以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の化粧シート1の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す本発明の化粧シート1は、基材2の上に、ベタインキ層3と柄インキ層4とからなるインキ層10、接着剤層5、透明樹脂層6、凹凸模様7及び表面保護層8が順次積層された形態であり、基材2の裏面に裏面プライマー層9を更に備えている。
(基材)
基材2は、化粧シート1における必須の構成であり、オレフィン系樹脂を好ましく適用できるがその種類は限定されない。例えば、(イ)主原料がハードセグメントとしての高密度ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマー及び無機充填剤を添加してなる混合物を基材2に用いることができる。また、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載されているエチレン−プロピレン−ブテン共重合体を基材2に用いることもできる。また、(ハ)特公平6−23278号公報に記載されているハードセグメントとしてのアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物を基材2に用いることもできる。
前記(イ)のオレフィン系樹脂におけるハードセグメントとしての高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンとしては、好ましくはアイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
前記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%(なお、「重量%」は「質量%」と同義である。以下同じ。)、好ましくは30重量%程度である。エラストマーの添加量が10重量%未満では、一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じることがある。一方、エラストマーの添加量が60重量%を超えると、透明性、耐候性及び耐クリープ性の低下が生ずることがある。
前記(イ)の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。無機充填剤の添加量としては、1〜60重量%程度、好ましくは5〜30重量%程度である。無機充填剤の添加量が1重量%未満では、耐クリープ変形性及び易接着性の低下が生じ、無機充填剤の添加量が60重量%を超えると、破断時伸度及び耐衝撃性の低下が生じることがある。
前記(ロ)のオレフィン系樹脂としては、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが用いられる。ここで、ブテンとしては、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)特開平9−111055号公報に記載されているエチレン、プロピレン及びブテンの3元共重合体によるランダム共重合体。単量体成分の重量比率は、プロピレンが90重量%以上であり、メルトフローレートは、230℃、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。このような3元ランダム共重合体100重量部に対して、上記ランダム共重合体は、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練してなるものである。(b)特開平5−77371号公報に記載されているエチレン、プロピレン及びブテンの3元共重合体であって、プロピレン重量比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるエチレン・プロピレン・ブテン共重合体。(c)特開平7−316358号公報に記載されているエチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体であって、プロピレン及び/又は1ブテン含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、Nアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加したエチレン・プロピレン・ブテン共重合体。
上記(a)〜(c)のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、該エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂に必要に応じて更に他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
前記(ハ)のオレフィン系樹脂としては、特公平6−23278号公報に記載されている(A)ソフトセグメントとしての数平均分子量Mnが25000以上、且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとしてのメルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
上記(ハ)のオレフィン系樹脂の中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比率が5〜50重量%のものが好ましく、アタクチックポリプロピレンの重量比率が20〜40重量%のものが特に好ましい。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満ではエンボス加工をしたり、3次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際にネッキングによる不均一なシートの変形や、その結果としての皺、絵柄の歪み等が生ずることがある。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比率が50重量%を超えると、シート自体が変形し易くなり、シートを印刷機に通した時にシートが変形し、インキ層11の絵柄の歪み、多色刷の場合に見当が合わなくなる等の不良が発生し易くなり、成形時においてはシートが破れ易くなる。
基材2を形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が添加される。
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛若しくはカーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R若しくはフタロシアニンブルー等の有機顔料や染料、アルミニウム若しくは真鍮等の箔粉からなる金属顔料、又は、二酸化チタン被覆雲母若しくは塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられ、その添加量は、通常、5〜60重量%である。着色剤は、基材2に化粧シート1として必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系等公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色等の劣化の防止の向上を図る場合に用いられる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアソール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、又は、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。尚、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常0.5〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化を更に防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に記載されている化合物等のヒンダード系ラジカル捕捉剤、ビペリジニル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
