前述のとおり、一般にポリエステル樹脂は、光線曝露や高温高湿環境下では、加水分解が促進されるところ、実施例4〜5は、色差(ΔE)も低値であり、且つ物性低下も十分に抑えられた。
(比較例の評価)
比較例1:
比較例1は、紫外線吸収剤(B)を配合し、光安定剤を配合しなかった例である。比較例1は湿熱処理前後の色差(ΔE)が5以上であり、耐光性に劣る結果となった。つまりN−R又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)を欠く例では、十分な耐光性が得られないことが判明した。
比較例2:
比較例2は、紫外線吸収剤(B)とN−H型ヒンダードアミン系光安定剤を配合した例である。耐湿熱性の評価において、比較例2のシャルピー衝撃強度保持率(%)は、50%未満であった。つまりN−H型ヒンダードアミン系光安定剤はアルカリ性が強く、ポリエステル樹脂の加水分解を促進させ、物性値を低下させる作用を有することが裏付けられた。
比較例3:
比較例3は、紫外線吸収剤(B)、つまりN−R又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)のいずれも未配合の例である。比較例3は、色差(ΔE)が大きく、耐光性に劣る結果となった。
比較例4:
比較例4は、N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C1)を配合し、紫外線吸収剤(B)を配合しなかった例である。比較例4は、色差(ΔE)が大きく、耐光性に著しく劣る結果となった。すなわち、紫外線吸収剤(B)を欠く例では、十分な耐光性が得られないことが判明した。
比較例5:
比較例5は、N−H型ヒンダードアミン系光安定剤を配合し、紫外線吸収剤(B)及びN−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)を配合しなかった例である。比較例5は、色差(ΔE)が大きく、耐光性が著しく劣る結果となった。すなわち、紫外線吸収剤(B)、N−R又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)を欠く例では、十分な耐光性が得られないことが判明した。また、耐湿熱性の評価において、シャルピー衝撃強度保持率(%)は、50%未満であった。つまりN−H型ヒンダードアミン系光安定剤はアルカリ性が強く、ポリエステル樹脂の加水分解を促進させ、物性値を低下させる作用を有することが裏付けられた。
比較例6:
比較例6は、紫外線吸収剤(B)、N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C1)の両方が配合量の上限値を超える例であるが、耐湿熱性と耐光性の両方が劣った。耐湿熱性の評価において、シャルピー衝撃強度保持率(%)は、50%未満であった。N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤を多量に使用すると、物性は低下すると考えられる。また、N−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤を多量に使用すると、色相が安定しなかった。
比較例7:
比較例7は、熱可塑性樹脂(A)の構成が、ポリエステル樹脂(A1)100質量%からなり、紫外線吸収剤(B)、N−R又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)のいずれも未配合の例である。比較例7は、色差(ΔE)が大きく、耐光性が著しく劣る結果となった。

Claims (4)

  1. ポリエステル樹脂(A1)5〜100質量%及び該ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)0〜95質量%からなる熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収剤(B)と、N−R型又はN−CH3型ヒンダードアミン系光安定剤(C)と、を含有し、
    前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.1〜1.5質量部であり、前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の含有量が、0.1〜1.5質量部である、耐光性熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)が、N−CH3型である請求項1記載の耐光性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ポリエステル樹脂(A1)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートから構成される群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の耐光性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(A2)が、スチレン系樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐光性熱可塑性樹脂組成物。
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