JP2007091789A - 塗装外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

塗装外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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幸仁 残華
Takeshi Shimizu
健 清水
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Takayuki Sato
孝幸 佐藤
Mineyuki Saotome
峰行 五月女
Shinichi Takaragi
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Abstract

【課題】射出成形後の塗装外観が良好で、耐衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる自動車用射出成形部品である成形体の提供。
【解決手段】MFRが40〜100g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体45〜55重量%、MFRが4〜10g/10分で、密度が0.855〜0.865g/cmであるエチレン・ブテンランダム共重合体20〜30重量%、平均粒径が3μm以下であるタルク25〜35重量%を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物が、MFRが20g/10分以上、曲げ弾性率が1800MPa以上、−30℃におけるアイゾット衝撃強度が6kJ/m以上、線膨張係数が5×10−5cm/cm・℃以下を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗装外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体に関し、詳しくは、射出成形後の塗装外観が良好で、耐衝撃特性、線膨張特性にも優れる、プロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・ブテンランダム共重合体及び粒径の小さいタルクにより構成されるポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる自動車用射出成形部品である成形体に関する。
ポリプロピレンに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・ブテン共重合体ゴム等のエチレン系熱可塑性エラストマー成分と、タルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン組成物を自動車用部品に使用することは、従来から、広く知られている。そして、ポリプロピレンや各種ゴム成分、無機充填剤を種々検討することによって、成形性、機械物性、外観などを向上させることが提案されている。
たとえば、ポリプロピレン樹脂、2種類の無定形エチレン−αオレフィン共重合体、及び無機質充填材からなり、寸法安定性、射出成形時の離型性、及び成形加工性に優れ、線膨張係数が特定範囲のポリプロピレン樹脂成形品(例えば、特許文献1参照。)、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体、メタロセン触媒で重合されたエチレン・炭素数4〜8のα−オレフィン共重合体、及び特定の形状のタルクを含有する、優れた成形加工性、機械的強度バランス(高い剛性と低温衝撃強度)並びに塗装性を有するプロピレン系樹脂組成物(例えば、特許文献2参照。)、ポリプロピレン樹脂、メタロセン化合物を重合触媒としたエチレンとα−オレフィン共重合体、及びタルクからなる、優れた剛性、耐低温衝撃性、低線膨張係数を有する、ポリオレフィン系樹脂組成物(例えば、特許文献3参照。)等に示されるように、射出成形性、射出成形品の表面外観、寸法安定性、塗装密着性等自動車用部品に要求される性能をそれぞれ向上させた組成物や成形品が提案されている。しかし、自動車の高品質化の要求から、諸性能のバランスがとれた樹脂組成物を提供することは困難であった。さらに、これらの材料は、塗装後の鮮鋭性にまで配慮がなされているとの記載はない。
自動車部品のバンパー、外板、サイドモール等の大型樹脂製塗装部品では、樹脂部品と金属部品(ボディー)が隣り合う面積がより大きくなるので、樹脂部品と金属部品の鮮鋭性に差があると、外観上識別されやすく、自動車全体としての一体感が損なわれる問題が生じる。前記の材料も塗装面の鮮鋭性は、金属部品に劣るものであった。一般に樹脂部品は、金属部品より鮮鋭性が劣るため、樹脂部品の鮮鋭性をいかに高め、金属部品表面の塗装鮮鋭性に近づけられるかが重要な技術要素となる。
特開平6−256596号公報 特開平9−71711号公報 特開平10−176084号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、射出成形後の塗装外観が良好で、耐衝撃特性、線膨張特性にも優れ、さらに塗装鮮鋭性に優れ、自動車用射出成形部品に好適なポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる自動車用射出成形部品である成形体を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成と流動性を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体、特定の流動性と密度を有するエチレン・ブテンランダム共重合体及び特定の粒径のタルクを特定の比率で配合することにより、射出成形後の塗装外観が良好で、曲げ弾性率、耐低温衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも下記成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物が下記物性(1)〜(4)を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