基材2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものをカレンダー加工等の常用の方法により製膜して得ることができる。基材2の厚さは50〜200μm、好ましくは100μm程度である。
基材2の片面又は両面には、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着層(プライマー層又はアンカー層ともいう。)としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ポリエチレンを使用することができる。
なお、上述したポリオレフィン系樹脂からなる基材2の他に、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布又は不織布、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体若しくはエチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル若しくはポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、又は、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン若しくはポリカーボネート等の樹脂からなるシート又はフィルムを用いることも可能である。また、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙若しくはパラフィン紙等の紙、又は、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反を用いることができる。また、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維又は炭素繊維等の無機質繊維からなるシートやフィルムを用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼又は銅等の金属箔等を用いることもできる。更に、こうした各材料を複数積層させたものを、基材2として用いることも可能である。
(インキ層)
インキ層11は、化粧シート1における必須の層であり、ベタインキ層3及び/又は柄インキ層4から構成される層であり、絵柄層とも呼ばれる。
ベタインキ層3は、図1に示すように、基材2の地肌の隠蔽等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。柄インキ層4は、一般に、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタインキ層3上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。なお、柄インキ層4がベタインキ層3の作用を兼ねる場合もあり、この場合には、柄インキ層4がベタインキ層3となる。
ベタインキ層3及び/又は柄インキ層4を有するインキ層11は、基材2表面の全面に設けられてもよく、部分的に設けられてもよい。また、インキ層11は、図1に示すように、基材2の表面全面に設けたベタインキ層3と、そのベタインキ層3の表面に部分的に設けた柄インキ層4とから構成することもできる。
本発明においては、ベタインキ層3及び柄インキ層4が水性塗工剤で形成されることが好ましい。また、ベタインキ層3が、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物と、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物とを含有する水性塗工剤で形成されることが好ましく、ベタインキ層3及び柄インキ層4の両層がこの水性塗工剤で形成されることが更に好ましい。なお、接着剤層が1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物と、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物とを含有する水性塗工剤で形成されている場合には、ベタインキ層3及び柄インキ層4は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物と、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物とを含有しない水性塗工剤で形成されていてもよい。すなわち、インキ層11と接着剤層5のうち少なくとも一方が前記水性塗工剤で形成されていればよいが、望ましくは、インキ層11と接着剤層5の両層が水性塗工剤で形成されていることが好ましい。
具体的には、ベタインキ層3及び/又は柄インキ層4(以下、ベタインキ層3等いうこともある。)を形成するための水性塗工剤は、水性の樹脂成分と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物及び1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物を含む成分と、着色剤や他の各種添加剤とを、水又は水とアルコールと等とからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散させて調製した硬化型の水性塗工剤である。こうした水性塗工剤は、VOCの使用を減少させるので、作業環境中又は生活空間中へのVOCの発生を抑制することができ、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。
1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物は、水又は水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散する水分散性のものであれば特に限定されないが、このような水性化合物としては、化合物自体が水等に溶解又は分散する自己乳化性のもの、又は、乳化剤により水等に溶解又は分散する強制乳化性のものが挙げられ、本発明においては自己乳化性のものが好ましい。自己乳化性であるイソシアネート基を持つ水性化合物としては、多価イソシアネート化合物を親水性処理したものが実用上好ましく用いられる。
多価イソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物又はジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物等を用いることができる。これらの末端イソシアネート基含有化合物としては、ウレタン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレア構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトジオン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトンイミン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、アロファネート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物又はこれらの混合物等を挙げることができる。中でも以下の化学式1に示されるイソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物が好ましい。下記化学式1において、nは1以上の整数であり、R1、R2、R3はジイソシアネート残基である。
このようなイソシアヌレート構造を有する水性化合物は、イソシアヌレート構造自体が高い化学的安定性を有するので、耐候性試験や耐湿熱性試験での劣化の影響を受け難く、ベタインキ層3等が強固な層となる。その結果、隣接する層(基材2や接着剤層5)との界面の密着性、及び基材2と透明樹脂層6との層間密着性がより一層向上する。
上記ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等若しくはこれらの異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート若しくは1,12−ドデカンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート若しくは1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート、又は、これらの混合物等が挙げられ、特に脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
親水性処理は、上述した多価イソシアネート化合物と活性水素基を1個以上有する親水性基含有化合物とを反応させることにより行われる。この親水性基含有化合物に含有されている親水性基としては、ノニオン性基、アニオン性基、又は、カチオン性基が挙げられ、これらの親水性極性基は、それぞれ単独で含有されていてもよいし、異なる種類が組み合わされて含有されていてもよく、この中でも、得られるイソシアネート基を持つ水性化合物の安定性を考慮すると、ノニオン性基が好ましい。
活性水素基を1個以上有するノニオン性極性基含有化合物としては、エチレンオキサイドユニットが50モル%以上、繰り返し数は3〜90、特に好ましくは繰り返し数が5〜50であるポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオール、ポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオール又はポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステルモノオール等が挙げられる。この中でも、ポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオール又はポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオールが好ましく、ポリ(オキシアルキレン)エーテルモノオールがより好ましい。
また、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物は、必要に応じて、疎水性処理されてもよい。疎水性処理は、イソシアネート基を持つ水性化合物と活性水素基を有する疎水基含有化合物とを反応させることにより行う。活性水素基を有する疎水基含有化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール若しくはアルキレングリコールモノアルキルエーテル等の低分子モノオール類、エチルアミン、ブチルアミン若しくはアニリン等の低分子第1モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン若しくはメチルアニリン等の低分子第2モノアミン類、活性水素基含有ポリエステル、エチレンオキサイドユニットが50モル%未満の活性水素基含有ポリエーテル、活性水素基含有ポリカート、活性水素基含有ポリオレフィン、又は、炭素数6以上のヒドロキシ高級脂肪酸若しくはそのエステル等が挙げられる。
イソシアネート基を持つ水性化合物の疎水性処理は、多価イソシアネート化合物の親水性処理の後に行われてもよく、また、親水性処理と同時に行われてもよい。この疎水性処理においては、必要に応じて、ジブチルチンジラウレート、トリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を添加してもよい。
このようにして得られたイソシアネート基を持つ水性化合物は、親水性基が付加されているので、疎水性のイソシアネート基(イソシアヌレート骨格を有する基を含む。以下同じ。)がその親水性基により立体的ないし3次元的に囲まれる。その結果、水分やポリオールに対して反応し易い疎水性のイソシアネート基が親水性基により保護されるので、水性塗工剤を調製してから長時間経過した後に塗工する製造工程中において、水又は水性の混合溶媒を含有した水性塗工剤中に溶解又は分散する水分散性イソシアネート基含有化合物の失活を防ぐことができる。すなわち、イソシアネート基に長い鎖状の親水性基が付加された水性化合物は、その立体障害により、イソシアネート基と水との反応が抑制されるので、調製してから長時間経過した後の水性塗工剤であっても、架橋剤としての作用を失活させることなく架橋反応を行うことができる。
本発明において、上記水性化合物の分子中のイソシアネート基は、1分子中に2個以上存在することが必要である。分子中のイソシアネート基が2個より少ないと、架橋密度が小さくなり、接着強度が不十分となり易い。一方、分子中のイソシアネート基の数が多すぎる場合には、特に制限を受けないが、形成された層の可とう性が低下して層間密着性が低下することがある。従って、分子中のイソシアネート基の数の範囲は、通常、2〜10程度、好ましくは2〜8程度、更に好ましくは2〜4程度である。
また、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物としては、水又は水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散する水分散性のものであれば特に限定されないが、(A)1分子中に2個以上のイソシアネート化合物を、脱二酸化炭素縮合反応させて得られた化合物の末端イソシアネート基に、(B)1官能の水溶性又は水分散性化合物を結合させて生成されるカルボジイミド化合物を主成分とするものが挙げられる。
(A)のイソシアネート化合としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12-ジイソシアネートドデカン(DDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、及び2,4-ビス-(8-イソシアネートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 このうち脂肪族イソシアネート化合物及び脂環式イソシアネート化合物を単独又は2種以上を組み合わせで使用することが好ましい。
(B)の一官能の水溶性又は水分散性有機化合物としては、カルボジイミド化合物に水溶性及び水分散性を付与するためのものであり、上記イソシアネートから誘導されたカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と反応し、封鎖する一官能性のものである。このような水溶性又は水分散性有機化合物としては、イソシアネート基と反応し得る基(官能基)、例えばOH基、COOH基、NH2基、SO3H基などを1個有し、水に溶解乃至は分散し得るものであればいずれのものでもよく、ノニオン系の官能基、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の好ましくは末端にそれぞれのOH基を持つ二官能の水溶性又は水分散性有機化合物のモノアルキルエステル、モノアルキルエーテル、カチオン系の官能基、例えば窒素を含む基、又はアニオン系の官能基、例えばスルホニル基を含む基、を持つ一官能の有機化合物などが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのノニオン系のものが好ましい。