成分(A):(a1)結晶性プロピレン単独重合体部分を88〜94重量%と、(a2)エチレン含量が35〜50重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体部分を6〜12重量%含有し、この成分全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)が40〜100g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 45〜55重量%
成分(B):MFR(230℃、2.16kg)が4〜10g/10分で、密度が0.855〜0.865g/cmであるエチレン・ブテンランダム共重合体 20〜30重量%
成分(C):レーザー回折法によって測定した平均粒径が3μm以下であるタルク 25〜35重量%
物性(1):MFR(230℃、2.16kg)が20g/10分以上
物性(2):曲げ弾性率が1800MPa以上
物性(3):−30℃におけるアイゾット衝撃強度が6kJ/m以上
物性(4):線膨張係数が5×10−5cm/cm・℃以下
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、下記物性(5)を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
物性(5):射出成形後の成形体表面の表面粗さ(Ra)が0.2μm以下
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形体に、アクリルメラミン系またはウレタン系の塗料を塗装してなることを特徴とするポリプロピレン樹脂製射出成形体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、塗料塗布面の光沢が95%以上であることを特徴とするポリプロピレ樹脂製射出成形体が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第3又は4の発明において、塗料が黒色系塗料であることを特徴とするポリプロピレ樹脂製射出成形体が提供される。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂に、特定のエチレン・ブテンランダム共重合体、タルクを適切に選択して使用しており、射出成形後の塗装外観が良好で、曲げ弾性率、耐低温衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)プロピレン・エチレンブロック共重合体、(B)エチレン・ブテンランダム共重合体、及び(C)タルクを含有する樹脂組成物である。以下に、ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法、ポリプロピレン系樹脂組成物の物性、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形体について詳細に説明する。
1.ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分
(A)プロピレン・エチレンブロック共重合体
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合工程とエチレン・プロピレンランダム共重合工程を含む重合方法によって得られる、結晶性プロピレン単独重合体部分(a1)とエチレン・プロピレンランダム共重合体部分(a2)とを含むブロック共重合体である。
該プロピレン・エチレンブロック共重合体における、(a1)結晶性プロピレン単独重合体部分の含有量は、88〜94重量%であり、好ましくは91〜94重量%である。該プロピレン・エチレンブロック共重合体の(a2)エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の含有量は、6〜12重量%であり、好ましくは6〜9重量%である。(a1)の含有割合が上記範囲より少な過ぎると耐熱剛性が不足し、一方、上記範囲より多過ぎると衝撃強度が不足となる。
(a1)結晶性プロピレン単独重合体部分のMFRは、90〜200g/10分が好ましく、90〜120g/10分がより好ましい。(a1)のMFRがこの範囲にあると、機械的物性と流動性のバランスが向上するので好ましい。
ここで、MFRは、ASTM−D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
(a2)エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量は、35〜50重量%、好ましくは38〜45重量%である。エチレン含量が上記範囲より少な過ぎると衝撃強度が不足し、一方、上記範囲より多過ぎると耐熱剛性が不良となる。
ここで、エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量(Gv)は、赤外分光スペクトル法によるプロピレン・エチレンブロック共重合体のエチレン含量(C )とプロピレン・エチレンブロック共重合体の(a2)エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の量(Cv)とから次式により算出することができる。
Gv=100×C /Cv