上記1分子中に2個以上カルボジイミド基を持つ化合物の平均官能基数は2〜15であることが好ましく、3〜12がより好ましい。平均官能基数が2未満の場合は親水性が増すため、耐水性や耐湿熱性が悪くなったり、層中への水の呼び込みにより耐候性の向上をし難くする。また、平均官能基数が15より大きくなると水に溶解又は分散し難くなるため、塗工液としての安定性が悪くなる。
層中のイソシアネート基、カルボジイミド基の定性は、主に赤外分光法にて行なわれ、イソシアネート基は2270cm−1付近の吸収を、カルボジイミド基は2130cm−1付近の吸収を特徴的に示す。具体的には、化粧シートをメスで切削し、所望の層の部分を取り出して顕微IRにより測定する。又は、化粧シートサンプルを斜めに切削し、顕微IRで所望の層を測定する等の方法で確認できる。
本発明においては、イソシアネート基は、ベタインキ層中、インキ層、接着剤層中ですべて反応して消失し、カルボジイミド基の少なくとも一部は、ベタインキ層、インキ層、及び/又は後述の接着剤層中で残存していることが好ましく、ベタインキ層、インキ層、接着剤層のすべての層に残存していることがより好ましい。
本発明において、イソシアネート基を持つ水性化合物は架橋剤として作用しており、イソシアネート基は活性水素基との反応性が高く、ベタインキ層3及び柄インキ層4等の樹脂成分が充分架橋される。また、基材2が表面に活性水素基を有する場合は界面とイソシアネート基が反応し、基材2との密着性が向上する。その結果、得られる化粧シート1は、ベタインキ層3等を介して形成されている基材2との密着性、及び、隣接する層(基材2や接着剤層5)との界面の密着性が向上する。
更に、カルボジイミド基を持つ水性化合物は、一般には加水分解防止剤として使用されているが、本発明では加水分解防止剤としてだけでなく、耐候劣化防止剤としても作用している。また、カルボジイミド基を持つ水性化合物は、反応性は乏しいが第1級アミン及び第2級アミンやカルボキシル基及びスルホン酸基等のアニオン系親水性基と反応し、層中で親水性基が減少することにより層中への水の吸収を減少する。
その結果、得られる化粧シート1は、耐水性試験後、耐煮沸性試験後、耐高温高湿度性試験後及び耐候試験後の基材2と透明樹脂層6との層間密着性が向上する。
すなわち、本発明において、イソシアネート化合物は、架橋剤として作用しており、初期の凝集力を向上する役割がある。その結果、劣化により強度は低減するが、初期の凝集力が高いほど、耐水試験や耐候試験の耐久性が向上する。
また、カルボジイミド化合物は、耐候劣化防止剤及び加水分解防止剤として主に作用しており、劣化自体を抑制することにより、耐候試験及び耐高温高湿性試験等での基材2と透明樹脂層6との層間密着性の強度低下を抑制する。
なお、ベタインキ層3は、接着剤層5が上記2種の水性化合物を含有する水性塗工剤で形成されていれば、接着剤5により上記効果が得られるので、上記の水性塗工剤のうちどちらか一方の水性化合物を含有する水性塗工剤で形成されていてもよく、上記2種の水性化合物を含まない水性塗工剤で形成されてもよい。なお、インキ層11と接着剤層の両層が上記2種の水性化合物を含む水性塗工剤で形成されていることが好ましい。
なお、本明細書における「水性樹脂」は、本来的に水溶性の樹脂、水溶性処理された樹脂、本来的に水分散性の樹脂、又は、水分散性処理された樹脂等をいうものとする。
水性の樹脂成分としては、従来公知の水性樹脂を用いることができ、水性ポリウレタン樹脂や水性ポリエステル樹脂等が好ましい。また、水性樹脂には、乳化剤を用いて水に溶解、分散する強制乳化型の水性樹脂と、親水性基を樹脂中に導入して水に溶解、分散する自己乳化型の水性樹脂とがあるが、自己乳化型の水性樹脂が好ましい。樹脂中に導入する親水性基としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等の酸性基を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基を用いて中和するアニオン型の水性樹脂が好ましい。
また、樹脂成分は、単独で用いられてもよく、また、2種以上が混合されて用いられてもよい。
水性塗工剤の樹脂成分と、上記イソシアネート基を持つ水性化合物及び上記カルボジイミド基を持つ水性化合物との比は、特に制限を与えるものではないが、通常、固形分で、樹脂成分:イソシアネート化合物:カルボジイミド化合物=100:1:1〜100:100:50であり、100:5:5〜100:50:30であることが好ましい。カルボジイミド化合物量が多くなるにつれて耐候性試験は向上するが、カルボジイミド化合物量が多くなりすぎると耐水性試験等は悪くなる傾向がある。一方、イソシアネート化合物量が多くなると耐水性試験等は向上するが、イソシアネート化合物量が多くなりすぎると耐候性試験が悪くなる傾向がある。
水性塗工剤の溶媒である水は、従来より水性塗工剤に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコール等とからなる混合溶媒を、水性塗工剤の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコール等としては、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはN−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類、又は、そのエステル類等を挙げることができる。なお、これら低級アルコール、グリコール類及びそのエステル類等の溶媒は、水性塗工剤の流動性改良、被塗工体である基材2への濡れの向上及び乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定される。本発明で使用される水性塗工剤は、ベンゼン、トルエン又はキシレン等の危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、VOCの発生を減少させることができる。
水とアルコール等とからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコール等(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、nプロピルアルコール等が挙げられる。)=20:80〜100:0の範囲で調整できる。
ベタインキ層3等用の水性塗工剤には、着色顔料や染料等の着色剤が配合される。また、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤その他等の添加剤が任意に添加されてもよい。
着色顔料としては、通常使用される有機又は無機系の顔料を使用することができる。こうした着色顔料のうち、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料を使用することができる。また、黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料を使用することができる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体積顔料、中和剤、界面活性剤等を任意に含有させることができる。
ベタインキ層等用の水性塗工剤は、水又は水とアルコール等とからなる水性の混合溶媒と樹脂成分、架橋剤成分、着色剤及び各種添加剤とをミキサー等で十分に混合することにより調製される。ベタインキ層3は、ベタインキ層用の水性塗工剤を基材2上に塗工又は印刷した後に乾燥硬化させて形成され、柄インキ層4は、柄インキ層用の水性塗工剤をベタインキ層3上に印刷した後、乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、又は、刷毛塗り等の方法を用いることができる。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。水性塗工剤の塗工・印刷は、乾燥後のベタインキ層3の膜厚が0.1〜10μm程度になるように行われ、0.5〜3μm程度が好ましい。柄インキ層4の膜厚は意匠によって異なるが0〜10マイクロ程度になるように行われ、0〜3μ程度が好ましい。
(接着剤層)
接着剤層5は、図1に示すように、インキ層11と透明樹脂層6との間に設けられて、インキ層11が形成された基材2と透明樹脂層6との層間密着性を向上させるプライマー層ないしアンカー層としての役割を有するものであり、耐久性や長期に亘る外観維持性を向上させる作用がある。こうした作用は、形成された絵柄を長期間保持することができ、極めて有効である。
本発明において、接着剤層5は、ベタインキ層3と同様に、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物と、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物とを架橋剤として含有する水性塗工剤で形成されることが好ましい。具体的には、接着剤層用の水性塗工剤は、水性の樹脂成分と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物及び1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物を含む架橋剤成分と、必要に応じて添加される各種添加剤とを、水又は水とアルコールと等とからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散させて調製した水性塗工剤である。
このような水性塗工剤で接着剤層を形成すると、インキ層11の欄で説明したのと同様の効果を得ることができる。すなわち、この水性塗工剤はVOCの使用を減少させるので、得られる化粧シート1についての作業環境の安全性や生活空間の安全性がより向上する。また、この水性塗工剤は上記2種の水性化合物を含有するので、得られる化粧シート1において、接着剤層5を介して形成されている基材2と透明樹脂層6との層間密着性が向上する。なお、接着剤層5は、ベタインキ層3が上記2種の水性化合物を含有する水性塗工剤で形成されていれば、どちらか一方の水性化合物を含有する水性塗工剤で形成されていてもよく、また、上記2種の水性化合物を用いなくてもよい。すなわち、インキ層11と接着剤層5のうち少なくとも一方が前記水性塗工剤で形成されていればよいが、望ましくは、インキ層11と接着剤層5の両層が水性塗工剤で形成されていることが好ましい。
接着剤層用の水性塗工剤に含有させる水性樹脂成分、1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物、及び1分子中に2個以上のカルボジイミド基をもつ水性化合物としては、上記のベタインキ層、柄インキ層の段落において説明した水性塗工剤の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
接着剤層用の水性塗工剤の樹脂成分と上記イソシアネート基を持つ水性化合物及び上記カルボジイミド基を持つ水性化合物との比は、特に制限を与えるものではないが、通常、固形分で、樹脂成分:イソシアネート化合物:カルボジイミド化合物=100:1:1〜100:100:50であり、100:5:5〜100:75:50であることが好ましく、100:10:5〜100:65:40が特に好ましい。カルボジイミド化合物量が多くなるにつれて耐候性試験は向上するが、カルボジイミド化合物量が多くなりすぎると耐水性試験等は悪くなる傾向があり、イソシアネート化合物量が多くなると耐水性試験等は向上するが、イソシアネート化合物量が多くなりすぎると耐候性試験が悪くなる傾向がある。
水性塗工剤に用いられる溶媒は、上記ベタインキ層用の水性塗工剤と同様に水又は水とアルコール等とからなる混合溶媒を用いることができ、適用される溶媒の種類、配合割合及び作用効果についても上述したベタインキ層用の水性塗工剤の場合と同じである。
接着剤層用の水性塗工剤には、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤その他等の添加剤が任意に添加されてもよい。
接着剤層5は、水又は水とアルコール等とからなる水性の混合溶媒と樹脂成分、架橋剤成分や添加剤とをミキサー等で十分に混合することにより接着剤層用の水性塗工剤を調製し、この水性塗工剤をインキ層11上に塗工した後に乾燥硬化させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、又は、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が0.1〜30μm程度になるように塗工され、膜厚が1〜10μm程度になるのが好ましい。
(透明樹脂層)
透明樹脂層6は、トップ樹脂層ともいわれ、柄インキ層4等からなるインキ層11を擦り傷等から保護したり、化粧シート1の表面強度を向上させたり、塗装感を付与すること等を目的として、接着剤層5を介してインキ層11上に積層される。
透明樹脂層6を構成する樹脂としては、上述した接着剤層5を介してインキ層11上に密着よく形成される透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、透明ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を好ましく挙げることができる。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン樹脂以外の樹脂としては、上述の基材2の構成材料と同じものを使用することができる。
こうした透明樹脂層6を形成する樹脂は、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤又はマット剤等の公知の添加剤を添加されていてもよく、着色された透明樹脂層や紫外線吸収特性を有する透明樹脂層とすることができる。
透明樹脂層6は、接着剤層5上に、別個に形成された透明樹脂シートを積層する方法、又は、溶融押出し塗工法によって成膜する方法等の公知の方法で形成される。
また、図2に示すように、透明樹脂層6を2層以上の複層構造にしてもよい。2層以上の積層構造を有する透明樹脂層16は、基材2側の透明樹脂層6’と表面保護層側の透明樹脂層6”とに異なる作用効果を持たせることができる点で有利である。具体的には、表面保護層側の透明樹脂層6”をフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成することにより、優れた耐汚染性等の表面機能を付与することができる。また、表面保護層側の透明樹脂層6”を耐候剤を添加したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、優れた耐候性を付与することができる。一方、基材側の透明樹脂層6’を熱可塑性アクリル樹脂等で形成することにより、接着剤層5との間の密着性等を向上させることができる。また、基材側の透明樹脂層6’をエラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、接着剤層5との間の密着性及び耐候性を向上させることができる。
2層以上の積層構造を有する透明樹脂層16は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しする方法、又は、ドライラミネーションや熱ラミネーション等の各種のラミネート法等により形成される。このとき、図3に示すように、プライマー層又はアンカー層として作用する接着剤層12を介して2以上の層からなる透明樹脂層16を形成することもできる。なお、この場合において、接着剤層12を、透明樹脂層6’、6”と共に溶融共押出しして形成することもできる。