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の全体のMFRは、40〜100g/10分であり、好ましくは50〜80g/10分である。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRが前記範囲未満であると、流動性が不足し、成形性が悪化する。逆に、MFRが前記範囲を超える場合、成形品にバリが発生し成形不良の問題を生じる。
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、高立体規則性触媒の存在下、気相法、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して、プロピレン単独重合工程とエチレン・プロピレンランダム共重合工程によって製造される。前記高立体規則性触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等の方法により得られる触媒を例示することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における(A)プロピレン・エチレンブロック共重合体の配合量は、45〜55重量%であり、好ましくは48〜52重量%である。成分(A)の配合量が45重量%未満であると流動性が不足し、55重量%を超えると耐衝撃性が低下する。
(B)エチレン・ブテンランダム共重合体
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いるエチレン・ブテンランダム共重合体(B)は、エチレンとブテンとのランダム共重合体であって、エチレン・ブテンエラストマー又はエチレン・ブテン共重合ゴムと呼ばれる共重合体である。
エチレン・ブテンランダム共重合体の密度は、0.855〜0.865g/cmであり、好ましくは0.860〜0.862g/cmである。密度が0.865g/cmを超えると、線膨張係数が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合が生じ、0.855g/cm未満では、剛性が低下する。
ここで、密度は、MFR測定後のストランドを、23℃で24時間状態調製したものをサンプルとして、JIS−K7112に準拠して測定する値である。
また、エチレン・ブテンランダム共重合体のMFRは、得られる自動車外装部材の流動性と射出成形時の成形性のバランスを図る観点から、4〜10g/10分の範囲であり、好ましくは5〜7g/10分である。MFRが10g/10分を超えると、流動性が向上する反面、耐衝撃性が劣る。4g/10分未満では、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
ここで、MFRは、ASTM−D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
またエチレン・ブテンランダム共重合体の使用は、1種類に限定されるものではなく、密度、MFRなどの異なる2種類以上の混合物であっても良い。
エチレン・ブテンランダム共重合体は、エチレン含有量70〜80重量%、ブテン含有量20〜30重量%のものが所望の密度に調整しやすい点で好ましい。
エチレン・ブテンランダム共重合体の製造は、ハロゲン化チタン等のチタン化合物、オキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム若しくはVO(OR3−q(0<q≦3、Rは炭素数1〜10で表される直鎖、分岐又は環状の炭化水素)で示されるバナデート化合物等のバナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体若しくはアルキルアルコキシアルミニウム錯体等の有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムクロリド等からなるいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物等を触媒として用いることによって重合できる。とりわけバナジウム化合物又はメタロセン化合物を用いて重合した場合、より好ましい共重合体が得られる。
重合法としては、気相法、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるエチレン・ブテンランダム共重合体(B)の配合量は、20〜30重量%であり、好ましくは23〜27重量%である。(B)成分の配合量が30重量%を超えると、得られる衝撃性では優れているが、流動性が低下する。20重量%未満では、流動性の低下が少ない反面、剛性が高くなりかつ、線膨張係数が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
(C)タルク
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いるタルク(C)は、平均粒径が3μm以下であり、好ましくは2.6μm以下のタルクである。平均粒径が3μmを超えると、成形体表面の表面粗さが大きくなり、塗装鮮鋭性を著しく低下させるという不具合を生じる。
タルクは、無処理のまま使用しても良いがポリプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させ、また分散性を向上させる目的で通常知られている各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で表面を処理したものを使用することができる。
ここで、タルクの平均粒径の測定は、JIS R1620及びJIS R1622に準拠してレーザー回折法によって測定した粒度累積曲線から読み取った累積量50重量%の粒径値より求めることができる。