溶融押出し法で透明樹脂層6を形成し、接着剤層5が上記イソシアネート基を持つ化合物と、上記カルボジイミド基を有する化合物を含有する水性塗工剤にて形成し、透明樹脂層がカルボジイミド基と反応性を有する場合やオゾン処理等によりカルボジイミド基との反応性基が生成する場合には、形成時の熱により、カルボジイミド基との反応が進行しやすくなるため、接着剤層5と透明樹脂層6との界面の密着性が向上する。透明樹脂層6の厚さは、20〜400μm程度である。
(凹凸模様)
凹凸模様7は、エンボス模様ともいわれ、図1に示すように、必要に応じて上述の透明樹脂層6の表面に形成される。また、図2及び図3に示すように2層以上の透明樹脂層16を形成した場合には、凹凸模様7を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができ、それぞれ任意に行うことができる。
凹凸模様7は、特に限定されず、化粧シート1の用途に応じた模様であればよい。例えば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩の劈開面等の石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等の模様を挙げることができる。
凹凸模様7を形成する手段としては、例えば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押し出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層6の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様7を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。エンボス加工法で形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層6とする樹脂シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層6とする樹脂シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)行ったりすることができる。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層6を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用して、透明樹脂層6の成膜・積層と同時に凹凸模様7を形成することもできる。また、ヘアライン加工、サンドブラスト加工等によってもエンボス模様を形成することができる。
また、接着剤層5が上記イソシアネート基を持つ化合物と、上記カルボジイミド基を有する化合物を含有する水性塗工剤にて形成し、透明樹脂層がカルボジイミド基と反応性を有する場合には、エンボス模様形成時の熱により、カルボジイミド基との反応が進行しやすくなるため、接着剤層5と透明樹脂層6との界面の密着性が向上する。
(着色層)
着色層8は、凹凸模様7の凹陥部17にワイピング法により形成される。ワイピング法は、ドクターブレードコート法又はナイフコート法で凹陥部17を含む表面全面に着色層用の塗工剤を塗布した後、凹陥部17以外の表面から着色層用の塗工剤を除去することにより、凹陥部17のみに着色層8を形成する方法である。着色層用の塗工剤としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料等の着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂とからなるインキや、エマルジョン型の水性タイプインキ等を使用できる。また、上述のベタインキ層等用の水性塗工剤を用いると、環境安全性の点でより好ましい。
(表面保護層)
表面保護層9は、トップコート層又はオーバープリント層(OP層)ともいわれ、凹凸模様7を形成する凹陥部17やその凹陥部17に形成された着色層8の表面を被って、化粧シート1を保護することを目的として設けられるものである。
本発明の化粧シート1は、表面保護層9を熱硬化性の塗工液で形成する場合と、表面保護層9を活性エネルギー線硬化性の塗工液で形成する場合とに分けられる。熱硬化型の塗工液で形成する場合には、水性塗工剤を用いると環境安全性の面で好ましく、活性エネルギー線硬化性の塗工液で形成する場合には、無用剤型の塗工液を用いると環境安全の面で好ましい。また、活性エネルギー線としては電子線が好ましい。
また、透明樹脂層6と表面保護層9の間にプライマー層13を形成してもよく、特に表面保護層9が硬化収縮性高い活性エネルギー線硬化性の塗工液で形成される場合、プライマー層13を形成することが好ましい。また、環境安全性の面から、プライマー層13は水性塗工剤で形成するのが好ましい。
上記水性塗工剤を用いて表面保護層9を形成することにより、化粧シート製造時のVOC発生量及び化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。特に、この表面保護層9は、化粧シートの最表面を構成しているので、生活空間への揮発性物質の放散を著しく低減することができる。
表面保護層用の水性塗工剤は、表面保護層としての機能を考慮して、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤その他等の添加剤が任意に添加されてもよい。
塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が例えば1〜40μm、好ましくは1〜10μm程度になるように塗工される。
(裏面プライマー層)
裏面プライマー層10は、本発明の化粧シート1を各種の被着体15に接着させ易くすることを目的として、基材2の裏面側に任意に形成される。
裏面プライマー層10は、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、硝化綿系樹脂等の樹脂単独又は混合物を主剤とし、イソシアネート系の硬化剤を用いて形成される。水性塗工剤で形成されることが更に好ましい。
上記水性塗工剤を用いて裏面プライマー層10を形成することにより、化粧シート製造時のVOC発生量及び化粧シート中のVOC残存量を減少させることができ、その結果、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができる。
裏面プライマー層用の塗工剤は、裏面プライマー層としての機能を考慮して、フィラー、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤その他等の添加剤が任意に添加されてもよい。
裏面プライマー層10は、このような塗工剤を、基材2の裏面側に塗工又は印刷等によって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が例えば0.5〜10μm程度になるように塗工される。
(化粧シート)
本発明の化粧シート1は、上記した層により構成されている。この化粧シート1は、インキ層及び/又は接着剤層の少なくとも1層がVOCを含まない水性塗工剤により形成されているので、従来の溶剤系塗工液で形成した化粧シートより環境安全性が高い。また、上記した各層すべてでVOCを含まない水性塗工剤や無溶剤型塗工剤により形成されているので、環境安全性は高く、かつ、化粧シート内に残存するVOC量も低減する特徴を有する。
また、この化粧シート1は、例えば接着剤層が1分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ水性化合物と1分子中に2個以上のカルボジイミド基を持つ水性化合物とを架橋剤として含有する水性塗工剤で形成されていると、耐水性試験後、耐高温高湿性試験後及び耐候試験後の基材2と透明樹脂層6との層間密着性を向上させるという特徴を有する。
化粧シート1は、他の被着体15(裏打材)に積層して用いられる。
被着体15としては、図5に示すような立体形状物品41や、図6に示すような平板状、曲面状等の板材51、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。こうした被着体15は、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、硝子、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布又は織布、等々を挙げることができる。
化粧シート1と被着体15との関係において、化粧シート1の基材2や裏面プライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できる場合には、化粧シート1と被着体15とを接着剤を用いずに積層させることができるが、化粧シート1の基材2や裏面プライマー層10の種類により、被着体15にそのまま熱融着等で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢ビ系、尿素系等の接着剤を挙げることができ、水系やホットメルト系のものが好ましい。
また、一般的な積層方法としては、例えば、(a)接着剤を介して被着体15に加圧ローラで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載のように、化粧シート1を射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成型品の成形と同時にその表面に化粧シート1を接着積層する射出成形同時ラミネート方法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載のように、接着剤を介して成形品の表面に化粧シート1を対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載のように、円柱、多角柱等の柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して化粧シート1を供給しつつ、複数の向きの異なるローラにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次化粧シート1を加圧接着して積層してゆくラッピング加工方法等が挙げられる。
本発明の化粧シート1を積層した各種の被着体15は、所定の成形加工等を施して、各種装飾用素材等として用いることができる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。以下において、部とは重量部のことである。
(実施例1)
基材としてポリエチレン系着色シート(厚さ60μm)を用い、その表裏それぞれにコロナ放電処理を施した後、その片面に裏面プライマー層用水性塗工剤(ウレタン系イソシアネート2液)を線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布し、これを乾燥させて約2g/m2の裏面プライマー層を形成した。
更にその反対の面に、下記配合のベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤B、接着剤層用水性塗工剤Cをグラビア印刷法にて塗布し、これを乾燥させて、約2.0g/m2のベタインキ層、約1.0g/m2の柄インキ層、及び、約5.0g/m2の接着剤層を順次形成した。
次に、その接着剤層上に透明樹脂層を形成した。透明樹脂層には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、及び、フェノール系酸化防止剤0.2重量%及びヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加したランダム共重合ポリプロピレン樹脂の2種類の樹脂を用い、接着剤層側にマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が形成されるように、温度240℃においてオゾンの照射の下、Tダイにて共押し出して透明樹脂層を形成した。透明樹脂層の膜厚は約80μmであり、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の膜厚を10μmとし、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂の膜厚を70μmとして形成した。この透明樹脂層の表面に、約160℃の温度下で熱エンボスにより凹凸を施し、更に、凹凸が施された表面にコロナ放電処理を行なった。次に、表面保護層用水性塗工剤(ウレタン系イソシアネート2液)をグラビア印刷法にて塗布し、これを乾燥させて約5g/m2の表面保護層を形成した。その後、得られた積層体を25℃の温度で7日間養生処理(エージング)して実施例1の化粧シートを得た。
ベタインキ層用水性塗工剤A;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)2.5部
・水10部
・イソプロピルアルコール:10部
柄インキ層用水性塗工剤B;
・水性ウレタン系黄色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)2.5部
・水20部、イソプロピルアルコール20部
接着剤層用水性塗工剤C;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO18)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート100)10部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)10部
(実施例2)
実施例1の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤B、接着剤層用水性塗工剤Cに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤D、柄インキ層用水性塗工剤E、接着剤層用水性塗工剤Fを用い、その他は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
ベタインキ層用水性塗工剤D;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水溶性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトV04)
2.5部
・水10部
・イソプロピルアルコール:10部
柄インキ層用水性塗工剤E;
・水性ウレタン系黄色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水溶性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトV04)2.5部
・水20部、イソプロピルアルコール20部
接着剤層用水性塗工剤F;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO18)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート100)10部
・水溶性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトV04)10部
(実施例3)
実施例1の化粧シートの製造において、透明樹脂層6の形成方法に変えて、接着剤層5上に両面コロナ処理した厚さ120μmの透明プロピレンフィルムを90℃の張り合わせ温度でドライラミネート法により積層して、透明樹脂層を形成した。その他は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
(実施例4)