平均粒径が3μm以下のタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化し、これを更に精密に分級することによって得られる。また、一度粗分級したものを更に分級してもかまわない。機械的に粉砕する方法としては、ジョークラシャー、ハンマークラシャー、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレーター等の装置で1回又は繰り返し、湿式又は乾式分級する。特に、シャープカットセパレーターにて分級操作を行うことが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるタルク(C)の配合量は、25〜35重量%であり、好ましくは25〜32重量%である。成分(C)の配合量が35重量%を超えると、寸法安定性は良好になるものの、ウエルド等の外観が悪くなり、25重量%未満では、線膨張係数が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中には、上記(A)〜(C)の必須成分以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分を、必要に応じて添加することができる。この様な付加的成分としては、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化防止剤、有機リン化合物等の核剤、ステアリン酸の金属塩に代表される分散剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質を例示できる。
2.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記の構成成分(A)〜(C)を均一に混合、混練することによって得られる。その手法は特に限定はないが、一般に行われているヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機でドライブレンドを行い、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造される。これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
各成分の混合は、同時に行なってもよく、また分割して行なってもよい。分割添加の方法として、プロピレン・エチレンブロック共重合体とタルクを混練した後、エチレン・ブテンランダム共重合体ゴムを添加する方法、予めプロピレン・エチレンブロック共重合体にタルクを高濃度に混練してマスターバッチとし、それを別途プロピレン・エチレンブロック共重合体やエチレン・ブテンランダム共重合体ゴム等で希釈しながら混練する方法や、予めプロピレン・エチレンブロック共重合体とタルク、プロピレン・エチレンブロック共重合体とエチレン・ブテンランダム共重合体ゴムをそれぞれ混練しておき、最後にこれらをあわせて混練する方法があり、また同様の方法で成形することもできる。
3.ポリプロピレン系樹脂組成物の物性
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分からなり、上記のようにして製造され、下記物性(1)〜(4)、好ましくは(5)を満たす樹脂組成物である。
物性(1):MFR
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、20g/10分以上であり、好ましくは25〜35g/10分である。MFRが20g/10分未満であると、成形性が悪くなる。
ここで、MFRは、ASTM−D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
物性(2):曲げ弾性率
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率は、1800MPa以上であり、好ましくは1800〜2200MPaである。曲げ弾性率が1800未満であると、大型部品において形状保持性が悪くなる。
ここで、曲げ弾性率は、JIS K−7203に準拠して測定する値である。
物性(3):−30℃におけるアイゾット衝撃強度
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の−30℃におけるアイゾット衝撃強度は、6kJ/m以上であり、好ましくは6〜14kJ/mである。の−30℃におけるアイゾット衝撃強度が6kJ/m未満であると、塗装後割れやすくなる。
ここで、−30℃におけるアイゾット衝撃強度は、JIS K−7110に準拠して測定する値である。
物性(4)線膨張係数
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の線膨張係数は、5×10−5cm/cm・℃以下であり、好ましくは4.5〜5.0cm/cm・℃である。線膨張係数が5×10−5cm/cm・℃を超えると金属部品との勘合が悪くなったり、隙間が不均一になったりして好ましくない。
ここで、線膨張係数は、JIS K−7197に準拠して測定する値である。
物性(5)射出成形後の成形体表面の表面粗さ(Ra)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形後の成形体表面の表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.15μm以下である。Raが0.2μmより大きいと、塗装面の光沢が低下し、塗装鮮鋭性を著しく低下させるという不具合を生じる。なおRaが0.2μm前後では、未塗装の成形品では外観に大きな差はなく、塗装して初めて差が顕在化する。したがって、塗装を施す部品の場合にはRaが0.2μm以下であることが好ましいのである。
ここで、表面粗さ(Ra)は、JIS B−0601に準拠して、23℃において測定する値である。
4.成形加工
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工法は、特に限定されるものではないが、合成樹脂分野において一般的に実施されている射出成形法、射出圧縮成形法、中空成形法のごとき成形法を適用して成形される。奏される発明の効果からみて、射出成形法を用いることが適している。特に流動性に優れているので薄肉大型形状を有する製品の製造に有利に応用される。
上記射出成形法においては、射出圧力を7.0〜12.0MPa、射出時間を4.5〜15.0sec、保持圧力を2.5〜6.0MPa、保持時間を5〜20sec、及び樹脂温度を200〜220℃とした条件下で射出成形することが好ましい。この場合、特に射出時間と保圧時間を短縮することが可能となり、成形サイクルが短縮される。また、ゴムの凝集を引き起こすことなく、耐衝撃性の高い成形体が得られる。射出圧力を7.0〜12.0MPaとすることにより、成形機の規模などで特に制限を受けることなく所望の成形機を使用できる。一方、射出圧力が上記範囲外では、ゴムに適度なせん断力を加えることができず耐衝撃性が低下する。また、射出時間を4.5〜15.0secとすることにより、金型の大きさなどで特に制限を受けることがなくなる。一方、射出時間が上記範囲外では、ゴムに適度なせん断力を加えることができず耐衝撃性が低下する。更に、保持圧力を2.5〜6.0MPaとすることにより、成形機の規模やゲートの数などで特に制限を受けることがなくなる。一方、保持圧力が上記範囲外では、ゴムに適度な圧力が加わらず外観性が低下してしまう。更にまた、保持時間を5〜20secとすることにより、保持時間による成形体の外観に及ぼす影響が好適化される。一方、保持時間が上記範囲外では、ゴムに適度な圧力が加わらず外観性が低下してしまう。また、樹脂温度を200〜220℃とすることにより、生産効率を挙げることが可能となる。一方、樹脂温度が200℃未満であるとポリプロピレン系樹脂の不溶不具合が発生することがあり、220℃を超えるとゴムの凝集が起こり耐衝撃性が低下することがある。
代表的には、型締め圧力2500tonの射出成形機を用いて、約4kgの自動車用バンパーを、射出圧力8.5MPa、射出時間8sec、保持圧力3.2MPa、保持時間10sec、及び樹脂温度200℃の条件下で成形できる。
5.ポリプロピレン樹脂製射出成形体
本発明のポリプロピレン樹脂製射出成形体は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形体に、塗料を塗装した射出成形体である。
本発明の成形体の塗装は、成形体の表面に塗料を直接塗布して塗膜を形成させる方法による。塗装法としては、従来の塗装工程からプライマー塗布工程を除いた工程で行なうことができる。また、塗膜の付着力を高めるために行なわれているプラズマ処理工程も省略することができる。すなわち、表面改質工程を施していない成形体に直接、塗料を塗布できるものである。ただし、塗布前の成形体表面に不可避的に付着した、手垢や機械油などを洗浄除去する通常の脱脂処理などの補助的表面処理は必要に応じて施される。
上記脱脂処理は、一般に塗料を塗布する直前に行なわれている通常の操作で、これによって成形体の成形から塗装までの工程で不可避的に成形体の表面に付着する手垢や機械油等を洗浄除去することができる。具体的には、有機溶剤又はその蒸気、水、水蒸気、酸、アルカリ液あるいは界面活性剤水溶液等による洗浄法があり、これらの中では有機溶剤の蒸気を用いる洗浄、水、温水、アルカリ液、中性洗剤を添加した水又は温水等を用いる洗浄、アルコール洗浄等が好んで用いられる。
塗料の塗布手段としては、スプレーによる吹付け、刷毛塗り、ローラーによる塗布等があり、何れの方法も採用することができる。
塗料としては、一般に広く用いられている塗料、例えば、アクリル系塗料、アクリルメラミン系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、アルキッド系塗料、メラミン系塗料等を挙げることができる。この中ではアクリル系塗料、アクリルメラミン系塗料、メラミン系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料を用いることが好ましく、特にアクリルメラミン系塗料、ウレタン系塗料が好ましい。アクリルメラミン系塗料は、一液型でも二液型でも構わない。
また、これらの塗料の中では、黒色系塗料が好ましい。
塗料は、一般に10〜100μm、好ましくは15〜70μmの厚さとなる様に成形品表面に直接塗布される。
本発明の成形体のアクリルメラミン樹脂系塗料を用いた塗装方法について一例を挙げて説明すると、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物から形成された成形体に対して、水洗および一般的な工業用洗剤を用いた洗浄を少なくともそれぞれ1回ずつ行ない、さらに水洗した後、成形体を加熱乾燥させる。すなわち、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物から形成された成形体にこの塗料を塗装する場合には、従来から行なわれていた塩素系溶剤蒸気を用いた洗浄を行なうことは必ずしも必要としない。このようにして乾燥された成形体にアクリルメラミン樹脂系塗料を塗布し、必要に応じて加熱することにより、成形体表面にアクリルメラミン樹脂塗膜を形成することができる。こうして形成された塗膜は、成形体に対して塩素系溶剤蒸気洗浄およびプライマーの塗布などの前処理を行なっていないにも拘らず、成形体に対して非常に良好な密着性を有している。
本発明の成形体は、射出成形後の表面粗さ(Ra)は0.2μm以下であることが好ましく、かつ塗料が成形体に対して非常に良好に密着しているため、塗料塗布面の光沢は95%以上であることが好ましい。