実施例1の化粧シートの製造において、表面保護層の形成方法に代えて、凹凸7が施された表面にコロナ放電処理を行なった透明樹脂層6上に、プライマー層用水性塗工剤(ウレタン系イソシアネート2液)をグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約0.5g/m2のプライマー層を形成し、その上に表面保護層用無溶剤塗工液(ウレタンアクリレート系電子線硬化系インキ)を60℃に加温してバーコート法で塗工したのち、岩崎電気製電子線照射装置エレクトロカーテンEC250にて、窒素パージ下にて、150kVの加速電圧、5Mradの照射線量で電子線照射し約5g/m2の表面保護層を形成した。その他は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
(実施例5)
実施例1の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤Bに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤G、柄インキ層用水性塗工剤Hを用い、その他は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
ベタインキ層用水性塗工剤G;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・イソプロピルアルコール:10部
柄インキ層用水性塗工剤H;
・水性ウレタン系黄色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水20部、イソプロピルアルコール20部
(実施例6)
実施例5の化粧シートの製造において、接着剤層用水性塗工剤Cに代えて、接着剤層用水性塗工剤Fを用い、その他は実施例5と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
実施例5の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤Gに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤Iを用い、その他は実施例5と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。
ベタインキ層用水性塗工剤I;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水10部
・イソプロピルアルコール:10部
(実施例8)
実施例6の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤Gに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤Jを用い、その他は実施例6と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
ベタインキ層用水性塗工剤J;
・水性ウレタン系白色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)
2.5部
・水10部
・イソプロピルアルコール:10部
(比較例1)
実施例1の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤B、接着剤層用水性塗工剤Cに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤I、柄インキ層用水性塗工剤K、接着剤層用水性塗工剤Lを用いた。その他は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。
柄インキ層用水性塗工剤K;
・水性ウレタン系黄色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート120)2.5部
・水20部、イソプロピルアルコール20部
接着剤層用水性塗工剤L;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO18)100部
・水分散性イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、アクアネート100)10部
(比較例2)
実施例1の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤B、接着剤層用水性塗工剤Cに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤J、柄インキ層用水性塗工剤M、接着剤層用水性塗工剤Nを用いた。その他は実施例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
柄インキ層用水性塗工剤M;
・ 水性ウレタン系黄色インキ(ザ・インクテック株式会社製、オーデWKE)100部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)2.5部
・水20部、イソプロピルアルコール20部
接着剤層用水性塗工剤N;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO18)100部
・水分散性カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、カルボジライトE04)10部
(比較例3)
実施例7の化粧シートの製造において、ベタインキ層用水性塗工剤A、柄インキ層用水性塗工剤B、接着剤層用水性塗工剤Cに代えて、ベタインキ層用水性塗工剤G、柄インキ層用水性塗工剤H、接着剤層用水性塗工剤Oを用いた。その他は実施例7と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
接着剤層用水性塗工剤O;
・水性ウレタン系接着剤(日華化学株式会社製、HO18)100部
(層間密着性測定)
化粧シートの基材と透明樹脂層との層間密着性を、INSTRON5500引っ張り試験機を用い、25℃の雰囲気中において引張速度100mm/分の条件の下、基材と透明樹脂層との間の開き角を180°として引っ張り試験を行うことにより評価した。
(耐候性促進試験)
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃湿度50%にて、照度60mW/cm2、光源からの距離240mm、照射スペクトル帯域295〜450mmからなる紫外線を、化粧シートの表面保護層側に20時間照射した後、10秒間サンプル上に水を噴霧し、さらに、ブラックパネル温度30℃湿度98%の環境で4時間結露させる条件を1サイクルとした試験を2サイクル及び4サイクル行った(以下、耐候性促進試験という)。その後、25℃50%の条件下で2日間保持した後、その化粧シートの層間密着性測定を実施し、層間密着性測定の密着強度が15N以上を◎、10N以上15N未満を○、5N以上10N未満を△、5N未満を×として表した。
(イソシアネート基、及び、カルボジイミド基の確認)
エージング終了後の化粧シートのベタインキ層3、柄インキ層4、接着剤層5のすべての層を含んだ部分をメスできりとり、走査型顕微赤外分光法を用いて、イソシアネート基の存在は2270cm−1付近の吸収ピークの有無で確認し、カルボジイミド基の存在は2130cm−1付近の吸収ピークの有無で確認した。なお、測定に用いた走査型顕微赤外分光装置は、Spectra-Tech社製のIRμs/SIRMを使用した。
(評価結果)
結果を表1に示した。実施例1〜8の化粧シートは、耐候性促進試験において、層間密着性に優れていた。一方、比較例1〜3の化粧シートは、耐候性促進試験において、層間密着性に劣る結果となった。また、実施例1〜8のベタインキ層、柄インキ層、接着剤層中にイソシアネート基は存在せず、カルボジイミド基は存在していた。