なお、本発明の成形体の塗装において、アクリルメラミン系塗料を用いる場合は、プライマー塗布工程を用いても良く、プライマー塗布工程を用いる場合は、ポリプロピレン樹脂組成物の表面に、塩素化ポリオレフィンを主成分とする樹脂プライマー及びアクリルメラミンを主成分とする樹脂塗料をこの順に被覆することができる。上記塩素化ポリオレフィンを主成分とする樹脂プライマーとしては、例えば、プライマック(日本油脂(株)製)、ベポックス(神東塗料(株)製)及びRB−194(日本ビーケミカル(株)製)などを使用できる。このような樹脂プライマーと樹脂塗料を被覆することにより、優れた密着性と光沢保持性を有する塗膜を形成できる。
また、プライマーを用いる塗装方法は、例えば自動車バンパーを成形する場合は、次のようにして行なうことができる。まず、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を所定のバンパー形状(無塗装)に加工し、水系洗浄剤を用いて、表面の油脂分やごみ等の洗浄脱脂を行い、50〜100℃で10分間程度乾燥する。その後、塩素系ポリオレフィン系プライマーを乾燥時膜厚が5〜20μmになるように塗装し、更に50〜100℃で10分間程度乾燥する。次に、アクリルメラミン系塗装を焼付け乾燥時の膜厚が10〜20μmになるように塗装し、カラーベースの希釈溶剤が揮発しない時点のウェット状態で、同じくアクリルメラミン系クリアコートを焼付け乾燥時の膜厚が30〜40μmになるように塗装する。上塗り塗装後、セットタイム時間として5〜10分間室温放置した後、140℃±5℃に設定された熱風乾燥炉において30分間焼付けを行い、自動車用バンパーが得られる。
本発明の成形体は、塗装外観に優れた成形体であり、耐衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れ、自動車用射出成形部品、例えば、バンパー、オーバーフェンダー、バックドア等に用いることができる。
以下、実施例及び比較例あげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定法及び実施例で用いた原材料は、以下の通りである。
1.測定法
(1)Ra:射出成形後、無塗装の状態で表面粗さ(Ra)をJIS B−0601に準拠し、23℃において測定した。
(2)塗装後のグロス:JIS K−5400に準じ、60゜のグロスを測定した。
(3)塗装鮮鋭性:Wave Scanを用いて測定した。
(4)メルトフローレート(MFR):ASTM−D1238に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定した。
(5)線膨張係数:JIS K−7197に規定された方法に従い、昇温速度2℃/分、荷重4kPa、測定範囲25〜80℃にて実施した(単位:×10−5cm/cm・℃)。本評価では、線膨張係数が小さいほど、寸法安定性が優れていると言える。
(6)アイゾット試験:JIS K−7110に準拠し、−30℃で測定した。
(7)曲げ弾性率:JIS K−7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/分で測定した。
2.原料
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)
下記の製造例で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を用いた。
(製造例)
(i)チーグラー触媒の製造
充分に窒素置換した内容積10リットルの反応器に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン4000mlを導入し、次いでMgClを8モル、Ti(O−n−Cを16モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークス)を960ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換した10L反応器に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で4.8モル導入した。次いでn−ヘプタン500mlにSiCl 8モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン500mlにフタル酸クロライド0.48モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、SiCl 200mlを導入して80℃で6時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し固体成分を得た。このもののチタン含量は1.3重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分を100グラム導入し、(t−C)Si(CH)(OCH)224ml、Al(C 34グラムを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分を得た。このもののチタン含量は1.1重量%であった。
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
上記で得た固体触媒成分及びトリエチルアルミニウムを使用し、第1重合工程として反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器を用い重合温度90℃、プロピレン分圧22kg/cmの条件下プロピレン単独重合を連続的に行った。この時、固体触媒成分は1.8g/hrの速度で、またトリエチルアルミニウムを5.5g/hrの速度で連続的に供給した。第1重合工程より抜き出されるパウダーを25kg/hrで連続的に第2重合工程として用いる反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器に送り、プロピレンとエチレンの共重合を連続的に行った。第2重合工程から連続的に27kg/hrのポリマーを抜き出した。各重合工程での水素濃度は1槽目でH/プロピレン=0.045モル比、2槽目でH/(エチレン+プロピレン)=0.01モル比にコントロールすることにより分子量を制御した。ゴム状プロピレン・エチレン共重合体部のエチレン組成は第2重合工程でのプロピレンとエチレンのガス組成をプロピレン/エチレン=50/50モル比にコントロールすることによりプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た。1段重合槽から抜き出したプロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率は0.985、MFRは100g/10分、2段目重合槽から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは60g/10分であった。PP−1の特性を表1に示す。
Figure 2007091789
(2)エチレン・ブテンランダム共重合体(B)
MFRが7.5g/10分、密度が0.86g/cm、エチレン・1−ブテン共重合体(日本合成ゴム社製 EBM3041P)を用いた。
(3)タルク(C)
平均粒径が2.5μm(日本タルク社製SG−95)と5μmのタルク(日本タルク社製ミクロエースC−3)を用いた。
(実施例1〜2、比較例1〜3)
成分(A)〜(C)を表1に示す組成の割合で配合し、更に(A)〜(C)の合計量100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製IRGANOX1010)0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部を配合して、スーパーミキサー(川田製作所製)で5分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼社製KCM50)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。その後、型締め圧100トンの射出成形機にて成形温度210℃で各種試験片を作成し、上記各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2007091789
表2の評価結果から明らかな通り、本発明の実施例はいずれも優れた物性を示した。一方、比較例1は表面粗さRaが0.2μm以上で、塗装鮮鋭性に劣り、比較例2は曲げ弾性率が低すぎ、比較例3はアイゾット衝撃性に劣る。これらの原因は、配合成分のいずれか一つ以上が本発明の要件を外れており、該要件の必要性が分かる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形後の塗装外観が良好で、耐衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物であり、かかる優れた特性を有するため、これを原料とした成形品は、自動車用射出成形部品として実用に十分な性能を有し、工業的に用いることができる。

Claims (5)

  1. 少なくとも下記成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物が下記物性(1)〜(4)を満たすことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    成分(A):(a1)結晶性プロピレン単独重合体部分を88〜94重量%と、(a2)エチレン含量が35〜50重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体部分を6〜12重量%含有し、この成分全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)が40〜100g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 45〜55重量%
    成分(B):MFR(230℃、2.16kg)が4〜10g/10分で、密度が0.855〜0.865g/cmであるエチレン・ブテンランダム共重合体 20〜30重量%
    成分(C):レーザー回折法によって測定した平均粒径が3μm以下であるタルク 25〜35重量%
    物性(1):MFR(230℃、2.16kg)が20g/10分以上
    物性(2):曲げ弾性率が1800MPa以上
    物性(3):−30℃におけるアイゾット衝撃強度が6kJ/m以上
    物性(4):線膨張係数が5×10−5cm/cm・℃以下
  2. さらに、下記物性(5)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    物性(5):射出成形後の成形体表面の表面粗さ(Ra)が0.2μm以下
  3. 請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形体に、アクリルメラミン系またはウレタン系の塗料を塗装してなることを特徴とするポリプロピレン樹脂製射出成形体。
  4. 塗料塗布面の光沢が95%以上であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレ樹脂製射出成形体。
  5. 塗料が黒色系塗料であることを特徴とする請求項3又は4に記載のポリプロピレ樹脂製射出成形体。
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